(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】工具装置及び加工工具の状態を測定するための方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/24 20060101AFI20240124BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240124BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240124BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20240124BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B23Q17/24 Z
B23Q17/09 B
B24B49/12
B24B47/22
G01N21/17 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019208642
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】518144274
【氏名又は名称】アガトン・アクチエンゲゼルシャフト・マシーネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ショルツェ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ヴァイス
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-131552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0258263(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0018907(US,A1)
【文献】特表平11-514940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09,17/24;
B24B 47/22,49/12;
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断、フライス加工、穴あけ、又は研削することによって加工物(4)を加工する工具装置(1)が、加工中の工具装置(1)の状態を検出するセンサ(20)を備え、ここでは工具装置(1)の前記状態が、
前記工具装置の摩耗量と、
前記工具装置の目直し状態と、
潤滑膜の厚みと、
前記加工物と前記工具装置との間の
距離と
の中の一つ又はそれより多くを備え、
前記センサ(20)は、受信したデータを分析する分析ユニット(50)にデータを伝送する受信ユニット(40)に接続可能である、
前記工具装置(1)において
前記センサ(20)が、接続可能な光源(30)から発せられる光線の入射光路(22)と、反射光路(24)とを提供し、光路の長さを測定可能に前記工具装置(1)の、前記加工物との接触表面(14)に配置されている遠位端部を持つ少なくとも1本の光ファイバ(26)を備えるファイバ光学センサ(20)として構成されていて、
前記分析ユニット(50)が、前記工具装置(1)の前記状態を、少なくとも1本の前記光路の長さの関数として決定するように構成されている
ことを特徴とする工具装置(1)。
【請求項2】
前記ファイバ光学センサ(20)が干渉性ファイバ光学センサである、請求項1に記載の工具装置(1)。
【請求項3】
前記干渉性ファイバ光学センサは、単一の光ファイバ(26)又は異なる2本の光ファイバ(26)によって提供される異なる光路(22、24)を伝播する2つの光線間の干渉を用いる、請求項2に記載の工具装置(1)。
【請求項4】
前記干渉性ファイバ光学センサは、低コヒーレンス干渉計センサである、請求項2又は3に記載の工具装置(1)。
【請求項5】
前記工具装置(1)は、前記加工物(4)を研削する研削工具(2)として構成されていて、少なくとも1本の前記光ファイバ(26)の前記遠位端部が前記研削工具(2)の研磨面(14)に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の工具装置(1)。
【請求項6】
