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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】搬送塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/02 20060101AFI20240124BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240124BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20240124BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240124BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20240124BHJP
   B65H 20/12 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B05C13/02
B05C11/10
B05C1/08
B05C5/02
B65H23/188
B65H20/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020025582
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130076
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江川 裕也
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-156447(JP,A)
【文献】特開2012-016641(JP,A)
【文献】特開2013-000727(JP,A)
【文献】特開2017-105130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B65H 20/00-20/40,
23/18-23/198,
26/00-26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
所定の搬送速度で搬送されるウエブのパスラインを構成する複数の案内ロールから形成される案内ロール群と、
前記案内ロール群に搬送される前記ウエブに塗工液を塗工する塗工手段と、
前記案内ロール群を、前記ウエブが前記塗工手段から離れる方向である移動方向に、前記フレームに対し移動させる移動手段と、
前記フレームに回転自在に固定され、前記ウエブを前記案内ロール群に案内する第1固定ロールと、
前記フレームに回転自在に固定され、前記案内ロール群を通過したウエブが架け渡された第2固定ロールと、
前記移動手段を用いて前記案内ロール群を、前記移動方向に一体に移動させる制御手段と、
を有し、
前記移動方向は、垂直方向に対し所定の傾斜角度θ°で傾斜し、
前記第1固定ロールから前記案内ロール群の最も上流にある案内ロールに架け渡された前記ウエブの搬送方向と、前記案内ロール群の最も下流にある案内ロールから前記第2固定ロールに架け渡された前記ウエブの搬送方向とが前記傾斜角度θ°で傾斜し
前記案内ロール群の各案内ロールは、左右一対の移動部材の間に回転自在に支持され、
左右一対の前記移動部材にはラックがそれぞれ設けられ、
前記ラックには、左右一対のピニオンが螺合し、
左右一対の前記ピニオンは、シャフトによって同軸に連結され、
前記シャフトは、前記フレームに回転自在に設けられている、
搬送塗工装置。
【請求項2】
前記傾斜角度θ°が、0°=<θ°=<45°である、
請求項1に記載の搬送塗工装置。
【請求項3】
前記ラックは、前記移動方向と平行に前記移動部材に設けられている、
請求項に記載の搬送塗工装置。
【請求項4】
前記移動手段は、左右一対の前記移動部材にそれぞれ設けられたエアーシリンダ、又は、モータである、
請求項に記載の搬送塗工装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ウエブの継目の通過時に前記ウエブを搬送させながら前記移動手段を用いて前記案内ロール群を、前記移動方向に一体に移動させる、
請求項1に記載の搬送塗工装置。
【請求項6】
前記第2固定ロールは、前記ウエブの張力を測定する張力測定手段を有している、
請求項1に記載の搬送塗工装置。
【請求項7】
前記第2固定ロールの下流にサクションロールが設けられ、前記ウエブは前記第2固定ロールと前記サクションロールに架け渡されている、
請求項に記載の搬送塗工装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記張力測定手段の測定張力が、設定張力より大きいときは、前記サクションロールの回転速度を下げ、前記設定張力より小さいときは、前記回転速度を上げるフィードバック制御を行う、
請求項に記載の搬送塗工装置。
【請求項9】
前記塗工手段が、リバースコータ、グラビアコータ、ロールコータ、又は、ダイである、
