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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】自動ねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B23P19/06 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020015821
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021122867
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】塩田 耕一郎
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132693(JP,A)
【文献】特開2019-188503(JP,A)
【文献】特開平07-223132(JP,A)
【文献】特開昭62-015031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじに係合可能なビットおよび当該ビットに回転を付与するビット回転モータを備えたねじ締めツールと、このねじ締めツールを軸方向へ移動自在な移動手段と、前記ねじ締めツールに加わった軸方向の負荷を検出する負荷検出手段と、移動するねじ締めツールの位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段および前記負荷検出手段を接続しかつ前記ビット回転モータおよび前記移動手段をそれぞれ駆動制御する制御装置とを備えて成る自動ねじ締め装置において、
前記制御装置は、前記負荷検出手段によって検出した検出負荷の合否を判定する比較判定部と、前記検出負荷の合否基準となる設定負荷およびねじをワークに螺入し始めてから当該ねじがワークに着座する直前になる位置情報を予め記憶して成る記憶部と、比較判定部の判定結果および記憶部の記憶情報に基づき前記ビット回転モータを制御する制御部とを備え、
前記記憶部は、ビット回転モータを回転駆動する設定区間と、この設定区間におけるビット回転モータの第一設定回転速度とを記憶して成り、
前記制御部は、前記検出負荷が設定負荷を超えた旨の判定信号を比較判定部から受け取れば、前記ビット回転モータを前記第一設定回転速度に基づいて駆動制御して、前記ねじをワークへ螺入し始めるよう制御して成ることを特徴とする自動ねじ締め装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記第一設定回転速度よりも低速の第二設定回転速度を記憶して成り、
前記制御部は、前記設定区間の回転駆動を終えれば、ビット回転モータの回転速度を前記第一設定回転速度から前記第二設定回転速度へ切り替え制御して成ることを特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記設定区間を前記ねじの首下長さおよびリードに基づいて演算した設定角度とし、
前記設定角度は、前記ねじの先端がワークに接触してから当該ねじの頭部が前記ワークの表面に着座する直前までの前記ねじの螺入角度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動ねじ締め装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記設定区間および当該設定区間を越えねじ締結完了までの間、前記移動手段の移動速度をワークへ螺入されるねじの軸方向の移動速度にほぼ同期する速度として成ることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の自動ねじ締め装置。
【請求項5】
前記移動手段は、ツール移動モータに直結され回転自在なボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合して軸方向へ往復移動自在な可動プレートとを備えて成り、
前記可動プレートは、前記ねじ締めツールを軸方向へ往復移動自在に支持して成ることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の自動ねじ締め装置。
【請求項6】
前記位置検出手段は、ねじ締めツールの位置を、前記ツール移動モータから出力され前記ボールねじ軸を回転駆動したボールねじ軸回転駆動角度と、当該ボールねじ軸のリードとに基づいて演算し求めて成り、前記制御装置に内蔵されて成ることを特徴とする請求項5に記載の自動ねじ締め装置。
