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特許7425628スチレン系樹脂発泡成形体、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂発泡成形体、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/228 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
C08J9/228 CET
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020032686
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134302
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】吉田 早織
(72)【発明者】
【氏名】平井 賢治
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-246705(JP,A)
【文献】特開2015-067757(JP,A)
【文献】特開2006-316156(JP,A)
【文献】国際公開第2003/025052(WO,A1)
【文献】特開昭53-028665(JP,A)
【文献】特公昭54-019022(JP,B2)
【文献】特表平02-504040(JP,A)
【文献】特開2015-120859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体であって、
該発泡性スチレン系樹脂粒子が、重量平均分子量が20万~45万であり、
該発泡性スチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含み、
該発泡性スチレン系樹脂粒子が、5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種によって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量%に対して0.01質量%~0.3質量%の量で被覆され、
該5℃において液体である脂肪族化合物はひまし油ではなく、
白度が90~99であり、
光沢度が24以上であり、
融着率が80%以上である
スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項2】
白度が93~99である、請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂発泡成形体、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に幅広く使用されている。中でも、発泡性粒子を原料として製造される型内発泡成形体が、所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。
【0003】
発泡成形体の外観としては、その使用目的から、高い白度が要求されることが多く、また、好ましくは、光沢があり、美麗であることが好ましい。
【0004】
発泡成形体は、一般に、その融着促進のために、原料である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に表面添加剤が用いられている(特許文献1、2)。しかし、従来の表面添加剤においては、発泡、成形時の熱で表面を過度に可塑化してしまうことが多い。このため、高倍で発泡、成形する際に、気泡膜が破れやすくなり、発泡倍率を下げざるを得なかったり、白度が低下したり、光沢が損なわれたりするという問題がある。
【0005】
一方、白度の低下や、光沢の低下を抑制するために、原料である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面への表面添加剤の添加を低減させると、発泡成形体における融着がし難くなり、機械的強度や成形性が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6223097号公報
【文献】特開2014-70150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供することにある。また、そのようなスチレン系樹脂発泡成形体を成形させるために用い得る、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することにある。さらに、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、
発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体であって、
該発泡性スチレン系樹脂粒子が、重量平均分子量が19万~49万であり、
該発泡性スチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含み、
該発泡性スチレン系樹脂粒子が、5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種によって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量%に対して0.01質量%~0.3質量%の量で被覆されている。
【0009】
一つの実施形態においては、上記スチレン系樹脂発泡成形体は、白度が90~99である。
【0010】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
重量平均分子量が19万~49万であり、
5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種によって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量%に対して0.01質量%~0.3質量%の量で被覆されている。
【0011】
本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、
上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
表層の平均気泡径が0.04mm~0.15mmである。
【0012】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、
上記発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
スチレン系単量体を重合させる工程と、
重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、
5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種を添加する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。また、そのようなスチレン系樹脂発泡成形体を成形させるために用い得る、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することができる。さらに、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0015】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0016】
A.スチレン系樹脂発泡成形体
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。一つの好ましい実施形態としては、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0017】
スチレン系樹脂発泡成形体は、予備発泡スチレン系樹脂粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に「発泡粒子」と称する場合がある)を含む。
【0018】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0019】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、白度や光沢といった外観美麗性に優れる。
【0020】
スチレン系樹脂発泡成形体の白度は、好ましくは90~99であり、より好ましくは92~99であり、さらに好ましくは94~99であり、特に好ましくは95~99であり、最も好ましくは96~99である。スチレン系樹脂発泡成形体の白度が上記範囲内にあれば、外観美麗性に優れ、多くの用途に展開可能となる。
【0021】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡スチレン系樹脂粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡スチレン系樹脂粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡スチレン系樹脂粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること、を含む。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡スチレン系樹脂粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0022】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.1MPaであり、より好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0023】
