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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】全固体電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240124BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240124BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240124BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M6/18 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019239143
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108260
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】川村 知栄
(72)【発明者】
【氏名】水野 高太郎
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183121(JP,A)
【文献】特開2018-181451(JP,A)
【文献】特開2017-062938(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051032(WO,A1)
【文献】特開2015-125872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/0562
H01M 10/0585
H01M 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物系の固体電解質を主成分とする固体電解質層と、
前記固体電解質層の第1主面に形成され、導電性材料を主成分とする第1集電体層を、活物質を含む2層の第1電極層で挟む第1電極構造と、
前記固体電解質層の第2主面に形成され、導電性材料を主成分とする第2集電体層を、活物質を含む2層の第2電極層で挟む第2電極構造と、を備え、
前記第1集電体層と前記2層の第1電極層との界面の粗さ値および前記第2集電体層と前記2層の第2電極層との界面の粗さ値の少なくともいずれか一方は、前記固体電解質層と前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層との界面の粗さ値よりも大きく、
前記粗さ値は、厚みの標準偏差および平均値から算出されるCV値=標準偏差/平均値(%)であり、
前記固体電解質層の厚みの前記CV値は、前記固体電解質層と、前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層との界面の粗さ値であり、
前記第1集電体層の厚みの前記CV値は、前記第1集電体層と、前記第1集電体層を挟む2層の前記第1電極層との界面の粗さ値であり、
前記第2集電体層の厚みの前記CV値は、前記第2集電体層と、前記第2集電体層を挟む2層の前記第2電極層との界面の粗さ値であることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記固体電解質層の厚みは、8μm以下であることを特徴とする請求項1記載の全固体電池。
【請求項3】
記第1集電体層と前記2層の第1電極層との界面の粗さ値および前記第2集電体層と前記2層の第2電極層との界面の粗さ値の少なくともいずれか一方は、20%以上であり、
前記固体電解質層と前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層との界面の粗さ値は、40%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の全固体電池。
【請求項4】
記第1集電体層と前記2層の第1電極層との界面の粗さ値および前記第2集電体層と前記2層の第2電極層との界面の粗さ値の少なくともいずれか一方は、50%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項5】
酸化物系の固体電解質の粒子を含む固体電解質グリーンシートと、前記固体電解質グリーンシートの第1主面に積層され、導電性材料を含む第1集電体用ペーストが、活物質を含む2層の第1電極層用ペーストで挟まれた第1積層物と、前記固体電解質グリーンシートの第2主面に積層され、導電性材料を含む主成分とする第2集電体用ペーストが、活物質を含む2層の第2電極層用ペーストで挟まれた第2積層物と、を備える積層体を準備する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を含み、
前記第1集電体用ペーストから得られる第1集電体層と、前記第1電極層用ペーストから得られる2層の第1電極層と、の界面の粗さ値、および前記第2集電体用ペーストから得られる第2集電体層と、前記第2電極層用ペーストから得られる2層の第2電極層と、の界面の粗さ値の少なくともいずれか一方が、前記固体電解質グリーンシートから得られる固体電解質層と、前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層と、の界面の粗さよりも大きくなるように、前記第1集電体用ペーストまたは前記第2集電体用ペーストの少なくともいずれか一方の粒径を調整し、