【請求項7】
前記負荷検出手段は、前記ねじ締めツールと前記移動手段とを連結するよう配置されて成り、少なくとも1軸方向の実荷重を検出して成る力センサとしたことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の自動ねじ締め装置。
【請求項8】
前記負荷検出手段は、前記ボールねじ軸のリードおよび前記ツール移動モータの負荷電流に基づいてねじ締めツールに加わる軸方向の検出負荷を演算するよう構成され、当該演算を前記制御部により演算処理して成ることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の自動ねじ締め装置。
【請求項9】
前記ねじ締めツールは、前記ビット回転モータに対してビットを軸方向へ相対移動するよう常時付勢する弾性部材を具備して成ることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかに記載の自動ねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじをワークに螺入する際、当該ねじがワークに着座する手前でねじに係合したビットの回転速度を切り替え制御し、着座時に発生する衝撃トルクを低減可能な自動ねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、従来の自動ねじ締め装置の構成について特許文献1および図5に基づき説明する。従来の自動ねじ締め装置は、ワークにねじSを締結するよう構成されており、前記ねじSに係合可能なビットBおよび当該ビットBを回転駆動可能なビット回転モータを備えて成るねじ締めツールと、このねじ締めツールに沿って延び当該ねじ締めツールを昇降可能に支持する送りねじと、この送りねじに回転を付与するとともに当該回転角度に応じたパルス信号を出力可能なツール昇降モータと、このツール昇降モータおよび前記ビット回転モータを回転駆動制御するコントローラとを備える。
【0003】
前記コントローラは、固定配置された普遍的な高さに配置されている前記ツール昇降モータから発せらるパルス信号および送りねじのリードに基づいてねじ締めツールの高さ位置を適宜算出するよう構成されており、加えて、ワークに締結するねじの首下長さおよびビット回転モータの回転速度などを予め複数設定可能に構成されている。具体的には、図5に示す、ねじ締めツールの下降前の原点座標Znや、ねじSの先端がワークW1に当接した直後のねじ螺入開始座標Z1や、ねじSの頭部がワークW1に着座する直前の着座直前座標Z2などの普遍的な絶対座標が予め設定されている。
【0004】
次に、従来の自動ねじ締め装置の作用について図5に基づき説明する。前記コントローラは、座標原点Znに留まっていたねじ締めツールをねじ螺入開始座標Z1へ向かわせるため、ツール昇降モータを回転駆動する。これにより、前記送りねじが回転し、前記ビットBがねじSを係合させたまま下降する。この時、前記コントローラは、前記ツール昇降モータのパルス信号などに基づいてねじ締めツールの高さ位置を算出する。また、コントローラは、前述の算出した前記高さ位置が前記ねじ螺入開始座標Z1に到達しているか判断し、到達したと判断すれば前記ビット回転モータを中速で回転駆動する。
【0005】
このように、ねじ締めツールがねじ螺入開始座標Z1に到達した後は、中速で回転するビットBに係合したねじSが前記めねじとの螺合量を増やし下降する。また、コントローラは、このビットBの中速回転時も前記パルス信号などに基づいてねじ締めツールの高さ位置を算出しており、算出したねじ締めツールの高さ位置が着座直前座標Z2へ到達しているか判断し、到達したと判断すればビット回転モータを低速で回転駆動する。
【0006】
これにより、ワークW1に着座する直前でビット回転モータが中速から低速へ切り替えられるので、従来の自動ねじ締め装置は、着座の瞬間に発生する衝撃トルクを低減できるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平04-115834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の自動ねじ締め装置は、ビット回転モータの回転速度を切り替える基準が前記ねじ螺入開始座標Z1や着座直前座標Z2という絶対座標となっているので、図5に示すように毎回のねじ締め作業により入れ替えられるワーク(W1,W2)に寸法差Xがある場合、それぞれのワークに適したねじ締め制御を行い難かったという問題があった。
