(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】抗CTLA4-抗PD-1二機能性抗体、その医薬組成物および使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240124BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240124BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240124BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20240124BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240124BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240124BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240124BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240124BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240124BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240124BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240124BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240124BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K49/00
A61K51/10 200
A61P7/06
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2019531513
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2017098466
(87)【国際公開番号】W WO2018036473
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】201610705624.2
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519063037
【氏名又は名称】康方▲藥▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】Room 364,333 Jianshe Road, Sino-Singapore Guangzhou Knowledge City,Jiufo Guangzhou,Guangdong 510530 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】李百勇
(72)【発明者】
【氏名】夏▲ゆ▼
(72)【発明者】
【氏名】王忠民
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲鵬▼
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】加々美 一恵
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104974253(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104987421(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105754990(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105175544(CN,A)
【文献】国際公開第2014/209804(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/015675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1を標的とする少なくとも1個の第1タンパク質機能領域と、
CTLA4を標的とする少なくとも1個の第2タンパク質機能領域と、を含む二重特異性抗体であって、
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域および少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が各々、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片を含み、
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域が、アミノ酸配列が配列番号29-31であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号32-34であるCDRを含む軽鎖可変領域とを含み、
前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が、アミノ酸配列が配列番号35-37であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号38-40であるCDRを含む軽鎖可変領域とを含
み、そして
前記二重特異性抗体が、B7へのCTLA4の結合を遮断し、そしてPDL1へのPD-1の結合を遮断する、二重特異性抗体。
【請求項2】
PD-1を標的とする少なくとも1個の第1タンパク質機能領域と、
CTLA4を標的とする少なくとも1個の第2タンパク質機能領域と、を含む二重特異性抗体であって、
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域および少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が各々、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片を含み、
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域が、アミノ酸配列が配列番号29-31であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号32-34であるCDRを含む軽鎖可変領域とを含み、
前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が、アミノ酸配列が配列番号35、41および37であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号38-40であるCDRを含む軽鎖可変領域とを含み、
前記二重特異性抗体が、B7へのCTLA4の結合を遮断し、そしてPDL1へのPD-1の結合を遮断する、二重特異性抗体。
【請求項3】
PD-1を標的とする少なくとも1個の第1タンパク質機能領域と、
CTLA4を標的とする少なくとも1個の第2タンパク質機能領域と、を含む二重特異性抗体であって、
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域および少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が各々、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片を含み、
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域が、アミノ酸配列が配列番号29-31であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号32-34であるCDRを含む軽鎖可変領域とを含み、
前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が、アミノ酸配列が配列番号42-44であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号45-47であるCDRを含む軽鎖可変領域とを含
み、
前記二重特異性抗体が、B7へのCTLA4の結合を遮断し、そしてPDL1へのPD-1の結合を遮断する、二重特異性抗体。
【請求項4】
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域の前記重鎖可変領域が配列番号16または配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域の前記軽鎖可変領域が配列番号18または配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域の前記重鎖可変領域が配列番号2、配列番号6または配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域の軽鎖可変領域が配列番号4、配列番号8または配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域の前記重鎖可変領域が配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域の軽鎖可変領域が配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域の前記重鎖可変領域が配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域の軽鎖可変領域が配列番号27のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域と前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域は、直接に接続または接続断片によって接続される、請求項1~7の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記接続断片が(GGGGS)nであり、nは、1、2、3、4、5または6である、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
前記抗原結合断片は、半抗体、Fab、F(ab’)
2、または、一本鎖抗体を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域が免疫グロブリンを含み、前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が一本鎖抗体を含む、請求項1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記少なくとも1個の第1タンパク質機能領域が一本鎖抗体を含み、前記少なくとも1個の第2タンパク質機能領域が免疫グロブリンを含む、請求項1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記二重特異性抗体は、少なくとも2個以上の第1タンパク質機能領域、少なくとも2個以上の第2タンパク質機能領域、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項1~12の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgE、または、IgMである、請求項1~13の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記免疫グロブリンはIgGである、請求項14に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
前記免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である、請求項15に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
前記一本鎖抗体は、免疫グロブリンの重鎖のC末端に接続されている、請求項12~16の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
請求項1
1に記載の二重特異性抗体をコードする核酸配列を含む単離核酸分子であって、前記核酸配列は
免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、および一本鎖抗体をコードし、
前記
免疫グロブリンの重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号29-31であるCDRを含み、前記
免疫グロブリンの軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号32-34であるCDRを含み、
前記一本鎖抗体は、アミノ酸配列が配列番号35-37であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号38-40であるCDRを含む軽鎖可変領域を含む、
単離核酸分子。
【請求項19】
請求項
11に記載の二重特異性抗体をコードする核酸配列を含む単離核酸分子であって、前記核酸配列は
免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、および一本鎖抗体をコードし、
前記
免疫グロブリンの重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号29-31であるCDRを含み、前記
免疫グロブリンの軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号32-34であるCDRを含み、
前記一本鎖抗体は、アミノ酸配列が配列番号35、41および37であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号38-40であるCDRを含む軽鎖可変領域を含む、
単離核酸分子。
【請求項20】
請求項
11に記載の二重特異性抗体をコードする核酸配列を含む単離核酸分子であって、前記核酸配列は
免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、および一本鎖抗体をコードし、
前記
免疫グロブリンの重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号29-31であるCDRを含み、
前記免疫グロブリンの軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号32-34であるCDRを含み、
前記一本鎖抗体は、アミノ酸配列が配列番号42-44であるCDRを含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号45-47であるCDRを含む軽鎖可変領域を含む、
単離核酸分子。
【請求項21】
請求項18、請求項19、
又は請求項20
に記載の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項22】
請求項18、請求項19、
又は請求項20
に記載の単離核酸分子、
或いは請求項2
1に記載のベクターを含む、宿主細胞株。
【請求項23】
請求項1~17の何れか一項に記載の二重特異性抗体を調製する方法であって、請求項22に記載の宿主細胞株を適切な条件で培養する工程、および、細胞培養物から前記二重特異性抗体を回収する工程を含む、方法。
【請求項24】
二重特異性抗体および複合部分を含む複合体であって、前記二重特異性抗体は請求項1~17の何れか一項に記載の二重特異性抗体であり、前記複合部分は検出可能な標識である、複合体。
【請求項25】
前記複合部分が放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素である、請求項24に記載の複合体。
【請求項26】
請求項1~17の何れか一項に記載の二重特異性抗体、あるいは、請求項24に記載の複合体を含むことを特徴とする、キット。
【請求項27】
前記キットが前記二重特異性抗体を特異的に認識する第2抗体をさらに含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記第2抗体は検出可能な標識を含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記検出可能な標識が、放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素である、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
請求項1~17の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは請求項24に記載の複合体を含み、
さらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項31】
腫瘍を予防および/または治療、ならびに/あるいは、診断する方法に用いるための、請求項1~17の何れか一項に記載の二重特異性抗体もしくは請求項24に記載の複合体を含む組成物あるいは請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌または白血病である、請求項31に記載の組成物または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍治療および分子免疫学の分野に属し、抗CTLA4-抗PD-1二機能性抗体、その医薬組成物およびその使用に関する。具体的に、本発明は抗CTLA4-抗PD-1のモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞傷害性Tリンパ球に関する抗原-4(cytotoxic T lymphocyte sociated antigen 4、CTLA4とも略称される)は、遺伝子構造、染色体局在、配列同一性および遺伝子発現の面でCD28分子と非常に近接な関係を持ち、共に共刺激分子B7の受容体であり、主に活性化されるT細胞の表面に発現される。CTLA4は、B7に結合すると、マウスおよびヒトT細胞の活性化を阻害でき、T細胞の活性化において負的調節する役割を果たす。
CTLA4 mAbまたはCTLA4リガンドは、CTLA4の天然的なリガンドとのCTLA4の結合を阻止することができることによって、T細胞の負的調節したシグナルに対するCTLA4の伝達をブロックし、種々の抗原に対するT細胞の反応性を高め、この点についてインビボおよびインビトロの研究結果は基本的に一致している。現在、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、胃腸癌、肝臓癌、悪性黒色腫などの治療のために用いられている臨床試験中にあるCTLA4 mAbは存在する(Grosso JF., Jure-Kunkel MN., CTLA-4 blockade in tumor models: an overview of preclinical and translational research.Cancer Immun. 2013; 13:5. Epub 2013 Jan 22)。
【0003】
インターロイキン2(IL-2)はT細胞から産生され、T細胞サブセットを調節する成長因子であり、また免疫応答を調節する重要な因子であり、かつ活性化B細胞の増殖を促進し、抗体反応、造血および腫瘍監視に関与することができる。組換えヒトIL-2は悪性腫瘍(メラノーマ、腎臓腫瘍などを含む)の治療に用いられることが米国FDAによって承認され、かつ、慢性ウイルス感染症の治療の臨床研究を受けている(Chavez, A.R.ら、 Pharmacologic administration of interleukin-2. Ann N Y Acad Sci, 2009. 1182:p. 14-27)。インビトロ試験において、CTLA4 mAbは、CTLA4の生体に対する免疫抑制を特異的に取り除け、T細胞を活性化させ、IL-2の産生を誘導し、抗腫瘍および寄生虫症などの疾患の遺伝子治療において広い応用見通しを有する。
【0004】
CTLA4およびCTLA4 mAbは、T細胞の機能に影響を与える重要な因子として、生体の免疫微環境を介入することにより、病気に対して特異的な治療効果を生み出し、かつ高い治療効果を発揮し、伝統的な薬物の欠乏を補って、遺伝子治療の新しい方法を切り開く。CTLA4およびCTLA4 mAbは、試験およびさまざまな段階の臨床診療で使用され、例えば、自己免疫疾患について喘息動物モデルにおける気道の高反応性の効果的な抑制、リウマチ性疾患の発展の阻止、および、同種異系移植における生体の免疫寛容の介在などに用いられている。しかしながら、生物の遺伝子治療は短期的な臨床試験で副作用を見つけなかったが、CTLA4 mAbがCTLA4-B7シグナルを必要以上に遮断することと自己免疫疾患の発生につながる可能性があるなど長期使用による潜在的な影響も注意すべきである。抗体はそのリガンドに特異的に結合でき、かつ標的細胞を溶解または病理学的プロセスを遮断ことができるため、抗体薬剤、特にヒト由来抗体薬剤の開発および利用は、ヒト悪性腫瘍および他の免疫疾患の臨床治療にとって非常に重要である。
【0005】