前記粗さ値は、厚みの標準偏差および平均値から算出されるCV値=標準偏差/平均値(%)であり、
前記固体電解質層の厚みの前記CV値は、前記固体電解質層と、前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層との界面の粗さ値であり、
前記第1集電体層の厚みの前記CV値は、前記第1集電体層と、前記第1集電体層を挟む2層の前記第1電極層との界面の粗さ値であり、
前記第2集電体層の厚みの前記CV値は、前記第2集電体層と、前記第2集電体層を挟む2層の前記第2電極層との界面の粗さ値であることを特徴とする全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物系固体電解質を用いた全固体電池は、有機系電解質、硫化物系固体電解質等で懸念される発火、有毒ガス発生等が起こらない安全な二次電池を提供可能な技術として期待されている。電池容量を確保するためには、固体電解質層を薄くすることが望まれる。しかしながら、固体電解質層を薄くすると、ショートやサイクル特性の劣化などが起こりやすくなり、信頼性の確保が困難となる。
【0003】
そこで、固体電解質の膜の厚みの標準偏差を5μm以下とすることで固体電解質層を平坦化し、固体電解質厚みが10μm以上の全固体電池の電池特性(サイクル特性)を良好とする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-157362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より電池容量を確保するためには、さらに固体電解質層を薄型化することが望まれる。しかしながら、薄型化に伴って、信頼性を十分に確保できないおそれがある。
【0006】
ところで、積層型の全固体電池では、第1電極層、集電体層、第2電極層、および固体電解質層の4層が積層されている。薄型化された固体電解質層を平坦にするために、固体電解質層以外の各層についても平坦化することが考えられる。しかしながら、集電体層の主成分として導電性物質として金属、カーボンなどが用いられることが多く、電極層の主成分としてセラミックスが用いられることが多いため、異種物質の界面では膜剥がれが起こりやすくなり、歩留まりが悪化する。以上のことから、各層を単に平坦化するだけでは、信頼性の確保と、膜剥がれの抑制とを両立させることは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、信頼性を確保しつつ、膜剥がれを抑制することができる全固体電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る全固体電池は、酸化物系の固体電解質を主成分とする固体電解質層と、前記固体電解質層の第1主面に形成され、導電性材料を主成分とする第1集電体層を、活物質を含む2層の第1電極層で挟む第1電極構造と、前記固体電解質層の第2主面に形成され、導電性材料を主成分とする第2集電体層を、活物質を含む2層の第2電極層で挟む第2電極構造と、を備え、前記第1集電体層と前記2層の第1電極層との界面の粗さおよび前記第2集電体層と前記2層の第2電極層との界面の粗さの少なくともいずれか一方は、前記固体電解質層と前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層との界面の粗さよりも大きいことを特徴とする。
【0009】
上記全固体電池において、前記固体電解質層の厚みは、8μm以下であってもよい。
【0010】
上記全固体電池において、複数の異なる箇所の厚みの変動係数を界面粗さ値とした場合に、前記第1集電体層と前記2層の第1電極層との界面の粗さ値および前記第2集電体層と前記2層の第2電極層との界面の粗さ値の少なくともいずれか一方は、20%以上であり、前記固体電解質層と前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層との界面の粗さ値は、40%以下であってもよい。
【0011】
上記全固体電池において、複数の異なる箇所の厚みの変動係数を界面粗さ値とした場合に、前記第1集電体層と前記2層の第1電極層との界面の粗さ値および前記第2集電体層と前記2層の第2電極層との界面の粗さ値の少なくともいずれか一方は、50%以下であってもよい。
【0012】
本発明に係る全固体電池の製造方法は、酸化物系の固体電解質の粒子を含む固体電解質グリーンシートと、前記固体電解質グリーンシートの第1主面に積層され、導電性材料を含む第1集電体用ペーストが、活物質を含む2層の第1電極層用ペーストで挟まれた第1積層物と、前記固体電解質グリーンシートの第2主面に積層され、導電性材料を含む主成分とする第2集電体用ペーストが、活物質を含む2層の第2電極層用ペーストで挟まれた第2積層物と、を備える積層体を準備する工程と、前記積層体を焼成する工程と、を含み、前記第1集電体用ペーストから得られる第1集電体層と、前記第1電極層用ペーストから得られる2層の第1電極層と、の界面の粗さ、および前記第2集電体用ペーストから得られる第2集電体層と、前記第2電極層用ペーストから得られる2層の第2電極層と、の界面の粗さの少なくともいずれか一方が、前記固体電解質グリーンシートから得られる固体電解質層と、前記固体電解質層を挟む前記第1電極層および前記第2電極層と、の界面の粗さよりも大きくなるように、前記第1集電体用ペーストまたは前記第2集電体用ペーストの少なくともいずれか一方の粒径を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ショートの発生を抑制しつつ、膜剥がれを抑制することができる全固体電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
