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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】柱脚金物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240124BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019218128
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088821
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 大致
(72)【発明者】
【氏名】赤池 弘也
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035313(JP,A)
【文献】特開平07-102639(JP,A)
【文献】特開2019-044391(JP,A)
【文献】特開平06-193144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0048471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートの上にモルタル層を介して立設される柱部材の下端部に一体的に設けられ、前記基礎コンクリートの内部に埋設されたアンカーボルトの上端部が結合される柱脚金物であって、
前記柱脚金物は、所定の厚さ寸法を有する板状に形成されると共に、
前記柱脚金物を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔と、前記柱脚金物の上面側の空間と下面側の空間を連通するモルタル注入経路がそれぞれ形成され、
前記ボルト挿通孔の上端部には、前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトが挿通されてその上端部にナットがネジ締結された状態で、前記モルタル注入経路とは別の位置にあって、前記ボルト通孔の内部空間と前記柱脚金物の上面側の空間を連通するようなモルタル噴出経路が形成され
モルタルを注入する入口、及び、前記モルタルの噴出口は、共に、前記柱脚金物の上面に露出して形成されている、
ことを特徴とする柱脚金物。
【請求項2】
前記モルタル噴出経路は、前記柱脚金物の厚さ方向に所定の深さを有し、断面形状が上方に開口する溝状に形成されると共に、前記ボルト挿通孔の内周面から半径方向の外側に向けて細長く伸びように形成され、
前記モルタル噴出経路の一方の先端部が前記ボルト挿通孔の内側面に開口し、
前記モルタル噴出経路の他方の先端部が、前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトが挿通されてその上端部に前記ナットがネジ締結された状態で、前記ナット又はその座金の外形部より外側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の柱脚金物。
【請求項3】
前記モルタル注入経路は、前記柱脚金物を厚さ方向に貫通する孔であり、前記モルタル注入経路と前記モルタル噴出経路が、前記柱脚金物の下面側の空間を介して連通す
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の柱脚金物。
【請求項4】
前記モルタル注入経路は、前記柱脚金物の周縁部の一部分が、前記柱脚金物の中央に向かって凹むように形成された凹部であり、前記モルタル注入経路と前記モルタル噴出経路が、前記柱脚金物の下面側の空間を介して連通す
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の柱脚金物。
【請求項5】
前記モルタル注入経路は、前記柱脚金物の四隅部を斜めに切り落としたように形成され、前記モルタル注入経路と前記モルタル噴出経路が、前記柱脚金物の下面側の空間を介して連通する
ことを特徴とする請求項4に記載の柱脚金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の一部を構成する柱部材を基礎コンクリートの上に立設するために用いられる柱脚金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
S造やSRC造等の建築構造物においては、角型鋼管や円形鋼管等によって構成された柱部材を基礎コンクリートの上に立設するために、柱部材の下端部に溶接等により固定された柱脚金物に、基礎コンクリート内部に埋設されたアンカーボルトの上端部が結合されるような柱脚構造が知られていた(例えば特許文献1の図4参照)。
【0003】
図8ないし図12は、従来の柱脚金物4について説明するために参照する図である。
【0004】