請求項1に記載の搬送塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブを搬送して塗工液を塗工する搬送塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送塗工装置において、リバースコータでウエブへ塗工中に、ウエブ同士の継目がリバースコータの位置に来たときには、その継目を回避(ジャンピング動作)したり、又は、メンテナンスのときにウエブをリバースコータから離す必要がある。そのため、必要なときにウエブを案内する案内ロール群をリバースコータから離れるように移動させる搬送塗工装置が提案されている。この搬送塗工装置は、案内ロール群を移動させてもウエブのパスラインの長さが変化しないように案内ロール群を移動させる主移動手段以外に、この主移動手段と同期してそのパスラインの長さを調整する調整手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-174769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記搬送塗工装置においては、案内ロール群を主移動手段によって移動させるときに、調整手段によってパスライン長を調整する必要があるため、その構造が複雑になると共に、両者の同期をとることが難しいという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、案内ロール群を移動させる場合にパスラインの調整を簡単に行うことができる搬送塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フレームと、所定の搬送速度で搬送されるウエブのパスラインを構成する複数の案内ロールから形成される案内ロール群と、前記案内ロール群に搬送される前記ウエブに塗工液を塗工する塗工手段と、前記案内ロール群を、前記ウエブが前記塗工手段から離れる方向である移動方向に、前記フレームに対し移動させる移動手段と、前記フレームに回転自在に固定され、前記ウエブを前記案内ロール群に案内する第1固定ロールと、前記フレームに回転自在に固定され、前記案内ロール群を通過したウエブが架け渡された第2固定ロールと、前記移動手段を用いて前記案内ロール群を、前記移動方向に一体に移動させる制御手段と、を有し、前記移動方向は、垂直方向に対し所定の傾斜角度θ°で傾斜し、前記第1固定ロールから前記案内ロール群の最も上流にある案内ロールに架け渡された前記ウエブの搬送方向と、前記案内ロール群の最も下流にある案内ロールから前記第2固定ロールに架け渡された前記ウエブの搬送方向とが前記傾斜角度θ°で傾斜し、前記案内ロール群の各案内ロールは、左右一対の移動部材の間に回転自在に支持され、左右一対の前記移動部材にはラックがそれぞれ設けられ、前記ラックには、左右一対のピニオンが螺合し、左右一対の前記ピニオンは、シャフトによって同軸に連結され、前記シャフトは、前記フレームに回転自在に設けられている、搬送塗工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウエブを案内する案内ロール群を移動手段によって移動させるだけで、パスライン長の調整を特別に行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の搬送塗工装置の移動部材が移動する状態を示した説明図である。
図2】搬送塗工装置の側面図である。
図3】搬送塗工装置の後面図である。
図4】搬送塗工装置のブロック図である。
図5】変更例の搬送塗工装置の移動部材が移動する状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の搬送塗工装置10について図1図4を参照して説明する。本実施形態の搬送塗工装置10は、リバースコータよりなる塗工部1でウエブWの片面に塗工液を塗工するものであり、ウエブWとしては、例えば、フィルム、金属箔、布、紙などである。
【0010】
(1)搬送塗工装置10
搬送塗工装置10の構造について図1図3を参照して説明する。搬送塗工装置10は、図2に示すように、第1フレーム12と第2フレーム14とより構成され、第1フレーム12ではウエブWを搬送する案内ロール群が設けられ、第2フレーム14にはウエブWへの塗工部1が設けられている。図1図2において、左側が前(上流)、右側が後(下流)となる。
【0011】
図2に示すように、第1フレーム12は、水平な床に載置されるものであり、脚部16と、脚部16から立設された左右一対のフレーム本体18,18と、フレーム本体18の上部から前方に突出した左右一対の上フレーム20,20とより構成されている。上フレーム20,20の下方には空間が設けられ、第2フレーム14が配される。第1フレーム12の左右一対のフレーム本体18,18は、横枠材23によって連結されている(図3参照)。
【0012】