膜貫通受容体PD-1(プログラム細胞死因子-1)はCD28遺伝子ファミリーの一員であり、活性化T細胞、B細胞、および、骨髄系細胞のいずれにおいても発現される。PD-1の受容体であるPDL1およびPDL2はいずれもB7スーパーファミリーに属し、そのうち、PDL1はT細胞、B細胞、内皮細胞および上皮細胞を含む様々な細胞において発現され、PDL2は樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞においてのみ発現される。
【0006】
T細胞はウイルス感染の除去に非常に重要な役割を果たすが、T細胞の抗ウイルス反応は、通常、免疫病理学と関連している。PD-1はT細胞の活性化に対する負的調節に非常に重要な役割を果たし、T細胞に対するPD-1を介した負的調節の作用は感染によって引き起こされる組織損傷を減らすことができるが、PD-1の負的調節作用を遮断または阻害すると、自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。例えば、PD-1ノックアウトマウスは膵臓ウイルス感染の除去により効果的であるが、より重篤な肝障害を引き起こす(Isaiら、 2003, J. Exp. Med. 198:39-50)。また、PD-1を高度に発現する腫瘍は検出が困難な癌が伴う(Hamanishiら、 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-5)。インビボで抗体を注射することによってPD-1の発現をコントロールする方法は、有効的な方法である。
【0007】
PD-1抗体は広範囲の抗腫瘍の予想および素晴らしい効果を有するため、PD-1経路を標的とする抗体が様々な腫瘍の治療において飛躍的な進歩をもたらすことは、業界で広く受け入れられており、例えば、非小細胞肺がん、腎細胞がん、卵巣がん、黒色腫の治療に用いられ(Homet M. B., Parisi G.ら、 Anti-PD-1 Therapy in Melanoma. Semin Oncol. 2015 Jun;42(3):466-473)、白血病および貧血の治療に用いられる(Held SA, Heine Aら、 Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets. 2013 Sep;13(7):768-74)。2012年と2013年のアメリカ癌学会(AACR)の年次総会及びアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で、これまでにない臨床効果データが発表された後、PD-1抗体は世界の製薬業界で最も熱く研究される新薬になる。
【0008】
また、インターフェロンγ(IFNγ)は、主にナチュラルキラー細胞(NK)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)から自然に生成されるもの、および、CD4 Th1細胞とCD8細胞障害性Tリンパ球(CTL)のようなエフェクターT細胞から所定の抗原による刺激を経った後産生したものがある。IFNγは、重要な先天性および後天性免疫サイトカインとして、腫瘍、ウイルス、ある細菌感染および原虫感染との戦いまたは抑制において重要な役割を果たす。同時に、IFNγは、マクロファージを活性化し、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現を誘導して免疫反応を活性化することによって腫瘍の発達を制御することができる(Schoenborn JR, Wilson CB. Regulation of Interferon-γ During Innate and Adaptive Immune Responses. Advances in Immunology 2007; 96:41-101)。
モノクローナル抗体は、現在、癌、炎症、感染症及び他の疾患の治療に使用されてきたが、その多くは単一特異性である。しかし、いくつかの病気は、病気の原因と体内の影響因子が通常、異なるシグナル伝達経路において、異なるタンパク質、異なるサイトカイン、および受容体などの上方または下方制御、インビボ機能の阻害または促進などさまざまな面を含む。したがって、さまざまな異なる要因の遮断は、治療効果を向上させることができる。これは、異なる薬物の組み合わせ、異なる薬物の置き換え、例えば多重特異性抗体による複数のターゲティング戦略などで達成することができる。
二機能性抗体は、二重特異性抗体(Bispecific Antibody)とも呼ばれ、2つの異なる抗原を同時に標的結合する特異的な薬物であり、免疫ソートによる精製で調製される。また、これは、遺伝子工学で得られ、遺伝子工学は、結合部位の最適化、合成形態の考慮、および、収率の点で柔軟性を有するので、一定の利点を有する。現在、その45種類超えの存在形態が証明されている(Muller D, Kontermann RE. Bispecific antibodies for cancer immunotherapy: Current perspectives. BioDrugs 2010; 24:89-98)。現在、開発された複種類の二重特異性抗体は、IgG-ScFv形態、すなわち、Morrisonモデルであり(1997 Coloma MJ, Morrison SL. Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies. Nat Biotechnol.Nature Biotechnology, 1997;15:159-163)、天然的に存在しているIgG形態と類似しているため、抗体工学、発現および精製に利点があり、二機能性抗体の理想的な存在形態であることが証明された(Miller BR, Demarest SJら、 Stability engineering of scFvs for the development of bispecific and multivalent antibodies. Protein Eng Des Sel 2010; 23:549-57; Fitzgerald J, Lugovskoy A. Rational engineering of antibody therapeutics targeting multiple oncogene pathways. MAbs 2011; 3:299-309)。
しかし、現在、世界には2つの異なる細胞表面分子に対する抗体が存在するが、市場には同じ細胞上の2つ以上の標的サイトを標的とする二機能性抗体はまた存在していない。同時に、抗PD-1および抗CTLA4の二重機能性抗体薬を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Grosso JF., Jure-Kunkel MN., CTLA-4 blockade in tumor models: an overview of preclinical and translational research.Cancer Immun. 2013; 13:5. Epub 2013 Jan 22
【文献】Chavez, A.R.ら、 Pharmacologic administration of interleukin-2. Ann N Y Acad Sci, 2009. 1182:p. 14-27
【文献】Isaiら、 2003, J. Exp. Med. 198:39-50
【文献】Hamanishiら、 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-5
【文献】Homet M. B., Parisi G.ら、 Anti-PD-1 Therapy in Melanoma. Semin Oncol. 2015 Jun;42(3):466-473
【文献】Held SA, Heine Aら、 Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets. 2013 Sep;13(7):768-74
【文献】Schoenborn JR, Wilson CB. Regulation of Interferon-γ During Innate and Adaptive Immune Responses. Advances in Immunology 2007; 96:41-101
【文献】Muller D, Kontermann RE. Bispecific antibodies for cancer immunotherapy: Current perspectives. BioDrugs 2010; 24:89-98
【文献】1997 Coloma MJ, Morrison SL. Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies. Nat Biotechnol.Nature Biotechnology, 1997;15:159-163
【文献】Miller BR, Demarest SJら、 Stability engineering of scFvs for the development of bispecific and multivalent antibodies. Protein Eng Des Sel 2010; 23:549-57
【文献】Fitzgerald J, Lugovskoy A. Rational engineering of antibody therapeutics targeting multiple oncogene pathways. MAbs 2011; 3:299-309
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究および創造的な取り組みを施したところ、哺乳動物細胞発現系を用いて発現した組み換えCTLA4およびPD-1を、抗原としてマウスを免疫させ、マウス脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させることによってハイブリドーマ細胞を得た。本発明者らは、多数の試料をスクリーニングすることによってそれぞれ下記のハイブリドーマ細胞株を得た。
【0011】
2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C201587であるハイブリドーマ細胞株LT002(CTLA4-4G10)、および、
2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C2015105であるハイブリドーマ細胞株LT003(PD-1-14C12)。
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、ハイブリドーマ細胞株LT002がCTLA4に特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(4G10と命名)を分泌することができ、そして当該モノクローナル抗体がCTLA4のB7への結合を非常に有効的に遮断できること、および、
ハイブリドーマ細胞株LT003がPD-1に特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(14C12と命名)を分泌することができ、そして当該モノクローナル抗体がPDL1へのPD-1の結合を非常に有効的に遮断できることを見出した。
【0013】
さらに、本発明者らは、創造的に抗CTLA4のヒト化抗体(それぞれ4G10H1L1、4G10H3L3、4G10H4L3及び8D2H14L2と命名)および抗PD-1のヒト化抗体(14C12H1L1と命名)を作製した。
【0014】
さらに、本発明者らは、創造的に両種類のヒト化抗体をタンパク質と組換え、融合させて新型の抗体になり、CTLA4、PD-1と結合することができ、かつ、B7へのCTLA4の結合、PDL1へのPD-1の結合を遮断することができるヒト化二機能性抗体(それぞれBiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007及びBiAb010と命名)を得た。当該抗体は、ヒトT細胞に有効的に結合し、T細胞を活性化してヒトリンパ球によるIFN-γおよびIL-2の分泌を誘導でき、肺癌、黒色腫、腎臓腫瘍、卵巣癌、白血病などの癌を予防-治療する薬物を調製するために用いられる可能性を有する。
【0015】
したがって、次の発明を提供する。
本発明のある態様は、PD-1を標的とする第1タンパク質機能領域と、CTLA4を標的とする第2タンパク質機能領域と、を含む二重特異性抗体である。
【0016】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域は、直接に接続または接続セグメントによって接続され、好ましくは、前記接続断片が(GGGGS)nであり、nは、正の整数、例えば1、2、3、4、5または6である。
【0017】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域は、独立して免疫グロブリンまたはその抗原結合断片、例えば、半抗体、Fab、F(ab’)2、または、一本鎖抗体であり、
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記第2タンパク質機能領域は一本鎖抗体であり、あるいは、
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域は一本鎖抗体であり、前記第2タンパク質機能領域は免疫グロブリンである。
【0018】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域は、独立して1個、2個または2個以上である。
【0019】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMであり、好ましくは、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4である。
【0020】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記一本鎖抗体は、免疫グロブリンの重鎖のC末端に接続されている。免疫グロブリンは二つの重鎖を有するため、一つの免疫グロブリン分子は、二つの一本鎖抗体分子に接続されている。好ましくは、二つの一本鎖抗体分子が同一である。
【0021】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記の免疫グロブリンの重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDRを含み、および/または、
前記の一本鎖抗体の重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 42-44であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDRを含む。
【0022】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記の免疫グロブリンの重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 42-44であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDRを含み、および/または、
前記の一本鎖抗体の重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDRを含む。
【0023】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 20からなる群から選択され、前記免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 18とSEQ ID NO: 22からなる群から選択され、および/または、
前記一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 25からなる群から選択され、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される。
【0024】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 25からなる群から選択され、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:27からなる群から選択され、および/または、
前記一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 20からなる群から選択され、前記免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 18およびSEQ ID NO: 22からなる群から選択される。
【0025】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記の免疫グロブリンは非-CDR領域を含み、かつ、前記非-CDR領域は、鼠類以外の種由来、例えばヒト抗体由来である。
【0026】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記免疫グロブリンの定常領域はヒト化定常領域であり、例えば、重鎖定常領域は、いずれもIg gamma-1 chain C region、ACCESSION: P01857を採用し、軽鎖定常領域は、いずれもIg kappa chain C region、ACCESSION: P01834を採用した。
【0027】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記の二重特異性抗体において、
前記の二重特異性抗体は、CTLA4タンパク質および/またはPD-1タンパク質に結合するKDが約10-5M未満、例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下である。
【0028】
本発明は、さらに、重鎖可変領域が、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDR、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 42-44であるCDR、および、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDR、
を含み、
かつ、
軽鎖可変領域が、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDR、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDR、
を含み、
好ましくは、軽鎖可変領域のCDRが重鎖可変領域のCDRと同一ではない、
二重特異性抗体に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、抗体の重鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記抗体の重鎖可変領域は、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDR、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、又はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 42-44であるCDR、および、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDR、
を含む、単離核酸分子に関する。
【0030】
本発明の別の態様は、抗体の軽鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記抗体の軽鎖可変領域は、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDR、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDR
を含む、単離核酸分子に関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、本発明の単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0032】
本発明のさらなる態様は、本発明の単離核酸分子または本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、本発明の二重特異性抗体を調製する方法であって、本発明の宿主細胞を適切な条件で培養する工程、および、細胞培養物から前記二重特異性抗体を回収する工程を含む方法に関する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、二重特異性抗体および複合部分を含む複合体であって、前記二重特異性抗体は本発明の二重特異性抗体であり、前記複合部分は検出可能な標識であり、具体的に前記複合部分が放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素である、複合体に関する。
【0035】
本発明のさらなる態様は、本発明の二重特異性抗体、または本発明の複合体を含むキットであって、具体的に、前記キットが前記二重特異性抗体を特異的に認識する第2抗体をさらに含み、任意的に、前記第2抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素をさらに含むキットに関する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、試料中のCTLA4および/PD-1の存在またはそのレベルを検出するために用いられるキットの製造における、本発明の二重特異性抗体の使用に関する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、本発明の二重特異性抗体あるいは本発明の複合体を含み、
