(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】光学装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240124BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240124BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20240124BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/02 E
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G03B17/14
(21)【出願番号】P 2019157545
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一郎
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005135(JP,A)
【文献】特開2011-154306(JP,A)
【文献】特開2007-025154(JP,A)
【文献】特開2013-003446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 17/04 -17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子と、
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置され、前記第1の部材及び前記第2の部材に対して回転
可能であり、撮影条件を変更する機能を割り当てることが可能な操作
環と、
前記第1の部材と前記第2の部材を互いに固定する固定部材とを有し、
前記第1の部材と前記第2の部材の一方は、前記光学素子の光軸に沿った方向において前記操作
環が配置された位置とは異なる位置に、前記固定部材が挿入され前記固定部材と連結する連結部が形成されており、前記固定部材が前記連結部に
連結することにより生じる応力を吸収することができる変形部を備え、
前記第1の部材と前記第2の部材の他方は、前記固定部材が当接する当接部と、前記連結部と重なる位置に前記固定部材が挿入される挿入孔が形成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記変形部は、長辺が前記光軸に沿った方向、又は前記光軸に垂直な方向に沿って伸びた片持ち梁の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記連結部と螺合することを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の光学装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記光学装置を前記光軸に沿った方向から見たときに前記光学装置の外側から前記第1の部材及び前記第2の部材を互いに固定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第1の部材及び前記第2の部材の外側に配置され、前記当接部と重なる位置に組立孔を備えた外側部材を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
第3の部材と、
前記第2の部材及び前記第3の部材の間に配置され、前記第2の部材及び前記第3の部材に対して回転することで前記光学素子を移動する操作部材を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
撮像装置に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の光学装置と、該光学装置からの光を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及びそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影者が手動で回転させることでピント位置や倍率、更にはFナンバー等の撮影条件を変更可能な、いわゆる操作環が搭載された光学装置(交換レンズ)やそれを用いた撮像装置が一般に知られている。そして、この操作環には単に撮影条件を変更するだけでなく、撮影者の所望の条件に的確に、迅速に回転停止できる機能性と、撮影者が気持ちよく回転操作できる快適性を両立した高品位な操作性が求められる。この操作環の支持方法として、操作環の回転を支持するベース部材と、操作環が光軸方向へずれないように押える押さえ部材の2部品の間で挟持する構造が知られている。
【0003】
