(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】簡易トイレおよび簡易トイレ用処理剤
(51)【国際特許分類】
A47K 11/04 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
A47K11/04
(21)【出願番号】P 2020012309
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】514034836
【氏名又は名称】都築 相鳳
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 相鳳
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-033409(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187942(JP,U)
【文献】特開昭49-096764(JP,A)
【文献】特開2006-230391(JP,A)
【文献】特開2014-087779(JP,A)
【文献】特開平09-234171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物タンクと、該排泄物タンクの上部端縁近傍から該排泄物タンクの内部へ排泄物を処理する処理剤を投入するための処理剤タンクとを備える簡易トイレであって、
前記処理剤タンクは、少なくとも1/2を超える範囲が前記排泄物タンクの側方外部に配置され、前記処理剤を十分に収容できる容積を有するタンク本体と、該タンク本体の壁面の一部を開口してなる処理剤投入部と、前記タンク本体の底面部に連続し、前記処理剤投入部よりも前記排泄物タンクの側へ延出させてなる案内面部とを備え、前記タンク本体の底面部が略水平な状態から前記処理剤投入部を下向きにとする方向へ傾倒可能として前記排泄物タンクの上部端縁近傍に設けられており、
前記タンク本体は、前記処理剤投入部が設けられる壁面の内部表面との間にのみ所定の間隙を有する第1の仕切り板と、前記処理剤投入部が設けられる壁面の内部表面において該第1の仕切り板と同じ高さまたはそれより下方から反対側の壁面に向かって徐々に低位となる勾配を有し、かつ対向する他の壁面の内部表面との間にのみ所定の間隙を有する第2の仕切り板とを備えており、
前記第1の仕切り板よりも上方の空間により1次収容領域が形成され、第1の仕切り板よりも下方の空間により投入前収容領域が形成されるものであることを特徴とする簡易トイレ。
【請求項2】
前記処理剤投入部は、前記タンク本体の底面部から所定の高さまでの範囲を開口して設けられるものであり、
前記第2の仕切り板の先端は、前記処理剤投入部が開口する高さに一致させており、
前記第2の仕切り板の下部には、該第2の仕切り板の先端から前記処理剤投入部の開口部上縁までの間に板状部材が設けられている請求項1に記載の簡易トイレ。
【請求項3】
前記処理剤タンクは、前記タンク本体の底面部が前記排泄物タンクの上端縁を中心として回動可能に設けられるものである請求項1または2に記載の簡易トイレ。
【請求項4】
前記処理剤タンクの回動は、前記タンク本体の底面部を、略水平な状態から前記処理剤投入部を下向き方向に所定の角度で傾倒させる状態までとするものである請求項3に記載の簡易トイレ。
【請求項5】
前記第2の仕切り板の傾斜角度は、前記処理剤タンクの底面部を所定の角度で傾倒させるように回動させたとき、第2の仕切り板が略水平となるように調整されている請求項4に記載の簡易トイレ。
【請求項6】
前記排泄物タンクの上部開口部には、該排泄物タンクの上部端縁に跨がって設置される便座または蓋体を備え、前記処理剤タンクの前記案内面部の先端縁から適宜範囲が、前記便座または蓋体の下面側に当接可能に設けられている請求項1~5のいずれかに記載の簡易トイレ。
【請求項7】
前記案内面部は、前記処理剤投入部から延出方向へ長尺に配設してなる複数のレール構成部を備えるものである請求項1~6のいずれかに記載の簡易トイレ。
【請求項8】
前記レール構成部は、少なくとも案内面部の両側に各1本配置されるものである請求項7に記載の簡易トイレ。
【請求項9】
前記第1の仕切り板の下部には、前記第2の仕切り板に平行な板状部材を、該
第2の仕切り板の先端から該先端との間で間隙を形成する壁面までの間に配置してなる請求項1~8のいずれかに記載の簡易トイレ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の簡易トイレに使用される処理剤であって、木質ペレットを主たる材料とするものであることを特徴とする簡易トイレ用処理剤。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の簡易トイレに使用される処理剤であって、木質ペレットと、消石灰とを含み、前記木質ペレットにデンプン糊を添加するとともに、該デンプン糊によって消石灰を該木質ペレットに付着させ、かつ該デンプン糊が含有する液部分を該木質ペレットに吸収させることにより、該木質ペレットを単位として投入可能としたことを特徴とする簡易トイレ用処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンプ場などのアウトドアにおける臨時に使用し、または被災時の避難場所における緊急時に使用する簡易トイレと、その簡易トイレにおける排泄物を処理するための処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