【0009】
また、従来の自動ねじ締め装置は、図5に示すようなワークW1に比べて厚みの薄いワークW2であれば、ねじSの頭部が着座するかなり手前でビットBを低速に切り替えることになってしまい、ねじ締め時間が増大する。逆に、ワークW1に比べて厚いワーク(図示せず)であれば、当該ワークの表面が前記着座直前座標Z2よりも高い位置に位置するので、ビットBの回転速度を低速に切り替える前に当該ねじSの頭部座面がワークの表面に到達する。よって、大きな衝撃トルクが発生するという問題もあった。このように、絶対座標を用いる従来の自動ねじ締め装置は、毎回のねじ締め作業において入れ替えられるワークの寸法差を考慮したねじ締め制御を行い難いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ねじに係合可能なビットおよび当該ビットに回転を付与するビット回転モータを備えたねじ締めツールと、このねじ締めツールを軸方向へ移動自在な移動手段と、前記ねじ締めツールに加わった軸方向の負荷を検出する負荷検出手段と、移動するねじ締めツールの位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段および前記負荷検出手段を接続しかつ前記ビット回転モータおよび前記移動手段をそれぞれ駆動制御する制御装置とを備えて成る自動ねじ締め装置において、前記制御装置は、前記負荷検出手段によって検出した検出負荷の合否を判定する比較判定部と、前記検出負荷の合否基準となる設定負荷およびねじをワークに螺入し始めてから当該ねじがワークに着座する直前になる位置情報を予め記憶して成る記憶部と、比較判定部の判定結果および記憶部の記憶情報に基づき前記ビット回転モータを制御する制御部とを備えて成ることを特徴とする。なお、前記記憶部は、ビット回転モータを回転駆動する設定区間と、この設定区間におけるビット回転モータの第一設定回転速度とを記憶して成り、前記制御部は、前記検出負荷が設定負荷を超えた旨の判定信号を比較判定部から受け取れば、前記ビット回転モータを前記第一設定回転速度に基づいて駆動制御して、前記ねじをワークへ螺入し始めるよう制御して成ることが好ましい。また、前記記憶部は、前記第一設定回転速度よりも低速の第二設定回転速度を記憶して成り、前記制御部は、前記設定区間の回転駆動を終えれば、ビット回転モータの回転速度を前記第一設定回転速度から前記第二設定回転速度へ切り替え制御して成ることが好ましい。さらに、前記制御装置は、前記設定区間を前記ねじの首下長さおよびリードに基づいて演算した設定角度とし、前記設定角度は、前記ねじの先端がワークに接触してから当該ねじの頭部が前記ワークの表面に着座する直前までの前記ねじの螺入角度であってもよい。前記制御装置は、前記設定区間および当該設定区間を越えねじ締結完了までの間、前記移動手段の移動速度をワークへ螺入されるねじの軸方向の移動速度にほぼ同期する速度とすることが望ましい。また、前記移動手段は、ツール移動モータに直結され回転自在なボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合して軸方向へ往復移動自在な可動プレートとを備えて成り、前記可動プレートは、前記ねじ締めツールを軸方向へ往復移動自在に支持して構成されていてもよい。さらに、前記位置検出手段は、ねじ締めツールの位置を、前記ツール移動モータから出力され前記ボールねじ軸を回転駆動したボールねじ軸回転駆動角度と、当該ボールねじ軸のリードとに基づいて演算し求めて成り、前記制御装置に内蔵されていてもよい。また、前記負荷検出手段は、前記ねじ締めツールと前記移動手段とを連結するよう配置されて成り、少なくとも1軸方向の実荷重を検出して成る力センサとするか、或いは、前記ボールねじ軸のリードおよび前記ツール移動モータの負荷電流に基づいてねじ締めツールに加わる軸方向の検出負荷を演算するよう構成され、当該演算を前記制御部により演算処理して成る構成であってもよい。さらに、前記ねじ締めツールは、前記ビット回転モータに対してビットを軸方向へ相対移動するよう常時付勢する弾性部材を具備してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじ締めツールに加わる軸方向の負荷が所定値に到達することでビット回転モータを駆動制御しているので、高さの異なるワークであっても下降するねじの先端とワークとの接触した時点を起点にねじ締め動作を制御できるという利点がある。
【0012】