さらに薬学的に許容されるベクター及び/または賦形剤を任意的に含む、医薬組成物に関する。
【0038】
本発明のさらなる態様は、腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断する薬剤の調製における、本発明の二重特異性抗体または本発明の複合体の使用であって、具体的に、前記腫瘍が、、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、使用に関する。
【0039】
発明者らは、動物試験で本発明の二重特異性抗体BiAb004がPD-1 HuGEMMマウス(ヒトPD-1遺伝子導入マウス)右側皮下で接種したMC38腫瘍細胞の成長を効果的に抑制できることを見出し、PD-1 HuGEMM MC38担癌マウスの腫瘍体積の増加を著しくに抑制すると示されていた。
【0040】
本発明のさらなる態様は、本発明の二重特異性抗体あるいは本発明の複合体の、
試料中のCTLA4のレベルを検出する薬剤、
CTLA4のB7への結合を遮断する薬剤、
CTLA4の活性またはCTLA4のレベルを制御(例えば下方制御)する薬剤、
CTLA4の生体に対する免疫抑制を取り除く薬剤、
Tリンパ球を活性化する薬剤、あるいは、
Tリンパ球におけるIL-2の発現を増加させる薬剤
の調製における使用、
および/または、
PD-1のPDL1への結合を遮断する薬剤、
PD-1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する薬剤、
PD-1の生体に対する免疫抑制を取り除く薬剤、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γの発現を増加させる薬剤
の調製における使用に関する。
【0041】
本発明のさらなる態様は、有効量の本発明の二重特異性抗体あるいは本発明の複合体を、細胞またはニーズがある被験者にインビボまたはインビトロで投与する工程を含む、
試料中のCTLA4のレベルを検出する方法、
CTLA4のB7への結合を遮断する方法、
CTLA4の活性またはCTLA4のレベルを制御(例えば下方制御)する方法、
CTLA4の生体に対する免疫抑制を取り除く方法、
Tリンパ球を活性化する方法、あるいは、
Tリンパ球におけるIL-2の発現を増加させる方法、
および/または、
PD-1のPDL1への結合を遮断する方法、
PD-1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する方法、
PD-1の生体に対する免疫抑制を取り除く方法、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γの発現を増加させる方法、
からなる群から選択される方法に関する。
本発明のインビトロ試験において、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体および抗CTLA4-抗PD-1二機能性抗体は、いずれもIFN-γの分泌を誘導して免疫反応を活性化することができる。
【0042】
本発明のさらなる態様は、有効量の本発明の実施形態の何れか1つによる二重特異性抗体あるいは本発明の複合体を、ニーズがある被験者に投与する工程を含む、腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断する方法であって、具体的に、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、方法に関する。
【0043】
本発明の実施形態の何れか1つによる二重特異性抗体または複合体によれば、これらは、腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断することに用いられ、具体的に、前記腫瘍は、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである。
【0044】
本発明の実施形態の何れか1つによる二重特異性抗体または複合体によれば、これらは、
CTLA4のB7への結合を遮断すること、
CTLA4の活性またはCTLA4のレベルを制御(例えば下方制御)すること、
CTLA4の生体に対する免疫抑制を取り除くこと、あるいは
Tリンパ球を活性化する薬剤こと、または、Tリンパ球におけるIL-2の発現を増加させること、
および/または、
PD-1のPDL1への結合を遮断すること、
PD-1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)すること、
PD-1の生体に対する免疫抑制を取り除くこと、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γの発現を増加させること、
に用いられる。
【0045】
抗体治療薬物、特にモノクローナル抗体(MAB)は、様々な疾患の治療において良好な結果を達成した。これらの治療用抗体を得る伝統的な実験方法として、動物を抗原で免疫し、免疫された動物において抗原を標的とする抗体を得る方法、または、親和性成熟の方法によって抗原に対して低い親和性を有する抗体を改良する方法はある。しかしながら、これらの方法は多くの時間と労力を必要とし、そしてほとんどの場合それらは抗原上の所定のエピトープに特異的ではない。
【0046】
軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原との結合を決定する。各鎖の可変領域は、いずれも相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域を含む(重鎖(H)のCDRは、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖(L)のCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む;それらはKabatらに命名され、詳しくは、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition(1991), Vol. 1-3, NIH Publication 91-3242, Bethesda Mdを参照のこと)。
【0047】
当業者によって周知の技術的手段によって、例えば、VBASE2データベースによって、下記の(1)-(13)項目のモノクローナル抗体配列におけるCDR領域のアミノ酸配列を分析した結果は、下記のとおりである。
【0048】
(1)14C12
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:16に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:18に示す。
【0049】
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
HCDR1: GFAFSSYD (SEQ ID NO: 29)
HCDR2: ISGGGRYT (SEQ ID NO: 30)
HCDR3: ANRYGEAWFAY (SEQ ID NO: 31)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
LCDR1: QDINTY (SEQ ID NO: 32)
LCDR2: RAN (SEQ ID NO: 33)
LCDR3: LQYDEFPLT (SEQ ID NO: 34)
【0050】
(2)14C12H1L1
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 22に示す。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、14C12と同じである。
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、14C12と同じである。
【0051】
(3)4G10
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 4に示す。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
HCDR1: GYSFTGYT (SEQ ID NO: 35)
HCDR2: INPYNNIT (SEQ ID NO: 36)
HCDR3: ARLDYRSY (SEQ ID NO: 37)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
LCDR1: TGAVTTSNF (SEQ ID NO: 38)
LCDR2: GTN (SEQ ID NO: 39)
LCDR3: ALWYSNHWV (SEQ ID NO: 40)
【0052】
(4)4G10H1L1
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 6に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8に示す。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、4G10と同じである。
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、4G10と同じである。
【0053】
(5)4G10H3L3
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 10に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 12に示す。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、4G10と同じである。
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、4G10と同じである。
【0054】
(6)4G10H4L3
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 14に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 12に示す。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
HCDR1: GYSFTGYT (SEQ ID NO: 35)
HCDR2: INPYNDIT (SEQ ID NO: 41)
HCDR3: ARLDYRSY (SEQ ID NO: 37)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、4G10と同じである。
【0055】
(7)8D2H14L2
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 25に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 27に示す。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
HCDR1: GFTFSDNW(SEQ ID NO: 42)
HCDR2: IRNKPYNYET(SEQ ID NO: 43)
HCDR3: TAQFAY(SEQ ID NO: 44)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
LCDR1: ENIYGG(SEQ ID NO: 45)
LCDR2: GAT(SEQ ID NO: 46)
LCDR3: QNVLRSPFTF(SEQ ID NO: 47)
【0056】
(8)BiAb001
その重鎖可変領域の9つのCDR領域のアミノ酸配列は以下の通りであった。
HCDR1: GFAFSSYD (SEQ ID NO: 29)
HCDR2: ISGGGRYT (SEQ ID NO: 30)
HCDR3: ANRYGEAWFAY (SEQ ID NO: 31)
HCDR4: GYSFTGYT (SEQ ID NO: 35)
HCDR5: INPYNNIT (SEQ ID NO: 36)
HCDR6: ARLDYRSY (SEQ ID NO: 37)
HCDR7: TGAVTTSNF (SEQ ID NO: 38)
HCDR8: GTN (SEQ ID NO: 39)
HCDR9: ALWYSNHWV (SEQ ID NO: 40)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
LCDR1: QDINTY (SEQ ID NO: 32)
LCDR2: RAN (SEQ ID NO: 33)
LCDR3: LQYDEFPLT (SEQ ID NO: 34)
【0057】
(9)BiAb002
その重鎖可変領域の9つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
【0058】
(10)BiAb003
その重鎖可変領域の9つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
【0059】
(11)BiAb004
その重鎖可変領域の9つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
【0060】
(12)BiAb007
その重鎖可変領域の9つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下の通りであった。
HCDR1: GFAFSSYD (SEQ ID NO: 29)
HCDR2: ISGGGRYT (SEQ ID NO: 30)
HCDR3: ANRYGEAWFAY (SEQ ID NO: 31)
HCDR4: GYSFTGYT (SEQ ID NO: 35)
HCDR5: INPYNDIT (SEQ ID NO: 41)
HCDR6: ARLDYRSY (SEQ ID NO: 37)
HCDR7: TGAVTTSNF (SEQ ID NO: 38)
HCDR8: GTN (SEQ ID NO: 39)
HCDR9: ALWYSNHWV (SEQ ID NO: 40)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
【0061】
(13)BiAb010
その重鎖可変領域の9つのCDR領域のアミノ酸配列は以下の通りであった。
HCDR1: GFAFSSYD (SEQ ID NO: 29)
HCDR2: ISGGGRYT (SEQ ID NO: 30)
HCDR3: ANRYGEAWFAY (SEQ ID NO: 31)
HCDR4: GFTFSDNW(SEQ ID NO: 42)
HCDR5: IRNKPYNYET(SEQ ID NO: 43)
HCDR6: TAQFAY(SEQ ID NO: 44)
HCDR7: ENIYGG(SEQ ID NO: 45)
HCDR8: GAT(SEQ ID NO: 46)
HCDR9: QNVLRSPFTF(SEQ ID NO: 47)
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、BiAb001と同じである。
【0062】
本発明において、別段の指定のない限り、本明細書中で使用される科学用語および技術用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書中で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学の試験手順は、いずれも関連技術分野で広く利用される一般的なものである。同時に、本発明をよりよく理解する目的のために、関連用語の定義および説明を以下で提供する。
【0063】
本明細書中で使用される場合、CTLA4タンパク質(Cytotoxic T- Lymphocyte Antigen 4)のアミノ酸配列を言うと、CTLA4タンパク質の全長、CTLA4の細胞外断片CTLA4ECD、または、CTLA4ECDを含有する断片を含み、さらにCTLA4ECDの融合タンパク質、例えばマウスまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)と融合した断片を含む。しかし、当業者は、CTLA4タンパク質のアミノ酸配列において突然変異または変形(置換、欠失、および/または付加を含むがこれらに限定されない)が、それらの生物学機能に影響を及ぼすことなく、自然にまたは人工的に起こり得ると理解できる。したがって、本発明において、「CTLA4タンパク質」という用語には、そのような配列のすべて、ならびに、それらの天然または人工の変異体が含まれるべきである。また、CTLA4タンパク質の配列断片を記載するとき、それはその天然または人工の変異体における対応配列断片も含む。
【0064】
本明細書中で使用される場合、PD-1タンパク質(Programmed cell death protein 1, NCBI GenBank: NM_005018)のアミノ酸配列を言うと、PD-1タンパク質の全長、PD-1の細胞外断片PD-1ECD、または、PD-1ECDを含有する断片を含み、さらにPD-1ECDの融合タンパク質、例えばマウスまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)と融合した断片を含む。しかし、当業者は、PD-1タンパク質のアミノ酸配列において突然変異または変形(置換、欠失、および/または付加を含むがこれらに限定されない)が、それらの生物学機能に影響を及ぼすことなく、自然にまたは人工的に起こり得ると理解できる。したがって、本発明において、「PD-1タンパク質」という用語には、そのような配列のすべて、ならびに、それらの天然または人工の変異体が含まれるべきである。また、PD-1タンパク質の配列断片を記載するとき、それはその天然または人工の変異体における対応配列断片も含む。
【0065】
本明細書中で使用される場合、特別な説明がない限り、前記B7は、B7-1および/またはB7-2である。その具体的なタンパク質配列は、従来技術に知られている配列であり、従来文献またはGenBankに開示された配列を参照することができる。例えば、B7-1(CD80、 NCBI Gene ID: 941);B7-2(CD86、NCBI Gene ID: 942)を参照する。
【0066】
本明細書中で使用される場合、EC50という用語は、最大効果の50%に対する濃度(concentration for 50% of maximal effect)、すなわち最大効果の50%を引き起こす濃度を指す。
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、一般的に2対のポリペプチド鎖(各対は「軽」(L)鎖および「重」(H)鎖を有する。)からなる免疫グロブリン分子を指す。一般的な意味では、重鎖は、抗体における分子量の大きい方のポリペプチド鎖と理解され、軽鎖は抗体における分子量の小さい方のポリペプチド鎖を指す。軽鎖は、κおよびλ軽鎖として分類され得る。重鎖は通常μ、δ、γ、αまたはεとして分類され得、抗体のアイソタイプはそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして定義される。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12つ以上のアミノ酸の「J」領域を介して連結され、重鎖は約3つ以上のアミノ酸の「D」領域をさらに含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域はCLドメインからなる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第一の構成成分(C1q)を含め、宿主組織また因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。VHおよびVL領域は、比較的に保存されるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域に散在する高い可変性を有する領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。)にさらに細かく分けられ得る。各VHまたはVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んでいる、3つのCDRおよび4つのFRからなる。重鎖/軽鎖の各対の可変領域(VHおよびVL)は抗体結合部位をそれぞれ形成する。各領域またはドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))またはChothia & Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;Chothiaら(1989)Nature 342:878-883で提供される定義に従う。特に、重鎖は、三つ以上、例えば6、9、12つのCDRを含んでもよい。例えば本発明の二機能性抗体において、重鎖は、IgG抗体の重鎖のC端がもう一つの抗体のScFvと連接されていてもよく、この場合、重鎖が9つのCDRを含む。「抗体」という用語は、抗体を産生させる何らかの具体的な方法に限定されない。例えば、これは、特に、組み換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体であり得る。
