IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧 ▶ エヌエックスピー ビー ヴィの特許一覧

<>
  • 特許-車両用制御システム 図1
  • 特許-車両用制御システム 図2
  • 特許-車両用制御システム 図3
  • 特許-車両用制御システム 図4
  • 特許-車両用制御システム 図5
  • 特許-車両用制御システム 図6
  • 特許-車両用制御システム 図7
  • 特許-車両用制御システム 図8
  • 特許-車両用制御システム 図9
  • 特許-車両用制御システム 図10
  • 特許-車両用制御システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】車両用制御システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20240124BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240124BHJP
   G08G 1/097 20060101ALI20240124BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240124BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H05K1/14 E
B60W40/02
G08G1/097 A
G08G1/16 C
H05K1/18 U
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020018015
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021125557
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507219491
【氏名又は名称】エヌエックスピー ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 60, NL-5656 AG Eindhoven, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布田 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】土山 浄之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 真人
(72)【発明者】
【氏名】濱野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀籠 大介
(72)【発明者】
【氏名】寳神 永一
(72)【発明者】
【氏名】田崎 篤
(72)【発明者】
【氏名】橋本 陽介
(72)【発明者】
【氏名】木原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド ヴァン デン ボッシュ
(72)【発明者】
【氏名】レイ マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド スリコ
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156091(JP,A)
【文献】特開2010-204775(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049731(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/180091(WO,A1)
【文献】実開平03-085691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H05K 1/18
B60W 30/00-30/20
B60W 40/00-40/13
G08G 1/16
G08G 1/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する車両用制御システムであって、
第1車両用制御装置と、
第2車両用制御装置と、
前記第1車両用制御装置と前記第2車両用制御装置とを連結する連結部材とを備え、
前記第1車両用制御装置および前記第2車両用制御装置の各々は、
基板と、
前記車両に設けられたカメラの出力に対して画像処理を行う信号処理ICユニットと、
前記信号処理ICユニットの出力に基づいて前記車両の外部環境を認識する認識処理を行う認識処理ICユニットと、
前記認識処理ICユニットの出力に基づいて前記車両の走行制御のための制御信号を出力する制御ICユニットと、
前記認識処理ICユニットと電気的に接続される第1端子と、
前記制御ICユニットと電気的に接続される第2端子とを備え、
前記信号処理ICユニットと前記認識処理ICユニットと前記制御ICユニットは、前記基板の回路形成面に設けられ、
前記第1端子と前記第2端子は、前記基板の縁部に設けられ、
前記連結部材は、
前記第1車両用制御装置の基板の縁部が連結される第1連結部と、
前記第2車両用制御装置の基板の縁部が連結される第2連結部と、
前記第1連結部に連結された第1車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第1端子と前記第2連結部に連結された第2車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第1端子とを電気的に接続する第1配線と、
前記第1連結部に連結された第1車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第2端子と前記第2連結部に連結された第2車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第2端子とを電気的に接続する第2配線とを有し、
前記第1車両用制御装置の認識処理ICユニットは、前記連結部材の第1配線を通じて、前記第2車両用制御装置の認識処理ICユニットと信号伝送を行い、
前記第1車両用制御装置の制御ICユニットは、前記連結部材の第2配線を通じて、前記第2車両用制御装置の制御ICユニットと信号伝送を行い、
前記第1車両用制御装置および前記第2車両用制御装置は、前記第1車両用制御装置の基板の回路形成面と前記第2車両用制御装置の基板の回路形成面とが互いに外側を向くように、前記連結部材の前記第1連結部および前記第2連結部にそれぞれ連結される
ことを特徴とする車両用制御システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両用制御装置および車両用制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両制御装置が開示されている。この車両制御装置は、自動運転制御情報に基づいて生成される第1制御信号と、自車と周辺物体との相対情報に基づいて生成される第2制御信号のいずれか一方を駆動装置に出力する。また、この車両制御装置は、自動運転制御情報に異常が検出された場合に、第1制御信号に代えて第2制御信号を駆動装置に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-47694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車の商品展開上、車両を制御する車両用制御システムとして、単一系の車両用制御システムと、冗長系の車両用制御システムとの両方を開発することが要求される。単一系の車両用制御システムには、単一の処理系統(車両の走行制御のための処理を行う処理系統)が設けられる。冗長系の車両用制御システムには、複数の処理系統が並列に設けられる。しかしながら、単一系の車両用制御システムと冗長系の車両用制御システムとを個別に開発すると、開発に要するコストが高くなってしまう。
【0005】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開発に要するコストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する技術は、車両を制御する車両用制御装置に関する。この車両用制御装置は、基板と、前記車両に設けられたカメラの出力に対して画像処理を行う信号処理ICユニットと、前記信号処理ICユニットの出力に基づいて前記車両の外部環境を認識する認識処理を行う認識処理ICユニットと、前記認識処理ICユニットの出力に基づいて前記車両の走行制御のための制御信号を出力する制御ICユニットと、前記認識処理ICユニットと電気的に接続される第1端子と、前記制御ICユニットと電気的に接続される第2端子とを備える。前記信号処理ICユニットと前記認識処理ICユニット と前記制御ICユニットは、前記基板に設けられる。前記第1端子と前記第2端子は、前記基板の縁部に設けられる。
【0007】
前記の構成では、信号処理ICユニットと認識処理ICユニットと制御ICユニットとを備える車両用制御装置により、単一系の車両用制御システムを構成することができる。また、複数の車両用制御装置を並設し、複数の車両用制御装置の各々の第1端子を電気的に接続し、複数の車両用制御装置の各々の第2端子を電気的に接続することにより、冗長系の車両用制御システムを構成することができる。このように、単一系の車両用制御システムを構成可能な車両用制御装置を用いて冗長系の車両用制御システムを構成することができるので、単一系の車両用制御システムと冗長系の車両用制御システムとを個別に開発する場合よりも、開発に要するコストを低減することができる。
【0008】
また、ここに開示する技術は、車両を制御する車両用制御システムに関する。この車両用制御システムは、第1車両用制御装置と、第2車両用制御装置とを備える。前記第1車両用制御装置および前記第2車両用制御装置の各々は、前記車両用制御装置により構成される。前記第1車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第1端子は、前記第2車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第1端子と電気的に接続される。前記第1車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第2端子は、前記第2車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第2端子と電気的に接続される。