また、本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじがワークへねじ込まれる過程となる前記設定区間において、使用するねじやワークの種類に適応したビットの回転速度を設定可能であり、幅広いねじ締め制御を可能にするという利点もある。
【0013】
さらに、本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじがねじ込まれる過程となる前記設定区間を超えると、当該設定区間におけるビットの回転速度よりも低速となる第二設定回転数によりビット回転モータを回転駆動しているので、ねじがワークに着座する際に生じる衝撃トルクを低減できるという利点もある。
【0014】
また、本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじの先端がワークに接触してから当該ねじの頭部がワークに着座する直前までの設定区間を、ねじの首下長さおよびリードに基づいて演算したビット回転モータの回転駆動角度としている。これにより、前記移動手段や前記位置検出手段などから出力される位置情報をねじ締め制御に必要としないので、ねじ締め制御に必要な情報を少なくすることができるという利点もある。
【0015】
さらに、本発明に係る自動ねじ締め装置は、移動手段の移動速度をワークに螺入されるねじの軸方向への移動速度とほぼ同期する値としているので、螺入中のねじをワークへ過剰に押し付け難いという利点もある。
【0016】
また、本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじ締めツールを往復移動自在した移動手段を、ツール移動モータおよびボールねじ軸などによって構成しているので、エアシリンダ等の圧縮エアを利用する装置構成ではない。よって、本発明に係る自動ねじ締め装置は、動力源を電力のみとすることができるので、当該装置を設置する工場などにエア配管等を張り巡らす必要が無いという利点もある。
【0017】
さらに、本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじ締めツール10の高さ位置を、前記ボールねじ軸が回転したボールねじ軸回転駆動角度と、ボールねじ軸のリードとに基づいて演算する位置検出手段を制御装置に内蔵する。これにより、ワークの表面からねじ締めツールの相対的な高さ位置を計測する接触式或いは非接触式の高価な変位センサをねじ締めツールに別途搭載する必要が無いという利点もある。
【0018】
また、本発明に係る時移動ねじ締め装置は、1軸方向の実荷重を検出する力センサを備えて成るので、ワークとねじとの接触により発生する軸方向に圧縮した荷重を精度高く検出できるという利点もある。
【0019】
さらに、本発明に係る自動ねじ締め装置は、前記ボールねじ軸のリードおよびツール移動モータの負荷電流に基づいてねじ締めツールに加わる軸方向の検出負荷を前記制御部で演算処理し求めるので、前記力センサなどをねじ締めツールに別途搭載する必要が無いという利点もある。
【0020】
また、本発明に係る自動ねじ締め装置は、ねじ締めツールにビットを軸方向へ常時付勢する弾性部材を配して成るので、ビットが高速でワークに接近した場合であっても、ねじの先端がワークに当接した瞬間にビットがビット回転モータに対して相対移動する。よって、このねじとワークとの当接時に発生する軸方向の衝撃力を大幅に低減できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る自動ねじ締め装置の概略説明図である。
図2】本発明に係る別の自動ねじ締め装置の概略説明図である。
図3】本発明に係るさらに別の自動ねじ締め装置の概略説明図である。
図4】本発明に係る自動ねじ締め装置の動作説明図である。
図5】従来の自動ねじ締め装置の問題を説明するための動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る自動ねじ締め装置1は、図1ないし図4に示すように、ワークWへねじSを螺入して所定の締付けトルクにより締結するものであり、前記ねじSに係合可能なビットBおよび当該ビットBに回転を付与するビット回転モータBMを備えたねじ締めツール10と、このねじ締めツール10を軸方向へ移動自在な移動手段20と、前記ねじ締めツール10に加わった軸方向の負荷を検出する負荷検出手段30と、移動するねじ締めツール10の位置を検出する位置検出手段40と、この位置検出手段40および前記負荷検出手段30を接続しかつ前記ビット回転モータBMおよび前記移動手段20をそれぞれ駆動制御する制御装置50とを備える。
【0023】