前記ファイバ光学センサ(20)は、複数の反射器に反射された2つの光線間の光学的位相差を決定し、1つの反射器は少なくとも1本の前記光ファイバ(26)の前記遠位端部に配置されている、請求項5に記載の工具装置(1)。
【請求項7】
前記ファイバ光学センサ(20)は、複数の反射器に反射された2つの光線間の光学的位相差を決定し、1つの反射器は、加工すべき前記加工物(4)の表面に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の工具装置(1)。
【請求項8】
前記工具装置(1)は、前記加工物(4)を加工する切断工具(3)として構成されていて、前記切断工具(3)はすくい面(72)と、前記すくい面(72)に交差して刃先(70)を画定する少なくとも1つの逃げ面(74)とを備え、少なくとも1本の光ファイバ(26)の前記遠位端部は、前記切断工具(3)の前記刃先(70)に配置されている、請求項7に記載の工具装置(1)。
【請求項9】
少なくとも1本の前記光ファイバ(26)は、前記工具装置(1)に設けられた収容部(16)に埋め込まれ、保持されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の工具装置(1)。
【請求項10】
前記光ファイバ(26)が、1つの物理的ラインに第1の光路及び第2の光路(22、24)を提供する、請求項1から9のいずれか一項に記載の工具装置(1)。
【請求項11】
前記ファイバ光学センサ(20)は、前記光ファイバ(26)の前記遠位端部が工具表面(14)に間隔を開けた領域に位置する異なる複数の前記光ファイバ(26)に光線を分割する、ビームスプリッターを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の工具装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具装置及び機械加工工程中に研削工具及び/又は切削工具などの加工工具の状態を測定可能な方法に関する。本発明は、工具の摩耗を測定することに焦点を当てている。
【背景技術】
【0002】
加工工具を使用するマシニングプロセス(機械加工工程)では、加工物と複数の工具エッジとの間の切断動作のために、常に何らかの摩耗が発生する。特に、機械加工工具は、機械加工作業の生産性及び経済性、並びに機械加工製品の品質に影響を与える。工具の摩耗を測定する自動システムを実装する多くの試みが行われていて、手動検査の必要性を排除し、摩耗測定に使用される時間を最小限に抑えている。工具の状態を監視するために、切削工具、フライス工具、穴あけ工具、研削工具、すなわち交換可能及び/又はインデックス可能なインサートなどの工具の状態を監視するため、そして工具が実際に使用停止する前に工具の寿命を既知として工具交換間隔又は目直し間隔を最適化するべく、工具摩耗を予測するためのいくつかの異なる方法が開発されてきた。特に、工具の摩耗は、切断中又は研削中に工具材料の漸次損失又は漸次変形による、原型からの工具の形状変化として表せる。例えば、切断工具にとって、摩耗は、インサートの主逃げ面と、副逃げ面と、切削面との少なくともいずれかの逃げ面摩耗として知られている。工具状態を監視する方法は、直接型及び非直接型センサに用いられるセンサに応じて分類可能である。
【0003】
幾何学的に画定された刃先を持つ工具の工具摩耗を直接測定するために、視覚センサ及び/又は近接センサ、工具の摩耗面に直接設けられるセンサが含まれる。視覚センサシステムは、カメラにとらえられた、ファイバ光学光線からの摩耗領域の鏡面反射の測定に頼る。それによって、摩耗した領域は、通常、機械加工の研削効果から磨かれていて、摩耗した領域のみにおいて鏡面反射が発生するようになっている。近接センサは、加工物と、切削工具の工具エッジとの間の距離を測定することによって摩耗を推定する。一般的に、工具の摩耗の領域は、実際の機械加工中に可視ではないので、測定は、機械加工間でのみ可能である。
【0004】
さらに、既知のセンサは、外部の測定回路に接続されることによって、閉回路及び/又は開回路を係止するように、刃先を形成する切削材に埋め込まれた導体経路を備える。そのような構成により、導体が摩耗する程度に応じて、導体の抵抗が次第に及び突如変化するので、工具摩耗は、刃先に接続された複数の導体の助けで、連続的に測定可能である。
【0005】