簡易トイレとは、その名のとおり恒久的に設置されるものではなく、一時的に使用可能としたものであって、排泄物についても下水道等へ流入させるものではない。そのため緊急避難的にやむを得ない状況下において使用されるものである。しかしながら、やむを得ない状況とはいえ、不特定かつ複数の利用者によって使用され、排泄物には小便のみならず大便の場合もあり、一時的に排泄物を保管することとなるため衛生的であることが要請されるものであった。
【0003】
この種の簡易トイレとしては、大型のポリ袋をペール缶に収容し、この状態で便座をペール缶の開口部に設置して使用するものがあった(特許文献1参照)。この簡易トイレは、ヒノキ粉末を排泄の前後にポリ袋内に散布するものであるが、ヒノキ粉末が100gとされていることから、1回の排便に使用されるものであり、不特定かつ複数の利用者が繰り返し使用できるものではなかった。
【0004】
他方、処理剤としては、木粉と2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールとを含み、木粉は0.15mm~0.8mmの粒径のものが80%以上とされたものがあった(特許文献2参照)。木粉は吸水性を発揮させるためのものであり、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールは、殺菌効果を発揮させるためのものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-038909号公報
【文献】特開10-118173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の特許文献1に開示される従来技術は、ヒノキ粉末による殺菌効果を期待しつつ、実体としては排泄物の露出を低減させるためのものであり、不特定かつ複数人が繰り返し使用するためには、排泄物をポリ袋内に残存させなければならないが、そのような効果が期待できるものではなかった。また、ヒノキ粉末は吸水性を発揮させる目的としても添加されるものであるが、短時間における吸水には好適であるが、流動性に欠けるため、利用者が意識的に分散させて散布する必要があった。
【0007】
また、前掲の特許文献2に開示される処理剤は、殺菌効果を発揮させるため2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールを配合するものであり、排泄物を長期間放置する場合でも悪臭ガスを発生させないことができるものであるが、分解によりホルムアルデヒドが発生するなどの報告があるため、取り扱いが容易でなかった。また、配合される木粉は、吸水性の観点から、その粒径は80%以上が0.15mm~0.8mmの範囲内と限定されているが、粒径が小さい場合には、流動性に欠けるため、ヒノキ粉末と変わりないものとなっていた。
【0008】
ところで、上記従来技術(特に特許文献1に係る技術)は、所定量の処理剤を散布するものであるが、その散布量を計量することができず、結果的に、1回分の適量を小袋に分けるなどして、利用者に提供しなければならなかった。ところが、不特定かつ複数の利用者が繰り返し使用する場合、小袋を複数用意しなければならず、これを紛失した場合には排便後の処理に窮することとなり得るものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、処理剤を小袋等に小分けする必要がなく、不特定かつ複数の利用者が繰り返し使用できる簡易トイレと、そのトイレに使用する処理剤とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、簡易トイレに係る本発明は、排泄物タンクと、該排泄物タンクの上部端縁近傍から該排泄物タンクの内部へ排泄物を処理する処理剤を投入するための処理剤タンクとを備える簡易トイレであって、前記処理剤タンクは、少なくとも1/2を超える範囲が前記排泄物タンクの側方外部に配置され、前記処理剤を十分に収容できる容積を有するタンク本体と、該タンク本体の壁面の一部を開口してなる処理剤投入部と、前記タンク本体の底面部に連続し、前記処理剤投入部よりも前記排泄物タンクの側へ延出させてなる案内面部とを備え、前記タンク本体の底面部が略水平な状態から前記処理剤投入部を下向きにとする方向へ傾倒可能として前記排泄物タンクの上部端縁近傍に設けられており、前記タンク本体は、前記処理剤投入部が設けられる壁面の内部表面との間にのみ所定の間隙を有する第1の仕切り板と、前記処理剤投入部が設けられる壁面の内部表面において該第1の仕切り板と同じ高さまたはそれより下方から反対側の壁面に向かって徐々に低位となる勾配を有し、かつ対向する他の壁面の内部表面との間にのみ所定の間隙を有する第2の仕切り板とを備えており、前記第1の仕切り板よりも上方の空間により1次収容領域が形成され、第1の仕切り板よりも下方の空間により投入前収容領域が形成されるものであることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、排泄物タンクの側方外部に出っ張った状態のタンク本体が、処理剤を収容しつつ、処理剤投入部を下向きに傾倒させることができることから、この傾倒状態によって、第2の仕切り板よりも下方に形成される投入前収容領域に留められる処理剤を、排泄物タンク内へ投入することが可能となる。また、タンク本体の1/2を超える範囲が排泄物タンクの側方外部に配置されていることから、タンク本体は、その重量および内部に収容された処理剤の重量により、上記傾倒状態を解消する(底面部を略水平な状態へ復元する方向、すなわち起立方向)へ付勢されることとなる。従って、タンク本体を傾倒状態とする場合には手動で行うとしても、その後、タンク本体は自動的に復元されることとなる。なお、略水平とは、底面部が正確な水平状態か、または処理剤投入部が僅かながら上方に位置する状態を含むことを意図しており、実質的に処理剤が投入されるような傾倒状態が解消される場合を意味するものである。
