(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】固形製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240124BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20240124BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240124BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240124BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240124BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20240124BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/485
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/04
A61P11/14
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2019146932
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018151502
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521357375
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】糸川 昌太
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-193230(JP,A)
【文献】特開2008-174501(JP,A)
【文献】特開平07-097325(JP,A)
【文献】特開2018-002699(JP,A)
【文献】特開2000-063269(JP,A)
【文献】特開2001-181206(JP,A)
【文献】特開2000-290199(JP,A)
【文献】特開平10-287561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン及び
デキストロメトルファン又はその塩を含有する
錠剤の製造方法であって、
(i)イブプロフェン及び/又は
デキストロメトルファン又はその塩を撹拌造粒する工程と、
(ii)ケイ酸化合物を配合する工程を具備することを特徴とする、
錠剤の製造方法。
【請求項2】
イブプロフェンと
デキストロメトルファン又はその塩を同群で撹拌造粒する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ケイ酸化合物に含まれる二酸化ケイ素が10%以上である、請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ケイ酸化合物が、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び含水二酸化ケイ素からなる群から選択される1種以上である、請求項1~
3何れか記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬を含有する固形製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤の薬効成分の中には、打錠工程において杵表面に付着する薬効成分も多く、それらの薬効成分を配合した製剤においては、打錠時に杵付着を起こすことが知られている。杵付着とは、打錠中に杵の打錠面に薬効成分や打錠末が付着することであり、これにより錠剤表面の光沢が失われるといった軽度のものから、錠剤表面に凹凸が形成される、または錠剤表面の一部が剥がれるといった重度のものまで、外観不良が生じるため、医薬製剤としての商品価値の低下が問題となる。また、薬効成分の杵付着は、当該成分の含量低下にもつながるので、外観不良による商品価値の低下だけでなく、医薬製剤としての品質低下、製剤の製造工程における生産性の低下にも関わる問題となる。
【0003】
イブプロフェンは、解熱鎮痛剤として広く利用されており、鎮咳薬等と組み合せて総合感冒薬に使用されている。また、イブプロフェンは、杵付着を起こす薬物として知られており、イブプロフェンと鎮咳薬等の有効成分を含有する錠剤においては、杵付着による外観不良や含量低下、製造における生産性の低下が大きな問題となる。
【0004】
イブプロフェンを含有する固形製剤において添加剤を多量に配合することにより、イブプロフェンの固形製剤全体における濃度が希釈されるため、杵付着や打錠時のスティッキングといった外観不良の問題を解消することができる。しかしながら、添加剤を多量に配合すると錠剤サイズが大きくなり、服用性が悪くなるという問題が生じる。
【0005】
特許文献1は、イブプロフェン、アンブロキソール塩酸塩及びトラネキサム酸を含有する医薬組成物に関するが、製剤例11には、これら3成分に、非麻薬性鎮咳薬であるデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、及び軽質無水ケイ酸が配合された錠剤が開示されている。しかしながら、特許文献1には、イブプロフェン及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を撹拌造粒する等の記載がなく、杵付着や打錠時のスティッキングといった外観不良の課題についても開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、主にイブプロフェンに起因する、杵付着やスティッキング等の外観不良、含量低下などの品質低下、及び製造工程における生産性の低下等が改善され、さらに服用性に優れた製剤サイズを有する、イブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬を含有する固形製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、イブプロフェン及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を含有する固形製剤の製造工程において、(i)イブプロフェン及び/又はデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を撹拌造粒し、(ii)添加成分としてケイ酸化合物を配合することにより、服用性に優れたサイズの固形製剤が得られ、杵付着や打錠時のスティッキング等の外観不良が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] イブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬を含有する固形製剤の製造方法であって、
(i)イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒する工程と、
(ii)ケイ酸化合物を配合する工程を具備することを特徴とする、固形製剤の製造方法。
