(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】受電装置およびその制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20240124BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240124BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240124BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20240124BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240124BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J50/80
H04M1/00 U
H04B5/02
(21)【出願番号】P 2019224822
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 朋樹
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187070(JP,A)
【文献】特開2018-129942(JP,A)
【文献】特開2019-193535(JP,A)
【文献】特表2017-510233(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203652(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0296799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
H02J 50/80
H04M 1/00
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から無線電力伝送により伝送された電力を受電する受電装置であって、
前記送電装置と通信する第1の通信手段と、
前記第1の通信手段よりも高速な通信を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段を介した通信により前記送電装置が前記第2の通信手段を介して前記送電装置との機器認証のための情報の送受信を行う機能を有しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記送電装置が前記機能を有していると判断され、且つ、前記第2の通信手段が無効な状態である場合に、前記第2の通信手段を有効にして、前記第2の通信手段を介した前記送電装置との前記機器認証のための情報の送受信を実行する実行手段と、を有することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記送電装置との前記機器認証のための情報の送受信は、前記無線電力伝送に先立って行われることを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記第2の通信手段を介した機器認証が可能であることを示す情報を、前記送電装置から前記第1の通信手段を介して取得することを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記実行手段は、前記第1の通信手段により前記第2の通信手段を用いた機器認証のための通信を要求し、前記第2の通信手段による前記送電装置との通信を確立して前記機器認証を実行することを特徴とする請求項2または3に記載の受電装置。
【請求項5】
前記判断手段により前記送電装置が前記機能を有していると判断され、且つ、前記第2の通信手段が無効な状態である場合に、前記第2の通信手段を有効にするか否かをユーザに問い合わる問い合わせ手段をさらに有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項6】
前記実行手段は、前記問い合わせに対して許可を指示する操作が行われた場合に、前記第2の通信手段を有効にして前記機器認証を実行することを特徴とする請求項5に記載の受電装置。
【請求項7】
前記実行手段は、前記問い合わせに対して不許可を指示する操作が行われた場合に、前記第2の通信手段を有効にせず、前記送電装置との機器認証を前記第1の通信手段を用いて行うことを特徴とする請求項5または6に記載の受電装置。
【請求項8】
前記実行手段は、前記問い合わせに対する操作が所定の時間にわたって行われない場合に、前記第2の通信手段を有効にせず、前記送電装置との機器認証を前記第1の通信手段を用いて行うことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項9】
前記送電装置との機器認証を前記第1の通信手段を用いて行っている間に、前記問い合わせに対して許可を指示する操作が行われた場合に、前記実行手段は、前記第1の通信手段を用いた機器認証を中断し、前記第2の通信手段を有効にして、前記送電装置との機器認証を前記第2の通信手段を用いて行うことを特徴とする請求項8に記載の受電装置。
【請求項10】
前記送電装置との機器認証が完了している状態で、前記問い合わせに対して許可を指示する操作が行われた場合に、前記第2の通信手段を有効にしないことを特徴とする請求項5または6に記載の受電装置。
【請求項11】
前記問い合わせに対して許可を指示する操作が行われたことを記憶する記憶手段を備え、
前記実行手段は、前記判断手段により前記送電装置が前記機能を有していると判断され、且つ、前記第2の通信手段が無効となっている場合で、且つ、前記記憶手段により許可を指示する操作が行われたことが記憶されている場合には、前記問い合わせを行うことなく前記第2の通信手段を有効にして前記機器認証を実行することを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項12】
前記第2の通信手段を有効にすることの許可を事前に設定する設定手段を備え、
前記実行手段は、前記判断手段により前記送電装置が前記機能を有していると判断され、且つ、前記第2の通信手段が無効となっている場合で、且つ、前記設定手段により許可が事前に設定されている場合には、前記問い合わせを行うことなく第2の通信手段を有効にして前記機器認証を実行することを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項13】
前記第2の通信手段は、Bluetooth Low Energyの規格に従って通信を行うことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項14】
前記第2の通信手段は、Bluetooth Low Energyの規格に従って通信を行い、かつ、Bluetooth Low EnergyのCentralの役割としての通信を行うことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項15】
前記無線電力伝送は、Wireless Power Consortiumの規格に従うことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項16】
送電装置と通信する第1の通信手段と、
前記第1の通信手段よりも高速な通信を行う第2の通信手段と、を備え、前記送電装置から無線電力伝送により伝送された電力を受電する受電装置の制御方法であって、
