IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-圧電振動子容器、及び圧電振動子 図1
  • 特許-圧電振動子容器、及び圧電振動子 図2
  • 特許-圧電振動子容器、及び圧電振動子 図3
  • 特許-圧電振動子容器、及び圧電振動子 図4
  • 特許-圧電振動子容器、及び圧電振動子 図5
  • 特許-圧電振動子容器、及び圧電振動子 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】圧電振動子容器、及び圧電振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
H03H9/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020040273
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141555
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004244
【氏名又は名称】弁理士法人仲野・川井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】小林 高志
(72)【発明者】
【氏名】川田 保雄
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160886(JP,A)
【文献】特開2018-164129(JP,A)
【文献】特開2016-149599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板とともに、周波数調整を行うための重り金属膜が振動腕部の先端部に形成されている圧電振動片を収容する凹状部を形成する、前記底板の上部に配設された環状の上枠と、
前記底板における、前記上枠が配設される側の底板内面に形成された、圧電振動片を実装するための実装部と、
前記圧電振動片に形成された1対の励振電極と、前記実装部を介して電気的に接続される、前記底板内面に形成された、1対の内部電極と、
を備え、
前記内部電極は、少なくとも前記重り金属膜の外側側面と対向する部分で、前記圧電振動片の長手方向に延びる部分の幅方向外側の一部が前記上枠で覆われている、
ことを特徴とする圧電振動子容器。
【請求項2】
振動腕部の両外側に実装用の支持腕部を1対備えた圧電振動片を実装対象とし、
前記実装部は、前記支持腕部に対応する位置に1対形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子容器。
【請求項3】
前記内部電極は、前記長手方向の一部が前記上枠で覆われ、長手方向の残りの部分が前記凹状部内に露出している、
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子容器。
【請求項4】
前記内部電極は、前記実装部から、前記圧電振動片の前記振動腕部側に延設された内部電極における長手方向の一部が前記上枠で覆われている、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動子容器。
【請求項5】
前記内部電極が前記上枠で覆われている幅は、前記上枠の幅の1/3以下である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1の請求項に記載の圧電振動子容器。
【請求項6】
前記内部電極が前記上枠で覆われている幅は、前記上枠の幅の1/4以下である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1の請求項に記載の圧電振動子容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載の圧電振動子容器と、
前記実装部に実装された圧電振動片と、
前記凹状部の開放側の面に接続されて、前記実装された圧電振動片を前記凹状部内に密封収納する封口板と、
を具備したことを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子容器、及び圧電振動子に係り、詳細には、内部に圧電振動片が配設される圧電振動子容器、及び圧電振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末機器等の各種電子機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等に用いられるデバイスとして、水晶等を利用した圧電振動子が用いられる。この種の圧電振動子として、特許文献1に示すように、パッケージと蓋体で形成されるキャビティ内に圧電振動片を気密封止したものが知られている。
圧電振動片は、圧電材料により形成された所定長さの基部と、基部から並んで延びる一対の振動腕部を備えると共に、基部の両側端側から振動腕部の外側において並んで延びる一対の固定用の支持腕部を備えている。
このような圧電振動片を格納する圧電振動子では、例えば特許文献1に示されるように、パッケージ内に格納した圧電振動片に対して、イオンミリング法により振動腕部先端の金属膜を除去することで周波数調整を行っている。すなわち、金属膜の除去対象領域に対応する開口窓が開いたマスクを圧電振動片に被せ、開口窓からイオンを照射することで振動腕部先端の金属膜を除去している。
【0003】
ところで、圧電振動片を格納する圧電振動子用のパッケージ(容器)の内側底面には、圧電振動片に形成された2系統の励振電極と外部電極とを接続するための内部電極が形成されている。
そして、近年の小型化によりパッケージの容積が小さくなるほど、内部電極を配設する領域が小さくなり、振動腕部先端と内部電極とが近くなる傾向にある。
更に、支持腕部で固定する圧電振動片の場合、いわゆる片持ち形の圧電振動片に比べて横幅が広くなるため、小型化したパッケージ内の内部電極は更に振動腕部近くに形成する必要がある。
【0004】
このようなパッケージの小型化や、圧電振動片の形状等により、内部電極が振動腕部の近くに形成される状況において、イオンミリングによる周波数調整を行うと、内部電極が破断してしまう可能性があった。