【0009】
前記の構成では、第1車両用制御装置と第2車両用制御装置とを並設し、第1車両用制御装置の第1端子と第2車両用制御装置の第1端子とを電気的に接続し,第1車両用制御装置の第2端子と第2車両用制御装置の第2端子とを電気的に接続することにより、冗長系の車両用制御システムを構成することができる。これにより、単一系の車両用制御システムと冗長系の車両用制御システムとを個別に開発する場合よりも、開発に要するコストを低減することができる。
【0010】
なお、前記車両用制御システムは、前記第1車両用制御装置と前記第2車両用制御装置とを連結する連結部材を備えてもよい。前記連結部材は、前記第1車両用制御装置の基板の縁部が連結される第1連結部と、前記第2車両用制御装置の基板の縁部が連結される第2連結部と、前記第1連結部に連結された第1車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第1端子と前記第2連結部に連結された第2車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第1端子とを電気的に接続する第1配線と、前記第1連結部に連結された第1車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第2端子と前記第2連結部に連結された第2車両用制御装置の基板の縁部に設けられた第2端子とを電気的に接続する第2配線とを有してもよい。
【0011】
前記の構成では、第1車両用制御装置の基板の縁部および第2車両用制御装置の基板の縁部を連結部材の第1連結部および第2連結部にそれぞれ連結することにより、冗長系の車両用制御システムを構成することができる。これにより、単一系の車両用制御システムと冗長系の車両用制御システムとを個別に開発する場合よりも、開発に要するコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
ここに開示する技術によれば、単一系の車両用制御システムと冗長系の車両用制御システムとを個別に開発する場合よりも、開発に要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態による車両用制御システムを備える車両の外観を例示する平面図である。
図2】実施形態による車両用制御システム(冗長系)の構成を例示する概略図である。
図3】実施形態による車両用制御システムの構成を例示する斜視図である。
図4】実施形態による車両用制御システムの構成を例示する断面図である。
図5】車両用制御システムの機能構成を例示するブロック図である。
図6】車両用制御システムの機能構成を例示するブロック図である。
図7】実施形態による車両用制御システム(単一系)の構成を例示する概略図である。
図8】実施形態の変形例1による車両用制御システムの構成を例示する概略図である。
図9】実施形態の変形例1による車両用制御システムの構成を例示する斜視図である。
図10】実施形態の変形例1による車両用制御システムの構成を例示する断面図である。
図11】実施形態の変形例2による車両用制御システムの構成を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0015】
(実施形態)
図1は、実施形態による車両用制御システム20を備える車両100の外観を例示する。車両用制御システム20は、車両100(具体的には自動四輪車)に設けられる。車両100は、マニュアル運転と、アシスト運転と、自動運転とに切り換え可能である。マニュアル運転は、ドライバの操作(例えばアクセルの操作など)に応じて走行する運転である。アシスト運転は、ドライバの操作を支援して走行する運転である。自動運転は、ドライバの操作なしに走行する運転である。車両用制御システム20は、アシスト運転および自動運転において、車両100を制御する。具体的には、車両用制御システム20は、車両100に設けられたアクチュエータ(図示を省略)を制御することで車両100の動作(特に走行)を制御する。なお、以下の説明では、車両用制御システム20が設けられている車両100を「自車両」と記載し、自車両の周囲に存在する他の車両を「他車両」と記載する。
【0016】
〔アクチュエータ〕
車両100に設けられるアクチュエータは、駆動系のアクチュエータ、操舵系のアクチュエータ、制動系のアクチュエータなどを含む。駆動系のアクチュエータの例としては、エンジン、モータ、トランスミッションが挙げられる。操舵系のアクチュエータの例としては、ステアリングが挙げられる。制動系のアクチュエータの例としては、ブレーキが挙げられる。
【0017】
〔情報取得部〕
車両100には、情報取得部10が設けられる。情報取得部10は、車両100の制御(特に走行制御)に用いられる各種情報を取得する。図1図2図5に示すように、情報取得部10は、複数のカメラ11と、複数のレーダ12と、位置センサ13と、外部入力部14と、メカセンサ15と、ドライバ入力部16とを含む。なお、図1および図2では、位置センサ13と外部入力部14とメカセンサ15とドライバ入力部16の図示を省略している。
【0018】
〔カメラ〕
複数のカメラ11は、互いに同様の構成を有する。複数のカメラ11は、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる。複数のカメラ11の各々は、車両100の周囲に広がる環境(車両100の外部環境)の一部を撮像することで、車両100の外部環境の一部を示す画像データを取得する。複数のカメラ11の各々により得られた画像データは、車両用制御システム20に送信される。
【0019】
この例では、カメラ11は、広角レンズを有する単眼カメラである。例えば、カメラ11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)などの固体撮像素子を用いて構成される。なお、カメラ11は、狭角レンズを有する単眼カメラであってもよいし、広角レンズまたは狭角レンズを有するステレオカメラであってもよい。
【0020】
また、複数のカメラ11は、複数の第1カメラ11aと、複数の第2カメラ11bとを含む。この車両100には、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる複数のカメラ11の組が2組ある。
【0021】
〈第1カメラ〉
複数の第1カメラ11aは、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる。具体的には、複数の第1カメラ11aは、複数の第1カメラ11aの撮像エリアが車両100の周囲を囲うように車両に設けられる。この例では、複数の第1カメラ11aは、第1前方カメラ111aと、第1斜め右後方カメラ112aと、第1斜め左後方カメラ113aと、第1後方カメラ114aとを含む。第1前方カメラ111aは、車両100の前方を撮像する。第1斜め右後方カメラ112aは、車両100の斜め右後方を撮像する。第1斜め左後方カメラ113aは、車両100の斜め左後方を撮像する。第1後方カメラ114aは、車両100の後方を撮像する。
【0022】
〈第2カメラ〉
複数の第2カメラ11bは、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる。具体的には、複数の第2カメラ11bは、複数の第2カメラ11bの撮像エリアが車両100の周囲を囲うように車両に設けられる。この例では、複数の第2カメラ11bは、第2前方カメラ111bと、第2斜め右後方カメラ112bと、第2斜め左後方カメラ113bと、第2後方カメラ114bとを含む。第2前方カメラ111bは、車両100の前方を撮像する。第2斜め右後方カメラ112bは、車両100の斜め右後方を撮像する。第2斜め左後方カメラ113bは、車両100の斜め左後方を撮像する。第2後方カメラ114bは、車両100の後方を撮像する。
【0023】
〔レーダ〕
複数のレーダ12は、互いに同様の構成を有する。複数のレーダ12は、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる。複数のレーダ12の各々は、車両100の外部環境の一部を検出する。具体的には、レーダ12は、車両100の外部環境の一部へ向けて電波を送信して車両100の外部環境の一部からの反射波を受信することで、車両100の外部環境の一部を検出する。複数のレーダ12の検出結果は、車両用制御システム20に送信される。
【0024】
例えば、レーダ12は、ミリ波を送信するミリ波レーダであってもよいし、レーザ光を送信するライダ(Light Detection and Ranging)であってもよいし、赤外線を送信する赤外線レーダであってもよいし、超音波を送信する超音波センサであってもよい。
【0025】
また、複数のレーダ12は、複数の第1レーダ12aと、複数の第2レーダ12bとを含む。この車両100には、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる複数のレーダ12の組が2組ある。
【0026】
〈第1レーダ〉
複数の第1レーダ12aは、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる。具体的には、複数の第1レーダ12aは、複数の第1レーダ12aの検出エリアが車両100の周囲を囲うように車両に設けられる。この例では、複数の第1レーダ12aは、第1前方レーダ121aと、第1斜め右後方レーダ122aと、第1斜め左後方レーダ123aとを含む。第1前方レーダ121aは、車両100の前方の外部環境を検出する。第1斜め右後方レーダ122aは、車両100の斜め右後方の外部環境を検出する。第1斜め左後方レーダ123aは、車両100の斜め左後方の外部環境を検出する。
【0027】
〈第2レーダ〉