前記第1の通信手段を介した通信により前記送電装置が前記第2の通信手段を介して前記送電装置との機器認証のための情報の送受信を行う機能を有しているか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程により前記送電装置が前記機能を有していると判断され、且つ、前記第2の通信手段が無効な状態である場合に、前記第2の通信手段を有効にして、前記第2の通信手段を介した前記送電装置との前記機器認証のための情報の送受信を実行する実行工程と、を有することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載された受電装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送のための受電装置およびその制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1では、無線充電規格の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(WPC規格)に準拠した送電装置および受電装置が開示されている。特許文献1の送電装置および受電装置は、電力伝送の制御に必要な制御情報を、送受電する電力に重畳するいわゆるインバンド通信によってやりとりする。また、特許文献2には、無線充電を行う送電装置と受電装置の間の機器認証方法が開示されている。特許文献2によれば、送電装置はチャレンジデ-タを、送電コイルを介して受電装置に送信し、受電装置はそのチャレンジデ-タに対して認証用演算を施すことで作成されたレスポンスデ-タを、受電コイルを介して送電装置に送信する。そして送電装置が受電装置から受信したレスポンスデ-タを照合することで、機器認証プロトコルを実行する。さらに特許文献3では、送電装置と受電装置の間で送受信される制御信号を、無線電力伝送とは異なる周波数ないしコイル(またはアンテナ)を介した通信(いわゆるアウトバンド通信)により行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-007116号公報
【文献】特開2010-104097号公報
【文献】特開2012-217224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器認証のための通信はデータ量が多いため、インバンド通信よりも高速な通信が可能であるアウトバンド通信により実行されることが好ましい。しかしながら、受電装置がアウトバンド通信機能を有する場合であっても、ユーザが受電装置を送電装置に載置した際に、受電装置のアウトバンド通信機能が無効になっている場合がある。この場合、インバンド通信を用いた機器認証が行われるため、機器認証の終了までに時間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、適切な通信を用いた機器認証を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による受電装置は、以下の構成を有する。すなわち、
送電装置から無線電力伝送により伝送された電力を受電する受電装置であって、
前記送電装置と通信する第1の通信手段と、
前記第1の通信手段よりも高速な通信を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段を介した通信により前記送電装置が前記第2の通信手段を介して前記送電装置との機器認証のための情報の送受信を行う機能を有しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記送電装置が前記機能を有していると判断され、且つ、前記第2の通信手段が無効な状態である場合に、前記第2の通信手段を有効にして、前記第2の通信手段を介した前記送電装置との前記機器認証のための情報の送受信を実行する実行手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、適切な通信を用いた機器認証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による無線電力伝送システムの構成を示す図。
【
図2】実施形態による受電装置の構成例を示すブロック図。
【
図3】実施形態による送電装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】受電装置の処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図5】BLE通信の開始判定処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図6】送電装置の処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図7】(A)は機器認証のための通信シーケンスを示す図、(B)はI&Cフェーズの通信シーケンスを示す図、(C)はNegotiationフェーズの通信シーケンスを示す図。
【
図8】Power Transmitter Capability Packetの構成例を示す図。
【
図9】(A)はBLE ONの許可を問い合わせるための表示例を示す図、(B)はBLE ONの許可を事前に設定するための表示例を示す図。
【
図10】実施形態の無線電力伝送システムで実行される第1の処理例を示す図。
【
図11】実施形態の無線電力伝送システムで実行される第2の処理例を示す図。
【
図12】実施形態の無線電力伝送システムで実行される第3の処理例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(1)システムの構成
図1に、本実施形態に係る無線電力伝送システムの構成例を示す。本実施形態の無線電力伝送システムは、一例において、受電装置101と送電装置102を含んで構成され、送電装置102から受電装置101へ無線電力伝送によって供給される電力により、受電装置101が充電を行う無線充電システムを構成する。受電装置101は、送電装置102から受電して内蔵バッテリに充電を行う電子機器である。送電装置102は、充電台103に載置されたRXに対して無線で送電する電子機器である。以下では、受電装置101をRXと呼び、送電装置102をTXと呼ぶ場合がある。
【0011】
104は、RXがTXから受電が可能な範囲である。なお、RXとTXは無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RXの一例はスマートフォンであり、TXの一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX及びTXは、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX及びTXは、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。
【0012】
本システムは、WPC(Wireless Power Consortium)が規定するWPC規格に基づいて、電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RXの受電コイルとTXの送電コイルとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送が行われる。なお、無線電力伝送の方式(無線電力伝送方法)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0013】