従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2は、図8に示すように、基礎コンクリート3の上に立設された柱部材5と、柱部材5の下端部に一体的に設けられた柱脚金物4と、基礎コンクリート3の内部に埋設されて、その上端部が柱脚金物4に結合された複数のアンカーボルト8を備えていた。
【0005】
従来の柱脚金物4は、図9に示すように、所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略正方形の板状に形成され、その四隅部の近傍には、柱脚金物4を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔4aが、それぞれの四隅部に1つずつ形成されていた。
【0006】
そして、図8に示すように、そのような柱脚金物4が、溶接等により柱部材5の下端部に一体的に固定されると共に、柱脚金物4が一体的に固定された柱部材5が、柱脚金物4の下面と基礎コンクリート3の上面の間に形成されたモルタル層6を介して、基礎コンクリート3の上に立設されていた。
【0007】
一方、基礎コンクリート3の内部には、図8に示すように、複数のアンカーボルト8が埋設されており、これらのアンカーボルト8の上端部が、モルタル層6を貫いて柱脚金物4に形成されたボルト挿通孔4aに緩く挿通され、柱脚金物4の上面より上方に突出するアンカーボルト8の上端部のオネジ部に、ナット10がネジ締結されていた。
【0008】
このような柱脚金物4を用いた柱脚構造2を用いることにより、建築構造物の柱部材の柱脚部に地震等による外力が作用した場合に、建築構造物の柱部材が傾いたり転倒したりすることを防止できるようになっていた。
【0009】
すなわち、図8に示すように、地震等によって、柱部材5の柱脚部に曲げモーメントMが作用した場合、図中左側のアンカーボルト8に生じる引張力Tや、柱脚金物4の下面の図中右側にモルタル層6を介して生じる基礎コンクリート3からの圧縮力Cによって、柱部材5の柱脚部に、曲げモーメントMに抵抗するような曲げモーメントが作用するようになっていた。
【0010】
このような柱脚金物4を用いた柱脚構造2を構築するには、まず、図10(a)に示すように、複数のアンカーボルト8を、それぞれの長さ部分がコンクリート内部に上下方向に伸び、それぞれの上端部がコンクリート上面から上方に突出するように配置して生コンクリートを打設し、打設した生コンクリートを一定期間養生させて十分に硬化させて基礎コンクリート3を形成する。
【0011】
そして、図10(b)に示すように、下端部に柱脚金物4が一体的に固定された柱部材5を、基礎コンクリート3の上に鉛直方向(図中上下方向)に伸びるように立設し、柱部材5の下端部に固定された柱脚金物4に形成されたボルト挿通孔4aにアンカーボルト8の上端部を挿通し、柱脚金物4の上面より上方に突出するアンカーボルト8の上端部のオネジ部にナット10をネジ締結する。
【0012】
このとき、基礎コンクリート3の上面に多少の凹凸があったとしても、その上に立設される柱部材5の水平や高さ位置を正確に合わせることができるようにするために、基礎コンクリート3の上面に部分モルタル6aを形成し、その部分モルタル6aの上に、柱部材5の下端部に固定された柱脚金物4が載置されるようにしていた。
【0013】
そして、図11(a)に示すように、基礎コンクリート3の上に、柱部材5の下端部に固定された柱脚金物4の周囲を囲むように型枠7を設置する。
【0014】
このとき、型枠7の平面形状が柱脚金物4の平面形状より大きくなるように形成し、それにより、型枠7と柱脚金物4の外周部の間に隙間が形成されるようにしていた。
【0015】
そして、図11(b)に示すように、この隙間から、モルタル層6を形成するためのモルタル6bを注入して、柱脚金物4と基礎コンクリート3の間に隙間なく充填する。
【0016】
そして、注入したモルタル6bを一定期間養生させて十分に硬化させてモルタル層6を形成した後、型枠7を取り除くことにより、図8に示す柱脚構造2が構築されるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2000-319990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述したような従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2では、柱脚金物4のボルト挿通孔4aの内側にモルタルが隙間なく充填されたことを確認することができないという問題があった。
【0019】
すなわち、従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2においては、柱部材5の柱脚部に作用する外力が基礎コンクリート3へ確実に伝達されるようにするために、柱脚金物4と基礎コンクリート3の間の隙間の隅々にまでモルタルを充填し、それにより、柱脚金物4と基礎コンクリート3を確実に密着させる必要があった。
【0020】
その一方で、図12に示すように、従来の柱脚金物4はそのボルト挿通孔4aの内径がアンカーボルト8の上端部の外径より大きく形成されているため、従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2においては、ボルト挿通孔4aの内周面とそこに挿通されたアンカーボルト8の外周面の間には隙間が形成されるようになっていた。