複数の第2レーダ12bは、車両100の周囲を囲うように車両100に設けられる。具体的には、複数の第2レーダ12bは、複数の第2レーダ12bの検出エリアが車両100の周囲を囲うように車両に設けられる。この例では、複数の第2レーダ12bは、第2前方レーダ121bと、第2斜め右前方レーダ122bと、第2斜め左前方レーダ123bと、第2後方レーダ124bとを含む。第2前方レーダ121bは、車両100の前方の外部環境を検出する。第2斜め右前方レーダ122bは、車両100斜め右前方の外部環境を検出する。第2斜め左前方レーダ123bは、車両100の斜め左前方の外部環境を検出する。第2後方レーダ124bは、車両100の後方の外部環境を検出する。
【0028】
〔カメラとレーダとの関係〕
なお、この例では、複数の第1カメラ11aおよび複数の第1レーダ12aは、それぞれの監視エリアの組合せが車両100の周囲の全周を囲うように、それぞれの監視エリアとそれぞれの配置が定められている。これと同様に、複数の第2カメラ11bおよび複数の第2レーダ12bは、それぞれの監視エリアの組合せが車両100の周囲の全周を囲うように、それぞれの監視エリアとそれぞれの配置が定められている。
【0029】
〔位置センサ〕
位置センサ13は、車両100の位置(例えば緯度および経度)を検出する。例えば、位置センサ13は、全地球測位システムからのGPS情報を受信し、GPS情報に基づいて車両100の位置を検出する。位置センサ13により得られた情報(車両100の位置)は、車両用制御システム20に送信される。
【0030】
〔外部入力部〕
外部入力部14は、車両100の外部に設けられた車外ネットワーク(例えばインターネットなど)を通じて情報を入力する。例えば、外部入力部14は、車両100の周囲に位置する他車両(図示省略)からの通信情報、ナビゲーションシステム(図示省略)からのカーナビゲーションデータ、交通情報、高精度地図情報などを受信する。外部入力部14により得られた情報は、車両用制御システム20に送信される。
【0031】
〔メカセンサ〕
メカセンサ15は、車両100の状態(例えば速度や加速度やヨーレートなど)を検出する。例えば、メカセンサ15は、車両100の速度を検出する車速センサ、車両100の加速度を検出する加速度センサ、車両100のヨーレートを検出するヨーレートセンサなどを含む。メカセンサ15により得られた情報(車両100の状態)は、車両用制御システム20に送信される。
【0032】
〔ドライバ入力部〕
ドライバ入力部16は、車両100に加えられる運転操作を検出する。例えば、ドライバ入力部16は、アクセル開度センサ、操舵角センサ、ブレーキ油圧センサなどを含む。アクセル開度センサは、車両100のアクセルの操作量を検出する。操舵角センサは、車両100のハンドルの操舵角を検出する。ブレーキ油圧センサは、車両100のブレーキの操作量を検出する。ドライバ入力部16により得られた情報(車両100の運転操作)は、車両用制御システム20に送信される。
【0033】
〔車両用制御システム(冗長系)〕
図2図3図4は、車両用制御システム20の構成を例示する。車両用制御システム20は、例えば、乗員の座席下部やトランクルームなど、車両100内の特定の場所に設置された単一の筐体内に格納される。この車両用制御システム20は、冗長系の車両用制御システムである。冗長系の車両用制御システムには、複数の処理系統(車両100の走行制御のための処理を行う系統)が設けられる。具体的には、この車両用制御システム20は、第1車両用制御装置25aと、第2車両用制御装置25bと、連結部材26とを備える。第1車両用制御装置25aおよび第2車両用制御装置25bの各々は、車両用制御装置25により構成される。
【0034】
〔車両用制御装置〕
車両用制御装置25は、基板30と、信号処理ICユニット31と、認識処理ICユニット32と、制御ICユニット33と、第1端子35と、第2端子36とを備える。
【0035】
〈基板〉
基板30は、絶縁材料により構成され、矩形の板状に形成される。
【0036】
〈ICユニット〉
信号処理ICユニット31と認識処理ICユニット32と制御ICユニット33は、基板30(具体的には基板30の回路形成面)に設けられる。これらのICユニットの各々は、単一のIC(Integrated Circuit)で構成されてもよいし、複数のICで構成されてもよい。また、IC内には、単一のコアまたはダイが収容されてもよいし、連携する複数のコアまたはダイが収容されてもよい。コアまたはダイは、例えば、CPU(プロセッサ)と、CPUを動作させるためのプログラムやCPUでの処理結果などの情報を記憶するメモリとにより構成されてもよい。
【0037】
〈信号処理ICユニット〉
信号処理ICユニット31は、車両100に設けられたカメラ11の出力に対して画像処理を行う。そして、信号処理ICユニット31は、画像処理により得られた画像データを出力する。
【0038】
〈認識処理ICユニット〉
認識処理ICユニット32は、信号処理ICユニット31の出力に基づいて認識処理を行う。認識処理は、車両100の外部環境を認識する処理である。そして、認識処理ICユニット32は、認識処理により得られた外部環境データを出力する。
【0039】
〈制御ICユニット〉
制御ICユニット33は、認識処理ICユニット32の出力に基づいて制御信号を出力する。制御信号は、車両の走行制御のための信号である。具体的には、制御ICユニット33は、認識処理ICユニット32の出力(外部環境データ)に基づいて、車両100の走行制御のための判断処理を行う。そして、制御ICユニット33は、判断処理の結果に基づいて制御信号を出力する。
【0040】
〈第1端子〉
第1端子35は、基板30の縁部に設けられる。第1端子35は、認識処理ICユニット32と電気的に接続される。この例では、第1端子35は、基板30の回路形成面に設けられた配線部(導電層)により認識処理ICユニット32と電気的に接続される。
【0041】
また、この例では、第1端子35は、第1入力端子351と、第1出力端子352とを含む。第1入力端子351は、基板30の第1縁部301に設けられる。第1入力端子351は、認識処理ICユニット32の入力部と電気的に接続される。第1出力端子352は、基板30の第2縁部302に設けられる。第2縁部302は、第1縁部301と異なる縁部である。この例では、第2縁部302は、基板30の短手方向において第1縁部301と対向する縁部である。第1出力端子352は、認識処理ICユニット32の出力部と電気的に接続される。第1入力端子351と第1出力端子352は、基板30の第1縁部301と第2縁部302との間の中心線を軸として線対称に配置される。
【0042】
〈第2端子〉
第2端子36は、基板30の縁部に設けられる。第2端子36は、制御ICユニット33と電気的に接続される。この例では、第2端子36は、基板30の回路形成面に設けられた配線部(導電層)により制御ICユニット33と電気的に接続される。
【0043】
また、この例では、第2端子36は、第2入力端子361と、第2出力端子362とを含む。第2入力端子361は、基板30の第1縁部301に設けられる。第2入力端子361は、制御ICユニット33の入力部と電気的に接続される。第2出力端子362は、基板30の第2縁部302に設けられる。第1出力端子352は、制御ICユニット33の出力部と電気的に接続される。第2入力端子361と第2出力端子362は、基板30の第1縁部301と第2縁部302との間の中心線を軸として線対称に配置される。
【0044】
〔連結部材〕
連結部材26は、連結基板40と、第1連結部41と、第2連結部42と、第1配線43と、第2配線44とを有する。
【0045】
〈連結基板〉
連結基板40は、絶縁材料により構成され、矩形の板状に形成される。
【0046】
〈連結部〉
第1連結部41には、第1車両用制御装置25aの基板30の縁部(この例では第1縁部301)が連結される。第2連結部42には、第2車両用制御装置25bの基板30の縁部(この例では第2縁部302)が連結される。具体的には、第1連結部41および第2連結部42は、連結基板40の一方面(主面)に突設される。第1連結部41および第2連結部42の各々には、溝部(スロット)が設けられ、その溝部に車両用制御装置25の基板30の縁部(この例では第1縁部301または第2縁部302)が差し込まれる。なお、この例では、第1連結部41および第2連結部42は、連結基板40と一体に形成される。
【0047】
〈連結電極〉
この例では、第1連結部41および第2連結部42の各々には、第1連結電極410と第2連結電極420とが設けられる。
【0048】
第1連結部41の第1連結電極410は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の縁部に設けられた第1端子35と接触することで、その第1端子35と電気的に接続される。第2連結部42の第1連結電極410は、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の縁部に設けられた第1端子35と接触することで、その第1端子35と電気的に接続される。
【0049】
第1連結部41の第2連結電極420は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の縁部に設けられた第2端子36と接触することで、その第2端子36と電気的に接続される。第2連結部42の第2連結電極420は、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の縁部に設けられた第2端子36と接触することで、その第2端子36と電気的に接続される。
【0050】
具体的には、この例では、第1連結部41に第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301が連結された場合、第1連結部41の第1連結電極410は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1入力端子351と接触する。第1連結部41の第2連結電極420は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2入力端子361と接触する。また、第2連結部42に第2車両用制御装置25bの基板30の第2縁部302が連結された場合、第2連結部42の第1連結電極410は、第2車両用制御装置25bの基板30の第2縁部302に設けられた第1出力端子352と接触する。第2連結部42の第2連結電極420は、第2車両用制御装置25bの基板30の第2縁部302に設けられた第2出力端子362と接触する。