図1図2に示すように、左右一対のフレーム本体18,18の間と上フレーム20,20の下方の空間には、左右一対の板状の移動部材22,22が設けられている。左右一対の移動部材22,22の間には、ウエブWの搬送路の上流から順番に第1案内ロール24、第2案内ロール26、第3案内ロール28、第4案内ロール30、第5案内ロール32が回転自在に水平に架け渡されている。以下の説明において第1案内ロール24、第2案内ロール26、第3案内ロール28、第4案内ロール30、第5案内ロール32をまとめて呼ぶ場合には、「案内ロール群24~32」と呼ぶ。案内ロール群24~32は、ウエブWと接触して回転する他動である。なお、左右一対の移動部材22,22は、不図示の横枠材で固定されている。
【0013】
図1に示すように、第1案内ロール24は、移動部材22の後部の上端部(最も上流)に配されている。
【0014】
図1に示すように、第2案内ロール26は、第1案内ロール24の下流であって、第1案内ロール24の下方で、かつ、前方の位置に設けられている。
【0015】
図1に示すように、第3案内ロール28は、移動部材22の下端であって、第2案内ロール26の下流で、かつ、下方前方に設けられている。
【0016】
図1に示すように、第4案内ロール30は、第3案内ロール28と同じ高さで、かつ、第3案内ロール28よりも下流に設けられている。第3案内ロール28から第4案内ロール30へのウエブWのパスラインは水平である。なお、ウエブWの「パスライン」とは、搬送塗工装置10によって搬送されるウエブWの搬送路の軌跡を意味し、「パスライン長」とは、その軌跡の長さを意味する。
【0017】
図1に示すように、第5案内ロール32は、移動部材22の前部であって、第4案内ロール30の下流であって、かつ、上方に設けられている。また、第5案内ロール32から後から説明する第2固定ロール54へのパスラインは、垂直方向に対して傾斜角度θ°=30°で配されている。
【0018】
図1図2に示すように、移動部材22の後部上端部にはラック34が設けられている。このラック34の長手方向は、垂直方向に対し傾斜角度θ°=30°である。
【0019】
図1図2に示すように、左右一対の移動部材22,22の左右一対のラック34,34と螺合するように左右一対のピニオン36が設けられている。図3に示すように、左右一対のピニオン36,36はシャフト38によって同軸に連結され、シャフト38の左右両端部は、左右一対のフレーム本体18に対し回転自在に架け渡されている。
【0020】
図2に示すように、左右一対の移動部材22の後部には、それぞれ第1移動ブロック40と第2移動ブロック42が設けられている。第1移動ブロック40は、左右一対のフレーム本体18の内面側に設けられた第1レール44に沿って移動自在となっている。この第1レール44は、傾斜角度θ°=30°で設けられている。第2移動ブロック42は、左右一対のフレーム本体18の内面側であって、第1レール44よりも前方に位置した第2レール46に沿って移動自在となっている。第2レール46は、傾斜角度θ°=30°で設けられ、第1レール44と平行である。この左右一対の第1レール44、第1移動ブロック40と、左右一対の第2レール46,46と第2移動ブロック42、42によって、左右一対の移動部材22,22が、左右一対のフレーム本体18,18の間を傾斜角度θ°で移動する。
【0021】
図2に示すように、左右一対の移動部材22,22の上方に位置する上フレーム20,20には、左右一対の上エアーシリンダ48,48がそれぞれ設けられている。この上エアーシリンダ48の本体はフレーム本体18,18にそれぞれ固定され、上エアーシリンダ48から伸縮自在に延びたシャフトが移動部材22の上部に固定されている。左右一対の上エアーシリンダ48,48によって、案内ロール群24~32を有する左右一対の移動部材22,22が傾斜角度θ°で移動する。
【0022】
図2に示すように、左右一対の移動部材22,22の下方におけるフレーム本体18,18には左右一対の下エアーシリンダ50,50がそれぞれ設けられている。それぞれの下エアーシリンダ50の本体はフレーム本体18の内面に固定され、下エアーシリンダ50から伸縮自在に延びたシャフトの上端の上に、移動部材22の下部が載置され、直接固定されていない。左右一対の下エアーシリンダ50,50によって、案内ロール群24~32を有する左右一対の移動部材22,22が傾斜角度θ°で押し上げることができる。なお、上エアーシリンダ48,48の力よりも下エアーシリンダ50,50の力の方が強い。
【0023】
図1図2に示すように、左右一対のフレーム本体18,18の間であって、その前部であって高さ方向における中央部には第1固定ロール52が回転自在に配されている。この第1固定ロール52に架け渡されたウエブWが、移動部材22における第1案内ロール24に架け渡されるものであり、第1固定ロール52から第1案内ロール24へのウエブWのパスラインは傾斜角度θ°となる。
【0024】
上フレーム20の前端部には、第2固定ロール54が設けられている。この第2固定ロール54の取り付け位置は、第5案内ロール32の上方であって、第5案内ロール32から第2固定ロール54へのウエブWのパスラインは傾斜角度θ°となる。また、第2固定ロール54には、張力測定装置56が設けられ、第2固定ロール54に架け渡されたウエブWの張力を測定できる。
【0025】
図1図2に示すように、フレーム本体18の上端部には、サクションロール58が設けられている。サクションロール58は、第2固定ロール54からのウエブWが架け渡されたものであり、サクションロール58の吸引装置68によってウエブWを吸引しながら、回転装置59によって駆動回転して搬送する。