すなわち、イオンミリングでは、マスクに形成した開口窓から振動腕部の先端にイオン照射しているが、照射したイオンがパッケージ内で広がり、振動腕部先端の金属膜だけでなく、内部電極にまでイオンが照射されてしまい、その結果内部電極が破断してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-165968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イオンミリングによる内部配線の破断回避を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明では、底板と、前記底板とともに、周波数調整を行うための重り金属膜が振動腕部の先端部に形成されている圧電振動片を収容する凹状部を形成する、前記底板の上部に配設された環状の上枠と、前記底板における、前記上枠が配設される側の底板内面に形成された、圧電振動片を実装するための実装部と、前記圧電振動片に形成された1対の励振電極と、前記実装部を介して電気的に接続される、前記底板内面に形成された、1対の内部電極と、を備え、前記内部電極は、少なくとも前記重り金属膜の外側側面と対向する部分で、前記圧電振動片の長手方向に延びる部分の幅方向外側の一部が前記上枠で覆われている、ことを特徴とする圧電振動子容器を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、振動腕部の両外側に実装用の支持腕部を1対備えた圧電振動片を実装対象とし、前記実装部は、前記支持腕部に対応する位置に1対形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子容器を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記内部電極は、前記長手方向の一部が前記上枠で覆われ、長手方向の残りの部分が前記凹状部内に露出している、ことを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子容器を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記内部電極は、前記実装部から、前記圧電振動片の前記振動腕部側に延設された内部電極における長手方向の一部が前記上枠で覆われている、ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動子容器を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記内部電極が前記上枠で覆われている幅は、前記上枠の幅の1/3以下である、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1の請求項に記載の圧電振動子容器を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記内部電極が前記上枠で覆われている幅は、前記上枠の幅の1/4以下である、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1の請求項に記載の圧電振動子容器を提供する。
(7)請求項7に記載の発明では、請求項1から請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載の圧電振動子容器と、前記実装部に実装された圧電振動片と、前記凹状部の開放側の面に接続されて、前記実装された圧電振動片を前記凹状部内に密封収納する封口板と、を具備したことを特徴とする圧電振動子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、底板内面に形成された1対の内部電極のうち、圧電振動片の長手方向の一部が上枠で覆われているので、イオンミリングによる周波数調整による内部配線の破断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】圧電振動子容器に圧電振動片を配置した圧電振動子の分解斜視図である。
図2】圧電振動子容器の側断面と容器の底板内面における内部電極の配線状態を表した説明図である。
図3】圧電振動子容器の底板裏面における外部電極の配線状態を表した説明図である。
図4】圧電振動子容器の下枠における裏側面の状態を表した説明図である。
図5】圧電振動片をイオンミリングする状態の説明図である。
図6】第2実施形態における圧電振動子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の圧電振動片、及び圧電振動子における好適な実施形態について、図1から図6を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動子容器2内に、いわゆるサイドアーム型の圧電振動片6の支持腕部9a、9bが、金属バンプで形成された実装部14a、14bにマウントされ、イオンミリングによる周波数調整を行った後に、封口板4により封止されている。
圧電振動子容器2を構成する底板10の底板内面10fには、配線としての内部電極31、32が形成されている。
本実施形態では、底板内面10fに形成された内部電極32のうち、少なくともイオンミリングにおける開口窓81周辺の一部(開口窓81から離れた側)が、底板10と上枠11との間に形成されている。
【0011】
すなわち、内部電極32の一部が上枠11で覆われている。これにより、内部電極32のうち、上枠11で覆われていない露出部分が、イオンミリングによって仮に欠損したとしても、覆われた部分が残るため、内部電極32の断線を確実に回避することができる。
そして、圧電振動片6を配設した圧電振動子1であっても、歩留まり、特性を落とすことなく製造することができる。このため、圧電振動子1の更なる小型化も可能になる。
【0012】
なお、開口窓81の周辺における内部電極32の全体を上枠11で覆うことも可能であるが、底板10と上枠11との接続強度を維持するために一部を覆うことが好ましい。上枠11で内部電極32を覆うのは、上枠11の幅の1/3以下、好ましくは1/4以下である。
また、内部電極32の配置状態などについて、目視や画像認識等による確認を可能にするためにも、上枠11で覆う領域を一部にすることが好ましい。
【0013】
(2)実施形態の詳細