【0051】
〈第1配線〉
第1配線43は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の縁部に設けられた第1端子35と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の縁部に設けられた第1端子35とを電気的に接続する。
【0052】
この例では、第1配線43は、連結基板40の他方面(裏面)に設けられる。そして、第1配線43は、第1連結部41の第1連結電極410と第2連結部42の第1連結電極410とを電気的に接続する。
【0053】
〈第2配線〉
第2配線44は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の縁部に設けられた第2端子36と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の縁部に設けられた第2端子36とを電気的に接続する。
【0054】
この例では、第2配線44は、連結基板40の他方面(裏面)に設けられる。そして、第2配線44は、第1連結部41の第2連結電極420と第2連結部42の第2連結電極420とを電気的に接続する。
【0055】
〔第1車両用制御装置と第2車両用制御装置との接続〕
この例では、連結部材26の第1連結部41に第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301が連結されると、第1連結部41の第1連結電極410と第1車両用制御装置25aの第1入力端子351とが接触するとともに、第1連結部41の第2連結電極420と第1車両用制御装置25aの第2入力端子361とが接触する。これにより、第1車両用制御装置25aの第1入力端子351が第1連結部41の第1連結電極410を経由して第1配線43の一端部と電気的に接続され、第1車両用制御装置25aの第2入力端子361が第1連結部41の第2連結電極420を経由して第2配線44の一端部と電気的に接続される。
【0056】
また、連結部材26の第2連結部42に第2車両用制御装置25bの基板30の第2縁部302が連結されると、第2連結部42の第1連結電極410と第2車両用制御装置25bの第1出力端子352とが接触するとともに、第2連結部42の第2連結電極420と第2車両用制御装置25bの第2出力端子362とが接触する。これにより、第2車両用制御装置25bの第2入力端子361が第2連結部42の第1連結電極410を経由して第1配線43の他端部と電気的に接続され、第2車両用制御装置25bの第2出力端子362が第2連結部42の第2連結電極420を経由して第2配線44の他端部と電気的に接続される。
【0057】
このようにして、この例では、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1入力端子351は、第2車両用制御装置25bの基板30の第2縁部302に設けられた第1出力端子352と電気的に接続される。第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2入力端子361は、第2車両用制御装置25bの基板30の第2縁部に設けられた第2出力端子362と電気的に接続される。
【0058】
〔車両用制御システムの機能〕
図2に示す車両用制御システム20では、第1車両用制御装置25aの信号処理ICユニット31と第2車両用制御装置25bの信号処理ICユニット31が信号処理部201を構成する。第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32と第2車両用制御装置25bの認識処理ICユニット32が認識処理部202を構成する。第1車両用制御装置25aの制御ICユニット33が判断処理部203を構成する。第2車両用制御装置25bの制御ICユニット33がバックアップ処理部204を構成する。
【0059】
〈信号処理部〉
信号処理部201は、カメラ11の出力に対して画像処理を行う。そして、信号処理部201は、画像処理により得られた画像データを出力する。
【0060】
〈認識処理部〉
認識処理部202は、信号処理部201の出力(画像データ)に基づいて、車両100の外部環境を認識する認識処理を行う。そして、認識処理部202は、認識処理により得られた外部環境データを出力する。
【0061】
〈判断処理部〉
判断処理部203は、認識処理部202の出力(外部環境データ)に基づいて、車両100の走行制御のための判断処理を行う。そして、判断処理部203は、判断処理の結果に基づいて、車両100の走行制御のための制御信号を出力する。
【0062】
〈バックアップ処理部〉
バックアップ処理部204は、信号処理部201の出力(画像データ)に基づいて、車両100の外部環境を認識する認識処理を行う。また、バックアップ処理部204は、認識処理の結果に基づいて、車両100の走行制御のための判断処理を行う。そして、バックアップ処理部204は、判断処理の結果に基づいて、車両100の走行制御のための制御信号を出力する。
【0063】
〔車両用制御システムの機能の詳細〕
ここで、図5および図6を参照して、車両用制御システム20の機能構成を説明する。車両用制御システム20の機能は、認識系ブロックB1と、判断系ブロックB2と、操作系ブロックB3とに大別される。認識系ブロックB1は、情報取得部10により取得された各種情報に基づいて車両100の外部環境を認識する。なお、認識系ブロックB1は、車両100の内部環境を認識するように構成されてもよい。判断系ブロックB2は、認識系ブロックB1の認識結果に基づいて車両100の状態および状況を判断し、その判断の結果に基づいて車両100の目標動作を決定する。操作系ブロックB3は、判断系ブロックB2により決定された車両100の目標動作に基づいて、車両100に設けられたアクチュエータを制御するための信号を生成し、その信号をアクチュエータACに出力する。
【0064】
また、この例では、車両用制御システム20は、主演算部F1と、セーフティ機能部F2と、バックアップ機能部F3とを含む。
【0065】
〈主演算部〉
主演算部F1は、情報取得部10の出力に基づいて車両100の外部環境を認識し、その車両100の外部環境に基づいて車両100の目標経路を決定する。そして、主演算部F1は、車両100の目標経路に基づいて車両100の目標運動を決定し、その車両100の目標運動に基づいて制御信号を出力する。なお、主演算部F1の処理には、深層学習により生成された学習モデルが用いられる。深層学習では、多層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network)が用いられる。多層ニューラルネットワークの例としては、CNN(Convolutional Neural Network)が挙げられる。
【0066】
この例では、主演算部F1は、車両状態検出部F001と、ドライバ操作認識部F002と、物体認識部F101(画像系)と、物体認識部F102(レーダ系)と、マップ生成部F103と、外部環境推定部F104と、外部環境モデルF105と、経路探索部F106と、経路生成部F107と、危険状態判断部F108と、第1車両モデルF109と、第2車両モデルF110と、経路決定部F111と、目標運動決定部F112と、車両運動エネルギ設定部F113と、エネルギマネジメント部F114と、セレクタF115と、セレクタF116とを含む。
【0067】
車両状態検出部F001とドライバ操作認識部F002と物体認識部F101と物体認識部F102とマップ生成部F103と外部環境推定部F104と外部環境モデルF105は、認識系ブロックB1に属する。経路探索部F106と経路生成部F107と危険状態判断部F108と第1車両モデルF109と経路決定部F111と目標運動決定部F112は、判断系ブロックB2に属する。第2車両モデルF110と車両運動エネルギ設定部F113とエネルギマネジメント部F114とセレクタF115とセレクタF116は、操作系ブロックB3に属する。
【0068】
また、この例では、物体認識部F101(画像系)は、その一部が信号処理部201に含まれ、その残部が認識処理部202に含まれる。物体認識部F102(レーダ系)とマップ生成部F103は、認識処理部202に含まれる。外部環境推定部F104と外部環境モデルF105と経路探索部F106と経路生成部F107と第1車両モデルF109と第2車両モデルF110は、認識処理部202(具体的には第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32)に含まれる。車両状態検出部F001とドライバ操作認識部F002と危険状態判断部F108と経路決定部F111と目標運動決定部F112と車両運動エネルギ設定部F113とエネルギマネジメント部F114とセレクタF115とセレクタF116は、判断処理部203(具体的には第1車両用制御装置25aの制御ICユニット33)に含まれる。
【0069】
《車両状態検出部》
車両状態検出部F001は、メカセンサ15の出力に基づいて、車両100の状態(例えば速度や加速度やヨーレートなど)を認識する。
【0070】
《ドライバ操作認識部》
ドライバ操作認識部F002は、ドライバ入力部16の出力に基づいて、車両100に加えられる運転操作を認識する。
【0071】
《物体認識部(画像系)》
物体認識部F101は、カメラ11の出力に基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体を認識する。これにより、物体に関する情報(物体情報)が得られる。例えば、物体情報は、物体の種別、物体の形状などを示す。物体の例としては、時間経過により変位する動体と、時間経過により変位しない静止体とが挙げられる。動体の例としては、自動四輪車、自動二輪車、自転車、歩行者などが挙げられる。静止体の例としては、標識、街路樹、中央分離帯、センターポール、建物などが挙げられる。