特許文献1は、切削インサートの摩耗のオンライン測定のためのセンサが、センサが外部測定回路に接続可能な接触領域と、自由端で各接触領域に接続されたリードとを備える切削インサートを開示している。自由端は、切削インサートの操作によって引き起こされる所定の摩耗時に、金属加工物又は操作結果のチップによって互いに接続されるように配置される。したがって、切削インサートには開回路の形でのセンサがある。
【0006】
間接センサは、実際の摩耗を直接測定する手段を持たないため、摩耗を推定することのみ可能であるが、摩耗の二次的な影響に依存する。この事実により、最新技術では、刃先又は研磨層の間接的な変数である、いくつかの工程変数を監視する。工程変数は、加工工程の制御のために加工工程を中断することなく、リアルタイムで決定される。力の監視、温度の監視、電力の監視、アコースティックエミッション(音響発信)、光学的観測、走査電子顕微鏡法、流体の流れの監視、そして特に研削工程においては、表面の触覚プロービングと表面の磁気特性とを含む技術が既知である。これらの監視戦略は全て、加工中に少なくとも部分的に使用して、ホイールや工具の劣化を検出可能である。しかし、これら測定の精度は、熱効果と、特に循環クーラントによる接触領域の雰囲気に起因する効果とによって損なわれるという不利な点がある。
【0007】
機械加工工程の下での研削は、特に高精度部品の生産において、最も重要な製造工程の1つである。研削工具の表面の間の相互作用は、研削工程を画定する。そして、研削工具の砥粒の、未画定の刃先が、加工物に同時に接触して、材料の除去が発生する。そこでは、ある砥粒の加工物への嵌入が必要である。研削工程中に、機械的、化学的及び熱的負荷が研削ホイールに加えられて摩耗を引き起こし、大量の摩擦熱が塑性変形、加工物の材料の微細構造及び残留応力状態の望ましくない変化をもたらす。高精度の部品を製造するには、精度と切れ味に関して切削ホイールを最適な状態に保つ必要がある。研削工程の間、研削ホイールは摩耗する。そこでは、摩耗は、外形の変化と、サイズ誤差と、研削位置のずれとにつながり得る巨視的な幾何学形状の劣化として表現される巨視的摩耗と、研削ホイールの微視的トポグラフィにおける粒規模の摩耗に関連する微視的摩耗に分類可能である。従来、研削結果と研削ホイールの状態が、研削工程の完了後、又は生産性を損なう間隔で研削工程中に定期的にチェックされていた。しかし、目直し工程を完了する上で、正確な時点を決定することが依然として未知であることが、精確な解決手段がまだない課題である。
【0008】
研削ホイールの検査は、研削ホイールの研磨層が研削に十分かつ鋭利であることを確認することである。1つの不良領域のみが研削ホイールを役に立たないものとして劣化させる可能性があるので、研磨面全体の調査が必要である。
【0009】
特許文献2から、少なくとも1つの圧電セラミックセンサが埋め込まれている研削ホイールと、研削ホイールに取り付けられ、研削ホイールの状態をリアルタイム分析可能とするため、埋め込まれた各センサによって生成された信号を処理する電子機器を持つ適合ディスクとを備える研削ホイールシステムが既知である。研削ホイールは、研削による火傷の危険性の間接的な測定を可能にするために研削ホイールの周辺近くに配置可能な少なくとも1つの力センサーと、研削ホイールリムの近くに配置可能な音響発信センサとを備えてもよい。異なる位置での力測定を使用してホイール形状を予測すると、異なる研削ホイール位置間の相対的な推定のみが得られ、そしてさらにこの推定は、冷却潤滑剤や不均衡なホイール、そして使用済みの材料と工具の組み合わせの影響を受ける。研削中に変化する力と、工程変数による変化と、研削ホイールの微視的トポグラフィとの間に、直接的な関係は存在しない。使用する音響発信センサは、ノイズの特性的変化に起因して発生し得る摩耗挙動からの間接的信号を送出する。しかし、研究によると、音響発信センサは、目直し時点を決定するのには好ましくない。真円度やホイールのにぶりのような変数に、測定値を関連付ける(マッピング)するために、モデルが使用される。これには、全ての研削構成の較正が必要である。
【0010】
特許文献3から、摩耗と、表面の凹凸、真円度等の研削条件をリアルタイムで監視可能な研削ホイール装置が既知である。研削ホイール装置は、研削ホイール本体と、それに取り付けられた、アコースティックエミッションセンサ(音響発信センサ)と、研削力センサと、レーザ変位センサとに接続されたデータ取得モジュールとを備えている。ここでも、力と音響発信信号とをホイールトポグラフィに関連付けるためのモデルが必要である。未知の特性を備えた多種多様な、加工物と、工具と、機械との組み合わせが使用される産業用アプリケーションでは実行できなくなる。