図2】実施形態に係る全固体電池の模式的断面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4】界面粗さの測定手法を例示する図である。
図5】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
図6】積層工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、全固体電池100の基本構造を示す模式的断面図である。図1で例示するように、全固体電池100は、第1電極10と第2電極20とによって、酸化物系の固体電解質層30が挟持された構造を有する。第1電極10は、固体電解質層30の第1主面上に形成されており、第1電極層11および第1集電体層12が積層された構造を有し、固体電解質層30側に第1電極層11を備える。第2電極20は、固体電解質層30の第2主面上に形成されており、第2電極層21および第2集電体層22が積層された構造を有し、固体電解質層30側に第2電極層21を備える。
【0017】
全固体電池100を二次電池として用いる場合には、第1電極10および第2電極20の一方を正極として用い、他方を負極として用いる。本実施形態においては、一例として、第1電極10を正極として用い、第2電極20を負極として用いるものとする。
【0018】
固体電解質層30は、酸化物系固体電解質であれば特に限定されるものではないが、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質を用いることができる。NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi(PO)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlGe2-x(POや、Li1+xAlZr2-x(PO、Li1+xAlTi2-x(POなどが挙げられる。例えば、第1電極層11および第2電極層21に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO系材料が好ましい。例えば、第1電極層11および第2電極層21にCoおよびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。第1電極層11および第2電極層21にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0019】
第1電極層11および第2電極層21のうち、少なくとも、正極として用いられる第1電極層11は、オリビン型結晶構造をもつ物質を電極活物質として含有する。第2電極層21も、当該電極活物質を含有していることが好ましい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0020】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPOなどを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPOの比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0021】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、正極として作用する第1電極層11においては、正極活物質として作用する。例えば、第1電極層11にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。第2電極層21にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合に、負極として作用する第2電極層21においては、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0022】
第1電極層11および第2電極層21の両方ともオリビン型結晶構造をもつ電極活物質を含有する場合に、それぞれの電極活物質には、好ましくは、互いに同一であっても異なっていてもよい遷移金属が含まれる。「互いに同一であっても異なっていてもよい」ということは、第1電極層11および第2電極層21が含有する電極活物質が同種の遷移金属を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の遷移金属が含まれていてもよい、ということである。第1電極層11および第2電極層21には一種だけの遷移金属が含まれていてもよいし、二種以上の遷移金属が含まれていてもよい。好ましくは、第1電極層11および第2電極層21には同種の遷移金属が含まれる。より好ましくは、両電極層が含有する電極活物質は化学組成が同一である。第1電極層11および第2電極層21に同種の遷移金属が含まれていたり、同組成の電極活物質が含まれていたりすることにより、両電極層の組成の類似性が高まるので、全固体電池100の端子の取り付けを正負逆にしてしまった場合であっても、用途によっては誤作動せずに実使用に耐えられるという効果を有する。