【0026】
図1図2に示すように、ウエブWの継目を検出する継目センサ72が、第1固定ロール52の上流側に設けられている。
【0027】
図1図2に示すように、第2フレーム14は、第1フレーム12と別体であって、水平な床を移動自在に設けられている。この第2フレーム14は、第1フレーム12の上フレーム20の下方の空間に配される。第2フレーム14の上部には、リバースコータ方式のダイ60を有する塗工部1が設けられている。このダイ60内部には液溜め部62が設けられ、液溜め部62の上端部にはリバースロール64が回転自在に設けられている。リバースロール64は、第3案内ロール28と第4案内ロール30に架け渡されたウエブWの下面に接触し、ウエブWの搬送方向とは反対方向に回転することにより、液溜め部62に溜められている塗工液をウエブWの下面に塗工する。
【0028】
(2)搬送塗工装置10の電気的構成
次に、搬送塗工装置10の電気的構成について図4のブロック図を参照して説明する。搬送塗工装置10のコンピュータよりなる制御部66には(図2参照)、左右の上エアーシリンダ48,48、左右の下エアーシリンダ50,50、張力測定装置56、サクションロール58の吸引装置68、リバースロール64の回転装置65が接続されている。また、ウエブWを搬送速度Vで搬送する駆動モータ70、継目センサ72が接続されている。
【0029】
(3)搬送塗工装置10の動作状態
搬送塗工装置10の動作状態について図1図3を参照して説明する。
【0030】
まず、図1図2の実線に示すように、ウエブWは、継目センサ72、第1固定ロール52、第1案内ロール24、第2案内ロール26、第3案内ロール28、第4案内ロール30、第5案内ロール32を経て、第2固定ロール54に架け渡され、最後にサクションロール58に架け渡され、駆動モータ70によって搬送速度Vで移動する。
【0031】
図1図2の実線に示すように、制御部66は、ウエブWに塗工液を塗工する場合には、左右一対の上エアーシリンダ48.48を用いて、左右一対の移動部材22.22を最下端の位置に移動させて固定する。このときに下エアーシリンダ50のシャフトの上に移動部材22が載置される。そして、リバースロール64をウエブWの下面近傍に配し、搬送方向とは反対側に回転させ、ウエブWの下面に塗工液を塗工する。
【0032】
次に、図1図2の二点鎖線に示すように、制御部66は、継目センサ72がウエブWの継目を検出すると、ウエブWの継目がリバースロール64に接触しないようにするためにウエブWをリバースロール64から上方に離す方向に移動させるジャンピング動作を行う。すなわち、制御部66は、左右一対の下エアーシリンダ50,50によって、案内ロール群24~32を有する左右一対の移動部材22を傾斜角度θ°で上方に約30mm押し上げる。下エアーシリンダ50,50は、上エアーシリンダ48,48より力が強いため、移動部材22を押し上げることができる。この場合に、左右一対の移動部材22,22の移動と共にラック34,34が移動し、シャフト38で同軸に固定されたピニオン36,36が回転するため、左右一対の移動部材22,22が同期して移動し、案内ロール群24~32が水平方向から傾かない。
【0033】
図1に示すように、ジャンピング動作を行うタイミングTは、搬送速度Vと、継目センサ72から第3案内ロール28に至るパスライン長Lから、T=L/Vを算出し、継目センサ72が継目を検出した時から時間T後にジャンピング動作を行う。
【0034】
図1に示すように、傾斜角度θ°で移動部材22が移動した場合に、第1固定ロール52の位置A0から第1案内ロール24の位置A1までのパスライン長Aが、第1案内ロール24が位置A2まで移動することによりA+ΔAとなる。一方、第5案内ロール32の位置B1から第2固定ロール54の位置B0までのパスライン長Bが、第5案内ロール32が位置B2まで移動することによりB-ΔBとなる。この場合に、第1固定ロール52と第1案内ロール24のパスラインの傾斜角度と、第5案内ロール32から第2固定ロール54のパスラインの傾斜角度が、θ°で等しいため、ΔA=ΔBとなる。したがって、移動部材22を傾斜角度θ°で移動させた場合に、第1固定ロール52から第2固定ロール54までのパスライン長は変化しない。ここで、重要な点は、移動部材22が移動しているときは、上流側のパスライン長AがA+ΔAとなり、下流側のパスライン長BがB-ΔBと過程において、第1案内ロール24から第5案内ロール32に架け渡されているウエブWが下流から上流に逆流するように引っ張れる状態となる。しかし、このときには、案内ロール群24~32は全て他動であるため、逆流するウエブWに追随して回転速度が遅くなり、ウエブWにかかる張力は変化せずシワや傷が発生しない。
【0035】
次に、ウエブWの継目が、リバースロール64の位置を通過すると再び左右一対の下エアーシリンダ50,50によって移動部材22を傾斜角度θ°で下方に移動させ、塗工を再開する。この場合においても、張力は変化せず、また、パスライン長を調整する必要がない。
【0036】