【0011】
工具の摩耗を測定する自動システムに関連して、光学センサを使用した機械視覚システムに基づく非接触リモートセンシングが、摩耗を直接及び間接的に測定するため使用される。一般に、光学センサは、小さく、軽量で、機械的に柔軟で、低コストのセンサ基材からなることが知られている。ファイバ光学センサを使用するには、センシング情報が符号化されるたため、スペクトル読み出しユニットが必要である。通常、研削加工中に加工物が研削ホイールと冷却潤滑剤で覆われている場合でも、光ファイバが受け取る全放射エネルギに基づいて、加工物及び/又は研削ホイールの温度を測定可能である。しかし、一般に、外部に取り付けられたレーザー変位センサの不利な点は、冷却潤滑剤の影響が大きいことと、機械の熱的及び機械的偏差がレーザーセンサとホイール又は工具との間の変位を引き起こすことである。
【0012】
さまざまな技術分野でさまざまな検知方法が開発されていて、光ファイバは光ファイバ干渉計を含む検出機能を提供する。非接触光学センシング技術として低コヒーレンス干渉計が知られている。例えば、ファブリ・ペロー干渉計は、鏡のような光学的に平行な2つの反射器、又は間隙で分離された2つの誘電体の界面で構成され、多重反射により、反射スペクトルと透過スペクトルとは、間隙長及びその他の変数の関数である。光ファイバの線形特性、干渉計の高感度により検出可能であって、特に、磨かれた端部を反射器とみてもよい光ファイバの長さは、そのように検出可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第3106260号明細書
【文献】米国特許第6602109号明細書
【文献】中国特許第105345663号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行技術に基づいて、本発明の目的は、低価格の要素をもって、研削ホイール等の加工工具及び/又はインサート等の切断工具の、機械加工工程中の検査が統合された信頼できる工程を可能にする装置及び方法を提供することである。さらに、装置及び方法は、巨視的及び微視的摩耗のような工程の変数を信頼可能に測定及び決定するためと、加工速度のような工程の変数を設定するためインサート及び/又は研削ホイールのような機械加工工具の加工物への初めの使用を認識するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、請求項1及び12に記載の工具装置及び方法によって達成される。
【0016】
工具装置及び方法の有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0017】
提案される解決手段の必須の事項は、切断、フライス加工、穴あけ、又は研削することによって加工物を加工する工具装置であって、工具装置は、加工中の工具装置の状態を検出するセンサを備え、センサは、受信したデータを分析する分析ユニットにデータを伝送する受信ユニットに接続可能である。センサが、接続可能な光源から発せられる光線の入射光路と、反射光路とを提供し、光路長を測定可能に、工具装置の表面に配置されている遠位端部を持つ少なくとも1本の光学ファイバを備えるファイバ光学センサとして構成されている。光路長の測定は、光路長の変化の確定も含む。
【0018】
一実施の態様において、ファイバ光学センサは干渉性ファイバ光学センサである。干渉性ファイバ光学センサは、単一の光ファイバ又は異なる2本の光ファイバによって提供される異なる光路を伝播する2つの光線間の干渉を用いる。光ファイバを持つそのような干渉計ファイバ光学センサは、多重化と、機械的柔軟性と、低コストセンサ基本材料といった有利点を提供する。光ファイバは、その良好な導光性と、高感度と、低製造コストと、形状要因が小さなことと、高精度といった他の独自の特性とにより広く採用されてきた。
【0019】
干渉光の現象は、ビームスプリット部品とビームコンバイン部品とが必要な高精度の測定に使用可能である。光源から発せられた光線は光ファイバによって伝送され、ここでは光ファイバは光信号を伝送するのみならずセンシング要素として使用される。干渉計は、多くの情報を信号として提供する。測定は、波長と、位相と、強度と、周波数と、周波数帯との少なくともいずれかにおける変化を検出する多様な手段による定量的決定を備えてもよい。