【0067】
本明細書中で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」という用語は、全長抗体が結合する抗原と同じ抗原に特異的に結合する能力を保持する、および/または抗原への特異的な結合について全長抗体と競合する全長抗体の断片を含むポリペプチドを指す。これは、「抗原結合部分」とも呼ばれる。全般的には、全ての目的に対してその全体において引用により本明細書中に組み込まれる、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.ed.,Second Edition,Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。抗体の抗原結合断片は、組み換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断により作製され得る。いくつかの場合において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAbおよび相補性決定領域(CDR)断片、1本鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ(diabody)および、特異的抗原結合能を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「Fd断片」という用語は、VHドメインとCH1ドメインからなる抗体断片を意味する。「Fv断片」という用語は、抗体のシングルアームのVLとVHドメインからなる抗体断片を意味する。「dAb断片」という用語は、VHドメインからなる抗体断片(Wardら、Nature 341:544 546 (1989))を意味する。「Fab断片」という用語は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる抗体断片を意味する。「F(ab’)2断片」という用語は、ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって結合された2つのFab断片を含む抗体断片を意味する。
【0069】
いくつの場合において、抗体の抗原結合断片は一本鎖抗体(例えば、scFv)であり、そのうち、VLとVHドメインは、それらを単一のポリペプチド鎖に形成できるリンカーによって対にして一価分子を形成する(例えば、Birdら、Science 242:423-426 (1988)、および、Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)を参照のこと)。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有する。従来技術における適切なリンカーは、繰り返しGGGGSアミノ酸配列またはそのバリアントからなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を有するリンカーを使ってもよいが、そのバリアント(Holligerら(1993),Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)も使える。また、本発明に用いられる他のリンカーは、Alfthanら(1995),Protein Eng. 8:725-731、Choiら(2001),Eur. J. Immunol. 31: 94-106、Huら(1996),Cancer Res. 56:3055-3061、Kipriyanovら(1999),J. Mol. Biol. 293:41-56、および、Rooversら(2001),Cancer Immunol.に記載されている。
【0070】
また、いくつの場合において、抗体の抗原結合断片は、ダイアボディ、すなわち、2価抗体であり、ここでVHおよびVLドメインは、単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、利用されるリンカーは、短すぎて同じ鎖上の2つのドメインが互いに対形成できないので、別の鎖上の相補的なドメインと対形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が形成される(例えば、Holliger P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)およびPoljak R.J.ら、Structure 2:1121-1123(1994)を参照のこと。)。
【0071】
抗体の抗原結合断片(例えば、上記の抗体断片)は、当業者にとって公知の通常技術(例えば、組み換えDNA技術または酵素的もしくは化学的切断法)を用いて、所定の抗体から得ることができ、かつ、インタクト抗体の場合と同じように特異性についてスクリーニングし得る。
【0072】
本明細書中で、文脈において明らかに指定されない限り、「抗体」という用語について申し述べる場合、インタクトな抗体を含むだけでなく、抗体の抗原結合断片も含む。
本明細書中で使用される場合、「単抗」または「モノクローナル抗体」という用語は、高度に相同性を有する抗体分子の集団からの抗体または抗体断片を指し、すなわち、可能性のある天然の突然変異を除き、完全に同一の抗体分子集団である。単抗は、抗原上の単一のエピトープに非常に高い特異性を有する。モノクローナル抗体とは対照的に、ポリクローナル抗体は、一般的には、抗原上の異なるエピトープを認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は、一般的に、最初にKohlerらにより報告されたハイブリドーマ技術を用いて得ることができる(Nature,256:495,1975)が、組み換えDNA技術を使用して得ることもできる(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと。)。
本明細書中で使用される場合、「キメラ抗体」とは、軽鎖または/および重鎖の一部が1つの抗体(それは所定のある種に由来するか、または所定の抗体クラスもしくはサブクラスに属してもよい。)に由来、かつ、軽鎖また/および重鎖の他の部分が別の抗体(それは同じがまたは異なる種に由来するが、同じかまたは異なる抗体クラスまたはサブクラスに属してもよい)に由来したものであるが、いずれにせよ、標的抗原に対する結合活性を保持する抗体を指す(U.S.P 4,816,567,Cabillyら; Morrisonら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 6855 (1984))。
【0073】
本明細書中で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の全てのまたは一部のCDRを非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域で置き換えた後に得られた抗体または抗体断片を指し、そのうち、ドナー抗体は、所望の特異性、親和性または反応性を有する非ヒト(例えばマウス、ラットまたはウサギ)抗体であり得る。さらに、レシピエント抗体のフレームワーク領域(FR)の一部のアミノ酸残基も、抗体の性能をさらに向上させるかまたは最適化するように、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基または他の抗体のアミノ酸残基で置き換えられ得る。ヒト化抗体に関するより詳細な説明については、例えばJonesら、Nature,321:522-525(1986);Reichmannら、Nature,332:323-329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992);およびClark,Immunol.Today 21:397-402(2000)を参照のこと。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「エピトープ」とは、抗原の免疫グロブリンまたは抗体と特異的に結合する部位を意味する。本分野において、「エピトープ」は、「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープまたは抗原決定基は、一般的に分子の化学的活性な表面基例えばアミノ酸または炭水化物または糖側鎖からなり、かつ、通常、特異的な三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。例えば、エピトープは、一般的に特別な立体配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15つの連続または非連続のアミノ酸を含み、「線状」または「立体配座」であってもよい。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66、G.E.Morris,Ed.(1996)を参照のこと。線状エピトープにおいて、タンパク質は、相互作用分子(例えば抗体)との間の相互作用のすべてのサイトがタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。配座エピトープにおいて、相互作用のサイトは、互いに分離したタンパク質アミノ酸残基を跨って存在する。
【0075】
本明細書中で使用される場合、「単離されている」、または、「単離される」という用語は、人工的手段によってネイティブ状態から得られていることを意味する。自然界にある「単離されている」物質または構成成分が生じる場合、それが位置する天然の環境が変化しているか、または当該物質が天然の環境から単離されているか、またはその両方であると考えられる。例えば、ある単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、ある生きている動物の体に天然に存在し、このような天然の状態から単離される高純度の同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離されている」ものとされる。「単離されている」、または、「単離される」という用語は、人工的または合成物質との混合物を排除せず、物質の活性に影響を与えない他の不純物の存在も排除しない。
【0076】
本明細書中で使用される「E.coli発現系」という用語は、E.coli(株)およびベクターからなる発現系といい、ここで、E.coli(株)は、市販の株に由来するものであるが、例えば、GI698、ER2566、BL21(DE3)、B834(DE3)、BLR(DE3)があるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「ベクター(vector)」という用語は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸送達ビヒクルを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、ベクターにより保有される遺伝物質構成要素が宿主細胞で発現されるように、形質転換、形質導入またはトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができる。ベクターは、当業者にとって周知であり、プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1-由来人工染色体(PAC)のような人工染色体;例えばλファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージならびに動物ウイルスなどが含まれるがこれらに限定されない。ベクターとして使用し得る動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む。)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)がふくまれるがこれらに限定されない。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択構成要素およびレポーター遺伝子を含むがこれらに限定されない、発現を調節するための複数の構成要素を含み得る。さらに、ベクターは、複製開始サイトも含み得る。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクターの導入のために使用し得る細胞を指し、例えばE.コリ(E.coli)またはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などの原核細胞、例えば酵母細胞またはアスペルギルス(Aspergillus)などの真菌細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞もしくはSf9などの昆虫細胞、または、例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞またはヒト細胞などの動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0079】
本明細書中で使用される場合、「同一性」という用語は、2つのポリペプチド間または2つの核酸間の配列の一致性に用いられる。比較される2つの配列中のある部位が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合(例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおけるあるサイトは共にアデニンによって占められるか、または2つのポリペプチドのそれぞれのあるサイトは共にリジンによって占められる場合)、各分子はそのサイトで同一である。2つの配列間の「パーセント同一性」とは、2つの配列に共有される一致的なサイトの数を比較されるサイトの数で割ったもの×100の関数である。例えば,2つの配列の10個のサイトにおいて6個が一致している場合、この2つの配列が60%の同一性を有すると言える。例えば、DNA配列CTGACTとCAGGTTとは、合わせて50%の同一性(6個のサイトにおいて、3個のサイトは一致している)を有する。通常、2つの配列が最大の同一性を生じるように整列されたときにアライメントは、行われる。このようなアライメントは、例えば、コンピュータープログラム、例えばAlignプログラム(DNAstar、Inc.)で簡単に行われるNeedlemanら、(1970)J. Mol. Biol. 48:443-453の方法で実現される。また、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に統合されたE. MeyersとW. Miller (Comput. Appl Biosci.,4:11-17 (1988))のアルゴリズムを使って、PAM120 weight residue tableを使用し、gap length penalty 12、gap penalty 4で2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性を測定する。また、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comから取り得る)に統合されたGAPプログラムにおけるNeedlemanとWunsch (J MoI Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムを使って、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および、16、14、12、10、8、6または4のgap weightと1、2、3、4、5または6の長加重で2個のアミノ酸配列の間のパーセント同一性を測定するができる。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「特異的な結合」という用語は、2つの分子間の非無作為結合反応、例えば抗体とその標的抗原との間の反応などを指す。いくつかの実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(またはある抗原に特異的な抗体)とは、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下の親和性(KD)で抗原に結合することを意味する。本発明のいくつか実施形態において、「標的」という用語は、特異的に結合することを指す。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「KD」という用語は、抗体と抗原との間の結合親和性を表現する特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。解離平衡定数が小さいほど、抗体-抗原結合が堅固であり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。一般的に、抗体は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下の解離平衡定数(KD)で抗原と結合する。例えば、表面プラズモン共鳴技術(SPR)などを使ってBIACORE機で測定される。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」および「単抗」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。また、「ポリクローナル抗体」および「マルチ抗体」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。また、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。さらに、本発明において、アミノ酸は一般的に、本分野で周知の、1文字及び3文字略号により表される。例えば、アラニンはAまたはAlaで表し得る。
【0083】
本明細書中で使用される場合、「ハイブリドーマ」および「ハイブリドーマ細胞株」という用語は、交換可能に使用され得る。さらに、「ハイブリドーマ」または「ハイブリドーマ細胞株」という用語について申し述べる場合、これは、ハイブリドーマのサブクローンおよび子孫細胞も含む。例えば、ハイブリドーマ細胞株LT002またはLT003について申し述べる場合、これは、ハイブリドーマ細胞株LT002またはLT003のサブクローンおよび子孫細胞も指す。
【0084】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容可能なベクターおよび/または賦形剤」という用語は、薬理学および/または生理学において被験者および活性成分と相容性を有するベクターおよび/または賦形剤を指し、これらは当技術分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences.Gennaro AR編,19th ed.Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995を参照のこと。)、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度促進剤が含まれるがこれらに限定されない。例えば、pH調整剤としてはリン酸緩衝液が含まれるがそれに限定されず;界面活性剤としては陽イオン性、陰イオン性または非イオン性界面活性剤、例えばTween-80が含まれるがこれらに限定されず;イオン強度促進剤としては塩化ナトリウムが含まれるがこれらに限定されない。
【0085】
本明細書中で使用される「アジュバント」という用語は、抗原と一緒にまたは予め体内に送達されると、抗原に対する体の免疫応答を増強するかまたは免疫応答の種類を変える非特異的免疫増強剤をいう。アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えば、完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバント)、コリネバクテリウムパルブム、リポ多糖、サイトカインなどを含むがこれらに限定されない多くのアジュバントがある。フロイントアジュバントは、現在動物実験で最も一般的に使用されているアジュバントである。水酸化アルミニウムアジュバントは臨床試験で使用される場合が多い。
【0086】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を達成するかまたは少なくとも一部達成するのに十分な量を指す。例えば、疾患(例えば、腫瘍のようなCLTA4のB7との結合、または、CLTA4の高すぎる活性に関する疾患)に対する予防有効量は、疾患(例えば、、腫瘍のようなCLTA4のB7との結合、または、CLTA4の高すぎる活性に関する疾患)の発症を防ぐか、抑止するかまたは遅延させるのに十分である量を指し;疾患に対する治療有効量は、疾患に罹患している患者において疾患およびその合併症を治癒させるか少なくとも部分的に抑止するのに十分な量を指す。このような有効量を測定することは十分に当業者の技術の範囲内である。例えば、治療用途の有効量は、治療しようとする疾患の重症度、患者の自己免疫系の全般的状況、患者の全般的状況、例えば年齢、体重および性別、薬剤の投与形式、同時に行われる他の治療などに依存する。
【発明の効果】
【0087】
本発明におけるモノクローナル抗体4G10H1L1、4G10H3L3は、CTLA4と特異的によく結合でき、かつ、CLTA4のB7との結合を非常に効果的に遮断でき、CTLA4の生体に対する免疫抑制を特異的に取り除け、Tリンパ球を活性化させることができる。
【0088】