【0021】
そして、ボルト挿通孔4aのアンカーボルト8の間に隙間が形成されていると、柱部材5の柱脚部に作用する剪断方向(図8中左右方向又は図の紙面に垂直方向)の力が、基礎コンクリート3に伝達されないため、アンカーボルト耐力を剪断耐力に見込むことが出来なかった。
【0022】
そのため、従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2を構築する際には、モルタル層6を形成するために注入したモルタルが、柱脚金物4の下側だけでなく、ボルト挿通孔4aとアンカーボルト8の間の隙間にも充填される必要があった。
【0023】
ところが、図12に示すように、従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2においては、ボルト挿通孔4aの上端部の開口部は、そのボルト挿通孔4aに挿通されたアンカーボルト8の上端部のオネジ部にネジ締結されたナット10やその座金10aによって閉塞されるようになっているため、ボルト挿通孔4aの上端部まで隙間なくモルタルが充填されたことを確認することができなかった。
【0024】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、ボルト挿通孔の内側にモルタルが隙間なく充填されたことを容易に確認することができる柱脚金物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の柱脚金物は、上記課題を解決するために、
基礎コンクリートの上にモルタル層を介して立設される柱部材の下端部に一体的に設けられ、前記基礎コンクリートの内部に埋設されたアンカーボルトの上端部が結合される柱脚金物であって、
前記柱脚金物は、所定の厚さ寸法を有する板状に形成されると共に、
前記柱脚金物を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔と、前記柱脚金物の上面側の空間と下面側の空間を連通するモルタル注入経路がそれぞれ形成され、
前記ボルト挿通孔の上端部には、前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトが挿通されてその上端部にナットがネジ締結された状態で、前記モルタル注入経路とは別の位置にあって、前記ボルト通孔の内部空間と前記柱脚金物の上面側の空間を連通するようなモルタル噴出経路が形成され
モルタルを注入する入口、及び、前記モルタルの噴出口は、共に、前記柱脚金物の上面に露出して形成されている、
ことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明による柱脚金物は、
前記モルタル噴出経路は、前記柱脚金物の厚さ方向に所定の深さを有し、断面形状が上方に開口する溝状に形成されると共に、前記ボルト挿通孔の内周面から半径方向の外側に向けて細長く伸びように形成され、
前記モルタル噴出経路の一方の先端部が前記ボルト挿通孔の内側面に開口し、
前記モルタル噴出経路の他方の先端部が、前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトが挿通されてその上端部に前記ナットがネジ締結された状態で、前記ナット又はその座金の外形部より外側に位置する
ことを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明による柱脚金物は、
前記モルタル注入経路は、前記柱脚金物を厚さ方向に貫通する孔である
ことを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明による柱脚金物は、
前記モルタル注入経路は、前記柱脚金物の周縁部の一部分が、前記柱脚金物の中央に向かって凹むように形成された凹部である
ことを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明による柱脚金物は、
前記モルタル注入経路は、前記柱脚金物の四隅部を斜めに切り落としたように形成された
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
このような本発明の柱脚金物によれば、
基礎コンクリートの上にモルタル層を介して立設される柱部材の下端部に一体的に設けられ、前記基礎コンクリートの内部に埋設されたアンカーボルトの上端部が結合される柱脚金物であって、
前記柱脚金物は、所定の厚さ寸法を有する板状に形成されると共に、
前記柱脚金物を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔と、前記柱脚金物の上面側の空間と下面側の空間を連通するモルタル注入経路がそれぞれ形成され、