【0023】
第1電極層11および第2電極層21のうち第2電極層21に、負極活物質として公知である物質をさらに含有させてもよい。一方の電解層だけに負極活物質を含有させることによって、当該一方の電極層は負極として作用し、他方の電極層が正極として作用することが明確になる。一方の電極層だけに負極活物質を含有させる場合には、当該一方の電極層は第2電極層21であることが好ましい。なお、両方の電極層に負極活物質として公知である物質を含有させてもよい。電極の負極活物質については、二次電池における従来技術を適宜参照することができ、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどの化合物が挙げられる。
【0024】
第1電極層11および第2電極層21の作製においては、これら活物質に加えて、酸化物系固体電解質材料や、カーボンや金属といった導電性材料(導電助剤)などをさらに添加してもよい。これらの部材については、バインダと可塑剤を水あるいは有機溶剤に均一分散させることで電極層用ペーストを得ることができる。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。
【0025】
第1集電体層12および第2集電体層22は、導電性材料を主成分とする。例えば、第1集電体層12および第2集電体層22の導電性材料として、金属、カーボンなどを用いることができる。
【0026】
図2は、複数の電池単位が積層された全固体電池100aの模式的断面図である。全固体電池100aは、略直方体形状を有する積層チップ60と、積層チップ60の第1端面に設けられた第1外部電極40aと、当該第1端面と対向する第2端面に設けられた第2外部電極40bとを備える。
【0027】
積層チップ60の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。第1外部電極40aおよび第2外部電極40bは、積層チップ60の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、第1外部電極40aと第2外部電極40bとは、互いに離間している。
【0028】
以下の説明において、全固体電池100と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0029】
全固体電池100aにおいては、複数の第1集電体層12と複数の第2集電体層22とが、交互に積層されている。複数の第1集電体層12の端縁は、積層チップ60の第1端面に露出し、第2端面には露出していない。複数の第2集電体層22の端縁は、積層チップ60の第2端面に露出し、第1端面には露出していない。それにより、第1集電体層12および第2集電体層22は、第1外部電極40aと第2外部電極40bとに、交互に導通している。
【0030】
第1集電体層12上には、第1電極層11が積層されている。第1電極層11上には、固体電解質層30が積層されている。固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。固体電解質層30上には、第2電極層21が積層されている。第2電極層21上には、第2集電体層22が積層されている。第2集電体層22上には、別の第2電極層21が積層されている。当該第2電極層21上には、別の固体電解質層30が積層されている。当該固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。当該固体電解質層30上には、第1電極層11が積層されている。全固体電池100aにおいては、これらの積層単位が繰り返されている。それにより、全固体電池100aは、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0031】
電池容量を確保するためには、固体電解質層30を薄くすることが望まれる。例えば、固体電解質層30の厚みは、10μm以下であり、8μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましい。しかしながら、固体電解質層30を薄くすると、ショートやサイクル特性の劣化などが起こりやすくなり、信頼性の確保が困難となる。
【0032】
そこで、固体電解質層30を平坦化することが考えられる。固体電解質層30の平坦化を担保するために、他の層についても平坦化することが考えられる。しかしながら、第1集電体層12および第2集電体層22の主成分材料と、第1電極層11および第2電極層21の主成分材料との相違に起因して、各層の界面で膜剥がれが起こりやすくなり、歩留まりが悪化する。したがって、各層を単に平坦化するだけでは、信頼性の確保と、膜剥がれの抑制とを両立させることは困難である。
【0033】
そこで、本実施形態に係る全固体電池100,100aは、信頼性を確保しつつ、膜剥がれを抑制することができる構造を有している。
【0034】
図3は、図2の一部拡大図である。図3では、ハッチを省略している。図3で例示するように、固体電解質層30下(第1主面)に第1電極層11が積層され、当該第1電極層11下に第1集電体層12が積層され、当該第1集電体層12下に他の第1電極層11が積層されている。すなわち、第1集電体層12は、2層の第1電極層11によって挟まれている。この第1集電体層12と、2層の第1電極層11を、第1電極構造と称するものとする。固体電解質層30上(第2主面)に第2電極層21が積層され、当該第2電極層21上に第2集電体層22が積層され、当該第2集電体層22上に他の第2電極層21が積層されている。すなわち、第2集電体層22は、2層の第2電極層21によって挟まれている。この第2集電体層22と、2層の第2電極層21を、第2電極構造と称するものとする。