必要に応じて、スチレン系樹脂発泡成形体の成形前に予備発泡スチレン系樹脂粒子を熟成させてもよい。予備発泡スチレン系樹脂粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0024】
スチレン系樹脂発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは3倍~100倍であり、より好ましくは30倍~90倍であり、さらに好ましくは50倍~80倍であり、特に好ましくは50倍を超えて75倍以下であり、特に好ましくは55倍~70倍である。
【0025】
B.発泡性スチレン系樹脂粒子
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体を形成させる発泡性スチレン系樹脂粒子は、重量平均分子量が19万~49万であり、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含み、5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種によって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量%に対して0.01質量%~0.3質量%の量で被覆されている。このような特定の発泡性スチレン系樹脂粒子は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子である。
【0026】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、全体として粒子の形状を有する。発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.3mm~3.0mmであり、より好ましくは0.3mm~1.7mmである。平均粒子径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、平均粒子径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性スチレン系樹脂粒子の形状としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用することができる。このような形状の具体例としては、例えば、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状などが挙げられる。
【0027】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、重量平均分子量が19万~49万である。発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量は、好ましくは20万~48万であり、より好ましくは20万~47万であり、さらに好ましくは20万~46万であり、特に好ましくは20万~45万である。発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量が上記範囲内にあれば、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供し得る。
【0028】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種によって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量%に対して0.01質量%~0.3質量%の量で被覆されている。上記脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種による被覆量は、発泡性スチレン系樹脂粒子100質量%に対して、好ましくは0.01質量%~0.25質量%であり、より好ましくは0.01質量%~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%~0.15質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.1質量%である。上記脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種による被覆量が上記範囲内にあれば、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供し得る。特に、光沢に優れるスチレン系樹脂発泡成形体を提供し得る。
【0029】
5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種を採用することができる。5℃において液体である脂肪族化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。5℃において液体であるフェニル基含有シリコーンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0030】
5℃において液体である脂肪族化合物としては、例えば、
(i)炭素数6~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸とグリセリンのトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド;
(ii)ヤシ油、パーム油、オリーブ油、アマニ油、エゴマ油、魚油、ひまし油などの脂肪油;
(iii)リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸;
(iv)アジピン酸ジイソブチルなどのジカルボン酸エステル;
(v)流動パラフィン;
(vi)グリセリンジアセトモノラウレートなどのアセチル化モノグリセライド;
などが挙げられる。
【0031】
なお、炭素数6~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸とグリセリンのトリグリセリド、ジグリセリドを構成する脂肪酸が有する脂肪族炭化水素基は、同種のものであってもよいし、少なくとも2つが異種のものであってもよい。
【0032】
上記(i)の炭素数6~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸とグリセリンのトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドとしては、具体的には、例えば、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸とカプリン酸から成る脂肪酸とグリセリンとのトリグリセリド、2-エチルヘキシルトリグリセリド、グリセリンジアセトモノラウレートの脂肪酸グリセリドなどが挙げられる。
【0033】
5℃において液体であるフェニル基含有シリコーンとしては、例えば、メチルフェニルシリコーンなどが挙げられる。
【0034】
なお、5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種における「液体」とは、当業者が通常認識し得る「液体」の概念を意味する。より詳細には、例えば、岩波理化学辞典第5版(岩波書店、2004年12月20日第8刷発行)に記載のように、物質の3態(気体、液体、固体)の1つであり、体積圧縮率は固体と同程度で圧縮しにくいが、剛性率はゼロで、ずれ応力に対して静的には抵抗がなく、流体としてふるまい、流れの勾配に応じて粘性力をもち、しかし、十分速い力学的変化に対しては、液体も固体のようにふるまうものである。
【0035】
5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種によって、上記被覆量で、発泡性スチレン系樹脂粒子が被覆されることにより、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供し得る。
【0036】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、上記5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種と併用して、ブロッキング防止剤(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの粉末状金属石鹸;シリカ、炭酸カルシウムなどの無機粉末;ポリジメチルシロキサンなどのフェニル基を含まないシリコーン;など)や、帯電防止剤(例えば、ポリエチレングリコール、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシアルキルアミン、グリセリン、プロピレングリコール、ステアリン酸モノグリセリドなど)等によって被覆されていてもよい。
【0037】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む。
【0038】
B-1.ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂は、該ポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分としてスチレン系単量体を含む高分子化合物である。スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体の全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0039】