【0012】
また、タンク本体は、投入前収容領域とは別に、第1の仕切り板よりも上方の空間により1次収容領域が形成されていることから、タンク本体を傾倒させた状態において、タンク本体に収容されている処理剤が無尽蔵に投入されることはなく、第1の仕切り板の下方には勾配を有する第2の仕切り板が配置された状態となっていることから、処理剤を投入すべくタンク本体を傾倒させるとき、1次収容領域に収容される処理剤は、第2の仕切り板の上面まで供給される状態で供給が停止され、その後のタンク本体の復元により、第2の仕切り板の傾斜に沿って投入前収容領域へ移動することとなるから、1回のタンク本体の傾倒により、一度の排泄物処理に必要な適量の処理剤を排泄物タンク内へ投入することができる。
【0013】
上記構成の発明において、前記処理剤投入部は、前記タンク本体の底面部から所定の高さまでの範囲を開口して設けられるものであり、前記第2の仕切り板の先端は、前記処理剤投入部が開口する高さに一致させており、前記第2の仕切り板の下部には、該第2の仕切り板の先端から前記処理剤投入部の開口部上縁までの間に板状部材が設けられている構成とすることができる。
【0014】
上記構成の場合には、第2の仕切り板の下方に処理剤投入路が形成されることとなり、この処理剤投入経路内に供給された処理剤が、当該処理剤投入路に沿って排泄物タンク内へ投入され得ることとなる。従って、この処理剤投入路が実質的な投入前収容領域として機能することとなる。
【0015】
上記各構成の発明において、前記処理剤タンクは、前記タンク本体の底面部が前記排泄物タンクの上端縁を中心として回動可能に設けられる構成とすることができる。また、この場合、前記処理剤タンクの回動は、前記タンク本体の底面部を、略水平な状態から前記処理剤投入部を下向き方向に所定の角度で傾倒させる状態までとすることができる。さらに、このような構成において、前記第2の仕切り板の傾斜角度は、前記処理剤タンクの底面部を所定の角度で傾倒させるように回動させたとき、第2の仕切り板が略水平となるように調整されるように構成することができる。
【0016】
上記のような構成の場合には、タンク本体の底面部が排泄物タンクの端縁と連結されることとなるから、排泄物タンクと一体的な構成となる。そして、その回動は、所定の範囲に限定されることにより、投入前収容領域の処理剤を排泄物タンク内へ投入すると同時に、1次収容領域の処理剤を投入前収容領域に供給する準備を可能とする。すなわち、第2の仕切り板の傾斜角度が、タンク本体の回動に伴う傾倒状態において略水平となるように調整されていることから、当該タンク本体の傾倒により、第2の仕切り板の上面に移動する処理剤は、第2の仕切り板から下方(投入前収容領域(処理剤投入路))へ移動できない状態となるから、先に投入前収容領域(処理剤投入路)へ供給された分量のみを全て排出させ、後の投入予定分の供給を一時的に中断させることができる。これが、所定量の処理剤を投入前収容領域に供給する準備となるのである。なお、回動の範囲の調整は、ストッパ等によって行うことができるものであるが、タンク本体は傾倒を解消する方向(起立方向)へ付勢されていることから、ストッパ等による制限はタンク本体を傾倒させる方向は不要となり得る。
【0017】
上記各構成の発明において、前記排泄物タンクの上部開口部には、該排泄物タンクの上部端縁に跨がって設置される便座または蓋体を備え、前記処理剤タンクの前記案内面部の先端縁から適宜範囲が、前記便座または蓋体の下面側に当接可能に設けられている構成とすることができる。
【0018】
上記構成の場合には、簡易トイレとして便座等を設ける構成において、その便座等をストッパとして機能させることが可能となる。すなわち、案内面部はタンク本体の底面部が延出して構成されるものであるから、底面部を略水平な状態とする場合、当該案内面部も水平な状態となり、かつ、タンク本体の処理剤投入部が設けられる側(排泄物タンクの内側)へ向かって延出しており、この案内面部を便座等の下面側に当接させれば、タンク本体が傾倒しない状態(または傾倒から復元した状態)において、底面部を略水平な状態に維持させることができる。なお、このような構成においても傾倒方向へのストッパは不要となり得る。その理由は、タンク本体は手動により傾倒させるものであるから、利用者が適宜判断し得るためである。
【0019】
また、上記各構成において、前記案内面部は、前記処理剤投入部から延出方向へ長尺に配設してなる複数のレール構成部を備えるものとすることができ、その場合、前記レール構成部は、少なくとも案内面部の両側に各1本配置されるものとすることができる。
【0020】