【0072】
具体的には、物体認識部F101は、画像処理部と、画像認識部とを含む。画像処理部は、カメラ11の出力である画像データに対して画像処理を行う。この画像処理には、画像データに示される画像の歪みを補正する歪み補正処理、画像データに示された画像の明度を調整するホワイトバランス調整処理などが含まれる。画像認識部は、画像処理部において処理された画像データに基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体を認識する。例えば、物体認識部F101の画像認識部による物体認識処理には、周知の物体認識技術(画像データに基づく物体認識技術)が用いられてもよい。また、物体認識部F101の画像認識部は、深層学習により生成された学習モデルを用いて物体認識処理を行うように構成されてもよい。
【0073】
この例では、物体認識部F101の画像処理部は、第1カメラ11aの出力に基づいて処理を行う第1画像処理部と、第2カメラ11bの出力に基づいて処理を行う第2画像処理部とを含む。物体認識部F101の画像認識部は、第1画像処理部の出力に基づいて処理を行う第1画像認識部と、第2画像処理部の出力に基づいて処理を行う第2画像認識部とを含む。また、この例では、物体認識部F101の画像処理部は、信号処理部201に含まれ、物体認識部F101の画像認識部は、認識処理部202に含まれる。具体的には、第1画像処理部は、第1車両用制御装置25aの信号処理ICユニット31に含まれ、第2画像処理部は、第2車両用制御装置25bの信号処理ICユニット31に含まれる。第1画像認識部は、第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32に含まれ、第2画像認識部は、第2車両用制御装置25bの認識処理ICユニット32に含まれる。
【0074】
《物体認識部(レーダ系)》
物体認識部F102は、レーダ12の出力である検出結果(例えば反射波のピークリスト)に基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体を認識する。これにより、物体情報が得られる。具体的には、物体認識部F102は、レーダ12の検出結果に対して解析処理(物体情報を得るための処理)を行う。例えば、物体認識部F102による物体認識処理には、周知の物体認識技術(レーダ12の検出結果に基づく物体認識技術)が用いられてもよい。また、物体認識部F102は、深層学習により生成された学習モデルを用いて物体認識処理を行うように構成されてもよい。
【0075】
この例では、物体認識部F102は、第1レーダ12aの出力に基づいて処理を行う第1レーダ認識部と、第2レーダ12bの出力に基づいて処理を行う第2レーダ認識部とを含む。また、この例では、第1レーダ認識部は、第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32に含まれ、第2レーダ認識部は、第2車両用制御装置25bの認識処理ICユニット32に含まれる。
【0076】
《マップ生成部》
マップ生成部F103は、物体認識部F101(画像系)の出力と物体認識部F102(レーダ系)の出力とに基づいて、車両100の外部環境を示すマップデータ(例えば三次元マップデータ)を生成する。例えば、マップ生成部F103は、車両100の周囲を囲う周囲領域を分割して得られる複数の領域(例えば前後左右の4つの領域)毎に、マップデータを生成する。そして、マップ生成部F103は、物体認識部F101(画像系)および物体認識部F102(レーダ系)の各々により得られた物体情報を入力すると、それらの物体情報を統合し、統合により得られた物体情報をマップデータに反映させる。
【0077】
この例では、マップ生成部F103は、物体認識部F101の第1画像認識部の出力と物体認識部F102の第1レーダ認識部の出力とに基づいて処理を行う第1マップ生成部と、物体認識部F101の第2画像認識部の出力と物体認識部F102の第2レーダ認識部の出力に基づいて処理を行う第2マップ生成部とを含む。また、この例では、第1マップ生成部は、第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32に含まれ、第2マップ生成部は、第2車両用制御装置25bの認識処理ICユニット32に含まれる。
【0078】
《外部環境推定部》
外部環境推定部F104は、車両状態検出部F001の出力と、マップ生成部F103の出力と、位置センサ13の出力と、外部入力部14の出力(例えば高精度地図情報)とに基づいて、車両100の外部環境を推定する。具体的には、外部環境推定部F104は、外部環境モデルF105に基づく画像認識処理により、車両100の外部環境を示す三次元マップデータを生成する。
【0079】
この例では、外部環境推定部F104は、次のような動作を行う。まず、外部環境推定部F104は、複数の領域(例えば前後左右の4つの領域)毎のマップデータを統合し、車両100の周囲(外部環境)を示す統合マップデータを生成する。次に、外部環境推定部F104は、統合マップデータに含まれる動体に対し、その動体と自車両との距離、方向、相対速度の変化を予測する。そして、外部環境推定部F104は、それらの予測の結果を外部環境モデルF105に組み込む。さらに、外部環境推定部F104は、位置センサ13の出力(車両100の位置)と、外部入力部14の出力(高精度地図情報)と、車両状態検出部F001の出力(車速情報や6軸情報など)とに基づいて、統合マップデータにおける自車両の位置を推定するとともに、経路コストの計算を行う。そして、外部環境推定部F104は、それらの推定の結果および計算の結果を、各種センサにより取得された自車両の情報とともに、外部環境モデルF105に組み込む。以上の処理により、外部環境モデルF105が随時更新される。
【0080】
《外部環境モデル》
外部環境モデルF105は、車両100の外部環境に関するモデルである。なお、外部環境モデルF105は、深層学習により生成された学習モデルである。
【0081】
《経路探索部》
経路探索部F106は、位置センサ13の出力と、外部入力部14の出力(例えばカーナビゲーションデータ)とに基づいて、車両100の広域経路を探索する。
【0082】
《経路生成部》
経路生成部F107は、外部環境モデルF105と、経路探索部F106の出力とに基づいて、車両100の走行経路を生成する。例えば、経路生成部F107により生成される走行経路には、その走行経路における車両100の安全性や燃料消費などのスコアが付加される。走行経路における車両100の安全性が高くなるに連れて、その走行経路のスコアが小さくなる。また、走行経路における車両100の燃料消費が低くなるに連れて、その走行経路のスコアが小さくなる。経路生成部F107は、スコアが比較的に小さくなる(例えば最小となる)走行経路を少なくとも1つ生成する。
【0083】
なお、経路生成部F107は、複数の観点に基づく複数の走行経路を生成するように構成されてもよい。例えば、経路生成部F107は、ドライバ入力部16の出力を入力し、そのドライバ入力部16の出力に応じて走行経路を調整するように構成されてもよい。これにより、例えば、スコアが比較的に小さくなる走行経路と、ドライバ入力部16の出力に応じて調整された走行経路とが生成される。
【0084】
《危険状態判断部》
危険状態判断部F108は、セーフティ機能部F2の前処理部F204の出力(車両100の外部環境に含まれる物体に対する自車両の位置)に基づいて、車両100が危険状態であるか否かを判断する。車両100の危険状態の例としては、車両100が物体と衝突する可能性がある状態、車両100が車線を逸脱する可能性がある状態などが挙げられる。なお、危険状態判断部F108は、外部環境モデルF105に基づいて、車両100が危険状態であるか否かを判断するように構成されてもよい。また、危険状態判断部F108は、車両100が危険状態であると判断すると、その危険を回避するための目標経路を生成する。
【0085】
《第1車両モデル》
第1車両モデルF109は、車両100の6軸の運動に関する車両6軸モデルである。車両6軸モデルは、走行中の車両100の「前後」「左右」「上下」の3軸方向の加速度と「ピッチ」「ロール」「ヨー」の3軸方向の角速度とをモデル化したものである。すなわち、第1車両モデルF109は、車両100の動きを古典的な車両運動工学的な平面上のみ(車両の前後左右(X-Y移動)とヨー運動(Z軸)のみ)で捉えるのではなく、4つの車輪にサスペンションを介して乗っている車体のピッチング(Y軸)およびロール(X軸)運動とZ軸の移動(車体の上下動)の、合計6軸を用いて車両100の挙動を再現する数値モデルである。第1車両モデルF109は、予め設定された車両100の基本運動機能、車両100の外部環境などに基づいて生成される。また、第1車両モデルF109は、車両100の外部環境の変化などに応じて適宜更新される。例えば、第1車両モデルF109は、深層学習により生成された学習モデルである。
【0086】
《第2車両モデル》
第2車両モデルF110は、車両のエネルギ消費に関するモデルである。具体的には、第2車両モデルF110は、車両100のアクチュエータACの動作に対するコスト(燃料消費や電費)を示すモデルである。例えば、第2車両モデルF110は、所定量のエンジントルクを出力する上で燃料消費が最も良くなる場合の吸排気バルブ(図示省略)の開閉タイミング、インジェクタ(図示省略)の燃料噴射タイミング、排気環流システムのバルブ開閉タイミングなどがモデル化されたものである。第2車両モデルF110は、車両の走行中に生成され、適宜更新される。例えば、第2車両モデルF110は、深層学習により生成された学習モデルである。
【0087】
《経路決定部》
経路決定部F111は、ドライバ操作認識部F002の出力と、経路生成部F107の出力と、セーフティ機能部F2の経路生成部F206の出力とに基づいて、車両100の目標経路を決定する。具体的には、経路決定部F111は、経路生成部F107により生成された走行経路とセーフティ機能部F2の経路生成部F206において生成された走行経路の中からいずれか1つを目標経路として選択する。なお、経路決定部F111は、その選択された目標経路をドライバ操作認識部F002の出力に応じて調整するように構成されてもよい。