特許文献1には、押え部材(止め環)をベース部材(鏡筒本体)にビスで固定する構造が開示されている。また特許文献2には、ベース部材(固定筒)と押え部材(保持環)の光軸方向の抜け防止のためにバヨネット構造が用いられて、バヨネット構造の回転を抑制するための付勢構造(ガタ取り付勢部)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-237595号公報
【文献】特開2017-138449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ビスのみによって押え部材を固定する場合、ビスの締結力によってベース部材が変形し、操作環の操作性が低下するおそれがある。また、特許文献2の構成では、ユーザーが押え部材に過度の力をかけることで押え部材が外れてしまうおそれがある。この対策として、接着剤により押え部材をベース部材に対して固定することが考えられるが、この場合では押え部材の分解が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、分解及び組立が容易であり、かつ操作環の操作性の低下を抑制することができる光学装置及びそれを用いた撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、光学装置は、光学素子と、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置され、前記第1の部材及び前記第2の部材に対して回転可能であり、撮影条件を変更する機能を割り当てることが可能な操作環と、前記第1の部材と前記第2の部材を互いに固定する固定部材とを有し、前記第1の部材と前記第2の部材の一方は、前記光学素子の光軸に沿った方向において前記操作環が配置された位置とは異なる位置に、前記固定部材が挿入され前記固定部材と連結する連結部が形成されており、前記固定部材が前記連結部に連結することにより生じる応力を吸収することができる変形部を備え、前記第1の部材と前記第2の部材の他方は、前記固定部材が当接する当接部と、前記連結部と重なる位置に前記固定部材が挿入される挿入孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
分解及び組立が容易であり、かつ操作環の操作性の低下を抑制することができる光学装置及びそれを用いた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る交換レンズ50の全長が縮んだ状態(TELE)の断面図である。
【
図2】実施例に係る交換レンズ50の全長が伸長した状態(WIDE)の断面図である。
【
図3】実施例の交換レンズ50とカメラ本体70のシステムブロック図である。
【
図4】実施例による交換レンズ50の要部の分解斜視図である。
【
図5】実施例による固定ビス36が締結している場所における断面図である。
【
図6】(A)実施例によるフロントカバー内面の展開図である。(B)変形例によるフロントカバー内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例)
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面の一点鎖線で示される光軸方向において、光学素子であるレンズを備えた光学系を有する交換レンズ50(光学装置)の物体側を前側、カメラ本体70にバヨネット固定される固定側を後側と定義する。
図1、
図2を参照して、本発明の実施例に係る交換レンズ50について説明する。
【0011】
図1は、交換レンズ50の全長が縮んだTELEの状態である交換レンズ50の断面図である。
図2は、交換レンズ50の全長が伸長したWIDEの状態である交換レンズ50の断面図である。光学部材である1群レンズ1は、1群鏡筒2により保持される。1群鏡筒2は、1群調整環3により保持され、1群調整環3は光学調整のために1群鏡筒2を光軸方向と光軸方向に垂直な方向における面上で移動させる。1群鏡筒2と1群調整環3は、1群ベース4により保持される。
【0012】
直進筒5には、被写体側に不図示のフィルタを取り付けるねじ部が形成されている。直進筒5と1群レンズ1は、一体となってズーム作動に伴って進退するが、実施例ではこれらは互いに不図示の別の支持構造によって支持されて移動する。化粧環6には、交換レンズ50のスペック等が印刷されており、化粧環6は、直進筒5にビス固定されると共に外観を成している。
【0013】
2群レンズ7(フォーカスレンズ)は、2群鏡筒8により保持されており、駆動機構(超音波モータユニット30)及び不図示の直進案内機構によって2群鏡筒8が光軸方向に沿って進退可能に支持されると共に移動され、合焦動作が行われる。この直進案内機構はいわゆるガイドバーと呼ばれる光軸方向に伸びた円筒部材を2本使用しており、2本の内の一方が2群鏡筒8の倒れ/偏芯を決め、他方が光軸を中心とした回転位置を決める。そして、2群鏡筒8がガイドバーに沿って進退できるように支持されている。
【0014】