【0020】
一実施の態様において、ファイバ光学センサは、物理的性質を測定するか、又はファイバ光学部材を使用するセンシングシステムを介して変化を検出する干渉を用いる干渉性ファイバ光学センサである。典型的な干渉性ファイバ光学センサでは、光は少なくとも2つの部分に分割され、光の少なくとも1部分は、測定が意図される数量又は物理効果と、相互作用する。測定量の結果の相互作用は、変調された光が基準光と相互作用する場合、検出可能な光の位相シフト又は変調における結果となる。マイケルソン干渉計と、ファブリ・ペロー干渉計と、低コヒーレンス干渉計とのように、反射器と、スプリッタとの少なくともいずれかによる干渉を生成するのに使用されるさまざまな干渉計が既知である。
【0021】
ファイバ光学干渉計センサは、多くの構成を取り得る。ある構成においては、測定値についての全情報が測定信号スペクトラムの周波数成分に引き起こされるので、ファイバ光学センサを伝送システムの光学信号強度の変化に非感知とするファブリ・ペロー干渉計を有する。ファブリ・ペロー干渉計(FBI)センサは、外因性型と内因性型とに分類可能である。外因性FBIセンサは、対象のファイバで形成された外部間隙の反射を使用し、内因性FBIセンサは、ファイバ自体に反射部品を持つ。ファブリ・ペロー干渉計の反射又は透過スペクトルは、主に2つの反射光線又は透過光線間の光学位相差によって引き起こされる、入力光スペクトルの波長依存強度変調として説明可能である。位相差は、干渉計の光路長差の変動に影響される。本発明によれば、ファブリ・ペロー干渉計センサとして設計されたファイバ光学センサは、既知の手段及び方法によってファイバ内に形成された反射器と、対象ファイバの遠位端によって提供される反射器とを有する。反射器間の物理的長さの変化は位相の変化をもたらし、ファブリ・ペロー干渉計の波長スペクトルのシフトを測定することにより、工具装置の接触領域の摩耗の程度を決定するための定量的測定が得られる。機械加工工程中に、切削工具や研削ホイールのような工具装置と加工物との間の急速な接触により、インタフェース(遠位端の疑似区域)を干渉計、特にファブリ・ペロー干渉計の意味で反射器とみなせるように、接触領域に埋め込まれた光ファイバの遠位端の疑似区域が生成される。計算された光ファイバの長さの変化量に応じて、接触面の摩耗、特に研削ホイールの研磨層の厚さを測定可能であるか、又は切刃の変化を決定可能である。
【0022】
干渉性ファイバ光学センサの好ましい一実施の態様は、光線を2つの部分に分割する光結合器に供給される低コヒーレンス光線を使用する低コヒーレンス干渉計に基づいていて、分割された光線の一方は工具表面に向けられ、他方は走査基準鏡に向けられる。反射光線のとらえられた干渉は、工具表面での反射点の正確な位置の決定に使用されてもよい。
【0023】
反射光又は透過光を受信する受信ユニットが提供され、分析ユニットが干渉応答の強度に基づいて光ファイバの長さの変化量を決定し、結果を制御ユニットに送信する。受信ユニットは、分析ユニットと同様に回転工具に設けてもよく、制御ユニットは回転機械部品から離れている。代替的に、受信ユニットと、分析ユニットと、制御ユニットとは機械の非回転部分に設けられ、光信号を送信するために、光線を受信ユニットに導くためのロータリージョイント部が設けられている。
【0024】
受信ユニットから機械の分析ユニットへの信号の送信は、無線で行ってもよく、そこからデータがさらなる処理のために提供される。動く部分、特に回転する研削ホイール又は回転する切削工具と、機械の静止している部分との間での、対応する無線伝送方法は、当該技術で既知である。この目的のために、フォトセンシティブセンサによる伝送又は周動接触による伝送が、適用可能である。
【0025】
工具装置は、幾何学的に画定された刃先を持つ切削工具と、例えば、幾何学的に画定されていない刃先を持つ研削工具であり得る。幾何学的に画定された刃先の場合、工具装置、特に、切削工具又はインサートは、基体と、すくい面と逃げ面との間の交差するところで画定される少なくとも1つの刃先とを備える。幾何学的に画定されない刃先の場合、工具装置は、特に、研削ホイールは、基体と、基体に設けられた研磨層とを備える。1本又はそれ以上の光ファイバが、基体と一体に製造されているか、又は基体に取り付けられている。1本又はそれ以上の光ファイバの遠位端部は、発せられた光線と受け取られた光線との干渉を測定することで工具装置の状態を決定可能に工具装置の表面に設けられている。一実施の態様では、1本又はそれ以上の光ファイバの遠位端部は、工具装置と加工物の接触領域に設けられていて、特に、研削工具の研磨層又は工具装置の、切削工具の刃先を画定する一面に、設けられている。