本発明におけるモノクローナル抗体14C12H1L1は、CTLA4と特異的によく結合でき、かつ、CLTA4のB7との結合を非常に効果的に遮断でき、CTLA4の生体に対する免疫抑制を特異的に取り除け、Tリンパ球を活性化させることができる。
【0089】
本発明の二機能性抗体は、例えば抗黒色腫、腎腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌などの腫瘍または白血病を治療する薬剤を調製するために用いられる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】モノクローナルマウス抗体4G10のSDS-PAGE検出結果である。試料およびそれらのローディング量は、左から右への4つのレーンで次のとおりであった:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;マーカー、5μl;BSA、1μg。
【
図2】モノクローナルヒト化抗体4G10H1L1のSDS-PAGE検出結果である。試料およびそれらのローディング量は、左から右への3つのレーンで次のとおりであった:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;マーカー、5μl。
【
図3】モノクローナルヒト化抗体4G10H3L3のSDS-PAGE検出結果である。試料およびそれらのローディング量は、左から右への2つのレーンで次のとおりであった:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;マーカー、5μl。
【
図4】モノクローナルヒト化抗体14C12H1L1のSDS-PAGE検出結果である。試料およびそれらのローディング量は、左から右への4つのレーンで次のとおりであった:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;マーカー、5μl;BSA、1μg。
【
図5】二機能性抗体BiAb001のSDS-PAGE検出結果である。レーンの試料およびそれらのローディング量は、マーカー、5 μl;1、Non-reduced:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg;2、Reduced:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1μg; 3、BSA、1 μg。
【
図6】二機能性抗体BiAb002のSDS-PAGE検出結果である。レーンの試料およびそれらのローディング量は、マーカー、5 μl;1、Non-reduced:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg;2、Reduced:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg; 3、BSA、1 μg。
【
図7】二機能性抗体BiAb003のSDS-PAGE検出結果である。レーンの試料およびそれらのローディング量は、マーカー、5 μl;1、Non-reduced:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg;2、Reduced:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg; 3、BSA、1 μg。
【
図8】二機能性抗体BiAb004のSDS-PAGE検出結果である。レーンの試料およびそれらのローディング量は、マーカー、5 μl;1、Non-reduced:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg;2、Reduced:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg; 3、BSA、1 μg。
【
図9】二機能性抗体BiAb007のSDS-PAGE検出結果である。レーンの試料およびそれらのローディング量は、マーカー、5 μl;1、Non-reduced:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg;2、Reduced:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg; 3、BSA、1 μg。
【
図10】二機能性抗体BiAb0010のSDS-PAGE検出結果である。レーンの試料およびそれらのローディング量は、マーカー、5 μl;1、Non-reduced:非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg;2、Reduced:還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル、1 μg; 3、BSA、1 μg
【
図11】抗体4G10の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図12】抗体4G10H1L1の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図13】抗体4G10H3L3の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図14】抗体4G10H4L3の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図15】抗体14C12の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図16】抗体14C12H1L1の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図17】CTLA4と抗体BIAb001の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図18】CTLA4と抗体BIAb002の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図19】CTLA4と抗体BIAb003の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図20】CTLA4と抗体BIAb004の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図21】CTLA4と抗体BIAb007の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図22】PD-1と抗体BIAb001の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図23】PD-1と抗体BIAb002の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図24】PD-1と抗体BIAb003の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図25】PD-1と抗体BIAb004の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図26】PD-1と抗体BIAb007の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図27】PD-1と抗体BIAb010の動的特性パラメーター検出結果である。
【
図28】抗体4G10H1L1および4G10H3L3の抗原CTLA4との結合を間接ELISAで測定した結果である。
【
図29】B7と競合する抗体4G10H1L1および4G10H3L3の抗原CTLA4との結合活性を競合ELISAで測定した結果である。
【
図30】抗体14C12、14C12H1L1のPD-1との結合を間接ELISAで測定した結果である。
【
図31】PDL1と競合する抗体14C12、14C12H1L1のPD-1との結合を競合ELISAで測定した結果である。
【
図32】抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004のCTLA4との結合を間接ELISAで測定した結果である。
【
図33】抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004のPD-1との結合を間接ELISAで測定した結果である。
【
図34】B7と競合する抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004のCTLA4の結合を競合ELISAで測定した結果である。
【
図35】PDL1と競合する抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004のPD-1との結合を競合ELISAで測定した結果である。
【
図36】抗体4G10H1L1の293T-CTLA4細胞表面タンパク質CTLA4との結合EC
50である。
【
図37】抗体4G10H3L3の293T-CTLA4細胞表面タンパク質CTLA4との結合EC
50である。
【
図38】抗体14C12H1L1の293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1との結合EC
50である。
【
図39】抗体BiAb001の293T-CTLA4細胞表面タンパク質CTLA4との結合EC
50である。
【
図40】抗体BiAb002の293T-CTLA4細胞表面タンパク質CTLA4との結合EC
50である。
【
図41】抗体BiAb003の293T-CTLA4細胞表面タンパク質CTLA4との結合EC
50である。
【
図42】抗体BiAb004の293T-CTLA4細胞表面タンパク質CTLA4との結合EC
50である。
【
図43】抗体BiAb001の293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1との結合EC
50である。
【
図44】抗体BiAb002の293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1との結合EC
50である。
【
図45】抗体BiAb003の293T-PD-1細胞的表面タンパク質PD-1との結合EC
50である。
【
図46】抗体BiAb004の293T-PD-1細胞表面タンパク質PD-1との結合EC
50である。
【
図47】抗体4G10H3L3のT細胞表面抗原CTLA4との結合活性である。
【
図48】抗体14C12H1L1のT細胞表面抗原PD-1との結合活性である。
【
図49】抗体BiAb003およびBiAb004のT細胞との結合活性、および抗体14C12H1L1、4G10H3L3との比較である。
【
図50】抗体4G10H1L1、4G10H3L3の混合リンパ球のサイトカインIFN-γの分泌への影響である。
【
図51】抗体14C12H1L1の混合リンパ球のサイトカインIFN-γの分泌への影響である。
【
図52】抗体BiAb001、BiAb002の混合リンパ球のサイトカインIFN-γの分泌への影響、および、抗体14C12H1L1、4G10H1L1との比較である。
【
図53】抗体BiAb003、BiAb004の混合リンパ球のサイトカインIFN-γの分泌への影響、および、抗体14C12H1L1、4G10H3L3との比較である。
【
図54】抗体4G10H3L3の混合リンパ球のサイトカインIL-2の分泌への影響である。
【
図55】抗体14C12H1L1の混合リンパ球のIL-2の分泌への影響である。
【
図56】抗体BiAb003、BiAb004の混合リンパ球のサイトカインIL-2の分泌への影響、および、抗体14C12H1L1、4G10H3L3との比較である。
【
図57】抗体4G10H1L1、4G10H3L3の、PBMC、MDA-MB-231、および、Raji細胞を混合し、共培養して誘導したサイトカインIL-2の分泌への影響である。
【
図58】抗体14C12H1L1の、PBMC、MDA-MB-231およびRaji細胞を混合し、共培養して誘導したサイトカインIL-2の分泌への影響である。
【
図59】抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004の、PBMC、MDA-MB-231およびRaji細胞を混合し、共培養して誘導したサイトカインIL-2の分泌への影響、および、抗体4G10H1L1、4G10H3L3、14C12H1L1との比較である。
【
図60】抗体BiAb004のPD-1 HuGEMM MC38担癌マウスの腫瘍体積への影響である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
生物材料寄託に関する表示:
ハイブリドーマ細胞株LT002(CTLA4-4G10)は、2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C201587であり、アドレス は: 中国 武漢、武漢大学で、郵便番号は、430072である。
ハイブリドーマ細胞株LT003(PD-1-14C12)は、2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C2015105であり、アドレス は: 中国 武漢、武漢大学で、郵便番号は、430072である。
【0092】
以下で実施例を組み合わせて本発明の実施形態を詳述する。当業者は、次の実施例が単に本発明を例示するために提供され、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきものではないことを理解できる。具体的な技術または条件が記載されていない実施例は、当技術分野の文献で開示される技術または条件(例えば、J.Sambrookら著、Peitang HUANGら訳、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Science Press)に従い、または製品とともに提供される説明書に従い、行った。用いた供給者が示されていない試薬および機器は、いずれも市販の通常製品である。
【0093】
本発明の次の実施例において、用いられたT細胞は、Akeso Biopharma Inc.,Zhongshanから入手した。用いられたBALB/Cマウスは、Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入されたものである。用いられたPD-1 HuGEMMマウスは、Nanjing Galaxy Biopharma Co,Ltdから入手された。使用されたMC38細胞は、FuDan IBS Cell Centerから入手された。
【実施例】
【0094】
実施例1:抗CTLA4の抗体4G10の調製
1. ハイブリドーマ細胞株LT002の調製
抗CTLA4抗体の調製に用いられる抗原CTLA4-mFcは、ヒトCTLA4(GenbankID: NP_005205.2)細胞外ドメインとマウスIgG1Fcの融合タンパク質である。免疫BALB/Cマウス(Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入)の脾臓細胞をマウス骨髓瘤細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を合成し、現在確立された方法(例えば,Stewart, S.J., “Monoclonal Antibody Production”, in Basic Methods in antibody Production and Characterization, Eds. G.C. Howard and D.R. Bethell, Boca Raton: CRC Press, 2000)に従った。
【0095】
融合タンパク質CTLA4-mFcをTEV タンパク質酵素で切断し、カラムに通して精製し、CTLA4タンパク質を得た。抗原としてCTLA4タンパク質を用いてELISAプレートを被覆し、間接ELISA法でスクリーニングしてCTLA4と特異的に結合する新型の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を得た。間接ELISAによるスクリーニングによって得られたハイブリドーマ細胞に対して、競合ELISAでリガンドB7-1(CD80, NCBI Gene ID: 941)、B7-2(CD86, NCBI Gene ID: 942)と競合してCTLA4と結合するモノクローナル抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、かつ、限界希釈法で安定的なハイブリドーマ細胞株を得た。当該ハイブリドーマ細胞株を、ハイブリドーマ細胞株LT002(CTLA4-4G10)と命名し、かつ、これによって分泌されたモノクローナル抗体を4G10と命名した。
【0096】
ハイブリドーマ細胞株LT002(CTLA4-4G10)は、2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C201587であり、アドレスは:中国 武漢、武漢大学で、郵便番号は、430072である。
【0097】
2. 抗CTLA4の抗体4G10の調製
前記に得られたLT002細胞株を10%の低IgGウシ胎児血清を含むIMDM培地で培養し(1%ストレプトマイシンを含むIMDM培地、5%CO
2、37°Cで細胞インキュベータに培養した)、7日後に細胞培養上清を集めて、高速遠心、細孔フィルター膜による真空ろ過、および、HiTrap protein A HPカラムによる精製によって、抗体4G10を調製した。精製した4G10サンプルをSDS-PAGE電気泳動測定した結果を
図1に示す。
【0098】
実施例2:抗CTLA4の抗体4G10の配列解析
抗体4G10の配列解析
培養細胞/細菌Total RNA Extraction Kit(Tiangen、カタログ番号DP430)の方法で、実施例1にて培養したLT002細胞株からmRNAを抽出した。
Invitrogen SuperScript(R) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット取扱説明書に従ってcDNAを合成し、かつ、PCRにより増幅させた。
PCR増幅産物を直接にTAクローニングに供した。具体的な操作は、pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen CT101)キット取扱説明書を参照して行う。
【0099】
TAクローニングの産物を直接に配列決定に供し、配列決定結果を以下に示す。
重鎖可変領域の核酸配列:(372 bp)
CAGGTCAAGCTGCAGGAGTCTGGACCTGAGCTGGTGAAGCCTGGAGCTTCAATGAAGATATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCACTGGCTACACCATGAACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAACCTTGAATGGATTGGACTTATTAATCCTTACAATAATATTACTAACTACAACCAGAAGTTCATGGGCAAGGCCACATTTACTGTAGACAAGTCATCCAGCACAGCCTACATGGAACTCCTCAGACTGACATCTGAAGACTCTGGAGTCTATTTCTGTGCAAGACTCGACTATAGGTCTTATTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCAGCCAAAACGACACCCCCATCTGTCTAT (SEQ ID NO: 1)
これによりコードされるアミノ酸配列:(124 aa)
QVKLQESGPELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKNLEWIGLINPYNNITNYNQKFMGKATFTVDKSSSTAYMELLRLTSEDSGVYFCARLDYRSYWGQGTLVTVSAAKTTPPSVY (SEQ ID NO: 2)
軽鎖可変領域の核酸配列:(378 bp)
CAGGCTGTTGTGACTCAGGAATCTGCACTCACCACATCACCTGGTGAAACAGTCACACTCACTTGTCGCTCAAGTACTGGGGCTGTTACAACTAGTAACTTTGCCAACTGGGTCCAAGAAAAACCAGATCATTTATTCACTAGTCTAATAGGTGGTACCAACAACCGAGCTCCAGGTGTTCCTGCCAGATTCTCAGGCTCCCTGATTGGAGACAAGGCTGCCCTCACCATCACAGGGGCACAGACTGAGGATGAGGCAATATATTTCTGTGCTCTATGGTACAGCAACCATTGGGTGTTCGGTGGAGGAACCAAACTGACTGTCCTAGGCCAGCCCAAGTCTTCGCCATCAGTCACCCTGTTTCAAGGGCAATTCTGC(SEQ ID NO: 3)
これによりコードされるアミノ酸配列:(126 aa)
QAVVTQESALTTSPGETVTLTCRSSTGAVTTSNFANWVQEKPDHLFTSLIGGTNNRAPGVPARFSGSLIGDKAALTITGAQTEDEAIYFCALWYSNHWVFGGGTKLTVLGQPKSSPSVTLFQGQFC(SEQ ID NO: 4)
【0100】
実施例3:抗CTLA4のヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3および4G10H4L3のデザインおよび調製