このような構成によれば、少なくとも案内面部の両側に各1本のレール構成部が配置されることにより、案内面部は、当該レール構成部とともに樋状を形成することとなり、処理剤を確実に排泄物タンク内へ投入することができる。また、それ以上のレール構成部を配置する場合は、案内面部の表面に複数の供給路を形成することとなる。この供給路は、例えば、案内面部先端に向かって先細り状に設ければ、排泄物タンクの中央に集中させるような供給路となり、また、放射状に設ければ、排泄物タンクの中央から側部に至る範囲に偏りなく処理剤を供給するような供給路となる。これらは排泄物タンクの形状・大きさ等と、処理剤タンク(タンク本体)の形状・大きさ等とのバランスなどを考慮して決定することができる。
【0021】
他方、処理剤に係る本発明は、上記のような各構成の簡易トイレに使用される処理剤であって、木質ペレットを主たる材料とするものであることを特徴とする。
【0022】
上述のような構成の簡易トイレは、タンク本体の傾倒のみによって処理剤を排泄物タンク内へ供給し、また、当該タンク内においては、タンク本体の傾倒と復元とで投入前収容領域に処理剤を供給するものであるから、適度な流動性が要求される。そこで、木質ペレットを主たる材料とするのである。すなわち、固形物である木質ペレットは粉体に比較して遙かに流動性に優れるものであり、傾斜に応じて容易に流下させることができる。また、木質ペレットは、木粉を圧縮固化したものであるため、吸水性に優れるうえ、液体吸収により木粉に変化し、さらに木粉自体が吸水性を有するため、初期の吸水によりペレット状が崩壊し、その後、時間の経過とともに木粉による吸水効果を得ることができる。
【0023】
また、処理剤に係る本発明は、上記のような各構成の簡易トイレに使用される処理剤であって、木質ペレットと、消石灰とを含み、前記木質ペレットにデンプン糊を添加するとともに、該デンプン糊によって消石灰を該木質ペレットに付着させ、かつ該デンプン糊が含有する液部分を該木質ペレットに吸収させることにより、該木質ペレットを単位として投入可能としたことを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、木質ペレットの吸水性を利用し、デンプン糊を乾燥状態として供給過程における他の部材との接着を防止しつつ(流動性を阻害することなく)、消石灰を木質ペレットに接着させた状態とすることができ、この消石灰の投与により、排泄物に対する殺菌効果を発揮させることができる。なお、添加する消石灰の量は、殺菌効果を発揮させるべき程度によって決定し、使用するデンプン糊の量は、添加すべき消石灰の量に応じて増減されることとなる。
【発明の効果】
【0025】
簡易トイレに係る本発明によれば、処理剤タンク(タンク本体)を傾倒させることにより、1回分の処理剤を排泄物タンク内へ投入することが可能となるため、処理剤を小袋等に小分けする必要がなく、繰り返し簡易トイレを使用することが容易となる。また、タンク本体は、処理剤を十分に収容し得る容量を有しており、内部において1次収容領域と、投入前収容領域とに区分され、タンク本体の傾倒のたびに、1次収容領域から投入前収容領域へ1回分の処理剤が供給されるため、1回分の処理剤を計量することなく次の使用に備えることができる。従って、不特定かつ複数の利用者が繰り返し使用できるものとなる。
【0026】
他方、処理剤に係る本発明によれば、木質ペレットを主とした構成であるから、流動性に優れており、上記構成の簡易トイレにおける処理剤タンクの傾倒によって、処理剤を流下させることが可能となり、当該簡易トイレにおいて好適に使用できるものとなる。また、消石灰を添加した処理剤の場合には、殺菌効果を得ることができるため、不特定かつ複数人による簡易トイレの使用においても好適な処理効果を発揮し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】簡易トイレに係る実施形態の概略を示す説明図である。
【
図2】処理剤タンクの内部構造および作動態様を示す説明図である。
【
図3】処理剤タンクの内部構造および作動態様を示す説明図である。
【
図4】簡易トイレに係る他の実施形態における処理剤タンクの内部構造を示す説明図である。
【
図5】簡易トイレに係る他の実施形態における処理剤タンクの内部構造を示す説明図である。
【
図6】簡易トイレに係る他の実施形態における案内面部の態様を示す説明図である。
【
図7】簡易トイレに係る実施形態の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、簡易トイレに係る実施形態について説明する。
図1(a)は、本実施形態の概略を示す斜視図である。
【0029】
<簡易トイレ>
図1(a)に示されているように、本実施形態の簡易トイレは、排泄物タンク1と、処理剤タンク2とを備えるものである。排泄物タンク1は、一般的な容器状に構成され、上方を開口させており、その上部開口部に便座3を備えている。便座3は開閉式のものでもよいが、個々で固定式として、上部端縁11,12,13,14のうち、左右両側の端縁11,12に載置した状態において、当該端縁11,12に固定されたものを例示する。なお、後述するが、便座3および排泄物タンク1の開口部全体を閉鎖する蓋部を有する構成としてもよい。
【0030】