前記ねじ締めツール10は、前記ビットBを軸方向に接続し当該ビットBと一体に回転する接続軸11と、この接続軸11に回転を付与するビット回転モータBMと、このビット回転モータBMを固定するとともに前記接続軸11を挿通可能な中空部材12とを備える。
【0024】
また、このねじ締めツール10は、前記ビット回転モータBMと中空部材12との間に配置され前記接続軸11を接続するトルクセンサTSを備えてもよく、このトルクセンサTSは、ねじSをワークWへ螺入する際にビットBに作用するトルクを検出可能に構成されている。
【0025】
さらに、前記ねじ締めツール10は、図3に示すように前記ビットBと接続軸11との間に配され当該ビットBの軸方向への摺動を可能にする弾性部材15を備えてもよく、この場合は、前ビットBが記接続軸11と一体に回転するように摺動のみ許容する摺動機構16を配してもよい。このように軸方向へ撓む前記弾性部材15を備えたねじ締めツール10は、ねじSの先端がワークWに接触した瞬間に高い衝撃力を生じ難く、ワークWに設けられためねじの開口部を破損させ難いという特徴を備える。
【0026】
前記移動手段20は、図1に示すように、前記制御装置50に接続され回転駆動可能なツール移動モータTMと、このツール移動モータTMに連結され前記ビットBと平行に延びるよう配置したボールねじ軸21と、このボールねじ軸21に螺合し当該ボールねじ軸21の回転に伴って往復移動可能な可動部材22とを備えて成る。前記可動部材22は、前記ねじ締めツール10の中空部材12を連結して成り、前記ツール移動モータTMの回転駆動を受けてねじ締めツール10をワークWへ向かって接近或いは離反する方向へ移動可能に構成されている。
【0027】
また、前記移動手段20は、上述した構成以外に図3に示すようなモータ(M1,M2,M3)およびこのモータ(M1,M2,M3)を接続したアーム(A1,A2,A3)を備えた所謂多関節ロボットに置き換えてもよく、或いは、図2に示すように電磁弁33によって圧縮エアを供給して前記可動部材22を軸方向へ往復移動可能な所謂エアシリンダを用いる構成であってもよい。
【0028】
前記ツール移動モータTMおよび前記モータ(M1,M2,M3)ならびにビット回転モータBMは、何れもACサーボモータであり、それぞれ回転駆動している際の負荷電流および回転角度を適宜制御装置50へ送信するよう構成されている。
【0029】
前記負荷検出手段30は、ビットBに係合したねじSの先端がワークWに接触することで高まり軸方向に圧縮する荷重を検出可能に構成されており、検出した検出負荷を適宜前記制御装置50内へ送信するよう構成されている。また、この負荷検出手段30は、ねじ締めツール10に加わっている前記検出負荷を歪みゲージ或いは圧電素子を具備して成る図2および図3に示すような所謂力センサで構成するか、或いは、図1に示す前記ツール移動モータTMの実回転負荷に相当する負荷電流を制御装置50内へ取り込みこれを演算することで前記検出負荷を算出する構成とし制御装置50の内部に配置してもよい。
【0030】
前記位置検出手段40は、ワークWの表面からねじ締めツール10の高さ位置を検出可能に構成されており、図2に示すような軸方向へ摺動自在に配された接触子41を備える接触式変位センサとするか、或いは、ワークWの表面にレーザ光や超音波を照射してねじ締めツール10とワークWとの相対的な高さ位置を検出する非接触式変位センサ(図示せず)であってもよい。
【0031】
さらに、前記位置検出手段40は、前記ツール移動モータTMから送信された前記回転角度に基づき軸方向へ移動したねじ締めツール10の高さ位置を演算処理する構成であり、前記制御装置50に内蔵されていてもよい。この場合であれば、ねじ締めツール10の先端側に前述の接触式変位センサおよび非接触式変位センサを設置しなくてもよいので、移動手段20に掛かる負荷を軽減できる。
【0032】
前記制御装置50は、負荷検出手段30によって検出した検出負荷の合否を判定する比較判定部51と、検出負荷の合否基準となる設定負荷を予め記憶して成る記憶部53と、これら比較判定部51、記憶部53および前記ねじ締めツール10のビット回転モータBM、トルクセンサTS、移動手段20のツール移動モータTM、電磁弁23、負荷検出手段30、位置検出手段40など各種機器の情報に基づいてビットBの回転やねじ締めツール10の移動を司る制御部52とを備えて成る。
【0033】