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る、圧電振動子容器2に圧電振動片6を配置した圧電振動子1の分解斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、内部に収容空間を有する圧電振動子容器2と、圧電振動子容器2を気密封止する封口板4と、圧電振動子容器2内に収容された圧電振動片6と、を備えたセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子とされている。
圧電振動子1は平面視のサイズの一例として、長さが約1.6mm、幅が約1.2mmに形成されている。
なお、本実施形態の圧電振動子1は左右対称な構造となっているため、振動腕部7aと振動腕部7bというように、対称配置された両部分を同一の数字で表すと共に、両部分を区別するため、一方に区別符合a、他方に区別符合bを付して説明する。ただし、区別符号を適宜省略して説明するが、この場合には各々の部分を指しているものとする。
【0014】
圧電振動片6は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された、いわゆる音叉形の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。本実施形態では、圧電材料として水晶を使用して形成した圧電振動片を例に説明する。
圧電振動片6は、いわゆるサイドアーム型の水晶振動片であり、基部8から平行に延びる1対の振動腕部7a、7bと、この振動腕部7の外側に同方向に基部8から延びる1対の支持腕部9a、9bを備えている。圧電振動片6は、支持腕部9a、9bによって、圧電振動子容器2内の実装部14a、14bに保持される。
【0015】
1対の振動腕部7a、7bは、互いに平行となるように配置されており、基部8側の端部を固定端として、先端が自由端として振動する。
一対の振動腕部7a、7bは、その自由端側に基部側よりも両側に広くなった拡幅部71a、71bが形成されている。また振動腕部7a、7bには長手方向に沿った溝部が、基部8側の端部から拡幅部71の手前までの範囲で形成されている。なお、拡幅部71と溝部がない圧電振動片を使用するようにしてもよい。
【0016】
本実施形態の圧電振動片6では、図示しないが、振動腕部7a、7bの先端部(拡幅部71a、71b)に、振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜が形成されている。
そして、振動腕部7a、7b先端に形成された重り金属膜は、圧電振動片6を圧電振動子容器2の実装部14a、14bに実装(マウント)した後に、イオンミリングによって一部が除去されることで、周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
なお、圧電振動片6の重り金属膜は、圧電振動子容器2への実装前において、例えばレーザ光を照射して適量だけ取り除くことで、周波数調整を行うことも可能である。この場合のイオンミリングは周波数の最終調整として行われる。
【0017】
圧電振動子容器2は、概略直方体状に形成され、凹状部3と、凹状部3を封止するシールリング13を備えている。
なお、本実施形態の圧電振動子容器2は、シールリング13と接合して気密封止する封口板4を備えないが、封口板4を含めて圧電振動子容器2とすることも可能である。
凹状部3は、互いに重ね合わされた状態で接合された、平板状の底板10、底板10の上面に接合された環状の上枠11、底板10の下面に接合された環状の下枠12を備えている。
【0018】
接合された底板10、上枠11、及び下枠12の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部15が、厚み方向の全体に亘って形成されている。これら底板10、上枠11、下枠12は、例えばウエハ状のセラミック基板を3枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、切欠部15が形成される。
【0019】
なお、底板10、上枠11、及び下枠12はセラミック製としたが、その具体的なセラミック材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)や、ガラスセラミック製のLTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0020】
凹状部3は上から、上枠11、底板10、下枠12の順に重ねられており、底板10に対して焼結などにより上枠11、下枠12が結合されている。すなわち、上枠11と下枠12は、底板10と一体化されている。
なお、図1には示していないが、後述するように底板10の両面には内部電極31、32や外部電極23、24が形成され、内部電極の一部は底板10と上枠11に挟まれた状態で形成されている。
また底板10の底板内面10fには、圧電振動片6を実装するための実装部14a、14bが形成されている。この実装部14a、14bは、内部電極31a、31b(図2参照)の上に、金バンプによって形成されている。
【0021】
上枠11と下枠12は、内部が貫通した環状に形成されている。圧電振動子1の内側面11nと、下枠12の内側面12n(図2参照)は、共に、四隅が丸みを帯びた平面視長方形状に形成されている。
凹状部3に形成された切欠部15のうち、下枠12の切欠部15の4箇所には外部電極22が形成されている。
【0022】
シールリング13は、凹状部3の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、上枠11の上面に接合されている。具体的には、シールリング13は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって上枠11上に接合、あるいは、上枠11上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0023】