ポリスチレン系樹脂は、該ポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分の主成分としてスチレン系単量体を含んでいればよく、スチレン系単量体と共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の代表例としては、代表的には、ビニル単量体が挙げられる。本明細書において「主成分」とは、全成分中の該成分の含有割合が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0040】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体などが挙げられる。ビニル単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0041】
多官能単量体の具体例としては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、ポリスチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中の多官能単量体の含有量は、好ましくは0質量%~0.1質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.05質量%である。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中のアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0043】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0044】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルなどが挙げられる。
【0045】
1つの実施形態においては、ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との含有比(ポリスチレン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。ポリスチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。ポリスチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。ポリオレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。具体例としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm~0.94g/cmであり、より好ましくは0.91g/cm~0.93g/cmである。高密度は、好ましくは0.95g/cm~0.97g/cmであり、より好ましくは0.95g/cm~0.96g/cmである。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0047】
B-2.発泡剤
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0048】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;などが挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、発泡剤としては、脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。発泡剤としては、より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0049】
発泡性スチレン系樹脂粒子中における発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~8質量部である。
【0050】
B-3.その他
発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油などが挙げられる。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0051】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0052】
B-4.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法の一つの実施形態としては、スチレン系単量体を重合させる工程と、重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種を添加する工程と、を含む。
【0053】
スチレン系単量体の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。懸濁重合法は、スチレン系単量体に重合開始剤を溶解して、懸濁剤を分散した水とともに、反応槽中で昇温し重合した後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。
【0054】
重合の途中および/または重合終了後に発泡剤を添加する方法は1段法と呼ばれる。発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを、反応槽の懸濁剤を分散した水中で昇温して、ここで発泡剤を添加して粒子に含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。また、小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を、懸濁剤を分散した水の入っている反応槽に投入し、昇温した後、重合開始剤を溶解した単量体を連続的に反応槽に供給して重合し、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は重合の途中および/または重合終了後に添加される。1段法、2段法(後含浸法)、シード重合法のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。また、いずれの方法によっても、真球状の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られ得るという利点がある。
【0055】
スチレン系単量体の重合における重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0056】
重合開始剤としては、分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50~80℃の範囲にある重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80~120℃の範囲にある重合開始剤とを併用してもよい。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接水性懸濁液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、無機系懸濁安定剤および/またはアニオン界面活性剤とを加え水性懸濁液として添加することが望ましい。
【0057】
5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種を添加する工程としては、代表的には、脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種を、上記重合により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に塗布する。5℃において液体である脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種を添加する方法としては、例えば、上記重合により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子と、脂肪族化合物およびフェニル基を含むシリコーンから選ばれる少なくとも1種とを、タンブラー、リボンブレンダー、ナウターミキサー等の混合機もしくは撹拌機を使用して、混合する方法が挙げられる。
【0058】
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法の別の実施形態においては、発泡性スチレン系樹脂粒子は、溶融押出法により製造され得る。溶融押出法は、ポリスチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。ホットカット法によれば、ほぼ球状の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られ得るという利点がある。
【0059】
C.予備発泡スチレン系樹脂粒子
スチレン系樹脂発泡成形体の一つの好ましい実施形態としては、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0060】
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、表層の平均気泡径が0.04mm~0.15mmであり、好ましくは0.04mm~0.14mmであり、さらに好ましくは0.04mm~0.13mmであり、特に好ましくは0.04mm~0.12mmであり、最も好ましくは0.04mm~0.11mmである。予備発泡スチレン系樹脂粒子の表層の平均気泡径が上記範囲にあれば、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供でき、特に、白度に優れるスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。
【0061】
すなわち、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、上記B項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性スチレン系樹脂粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは3倍~100倍であり、より好ましくは30倍~90倍であり、さらに好ましくは50倍~70倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。