前記記憶部53は、負荷検出手段30から出力される検出負荷と比較するための設定負荷、ビット回転モータBMおよび移動手段20のツール移動モータTM或いは前記モータ(M1,M2,M3)を駆動制御するためのプログラム、ワークWへ締結するねじSの首下長さおよび当該ねじSのリード、前記移動手段20のボールねじ軸21のリードを予め記憶している。また、記憶部53は、前記プログラムで使用される設定区間、当該設定区間におけるビット回転モータBMの回転速度(以下、第一設定回転速度という。)、当該設定区間を越えた直後からねじSの締結が完了するまでのビット回転モータBMの回転速度(以下、第二設定回転速度という。)、前記設定区間における移動手段20の移動速度(以下、移動手段設定速度という。)、前記ねじ締めツール10の移動方向を決定するツール移動モータTMの回転方向およびその回転速度なども予め記憶している。
【0034】
前記設定区間は、ねじSがワークWに当接してから当該ねじSの頭部がワークWに着座する直前までの区間として設定されている。
【0035】
本実施形態における設定区間は、図1に示す装置構成であれば、ビット回転モータBMの回転角度、或いは、前記ツール移動モータTMから出力される回転角度の何れかである。ビット回転モータBMの回転角度を設定区間とするのは、回転するねじSがワークWに螺合すると、ねじSのリード、首下長さおよびビット回転モータBMから出力される回転角度に基づいて演算することで、ねじSが軸方向へ進む螺入距離を求めることができるからである。一方、ツール移動モータTMから出力される回転角度を設定区間とするのは、移動手段20のボールねじ軸21のリードおよびツール移動モータTMから出力される回転角度に基づいて演算することで、ねじ締めツール10の軸方向へ進む移動距離を求めることができるからである。このように、ねじ締めツール10が軸方向へ進んだ距離をビット回転モータBM、或いは、ツール移動モータTMの何れか一方の出力情報に基づいて導き出すことができるので、設定区間におけるビット回転モータBMの回転制御または移動手段の移動制御を可能にする。
【0036】
また、図2に示す装置構成であれば、前記設定区間は、位置検出手段40によりねじ締めツール10の軸方向への移動距離を計測できるので、この計測した移動距離としている。さらに、図3に示す装置構成であれば、前記設定区間は、モータ(M1,M2,M3)のそれぞれの回転角度としている。これは、モータ(M1,M2,M3)からそれぞれ出力される回転角度およびアームA1,A2,A3の長さに基づいてねじ締めツール10の軸方向の移動距離が演算できるからである。
【0037】
前記比較判定部51は、前記負荷検出手段30から出力されたねじ締めツール10に加わっている軸方向の検出負荷と前記設定負荷とを比較判定するよう構成されており、前記検出負荷が前記設定負荷を超えればねじSの先端がワークWに当接したと判定し、前記制御部52へ当接した旨の判定信号を発信して成る。
【0038】
前記制御部52は、上述したようにビット回転モータBMなどの各種機器に接続されており、これら各機器から出力される情報を受信したり、各機器へ動作指令に係る信号を発信可能に構成されている。また、制御部52は、前記プログラムを実行処理するよう構成され、前記比較判定部51および前記記憶部53にも接続されている。さらに、制御部52は、前記首下長さなど記憶部53に記憶されている多くの情報に基づいて演算処理可能に構成されており、前記螺入距離や、上述のツール移動モータTMの回転角度およびボールねじ軸21のリードに基づいてねじ締めツール10の前記移動距離或いは移動速度などを演算可能である。
【0039】
このように構成された本発明に係る自動ねじ締め装置1の作用について、図1ないし図4に基づいて説明する。
【0040】
本発明に係る自動ねじ締め装置1の作用について説明する。図示しない作業者の操作によって送信されたスタート信号が制御装置50に入力される。これにより、前記制御部52は、前記記憶部53に記憶されているプログラムを読み込んで当該プログラムを実行する。このプログラムの実行により制御部52は、前記移動手段20およびビット回転モータBMをそれぞれ予め記憶部53に設定された設定値に基づいて駆動制御する。
【0041】
図1に示す自動ねじ締め装置1の構成であれば、前述の制御部52により移動手段20を駆動制御する場合、制御部52は、記憶部53に記憶したツール移動モータTMの回転方向および回転速度に基づいてツール移動モータTMを駆動制御する。
【0042】
これにより、前記中空部材12が所定速度で下方へ向かい移動するとともにビット回転モータBMがねじSを緩める方向(以下、逆転という)へ回転する。よって、ビットBは、図4に示すように待機位置に留まっていた状態から逆転しつつワークWへ向かい接近する方向へ移動する。やがて、前記ビットBに係合するねじSは、ワークWと当接するので、この当接した時点からビットBに掛かる軸方向の負荷が高まる。