【0026】
光ファイバは、工具に設けられた収容部において、工具の基体に埋め込まれているか、又は取り付けられている。さらに、光ファイバは、工具の表面の範囲いっぱいに延在し、特に、研削工具の場合、研磨面は、例えば、炭化シリコン、酸化アルミ、立方晶窒化ホウ素(CBN)、又はダイヤモンドの砥粒からなり、金属、ガラス状(ビトリファイド)、樹脂又はハイブリッド材の結着材に埋め込まれている。研磨面の形状は、研磨の実施態様に依存し、円筒形又は平面のようにさまざまな形状を取りうる。研削ホイールの表面が歯車研削のような完成した加工物の刻印である特別な研削作業のために、研削工具の研磨面の外形をより精巧にすることがある。好ましい一実施形態のように、光ファイバが操作中に破損しないように、光ファイバの剛性は、周囲の材料の剛性より低くされる。
【0027】
光ファイバの開口数と寸法によって制限された解像度で局所領域を見られるファイバ光学センサを使用するため、研削ホイールの研磨面の大部分又は切削工具の刃先を決定するために、いくつかの光ファイバが、好ましくは提供される。研削ホイール又は刃先の状態のデータを受信するために、複数の光ファイバは、接触範囲にわたって分配されて、設けられてもよい。一実施形態では、光源から発せられた光線が、単一の光ファイバで伝送されて、各光路が工具装置の表面に遠位端を持つ複数の光路に分割されるようにしてもよい。ファイバ光学センサは、その遠位端が工具装置の加工物との接触面に配置されるように、そして、実質的に研削ホイールの表面領域全体から、又は刃先領域全体から、研削ホイール又は切削工具の状態、特に研磨層の厚み又は刃先の状態についての情報が生成可能に位置するように、構成してもよい。
【0028】
幾何学的に定義されていない切刃を持つ研削工程に関連して、研削工具の摩耗は研磨面全体で一定ではないが、摩耗は、摩耗の複雑さとそれに対応する機構により、また、工程の動的及びトライボロジーの観点からも、変化する。本発明によれば、研削工具は研削ホイールとしてもよく、本明細書では両方とも同じ意味で使用される。ホイール状態の正確な判断のためには、モデルによって予測又は生成されるよりも、ホイール外形を測定することが望ましい。研削ホイールに直接配置されたファイバ光学センサの使用により、研削工程中の研磨層の厚さの変化を接触領域において直接、監視可能となる。本発明の一実施形態では、工具装置は、研磨層に、互いに垂直に配置された光ファイバの少なくとも4つの遠位端を有するカップ形状の研削ホイールである。工具の外形を測定する光ファイバを使用し、光ファイバの遠位端は接触領域に配置されている。そのため、光ファイバの遠位端の数と位置は、さまざまな変形があり得る。例えば、研削工具の研磨面のいくつかの領域では、複数の光ファイバ遠位端が別の遠位端の近くに配置され、他の領域では、1つの光ファイバ遠位端のみが設けられる。
【0029】
さらに、本発明の方法は、例えば研削性能など、機械加工操作に関連し得る多数の工程及び状態変数の検出の可能性を持つ。この方法を使用して、工具装置の表面の摩耗量、工具装置のドレッシング(目直し)状態、潤滑膜の厚さ、加工物と工具装置間の距離、及び/又は工具装置のビルドアップエッジ(ビルドアップ式カッター)を決定できる。例えば、ビルドアップエッジは、工具の形状とすくい面の傾斜が変化する、切削工具のすくい面に対する材料の蓄積とみなしてもよい。ファイバ光学センサの利点は、サイズが小さいことと、測定点で電気的要件がないことと、一定の安定性とにある。光ファイバの感度は、ファイバの長さにわたって忠実度を損なうことなく伝送可能な対象の波長号化品質に基づく。したがって、熱の発生、温度及び冷却層のようなさまざまな情報が直接的かつ正確に記録される複数の光ファイバが埋め込まれた工具装置は、システムの提供に使用可能である。
【0030】