【0035】
本実施形態においては、第1集電体層12と、当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との界面の粗さが、固体電解質層30と、当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さよりも大きくなっている。また、第2集電体層22と、当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との界面の粗さが、固体電解質層30と、当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さよりも大きくなっている。
【0036】
この構成では、まず、固体電解質層30と、当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さが小さくなる。それにより、固体電解質層30が平坦となる。したがって、電極層による固体電解質層30の貫通などが抑制され、ショートが抑制される。また、サイクル特性や自己放電特性なども良好となる。すなわち、信頼性が向上する。なお、第1電極層11、第2電極層21および固体電解質層30は、いずれもセラミックを主成分とする。したがって、第1電極層11と固体電解質層30との密着性、および第2電極層21と固体電解質層30との密着性は良好である。
【0037】
次に、第1集電体層12と、当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との界面の粗さが大きくなる。この場合、アンカー効果が得られ、第1集電体層12と、当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との密着性が向上し、膜剥がれが抑制される。また、第2集電体層22と、当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との界面の粗さが大きくなる。この場合、アンカー効果が得られ、第2集電体層22と、当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との密着性が向上し、膜剥がれが抑制される。なお、粗さが大きくなるに伴って第1電極層11が第1集電体層12を貫通しても、2層の第1電極層11が接続されるだけである。また、粗さが大きくなるに伴って第2電極層21が第2集電体層22を貫通しても、2層の第2電極層21が接続されるだけである。したがって、ショートの発生は抑制される。
【0038】
以上のことから、本実施形態に係る全固体電池100,100aでは、信頼性を確保しつつ、膜剥がれを抑制することができる。
【0039】
ここで、界面の粗さ値の求め方の一例について説明する。全固体電池100aの電池の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察する。固体電解質層30の厚みに対し、長さが7~9倍となる倍率で任意箇所の10枚のSEM写真を撮り、図4で例示するように、1枚につき縦に30本の等間隔の縦線を引く。縦線は積層方向に平行な線である。縦線に沿って、固体電解質層30の厚み(1枚につき30箇所×10枚=300箇所)を計測する。平均値と標準偏差を求め、変動係数:CV値=標準偏差/平均値(%)を求める。この値を、固体電解質層30と、当該固体電解質層30を挟む2層の第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さ値とすることができる。
【0040】
同様に、第1集電体層12の厚みに対し、長さが7~9倍となる倍率で任意箇所の10枚のSEM写真を撮り、図4で例示するように、1枚につき縦に30本の等間隔の縦線を引く。縦線に沿って、第1集電体層12の厚み(1枚につき30箇所×10枚=300箇所)を計測する。平均値と標準偏差を求め、変動係数:CV値=標準偏差/平均値(%)を求める。この値を、第1集電体層12と、当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との界面の粗さ値とすることができる。
【0041】
同様に、第2集電体層22の厚みに対し、長さが7~9倍となる倍率で任意箇所の10枚のSEM写真を撮り、図4で例示するように、1枚につき縦に30本の等間隔の縦線を引く。縦線に沿って、第2集電体層22の厚み(1枚につき30箇所×10枚=300箇所)を計測する。平均値と標準偏差を求め、変動係数:CV値=標準偏差/平均値(%)を求める。この値を、第2集電体層22と、当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との界面の粗さ値とすることができる。
【0042】
固体電解質層30と、当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21と、の界面の粗さ値(第1CV値)が大きすぎると、固体電解質層30が十分に平坦化されないおそれがある。そこで、第1CV値に上限を設けることが好ましい。例えば、第1CV値は、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