WPC規格では、RXがTXから受電する際に保証される電力の大きさがGuaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ。)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRXとTXの位置関係が変動して受電コイルと送電コイルとの間の送電効率が低下したとしても、RXの負荷(例えば、充電用の回路等)へ出力されることが保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電コイルと送電コイルの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TXは、RX内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0014】
本実施形態に係るRXとTXは、WPC規格に基づく送受電制御のための通信と、機器認証のための通信とを行う。
【0015】
まずWPC規格に基づく送受電制御のための通信について説明する。WPC規格では、実際の電力伝送が行われる前のフェーズと、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズとを含む、複数のフェーズが規定されており、各フェーズにおいて必要な送電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含む。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0016】
Selectionフェーズでは、TXが、Analog Pingを間欠送信し、送電可能範囲内に物体が存在すること(例えば充電台103にRXや導体片等が載置されたこと)を検出する。Pingフェーズでは、TXが、Digital Pingを送信し、そのDigital Pingを受信したRXからの応答を受信することにより、検出された物体がRXであることを認識する。I&Cフェーズでは、RXが識別情報と能力情報をTXへ通知する。Negotiationフェーズでは、RXが要求するGPの値やTXの送電能力等に基づいてGPの値を決定する。Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、RXが受電電力値をTXへ通知し、TXが、効率よく送電するための調整を行う。無線電力伝送を実行するPower Transferフェーズでは、送電の継続、及びエラーや満充電による送電停止等のための制御を行う。
【0017】
TXとRXは、これらの送受電制御のための通信を、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて信号を重畳するインバンド(In-band)通信により行う。なお、TXとRXとの間で、WPC規格に基づくインバンド通信が可能な範囲は、送電可能範囲とほぼ同様である。従って、
図1における範囲104は、TXとRXの送受電コイルにより無線電力伝送とインバンド通信が可能な範囲を表している。なお、以下の説明において、RXが「載置された」とは、RXが範囲104の内側に進入したことを意味し、実際には充電台103の上にRXが載置されない状態をも含むものとする。
【0018】
本実施形態に係るRXは、GPを決定することに先立って、TXとの間で電子証明書を用いたチャレンジ・レスポンス型の通信を行い、TXを機器認証する。すなわち、GPの決定に先立って機器認証のための通信が行われる。そして、RXは、機器認証の結果に基づいて上記NegotiationフェーズにおいてTXに要求するGPを決定する。例えば、RXは、機器認証に成功したTXに対してはGPを15ワットとするように要求し、そうでないTXに対してはGPを5ワットとするように要求する。
【0019】
なお、機器認証に成功した場合とそうでない場合のGPは15ワットと5ワットの組み合わせに限られるものではない。機器認証が成功したTXとのGPが、そうでない場合のGPより大きい限りにおいて、どのような値が用いられてもよい。すなわち、RXは、機器認証に成功したTXとの間においてのみ、大きなGPでの送受電が行われるようにする。このように、機器認証の結果に基づいてGPを決定することにより、RXは、WPC規格等で定められた所定の試験に合格し、大きなGPでの送電が可能であると認められるTXからのみ大きなGPでの受電が可能となる。
【0020】
本実施形態では、RXとTXは、機器認証のための通信を、無線電力伝送とは別のアンテナと周波数を用いるアウトバンド(Out-of-band)通信、または、無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて信号を重畳するインバンド通信のいずれかを用いて行う。ここで、アウトバンド通信はインバンド通信よりも高速な通信が可能であるとする。RXは、TXがアウトバンド通信可能である場合にはアウトバンド通信を用いて機器認証のための通信を行い、そうでない場合はインバンド通信を用いて機器認証のための通信を行う。この処理については後述する。
【0021】
アウトバンド通信の一例として、本実施形態においては、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以下では「BLE」と呼ぶ。)規格に準拠する通信方式が用いられる。また、TXはBLEのPeripheralの役割で動作し、RXはBLEのCentralの役割で動作するものとするが、これらのBLEの役割は逆でもよい。また、アウトバンド通信の通信方式は、BLEに限られるものではない。例えば、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee、NFC(Near Field Communication)等の通信方式によってアウトバンド通信が行われてもよい。なお、TXがアウトバンド通信可能であり、かつRXが範囲104に存在する時は、RXとTXはアウトバンド通信で情報のやりとりが可能であるとする。
【0022】
(2)装置構成
続いて、本実施形態に係る受電装置101(RX)及び送電装置102(TX)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
【0023】
図2は、本実施形態に係るRXの構成例を示す図である。RXは、一例において、制御部201、バッテリ202、受電部203、検出部204、受電コイル205、第1通信部206、第2通信部207、表示部208、操作部209、メモリ210、タイマ211、及び、充電部212を有する。
【0024】
制御部201は、例えばメモリ210に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RXの全体を制御するとともに後述する各種処理を実行する。制御部201は、一例において、RXにおける機器認証と受電に必要な制御を行う。制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ210に記憶させる。また、制御部201は、タイマ211を用いて時間を計測しうる。
【0025】
バッテリ202は、RX全体に対して、例えば制御と受電と通信に必要な電力を供給する。また、バッテリ202は、受電コイル205を介して受電された電力を蓄電する。受電コイル205では、TXの送電コイル305(
図3)から放射された電磁波により誘導起電力(電磁誘導による交流電力)が発生する。受電部203は、受電コイル205において電磁誘導により生じた交流電力を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流または所定周波数の交流電力に変換して、充電部212を含むRXの各部に電力を供給する。充電部212は、バッテリ202を充電するための処理を行う。このように、受電部203は、RXにおける負荷に対して電力を供給する。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力量である。