研削ホイール又は切削工具のような工具装置の位置決めには、加工物との接触の瞬間の検出が含まれる。従来、研削工程では、研削ホイールの砥粒と加工物の表面との接触を検出可能な音響発信センサが採用されてきた。本発明によれば、研削ホイール又は切削工具のような工具装置と加工物との最初の接触を判定するために、ファイバ光学センサを設けてもよい。第1の切断の検出のために、工具と加工物との間の表面反射の差が使用される。さらに、機械加工工程の間、工具装置の位置は、同様にファイバ光学センサを介して決定可能な係合の永久的な重ね合わせを提供するよう適合される。
【0031】
特定の製品品質フレームを維持しながら生産率を最大化し、同時に生産のコストと時間を削減することを目的とするには、工具装置のドレッシングに有用な少なくとも情報を生成すべく、研削ホール又は切削工具のような実際の工具の外形を測定し分析しなければならない。本発明による一実施形態では、埋め込まれたファイバ光学センサを備える研削ホイールは、研削機に関連する異なりかつ独立した複数センサの複雑なシステムなしで、最適な研削条件の下で研削を提供する。
【0032】
研削工程の研削工具の摩耗を定量的に説明するための典型的かつ重要な変数は、研削比である。これは、除去された加工物材料の体積比と、消費される研削工具の体積、特に研磨摩耗の体積とを関連付ける。例えば、研削比は、非線形関数により研削ホイールのホイール速度に依存する。研削比の最適化のために、研削工具又は研削ホイールの摩耗がリアルタイムで決定されるため、本発明による光学センサを使用可能である。
【0033】
本発明の好ましい一実施態様による研削ホイールは、研削ホイールの状態がさらなるドレッシング、研磨及び/又は洗浄できない状態ならば、交換可能である。ファイバ光学センサが低コストセンサ基材を備えるので、そのようなファイバ光学センサを持つ研削ホイールの全体費用は、従来使用されてきた研削ホイールほどにかさまない。研削ホイールは、電気モータによって回転駆動するカップ形状の研削ホイールとして構成してもよい。カップ状の研削ホイールは、異なる向きに配向された研磨面を有する研磨リングが配置されている研削ホイールカップで構成される。
【0034】
本発明による工具装置及び本発明による方法は、以下、添付の図面を参照し、例として、より細部を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明による工具装置の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明による工具装置の別の実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明による工具装置の別の実施形態としてのカップ形状の研削ホイールの正面図である。
【
図4】
図4は、本発明による工具装置の別の実施形態としてのカップ形状の研削ホイールの正面図である。
【
図5】
図5は、第1の切断を検出するための
図1による工具装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1では、工具装置1を断面で見られ、加工物4も見られる。
図1に示されているのは、基体10と、砥粒が埋め込まれた化合物からなる研磨層12とを備える研削ホイール2のような研削工具2である。この化合物は結合材料であり、例えば金属合金、合成樹脂又はセラミックからなる。この結合材料に既知の方法で埋め込まれているのは、ダイヤモンド又は他の対応する適切な材料でできている砥粒である。
図1にみられるように、基部体10に埋め込まれているのは、2つの光学経路、特に、第1の光学経路22と第2の光学経路24とを、好ましくは、光源30から発せられた光線を導くファイバ26と称する1つの物理ラインに2つの光学経路を提供する、インライン構造として、提供するファイバ光学センサ20である。ファイバ光学センサ20は、低価格の基材から、典型的にはシリカから製造され、厳しい条件で使用可能である。ポリマーファイバ光学センサのような、さらなる発展態様が公知である。ファイバ光学干渉計の、ビームスプリッター及びビームコンバイナーのような光学要素に基づくファイバ光学センサ20を小型化するために、小型ファイバ装置が使用されて、ファイバ光学センサ20のファイバの大きさでの操作を可能にする。第1及び第2の光路22、24は、基体10及び研磨層12に設けられた収容部16に配置してもよく、それにより、第1及び第2の光路22、24のそれぞれの遠位端は、研磨層12の表面、特に、工具表面14にあり、加工すべき加工物4への接触面を提供する。
【0037】