前記ボルト挿通孔の上端部には、前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトが挿通されてその上端部にナットがネジ締結された状態で、前記モルタル注入経路とは別の位置にあって、前記ボルト通孔の内部空間と前記柱脚金物の上面側の空間を連通するようなモルタル噴出経路が形成され、モルタルを注入する入口、及び、前記モルタルの噴出口は、共に、前記柱脚金物の上面に露出して形成されている、ことにより、
ボルト挿通孔の内側にモルタルが隙間なく充填されたことを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る柱脚金物14を用いた柱脚構造12を示す概略側面図である。
図2】柱脚金物14を示す図であって、図2(a)はその平面図であり、図2(b)はその側面図である。
図3】柱脚金物14の一部を拡大して示す図であって、図3(a)は柱脚金物14のボルト挿通孔14aの周辺の拡大平面図であり、図3(b)は図3(a)におけるA-A線矢視拡大断面図であり、図3(c)は図3(a)におけるB-B線矢視拡大断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る柱脚金物14を用いて、図1に示す柱脚構造12を構築する手順を説明するための概略側面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る柱脚金物14を用いて、図1に示す柱脚構造12を構築する手順を説明するための概略側面図である。
図6図1に示す柱脚構造12における、柱脚金物14とアンカーボルト8の連結部を拡大して示す図であって、図6(a)はその概略拡大断面図であり、図6(b)はその拡大平面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る柱脚金物24を示す図であって、図7(a)はその平面図であり、図7(b)はその側面図である。
図8】従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2を示す概略側面図である。
図9】従来の柱脚金物4を示す図であって、図9(a)はその平面図であり、図9(b)はその側面図である。
図10】従来の柱脚金物4を用いた、図8に示す柱脚構造2を構築する手順を説明するための概略側面図である。
図11】従来の柱脚金物4を用いた、図8に示す柱脚構造2を構築する手順を説明するための概略側面図である。
図12】柱脚構造2における、柱脚金物4とアンカーボルト8の連結部を拡大してその断面を示す概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る柱脚金物を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。なお、図8ないし図12に示した従来の柱脚金物4、及びこれを用いた柱脚構造2と同様の部分には、一部を除き同じ符号を付して説明するものとする。
【0033】
図1ないし図6は、本発明の第1の実施の形態に係る柱脚金物14について説明するために参照する図である。
【0034】
本実施の形態に係る柱脚金物14を用いた柱脚構造12は、図1に示すように、基礎コンクリート3の上に立設された柱部材15と、柱部材15の下端部に一体的に設けられた柱脚金物14と、基礎コンクリート3の内部に埋設されて、その上端部が柱脚金物14に結合された複数のアンカーボルト8を備えている。
【0035】
柱部材15は、水平断面形状が略正方形の角筒状に形成された角型鋼管であって、基礎コンクリート3の上に鉛直方向(図1中上下方向)に伸びるように立設され、その下端部に柱脚金物14が一体的に設けられている。
【0036】
柱脚金物14は、図2(a)に示すように、図の紙面に垂直方向に所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略正方形の板状に形成されている。
【0037】
そして、図2(a)及び(b)に示すように、柱脚金物14の四隅部の近傍には、柱脚金物14を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔14aが、それぞれの隅部に1つずつ形成されている。
【0038】
これらのボルト挿通孔14aは、図6(a)に示すように、その内径がアンカーボルト8の外径より大きな円孔として形成されている。
【0039】
そして、図3(a)に示すように、それぞれのボルト挿通孔14aの上端部には、ボルト挿通孔14aの内周面から半径方向の外側(図中右上側又は左下側)に向けて細長く伸びるモルタル噴出溝14b(モルタル噴出経路)が、ボルト挿通孔14aの中心軸を挟んで対称となるように2つ設けられている。
【0040】
このモルタル噴出溝14bは、図3(b)及び(c)に示すように、柱脚金物14の厚さ方向に所定の深さを有し、断面形状が上方に開口するコ字形の溝状に形成されており、その上部と一方の先端部(ボルト挿通孔14aの半径方向の内側の先端部)が、柱脚金物14の上面とボルト挿通孔14aの内側面にそれぞれ開口するように形成されている。
【0041】