【0088】
例えば、経路決定部F111は、通常走行時に、経路生成部F107により生成された走行経路を優先的に目標経路として選択するように構成されてもよい。また、経路決定部F111は、経路生成部F107により生成された走行経路がセーフティ機能部F2のフリースペース探索部F205により探索されたフリースペースを通過しない場合に、セーフティ機能部F2の経路生成部F206により生成された走行経路を目標経路として選択するように構成されてもよい。
【0089】
《目標運動決定部》
目標運動決定部F112は、危険状態判断部F108の出力と、第1車両モデルF109と、経路決定部F111の出力とに基づいて、車両100の目標運動を決定する。例えば、目標運動決定部F112は、危険状態判断部F108により生成された目標経路(危険を回避するための目標経路)が入力されると、危険状態判断部F108により生成された目標経路と第1車両モデルF109とに基づいて、車両100の目標運動を決定するように構成されてもよい。また、目標運動決定部F112は、危険状態判断部F108により生成された目標経路が入力されない場合(車両100が危険状態ではない場合)に、経路決定部F111により生成された目標経路と第1車両モデルF109とに基づいて、車両100の目標運動を決定するように構成されてもよい。
【0090】
《車両運動エネルギ設定部》
車両運動エネルギ設定部F113は、目標運動決定部F112の出力に基づいて、駆動系のアクチュエータに要求される駆動系トルクと、操舵系のアクチュエータに要求される操舵系トルクと、制動系のアクチュエータに要求される制動系トルクとを計算する。具体的には、車両運動エネルギ設定部F113は、車両100の運動が目標運動決定部F112により決定された目標運動となるように、駆動系トルクと操舵系トルクと制動系トルクとを計算する。
【0091】
《エネルギマネジメント部》
エネルギマネジメント部F114は、第2車両モデルF110と、車両運動エネルギ設定部F113の出力に基づいて、アクチュエータACの制御量を算出する。具体的には、エネルギマネジメント部F114は、目標運動決定部F112により決定された目標運動を達成する上でエネルギ効率が最も良くなるように、第2車両モデルF110に基づいてアクチュエータACの制御量を算出する。例えば、エネルギマネジメント部F114は、車両運動エネルギ設定部F113により決定されたエンジントルクを達成する上で燃費が最も良くなるように、吸排気バルブ(図示省略)の開閉タイミングやインジェクタ(図示省略)の燃料噴射タイミングなどを算出する。
【0092】
《セレクタ》
セレクタF115は、車両運動エネルギ設定部F113の出力およびバックアップ機能部F3の車両運動エネルギ設定部F310の出力のうちいずれか一方を出力する。セレクタF116は、エネルギマネジメント部F114の出力およびバックアップ機能部F3のエネルギマネジメント部F311の出力のうちいずれか一方を出力する。セレクタF115の出力およびセレクタF116の出力は、車両100の走行制御のための制御信号である。
【0093】
具体的には、セレクタF115は、主演算部F1に異常(例えば故障)が発生していない場合に、車両運動エネルギ設定部F113の出力を選択し、主演算部F1に異常が発生すると、バックアップ機能部F3の車両運動エネルギ設定部F310の出力を選択する。これと同様に、セレクタF116は、主演算部F1に異常が発生していない場合に、エネルギマネジメント部F114の出力を選択し、主演算部F1に異常が発生すると、バックアップ機能部F3のエネルギマネジメント部F311の出力を選択する。
【0094】
〈セーフティ機能部〉
セーフティ機能部F2は、情報取得部10の出力に基づいて車両100の外部環境を認識し、その車両100の外部環境の中からフリースペースを探索する。そして、セーフティ機能部F2は、フリースペースを通過する走行経路を生成する。セーフティ機能部F2により得られた走行経路(フリースペースを通過する走行経路)は、主演算部F1の目標経路を決定する処理において利用される。なお、セーフティ機能部F2の処理には、深層学習により生成された学習モデルの代わりに、予め定められたルールに基づくアルゴリズムが用いられる。セーフティ機能部F2では、ルールベースの処理が行われる。
【0095】
この例では、セーフティ機能部F2は、物体認識部F201(画像系)と、物体認識部F202(レーダ系)と、分類部F203と、前処理部F204と、フリースペース探索部F205と、経路生成部F206とを含む。
【0096】
物体認識部F201と物体認識部F202と分類部F203と前処理部F204は、認識系ブロックB1に属する。フリースペース探索部F205と経路生成部F206は、判断系ブロックB2に属する。
【0097】
物体認識部F201(画像系)は、その一部が信号処理部201に含まれ、その残部が認識処理部202に含まれる。物体認識部F202(レーダ系)と分類部F203と前処理部F204とフリースペース探索部F205と経路生成部F206は、判断処理部203(具体的には第1車両用制御装置25aの制御ICユニット33)に含まれる。
【0098】
《物体認識部(画像系)》
物体認識部F201は、カメラ11の出力に基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体を認識する。これにより、物体情報が得られる。具体的には、物体認識部F201は、画像処理部と、画像認識部とを含む。画像処理部は、カメラ11の出力である画像データに対して画像処理を行う。画像認識部は、画像処理部において処理された画像データに基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体を認識する。例えば、物体認識部F201の物体認識部F201は、深層学習により生成された学習モデルを用いずに、周知のパターン認識技術を用いて物体認識処理を行う。なお、物体認識部F201の画像認識部による物体認識処理には、その他の周知の物体認識技術(画像データに基づく物体認識技術)が用いられてもよい。
【0099】
この例では、物体認識部F201の画像処理部は、第1カメラ11aの出力に基づいて処理を行う第1画像処理部と、第2カメラ11bの出力に基づいて処理を行う第2画像処理部とを含む。物体認識部F201の画像認識部は、第1画像処理部の出力に基づいて処理を行う第1画像認識部と、第2画像処理部の出力に基づいて処理を行う第2画像認識部とを含む。また、この例では、物体認識部F201の画像処理部は、信号処理部201に含まれ、物体認識部F201の画像認識部は、認識処理部202に含まれる。具体的には、第1画像処理部は、第1車両用制御装置25aの信号処理ICユニット31に含まれ、第2画像処理部は、第2車両用制御装置25bの信号処理ICユニット31に含まれる。第1画像認識部は、第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32に含まれ、第2画像認識部は、第2車両用制御装置25bの認識処理ICユニット32に含まれる。
【0100】
《物体認識部(レーダ系)》
物体認識部F202は、レーダ12の出力である検出結果に基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体を認識する。これにより、物体情報が得られる。具体的には、物体認識部F102は、レーダ12の検出結果に対して解析処理を行う。例えば、物体認識部F202は、深層学習により生成された学習モデルを用いずに、周知の物体認識技術(レーダ12の検出結果に基づく物体認識技術)を用いて物体認識処理を行う。
【0101】
この例では、物体認識部F202は、第1レーダ12aの出力に基づいて処理を行う第1レーダ認識部と、第2レーダ12bの出力に基づいて処理を行う第2レーダ認識部とを含む。また、この例では、第1レーダ認識部および第2レーダ認識部は、第1車両用制御装置25aの制御ICユニット33に含まれる。
【0102】
《分類部》
分類部F203は、物体認識部F201(画像系)の出力と、物体認識部F202(レーダ系)の出力とに基づいて、車両100の外部環境を認識する。なお、分類部F203は、深層学習により生成された学習モデルを用いずに、予め定められたルールに基づくアルゴリズムを用いて認識処理(ルールベースの認識処理)を行う。ルールベースの認識処理には、周知の認識処理技術を用いられてもよい。具体的には、分類部F203は、物体認識部F201および物体認識部F202により認識された物体を動体と静止体とに分類する。例えば、分類部F203は、車両100の周囲を囲う周囲領域を分割して得られる複数の領域(例えば前後左右の4つの領域)毎に、物体認識部F201(画像系)により得られた物体情報と、物体認識部F202(レーダ系)により得られた物体情報とを統合する。そして、分類部F203は、複数の領域毎に、その領域に含まれる物体の分類情報を生成する。分類情報は、物体が動体および静止体のどちらに該当するのかを示す。
【0103】
《前処理部》
前処理部F204は、分類部F203の出力と、主演算部F1の車両状態検出部F001の出力と、位置センサ13の出力と、外部入力部14の出力とに基づいて、前処理を行う。前処理では、分類情報統合と、物体行動予測と、自己位置推定とが行われる。
【0104】
分類情報統合では、前処理部F204は、複数の領域(例えば前後左右の4つの領域)毎に生成された分類情報を統合する。統合された分類情報は、車両100の周囲領域に関する分類情報としてグリッドマップ(図示省略)上で管理される。
【0105】
物体行動予測では、前処理部F204は、統合された分類情報に基づいて、車両100の外部環境に含まれる動体を検出する。そして、前処理部F204は、その動体と自車両との距離、その動体の自車両に対する方向、その動体の自車両に対する相対速度の変化を予測する。また、前処理部F204による予測の結果は、動体の付加情報として管理される。
【0106】
自己位置推定では、前処理部F204は、位置センサ13の出力である車両100の位置と、外部入力部14の出力の一例である高精度地図情報と、車両状態検出部F001の出力である車両100の状態(車速情報や6軸情報など)とに基づいて、車両100の外部環境に含まれる物体(動体および静止体)に対する自車両の位置を推定する。