[2] イブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬を同群で撹拌造粒する、[1]に記載の製造方法。
[3] 非麻薬性鎮咳薬がデキストロメトルファン又はその塩である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] ケイ酸化合物に含まれる二酸化ケイ素が10%以上である、[1]~[3]何れか記載の製造方法。
[5] ケイ酸化合物が、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び含水二酸化ケイ素からなる群から選択される1種以上である、[1]~[4]何れか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬を含有する固形製剤において、杵付着や打錠時のスティッキング等の外観不良、イブプロフェン含量の低下などの品質低下を顕著に改善することができ、また製造工程における生産性も高く維持できる。
また、服薬コンプライアンスを考慮すると、固形製剤は適度なサイズであることを要するが、本発明によれば、イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒し、添加剤としてケイ酸化合物を配合することにより、服用性に優れたサイズの固形製剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のイブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬を含有する固形製剤は、(i)イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒する工程と、(ii)ケイ酸化合物を配合する工程を含む。
【0011】
〔本発明の固形製剤に含有される薬効成分〕
本発明における「イブプロフェン」は、日本薬局方に準拠したイブプロフェンであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明におけるイブプロフェンの投与量は、服用者の年齢、症状などに応じて、適宜検討して決定すればよいが、例えば、1日あたり、50~600mgを1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。
本発明における固形製剤中に含まれるイブプロフェンの含量は、特に限定されず、上記投与量に基づいて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の1~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。
【0012】
本発明における「非麻薬性鎮咳薬」は、非麻薬性の中枢性鎮咳薬を意味し、例えば、アロクラミド、イソアミニル、エプラジノン、オキセラジン、クロフェダノール、クロブチノール、クロペラスチン、ジブナート、ジメモルファン、チペピジン、デキストロメトルファン、ノスカピン、ヒドロコタルニン、ペントキシベリン、ベンプロペリン及びホミノベン、並びにそれらの塩及び水和物が挙げられ、それらの塩及び水和物としては、例えば、塩酸アロクラミド、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、チペピジンクエン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩、ペントキシベリンクエン酸塩及びそれらの水和物が例示できる。
本発明における固形製剤に含まれるイブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬の質量比は、特に限定されないが、例えば、イブプロフェンの1質量部に対して、非麻薬性鎮咳薬が、例えば、0.01質量部以上であり、好ましくは0.02質量部以上であり、より好ましくは0.02~2質量部であり、さらに好ましくは0.02~1.5質量部である。
【0013】
本発明の一実施態様において、非麻薬性鎮咳薬は「デキストロメトルファン又はその塩」である。
本発明における「デキストロメトルファン又はその塩」は、デキストロメトルファン及びその薬学的に許容される塩、並びにデキストロメトルファン及びその薬学的に許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物を含む。デキストロメトルファン又はその塩としては、例えば、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩が挙げられ、好ましくは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である。これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の医薬組成物におけるデキストロメトルファン又はその塩の投与量は、服用者の年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定すればよいが、例えば、1日あたり、0.1~270mg、好ましくは0.5~180mg、より好ましくは1~90mgを1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。また、デキストロメトルファン又はその塩が、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である場合、1日あたり、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物として6~60mg、好ましくは15~60mg、より好ましくは20~60mgを投与するのが好ましい。さらに、デキストロメトルファン又はその塩がデキストロメトルファンフェノールフタリン塩である場合、1日あたり、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩として9~90mg、好ましくは22~90mg、より好ましくは30~90mgを投与するのが好ましい。
本発明における固形製剤中に含まれる「デキストロメトルファン又はその塩」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の0.1~5質量%、好ましくは0.5~3質量%である。
【0014】
本発明における固形製剤に含まれるイブプロフェンとデキストロメトルファン又はその塩の質量比は、特に限定されないが、例えば、イブプロフェンの1質量部に対して、デキストロメトルファン又はその塩が、例えば0.01質量部以上であり、好ましくは0.02質量部以上であり、より好ましくは0.02~2質量部であり、さらに好ましくは0.02~1.5質量部である。
【0015】
本発明における「固形製剤」には、本発明の効果を阻害しない限り、イブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬以外の有効成分、例えば、イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤、鼻炎用薬、抗ヒスタミン剤、麻薬性鎮咳剤、去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミン類、催眠鎮静薬、喀痰溶解剤、抗炎症剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方などを配合してもよい。