1. 抗CTLA4ヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3および4G10H4L3の軽鎖と重鎖配列のデザイン
CTLA4タンパク質の三次元結晶構造(Nat.Struct.Biol. (1997) 4 p.527)および実施例2に得られた抗体4G10の配列に基づき、抗体モデルのコンピューターシミュレーションによって、モデルによって変異をデザインし、抗体4G10H1L1、4G10H3L3および4G10H4L3の可変領域配列(抗体定常領域配列、NCBIのデータベースから、重鎖定常領域はIg gamma-1 chain C region,ACCESSION: P01857、軽鎖定常領域はIg kappa chain C region,ACCESSION: P01834である)を得た。
【0101】
デザインした可変領域配列は以下の通りであった。
(1)ヒト化モノクローナル抗体4G10H1L1の重鎖と軽鎖の配列
重鎖可変領域の核酸配列:(345 bp)
CAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGCCGAGCTGGTGAAGCCCGGCGCCTCCATGAAGATCTCTTGCAAGGCCAGCGGATACAGTTTCACTGGCTATACCATGAACTGGGTCAAACAGGCTCCAGGACAGGGACTGGAGTGGATCGGGCTGATTAATCCTTACAACAACATCACCAACTACAACCAGAAGTTCATGGGAAAAGCAACCTTTACAGTGGACAAGAGCATTTCCACAGCCTACATGGAACTGAGCCGGCTGACTTCAGACGATAGCGGGGTCTATTTTTGTGCAAGGCTGGATTATCGCTCTTACTGGGGGCAGGGAACTCTGGTCACTGTCTCCGCT(SEQ ID NO: 5)
これによりコードされるアミノ酸配列:(115 aa)
QVQLVESGAELVKPGASMKISCKASGYSFTGYTMNWVKQAPGQGLEWIGLINPYNNITNYNQKFMGKATFTVDKSISTAYMELSRLTSDDSGVYFCARLDYRSYWGQGTLVTVSA(SEQ ID NO: 6)
軽鎖可変領域の核酸配列:(327 bp)
CAGGCTGTCGTCACTCAGGAACCTTCACTGACTGTGAGCCCAGGAGGAACTGTCACCCTGACATGCGGAAGCTCCACCGGAGCAGTGACCACATCCAACTTCGCCAATTGGGTCCAGGAAAAGCCAGGCCAGGCATTTCGATCCCTGATCGGAGGCACAAACAATCGGGCTTCTTGGGTGCCCGCAAGATTCTCAGGAAGCCTGCTGGGGGGAAAAGCCGCTCTGACCATTAGTGGCGCTCAGCCTGAGGACGAAGCCGAGTACTTCTGCGCTCTGTGGTATAGCAACCACTGGGTGTTTGGCGGGGGAACAAAGCTGACTGTGCTG(SEQ ID NO: 7)
これによりコードされるアミノ酸配列:(109 aa)
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCGSSTGAVTTSNFANWVQEKPGQAFRSLIGGTNNRASWVPARFSGSLLGGKAALTISGAQPEDEAEYFCALWYSNHWVFGGGTKLTVL(SEQ ID NO: 8)
【0102】
(2)ヒト化モノクローナル抗体4G10H3L3の重鎖と軽鎖の配列
重鎖可変領域の核酸配列:(345 bp)
CAGGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGCCGAAGTGAAGAAACCCGGCGCCTCAGTGAAGGTCAGCTGCAAGGCCAGCGGGTACAGTTTCACTGGATATACCATGAACTGGGTCCGACAGGCCCCTGGCCAGGGGCTGGAGTGGATCGGCCTGATTAACCCTTACAACAACATCACTAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGGAGAGTGACCTTTACAGTGGACACCAGCATTTCCACAGCCTACATGGAACTGTCCCGGCTGAGATCTGACGATACAGGCGTGTACTTCTGCGCTAGGCTGGATTACCGCAGCTATTGGGGACAGGGCACACTGGTGACTGTCAGCGCA(SEQ ID NO: 9)
これによりコードされるアミノ酸配列:(115 aa)
QVQLVESGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTGYTMNWVRQAPGQGLEWIGLINPYNNITNYAQKFQGRVTFTVDTSISTAYMELSRLRSDDTGVYFCARLDYRSYWGQGTLVTVSA(SEQ ID NO: 10)
軽鎖可変領域の核酸配列:(327 bp)
CAGGCTGTCGTCACTCAGGAACCTTCACTGACCGTGTCTCCTGGCGGGACTGTCACCCTGACATGCGGCAGCTCCACAGGGGCCGTGACCACAAGTAACTTCCCAAATTGGGTCCAGCAGAAGCCAGGACAGGCTCCCCGGAGTCTGATCGGAGGCACCAACAACAAGGCCAGCTGGACACCCGCACGGTTCAGCGGCAGCCTGCTGGGCGGCAAGGCCGCTCTGACAATTAGCGGAGCCCAGCCTGAGGACGAAGCCGAGTACTATTGCGCTCTGTGGTACTCCAACCACTGGGTGTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGACTGTGCTG(SEQ ID NO: 11)
これによりコードされるアミノ酸配列:(109 aa)
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCGSSTGAVTTSNFPNWVQQKPGQAPRSLIGGTNNKASWTPARFSGSLLGGKAALTISGAQPEDEAEYYCALWYSNHWVFGGGTKLTVL(SEQ ID NO: 12)
(3)ヒト化モノクローナル抗体4G10H4L3の重鎖と軽鎖の配列
重鎖可変領域の核酸配列:(345bp)
CAGGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGCCGAAGTGAAGAAACCCGGCGCCTCAGTGAAGGTCAGCTGCAAGGCCAGCGGGTACAGTTTCACTGGATATACCATGAACTGGGTCCGACAGGCCCCTGGCCAGGGGCTGGAGTGGATCGGCCTGATTAACCCTTACAACGACATCACTAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGGAGAGTGACCTTTACAGTGGACACCAGCATTTCCACAGCCTACATGGAACTGTCCCGGCTGAGATCTGACGATACAGGCGTGTACTTCTGCGCTAGGCTGGATTACCGCAGCTATTGGGGACAGGGCACACTGGTGACTGTCAGCGCA(SEQ ID NO: 13)
これによりコードされるアミノ酸配列:(115 aa)
QVQLVESGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTGYTMNWVRQAPGQGLEWIGLINPYNDITNYAQKFQGRVTFTVDTSISTAYMELSRLRSDDTGVYFCARLDYRSYWGQGTLVTVSA(SEQ ID NO: 14)
軽鎖可変領域の核酸配列は、4G10H3L3の軽鎖可変領域配列と同じである。
【0103】
2.ヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3および4G10H4L3の調製
重鎖定常領域は、いずれもIg gamma-1 chain C region,ACCESSION: P01857を採用する。軽鎖定常領域は、いずれもIg kappa chain C region,ACCESSION: P01834を採用する。
4G10H1L1の重鎖cDNAと軽鎖cDNA、4G10H3L3の重鎖cDNAと軽鎖cDNA、および4G10H4L3の重鎖cDNAと軽鎖cDNAを、別々にpUC57simple(GenScript Corp.より提供)ベクターにクローニングし、それぞれpUC57simple-4G10H1、pUC57simple-4G10L1、pUC57simple-4G10H3、pUC57simple-4G10L3、および、pUC57simple-4G10H4、pUC57simple-4G10L3を得た。そして、別々にpcDNA3.1ベクターにサブクローニングした。組み換えプラスミドを293F細胞にトランスフェクトした後、培養液を集めて精製し、ヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3および4G10H4L3を得た。精製した4G10H1L1サンプルに対してSDS-PAGE電気泳動検出を行い、得られた結果を
図2に示す。精製した4G10H3L3サンプルに対してSDS-PAGE電気泳動検出を行い、得られた結果を
図3に示す。
【0104】
実施例4:抗PD-1の抗体14C12の調製
1. ハイブリドーマ細胞株LT003の調製
PD-1-mFc融合タンパク質を抗原とし、免疫BALB/Cマウス(Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入)の脾臓細胞を、マウス骨髓瘤細胞と融合してハイブリドーマ細胞を合成し、現在、確立された方法(例えば、Stewart,S.J.,“Monoclonal Antibody Production”, in Basic Methods in antibody Production and Characterization, Eds. G.C. Howard and D.R. Bethell, Boca Raton:CRC Press, 2000)に従った。
PD-1-mFcを抗原としてマイクロタイタープレートに被覆し、間接ELISA法によってスクリーニングし、PD-1と特異的に結合する新規な抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を得た。
競合ELISAでリガンドPDL1-hFc(PDL1 Genebank ID:NP_054862.1)と競合してPD-1と結合するモノクローナル抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、限界希釈法により安定的なハイブリドーマ細胞株を得、かつ、限界希釈法によりLT003安定細胞株(PD-1‐14C12)を得、これにより分泌されたモノクローナル抗体を14C12と命名した。
ハイブリドーマ細胞株LT003(PD-1-14C12)は、2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C2015105であり、アドレス は: 中国 武漢、武漢大学で、郵便番号は、430072である。
【0105】
2. 抗PD-1の抗体14C12の調製
前記に得られたLT003細胞株を10%の低IgGウシ胎児血清を含むIMDM培地で培養し(1%ストレプトマイシンを含むIMDM培地、5%CO2、37°Cで細胞インキュベータに培養)、7日後に細胞培養上清を集めて精製し、抗体14C12を得た。
【0106】
実施例5:抗体14C12の配列の取得
抗体14C12の配列の取得
培養細胞/細菌Total RNA Extraction Kit(Tiangen、カタログ番号DP430)の方法で、実施例4で得られたハイブリドーマ細胞株LT003からmRNAを抽出した。
Invitrogen SuperScript(R) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット取扱説明書に従ってcDNAを合成し、かつ、PCRにより増幅させた。
PCR増幅産物を直接にTAクローニングに供した。具体的な操作は、pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen CT101)キット取扱説明書を参照する。
TAクローニングの産物を直接に配列決定に供し、配列決定結果を以下に示す。
重鎖可変領域の核酸配列:(354 bp)
GAGGTCAAACTGGTGGAGAGCGGCGGCGGGCTGGTGAAGCCCGGCGGGTCACTGAAACTGAGCTGCGCCGCTTCCGGCTTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCATGGGTGAGGCAGACCCCTGAGAAGCGCCTGGAATGGGTCGCTACTATCAGCGGAGGCGGGCGATACACCTACTATCCTGACTCTGTCAAAGGGAGATTCACAATTAGTCGGGATAACGCCAGAAATACTCTGTATCTGCAGATGTCTAGTCTGCGGTCCGAGGATACAGCTCTGTACTATTGTGCAAACCGGTACGGCGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGACAGGGCACCCTGGTGACAGTCTCTGCC(SEQ ID NO: 15)
これによりコードされるアミノ酸配列:(118 aa)
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNARNTLYLQMSSLRSEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSA(SEQ ID NO: 16)
軽鎖可変領域の核酸配列:(318 bp)
GACATTAAGATGACACAGTCCCCTTCCTCAATGTACGCTAGCCTGGGCGAGCGAGTGACCTTCACATGCAAAGCATCCCAGGACATCAACACATACCTGTCTTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGCAAAAGCCCCAAGACCCTGATCTACCGGGCCAATAGACTGGTGGACGGGGTCCCCAGCAGATTCTCCGGATCTGGCAGTGGGCAGGATTACTCCCTGACCATCAGCTCCCTGGAGTATGAAGACATGGGCATCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCTCTGACCTTTGGAGCAGGCACAAAACTGGAACTG(SEQ ID NO: 17)
これによりコードされるアミノ酸配列:(106 aa)
DIKMTQSPSSMYASLGERVTFTCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVDGVPSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYYCLQYDEFPLTFGAGTKLEL(SEQ ID NO: 18)
【0107】
実施例6:抗PD-1のヒト化抗体14C12H1L1のデザイン、調製および検出
1. ヒト化抗体14C12H1L1の軽鎖および重鎖配列のデザイン
PD―1タンパク質の三次元結晶構造(Shinohara Tら、 Structure and chromosomal localization of the human PD―1 gene(PDCD1). Genomics 1995, 23(3):704-6)および実施例5にて得られた抗体14C12の配列に基づき、抗体モデルのコンピューターシミュレーションによって、モデルによって変異をデザインし、抗体14C12H1L1の可変領域配列を得た。
デザインした可変領域配列は、以下の通りであった。
重鎖可変領域の核酸配列:(354 bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT (SEQ ID NO: 19)
これによりコードされるアミノ酸配列:(118 aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO: 20)
軽鎖可変領域の核酸配列:(321 bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAG(SEQ ID NO: 21)
これによりコードされるアミノ酸配列:(107 aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(SEQ ID NO: 22)
【0108】
2. ヒト化抗体14C12H1L1の調製およびSDS-PAGE電気泳動検出
重鎖定常領域は、Ig gamma-1 chain C region,ACCESSION: P01857を採用し、軽鎖定常領域は、Ig kappa chain C region,ACCESSION: P01834を採用した。
14C12H1L1の重鎖cDNAと軽鎖cDNAをそれぞれpcDNA3.1ベクターにクローニングし、抗体14C12H1L1の組換え発現プラスミドを得た。組換えプラスミドを293F細胞にトランスフェクションした。293F細胞培養液を精製して測定した。測定した結果は
図4に示すように、還元型タンパク質試料の目的タンパク質は、約24.5kDと49KDにあったが、非還元型タンパク質試料の目的タンパク質は、約147 kDにあった。
【0109】
実施例7:二機能性抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の重鎖と軽鎖の配列デザイン、発現および測定
1. 配列デザイン
本発明における二機能性抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の構造モードは、Morrisonモード(IgG-scFv)に属し、すなわち、1つのIgG抗体の2本の重鎖のC端は、いずれも別の抗体のscFv断片に接続され、その重鎖と軽鎖の主な組成デザインが、下記の表1に示す。
【0110】
【0111】
上記の表1において、
(1)右下に「V」というマークを付いているのは、対応の重鎖の可変領域または対応の軽鎖の可変領域を意味する。「V」というマークを付いていないのは、対応の重鎖または軽鎖が定常領域の全長を含むことを意味する。これらの可変領域または全長のアミノ酸配列およびコードされる核酸配列は、いずれも前記の実施例に記載の対応の配列を参照する。
(2)Linker1のアミノ酸配列は(GGGGS)3(SEQ ID NO: 23)である。
Linker2のアミノ酸配列は(GGGGS)4(SEQ ID NO: 24)である。
(3)8D2H14L2の重鎖可変領域(8D2H14V)のアミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSSRLSCAASGFTFSDNWMNWVRQAPGKGLEWLAQIRNKPYNYETYYSASVKGRFTISRDDSKNSVYLQMNSLKTEDTGVYYCTAQFAYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO: 25)である。
8D2H14Vをコードする核酸配列:
GAGGTGCAGCTGGTCGAATCTGGAGGAGGACTGGTGCAGCCTGGAGGAAGCTCCCGGCTGTCATGTGCCGCTAGCGGCTTCACCTTTTCCGACAACTGGATGAATTGGGTGCGACAGGCACCAGGCAAAGGACTGGAGTGGCTGGCTCAGATCCGGAACAAGCCCTACAATTATGAAACATACTATAGCGCCTCCGTGAAAGGCCGGTTCACTATTAGTAGAGACGATTCTAAGAACAGCGTGTACCTGCAGATGAATAGCCTGAAGACAGAGGATACTGGCGTCTACTATTGCACAGCACAGTTTGCCTATTGGGGACAGGGCACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(SEQ ID NO: 26)
(4)8D2H14L2の軽鎖可変領域(8D2L2V)のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSENIYGGLNWYQRKPGKSPKLLIYGATNLASGVSSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDVATYYCQNVLRSPFTFGSGTKLEIK(SEQ ID NO: 27)
8D2L2Vをコードする核酸配列:
GACATCCAGATGACTCAGAGCCCCTCAAGCCTGTCTGCAAGTGTGGGCGATAGGGTCACCATCACATGTCGCACCTCCGAAAACATCTACGGGGGACTGAATTGGTATCAGCGCAAGCCCGGCAAATCCCCTAAGCTGCTGATCTACGGCGCTACCAACCTGGCATCTGGGGTGTCCTCTCGATTTTCAGGGAGCGGCAGCGGCACCGACTATACTCTGACCATTAGTTCACTGCAGCCTGAGGATGTGGCCACATACTATTGCCAGAATGTCCTGAGATCACCATTCACTTTTGGGAGCGGAACCAAACTGGAAATTAAG(SEQ ID NO: 28)
【0112】
2. 抗体BiAb001の発現および精製