【0062】
発泡性スチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0063】
1つの代表的な実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡スチレン系樹脂粒子をそのまま用いる場合、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、多数の予備発泡スチレン系樹脂粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【実施例
【0064】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0065】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算平均分子量を意味する。具体的には、試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに加えて72時間静置して溶解させ(完全溶解)、得られた溶液を、倉敷紡績社製の非水系0.45μmのクロマトディスク(13N)で濾過して測定した。予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の平均分子量を求めた。またクロマトグラフの条件は下記の通りとする。
(測定条件)
使用装置:高速GPC装置、東ソー社製、HLC-8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ-H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-H(4.6mmID×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側=0.175mL/分、リファレンス側=0.175mL/分
検出器:RI検出器、試料濃度=0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0分~25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製の商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、500のものと、昭和電工社製の商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1,030,000のものである、標準ポリスチレン試料を用いた。
検量線の作成方法は以下の通りである。上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1,030,000のもの)、グループB(重量平均分子量が、3,840,000、102,000、9,100、500のもの)、およびグループC(重量平均分子量が5,480,000、355,000、37,900、2,630のもの)にグループ分けした。グループAを5mg秤量した後に、テトラヒドロフラン20mLに溶解し(A溶液)、グループBも各々5mg~10mg秤量した後に、テトラヒドロフラン50mLに溶解し(B溶液)、グループCも各々1mg~5mg秤量した後に、テトラヒドロフラン40mLに溶解した(C溶液)。標準ポリスチレン検量線は、作成したA溶液、B溶液、およびC溶液のそれぞれを50μL注入して、測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)をHLC-8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC-WS)にて作成することにより得られ、その検量線を用いて測定した。
【0066】
<予備発泡スチレン系樹脂粒子の表層の平均気泡径>
平均気泡径は、ASTM D2842-69の試験方法に準拠して測定した。具体的には、嵩発泡倍数60倍に発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子の中から、任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて予備発泡スチレン系樹脂粒子の中心付近を通る平面で2等分し、その一方の切断面を走査型電子顕微鏡(JOEL社製、商品名「JSM-6360LV」)を用いて、予備発泡スチレン系樹脂粒子の中心から半径の50%に相当する円の外側を100倍に拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描き、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。
平均弦長t(μm)=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにした。また、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、さらに、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含めた。そして、算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出した。
平均気泡径(μm)D=t/0.616
更に、撮影した画像の任意の3箇所において上述と同様の要領で気泡径を算出し、計5画像分の気泡径の相加平均値を予備発泡スチレン系樹脂粒子の平均気泡径とした。
【0067】
<スチレン系樹脂発泡成形体の白度測定>
スチレン系樹脂発泡成形体の白色度は以下の方法で測定した。白度を、JIS Z8729 -2004「色の表示方法-L *a *b *表色系」に基づく色差測定により評価した。測定には、色彩色差計(コニカミノルタ社製、型式:CR-400)、および、標準合わせに標準白板校正板(Y:94.3、x:0.3144、y:0.3208)を用いた。校正した色彩色差計を用いて平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面の任意の点20箇所で測定し、明度L*値の平均値を白度とした。
評価は以下の通りとした。
93以上:◎
90~92:〇
90未満:×
【0068】
<スチレン系樹脂発泡成形体の光沢度測定>
実施例・比較例で得られたスチレン系樹脂発泡成形体を24℃設定の恒温室内で24時間静置させた。次に、光沢計(堀場製作所社製グロスチェッカIG-331)を用いて、平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面の任意の20点箇所について、60°計(入射角60°、受光角60°)での光沢度測定を行い、その平均値を光沢度とした。
評価は以下の通りとした。
27以上:◎
24~26:〇
24未満:×
【0069】
<スチレン系樹脂発泡成形体の融着率評価>
幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約2mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って該スチレン系樹脂発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100~150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。
融着性の評価は以下の通りとした。
90%以上:◎
80%以上90%未満:〇
80%未満:×
【0070】
<総合評価>
白度、光沢度、融着率の3項目において以下の条件で評価した。
3項目とも◎の場合:◎
3項目中に×がなく、○が1つ以上あるの場合:〇
3項目中1つでも×がある場合:×
【0071】
〔実施例1〕
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000質量部、懸濁安定剤としてリン酸三カルシウム100質量部、およびアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.2質量部を供給し、攪拌しながら、スチレン40000質量部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド102質量部、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート24質量部を添加し、90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、さらに、125℃に昇温してから2時間後に冷却し、スチレン系樹脂粒子を得た。得られたスチレン系樹脂粒子を篩分けし、種粒子として粒子径0.5mm~0.71mmのスチレン系樹脂粒子(平均粒子径0.63mm)を得た。なお、撹拌の回転数については上記粒子径が得られるように調整した。
次に、内容積25リットルの撹拌機付き重合容器に、種粒子2150質量部、ピロリン酸マグネシウム30質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0質量部を供給し、撹拌しつつ72℃に加熱して、分散液を作製した。続いて、ベンゾイルパーオキサイド31質量部およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート4質量部を、スチレン786質量部およびアクリル酸ブチル137質量部の単量体混合物に溶解させた溶液を、全て、上記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして分散液中に上記溶液を供給し終えてから、72℃で60分間維持した。