処理剤タンク2は、タンク本体21と、このタンク本体21の下部を開口して構成された処理剤投入部22と、この処理剤投入部22の底面部(タンク本体21の底面部)に連続しつつ排泄物タンク1に向かって延出する案内面部23とを備えている。本実施形態の処理剤タンク2は、案内面部23を含むタンク本体21の底面部を構成する板状の基部20を設けており、この板状基部20の上面側に筒状のタンク本体21を設置する構成としている。また、タンク本体21は角柱状とし、四つの壁面24,25,26,27を有する構成とし、板状基部20を底面部とすることにより、全体として箱形の容器状を形成するものである。なお、板状基部20の一部は、案内面部23として利用され、案内面部23の両側に板状部材28,29を設けることにより、レール構成部を構成することができる。
【0031】
図1(b)に示すように、処理剤タンク2を構成する板状基部20は、排泄物タンク1の一つの上部端縁13に支持され、蝶番10によって回動可能に設けられている。板状基部20が回動可能であることから、タンク本体21を含む処理剤タンク全体が、板状基部20の回動に伴って傾倒可能になっている(図中の一点鎖線で示す状態を参照)。この傾倒によって、タンク本体21の内部に収容される処理剤を排泄物タンク1の内部に投入させるため、処理剤投入部22は、タンク本体21を構成する壁面24,25,26,27のうち、排泄物タンク1に向かって配置される壁面24の下部に設けられている。そして、この処理剤投入部22を下向き方向に傾倒するとき、この処理剤投入部22を介してタンク本体21の内部に収容される処理剤を流下できるようにしている。
【0032】
また、板状基部20は、排泄物タンク1の上部端縁13に支持されていることから、処理剤タンク2は当該上部端縁13に載置された状態であるが、タンク本体21の約2/3(1/2以上)が、当該端縁13よりも側方外部に配置された状態となっている。従って、タンク本体21の重量および内部に収容される処理剤の重量によって、タンク本体21(処理剤タンク2)は、前記蝶番10の軸部を中心として、処理剤投入部22を上向き方向に回動させるように、付勢力を発生させることができるものである。この付勢力により、処理剤の投入のために傾倒させたタンク本体21の姿勢を復元させることができるものとなる。なお、付勢力によるタンク本体の姿勢を安定させるため、本実施形態では、案内面部23の先端部分を排泄物タンク1に固定されている便座3の下部に部分的に当接させるように配置している。従って、便座3をストッパとして機能させているのである。
【0033】
また、この
図1(b)に示すように、タンク本体21の内部には、第1の仕切り板4と、第2の仕切り板5が設けられており、第1の仕切り板4は、処理剤投入部22が設けられる壁面24の内部表面との間においてのみ間隙を有するものであり、その上方は所定の空間(1次収容領域)が形成されている。また、この仕切り板4の下方にも所定の空間(投入前収容領域)が形成されている。他方、第2の仕切り板5は、当該壁面24に対向する壁面25の内部表面との間においてのみ間隙を有するものである。しかも、第1の仕切り板4が設けられる高さよりも下方に設けられるとともに、先端(間隙を有する方向)へ向かって徐々に低位となるような勾配を有して設けられている。この第2の仕切り板5は、投入前収容領域内に設けられることとなり、タンク本体21が傾倒しない状態(起立状態)において、勾配によって傾斜することとなり、処理剤を底面部(板状基部)20に誘導させるものである。
【0034】
なお、タンク本体21の傾倒は、第2の仕切り板5の傾斜が解消する(略水平)となるような範囲としている。また、第1の仕切り板4は、タンク本体21の傾倒によって先端を下向きとして傾斜することとなるものである。従って、タンク本体21を起立状態から傾倒させ、さらに復元させる場合、第1の仕切り板4は、略水平な状態から傾斜し、その後略水平な状態に復元し、第2の仕切り板5は、傾斜状態から略水平な状態となった後、再び傾斜状態に戻ることとなるものである。ここでの略水平とは、厳密な水平状態を基準とし、その状態よりも先端が上方に位置するような状態を含むことを意味している。この傾倒は、底面部(板状基部)20が蝶番10を軸に回動するため、復元時における略水平な状態は、当該底面部(板状基部)20の傾斜状態に依存することとなる。また、傾倒状態における傾倒角度の制限は、例えば蝶番10の開閉角度を制限させるものとすることができるほか、底面部(板状基部)20の先端側下面にストッパを設けてもよい。さらに、使用者の感覚的な傾倒によって所定の状態までの傾倒が可能である場合は、ストッパを設けず、利用者の感覚に委ねることも可能である。
【0035】
<処理剤タンクの内部構造>
ここで、タンク本体21の内部における第1の仕切り板4および第2の仕切り板5の構成について詳述する。
図2(a)に示すように、第1の仕切り板4は、タンク本体21が起立状態(傾倒していない状態)において、略水平に設けられており、その先端41は、処理剤投入部22が設けられる壁面24の内部表面との間に所定の間隙C1が形成されている。この第1の仕切り板4によって1次収容領域が形成されるが、この1次収容領域は、当該間隙C1を設けた部分が唯一の排出口となる。
【0036】
そして、この1次収容領域に大量の処理剤Aを供給すると、この処理剤Aは当該間隙C1による唯一の排出口から流下するものであるが、処理剤Aが間隙C1に集中することにより円滑な流下が阻害され、適度に収容状態が維持されることとなる。適度に収容状態が維持されるとは、一部の処理剤Aは流下するものの、間隙C1において流下が阻害される状態において、処理剤Aの更なる流下が中断され、流下が継続しない状態となることである。本実施形態で用いられる処理剤Aは、後述のように、流動性を向上させるため木質ペレットを主たる材料とするものであるが、木質ペレットは、変形し難いことから、僅かに間隙C1を経由して流下した後は、第2の間隙C1において相互に押し合うことで円滑な流下が阻害されることとなる。なお、間隙C1を通過した処理剤Aは、第2の仕切り板5の傾斜によって、当該仕切り板5の先端と壁面25との間隙C2まで流下し、底面部20まで移動することとなる。