そして、図2(a)及び(b)に示すように、柱脚金物14の四辺部の長さ中央部の近傍には、柱脚金物14を厚さ方向に貫通して、柱脚金物14の上面側の空間と下面側の空間を連通するモルタル注入孔14b(モルタル注入経路)が、それぞれの辺部に1つずつ形成されている。
【0042】
このような柱脚金物14は、十分な強度を有する鋼材により形成され、例えば、鋳造や鍛造によって柱脚金物14の外形を成型した後、切削工具等を用いてボルト挿通孔14a、モルタル噴出溝14b、モルタル注入孔14cを形成することにより、柱脚金物14を形成することができる。
【0043】
そして、図1に示すように、このような柱脚金物14が、柱部材15の下端面が柱脚金物14の上面に当接するように、柱部材15の下端部に配置されている。
【0044】
このとき、柱脚金物14は、その外形が柱部材15の水平断面形状より大きく形成され、ボルト挿通孔14a及びモルタル注入孔14cが柱部材15の下端部の外側面より外側に位置するように形成され配置されている。
【0045】
そして、柱部材15の下端部の外側面と柱脚金物14の上面を、柱部材15の下端部の外周部に沿って溶接することにより、柱脚金物14が柱部材15の下端部に一体的に固定されている。
【0046】
そして、柱脚金物14が一体的に固定された柱部材15が、柱脚金物14の下面と基礎コンクリート3の上面の間に隙間なく設けられたモルタル層16を介して、基礎コンクリート3の上に立設されている。
【0047】
一方、基礎コンクリート3の内部には、図1に示すように、複数のアンカーボルト8が、その長さ部分が基礎コンクリート3の内部に図中上下方向に伸び、その上端部が基礎コンクリート3の上面より上方に突出するように埋設されている。
【0048】
これらのアンカーボルト8は、その上端部の水平方向の位置や互いの間隔が、柱脚金物14に形成されたボルト挿通孔14aの水平方向の位置と一致するように配置されている。
【0049】
そして、アンカーボルト8の上端部が、モルタル層16を図1中上下方向に貫いて、柱脚金物14に形成されたボルト挿通孔14aに下方から緩く挿通され、柱脚金物14の上面より上方に突出するアンカーボルト8の上端部のオネジ部に、ナット10がネジ締結されている。
【0050】
このとき、図6(a)に示すように、柱脚金物14に形成されたボルト挿通孔14aの中心軸から、そのボルト挿通孔14aの上端部に形成されたモルタル噴出溝14bの他方の先端部(ボルト挿通孔14aの半径方向の外側の先端部)までの寸法が、そのボルト挿通孔14aに挿通されるアンカーボルト8の上端部のオネジ部にネジ締結されるナット10やその座金10aの中心から外形部までの半径方向の寸法より大きく形成されている。
【0051】
このような本実施の形態に係る柱脚金物14を用いた柱脚構造12によれば、図8に示す従来の柱脚金物4を用いた柱脚構造2と同様に、柱部材15の柱脚部に作用する外力を基礎コンクリート3へと伝達し、柱部材15が傾いたり転倒したりすることを防止できるようになっている。
【0052】
次に、本実施の形態に係る柱脚金物14を用いて、図1に示す柱脚構造12を構築するための手順について説明する。
【0053】
まず、図4(a)に示すように、複数のアンカーボルト8を、捨てコンクリートの上に設置した架台等(図示せず)に固定し、その周囲に、アンカーボルト8の長さ部分がコンクリート内部に上下方向に伸び、アンカーボルト8の上端部がコンクリート上面から上方に突出するように生コンクリートを打設し、打設した生コンクリートを一定期間養生させて十分に硬化させて基礎コンクリート3を形成する。
【0054】
そして、図4(b)に示すように、予め工場等で製造されて、下端部に柱脚金物14が一体的に固定された柱部材15を、基礎コンクリート3の上に鉛直方向(図中上下方向)に伸びるように立設し、柱部材15の下端部に固定された柱脚金物14に形成されたボルト挿通孔14aにアンカーボルト8の上端部を挿通し、柱脚金物14の上面より上方に突出するアンカーボルト8の上端部のオネジ部にナット10をネジ締結する。
【0055】
このとき、基礎コンクリート3の上面に多少の凹凸があったとしても、その上に立設される柱部材15の水平や高さ位置を正確に合わせることができるようにするために、基礎コンクリート3の上面に部分モルタル16aを形成し、その部分モルタル16aの上に、柱部材15の下端部に固定された柱脚金物14が載置されるようにする。
【0056】
そして、図5(a)に示すように、基礎コンクリート3の上に、柱部材15の下端部に固定された柱脚金物14の周囲を囲むように型枠17を設置する。
【0057】
このとき、型枠17の平面形状が柱脚金物14の平面形状と略同一の大きさになるように形成し、それにより、型枠17と柱脚金物14の外周部の間に隙間が形成されないようにする。
【0058】
そして、図5(b)に示すように、柱脚金物14に形成されたモルタル注入孔14cの上端部に取り付けられた漏斗16cのような器具を用いて、型枠17の内側にモルタル層16を形成するためのモルタル16bを注入する。
【0059】
注入したモルタル16bは、モルタル注入孔14cを通って、柱脚金物14の下面側の空間に流れ込み、柱脚金物14と基礎コンクリート3の間に隙間なく充填されると共に、ボルト挿通孔14aの下端部からボルト挿通孔14aとアンカーボルト8の間の隙間に流れ込み、この隙間の上端部まで充填される(図6(a)参照)。