また、第5案内ロール32を通過したウエブWは、第2固定ロール54に架け渡される。第2固定ロール54には、張力測定装置56が設けられているため、制御部66は、この張力測定装置56によって測定した測定張力が所定範囲内であれば、サクションロール58は、予め定めた同じ回転速度で回転させる。そして測定張力が設定張力より大きくなると、サクションロール58の回転速度を下げ、設定張力になるように張力を下げる。一方、測定張力が設定張力よりも小さくなった場合には、サクションロール58の回転速度を上げ、設定張力になるように張力を上げるフィードバック制御する。
【0037】
さらに、メンテナンス(定期点検や修理点検)の場合には、ウエブWの搬送中、又は、停止中において、左右一対の上エアーシリンダ48,48によって左右一対の移動部材22,22を、継目が通過するときよりも大きく(例えば、約200mm)リバースロール64から離れる方向に引き上げる。このときに下エアーシリンダ50から伸縮自在に延びたシャフトの上端の上に、移動部材22の下部が単に載置されているだけで、直接固定されていないため、下エアーシリンダ50は、左右一対の上エアーシリンダ48,48によって左右一対の移動部材22,22を引き上げるときの障害とはならない。このときにおいても、案内ロール群24~32を有する左右一対の移動部材22,22を傾斜角度θ°で移動させるため、パスラインの調整が不要となる。
【0038】
なお、傾斜角度θ°としては、0°=<θ°=<45°であればよく。好適には20°~40°である。
【0039】
(4)効果
本実施形態によれば、移動部材22を傾斜角度θ°で移動させて継目を回避したり、メンテナンスのための移動を行うため、ウエブWのパスライン長の変化を調整する必要がなく、また、移動部材22の移動中にウエブWの張力に変化がなくシワや傷が発生しない。
【0040】
また、ウエブWの張力が変化した場合には、張力測定装置56が測定した測定張力に対応して、サクションロール58の回転速度をフィードバック制御するため、一定の張力を維持できる。
【0041】
また、傾斜角度θ°で第2固定ロール54に架け渡されるため、第2固定ロール54の外周と接触する抱え込み角度が大きく取ることができ、張力測定装置56によってウエブWの張力を正確に測定できる。
【0042】
(5)変更例
上記実施形態では、第3案内ロール28と第4案内ロール30の下方に塗工部1を設ける構造であったが、これに代えて、図5に示すように第2案内ロール26と第5案内ロール32の間にバックアップロール74を設け、このバックアップロール74にウエブWを架け渡して駆動させ、その下方にダイ60などの塗工部1を配する構造であってもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、塗工部1としてリバースコータ方式を用いたが、グラビアコータでもよく、また、これに代えてウエブWの搬送方向と同じ方向に塗工ロールが回転するコータ方式の塗工部1やこれ以外の方式の塗工部1を用いてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、案内ロール群24~32は、ウエブWと接触して回転する他動であったが、強制的に駆動させてもよい。この場合に、左右一対の移動部材22,22はエアーシリンダ48,50で移動させるため、移動速度v(t)は移動中に変化する(但し、tは移動時間である)。例えば、移動開始時は正の加速度があり、その後に一定の移動速度となり、移動終了時は負の加速度で最後に停止する。そのため、制御部66は、左右一対の移動部材22,22の移動速度v(t)を移動センサで検出する。そして、制御部66は、第1案内ロール24、第2案内ロール26、第3案内ロール28、第4案内ロール30、第5案内ロール32の各案内ロールの周速度(外周部分の回転速度R*ω(t)である)を、この変化する移動速度v(t)とウエブWの搬送速度Vから算出してこれに合わせて回転駆動させれば、各案内ロールとの接触部分におけるウエブWのシワや傷を防止できる。その算出方法としては、R*ω(t)=V+v(t)である。但し、Rはそれぞれの案内ロールの半径、ω(t)はそれぞれの案内ロールの角速度であって、強制的に駆動する場合に制御部66で制御できる。
【0045】
また、上記実施形態では、案内ロール群24~32を有する左右一対の移動部材22,22を上下エアーシリンダ48,50で移動させたが、これに代えてサーボモータで移動させてもよい。
【0046】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・塗工部、10・・・搬送塗工装置、12・・・第1フレーム、14・・・第2フレーム、22・・・移動部材、24・・・第1案内ロール、26・・・第2案内ロール、28・・・第3案内ロール、30・・・第4案内ロール、32・・・第5案内ロール、34・・・ラック、36・・・ピニオン、38・・・シャフト、48・・・上エアーシリンダ、50・・・下エアーシリンダ、52・・・第1固定ロール、54・・・第2固定ロール、56・・・張力測定装置、58・・・サクションロール、60・・・ダイ、66・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5