第1集電体層12と当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との界面の粗さ値(第2CV値)、および第2集電体層22と当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との界面の粗さ値(第2CV値)が小さすぎると、十分に膜剥がれを抑制できないおそれがある。そこで、第2CV値に下限を設けることが好ましい。例えば、第2CV値は、20%以上であることが好ましく、22%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
【0044】
一方、第2CV値が大きすぎると、抵抗が大きくなるおそれがある。そこで、第2CV値に上限を設けることが好ましい。例えば、第2CV値は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
なお、本実施形態においては、第1集電体層12と当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との界面の粗さ、および第2集電体層22と、当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との界面の粗さの両方が、固体電解質層30と当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さよりも大きくなっていたが、それに限られない。いずれか一方の粗さが、固体電解質層30と当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さよりも大きくなっていればよい。
【0046】
第1電極層11および第2電極層21の厚さは、例えば、10μm以下であり、9μm以下であり、8μm以下である。第1集電体層12および第2集電体層22の厚さは、例えば、10μm以下であり、9μm以下であり、8μm以下である。
【0047】
続いて、全固体電池100aの製造方法について説明する。図5は、全固体電池100aの製造方法のフローを例示する図である。
【0048】
(セラミック原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成する酸化物系固体電解質の粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、固体電解質層30を構成する酸化物系固体電解質の粉末を作製することができる。得られた粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrOボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0049】
添加物には、焼結助剤が含まれる。焼結助剤として、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数などのガラス成分が含まれている。
【0050】
(グリーンシート作製工程)
次に、得られた粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混錬機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、グリーンシートを作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0051】
(電極層用ペースト作製工程)
次に、上述の第1電極層11および第2電極層21の作製用の電極層用ペーストを作製する。例えば、導電助剤、活物質、固体電解質材料、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで電極層用ペーストを得ることができる。固体電解質材料として、上述した固体電解質ペーストを用いてもよい。導電助剤として、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金や各種カーボン材料などをさらに用いてもよい。第1電極層11と第2電極層21とで組成が異なる場合には、それぞれの電極層用ペーストを個別に作製すればよい。
【0052】
(集電体用ペースト作製工程)
次に、上述の第1集電体層12および第2集電体層22の作製用の集電体用ペーストを作製する。例えば、Pdの粉末、カーボンブラック、板状グラファイトカーボン、バインダ、分散剤、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで、集電体用ペーストを得ることができる。なお、この場合において、粉末成分の粒度が1μmを下回らないように分散を行った。また、第2CV値>第1CV値とするために、(集電体用ペーストの平均粒径)>(電極層用ペーストの平均粒径)>(固体電解質グリーンシートの平均粒径)という関係が得られるように、各粉末の粒径を調整した。
【0053】
(積層工程)
図6で例示するように、グリーンシート51の一面に、電極層用ペースト52を印刷し、さらに集電体用ペースト53を印刷し、さらに電極層用ペースト52を印刷する。グリーンシート51上で電極層用ペースト52および集電体用ペースト53が印刷されていない領域には、逆パターン54を印刷する。逆パターン54として、グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数のグリーンシート51を、交互にずらして積層し、積層体を得る。この場合、当該積層体において、2端面に交互に、電極層用ペースト52および集電体用ペースト53のペアが露出するように、積層体を得る。