【0060】
そして、注入したモルタル16bを一定期間養生させて十分に硬化させてモルタル層16を形成した後、型枠17を取り除くことにより、図1に示す柱脚構造12が構築されるようになっている。
【0061】
このような本実施の形態に係る柱脚金物14を用いることにより、柱脚金物14のボルト挿通孔14aの内側にモルタルが隙間なく充填されたことを容易に確認することができる。
【0062】
すなわち、図6(b)に示すように、本実施の形態に係る柱脚金物14を用いた柱脚構造12においては、アンカーボルト8の上端部にナット10がネジ締結された状態で、噴出溝14bの他方の先端部(ボルト挿通孔14aの半径方向の外側の先端部)が、ナット10や座金10aの外形部より外側に位置するようになっている。
【0063】
それにより、アンカーボルト8の上端部にネジ締結されたナット10やその座金10aよってボルト貫通孔14aの上端部の開口部が閉塞されていたとしても、ボルト貫通孔14aの内部空間と柱脚金物14の上面側の空間が、モルタル噴出溝14bによって互いに連通されるようになっている。
【0064】
このことにより、図6(a)に示すように、本実施の形態に係る柱脚金物14を用いて柱脚構造12を構築する際に注入されたモルタル16b(図5(b)参照)が、ボルト挿通孔14aとアンカーボルト8の間の隙間の上端部まで充填された後、モルタル噴出溝14bの内部に流れ込み、モルタル噴出溝14bを伝ってモルタル噴出溝14bの一方の先端部の上部から柱脚金物14の上面側に噴出し、その周囲にモルタル噴出部16dが形成されるようになっている。
【0065】
このように、モルタル16bを注入する際に、それぞれのボルト挿通孔14aに形成されたモルタル噴出溝14bからモルタルが噴出してモルタル噴出部16dが形成されていることを確認することにより、ボルト挿通孔14aとアンカーボルト8の間の隙間に流れ込んだモルタル16bが、その隙間の上端部まで確実に充填されていることを容易に確認することができるようになっている。
【0066】
このように、本実施の形態に係る柱脚金物14によれば、ボルト挿通孔の内側にモルタルが隙間なく充填されたことを容易に確認することができる。
【0067】
また、本実施の形態に係る柱脚金物14によれば、柱脚金物14のボルト挿通孔14aにモルタル噴出溝14bを形成するようにしたことにより、アンカーボルト8の上端部やナット10、座金10a等に特別な加工を施す必要がなく、従来品や既製品をそのまま使用することができるため、柱脚構造12の施工工数や施工コストが増大することを防止することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る柱脚金物14によれば、柱脚金物14にモルタル注入孔14cが形成されるようにしたことにより、型枠17と柱脚金物14の外周部の間に、モルタル16bを注入するための隙間を設ける必要がないため(図5(a)参照)、従来の柱脚金物4を用いて柱脚構造2を構築する際に使用する型枠7(図11(a)参照)に比べて、型枠17の平面形状を小さくすることができ、その分、注入するモルタル16bの量を減らすことができるため、柱脚構造12の施工コストの低減を図ることができる。
【0069】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る柱脚金物24について説明するために参照する図である。
【0070】
本実施の形態に係る柱脚金物24は、図7に示すように、前記第1の実施の形態に係る柱脚金物14(図2参照)と同様に、所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略正方形の板状に形成され、その四隅部の近傍には、柱脚金物24を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔24aが、それぞれの四隅部に1つずつ形成されている。
【0071】
そして、ボルト挿通孔24aの上端部には、前記第1の実施の形態に係る柱脚金物14(図2参照)と同様に、ボルト挿通孔24aの上端部の内周面から半径方向の外側に向けて細長く伸びるモルタル噴出溝24b(モルタル噴出経路)が、ボルト挿通孔24aの中心軸を挟んで対称となるように2つ設けられている。
【0072】
そして、柱脚金物24の四隅部には、図7(a)及び(b)に示すように、それぞれの隅部を斜めに切り落としたようなモルタル注入部24c(モルタル注入経路)が形成されている。
【0073】
すなわち、前記第1の実施の形態に係る柱脚金物14に形成されたモルタル注入部14cが柱脚金物14を厚さ方向に貫通する孔であるのに対して、本実施の形態に係る柱脚金物24に形成されたモルタル注入部24cは、柱脚金物24の周縁部の一部分(四隅部)が、柱脚金物24の中央へ向かって凹むような凹部として形成されている。
【0074】