【0107】
《フリースペース探索部》
フリースペース探索部F205は、前処理部F204の出力に基づいて、車両100の外部環境の中からフリースペースを探索する。フリースペースは、車両100の外部環境に含まれる道路のうち障害物が存在しない領域である。障害物は、動的な障害物と、静的な障害物とを含む。動的な障害物の例としては、他車両、歩行者などが挙げられる。静的な障害物の例としては、中央分離帯、センターポールなどが挙げられる。例えば、フリースペースは、緊急駐車が可能な路肩のスペースであってもよい。
【0108】
具体的には、フリースペース探索部F205は、前処理部F204により位置が推定された物体との衝突を回避することができるフリースペースを探索する。例えば、フリースペース探索部F205は、予め設定された探索ルールに基づいて、フリースペースを探索する。探索ルールには、物体を中心とする所定の範囲(例えば数mの範囲)を回避不能範囲とするというルールが含まれてもよい。また、フリースペース探索部F205は、物体が動体である場合に、その動体の移動速度を考慮してフリースペースを探索するように構成されてもよい。
【0109】
《経路生成部》
経路生成部F206は、フリースペース探索部F205の出力と、主演算部F1の経路探索部F106の出力(車両100の広域経路)とに基づいて、車両100の走行経路を生成する。具体的には、経路生成部F206は、フリースペース探索部F205により得られたフリースペースを通過する走行経路を生成する。例えば、経路生成部F206は、フリースペースを通過する複数の走行経路を生成し、その複数の走行経路の中から経路コストが最も小さい走行経路を選択するように構成されてもよい。経路生成部F206により生成された走行経路(フリースペースを通過する走行経路)は、主演算部F1の経路決定部F111に出力される。
【0110】
〈バックアップ機能部〉
バックアップ機能部F3は、情報取得部10の出力に基づいて車両100の外部環境を認識し、その車両100の外部環境の中からフリースペースを探索し、フリースペースを通過する車両100の目標経路を決定する。そして、バックアップ機能部F3は、車両100の目標経路に基づいて車両100の目標運動を決定し、その車両100の目標運動に基づいて制御信号を出力する。バックアップ機能部F3により得られた制御信号は、主演算部F1に供給される。なお、バックアップ機能部F3の処理には、予め定められたルールに基づくアルゴリズムが用いられる。バックアップ機能部F3では、ルールベースの処理が行われる。
【0111】
この例では、バックアップ機能部F3は、車両状態検出部F301と、ドライバ操作認識部F302と、分類部F303と、前処理部F304と、フリースペース探索部F305と、経路生成部F306と、危険状態判断部F307と、経路決定部F308と、目標運動決定部F309と、車両運動エネルギ設定部F310と、エネルギマネジメント部F311とを含む。
【0112】
車両状態検出部F301とドライバ操作認識部F302と分類部F303と前処理部F304は、認識系ブロックB1に属する。フリースペース探索部F305と経路生成部F306と危険状態判断部F307と経路決定部F308と目標運動決定部F309は、判断系ブロックB2に属する。車両運動エネルギ設定部F310とエネルギマネジメント部F311は、操作系ブロックB3に属する。
【0113】
また、この例では、車両状態検出部F301とドライバ操作認識部F302と分類部F303と前処理部F304とフリースペース探索部F305と経路生成部F306と危険状態判断部F307と経路決定部F308と目標運動決定部F309と車両運動エネルギ設定部F310とエネルギマネジメント部F311は、バックアップ処理部204(具体的には第2車両用制御装置25bの制御ICユニット33)に含まれる。
【0114】
《車両状態検出部とドライバ操作認識部》
車両状態検出部F301とドライバ操作認識部F302の機能は、主演算部F1の車両状態検出部F001とドライバ操作認識部F002の機能と同様である。
【0115】
《分類部と前処理部とフリースペース探索部と経路生成部》
分類部F303と前処理部F304とフリースペース探索部F305と経路生成部F306の機能は、セーフティ機能部F2の分類部F203と前処理部F204とフリースペース探索部F205と経路生成部F206の機能と同様である。
【0116】
図6の例では、分類部F303は、セーフティ機能部F2の物体認識部F201(画像系)の出力と物体認識部F202(レーダ系)の出力とに基づいて処理を行う。なお、セーフティ機能部F2の物体認識部F201(画像系)および物体認識部F202(レーダ系)と同様の物体認識部(画像系)および物体認識部(レーダ系)がバックアップ機能部F3に含まれてもよい。この場合、分類部F303は、バックアップ機能部F3の物体認識部(画像系)の出力と物体認識部(レーダ系)の出力とに基づいて処理を行うように構成されてもよい。
【0117】
《経路決定部》
経路決定部F308は、ドライバ操作認識部F302の出力と、経路生成部F306の出力(フリースペースを通過する走行経路)とに基づいて、車両100の目標経路を決定する。例えば、経路決定部F308は、経路生成部F306により生成された複数の走行経路の中からいずれか1つを目標経路として選択する。なお、経路決定部F308は、その選択された目標経路をドライバ操作認識部F302の出力に応じて調整するように構成されてもよい。
【0118】
〈目標運動決定部〉
目標運動決定部F309は、危険状態判断部F307の出力(目標経路)と、経路決定部F308の出力とに基づいて、車両100の目標運動を決定する。なお、主演算部F1の目標運動決定部F112とは異なり、目標運動決定部F309は、深層学習により生成された学習モデルを用いずに、予め定められたルールに基づくアルゴリズムを用いて車両100の目標運動を決定する。例えば、目標運動決定部F309は、危険状態判断部F307により生成された目標経路(危険を回避するための目標経路)が入力されると、危険状態判断部F307により生成された目標経路に基づいて、車両100の目標運動を決定するように構成されてもよい。また、目標運動決定部F309は、危険状態判断部F307により生成された目標経路が入力されない場合(車両100が危険状態ではない場合)に、経路決定部F308により生成された目標経路に基づいて、車両100の目標運動を決定するように構成されてもよい。
【0119】
《車両運動エネルギ設定部》
主演算部F1の車両運動エネルギ設定部F113と同様に、車両運動エネルギ設定部F310は、目標運動決定部F309の出力に基づいて、駆動系のアクチュエータに要求される駆動系トルクと、操舵系のアクチュエータに要求される操舵系トルクと、制動系のアクチュエータに要求される制動系トルクとを計算する。車両運動エネルギ設定部F310により算出されたトルクは、主演算部F1のセレクタF115に出力される。
【0120】
〈エネルギマネジメント部〉
エネルギマネジメント部F311は、車両運動エネルギ設定部F310の出力に基づいて、アクチュエータACの制御量を算出する。具体的には、エネルギマネジメント部F311は、目標運動決定部F309により決定された目標運動を達成する上でエネルギ効率が最も良くなるように、アクチュエータACの制御量を算出する。なお、主演算部F1のエネルギマネジメント部F114とは異なり、エネルギマネジメント部F311は、深層学習により生成された学習モデルを用いずに、予め定められたルールに基づくアルゴリズムを用いてアクチュエータACの制御量を算出する。エネルギマネジメント部F311により算出された制御量は、主演算部F1のセレクタF116に出力される。
【0121】
〔車両用制御システム(単一系)〕
図7は、車両用制御システム20の別の構成を例示する。図7に示した車両用制御システム20は、単一系の車両用制御システムである。単一系の車両用制御システムには、単一の処理系統(車両100の走行制御のための処理を行う系統)が設けられる。具体的には、この車両用制御システム20は、単一の車両用制御装置25により構成される。
【0122】
図7に示す車両用制御システム20では、車両用制御装置25の信号処理ICユニット31が信号処理部201を構成する。車両用制御装置25の認識処理ICユニット32が認識処理部202を構成する。車両用制御装置25の制御ICユニット33が判断処理部203を構成する。なお、図7に示す車両用制御システム20では、バックアップ処理部204が設けられていない。
【0123】
〔実施形態の効果〕
以上のように、信号処理ICユニット31と認識処理ICユニット32と制御ICユニット33とを備える車両用制御装置25により、単一系の車両用制御システム20を構成することができる。
【0124】
また、複数の車両用制御装置25を並設し、複数の車両用制御装置25の各々の第1端子35を電気的に接続し、複数の車両用制御装置25の各々の第2端子36を電気的に接続することにより、冗長系の車両用制御システム20を構成することができる。この例では、第1車両用制御装置25aの基板30の縁部および第2車両用制御装置25bの基板30の縁部を連結部材26の第1連結部41および第2連結部42にそれぞれ連結することにより、第1車両用制御装置25aの第1端子35と第2車両用制御装置25bの第1端子35とを電気的に接続し,第1車両用制御装置25aの第2端子36と第2車両用制御装置25bの第2端子36とを電気的に接続することができる。これにより、冗長系の車両用制御システム20を構成することができる。
【0125】
このように、単一系の車両用制御システム20を構成可能な車両用制御装置25を用いて冗長系の車両用制御システム20を構成することができるので、単一系の車両用制御システムと冗長系の車両用制御システムとを個別に開発する場合よりも、開発に要するコストを低減することができる。
【0126】
(実施形態の変形例1)
図8図9図10は、実施形態の変形例1による車両用制御システム20の構成を例示する。
【0127】
〔端子の配置〕
この変形例1では、車両用制御装置25において、第1入力端子351と第1出力端子352と第2入力端子361と第2出力端子362は、基板30の第1縁部301に設けられる。