【0037】
そこで、
図2(b)に示すように、処理剤タンク2(タンク本体21)を傾倒させることにより、第1の仕切り板4および壁面24に振動を与えることとなり、両者に形成される間隙C1から処理剤Aの流下を促進させることができる。このとき、第2の仕切り板5は、略水平な状態まで回動するため、第2の仕切り板5に移動した処理剤Aは、第2の仕切り板5による流下は阻害され、当該仕切り板5の表面に留まった状態となる。なお、処理剤タンク2(タンク本体21)の傾倒は、タンク本体21および処理剤Aの重量による起立方向への付勢に抗するように手動にて傾倒させるものである。
【0038】
そして、
図3(a)に示すように。再び処理剤タンク2(タンク本体21)の姿勢を復元させる。この復元は、上記のような手動による傾倒を解除させることにより、タンク本体21に作用する付勢力に基づくものである。処理剤タンク2(タンク本体21)の姿勢が復元することにより、第2の仕切り板5は、再び傾斜した状態となり、この第2の仕切り板5の表面に留まっていた処理剤Aは、当該仕切り板5の傾斜に沿って流下することとなる。
【0039】
このようにして第2の仕切り板5の傾斜に沿って流下した処理剤Aは、図示のように、当該仕切り板5の先端と壁面25との間に形成される間隙C2を経由して、さらに下方の底面部20まで流下することとなる。なお、処理剤タンク2(タンク本体21)の姿勢が復元した場合においても、第1の仕切り板4の先端に形成される間隙C1では、処理剤Aの集中により円滑な流下が阻害され、1次収容領域における適度な収容状態が維持されるものとなる。この状態において、排泄物タンク1へ投入すべき量の処理剤Aが、底面部20に準備(保存)された状態となる。このような理由から、第1の仕切り板4の下方には、上記のような保存状態を可能にする空間として、投入前保存領域が形成されるものとされている。
【0040】
上記のような準備(
図3(a)の状態)により、排泄物タンク1への処理剤Aの投入が可能な状態となる。従って、簡易トイレを使用し、排泄物タンク1の内部に排泄した後は、処理剤タンク2(タンク本体21)を使用者が傾倒させることにより、
図3(b)に示すように、底面部20に保存される処理剤Aは、底面部20の傾斜に伴って、処理剤投入部22を経由して、案内面部23に案内されつつ、排泄物タンク1の内部に流下・投入されることとなる。また、これと同時に、次に準備されるべき処理剤Aは、第2の仕切り板5の表面に留まった状態となり、処理剤タンク2(タンク本体21)の姿勢が復元されるとき、
図3(a)に示したように、次回の処理剤の投入を準備することができるものとなる。従って、上述のような準備段階に至った後は、単に排泄後に処理剤Aを投入するために、処理剤タンク2(タンク本体21)を傾倒させるだけで、次回の処理剤Aの投入準備を可能にするものとなる。
【0041】
なお、投入すべき処理剤Aの1回分としての適量を準備するためには、第2の仕切り板5の表面に留まる処理剤Aを均一な状態とすることが要求される。そこで、本実施形態では、処理剤タンク2(タンク本体21)を傾倒した状態、すなわち、第2の仕切り板5が略水平となる状態において、第2の仕切り板5の表面から第1の仕切り板4の先端までの距離(当該先端の高さ)H1が調整されている。因みに、この距離H1は、タンク本体21の幅方向長さに応じて異なるが、概ね2cmとすることができる。これは、1回分の処理剤Aの使用量を200cm3~250cm3とする場合であり、タンク本体21の幅寸法を20cm~25cmとすれば、第2の仕切り板5の長さ方向に5cm程度が流下することとなり、傾倒時に第2の仕切り板5の表面に留まる処理剤Aの容量を所定の範囲内とすることができる。なお、H1=2cmとしたときに5cmの範囲で流下することは実験的に導いた数値であり、250cm3以上の処理剤Aを投与しようとする場合は、単純にタンク本体21の幅寸法を大きくする場合のほか、H1を大きくすることにより、流下範囲を5cm以上に調整してもよい。
【0042】
<他の実施形態における処理剤タンク(その1)>
ところで、
図3(b)は、第2の仕切り板5の下方を広い空間として構成されている。この場合、処理剤投入部22が形成される壁面の内側に大きな空間が形成されるため、処理剤Aの投入時(タンク本体21の傾倒による流下の際)に、処理剤投入部22の開口部分において処理剤Aが塊状(図中のハッチング参照)となり、円滑な投入(放出)がなされないことがあり得る。これは、処理剤Aの流動性に起因するものであるが、上述のように、1次保存領域における適度な収容状態を維持し得る処理剤Aを使用する場合には、処理剤投入部22において流下が阻害される可能性がある。
【0043】
そこで、このような状況を回避するためには、
図4(a)に示すように、第2の仕切り板5の先端から処理剤投入部22の開口部上縁までの間に板状部材6を設け、この板状部材6と底面部20との間に処理剤投入路を形成することにより、