BiAb001の重鎖cDNA配列と軽鎖のcDNA配列をそれぞれpUC57simple(GenScript Corp.より提供)ベクターにクローニングし、それぞれpUC57simple-BiAb001H、pUC57simple- BiAb001Lプラスミドを得た。
【0113】
プラスミドpUC57simple-BiAb001H、pUC57simple- BiAb001Lを、酵素切断し(HindIII&EcoRI)、電気泳動によって得られた重鎖、軽鎖をそれぞれpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出し、293F細胞に同時トランスフェクションした。細胞を7日間培養した後、培養液を高速遠心し、上澄みを濃縮した後、HiTrap MabSelectSuRe柱に供し、Elution Bufferでタンパク質を一歩で溶出させ、目的試様を回収し、かつ液をPBSに変更した。
【0114】
精製した試料にそれぞれ還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液と非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液を加え、沸騰した後SDS-PAGE電気泳動検出を行った。BiAb001の電気泳動図は
図5に示すように、還元型タンパク質試料の目的タンパク質は23.6 kDと75.8 kDにあったが、非還元型タンパク質試料(単一抗体)の目的タンパク質は199 kDにあった。
【0115】
3. 抗体BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007とBiAb010の発現および精製
前述したBiAb001の発現および精製方法で精製した抗体BiAb002,BiAb003、BiAb004、BiAb007とBiAb010を得た。
精製した試料にそれぞれ還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液、非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液を加え、沸騰した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行った。BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の電気泳動図は、それぞれ
図6、
図7、
図8、
図9および
図10に示すように、還元型タンパク質試料の目的タンパク質は、23.6 kDと75.8 kDにあったが、非還元型タンパク質試料(単一抗体)の目的タンパク質は、199 kDにあった。
【0116】
実施例8:抗体の動的パラメータの測定
Fortebio分子間相互作用機で抗体と抗原を結合する動的パラメータを測定した。
1. 抗体4G10およびヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3、4G10H4L3の抗原CTLA4との結合の動的パラメータの測定
1.1. TEV タンパク質酵素でCTLA4-mFcタンパク質を切断し、かつカラム精製してCTLA4抗原を得た。
1.2. 抗体4G10をアミノカップリングによりAR2Gセンサーの表面に固定化し、エタノールアミンによりブロックし、PBSTでバランスした後、抗原CTLA4と結合し、CTLA4をPBSTで2倍希釈し、濃度は268.1、134.1、67、33.5、16.8、8.38、4.19、0nMであり、PBSTにて解離させた。ヒト化4G10H1L1、4G10H3L3、4G10H4L3の検出方法は4G10と類似し、抗原濃度は、180、90、45、22.5、11.25、5.625、2.813、0nMであった。
1.3 抗体4G10およびそのヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3、4G10H4L3の抗原と結合する動的パラメータ測定結果は、下記の表1に示し、動的特性パラメーター測定結果は、それぞれ
図11、
図12、
図13および
図14に示す。
【0117】
2.抗体14C12およぼそのヒト化抗体14C12H1L1の抗原PD-1と結合する動的パラメータの測定
2.1.TEVタンパク質酵素でPD-1-mFcタンパク質を切断し、カラム精製してPD-1抗原を得た。
2.2.抗原PD-1(抗原濃度:1 μg/ml)をビオチンで標識してSAセンサー表面に固定化し、PBSTでバランスした後、それぞれ抗体14C12、14C12H1L1と結合し、抗体をPBSTで200nMから3倍希釈してPBSTにて解離させた。
2.3 抗体14C12、14C12H1L1の抗原と結合する動的パラメータ検出結果を下記の表1に示し、動的特性パラメーター検出結果をそれぞれ
図15、
図16に示す。
【0118】
3.抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の、抗原CTLA4と結合する動的パラメータの測定
3.1 抗原CTLA4(抗原濃度:1 μg/ml)をビオチンで標識してSAセンサー表面に固定化し、PBSTでバランスした後、それぞれ抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010と結合し、抗体をPBSTで200nMから3倍希釈してPBSTにて解離させた。
3.2 抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の抗原CTLA4と結合する動的パラメータ検出結果を下記の表1に示し、動的特性パラメーター検出結果を、それぞれ
図17-
図21に示す。
【0119】
4.抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の抗原PD-1と結合する動的パラメータの測定
4.1抗原PD-1(抗原濃度:1 μg/ml)をビオチンで標識してSAセンサー表面に固定化し、PBSTでバランスした後、それぞれ抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010と結合し、抗体をPBSTで200nMから3倍希釈してPBSTにて解離させた。
4.2抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004、BiAb007およびBiAb010の抗原PD-1と結合する動的パラメータ検出結果を下記の表2に示し、動的特性パラメーター検出結果をそれぞれ
図22-
図27に示す。
【0120】
【0121】
前記の結果からわかるように、
抗体4G10及びそのヒト化抗体は、いずれも抗原に対してよい親和性を有する。14C12と14C12H1L1は、いずれも抗原PD-1に対して良い親和性を有する。
二機能性抗体は、いずれも抗原CTLA4、PD-1に対して良い親和性を有する。
【0122】
実施例9:ELISA法による抗体の抗原との結合活性の測定
1. ヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3の抗原CTLA4との結合活性
1.1 間接ELISA法でヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3のCTLA4との結合活性を測定した。
ELISAプレートに抗原を加えてインキュベートし、4℃で一晩置き、1%のBSAで37℃、2時間ブロッキングした後、それぞれ、抗体に加え、37℃で30 minインキュベートし、HRPで標識したヒツジ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Jackson,109-035-088)を添加し、TMB(Neogen,308177)で5 min発色反応を行い、かつ、マイクロプレートリーダーで450nm波長における吸光度を測定した。
測定結果を
図28に示す。図面からわかるように、ヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3は、いずれも有効的にCTLA4タンパク質と結合でき、かつその結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度を表3に示す。結合された抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションより計算した抗体4G10H1L1、4G10H3L3の結合效率EC
50は、それぞれ0.048、0.067nMであった。
【0123】
【0124】
1.2. 競合ELISA法によるヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3のそれぞれのB7と競合して抗原CTLA4を結合する結合活性の測定
B7/1-hFc(B7/1Genbank ID:NP_005182.1)でELISAプレートを4℃で一晩被覆し、1%BSAで2時間ブロッキングした後、抗体を加え、それぞれCTLA4-mFcの抗原抗体混合液(希釈濃度は表4に示す)と37℃で30minインキュベートした後、酵素標識二次抗体を添加して37℃で1hインキュベートし、37℃で30 minインキュベートした。マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度値を測定した(表4に示す)。
抗体のB7-1と競合して抗原CTLA4を結合する測定結果を
図29に示す。図面からわかるように、抗体4G10H1L1、4G10H3L3は、効果的にB7-1と競合してCTLA4タンパク質と結合することができ、かつ、その結合効率が投与量に依頼し、各投与量の蛍光強度は、表4に示す。結合された抗体4G10H1L1、4G10H3L3に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる結合效率EC
50は、それぞれ1.297nM、1.229nMであった。
【0125】
【0126】
2. ELISA法によるモノクローナル抗体14C12およびヒト化抗体14C12H1L1の抗原PD-1との結合活性の測定
2.1. 間接ELISA法でモノクローナル組換え抗体14C12および14C12H1L1のPD-1との結合活性をそれぞれ測定し、具体的な方法は、以下の通りであった。
ELISAプレートにPD-1-mFcを加えてインキュベートし、4℃で一晩置き、1%のBSAで37℃、2時間ブロッキングした後、それぞれ抗体に加え、37℃で30 minインキュベートし、HRPで標識したヒツジ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Jackson,109-035-088)を添加し、TMB(Neogen,308177)で5 min発色反応を行い、かつ、マイクロプレートリーダーで450nm波長における吸光度を測定した。
抗体14C12、14C12H1L1の抗原PD-1と結合した結果を
図30に示す。図面からわかるように、抗体14C12、14C12H1L1は、いずれも効果的にPD-1タンパク質と結合することができ、かつ、その結合效率が投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は、表5に示す。結合された抗体14C12、14C12H1L1に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる14C12、14C12H1L1抗体の結合效率EC
50は、それぞれ0.175nM、0.043nMであった。
【0127】
【0128】
2.2.競合ELISA法でハイブリドーマ細胞から産生したモノクローナル抗体14C12およびヒト化抗体14C12H1L1のPDL1と競合して抗原PD-1を結合することを測定し、具体的な方法は、以下の通りであった。
PD-1-hFcまたはPD-1-mFcでELISAプレートを4℃で一晩被覆し、1%BSAで2時間ブロッキングした後、異なる濃度の抗体14C12および14C12H1L1をそれぞれPDL1-hFcおよびPDL1-mFcと10min混合し(希釈濃度は表6に示す。)、37℃で30minインキュベートした後、酵素標識二次抗体を添加して37℃で30 minインキュベートした。マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度値を測定した(表6に示す)。
抗体14C12およびヒト化抗体14C12H1L1の抗原PD-1と結合した結果を
図31に示す。図面からわかるように、14C12およびヒト化抗体14C12H1L1は、いずれも効果的にPDL1と競合してPD-1タンパク質と結合することができ、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は表6に示す。結合された抗体14C12およびヒト化抗体14C12H1L1に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体14C12および14C12H1L1の結合效率EC
50は、それぞれ0.853 nM、0.37 nMであった。
【0129】
【0130】
3. ELISA法による抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の抗原との結合活性の測定
3.1. 間接ELISA法で抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の、抗原CTLA4との結合活性をそれぞれ測定し、測定方法は、本実施例における1.1を参照する。
抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の抗原PD-1との結合を測定した結果を
図32に示す。図面からわかるように、抗体BiAb001、BiAb002、 BiAb003およびBiAb004は、いずれも効果的にPD-1タンパク質と結合することができ、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は表7に示す。結合された抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体の結合效率EC
50は、下記の表7に示す。
【0131】
【0132】
3.2. 間接ELISA法で抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の抗原PD-1との結合活性をそれぞれ測定し、その方法は、本実施例における2.1を参照する。
抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の、抗原PD-1と結合した結果を
図33に示す。図面からわかるように、抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004は、いずれもPD-1タンパク質と効果的に結合し、かつ、その結合效率が投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は、表7に示す。結合された抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる結合效率EC
50は下記の表8に示す。
【0133】
【0134】
3.3 競合ELISA法で抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004のB7/1-hFcと競合して抗原CTLA4と結合することを測定し、その方法は本実施例における1.2を参照する。
測定結果は
図34に示す。図面からわかるように、抗体BiAb001、BiAb002、 BiAb003およびBiAb004は、いずれも効果的に抗原CTLA4と結合することができ、CTLA4のB7/1との結合を抑制し、かつ、CTLA4のB7/1との結合に対する抗体の抑制效率は、投与量に依存し、各投与量の吸光強度は、表9に示す。結合された抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004に対して吸光強度定量分析を行い、曲線シミュレーションによって結合EC
50を得った(表9)。
【0135】
【0136】
3.4. 競合ELISA法で抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004のPDL1と競合して抗原PD-1と結合することを測定し、方法が本実施例における2.2と同じである。
測定結果は、
図35に示す。図面からわかるように、抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004は、いずれも効果的に抗原PD-1と結合し、PD-1とそのリガンドPDL1との結合を抑制することができ、かつ、PD-1とそのリガンドPDL1の結合に対する抗体の抑制效率は、投与量に依存し、各投与量の吸光強度は、表10に示す。結合された抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004に対して吸光強度定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体の結合效率EC
50を得った(表10)。
【0137】
【0138】
実施例10:フローサイトメータ法による抗体の細胞表面抗原との結合活性の測定
まず、CTLA4、PD-1抗原を発現する宿主細胞293Tをそれぞれ構築し、本発明にて調製したヒト化抗体を用いて当該宿主細胞を標識した。そして、フローサイトメトリー法で細胞表面の天然立体配座抗原に対する抗体の特異的結合能を分析および検証する。
【0139】
1.CTLA4、PD-1抗原をそれぞれ発現する宿主細胞293Tの構築
CTLA4またはPD-1のベクターpLenti6.3-CTLA4、pLenti6.3-PD-1(ベクターpLenti6.3は、Invitrogenから購入したものである)を293T細胞にトランスフェクションし、スクリーニングによりCTLA4を安定的に発現するクローン集団293T-CTLA4細胞およびPD-1を安定的に発現するクローン集団293T-PD-1細胞をそれぞれ得た。
【0140】
2.抗体の細胞表面抗原との結合を測定する方法
通常のトリプシン消化法で前記工程にて得られた抗原を発現する宿主細胞を消化し、かつ各回収チュープにおける細胞数を2×105とし、PBS(1%BSA)で濃度が勾配した抗体希釈液をそれぞれ調製し、氷上で対応する抗原を発現する293T細胞と2時間インキュベートし、100 μL FITCヒツジ抗ヒトIgG(1:500)を各チュープに加え、氷上で1時間インキュベートし、PBSで3回洗った後、300 μL PBSを添加し、細胞を再懸濁させ、フローサイトメータでFITCチャンネルを用いて蛍光シグナルを測定した。
【0141】
2.1細胞表面抗原に対する抗体の結合の検出結果
ヒト化抗体4G10H1L1、4G10H3L3の、293T-CTLA4細胞と結合する結果は、それぞれ
図36、
図37に示す。図面からわかるように、4G10H1L1および4G10H3L3抗体は、効果的に宿主細胞293T- CTLA4表面のターゲットCTLA4タンパク質と結合することができ、かつ、その結合效率は投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は、表11に示す。結合された4G10H1L1および4G10H3L3抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる4G10H1L1および4G10H3L3抗体の結合效率EC
50は、それぞれ7.58nM、10.54nMであった。
【0142】
【0143】
2.2 ヒト化抗体14C12H1L1の293T-PD-1細胞との結合結果は、
図38に示す。図面からわかるように、14C12H1L1抗体は、宿主細胞293T-PD-1表面のターゲットPD-1タンパク質と効果的に結合することができ、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は、表12に示す。結合された14C12H1L1抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる14C12H1L1抗体の結合效率EC
50は1.89 nMであった。
【0144】
【0145】
2.3 抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の、293F-CTLA4細胞との結合結果は、それぞれ
図39、
図40、
図41および
図42に示す。図面からわかるように、抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004は、いずれも宿主細胞293F-CTLA4表面のターゲットCTLA4タンパク質と効果的に結合し、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は表13に示す。結合された抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体の結合效率EC
50を得た(表13)。
【0146】
【0147】
2.4抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の、293T-PD-1細胞との結合結果は、それぞれ
図43~46に示す。図面からわかるように、抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004は、いずれも宿主細胞293T-PD-1表面のターゲットPD-1タンパク質と効果的に結合し、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は表14に示す。結合された抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体的結合效率EC