【0043】
制御部52は、前記負荷検出手段30から常時出力される検出負荷を受け取っており、ねじSの先端とワークWとの当接によって高まる検出負荷を比較判定部51へ送る。前記比較判定部51は、前記検出負荷と、記憶部53に予め設定されている設定負荷とを比較しており、検出負荷が設定負荷に到達すれば、その旨の判定信号を制御部52へ送信する。これにより、ねじSの先端がワークWに接触したと見なすことができる。
【0044】
このように、本発明に係る自動ねじ締め装置1は、ねじSの先端がワークWに接触した時点を起点としてねじ締めツール10や移動手段20を駆動制御するので、従来の絶対位置に基づく駆動制御では難しかった高さが異なるワークWへのねじ締めに対応できる。
【0045】
また、前記制御部52は、比較判定部51からねじSの先端がワークWに接触した旨の判定信号を受け取ると、前記記憶部53から前記第一設定回転速度を読み出して前記ビット回転モータBMを先ほどの逆転から第一設定回転速度で回転するよう指令する。
【0046】
このように、制御部52は、ねじSの先端がワークWに当接したタイミングからビット回転モータBMの回転速度を第一設定回転速度に基づいて駆動し始めると同時に、前記位置検出手段40から出力されたねじ締めツール10の高さ位置に係る情報を受け取って当該情報を比較判定部51へ送る。
【0047】
これを受け比較判定部51は、前記ビット回転モータBMを第一設定回転速度により回転駆動すべき設定区間であるか否かを判定する。この判定結果が正である場合、制御部52は、引き続きビット回転モータBMを第一設定回転速度により駆動制御する。
【0048】
一方、否と判定された場合、制御部52は、図4に示すようにビット回転モータBMを前記第一設定回転速度から低速の第二設定回転速度へ切り替え制御して設定区間におけるビット回転モータBMの制御を終える。また、このように、ビット回転モータBMの回転速度を切り替え制御することで、ねじSの頭部がワークWに着座する直前までの区間と、所定トルクに到達し締結を終えるまでの区間とのビットBの回転速度を個別に設定できる。よって、本発明に係る自動ねじ締め装置1は、ねじ締め時間の短縮ならびに着座時に発生する衝撃トルクを低減することができる。
【0049】
また、図3に示す自動ねじ締め装置1は、ねじSの先端がワークWに当接すると、ビットBと接続軸11との間に配置した弾性部材15が圧縮方向へ撓む。このため、当該当接時に生じる軸方向の衝撃を緩和することができる。
【0050】
また、前述の当接時に生じる衝撃を緩和できる効果に加え、弾性部材15が撓んでいる間に移動手段20の移動速度を減速するよう制御することで、当該弾性部材15を必要以上に撓ませないようにできる。これにより、当接直後にねじSを過剰に軸方向へ押圧することがないよう規制できる。
【0051】
さらに、前記設定区間は、ねじSがワークWへ螺入される区間である。したがって、この設定区間における移動手段20の移動速度は、回転しつつ下降するビットBがねじSから係合を解かない値に設定する必要がある。このねじSの螺入時におけるねじSの軸方向へ進む速度は、ビット回転モータBMの第一設定回転速度と当該ねじSのリードによって決定するので、これら第一設定回転速度とねじSのリードとを前記記憶部53から読み出し、制御部52によって演算し求める。さらに、制御部52は、この演算によって求めたねじSの螺入時の当該速度に基づいて各モータ(M1,M2,M3)の回転速度を決定しビットBがねじSから係合を解かないよう螺入する速度に同期するよう移動手段20を制御している。このようにねじの螺入速度に基づいて移動手段20の移動速度を演算により求め駆動制御するので、ワークWへ螺入するねじSを必要以上強く押圧し難いという利点もある。
【0052】
なお、本実施形態において、待機位置から設定区間に到達するまでのビット回転モータBMの回転方向を逆転制御しているが、これを無回転または正転するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 … 自動ねじ締め装置
10 … ねじ締めツール
20 … 移動手段
21 … ボールねじ軸
30 … 負荷検出手段
40 … 位置検出手段
50 … 制御装置
51 … 比較判定部
52 … 制御部
53 … 記憶部
B … ビット
BM … ビット回転モータ
TM … ツール移動モータ
S … ねじ
W … ワーク
図1
図2
図3
図4
図5