【0054】
(焼成工程)
次に、得られた積層体を焼成する。焼成の条件は酸化性雰囲気下あるいは非酸化性雰囲気下で、最高温度を好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは500℃~900℃などとすることが特に限定なく挙げられる。最高温度に達するまでにバインダを十分に除去するために酸化性雰囲気において最高温度より低い温度で保持する工程を設けてもよい。プロセスコストを低減するためにはできるだけ低温で焼成することが望ましい。焼成後に、再酸化処理を施してもよい。以上の工程により、積層チップ60が生成される。
【0055】
(外部電極形成工程)
その後、積層チップ60の2端面に金属ペーストを塗布し、焼き付ける。それにより、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bを形成することができる。あるいは、積層チップ60を、2端面に接する上面、下面、2側面で、第1外部電極40aと第2外部電極40bとが離間して露出できるような専用の冶具にセットし、スパッタにより電極を形成してもよい。形成した電極にめっき処理を施すことで、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bを形成してもよい。
【実施例
【0056】
以下、実施形態に従って全固体電池を作製し、特性について調べた。
【0057】
(実施例1)
Co、LiCO、リン酸二水素アンモニウム、Al、GeOを混合し、固体電解質材料粉末としてCoを所定量含むLi1.3Al0.3Ge1.7(POを固相合成法により作製した。得られた粉末をZrOボールで、乾式粉砕を行った。さらに、湿式粉砕(分散媒:イオン交換水またはエタノール)にて、固体電解質スラリを作製した。得られたスラリに、バインダを添加して固体電解質ペーストを得て、グリーンシートを作製した。LiCoPO、Coを所定量含むLi1.3Al0.3Ti1.7(POを上記同様に固相合成法にて合成した。
【0058】
電極活物質および固体電解質材料を湿式ビーズミル等で高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製した。次に、セラミックスペーストと導電性材料とをよく混合し、電極層用ペーストを作製した。
【0059】
グリーンシート上に、所定のパターンのスクリーンを用いて、電極層用ペーストを印刷し、さらに集電体層用ペーストとしてPdペーストを印刷し、更に電極層用ペーストを印刷した。印刷後のシートを、左右に電極が引き出されるようにずらして10枚重ね、グリーンシートを重ねたものをカバー層として上下に貼り付け、熱加圧プレスにより圧着し、ダイサーにて積層体を所定のサイズにカットした。カットしたチップ200個を300℃以上500℃以下で熱処理して脱脂し、900℃以下で熱処理して焼結させ焼結体を作製した。
【0060】
各サンプルの断面をSEMにて観察した。固体電解質層30の厚みに対し、長さが7~9倍となる倍率で任意箇所の10枚のSEM写真を撮り、1枚につき縦に30本の等間隔の縦線を引いた。縦線に沿って、固体電解質層30の厚み(1枚につき30箇所×10枚=300箇所)を計測した。平均値と標準偏差を求め、変動係数:CV値=標準偏差/平均値(%)を求めた。この値を、固体電解質層30と、当該固体電解質層30を挟む第1電極層11および第2電極層21との界面の粗さ値(第1CV値)とした。
【0061】
同様に、第1集電体層12の厚みに対し長さが7~9倍となる倍率で任意箇所の10枚のSEM写真を撮り、1枚につき縦に30本の等間隔の縦線を引いた。縦線に沿って、集電体厚み(1枚につき30箇所×10枚=300箇所)を計測した。平均値と標準偏差を求め、変動係数:CV値=標準偏差/平均値(%)を求める。この値を、第1集電体層12と、当該第1集電体層12を挟む2層の第1電極層11との界面の粗さ値(第2CV値)とした。
【0062】
同様に、第2集電体層22の厚みに対し長さが7~9倍となる倍率で任意箇所の10枚のSEM写真を撮り、1枚につき縦に30本の等間隔の縦線を引いた。縦線に沿って、集電体厚み(1枚につき30箇所×10枚=300箇所)を計測した。平均値と標準偏差を求め、変動係数:CV値=標準偏差/平均値(%)を求めた。この値を、第2集電体層22と、当該第2集電体層22を挟む2層の第2電極層21との界面の粗さ値(第2CV値)とした。
【0063】
固体電解質層30の平均厚さは、8μmであった。第1CV値は、30%であった。第2CV値は、34%であった。
【0064】
(実施例2)
実施例2では、固体電解質層30の平均厚さは、7μmであった。第1CV値は、30%であった。第2CV値は、34%であった。他の条件は、実施例1と同様とした。
【0065】
(実施例3)
実施例3では、固体電解質層30の平均厚さは、6μmであった。第1CV値は、30%であった。第2CV値は、34%であった。他の条件は、実施例1と同様とした。
【0066】
(実施例4)
実施例4では、固体電解質層30の平均厚さは、7μmであった。第1CV値は、30%であった。第2CV値は、50%であった。他の条件は、実施例1と同様とした。
【0067】