3群レンズ9は、3群鏡筒10により保持されている。4群レンズ11は4群鏡筒12により保持されており、4群鏡筒12は、光軸方向に対して垂直な面上で4群レンズ11を移動させることで、いわゆる手ブレを補正する光学防振機能を果たす。この光学防振機能を生じさせるためのアクチュエータは、いわゆるボイスコイルモータであるが、その構成の詳細説明は割愛する。
【0015】
5群レンズ13は、5群鏡筒14により保持され、6群レンズ15は、6群鏡筒16により保持されている。そして、5群鏡筒14は、6群鏡筒16に不図示のビスで固定されている。以上で述べた各レンズ群は、それぞれが一つのレンズとして構成されるわけではなく、複数のレンズ群によって構成される場合もあるが、説明の便宜上、その詳細を割愛する。
【0016】
光量調節を行う絞りユニット17は、4群鏡筒12に固定されており、複数の遮光羽根を有する。そして、不図示のステッピングモータを駆動源として絞りユニット17の複数の遮光羽根が駆動され、所望のF値にすることが可能である。前述の3群鏡筒10は、4群鏡筒12に一体固定された絞りユニット17と4群鏡筒12に挟まれているが、光軸方向への移動は可能である。
【0017】
所定のフレア光をカットする副絞りユニット18は、4群鏡筒12に支持されており、絞りユニット17と同様に複数の遮光羽根を内部に有する。そして、不図示のメカ連結機構によって副絞りユニット18の複数の遮光羽根が駆動され、TELE~WIDEのズーム位置に対応する開口形状に複数の遮光羽根を変化させることが可能である。
【0018】
案内筒19が備えられ、この案内筒19の外周側に回転可能に係合するカム環20が更に備えられている。そして、物体側に前側固定筒22(第1の部材)、カメラ本体70側に後側固定筒21(第3の部材)が備えられ、前側固定筒22は、後側固定筒21の前側にビスで固定されている。更に後側固定筒21には、案内筒19、外観筒24、マウント25、レンズの駆動用IC、マイコン等が配置されたプリント基板23が固定されている。
【0019】
後側固定筒21にビス固定された外観筒24の外周面には、MF⇔AF切り替えやISモード切り替えをすることができる不図示のスイッチが配置されている。また、後側固定筒21にビス固定されたマウント25には、裏蓋27が固定されており、その内面には有害光をカットする遮光線が配置されている。マウント筒26は、後側固定筒21とマウント25の間に挟まれて固定されており、裏蓋27と同様、その内面には遮光線が配置されている。実施例の交換レンズ50においては、マウント筒26の光軸方向の厚みを加工等によって変化させることで、撮像部78(撮像素子)への合焦位置が調節可能である。接点ブロック28は、不図示の配線(フレキシブル基板など)によってプリント基板23に接続され、マウント25にビス固定される。
【0020】
フォーカス操作環29(外側部材、第2の操作部材)は、前側固定筒22の径方向の外側に配置され、前側固定筒22を軸として定位置に回転可能に支持されている。フォーカス操作環29を回転させると、その回転を不図示のセンサが検出し、回転量に応じて2群鏡筒8を駆動し、2群レンズ7の合焦制御が行われる。
【0021】
超音波モータユニット30は、2群鏡筒8の駆動源であり、圧電素子が発生する超音波振動によって自ら移動することができる。2群鏡筒8と超音波モータユニット30は、不図示の連結機構で係合されており、2群鏡筒8は、超音波モータユニット30と共に移動可能である。2群鏡筒8に取り付けられた不図示の遮光壁は、不図示のフォトインタラプタの遮光/透光を切り替え、この遮光/透光が電気的に検出され、この検出の値に基づいて2群鏡筒8の進退の位置(基準位置)が把握される。この基準位置から2群鏡筒8を所定量移動させることで、所望の合焦位置への移動が可能となる。
【0022】
2群レンズ7の第1のベース31は、前述の直進案内機構を構成するガイドバーの一端を保持する。2群レンズ7の第2のベース32は前述のガイドバーの他端、超音波モータユニット30及びフォトインタラプタを保持する。すなわち、ガイドバーは、第1のベース31と第2のベース32に挟まれて所定の位置に固定されている。
【0023】
ファンクション操作環33(操作部材)は、前側固定筒22を軸として定位置で回転可能に支持されている。フロントカバー34(第2の部材)は、ファンクション操作環33が組込まれた後、その押えとして前側固定筒22に固定部材である固定ビス36でビス固定されている。ファンクション操作環33は、フォーカス操作環29と同様に不図示のセンサでその回転量が検出される。実施例では、この検出された値によって絞りユニット17を制御し、任意のF値に変更することができる。なお、ISO感度やシャッタースピード等、F値とは異なる撮影条件の変更をファンクション操作環33に割り当てることも可能である。
【0024】