そして、このような柱脚金物24を前記第1の実施の形態に係る柱脚金物14の代わりに用い、柱脚構造12を構築するための手順(図4及び図5参照)と同様の手順で、図1に示す柱脚構造12と同様の柱脚構造を構築する。
【0075】
このとき、図5(a)に示す手順と同様の手順において、基礎コンクリート3の上に、柱部材15の下端部に固定された柱脚金物24の周囲を囲むように設置される型枠17は、その平面形状が略正方形に形成されており、それにより、柱脚金物24の四隅部に、柱脚金物24のモルタル注入部24cと型枠17によって、柱脚金物24の上面側の空間と下面側の空間を連通するモルタル注入経路が形成されるようになっている。
【0076】
そして、図5(b)に示す手順と同様に、このモルタル注入経路の上端部に取り付けられた漏斗のような器具を用いて、型枠17の内側にモルタル層16を形成するためのモルタル16bを注入する。
【0077】
その他の構成や手順は、前記第1の実施の形態に係る柱脚金物14、及びこれを用いた柱脚構造12と同様であり、このような柱脚金物24によっても、ボルト挿通孔の内側にモルタルが隙間なく充填されたことを容易に確認することができる
【0078】
また、本実施の形態に係る柱脚金物24によれば、鋳造や鍛造により柱脚金物24の外形を成型する際に、同時にモルタル注入部24cも成型することができるため、柱脚金物24の製造工数を減らして製造コストを低減することができる。
【0079】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を達成することができる範囲内であれば、種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、前記第1及び第2の実施の形態に係る柱脚金物14,24においては、その平面形状が略正方形に形成されているが、柱脚金物14,24の平面形状は正八角形や円形など、正方形以外の形状に形成されていてもよい。
【0081】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る柱脚金物14,24においては、柱脚金物14,24の上面及び下面はいずれも平坦に形成されているが、それらの部分は平坦でなくともよく、例えば、柱脚金物14,24の上面に、柱脚金物14,24の強度を向上させるためのリブを形成したり、柱脚金物14,24の下面に、モルタル層16との付着力を向上させるための凹凸形状を形成したりしてもよい。
【0082】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る柱脚金物14,24においては、それぞれの四隅部の近傍に1つずつ、合計4つのボルト挿通孔14a,24aが形成されているが、形成されるボルト挿通孔14a,24aの数は4つより多くてもよく、また、四隅部以外の場所にボルト挿通孔14a,24aが形成されていてもよい。
【0083】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る柱脚金物14,24においては、ボルト挿通孔14a,24aの上端部に、ボルト挿通孔の中心軸を挟んで対称となるように、2つのモルタル噴出溝14b,24bが形成されているが、形成されるモルタル噴出溝14b,24bの数は2つより少なくても多くてもよく、また、ボルト挿通孔14a,24aの中心軸に対して非対称な場所にモルタル噴出溝14b,24bが形成されていてもよい。
【0084】
また、前記第1の実施の形態に係る柱脚金物14においては、それぞれの辺部の中央部の近傍に1つずつ、合計4つのモルタル注入孔14cが形成されているが、形成されるモルタル注入孔14cの数は、4つより少なくても多くていてもよく、また、辺部の中央部の近傍以外の場所にモルタル注入孔14cが形成されていてもよい。
【0085】
また、前記第2の実施の形態に係る柱脚金物24においては、全ての四隅部にモルタル注入部24cが形成されているが、モルタル注入部24cが一部の四隅部にのみ形成されていてもよい。
【0086】
また、前記第2の実施の形態に係る柱脚金物24においては、柱脚金物24の四隅部にモルタル注入部24cが形成されているが、柱脚金物24の四隅部以外の場所にモルタル注入部24cが形成されていてもよく、例えば、柱脚金物24の辺部の途中部をV字形に切り欠いたようなモルタル注入部24cが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
2 柱脚構造
3 基礎コンクリート
4 柱脚金物
4a ボルト挿通孔
5 柱部材
6 モルタル層
7 型枠
8 アンカーボルト
10 ナット
10a 座金
12 柱脚構造
14 柱脚金物
14a ボルト挿通孔
14b モルタル噴出溝
14c モルタル注入孔
15 柱部材
16 モルタル層
16a 部分モルタル
16b モルタル
16c 漏斗
16c モルタル噴出部
17 型枠
24 柱脚金物
24a ボルト挿通孔
24b モルタル噴出溝
34c モルタル注入部
M 曲げモーメント
T 引張力
C 圧縮力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12