図4(b)に示すように、処理剤Aが円滑に処理剤投入部22を通過させることができるものとなる。なお、上記により形成される処理剤投入路は、先細り形状の場合にはやはり処理剤Aの集中による流下阻害が生じ得るため、平行な状態か、または拡大する状態とすることが好ましい。そのために、第2の仕切り板5は、その先端の高さを処理剤投入部22が開口する高さ(開口部上縁の高さ)と同一またはそれ以下とすることが好ましい。なお、この先端位置を低くし過ぎると、当該先端における流動性が不良となる場合もあるため、処理剤Aの流動性を考慮しつつ、処理剤投入部22の開口部上縁と同じ高さを基準として調整すべきものである。
【0044】
<他の実施形態における処理剤タンク(その2)>
ところで、処理剤Aは、後述のように流動性を向上させる構成としたものであるため、第1の仕切り板4の先端に形成される間隙C1において流下が停止されない場合もあり得る。そこで、
図5(a)に示すように、予め第1の仕切り板4の下方には、第2の仕切り板5に平行な板状部材7を設ける構成とすることができる。
【0045】
このような構成の場合には、
図5(a)に示すように、流動性の良い処理剤Aは、処理剤タンク2(タンク本体21)が起立状態において、タンク本体(特に1次保存領域)21に処理剤Aを供給した際に、第1の仕切り板4の先端に形成される間隙C1を経由し、さらに第2の仕切り板5の先端に形成される間隙C2を経由して底面部20まで流下することとなる。この状態において、底面部20は、略水平な状態であるため、この底面部20に適度な量の処理剤Aが流入した状態で、流下が停止することとなる。
【0046】
この状態から処理剤タンク2(タンク本体21)を傾倒させることにより、
図5(b)に示すように、第2の仕切り板5の先端近傍まで流下していた処理剤Aが、底面部20の傾斜に伴って、処理剤投入部22を介して排泄物タンク1の内部に供給される。他方、第2の仕切り板5の表面のほぼ全体(先端近傍を除く領域)に流下されている処理剤Aは、第2の仕切り板5が処理剤タンク2(タンク本体21)の傾倒によって略水平な状態に変化するため、流下が制限され、第2の仕切り板5の表面に留まることとなる。
【0047】
また、その後、処理剤タンク2(タンク本体21)の姿勢が復元されると、初期と同様に、
図5(a)のように、再び第2の仕切り板5の先端近傍に処理剤Aが流下することとなる。従って、このように、処理剤タンク2(タンク本体21)が起立状態において、第2の仕切り板5の先端近傍まで流下する処理剤Aが1回分の使用に供されるものとなり、その流下の量を調整するため、第2の仕切り板5の先端における間隙C2および第1の仕切り板4の下方に設けられる板状部材7との距離H2が調整されることとなる。
【0048】
なお、上記間隙C2および上記距離H2は、タンク本体21の幅寸法によって異なるが、この幅寸法を20cm~25cmとする場合であって、底面部20から第2の仕切り板5までの距離H3を2cmとする場合、C2=2~3cm、H2=2cmとすることができる。このような例示の寸法により200cm3~250cm3の供給が可能となる。なお、この寸法は目安であるため、適宜変更可能である。
【0049】
<案内面部>
案内面部23は、上述のように、タンク本体21の底面部20(板状基部)に連続しつつ排泄物タンク1に向かって延出して設けられるものであり、また、案内面部23の両側に板状部材28,29を設けることにより、レール構成部を構成することができるものである。
【0050】
ところで、この案内部材23の両側に設けられる板状部材28,29は、
図6に示すように、両者の幅を徐々に拡大させることにより、処理剤Aの排泄物タンク内への投入範囲を拡散させ(
図6(a)参照)、または、徐々に縮小させることにより、処理剤Aを排泄物タンク内の中央に向かって集中させる(
図6(b)参照)ことが可能となる。
【0051】
このような板状部材28,29の角度調整は、排泄物タンクの幅寸法と、処理剤タンク2の幅寸法とのバランスによって決定されるが、処理剤Aの1回の投入量を200cm3~250cm3程度とする場合、本実施形態の構造上の特徴から、タンク本体21の幅寸法は、概ね20cm~25cmとなることが想定される。他方、排泄物タンクの幅寸法は、少なくとも30cmを必要とし、一般的には50cm程度に調整されることが想定される。
【0052】
このような場合には、
図6(a)に示すように、タンク本体21に設けられる処理剤投入部22よりも広範囲に処理剤Aを拡散しつつ投入することが要請され得る。この場合には、処理剤Aが、当該板状部材28,29の拡張幅に沿って確実に拡散されるものではないため、図示のように、案内面部23の表面上に複数の長尺突起8を設けることができる。この長尺突起8は、両側の板状部材28,29とともにレール構成部を形成するものであり、拡幅されている状態に応じて、処理剤Aを拡散させるように先端方向の相互の幅間隔を徐々に大きく設けられるものである。この長尺突起8の数は制限されるものでなく、拡幅の程度に応じて2本もしくは3本またはそれ以上設けることができる。
【0053】
<実施形態の変形例>
上記の簡易トイレに係る実施形態は、他の形態とすることができるものであって、例えば、
図7(a)に示すように、処理剤タンク2を、排泄物タンク1と同程度の高さを有する箱体9に載置する構成としてもよい。この箱体9は、図示のように、排泄物タンク1に連続して(一体的に)設けた構成でもよいが、個別に(分離可能に)設けた構成であってもよい。このような構成とする場合には、処理剤タンク2の板状基部(底面部)20の先端を便座3によって係止(便座3をストッパとして使用)する必要がないこととなるため、当該便座3を開閉可能な構造とすることができる。