【0016】
イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、ケトプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンナトリウムなどが例示できる。
鼻炎用薬として、塩酸プソイドエフェドリン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、タンニン酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、トリプロリジン塩酸塩水和物、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、クレマスチンフマル酸塩、メキタジンなどが例示できる。
麻薬性鎮咳剤としては、例えば、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩などが例示できる。
去痰剤としては、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、グアイフェネシン、クエン酸チペピジン、L-カルボシステイン、塩化アンモニウム、l-メントール、アンモニア・ウイキョウ精、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示できる。
気管支拡張剤としては、例えば、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l-塩酸メチルエフェドリン、塩酸プソイドエフェドリン、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。
胃粘膜保護剤としては、例えば、グリシン、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウムなどが例示できる。
カフェイン類としては、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェインなどが例示できる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1類またはその誘導体若しくはそれらの塩、ビタミンB2類またはその誘導体若しくはそれらの塩、ビタミンC類またはその誘導体若しくはそれらの塩、ビタミンP(ヘスペリジン)またはその誘導体若しくはそれらの塩などが例示できる。
催眠鎮静薬として、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。
喀痰溶解剤としては、塩化リゾチーム、L-エチルシステイン塩酸塩、塩酸メチルシステインなどが例示できる。
抗炎症剤としては、塩化リゾチーム、セラプターゼ、トラネキサム酸、及びグリチルリチン酸及びその塩などが例示できる。
抗コリン剤としては、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなどが例示できる。
生薬類としては、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタン含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジンなどが例示できる。
漢方処方としては、根湯、根湯加桔梗、桂皮湯、香蘇散、柴胡桂皮湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯などが例示できる。
【0017】
〔本発明の固形製剤に含有される添加成分〕
本発明における「ケイ酸化合物」としては、上記本発明の効果が生じる限り特に限定されないが、例えば、日本薬局方、医薬品添加物規格、医薬部外品原料規格などに掲載された既知のケイ酸化合物などが挙げられる。「ケイ酸化合物」中の二酸化ケイ素(SiO2)の含有率は、高ければ高いほど好ましい。具体的には、二酸化ケイ素(SiO2)を10%以上含むものが好ましく、20%以上含むものがより好ましい。
このようなケイ酸化合物の具体例としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸金属塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム)、メタケイ酸金属塩(例えば、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)などが挙げられ、好ましくは軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム又は含水二酸化ケイ素である。
【0018】
本発明の固形製剤中に含まれる「ケイ酸化合物」の含有量は、特に限定されず、イブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬の含有量などに応じて適宜検討して決定すればよいが、本発明の固形製剤は、ケイ酸化合物を、固形製剤全体の0.3~15質量%、好ましくは0.5~7質量%含む。
また、本発明の固形製剤において、ケイ酸化合物は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0019】
本発明における「イブプロフェン」と「ケイ酸化合物」の質量比は、特に限定されないが、例えば、イブプロフェンの1質量部に対して、ケイ酸化合物を0.01~0.5質量部含むのが好ましく、0.03~0.3質量部含むのがより好ましい。
また、本発明における「非麻薬性鎮咳薬」と「ケイ酸化合物」の質量比は、特に限定されないが、例えば、非麻薬性鎮咳薬の1質量部に対して、ケイ酸化合物を0.1~3質量部含むのが好ましく、0.2~2質量部含むのがより好ましい。
【0020】
本発明における固形製剤には、ケイ酸化合物の他、本発明の効果を阻害しない限り、製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤をさらに含有していてもよい。
担体又は添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、矯味剤、香料などが挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0021】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖水和物、精製白糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトールなどの糖又は糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなどが用いられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
流動化剤としては、例えば、タルクなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、アミノ酸及びそれらの塩などが挙げられる。