(実施例5)
実施例5では、固体電解質層30の平均厚さは、7μmであった。第1CV値は、40%であった。第2CV値は、50%であった。他の条件は、実施例1と同様とした。
【0068】
(実施例6)
実施例6では、固体電解質層30の平均厚さは、5μmであった。第1CV値は、18%であった。第2CV値は、22%であった。他の条件は、実施例1と同様とした。
【0069】
(比較例)
比較例では、固体電解質層30の平均厚さは、7μmであった。第1CV値は、35%であった。第2CV値は、34%であった。他の条件は、実施例1と同様とした。
【0070】
(ショート率)
実施例1~6および比較例のそれぞれについて、各サンプルのショートの発生の有無を判定した。導電率が10-3S/cm以上を示す場合、ショートが発生していると判定した。測定対象サンプル数を100個とし、ショート発生サンプル数の割合をショート率として算出した。ショート率≦5%であれば非常に良好「◎」と判定し、5%<ショート率≦10%であれば良好「〇」と判定し、10%<ショート率<15%であればやや良好「△」と判定し、15%≦ショート率であれば不合格「×」と判定した。
【0071】
(サイクル特性)
実施例1~6および比較例のそれぞれについて、各サンプルに対し、25℃にて、2.5V-0Vの電圧範囲で10Cにて充放電を繰り返し、初回の放電容量に対し、(200回目放電容量/初回放電容量)をサイクル特性とした。90%<サイクル特性であれば非常に良好「◎」と判定し、85%≦サイクル特性≦90%であれば良好「〇」と判定し、80%≦サイクル特性<85%であればやや良好「△」と判定し、サイクル特性<80%であれば不合格「×」と判定した。
【0072】
(自己放電特性)
実施例1~6および比較例のそれぞれについて、各サンプルに対し、25℃にて、満充電後、開回路で電圧をモニタリングした。(50時間後の電圧値/測定開始直後の電圧値)を求め、自己放電特性とした。95%≦自己放電特性であれば非常に良好「◎」と判定し、90%≦自己放電特性<95%であれば良好「〇」と判定し、80%≦自己放電特性<90%であればやや良好「△」と判定し、自己放電特性<80%であれば不合格「×」と判定した。
【0073】
実施例1~6および比較例の結果を表1に示す。
【表1】
【0074】
実施例1では、ショート発生率は3%であり、非常に良好と判定された。また、サイクル特性は92%であり、非常に良好と判定された。自己放電特性は96%であり、非常に良好と判定された。
【0075】
実施例2では、ショート発生率は5%であり、非常に良好と判定された。また、サイクル特性は91%であり、非常に良好と判定された。自己放電特性は95%であり、非常に良好と判定された。
【0076】
実施例3では、ショート発生率は9%であり、良好と判定された。また、サイクル特性は87%であり、良好と判定された。自己放電特性は90%であり、良好と判定された。
【0077】
実施例4では、ショート発生率は7%であり、良好と判定された。また、サイクル特性は90%であり、非常に良好と判定された。自己放電特性は92%であり、良好と判定された。
【0078】
実施例5では、ショート発生率は13%であり、やや良好と判定された。また、サイクル特性は82%であり、やや良好と判定された。自己放電特性は83%であり、やや良好と判定された。
【0079】
実施例6では、ショート発生率は11%であり、やや良好と判定された。また、サイクル特性は85%であり、良好と判定された。自己放電特性は88%であり、やや良好と判定された。
【0080】
比較例では、ショート発生率は15%であり、不合格と判定された。また、サイクル特性は79%であり、不合格と判定された。自己放電特性は80%であり、やや良好と判定された。
【0081】
ショート発生率、サイクル特性および自己放電特性のいずれにおいても不合格がなければ、総合判定を合格「〇」と判定した。ショート発生率、サイクル特性および自己放電特性のいずれかが不合格であれば、総合判定を不合格「×」と判定した。
【0082】
実施例1~6のいずれにおいても、総合判定は合格「〇」と判定された。これは、第1CV値<第2CV値となったことで、固体電解質層30が十分に平坦化されたからであると考えられる。一方、比較例では、総合判定は不合格「×」と判定された。これは、第1CV値≧第2CV値となったことで、固体電解質層30が十分に平坦化されなかったからであると考えられる。
【0083】
(膜剥がれ)
実施例1~6および比較例の各サンプルについて膜剥がれの有無を確認した。実施例1~6では、いずれのサンプルにおいても膜剥がれが生じていなかった。これは、第1CV値<第2CV値となったことで、アンカー効果が得られ、集電体層と、当該集電体層を挟む2層の電極層との密着性が向上したからであると考えられる。一方、比較例では、膜剥がれが生じたサンプルが有った。これは、第1CV値>第2CV値となったことで、集電体層と、当該集電体層を挟む2層の電極層との密着性が十分に得られなかったからであると考えられる。
【0084】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 第1電極
11 第1電極層
12 第1集電体層
20 第2電極
21 第2電極層
22 第2集電体層
30 固体電解質層
40a 第1外部電極
40b 第2外部電極
100 全固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6