フォーカス操作環29の外周面には、固定ビス36を挿入するためのビス通過孔29a(組立孔)が設けられている。実施例の交換レンズ50においては、固定ビス36をビス締めする際に、既にフォーカス操作環29が組込まれている状態である。そのため、フォーカス操作環29に設けられたビス通過孔29aから固定ビス36を挿入できるようにしている。このフロントカバー34の組立方法については、詳細を後述する。
【0025】
ズーム操作環35は、後側固定筒21に回転自在に支持される。スラスト付勢部材である不図示のウェーブワッシャは、ズーム操作環35と後側固定筒21との間に挟持されることにより、ズーム操作環35を光軸方向へ付勢する、スラスト付勢構造を構成している。不図示のPLカバーワッシャは、ウェーブワッシャとズーム操作環35側の面との間に配置されている。
【0026】
ズーム操作環35は、金型により樹脂材料で構成されるため、ズーム操作環35の内周面には、金型成型におけるパーティングライン(以降PLと称す。)が存在する。そのPLで発生する微小な段差やバリがウェーブワッシャと接触しないようにPLカバーワッシャが配置されている。カム環20とズーム操作環35は不図示のズームキーによって連結され、ユーザーがズーム操作環35を回転させると、カム環20が回転する構成となっている。ズーム操作環35は後側固定筒21に対して後述する不図示のバヨネット係合によって光軸方向の位置(スラスト位置)が決められている。
【0027】
次に、各レンズ群の位置調節機構(ズーム動作)について説明する。1群鏡筒2と1群調整環3を保持する1群ベース4、3群鏡筒10、2群鏡筒8や超音波モータユニット30を保持する2群レンズ7の第2のベース32には、不図示のコロが各々配置されており、これらのコロがカム環20に係合する。
【0028】
4群鏡筒12には、前述のとおり光学防振機能を発揮するためのアクチュエータ及び副絞りユニット18が搭載されているが、更に3群鏡筒10より前側に配置された絞りユニット17も搭載されている。そして、4群鏡筒12、5群鏡筒14を保持する6群鏡筒16には、不図示のコロが各々配置されており、これらのコロがカム環20に係合する。
【0029】
これらのコロは、それぞれ異なる軌跡を有するカム環20に設けられた不図示のカム溝と係合している。そして、カム溝は、所望のズーム位置において各レンズ群が光学的に所望のレンズ間隔となるような軌跡となっている。カム環20の光軸周りの回転に伴い、1群ベース4、3群鏡筒10、4群鏡筒12、6群鏡筒16及び第2のベース32を
図1に示す縮んだTELEの位置から
図2に示す伸長したWIDEの位置、更にその間の任意のズーム位置に配置することができる。
【0030】
カム環20の回転は、不図示のセンサによって検出され、プリント基板23に搭載されたICによってその検出された信号から回転量に応じたズーム位置が判断され、ズーム位置に応じたフォーカス、防振、絞りの制御が行われる。
【0031】
実施例の交換レンズ50は、撮像装置であるカメラ本体70にマウント25で着脱可能にバヨネット固定される。カメラ本体70に交換レンズ50がマウント25で固定されると、各レンズ群の動作を制御するプリント基板23は、接点ブロック28を介してカメラ本体70と通信が可能となる。
【0032】
撮像部78は、カメラ本体70に搭載されており、交換レンズ50を通過した被写体からの光を受光し、その光を電気信号に変換するCMOSやCCD等の光-電気変換素子(撮像素子)である。
【0033】
図3は、交換レンズ50及びカメラ本体70におけるカメラシステムの電気的構成を示す。まず、カメラ本体70内部の制御フローについて説明する。カメラCPU71はマイクロコンピュータにより構成される。カメラCPU71は、カメラ本体70内の各部の動作を制御する。また、カメラCPU71は、交換レンズ50の装着時にはレンズ側電気接点52、カメラ側電気接点72を介して、交換レンズ50内に設けられたレンズCPU51との通信を行う。カメラCPU71がレンズCPU51に送信する情報(信号)には、2群レンズ7の駆動量情報、平行振れ情報及びピント振れ情報が含まれる。また、レンズCPU51からカメラCPU71に送信する情報(信号)には、撮像倍率情報が含まれる。なお、レンズ側電気接点52、カメラ側電気接点72には、カメラ本体70から交換レンズ50に電源を供給するための接点が含まれている。
【0034】
電源スイッチ73は、撮影者により操作可能なスイッチであり、カメラCPU71の起動、及びカメラシステム内の各アクチュエータやセンサ等への電源供給の開始をすることができる。レリーズスイッチ74は、撮影者により操作可能なスイッチであり、第1ストロークスイッチSW1と第2ストロークスイッチSW2とを有する。レリーズスイッチ74からの信号は、カメラCPU71に入力される。カメラCPU71は、第1ストロークスイッチSW1からのON信号の入力に応じて、撮影準備状態に入る。撮影準備状態では、測光部75による被写体輝度の測定と、焦点検出部76による焦点検出が行われる。
【0035】