界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
矯味剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、スクラロース、ステビアエキスなどが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
上記した担体又は添加剤は、2種以上を適宜、混合して用いてもよい。
【0022】
〔本発明における固形製剤の製造方法〕
本発明の固形製剤の製造方法は、
(i)イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒する工程と、
(ii)ケイ酸化合物を配合する工程
を含むことを特徴とする。これにより、杵付着や打錠時のスティッキング等の外観不良を抑制することができ、イブプロフェン含量の低下などの品質低下を顕著に改善することができる。また製造工程における生産性も高く維持でき、さらに服用性に優れた適度なサイズで固形製剤を製造することができる。
【0023】
上記工程(i)における撹拌造粒方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)、製剤機械技術ハンドブック(第2版、製剤機械技術研究会設立20周年記念出版編集委員会編、製剤機械技術研究会)のような刊行物に記載されている方法を用いることができる。
【0024】
本発明における「イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒する工程」では、イブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬のうち、いずれか一方を含む群を撹拌造粒し、もう一方の群を(撹拌造粒以外の)製剤一般に用いられる造粒方法で造粒してもよく、またその両方を撹拌造粒してもよいが、イブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬の両方を撹拌造粒するのがより好ましい。
さらにイブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬を同群で撹拌造粒してもよく、あるいはイブプロフェンを非麻薬性鎮咳薬と別群で撹拌造粒してもよいが、同群で撹拌造粒するのがより好ましい。
イブプロフェンを非麻薬性鎮咳薬と「同群で撹拌造粒する」とは、イブプロフェンを非麻薬性鎮咳薬と共に(同一の群で)撹拌造粒することをいい、イブプロフェンを非麻薬性鎮咳薬と「別群で撹拌造粒する」とは、イブプロフェンを含む群を、非麻薬性鎮咳薬を含む群と別個に(各々単独の群で)撹拌造粒することをいう。
ここで、イブプロフェンを非麻薬性鎮咳薬と「同群で撹拌造粒する」ことには、固形製剤に含有される非麻薬性鎮咳薬の一部をイブプロフェンと同群で撹拌造粒し、残りの部分をイブプロフェンとは別群で撹拌造粒することも含まれる。
また、撹拌造粒以外の造粒方法としては、例えば、押し出し造粒、転動造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、溶融造粒などが挙げられ、上記の造粒ハンドブックなどの刊行物に記載されている方法を用いることができる。
【0025】
本発明の固形製剤の製造方法において、イブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬を同群で撹拌造粒することが好ましい。この場合、上記本発明の効果を、より高めることができる。
本発明におけるイブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬を同群で撹拌造粒する工程は、イブプロフェンと、非麻薬性鎮咳薬と、必要に応じて賦形剤等の添加物を撹拌造粒機に仕込み、そこに結合剤等を添加(例えば噴霧)して造粒することを含む。必要に応じて、得られた造粒物を、製剤一般に用いられる方法により、乾燥、整粒等を行ってもよい。
【0026】
本発明におけるイブプロフェンと非麻薬性鎮咳薬を別群で撹拌造粒する工程は、イブプロフェンと、必要に応じて賦形剤等の添加物(非麻薬性鎮咳薬を含まない)を撹拌造粒機に仕込み、そこに結合剤等を添加(例えば噴霧)して造粒する工程と、非麻薬性鎮咳薬と、必要に応じてイブプロフェン以外の有効成分を、賦形剤や結合剤等の添加物と共に造粒する工程を含む。必要に応じて、得られた造粒物を、製剤一般に用いられる方法により、乾燥、整粒等を行ってもよい。
【0027】
そして、本発明の固形製剤の製造方法は、(ii)ケイ酸化合物(好ましくは、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び含水二酸化ケイ素からなる群から選択される1種以上のケイ酸化合物)を配合する工程を含む。ケイ酸化合物は、必要に応じて賦形剤や滑沢剤等の添加物とともに、(i)イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒する工程より得られた造粒物に配合(混合)される。
上記工程(ii)における配合方法は、特に限定されないが、上記の造粒ハンドブックなどの刊行物に記載されている方法を用いて、例えば、製剤一般に用いられる各種混合機(例えば、万能混合機、タンブラー混合機など)を用いて行うことができる。
【0028】
本発明における固形製剤としては、例えば、錠剤(素錠、コーティング錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠などを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤などを含む)、顆粒剤、散剤、丸剤が挙げられ、好ましくは、錠剤が挙げられる。
本発明における固形製剤が錠剤である場合、上記配合物(混合物)を、上記の造粒ハンドブックなどの刊行物に記載されている方法を用いて、例えば、製剤一般に用いられる各種打錠機(例えば、ロータリー式打錠機など)を使用して打錠し、錠剤とすることができる。
また、本発明における固形製剤がカプセル剤である場合、上記配合物(混合物)をカプセルに充填しカプセル剤としてもよい。
【0029】
本発明の一実施態様において、固形製剤は、イブプロフェンを含有する撹拌造粒物にケイ酸化合物が配合された第1の部分と、イブプロフェンとは別群で造粒した造粒物を含む第2の部分とを層状に積み重ねて圧縮形成(好ましくは、打錠)することによって得られる成形物(積層錠)である。該成形品において、各部分の直接接触を回避することを目的として、不活性な添加剤(例えば、賦形剤)を用いて中間層を設けてもよい。
また、本発明の別の一実施態様において、固形製剤は、イブプロフェンを含有する造粒物及びイブプロフェンを含有しない造粒物にケイ酸化合物が配合され圧縮形成(好ましくは、打錠)することによって得られる成形物(単層錠)である。
【0030】
本発明における固形製剤は、通常配合されるコーティング基剤を用いて常法によりコーティングされてもよい。例えば、錠剤を、コーティング基剤を用いてコーティングし、フィルムコーティング錠としてもよい。
コーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴールなどの水溶性基剤、エチルセルロースなどの水不溶性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの腸溶性基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性基剤、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セラック、マクロゴール類、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
また、本発明において、コーティング基剤は、1種であっても2種以上であってもよい。
さらに、コーティングにコーティング添加剤を用いてもよい。コーティング添加剤としては、例えば、遮光剤、流動化剤、着色剤、可塑剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、コポリビドン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、ポリソルベートなどが挙げられる。
【0031】
以下に実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
イブプロフェン(BASF)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を撹拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.3%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物1.1%、トウモロコシデンプン8.9%、粉末還元麦芽糖水アメ19.6%、結晶セルロース20.7%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
さらに、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、L-カルボシステイン(妙中鉱業)、無水カフェイン(BASF)、塩酸プソイドエフェドリン(アルプス薬品工業)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、マンニトール(ロケット・ジャパン)を流動層造粒機に仕込み、HPC(日本曹達)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。整粒末2の組成比は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.2%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物2.3%、L-カルボシステイン47.6%、無水カフェイン4.8%、塩酸プソイドエフェドリン8.6%、トウモロコシデンプン4.4%、結晶セルロース14.6%、粉末還元麦芽糖水アメ6.7%、マンニトール6.7%、HPC4.1%であった。
得られた整粒末1:90.9%、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)3.2%、軽質無水ケイ酸(サイリシア(R)320、富士シリシア)3.0%、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)2.6%、ステアリン酸マグネシウム(太平化学工業)0.3%の組成で混合し、混合末1を得た。また、得られた整粒末2:87.6%、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)6.8%、アルファー化デンプン(旭化成ケミカルズ)5.0%、ステアリン酸マグネシウム(太平化学工業)0.6%の組成で混合し、混合末2を得た。
得られた混合末1を1錠あたり195mg、混合末2を1錠あたり300mgとなるようにロータリー式打錠機(AQU 2L、菊水製作所)にて打錠し、素錠質量495mgの素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0033】
[実施例2]
イブプロフェン(BASF)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を撹拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.3%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物1.1%、トウモロコシデンプン8.9%、粉末還元麦芽糖水アメ19.6%、結晶セルロース20.7%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
さらに、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、L-カルボシステイン(妙中鉱業)、無水カフェイン(BASF)、塩酸プソイドエフェドリン(アルプス薬品工業)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、マンニトール(ロケット・ジャパン)を流動層造粒機に仕込み、HPC(日本曹達)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。整粒末2の組成比は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.2%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物2.3%、L-カルボシステイン47.6%、無水カフェイン4.8%、塩酸プソイドエフェドリン8.6%、トウモロコシデンプン4.4%、結晶セルロース14.6%、粉末還元麦芽糖水アメ6.7%、マンニトール6.7%、HPC4.1%であった。
得られた整粒末1:35.8%、整粒末2:53.1%、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)5.4%、軽質無水ケイ酸(サイリシア(R)320、富士シリシア)1.2%、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)1.0%、アルファー化デンプン(旭化成ケミカルズ)3.0%、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)0.5%の組成で混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量330mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0034】
[実施例3]
イブプロフェン(BASF)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を撹拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.3%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物1.1%、トウモロコシデンプン8.9%、粉末還元麦芽糖水アメ19.6%、結晶セルロース20.7%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