【0026】
検出部204は、WPC規格に基づいて、RXがTXから受電可能な範囲104に載置されているか否かの検出を行う。検出部204は、例えば、受電部203が受電コイル205を介してWPC規格のDigital Pingを受電した時の受電コイル205の電圧値または電流値を検出する。検出部204は、例えば、Digital Pingを受電した時の電圧が所定の電圧閾値を下回る場合又は電流値が所定の電流閾値を超える場合に、RXが範囲104に載置されていると判定する。
【0027】
第1通信部206は、TXとの間で、インバンド通信によって、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。第1通信部206は、受電コイル205から入力された電磁波を復調してTXから送信された情報を取得し、その電磁波を負荷変調することによってTXへ送信すべき情報を電磁波に重畳することにより、TXとの間で通信を行う。すなわち、第1通信部206で行われる通信は、TXの送電コイル305からの送電に重畳されて行われる。
【0028】
第2通信部207は、アウトバンド通信によって、TXとの間で機器認証のための通信を行う。なお、第2通信部207は、これに加えて、機器認証のための通信以外の通信を行ってもよい。第2通信部207は、例えばBLEの規格に準拠する通信を行うために必要な変復調回路や通信プロトコル処理機能を有する。
【0029】
表示部208は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を提示する。表示部208は、例えば、RXの状態や、
図1のようなTXおよびRXを含む無線電力伝送システムの状態を、ユーザに通知する。表示部208は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。操作部209は、ユーザからのRXに対する操作を受け付ける機能を有する。操作部209は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、表示部208と操作部209とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。メモリ210は、上述のように、各種情報を記憶する。なお、メモリ210は、制御部201と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ211は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0030】
図3は本実施形態に係るTXの構成例を示すブロック図である。TXは、一例において、制御部301、電源部302、送電部303、検出部304、送電コイル305、第1通信部306、第2通信部307、表示部308、操作部309、メモリ310、及び、タイマ311を有する。
【0031】
制御部301は、例えばメモリ310に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TXの全体を制御するとともに後述する各種処理を実行する。制御部301は、一例において、TXにおける機器認証と送電に必要な制御とを行う。制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部301は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部301は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ310に記憶させる。また、制御部301は、タイマ311を用いて時間を計測しうる。
【0032】
電源部302は、TX全体に対して、制御と送電と通信に必要な電力(直流又は交流電力)を供給する。電源部302は、例えば、商用電源またはバッテリである。
【0033】
送電部303は、電源部302から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流電力に変換し、その交流電力を送電コイル305へ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。なお、送電部303によって生成される交流電力の周波数は数百kHz(例えば、110kHz~205kHz)程度であり、アウトバンド通信において使用されるBLEの通信周波数(2.4GHz)とは異なる。送電部303は、制御部301の指示に基づいて、RXに送電を行うための電磁波を送電コイル305から出力させるように、交流電力を送電コイル305へ入力する。また、送電部303は、送電コイル305に入力する電圧(送電電圧)または電流(送電電流)を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧または送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧または送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部303は、制御部301の指示に基づいて、送電コイル305からの送電が開始または停止されるように、交流電力の出力制御を行う。
【0034】
検出部304は、WPC規格に基づいて、範囲104に物体が存在する載置されているかを検出する。検出部304は、例えば、送電部303が、送電コイル305を介してWPC規格のAnalog Pingを送電した時の送電コイル305の電圧値または電流値を検出する。そして、検出部304は、電圧が所定電圧値を下回る場合又は電流値が所定電流値を超える場合に、範囲104に物体が存在すると判定しうる。なお、この物体がRXであるかその他の異物であるかは、続いて第1通信部306によってインバンド通信で送信されるDigital Pingに対して所定の応答を受信したか否かにより判定される。Digital Pingに対して所定の応答が受信された場合、RXが存在すると判定される。
【0035】
第1通信部306は、RXとの間で、インバンド通信によって、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。第1通信部306は、送電コイル305から出力される電磁波を変調して、RXへ情報を伝送する。また、第1通信部306は、送電コイル305から出力されてRXにおいて変調された電磁波を復調してRXが送信した情報を取得する。このように、第1通信部306で行う通信は、送電コイル305からの送電に重畳されて行われる。
【0036】
第2通信部307は、アウトバンド通信によって、RXとの間で機器認証のための通信を行う。なお、第2通信部307は、これに加えて、機器認証のための通信以外の通信を行ってもよい。第2通信部307は、例えばBLEの規格に準拠する通信を行うために必要な変復調回路や通信プロトコル処理機能を有する。
【0037】
表示部308は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を提示する。表示部308は、例えば、TXの状態や、