カメラCPU71は、測光部75による測光結果に基づいて絞りユニット17の絞り値や撮像部78の撮像素子の露光量(シャッタ秒時)等を演算する。また、カメラCPU71は、焦点検出部76による撮影光学系の焦点状態の検出結果である焦点情報(デフォーカス量及びデフォーカス方向)に基づいて、被写体に対する合焦状態を得るための2群レンズ7及び2群鏡筒8の駆動量(駆動方向を含む)を決定する。上記駆動量の情報(2群レンズ7の駆動量情報)は、レンズCPU51に送信される。レンズCPU51は、交換レンズ50の各構成部の動作を制御する。
【0036】
更にカメラCPU71は、所定の撮影モードになると、2群鏡筒8のシフト駆動、すなわち防振動作の制御を開始する。第2ストロークスイッチSW2からのON信号が入力されると、カメラCPU71は、レンズCPU51に対して絞り駆動命令を送信し、絞りユニット17を先に演算した絞り値に設定する。また、カメラCPU71は、露光部77に露光開始命令を送信し、不図示のミラーの退避動作や不図示のシャッタの開放動作を行わせ、撮像部78の撮像素子において、被写体像の光電変換、すなわち露光動作を行わせる。
【0037】
撮像部78からの撮像信号は、カメラCPU71内の信号処理部にてデジタル変換され、更に各種補正処理が施されて画像信号として出力される。画像信号(データ)は、画像記録部79において、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体に記録保存される。
【0038】
次に交換レンズ50内部の制御フローについて説明する。MFリング回転検出部53は、フォーカス操作環29の回転を検出し、ZOOMリング回転検出部54は、ズーム操作環35の回転を検出する。
【0039】
IS駆動部55は、防振動作を行う2群鏡筒8の駆動アクチュエータとその駆動回路とを含む。AF駆動部56は、カメラCPU71から送信された2群レンズ7の駆動量情報に応じてAFモータ(超音波モータユニット30)を通じて2群鏡筒8のAF駆動を行う。
【0040】
電磁絞り駆動部57は、カメラCPU71からの絞り駆動命令を受けたレンズCPU51により制御されて、絞りユニット17を指定された絞り値に相当する開口状態に動作させる。
【0041】
角速度センサ58は、交換レンズ50に搭載され、プリント基板23に接続されている。角速度センサ58は、カメラシステムの角度振れである縦(ピッチ方向)振れと横(ヨー方向)振れのそれぞれの角速度を検出し、検出値を角速度信号としてレンズCPU51に出力する。レンズCPU51は、角速度センサ58からのピッチ方向及びヨー方向の角速度信号を電気的又は機械的に積分して、それぞれの方向での変位量であるピッチ方向振れ量及びヨー方向振れ量(これらをまとめて角度振れ量という。)を演算する。
【0042】
レンズCPU51は、上述した角度振れ量と平行振れ量の合成変位量に基づいてIS駆動部55を制御して2群鏡筒8をシフト駆動させ、角度振れ補正及び平行振れ補正を行う。また、レンズCPU51は、ピント振れ量に基づいてAF駆動部56を制御して2群鏡筒8を光軸方向に駆動させ、ピント振れ補正を行う。
【0043】
次に、交換レンズ50の製造における、フォーカス操作環29とファンクション操作環33の組立方法について
図1、
図2及び
図4を用いて組立順に説明する。
図4は交換レンズ50の分解斜視図である。
【0044】
フォーカス操作環29は、前側固定筒22の外周面に設けられた第1の嵌合軸22cに嵌合するように後側固定筒21と前側固定筒22との間に組込まれる。すなわち、フォーカス操作環29は、後側固定筒21と前側固定筒22との間に挟持され、第1の嵌合軸22cを回転軸として定位置回転することができる。
【0045】
フォーカス操作環29が組込まれたあと、ファンクション操作環33が前側固定筒22の外周面に設けられた第2の嵌合軸22dに嵌合するように組込まれる。すなわち、ファンクション操作環33は、第2の嵌合軸22dを回転軸として定位置回転することができる。
【0046】
次に、フロントカバー34が光軸方向に沿って前側固定筒22の内側に配置される。フロントカバー34は、前側固定筒22に対して不図示の構造で位置決めされている。そして、フロントカバー34を固定するために、固定ビス36がフォーカス操作環29に備えられたビス通過孔29aから前側固定筒22の外周面の挿入孔22aへ挿入される。挿入された固定ビス36は、フロントカバー34に備えられた連結部34bに螺合し、固定ビス36のビス頭が前側固定筒22の外周面に設けられた当接面22b(当接部)に当接した状態で、連結部34bに固定ビス36が締結される。この状態で、前側固定筒22に対しフロントカバー34が固定されることになる。
【0047】