さらに、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、L-カルボシステイン(妙中鉱業)、無水カフェイン(BASF)、塩酸プソイドエフェドリン(アルプス薬品工業)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、マンニトール(ロケット・ジャパン)を流動層造粒機に仕込み、HPC(日本曹達)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。整粒末2の組成比は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.2%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物2.3%、L-カルボシステイン47.6%、無水カフェイン4.8%、塩酸プソイドエフェドリン8.6%、トウモロコシデンプン4.4%、結晶セルロース14.6%、粉末還元麦芽糖水アメ6.7%、マンニトール6.7%、HPC4.1%であった。
得られた整粒末1:35.3%、整粒末2:52.3%、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)5.2%、軽質無水ケイ酸(サイリシア(R)320、富士シリシア)1.2%、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(R)UFL2、富士化学工業)1.5%、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)1.0%、アルファー化デンプン(旭化成ケミカルズ)3.0%、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)0.5%の組成で混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量335mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0035】
[実施例4]
イブプロフェン(BASF)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(DSM)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を撹拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.3%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物4.5%、トウモロコシデンプン2.7%、粉末還元麦芽糖水アメ22.0%、結晶セルロース21.1%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
さらに、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)を流動層造粒機に仕込み、HPC(日本曹達)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。整粒末2の組成比は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩1.4%、トウモロコシデンプン37.2%、結晶セルロース42.9%、粉末還元麦芽糖水アメ7.1%、HPC11.4%であった。
得られた整粒末1:41.0%、整粒末2:45.2%、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)12.6%、軽質無水ケイ酸(サイリシア(R)320、富士シリシア)0.6%、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)0.6%の組成で混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量162mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0036】
[比較例]
イブプロフェン(BASF)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、乳糖水和物(メグレ)を流動層造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末1を得た。整粒末1の組成比は、イブプロフェン60.0%、トウモロコシデンプン18.0%、乳糖水和物20.0%、HPC2.0%であった。
さらに、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和(DSM)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)を流動層造粒機に仕込み、HPC(日本曹達)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。整粒末2の組成比は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩1.25%、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和12.5%、トウモロコシデンプン32.5%、結晶セルロース37.5%、粉末還元麦芽糖水アメ6.25%、HPC10.0%であった。
得られた整粒末1:40.4%、整粒末2:50.5%、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)7.6%、軽質無水ケイ酸(サイリシア(R)320、富士シリシア)1.0%、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)0.5%を混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量220mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0037】
[試験例]
スティッキングの改善評価
実施例及び比較例の打錠時における素錠外観を目視にて確認し、外観不良発生の有無と、錠剤表面に外観不良を起こすまでの杵1本あたりの良品錠数を算出した(外観不良がない場合は生産した全数を良品として記載)。その結果を下表に示す。ここで外観不良とは、錠剤表面にスティッキング由来のクボミが形成されたものを指す。
比較例では杵1本あたりの良品錠数が92錠と少なく、製造工程における著しい生産性の低下を確認した。その一方で、実施例1から実施例4では比較例の約11倍以上と高く、さらにいずれも外観不良の発生はなく生産性及び品質の改善が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
イブプロフェン及び非麻薬性鎮咳薬を含有する固形製剤において、(i)イブプロフェン及び/又は非麻薬性鎮咳薬を撹拌造粒し、(ii)ケイ酸化合物を配合することにより、杵付着などの外観不良や、含量低下などの品質低下などが顕著に改善でき、また製造工程における生産性も高く維持できる。このような固形製剤は、外観不良を生じず、良好な品質や安定性を確保することができ、また服用性に優れた適度なサイズとなる。