図1のようなTXとRXとを含む無線電力伝送システムの状態を示す情報を、ユーザに通知する。表示部308は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。操作部309は、ユーザからのTXに対する操作を受け付ける機能を有する。操作部309は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、表示部308と操作部309とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。メモリ310は、上述のように、各種情報を記憶する。なお、メモリ310は、制御部301と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ311は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0038】
(3)処理の流れ
続いて、RX及びTXが実行する処理の流れの例について説明する。
【0039】
[3.1]受電装置101(RX)における処理
図4は、RXが実行する処理の例を示すフローチャートである。本処理は、例えばRXの制御部201がメモリ210から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、RXの電源がオンとされたことに応じてバッテリ202またはTXからの給電によりRXが起動したことに応じて、或いは、RXのユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0040】
RXは、処理の開始後、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定される処理を実行し、自装置がTXに載置されるのを待つ(S401)。RXは、例えば、TXからのDigital Pingを検出することによって、TXに載置されたことを検出する。RXは、自装置がTXに載置されたことを検出すると、インバンド通信で、WPC規格で規定されたI&Cフェーズの通信により、TXへ識別情報と能力情報を送信する(S402)。
【0041】
図7(B)に、I&Cフェーズの通信の流れを示す。I&Cフェーズでは、RXは、Identification Packet(ID Packet)をTXへ送信する(F711)。ID Packetには、RXの個体ごとの識別情報であるManufacturer CodeとBasic Device IDのほかに、RXの能力情報として対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素が格納される。RXは、さらに、Configuration PacketをTXへ送信する(F712)。Configuration Packetには、RXの能力情報として、RXが負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Value、WPC規格のNegotiation機能を有するか否かを示す情報が含められる。ここで、RXは、能力情報にBLE通信が可能であることを示す情報(BLE通信可能情報)を含める。こうして、BLE通信可能情報が、能力情報の一部としてConfiguration Packetにより送信される。なお通信可能情報は、ID Packetまたは他のパケットに含めて送信されてもよい。TXは、これらのパケットを受信すると、ACKを送信し(F713)、I&Cフェーズが終了する。
【0042】
なお、RXは、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法でRXの識別情報と能力情報をTXに通知してもよい。また、RXの個体ごとの識別情報には、Wireless Power IDやRXの第2通信部207に固有のBluetooth Address(以下では「BD_ADDR」と呼ぶ。)等の、RXの個体を識別可能な任意の他の識別情報が用いられてもよい。また、能力情報には、上記以外の情報が含まれていてもよい。
【0043】
図4に戻り、S402の後、RXは、インバンド通信で、TXから能力情報を取得する(S403)。TXの能力情報は、例えば、
図8に示すWPC規格のPower Transmitter Capability Packet(以下では「TX Capability Packet」と呼ぶ。)により取得され得る。もちろん、他のパケットでTXからの能力情報が取得されてもよい。以降は、TXから取得する能力情報として、TX Capability Packetを使用するものとして説明を行う。
【0044】
RXは、TXから能力情報を取得すると、BLE通信開始判定処理を行う(S404)。BLE通信開始判定処理の詳細については後述する。BLE通信を開始すると判定された場合(S405でYES)、RXは、第2通信部207を介してTXからアドバタイジングパケットを受信し、その送信元のBD_ADDRに対してCONNECT_REQを送信することでBLE接続を確立する(S406)。なお、S403において、インバンド通信でTXからBD_ADDRを取得し、S406ではアドバタイジングパケットを待たずに、直接上記BD_ADDRに対してCONNECT_REQを送信してBLE接続を確立してもよい。続いてRXは、上記で接続確立したBLE通信にてTXと機器認証のための通信を行う(S407)。
【0045】
ここで、RXとTXとの間で行われる機器認証のための通信の内容を、
図7(A)を用いて説明する。なお、本実施形態の機器認証は、電子証明書を用いたチャレンジ・レスポンス型の機器認証とし、RXがTXを認証するものとする。なお、TXがRXを認証するようにしても良いし、双方が相手を認証するようにしてもよい。RXは、TXに対してチャレンジテキストを送信するイニシエータとして動作し、TXはRXから受信したチャレンジテキストを暗号化してRXに送信するレスポンダとして動作する。
【0046】
まず、RXは、GET_DIGESTSメッセージをTXに送信する(F701)。GET_DIGESTSは、その受信者(TX)が有する電子証明書に関する情報を要求するメッセージである。TXは、GET_DIGESTSに応答して、DIGESTSをRXへ送信する(F702)。DIGESTSとは、その送信者(TX)が所有する電子証明書に関する情報である。続いて、RXは、電子証明書に関する詳細な情報(CERTIFICATE)を要求するGET_CERTIFICATEメッセージを、TXへ送信する(F703)。TXは、RXからのGET_CERTIFICATEに応答して、CERTIFICATEをRXへ送信する(F704)。そして、RXは、チャレンジテキストを含むCHALLENGEメッセージをTXへ送信し(F705)、TXは、RXから受信したチャレンジテキストを暗号化したRESPONSEを、RXへ送信する(F706)。
【0047】
RXは、TXから受信したRESPONSEの正当性が確認された場合、RESULT(Success)をTXへ送信し(F707)、機器認証を終了する。RESULT(Success)は、RESPONSEの正当性が確認でき、機器認証が成功したことを意味する。なお、機器認証が失敗した場合には、RESULT(Success)に代えて、RESULT(Fail)が送信され、機器認証処理が終了する。なお、イニシエータ(RX)は、相手装置(TX)が機器認証の通信に対応していないことを示すメッセージを受信した場合には、相手装置が機器認証に非対応であると判定する。また、イニシエータ(RX)は、通信の途中で応答を受信しなかった場合は、その応答を得るためのメッセージを再送すること等によってリトライしてもよいし、相手装置が機器認証に非対応であると判定してもよい。RXは機器認証に非対応であるTXとは機器認証のための通信を行わず、機器認証の結果は成功とはしないようにしてもよい。
【0048】