【0054】
なお、当該板状基部(底面部)20が排泄物タンク1の上部端縁において回動可能に支持している部分は、前述の実施形態と同様であり、傾倒後の復元力は、タンク本体や処理剤の重量による付勢力に基づくものであることに相違しない。従って、処理剤タンク2が上記箱体9の上面に載置された状態において、上記付勢力による復元する際の回動を停止させる(ストッパとなる)ものである。また、箱体9によって載置場所を設ける構成の場合には、箱体9の内部を中空とし、その内部に補充用の処理剤を保管することもできる。箱体9の任意の壁面に扉91を設けることにより、内部に保管される処理剤を誰でも容易に取り出すことができるものとなる。
【0055】
他方、
図7(b)に示す変形例は、排泄物タンク1の形状を若干変更し、一般的なトイレに似せたものとし、便座3aのほかに蓋部3bをそれぞれ開閉可能とするものである。このようなトイレ構造とすることにより、簡易トイレでありながら、日常的に使用するトイレと違和感のない雰囲気で使用できるものとなる。
【0056】
この場合の処理剤タンク2の回動は、板状基部(底面部)20の先端が便座3aおよび蓋体3bの基端によって制限されるものとなっている。すなわち、板状基部(底面部)20の先端が、便座3aおよび蓋部3bを回動可能に支持する支持軸31に当接する状態で設けているのである。
【0057】
<処理剤>
上記のような簡易トイレにおいて使用される処理剤は、
図8(a)に示すような木質ペレットBを主とするものである。この木質ペレットBは、木粉を圧縮固化したものであるが、接着剤等は使用されておらず、水分を吸収することにより固化状態が崩壊するものである。従って、処理剤タンクから排泄物タンクへ供給する段階では、水分を吸収する前(尿などを吸収する前)であるから、木質ペレットBの形態が保持されている。
【0058】
また、木質ペレットBは、図示のように、円柱状であり、直径Dが約6mm程度、長さLは、10mm~20mm程度である。なお、直径Dは圧縮装置によって、ほぼ均一な状態で成形可能であるが、長さLは適当に破断させるため、多種の長さとすることができる。ただし、規則的に切断して均一な長さとすることも可能である。このように、円柱状の木質ペレットBを主たる材料とするため、硬質な円柱状材料は転動可能であるとともに、これらが集合した状態で周辺に空隙が存在するため、流動性を向上させることができる。そして、硬質であることから、通過すべき開口面積が小さい場合には、相互に押し合うこととなり、開口部周辺において流動を阻害することも生じるため、上記簡易トイレの実施形態において好適に使用できるものとなる。
【0059】
なお、木質ペレットBを主たる材料とするとは、木質ペレットBのほかに、他の材料を添加することができることを意味するが、木質ペレットBから剥離した木粉の一部が含有するような場合を含む意味である。
【0060】
そこで、木質ペレットBを主たる材料とする処理剤には、
図8(b)に示すように、木質ペレットBの表面に消石灰B1を付着させた構成が含まれる。この処理剤は、木質ペレットBの表面に、デンプン糊B2を介して消石灰B1の粉体を付着(接着)させたものである。
【0061】
デンプン糊B2は、一般的に液体成分を含むことから、通常は木質ペレットBの表面に粘着成分が残存しそうであるが、デンプン糊の液体成分は、木質ペレットBが吸収することとなるから、消石灰B1の粉体を付着させた状態で、デンプン糊B2の表面は乾燥することとなり、その流動性等に影響を与えることがないものとなる。
【0062】
このように、木質ペレットBを主とした材料で処理剤を構成する場合、流動性に優れるうえ、投入後には液体成分(便に含まれる水分および尿)を吸収することができる。また、液体成分を吸収することにより木質ペレットBは崩壊して木粉となるため、排泄物タンク内で容量を増大させることから、排便を隠すような状態とすることができる。さらに、消石灰を添加した処理剤の場合には、殺菌効果を得ることができるため、不特定かつ複数人による簡易トイレの使用においても好適な処理効果を発揮し得るものとなる。
【0063】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記の各実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、上記構成を変形し、または他の要素を追加するものであってもよい。
【0064】
例えば、上記実施形態では、処理剤タンク2(タンク本体21)の傾倒に際してストッパを便座3によって代用したが、個別にストッパを設ける構成としてよい。また、排泄物タンク1の形状およびタンク本体21の形状は、いずれも直方体の容器状を例として図示したが、この形状は任意であり、例えば、有底の楕円筒状ともので構成してもよいものである。
【符号の説明】
【0065】
1 排泄物タンク
2 処理剤タンク
3,3a 便座
3b 蓋部
4 第1の仕切り板
5 第2の仕切り板
6,7 板状部材
8 長尺突起(レール構成部)
9 箱体
10 蝶番
11,12,13,14 排泄物タンクの上部端縁
20 板状基部(底面部)
21 タンク本体
22 処理剤投入部
23 案内面部
24,25,26,27 タンク本体の壁面
28,29 板状部材(レール構成部)
A 処理剤
B 木質ペレット
B1 消石灰
B2 デンプン糊
C1,C2 間隙