次いで、87℃まで1時間で昇温させながら、スチレン2346質量部を一定供給し、次いで、87℃で1時間30分保持しながら、スチレン3744質量部にジビニルベンゼンを2.2質量部溶解した単量体混合物を一定供給し、さらに30分保持した。
次いで、125℃まで昇温し、且つ30分保持することで、未反応の単量体を反応させた。次いで、100℃まで冷却し、重合容器内にシクロヘキサン92質量部、アジピン酸ジイソブチル82質量部、混合ブタン640質量部を圧入して2時間に亘って保持した後、重合容器内を25℃に冷却して、発泡性粒子(重量平均分子量38万)を得た。得られた発泡性粒子100質量部に対し、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.13質量部、脂肪酸トリグリセリド(炭素数8の脂肪酸(カプリル酸)85%、炭素数10の脂肪酸(カプリン酸)15%の脂肪酸組成を持つ脂肪酸とグリセリンのトリグリセリドである。5℃において液体である。)0.03質量部を塗布し、発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を、13℃の恒温室にて5日間放置した。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を加熱して、嵩密度0.0166g/cmに予備発泡させ、予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を20℃で24時間熟成させ、続いて、室温雰囲気下、24時間放置した後、型内発泡成形を行った。型内発泡成形には積水工機社製のACE-3SP成形機を用い、幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状に発泡成形した。加熱時間は一方加熱時間8秒、逆一方加熱時間2秒、両面加熱時間5秒とし、成形圧(蒸気吹き込みゲージ圧)を0.06MPaとした。これにより、スチレン系樹脂発泡成形体(1)を得た。
結果を表1に示した。
【0072】
〔実施例2〕
発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量をジビニルベンゼンの量を1.1質量部に変更して30万に調整した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(2)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(2)、スチレン系樹脂発泡成形体(2)を得た。
結果を表1に示した。
【0073】
〔実施例3〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドの量を0.01質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(3)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(3)、スチレン系樹脂発泡成形体(3)を得た。
結果を表1に示した。
【0074】
〔実施例4〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドの量を0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(4)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(4)、スチレン系樹脂発泡成形体(4)を得た。
結果を表1に示した。
【0075】
〔実施例5〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドの量を0.3質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(5)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(5)、スチレン系樹脂発泡成形体(5)を得た。
結果を表1に示した。
【0076】
〔実施例6〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドをアジピン酸ジイソブチル(5℃において液体)に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(6)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(6)、スチレン系樹脂発泡成形体(6)を得た。
結果を表1に示した。
【0077】
〔実施例7〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドを流動パラフィン(5℃において液体)に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(7)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(7)、スチレン系樹脂発泡成形体(7)を得た。
結果を表1に示した。
【0078】
〔実施例8〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドをメチルフェニルシリコーン(5℃において液体)に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(8)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(8)、スチレン系樹脂発泡成形体(8)を得た。
結果を表1に示した。
【0079】
〔実施例9〕
発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量をジビニルベンゼンの量を0.3質量部に変更して20万に調整した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(9)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(9)、スチレン系樹脂発泡成形体(9)を得た。
結果を表1に示した。
【0080】
〔実施例10〕
発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量をジビニルベンゼンの量を2.8質量部に変更して45万に調整し、中鎖脂肪酸トリグリセリドの量を0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(10)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(10)、スチレン系樹脂発泡成形体(10)を得た。
結果を表1に示した。
【0081】
〔比較例1〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドの量を0.4質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(C1)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C1)、スチレン系樹脂発泡成形体(C1)を得た。
結果を表1に示した。
【0082】
〔比較例2〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(C2)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C2)、スチレン系樹脂発泡成形体(C2)を得た。
結果を表1に示した。
【0083】
〔比較例3〕
中鎖脂肪酸トリグリセリドをステアリン酸トリグリセリド(5℃において固体)に変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(C3)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C3)、スチレン系樹脂発泡成形体(C3)を得た。
結果を表1に示した。
【0084】
〔比較例4〕
発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量をジビニルベンゼンの量を0質量部に変更して18万に調整した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(C4)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C4)、スチレン系樹脂発泡成形体(C4)を得た。
結果を表1に示した。
【0085】
〔比較例5〕
発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量をジビニルベンゼンの量を3.1質量部に変更して50万に調整した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(C5)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C5)、スチレン系樹脂発泡成形体(C5)を得た。
結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、融着率が高く、機械的強度や成形性に優れ、且つ、高倍で発泡、成形が行われても気泡膜破れが発生しにくく、白度や光沢といった外観美麗性に優れる、スチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。また、そのようなスチレン系樹脂発泡成形体を成形させるために用い得る、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することができる。さらに、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。