なお、上述の各メッセージは、BLE接続におけるGATT通信において、予め定義されたGATTサービスのキャラクタリスティックのRead、Write、Notify、Indicateのいずれかにより送受信される。GATT通信はBLEで規格化されているパケットを送受信することにより行われる。RXは、機器認証のための通信が完了すると、BLEのLL_TERMINATE_INDを送信することによりBLE接続を切断する。なお、TXからBLE接続を切断するようにしてもよい。なお、他のアプリケーションによってBLE接続が使用される場合は、機器認証の通信の終了後もBLE接続を切断しないようにしてもよい。また、RXは、機器認証のための通信に先立って、BLEのアドバタイジングパケットまたはGATT通信において、TXが機器認証に対応するか否かの情報を取得しうる。そして、RXは、TXが機器認証に対応していない場合は、機器認証非対応と判定し、
図7(A)の通信を実行しないようにしてもよい。
【0049】
一方、S404の後、BLE通信を開始しない場合には(S405でNO)、TXとインバンド通信を用いて
図7(A)で説明した機器認証のための通信を行う(S408)。このとき、機器認証のための通信でやりとりする各メッセージはインバンド通信のパケットとしてTXとRXの間で送受信される。
【0050】
BLEまたはインバンド通信で機器認証のための通信を実行した後(S407,S408)、RXは、機器認証の結果に基づいてTXとネゴシエーションを実行する(S409)。RXは、機器認証が成功である場合には(S409でYES)、GPが15ワットとなるようにネゴシエーションを行い(S410)、そうでない場合には(S409でNO)、GPが5ワットとなるようにネゴシエーションを行う(S411)。
【0051】
ネゴシエーションにおいては、
図7(C)に示すような、WPC規格のNegotiationフェーズの通信が行われる。まず、RXは、TXに対してSpecific Requestを送信することで、要求するGPの値を通知する(F721)。すなわち、機器認証が成功である場合はGP=15ワットと通知し、そうでなければGP=5ワットと通知する。TXは、自装置の送電能力に基づいて、要求を受け入れる否かを判定し、受け入れる場合はACKを、受け入れない場合はNAKを、RXへ送信する(F722)。
【0052】
ここで、TXは、RXから要求されたGPの大きさが、自装置の送電能力によって送電可能な大きさである場合にはRXの要求を受け入れる。このとき、GPの値は、RXによって要求された値と同じとして決定される。一方、TXは、RXから要求されたGPの大きさが、自装置の送電能力では達成できない大きさである場合には、RXの要求を受け入れない。この場合、例えば、WPC規格で予め規定された小さな値が、GPの値として決定されうる。なお、WPC規格で規定された値以外の小さな値をこのときのGPの値として決定してもよい。これらの小さな値は、一例において、事前にRXのメモリ210およびTXのメモリ310内に記憶される。
【0053】
なお、TXは、複数のRXに同時送電が可能であって、すでに別のRXに送電中である場合に、自身の送電能力に代えて、現在の送電余力に基づいてGPの値を決定してもよい。また、S410及びS411では、WPC規格のNegotiationフェーズの通信が用いられるがこれに限られるものではなく、TXとRXとの間の機器認証の結果に基づいてGPを決定する他の手順が実行されてもよい。また、TXは、RXがNegotiationフェーズに対応していないことを示す情報を(例えばS402において)取得した場合に、Negotiationフェーズの通信は行わず、GPの値を(例えばWPC規格で予め規定された)小さな値としてもよい。
【0054】
図4に戻り、RXは、GPの決定後、そのGPに基づいてキャリブレーション(S412)と満充電までの受電(S413)とを行う。キャリブレーションとは、TXがRXへ送電した電力について、TXが、TXの内部で測定した値とRXの内部で測定した受電電力の値との相関について調整を行う処理である。TXは、WPC規格のCalibrationフェーズの処理によりこの処理を行う。また、満充電までの受電は、WPC規格のPower Transferフェーズの処理により行われる。S412及びS413のキャリブレーションと受電には、WPC規格による手順を用いることができる。但し、キャリブレーションと受電が、WPC規格以外の方法で行われてもよい。
【0055】
RXは、Power Transferフェーズにおいて満充電に達するとWPC規格のEnd Power Transferを送信する。これによりTXからの送電が停止され、無線充電のための一連の処理が終了となる。RXは、無線充電のための一連の処理が終了後、TXに載置された時点でBLEがOFFだった場合には(S414でYES)、BLEをOFFにし(S415)、本処理を終了する。なお、他のアプリケーションによってBLE接続が使用される場合は、BLEをOFFにしなくてもよい。一方、BLEがONだった場合には(S414でNO)何もせず、本処理を終了する。この後、RXはS401に戻るようにしても良いし、バッテリ残量が所定以下まで減ったことを契機とする等、他の開始の契機を待った上でS401に戻るようにしてもよい。
【0056】
図5はRXが実行するBLE通信開始判定処理(S404)の例を示すフローチャートである。本処理は、例えばRXの制御部201がメモリ210から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理はTXから能力情報を受信したことに応じて実行されうるが、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0057】
RXは、S403でTXから取得した能力情報にBLE通信による機器認証が可能という情報が含まれるかを調べる(S501)。BLE通信による機器認証が可能という情報が含まれるか否かは、例えば、能力情報に含まれるアウトバンド通信を用いた機器認証を行う能力を示すbitや、BLEの保持を示すbit、BLEが使用可能な状態かを示すbit等を照合することで判断しうる。TXから取得した能力情報にBLE通信による機器認証が可能という情報が含まれている場合(S501でYES)、自身のBLEがONになっているか否か(BLEの状態が有効か否か)を判定する(S502)。他方、TXから取得した能力情報にBLE通信による機器認証が可能という情報が含まれていない場合(S501でNO)は何もせずに本処理を終了する。
【0058】
BLEが有効(ONになっている)な場合(S502でYES)は、RXは第2通信部207によるBLE通信が可能か否かを判定する(S503)。ここで、BLE通信機能を他のアプリケーションまたは通信機器との間で使用中である場合、または、BLE通信機能の役割がPeripheralである場合には、RXは、BLE通信が不可能であると判定する。また、バッテリ202の残量が少ない場合に、RXはBLE通信が不可能であると判定するようにしてもよい。BLE通信が可能な場合(S503でYES)は、RXはTXにBLE通信開始要求を送信し(S506)、本処理を終了する。BLE通信開始要求は、例えば、WPC規格のOut Of Band Request Packet(以下では「OOB Req Packet」と呼ぶ。)により要求してもよいし、他のパケットで要求してもよい。一方、BLE通信が不可能な場合(S503でNO)、何もせずに本処理を終了する。
【0059】
RXはBLEが無効(BLEがONでない)な状態の場合(S502でNO)、BLEのONがユーザにより許可されているか否かを判定する(S504)。ユーザによるBLEのONの許可は、例えば、表示部208に