操作ゴム37は、前述のフォーカス操作環29及びファンクション操作環33が組込まれた後に、フォーカス操作環29に被せられる。フォーカス操作環29には、固定ビス36を挿入し通過させることができるビス通過孔29aが設けられているが、このビス通過孔29aは操作ゴム37によって覆われてしまうので、交換レンズ50の外観からは見えない。もし、ユーザーが操作ゴム37の上からビス通過孔29aを軽く指で押したとしても、交換レンズ50の性能上の問題はなく、更にビス通過孔29aの存在はほとんど気付かれないであろう。しかしながら、ビス通過孔29aの孔径によっては、ビス通過孔29aの上に薄いシート部材を被せる等の対策をする場合がある。
【0048】
フロントカバー34には、変形可能な変形梁部34a(変形部)が備えられており、その長辺方向である光軸方向の先端に連結部34bが設けられている。そして、変形梁部34aは応力吸収部を構成する。変形梁部34aは、固定ビス36が連結部34bにビス締結される前の状態では、片持ち梁の形状となっており、固定ビス36が連結部34bにビス締結されると、その締結により生ずる応力によって弾性変形する。その仕組みについては、以下、
図5を用いて説明する。
【0049】
図5は、固定ビス36が締結している場所における光軸方向に直交する面の断面図である。実施例の
図5は、ほぼ設計値通りに描かれているため、固定ビス36の下で前側固定筒22と連結部34bにクリアランスは無い。しかしながら、各部品には当然製造誤差があり、固定ビス36が締結される前の状態で、前側固定筒22と連結部34bの間にはクリアランスがある場合がある。
【0050】
もし仮に、変形梁部34aが無い構成で固定ビス36を締結することを想定する。その場合、まず固定ビス36を1か所のみ締めると、前述のクリアランス分、フロントカバー34には、固定力F1が働き、
図5の矢印で示される方向へ引っ張られる。そして2カ所目を締めると固定力F2が働き、3か所目を締めると固定力F3が働き、
図5の矢印で示される方向へそれぞれ引っ張られ、筒形状である前側固定筒22は、この3方向へ膨らむような変形をする。そして、この前側固定筒22が変形すると、第1の嵌合軸22c、第2の嵌合軸22dが変形し、その結果としてフォーカス操作環29やファンクション操作環33の操作性を損なう場合がある。
【0051】
しかしながら、実施例においては、フロントカバー34に変形梁部34aが設けられている。そのため、前述の固定力F1乃至F3により生ずる応力は、変形梁部34aが変形することにより吸収され、筒形状であるフロントカバー34や前側固定筒22の部品全体の変形を極めて少なくすることができる。すなわち、変形梁部34aによって固定ビス36が締結する力による変形を抑制できる構造となっている。ここで、フロントカバー34と前側固定筒22の位置決め部が支点となって、固定ビス36を1か所締結するだけでも第1の嵌合軸22c、第2の嵌合軸22dが変形する可能性があることは言うまでもない。また、フロントカバー34と前側固定筒22を固定する方法として固定ビス36を実施例として挙げているが、例えばモールドや金属のピンで固定しても構わない。固定ビス36以外の部材による固定であっても、フロントカバー34や前側固定筒22を変形させる力が発生する可能性があることは言うまでもない。
【0052】
図6(A)は、実施例における変形梁部34aの配置を示したフロントカバー34の内面の展開図であり、
図6(B)は、変形梁部34aの配置の変形例を示したフロントカバー34の内面の展開図である。
図6(A)に示すとおり、変形梁部34aは、長辺が光軸方向に沿って長い片持ち梁の形状となっている。これは、前側固定筒22の内面には、例えばモールドのための肉抜き等の機能による不図示の凹凸があるため、その凹凸に変形梁部34aが引っかかりにくくするための配置である。もし仮に、フロントカバー34の抜け防止策として固定ビス36以外に、いわゆるバヨネット構造も採用した場合、前側固定筒22に対し、フロントカバー34は相対的に回転して組込まれる。このような構成における変形梁部34aと前述の凹凸との引掛り対策として、
図6(B)に示すように変形梁部34aの長辺を光軸方向に直交する方向に沿って長い片持ち梁の形状(フロントカバー34の周方向に長い形状)としても構わない。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施例及び変形例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本実施例においては、前側固定筒22やフロントカバー34を前提とした構成を説明し、フロントカバー34に応力吸収部の変形梁部34aを備える構成としたが、応力吸収部を前側固定筒22に備えてもよい。また、応力吸収部をフォーカス操作環29、ファンクション操作環33、ズーム操作環35、更にはカメラ本体70に設置された撮影条件を切り替える操作環に適用しても良い。また設計機能を考慮した材質であれば、それを限定するものではない。
【符号の説明】
【0054】
33 ファンクション操作環(操作部材)
34 フロントカバー(第2の部材)
34a 変形梁部(変形部、応力吸収部)
34b 連結部
22 前側固定筒(第1の部材)
36 固定ビス(固定部材)
50 交換レンズ(光学装置)