本発明によれば、光ファイバセンサ20は、干渉計、好ましくは低コヒーレンス干渉計を備える、低コヒーレンス干渉計に基づいている。光源30からの光線は、光線を、一方の光路は工具表面14に向けられ、もう一方の光路が基準面に向けられる、2つの光路に分割する光学結合器32に供給される。それら2つの光路の背後で反射された光線の干渉が、例えば検出器で捉えられて、分析ユニット50で分析される。干渉計は、内部反射器からと、ファイバ26の遠位端部からとの反射を用いる。工具装置1の高性能に応じて、ファイバ26の加工された面を、干渉計の反射鏡のような反射器として使用してもよい。
【0038】
機械加工工程中、工具装置1は、機械的、物理的、科学的影響により摩耗し、工具装置1の機械加工性能が低下する。
図1に示すように、機械加工工程中、特に研削ホイール2の研削工程では、工具表面14と同様にファイバ光学センサ20もまた、機械的、物理的、科学的影響にさらされ、ファイバ26の長さ又は光路長が変化する。このため、関連する受信ユニット40が、ファイバ光学センサ20、すなわち、検出器によって集められた研削ホイール2の表面の外形データを受け取り、制御ユニット60に接続されている分析ユニット50に外形データを送る。
【0039】
図2は、工具装置1の別の実施形態を示している。示されているのは、切削インサートのような切削工具3である。切削工具3は基体10を持ち、加工物4での切削工具3の操作により生じる切削インサートの摩耗を検出するファイバ光学センサ20を備える。そこでは、ファイバ光学センサ20は、第1の光路22と、第2の光路24とを提供するファイバ26を備える。工具装置1は、切削工具3のすくい面72と逃げ面74とが交差するところによって画定される刃先70を備える。
図2に示すように、ファイバ光学センサ20は、切削工具3の基体10に設けられた収容部26に収容され、適切な方法で固定されている。一実施の態様において、ファイバ光学センサ20のファイバ26は、逃げ面74の平面に存在する、提供された光路22、24の遠位端を備える。矢印で示すように、光線は、ファイバ26の遠位端から出るものと入るものとがある。図示の実施の態様によると、ファイバ光学センサ20は、外側の隙間、特に逃げ面74と、加工すべき加工物4の表面とからなる隙間からの反射を例とする、反射モードの干渉計を使う低コヒーレンス干渉計センサである。この空隙は刃先70によって画定されるので、測定されるべき位相の異なる値になる、空間の物理長さの変化の結果から、刃先70の摩耗を決めるのに使用してもよい。
【0040】
図3に示すのは、カップ形状の研削ホイール2の正面図である。研削ホイール2は、一般的には、環状研磨面82と横方向領域(図示せず)の形状の研磨面とを持つ研磨リング80が配置されている研削カップを備える。研磨層が研磨に十分な状態にあるか否かを決定するのに使用されるべく、研削ホイール2の摩耗、特に環状研磨面82の摩耗を判定するには、全体的な研磨面又は研磨領域の少なくともいくつかの状態についての情報を持つことが好ましい。よって、1つより多いファイバ光学センサ20が研磨面82の状態検出に使用されてもよい。本発明の好ましい一実施の態様では、少なくとも4つのファイバ光学センサ20が、所定の位置に配置されて設けられる。
【0041】
図4では、カップ形状の研削ホイール2の詳細な正面図が示される。研削工程中、研削ホイールにかかる荷重が摩耗を招く。ここでは、巨視的な摩耗が、半径方向の摩耗と、刃先の摩耗とを備える巨視的な形状寸法の劣化に関連し、横断面の変化と、寸法誤差と、不正確さとにつながる。研削ホイール2の凹凸を決定するには、複数のファイバ光学センサ20が、カップ形状の研削ホイール2の研磨面82に設けられる。特に、半径方向の摩耗と、刃先摩耗も決定可能となるように、複数のファイバ光学センサ20が研磨面82の領域に配置される。取得された横断データは、研削ホイール2の凹凸に影響する研削ホイールの巨視的及び微視的形状の、用意及び再生の工程の調節において、重要である。
【0042】
図5にみられるように、工具装置1は、機械加工工程に関連するさらに他の変数を決定すべく構成される。一例として、互いに関して正しい位置を確実にするため、及び初めての研削具合を検出するため、研削操作の開始前に、ファイバ光学センサ20は、工具装置1の表面、特に、研削工具2、特に研削ホイール2の研磨層12の研磨面14と、加工物4との間の距離の決定に使用されてもよい。