図9(A)に示すような問い合わせ表示900を全画面またはポップアップウィンドウなどで表示し、ユーザが許可を指示する領域901を選択することにより行う。一方、BLEの有効化(BLEをONにすること)の不許可は、問い合わせ表示900においてユーザが不許可を指示する領域902を選択することにより行う。なお、ユーザの選択結果を記憶しておき、以前の操作でBLEのONが許可されている場合には、問い合わせ表示900を行わず、許可されているものと判断してもよい。
【0060】
また、
図9(B)に示すようなRXの設定表示910の中にBLEのONの許可に関する項目911を表示し、ユーザが事前にボタン912により項目911を有効化することにより許可を行ってもよい。この場合も、問い合わせ表示900は行わずに、BLEのONが許可されているものと判断してもよい。さらに、問い合わせ表示900に対して一定時間何も操作が行われない場合は、BLEのONが許可されていないものと判断してもよい。
【0061】
BLEの有効化が許可されている場合(S504でYES)、BLEを有効化(ON)した後に(S505)、TXにBLE通信開始要求を送信して(S506)、本処理を終了する。一方、BLEのONが許可されていない場合(S504でNO)、何もせずに本処理を終了する。
【0062】
[3.2]送電装置における処理
続いて、TXが実行する処理の流れの例について、
図6を用いて説明する。本処理は、例えばTXの制御部301がメモリ310から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、TXの電源がオンとされたことに応じて、TXのユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、又は、TXが商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0063】
本処理において、TXは、まず、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RXが載置されるのを待ち受ける(S601)。TXは、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し間欠送信し、送電可能範囲内に存在する物体を検出する(Selectionフェーズ)。そして、TXは、送電可能範囲内に物体が存在することを検出した場合、Digital Pingを送信する。そのDigital Pingに対する所定の応答があった場合に、TXは、検出された物体がRXであり、RXが充電台103に載置されたと判定する(Pingフェーズ)。
【0064】
TXは、RXの載置を検出すると、インバンド通信により、前述のI&Cフェーズの通信を実行し、そのRXから識別情報と能力情報を取得する(S602)。続いて、RXから能力情報取得要求の受信を待機する(S603)。能力情報取得要求を受信した場合(S603でYES)は能力情報を送信し(S604)、受信できなかった場合(S603でNO)は何もせず、RXからBLE通信開始要求の受信を待機する(S605)。
【0065】
本実施形態では、
図8のTX Capability Packetのリザーブ領域であるBank1のbit6からbit7(800)またはBank2のbit2からbit7(801)のうちの1bitがAuth bitとして割り当てられている。Auth bitは、能力情報の一例である。TXは自身がアウトバンド通信を用いた機器認証を行う能力があれば、Auth bitに「1」を書き込み、そうでなければ「0」を書き込む。また、TXはBLE bitを前記リザーブ領域のいずれか1bitに割り当てる。TXは自身がアウトバンド通信にBLEを使用する能力があれば、または、制御通信に使用できるBLEを備えていれば、BLE bitに「1」を書き込み、そうでない場合は「0」を書き込む。さらに、TXはBLE Enable bitを前記リザーブ領域のいずれか1bitに割り当てる。TXはその時点でアウトバンド通信としてBLEを使用可能であれば、BLE Enable bitに「1」を、そうでない場合は「0」を書き込む。なお、アウトバンド通信の種類としてNFCやWi-Fiに関するbitを含んでもよく、上記形態に限られるものではない。
【0066】
図6に戻り、TXはBLE通信開始要求を受信した場合(S605でYES)、TXの識別情報を含むBLEのアドバタイジングパケットを送信し、自装置に載置されているRXとBLEの接続を確立する(S606)。続いてTXは、S606で確立したBLE接続にて、
図7(A)で説明したRXと機器認証のための通信を行う(S607)。一方、S605において、RXからBLE通信開始要求を受信できなかった場合は(S605でNO)、インバンド通信を用いて、
図7(A)で説明した機器認証のための通信を行う(S608)。その後TXは、RXと
図7(C)のネゴシエーションを行い、GPを決定する(S609)。TXは、GPを決定した後に、そのGPに基づいてキャリブレーション(S610)と満充電までの送電(S611)を行う。
【0067】
また、TXは、WPC規格のEnd Power TransferをRXから受信した場合は、WPC規格に従って、どの処理フェーズにおいてもその処理を終了し、送電を停止した上で、S601のSelectionフェーズに戻る。なお、満充電となった場合にもRXからEnd Power Transferが送信されるため、S601のSelectionフェーズに戻る。
【0068】
[3.3]システムの動作
図4~
図6を用いて説明したRXとTXの動作シーケンスについて、いくつかの状況を想定して説明する。なお、初期状態としてRXはTXに載置されておらず、TXはRXの要求するGPで送電できるだけの十分な送電能力を持つものとする。
【0069】
<処理例1>
まず、
図10を用いて処理例1について説明する。処理例1では、TXは第2通信部307、すなわちBLEによるアウトバンド通信の機能を保持し、BLE通信が可能な状態であり、RXの機器認証に成功する機器であるものとする。また、RXは載置の際にBLEがOFFであり、事前にBLEのONを許可されておらず、BLEのONを許可するか否かを問い合わせてユーザからの許可を得ることが必要となるものとする。
【0070】
まず、TXはAnalog Pingによって物体が載置されるのを待つ(S601、F1001)。RXが載置されると(F1002)、Analog Pingに変化が生じ(F1003)、TXは物体の載置を検知する(F1004)。続くDigital PingによりRXは自身がTXに載置されたことを検知する(S401、F1005、F1006)。またTXはDigital Pingの応答により載置された物体がRXであることを検知する。続いて、I&Cフェーズの通信により、RXから、BLE通信可能であるという情報が通知される(S402、S602、F1007)。続いてRXが能力情報取得要求を送信し(S403、F1008)、TXは能力情報を送信する(S603でYES、S604、F1009)。
【0071】
RXはTXから能力情報を受信すると、BLE通信開始判定処理を開始する(S404)。TXの能力情報にBLE通信による機器認証可能という情報が含まれているため、RXは自身のBLEがONであるかを確認する(S501でYES、S502)。RXは、自身のBLEがOFFになっており、BLEのONを事前に許可されていないため、BLEのONを許可するか否かを問い合わせる表示900を行う(S502でNO、F1010)。RXは、ユーザからBLEのONを許可されるとBLEをONにし(S504でYES、S505、F1011)、TXにBLE通信開始要求を送信する(S506、F1012)。BLE通信開始要求を受信するとTXはBLEのアドバタイジングパケットを送信し(F1013)、RXがCONNECT_REQを送信する(F1014)ことでBLE接続が確立される(S405でYES、S406、S605でYES、S606)。