50を得た(表14)。
【0148】
【0149】
3. 抗体の、T細胞表面抗原CTLA4、PD-1との結合活性
Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare LOT No.:171440-02)を採用してPBMCを分離させ、PBMCからCD4+細胞を分離した。PHA(50 μl/ml)で3日間刺激した後PBSで1回洗い、異なる濃度を有する抗体を加え、氷上で1.5時間インキュベートした。インキュベートが完了した後、PBSで1回洗い、FITCで標識された抗ヒト二次抗体IgG(Jackson immunoresearch lot.102155)を加えた。氷上でかつ遮光下で1時間インキュベートした後、PBSで1回洗ってフローサイトメータで測定した。
ここで、用いられる対照抗体Nivolumabは抗PD-1の抗体であり、市販されており、これについての情報は、http://www.drugbank.ca/drugs/DB09035を参照してもよい。
対照抗体Ipilimumabは、抗CTLA4の抗体であり、市販されており、これについての情報もhttp://www.drugbank.ca/drugs/DB06186を参照してもよい。
【0150】
3.1 ヒト化抗体4G10H3L3のT細胞との結合結果は、
図47に示す。図面からわかるように、4G10H3L3抗体は、T細胞表面のターゲットCTLA4タンパク質と効果的に結合でき、かつ、その結合效率は、投与量に依存する。
【0151】
3.2 ヒト化抗体14C12H1L1のT細胞との結合は、
図48に示す。図面からわかるように、14C12H1L1抗体は、T細胞表面のターゲットPD-1タンパク質と効果的に結合でき、かつ、その結合效率は、投与量に依存する。
【0152】
3.3 抗体BiAb003およびBiAb004のT細胞との結合と、14C12H1L1、4G10H3L3との比較結果を
図49に示す。図面からわかるように、抗体BiAb003、BiAb004および14C12H1L1、4G10H3L3抗体は、いずれも効果的にT細胞表面のターゲットPD-1タンパク質と結合でき、かつ、その結合效率が投与量に依存する。そして、抗体BiAb003、BiAb004および14C12H1L1は、T細胞との結合が抗体4G10H3L3、Nivolumab、Ipilimumabより強かった。蛍光強度測定結果は、表15に示す。
【0153】
【0154】
実施例11:混合リンパ球反応:サイトカインIFN-γ、IL-2の分泌
1. Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare LOT No.:171440-02)を採用してPBMCを分離させ、分離されたPBMCにIL-4(Peprotech K2513、1000U/ml)とGM-CSF(Peprotech H1513、1000U/ml)を添加して6日間誘導した後、TNF-α(Peprotech G1513、200U/ml)を添加して3日間誘導し、DC細胞を得た。
【0155】
PBMCからT細胞を分離し、得られたDC細胞とT細胞を、1:10の比率で混合して培養し、かつ、異なる比率の抗体(hIgGを対照とする)を加えて5~6日間培養した後、ELISAキットを用いてIFN-γ(Dakewe Groupから購入)とIL-2(Dakewe Groupから購入)の分泌量を測定した。
DC細胞とT細胞を混合して培養した後のIFN-γの分泌検出結果は、ぞれぞれ
図50-
図53に示す。DC細胞とT細胞を混合して培養した後のIL-2の分泌検出結果はそれぞれ
図54-
図56に示す。
【0156】
図面からわかるように、4G10H1L1、4G10H3L3、14C12H1L1および二機能性抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004は、いずれも効果的に混合リンパ球のIFN-γおよびIL-2の分泌を誘導することができる。そのうち、抗PD-1抗体14C12H1L1は、濃度が1 nMおよび10 nMである場合、IFN-γ分泌に対する誘導効果は、100 nMの対照抗体Nivolumabと相当する。CTLA4抗体4G10H1L1及び4G10H3L3は、濃度が100 nMである場合、IFN-γ分泌に対する誘導効果が対照抗体Ipilimumabより強かった(
図52)。
【0157】
実施例12:IL-2の分泌
(実施例10と同じ方法で)分離して得たPBMCをPHA(上海疾控生物科技有限公司、50 μl/mL)で3日間刺激した後、96ウェルプレートに刺激によって成熟したPBMC(ボランティア血液ドナーから、5×104 cells/ウェル)、Raji細胞(ATCC由来、5×104 cells/孔)、および、MDA-MB-231細胞(ATCC由来)(1×104 cells/孔)を加えると共に、抗体(100nm)を添加して均一になるように混合して共培養した。3日間後、ELISAキットを採用してIL-2(Dakewe Groupから購入)の分泌量を測定し、具体的な手順は、キットの取扱説明書に従って行った。
【0158】
細胞を混合して培養した後のIL-2の分泌検出結果はそれぞれ
図57、
図58および
図59に示す。図面からわかるように、4G10H1L1、4G10H3L3、14C12H1L1、および二機能性抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003、BiAb004は、いずれも効果的にPBMCのIL-2の分泌を誘導できる。そのうち、抗PD-1抗体14C12H1L1のIL-2の分泌に対する誘導効果は、対照抗体Nivolumabより強く(
図58)、二機能性抗体BiAb001、BiAb002、BiAb003およびBiAb004の、IL-2の分泌の誘導効果は、14C12H1L1+4G10H1L1または14C12H1L1+4G10H3L3の効果と相当する(
図59)。
【0159】
実施例13:抗体BiAb004の、PD-1 HuGEMMマウスMC38腫瘍モデルにおける腫瘍生長への影響
PD-1 HuGEMMマウス(ヒトPD-1遺伝子導入マウス)右側皮下にMC38腫瘍細胞(1×10
6/匹)を接種し、平均腫瘍体積が約144mm
3に達すると、腫瘍体積によってマウスをランダムに4つの実験群に分け、腹腔内投与した。各群は、いずれも8匹のマウスであった。具体的な分類と投与量は以下の通りであった。
Isotype Control群(投与量2.67mg/kg),
BiAb004高投与量群(投与量2.67mg/kg),
BiAb004低投与量群(投与量0.267mg/kg),
前記の3つの群は、いずれも周2回、合計5回で投与した。各群に投与した後、腫瘍のサイズを周2回で測定した。
結果は
図60に示す。
結果からわかるように、
BiAb004高投与量群およびBiAb004低投与量群の腫瘍体積は、いずれも統計的にIsotype control群(P<0.001、<0.05)より有意に小さい。BiAb004低投与量群は、PD-1 HuGEMMマウスMC38腫瘍モデルにおいて、統計的に有意な抗腫瘍効果を示す。
【0160】
本発明の具体的な実施形態を詳細に記載してきたが、当業者は、本明細書で開示される教示に照らして、本発明の構成に対して様々な改変および変更がなされ得、これらが全て本発明の保護範囲に包含されることを理解できる。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲およびその何らかの同等物において定められる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
PD-1を標的とする第1タンパク質機能領域と、
CTLA4を標的とする第2タンパク質機能領域と、を含む二重特異性抗体。
(項目2)
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域は、直接に接続または接続断片によって接続され、好ましくは、前記接続断片が(GGGGS)nであり、nは、正の整数、例えば1、2、3、4、5または6である、項目1に記載の二重特異性抗体。
(項目3)
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域は、独立して免疫グロブリンまたはその抗原結合断片、例えば、半抗体、Fab、F(ab’)
2
、または、一本鎖抗体であり、
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、前記第2タンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、あるいは、
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域は一本鎖抗体であり、前記第2タンパク質機能領域は免疫グロブリンである、項目1または2に記載の二重特異性抗体。
(項目4)
前記第1タンパク質機能領域と第2タンパク質機能領域は、独立して1個、2個または2個以上である、項目1~3の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目5)
前記免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgE、または、IgMであり、好ましくはIgGである、項目3または4に記載の二重特異性抗体。
(項目6)
前記一本鎖抗体は、免疫グロブリンの重鎖のC末端に接続されている、項目3~5の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目7)
本発明の一つの実施形態において、
前記の免疫グロブリンの重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDRを含み、その軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDRを含み、および/または、
前記の一本鎖抗体の重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO:
41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 42-44であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ
ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDRを含み、
あるいは、
本発明の別の実施形態において、
前記の免疫グロブリンの重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ
ID NO: 42-44であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDRを含み、および/または、
前記の一本鎖抗体の重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDRを含み、その軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDRを含む、
項目3~6の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目8)
本発明の一つの実施形態において、前記免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 20からなる群から選択され、前記免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 18とSEQ ID NO: 22からなる群から選択され、および/または、
前記一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 25からなる群から選択され、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:27からなる群から選択され、
あるいは、
本発明の別の実施形態において、
前記免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 2、SEQ
ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 25からなる群から選択され、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:27からなる群から選択され、および/または、
前記一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 20からなる群から選択され、前記免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 18およびSEQ ID NO: 22からなる群から選択される、項目3~7の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目9)
前記の免疫グロブリンは非-CDR領域を含み、かつ、前記非-CDR領域は、鼠類以外の種由来、例えばヒト抗体由来である、項目1~8の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目10)
前記の二重特異性抗体は、CTLA4タンパク質および/またはPD-1タンパク質に結合するK
D
が約10
-5
M未満、例えば、約10
-6
M、10
-7
M、10
-8
M、10
-9
Mまたは10
-10
M未満またはそれ以下である、項目1~9の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
(項目11)
抗体の重鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記抗体の重鎖可変領域は、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 29-31であるCDR、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35-37であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 41とSEQ ID NO: 37であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 42-44であるCDR、および、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDR、又は、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、アミノ酸配列がSEQ ID
NO: 45-47であるCDR、
を含む、単離核酸分子。
(項目12)
抗体の軽鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記抗体の軽鎖可変領域は、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 32-34であるCDR、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 38-40であるCDR、または、
アミノ酸配列がSEQ ID NO: 45-47であるCDR、
を含む、単離核酸分子。
(項目13)
項目11及び/または項目12に記載の単離核酸分子を含むベクター。
(項目14)
項目11及び/または項目12に記載の単離核酸分子、あるいは、項目13に記載のベクターを含む、宿主細胞。
(項目15)
項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体を調製する方法であって、項目14に記載の宿主細胞を適切な条件で培養する工程、および、細胞培養物から前記二重特異性抗体を回収する工程を含む、方法。
(項目16)
二重特異性抗体および複合部分を含む複合体であって、前記二重特異性抗体は項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体であり、前記複合部分は検出可能な標識であり、好ましくは、前記複合部分が放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素である、複合体。
(項目17)
項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体、あるいは、項目16に記載の複合体を含む、キットであって、
好ましくは、前記キットが前記二重特異性抗体を特異的に認識する第2抗体をさらに含み、任意的に、前記第2抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素をさらに含む、キット。
(項目18)
試料中のCTLA4および/PD-1の存在またはそのレベルを検出するために用いられるキットの製造における、項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体の使用。
(項目19)
項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは項目16に記載の複合体を含み、
さらに、薬学的に許容されるベクター及び/または賦形剤を任意的に含む、医薬組成物。
(項目20)
腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断する薬剤の調製における、項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体もしくは項目16に記載の複合体の使用であって、好ましくは、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、使用。
(項目21)
項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは項目16に記載の複合体の、
試料中のCTLA4のレベルを検出する薬剤、
CTLA4のB7への結合を遮断する薬剤、
CTLA4の活性またはCTLA4のレベルを制御(例えば下方制御)する薬剤、
CTLA4の生体に対する免疫抑制を取り除く薬剤、
Tリンパ球を活性化する薬剤、あるいは、
Tリンパ球におけるIL-2の発現を増加させる薬剤
の調製における使用、
および/または、
PD-1のPDL1への結合を遮断する薬剤、
PD-1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する薬剤、
PD-1の生体に対する免疫抑制を取り除く薬剤、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γの発現を増加させる薬剤
の調製における使用。
(項目22)
有効量の項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは項目16に記載の複合体を、細胞またはニーズがある被験者にインビボまたはインビトロで投与する工程を含む、
試料中のCTLA4のレベルを検出する方法、
CTLA4のB7への結合を遮断する方法、
CTLA4の活性またはCTLA4のレベルを制御(例えば下方制御)する方法、
CTLA4の生体に対する免疫抑制を取り除く方法、
Tリンパ球を活性化する方法、あるいは、
Tリンパ球におけるIL-2の発現を増加させる方法、
および/または、
PD-1のPDL1への結合を遮断する方法、
PD-1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する方法、
PD-1の生体に対する免疫抑制を取り除く方法、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γの発現を増加させる方法、
からなる群から選択される、方法。
(項目23)
腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断するために用いられ、好ましくは、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは項目16に記載の複合体。
(項目24)
試料中のCTLA4のレベルを検出すること、
CTLA4のB7への結合を遮断すること、
CTLA4の活性またはCTLA4のレベルを制御(例えば下方制御)すること、
CTLA4の生体に対する免疫抑制を取り除くこと、
Tリンパ球を活性化する薬剤こと、あるいは、
Tリンパ球におけるIL-2の発現を増加させること、
および/または、
PD-1のPDL1への結合を遮断すること、
PD-1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)すること、
PD-1の生体に対する免疫抑制を取り除くこと、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γの発現を増加させること、
に用いられる、項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは項目16に記載の複合体。
(項目25)
有効量の項目1~10の何れか一項に記載の二重特異性抗体あるいは項目16に記載の複合体を、ニーズがある被験者に投与する工程を含む、腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断するための方法であって、
好ましくは、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、方法。
【配列表】