【0128】
〔車両用制御装置と連結部材との連結〕
連結部材26の第1連結部41には、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301が連結される。連結部材26の第2連結部42には、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301が連結される。
【0129】
〔連結電極〕
また、第1連結部41および第2連結部42の各々に設けられる第1連結電極410は、第1入力連結電極411と、第1出力連結電極412とを含む。第1連結部41および第2連結部42の各々に設けられる第2連結電極420は、第2入力連結電極421と、第2出力連結電極422とを含む。
【0130】
この例では、第1連結部41に第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301が連結された場合、第1連結部41の第1入力連結電極411は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1入力端子351と接触する。第1連結部41の第1出力連結電極412は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1出力端子352と接触する。第1連結部41の第2入力連結電極421は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2入力端子361と接触する。第1連結部41の第2出力連結電極422は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2出力端子362と接触する。
【0131】
また、第2連結部42に第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301が連結された場合、第2連結部42の第1入力連結電極411は、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第1入力端子351と接触する。第2連結部42の第1出力連結電極412は、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第1出力端子352と接触する。第2連結部42の第2入力連結電極421は、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第2入力端子361と接触する。第2連結部42の第2出力連結電極422は、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第2出力端子362と接触する。
【0132】
〔第1配線〕
また、この例では、第1配線43は、第1入力/出力配線431と、第1出力/入力配線432とを含む。
【0133】
第1入力/出力配線431は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1入力端子351と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第1出力端子352とを電気的に接続する。この例では、第1入力/出力配線431は、第1連結部41の第1入力連結電極411と第2連結部42の第1出力連結電極412とを電気的に接続する。
【0134】
第1出力/入力配線432は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1出力端子352と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第1入力端子351とを電気的に接続する。この例では、第1出力/入力配線432は、第1連結部41の第1出力連結電極412と第2連結部42の第1入力連結電極411とを電気的に接続する。
【0135】
〔第2配線〕
また、この例では、第2配線44は、第2入力/出力配線441と、第2出力/入力配線442とを含む。
【0136】
第2入力/出力配線441は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2入力端子361と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第2出力端子362とを電気的に接続する。この例では、第2入力/出力配線441は、第1連結部41の第2入力連結電極421と第2連結部42の第2出力連結電極422とを電気的に接続する。
【0137】
第2出力/入力配線442は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2出力端子362と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第2入力端子361とを電気的に接続する。この例では、第2出力/入力配線442は、第1連結部41の第2出力連結電極422と第2連結部42の第2入力連結電極421とを電気的に接続する。
【0138】
〔その他の構成〕
なお、実施形態の変形例1による車両用制御システム20のその他の構成は、実施形態による車両用制御システム20の構成と同様である。
【0139】
〔実施形態の変形例1の効果〕
実施形態の変形例1による車両用制御システム20では、実施形態による車両用制御システム20の効果と同様の効果を得ることができる。
【0140】
(実施形態の変形例2)
図11は、実施形態の変形例2による車両用制御システム20の構成を例示する。この車両用制御システム20では、第1車両用制御装置25aの認識処理ICユニット32と第2車両用制御装置25bの認識処理ICユニット32とが第1配線43を通じて通信(双方向の信号伝送)を行う。これと同様に、第1車両用制御装置25aの制御ICユニット33と第2車両用制御装置25bの制御ICユニット33とが第2配線44を通じて通信(双方向の信号伝送)を行う。
【0141】
〔端子〕
この例では、第1端子35および第2端子36は、基板30の第1縁部301に設けられる。第1端子35は、認識処理ICユニット32の入出力部と電気的に接続される。第2端子36は、制御ICユニット33の入出力部と電気的に接続される。
【0142】
〔車両用制御装置と連結部材との連結〕
連結部材26の第1連結部41には、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301が連結される。連結部材26の第2連結部42には、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301が連結される。
【0143】
〔連結電極〕
この例では、第1連結部41に第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301が連結された場合、第1連結部41の第1連結電極410は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1端子35と接触する。第1連結部41の第2連結電極420は、第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2端子36と接触する。
【0144】
また、第2連結部42に第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301が連結された場合、第2連結部42の第1連結電極410は、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第1端子35と接触する。第2連結部42の第2連結電極420は、第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第2端子36と接触する。
【0145】
〔第1配線〕
また、この例では、第1配線43は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第1端子35と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第1端子35とを電気的に接続する。具体的には、第1配線43は、第1連結部41の第1連結電極410と第2連結部42の第1連結電極410とを電気的に接続する。
【0146】
〔第2配線〕
また、この例では、第2配線44は、第1連結部41に連結された第1車両用制御装置25aの基板30の第1縁部301に設けられた第2端子36と、第2連結部42に連結された第2車両用制御装置25bの基板30の第1縁部301に設けられた第2端子36とを電気的に接続する。具体的には、第2配線44は、第1連結部41の第2連結電極420と第2連結部42の第2連結電極420とを電気的に接続する。
【0147】
〔その他の構成〕
なお、実施形態の変形例2による車両用制御システム20のその他の構成は、実施形態の変形例1による車両用制御システム20の構成と同様である。
【0148】
〔実施形態の変形例2の効果〕
実施形態の変形例2による車両用制御システム20では、実施形態による車両用制御システム20の効果と同様の効果を得ることができる。
【0149】
(その他の実施形態)
また、以上の実施形態を適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、この発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0150】
以上説明したように、ここに開示する技術は、車両用制御装置および車両用制御システムとして有用である。
【符号の説明】
【0151】
100 車両
10 情報取得部
11 カメラ
12 レーダ
20 車両用制御システム
25 車両用制御装置
25a 第1車両用制御装置
25b 第2車両用制御装置
26 連結部材
30 基板
31 信号処理ICユニット
32 認識処理ICユニット
33 制御ICユニット
35 第1端子
36 第2端子
40 連結基板
41 第1連結部
42 第2連結部
43 第1配線
44 第2配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11