【0072】
続いて、BLEによる機器認証のための通信が行われ、機器認証が成功する(S407、S607、F1015)。機器認証に成功したため、RXとTXのネゴシエーションによりGP=15ワットと決定され(S409でYES、S410、S608、F1016)る。その後、キャリブレーション(S412、S609、F1017)および、満充電までの送受電が行われる(S413、S610、F1018)。満充電になるとRXからEnd Power Transferが送信されて処理が終了する(F1019)。
【0073】
以上に説明した動作によれば、RXは、自身のBLEがOFFの状態で、BLEによるアウトバンド通信が可能なTXに載置された場合に、BLEをONにして機器認証のための通信を行い、その機器認証の結果に基づいて受電することができる。
【0074】
<処理例2>
続いて、
図11を用いて処理例2について説明する。処理例2では、初期状態としてRXはTXに載置されておらず、BLEがOFFになっているものとする。また、ユーザによりBLEのONを事前に許可されているものとして説明を行う。以下、
図10との差異を中心に説明する。
【0075】
図11において、載置検出からTXによる能力情報の送信まで(F1101~F1109)は
図10(F1001~F1009)と同じである。RXはTXから能力情報を受信すると、BLE通信開始判定処理を開始する(S404)。RXは、ユーザからBLEのONを事前に許可されているため、BLEのONを許可するか否かの問い合わせを行うことなく、自動でBLEをONにする(S502でNO、S504でYES、S505、F1110)。以下、満充電までの動作(F1011~F1018)は
図10(F1012~F1019)と同様の動作である。以上に説明した動作によれば、RXは、BLEによるアウトバンド通信が可能なTXに載置された場合において、ユーザにBLEの状態を意識させることなく自動でONにして機器認証のための通信を行い、その結果に基づいて受電できている。
【0076】
<処理例3>
続いて、
図12を用いて処理例3について説明する。処理例3では、初期状態としてRXはTXに載置されておらず、BLEがOFFになっているものとする。また、ユーザにより事前にBLEのONを許可されておらず、BLEのONを許可するか否かの問い合わせに対してユーザ操作がなくONを許可されないものとして説明を行う。以下、
図10との差異を中心に説明する。
【0077】
図12において、載置検出からBLEのONを許可するか否かの問い合わせ表示まで(F1201~F1210)は
図10(F1001~F1010)と同様である。RXは、問い合わせ表示から一定時間ユーザ操作がないため、問い合わせ表示を終了し、BLEのONを許可されていないものとする(S504でNO、F1211)。RXは、BLEのONを許可されていないため、インバンド通信により機器認証のための通信が行われて成功する(S405でNO、S408、F1212)。以下、満充電までの動作(F1213~F1216)は
図10(F1016~F1019)と同様である。
【0078】
以上に説明した動作によれば、RXは、BLEによるアウトバンド通信が可能なTXに載置され、ユーザからBLEのONを許可されない場合に、BLEをONにすることなくインバンド通信で機器認証のための通信を行い、その結果に基づいて受電を行う。
【0079】
以上の処理例1~3で説明したように、本実施形態に係るRXは、BLEがOFFの状態でBLEによるアウトバンド通信が可能なTXに載置された場合であっても、BLEをONにしてアウトバンド通信で機器認証のための通信を行うことができる。ここで、アウトバンド通信はインバンド通信よりも高速に通信できるため、機器認証のための通信に要する時間は、アウトバンド通信を用いた場合の方が短い。したがって、RXが載置されてから充電開始までの時間を短縮することができる。また、ユーザからBLEのONが許可されない場合であっても、インバンド通信で機器認証のための通信を行うことができるため、BLEの状態に影響されず充電を開始することができる。
【0080】
なお、本実施形態では、BLEのONを許可するか否かの問い合わせに対して一定時間ユーザ操作がない場合は、問い合わせ表示を終了し、許可されないものとしてインバンド通信を用いた機器認証を行うようにしたが、問い合わせ表示を終了しなくてもよい。また、インバンド通信を用いた機器認証中にユーザからBLEのONが許可されたことを契機に、インバンド通信による機器認証を中断し、BLEをONにしてアウトバンド通信を用いた機器認証に切り替えてもよい。これにより、インバンド通信を用いた機器認証を継続する場合と比べて、機器認証のための通信に要する時間が短縮され、充電開始までの時間を短縮することができる。一方、インバンド通信上で実行された機器認証の処理フェーズが進んでいる場合は、BLEをONにせずインバンド通信を用いた機器認証を継続してもよい。これにより、BLE接続の確立に要する時間によって機器認証のための通信に要する時間がかえって長くなることを防ぐことができる。さらに、インバンド通信を用いた機器認証が終了したことを契機に、問い合わせ表示を終了するようにしてもよい。
【0081】
本実施形態では、アウトバンド通信を用いる機能として機器認証を適用した場合について説明したが、アウトバンド通信を用いて実行可能な他の機能が適用されてもよい。例えば、TXのファームウェアアップデート等であってもよい。この場合、TXはTX Capability Packetのリザーブ領域であるBank1のbit6からbit7(800)またはBank2のbit2からbit7(801)のうちの1bitをFirmware Update bitに割り当てる。TXは自身がアウトバンド通信を用いたファームウェアアップデートを行う能力があれば、Firmware Update bitに「1」を書き込み、そうでなければ「0」を書き込む。このように、データ量の多い通信を必要とする機能に適用することで、当該機能のための通信に要する時間を大きく短縮することができる。
【0082】
本実施形態ではアウトバンド通信としてBLE一種類の通信方式を用いるとして説明した。しかしながら、RXは複数の通信方式で通信する機能を備え、これらのいずれかをアウトバンド通信として用いるようにしてもよい。その場合、
図4のS402およびS403で送受信する能力情報としては、BLE通信可能かの情報に加えて、他の通信方式の通信が可能かの情報を含んでもよい。また、
図5のBLE通信開始判定処理(S501~S506)では、受信した能力情報に応じて他の通信方式の通信がOFFの場合にONにするような制御を実施してもよい。これにより、例えばBLE通信可能なTXと、Wi-Fi通信可能なTXのいずれに載置された場合にも、インバンド通信よりも高速なアウトバンド通信を用いて短時間で機器認証を実行することができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、無線電力伝送の開始前に実行される機器認証のための制御情報が、RXの第2通信部207とTXの第2通信部307を用いて送受信される例を示した。但し、上述した制御により送受信される制御情報は、機器認証に用いられる情報に限られるものではなく、種々の制御情報の送受信に適用できる。
【0084】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0085】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0086】
101:受電装置、102:送電装置、201:制御部、206:第1通信部、207:第2通信部