シールリング13の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42アロイ等から選択すれば良い。特に、シールリング13の材料としては、セラミック製とされている底板10および上枠11に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、底板10および上枠11として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング13としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5~6.5×10-6/℃の42アロイを用いることが好ましい。
【0024】
封口板4は、シールリング13上に重ねられる導電性基板である。この封口板4は、ローラ電極を接触移動させるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等によって、シールリング13に溶接されることで、圧電振動子容器2に対して気密に接合される。
そして、封口板4、シールリング13、上枠11の内側、および底板10の底板内面10fにより画成された空間が、気密に封止されたキャビティとして機能する。
【0025】
図2は、圧電振動子容器2の側断面と容器の底板内面10fにおける内部電極の配線状態を表したものである。
図2(a)は、底板10上に配設された実装部14bを通る長手方向の断面を表している。図2(b)は、圧電振動子容器2を上方から、シールリング13と上枠11を透過視した、底板10の底板内面10fの状態を表している。
図2(b)の点線の枠は、上枠11の内側面11nを表している。
図2(b)に示すように、底板10の4隅のうちの3箇所には、厚さ方向に貫通する貫通電極30a、30b、30cが形成されている。貫通電極30は、例えば、底板10に形成した貫通孔に、金属ペースト(導電性ペースト)の充填や、金属ピンの挿通、内周面のメッキ等により形成される。
【0026】
貫通電極30a、30bは略対角位置で、点線で示した上枠11の内側面に一部がかかる位置に配置されている。すなわち、貫通電極30a、30bは、上枠11側の端面の一部が上枠11で覆われている。
貫通電極30a、30bの反対側の端面は、底板10の底板外面10rに形成された接続用電極25a、25bを介して外部電極24a、24bと接続されている(図3参照)。
【0027】
一方、貫通電極30cは、上枠11側の端面全体が上枠11で覆われる位置に形成されている。貫通電極30cは、シールリング13をメッキでつける際の導通を取るために設けられている。このため、貫通電極30a、30bが底板10だけに形成されているのに対し、貫通電極30cは底板10に加えて上枠11にも貫通形成されている。
貫通電極30cの底板10側の端面は、底板外面10rに形成された接続用電極25cを介して外部電極23と接続され(図3参照)、反対側の端面は上枠11の上面全体に形成されたメタライズ層(図視しない)と接続されている。
【0028】
実装部14a、14bと底板内面10fとの間には、実装部14a、14bよりも大きいサイズの内部電極31a、31bが長円形に形成されている。
なお、実装部14a、14bと内部電極31a、31bは、図2に示されるように、長手方向(図面左右方向)の中心よりも一方の側(図面では左側)に配設されている。そして圧電振動片6は、この一方の側に基部8が位置する向きで実装される。
【0029】
底板内面10fの四隅のうちの貫通電極30c側で、上枠11の内側面11nの内側に、接続用電極33cと接続する電極が形成されている。
この電極は、画像認識により凹状部3の向き(図における左右の向き)を判別するためのインデックスマーク35である。
【0030】
底板内面10fには、各貫通電極30a~30cに対応する位置に円形の接続用電極33a~33cが形成されている。この接続用電極33a~33cも、底板内面10fの中心から視た外側の一部が上枠11で覆われている。
そして、内部電極31aと接続用電極33aとが内部電極32aで接続され、内部電極31bと接続用電極33bとが内部電極32bで接続されている。
すなわち、内部電極32a、32bは、図2(b)に示すように、内部電極31a、31bから幅方向(図面上下方向)の外側に延設され、途中から長手方向の中心から離れる方向に曲って形成され、先端が接続用電極33a、33bと接続するように形成されている。
そして、内部電極32a、32bにおける、長手方向に延びる部分の幅方向外側の一部が上枠11で覆われている。
これにより、内部電極32のうち、上枠11で覆われていない露出部分が、イオンミリングによって仮に欠損したとしても、内部電極32の断線を確実に回避することができる。
【0031】
図3は、圧電振動子容器2の底板裏面10rにおける外部電極の配線状態を表した説明図である。なお、図3に示した底板裏面10rは、圧電振動子容器2を上方から、上枠11と底板10を透過視した透過図である。
図3に示すように、底板外面10rには、下枠12の4隅の切欠部15に形成された外部電極22(図1参照)と接続する外部電極23が4箇所に形成されている。
また各貫通電極30a~30c(図2(b)参照)に対応する位置に接続用電極25a~25cが形成されている。このうち接続用電極25cは、外部電極23と接続されている。
【0032】
また底板外面10rには、外部電極24a、24bが形成されている。
外部電極24aは、接続用電極25aと接続されることで、貫通電極30a、内部電極32a、内部電極31aを介して実装部14aに接続されている。
外部電極24bは、接続用電極25bと接続されることで、貫通電極30b、内部電極32b、内部電極31bを介して実装部14bに接続されている。
外部電極24a、24bは、底板裏面10rにICを実装するための電極である。
【0033】
図3に示した点線の枠は、下枠12の内側面12nを表している。
すなわち、底板10の底板裏面10rに形成された、外部電極23、外部電極24a、24b、及び、接続用電極25a~25cのうち、点線で表した下枠12の内側面12nよりも外側の領域は、下枠12で覆われている。
【0034】
図4は、圧電振動子容器2の下枠12における、裏側面の状態を表したものである。
下枠12の裏側面には、外部電極21が4隅に形成されている。4箇所の外部電極21の各々は、下枠12の4隅の切欠部15に形成した接続用電極22(図1参照)に接続されている。
なお、図4には表示していないが、圧電振動子容器2を下側(下枠12側)から視た場合、下枠12の内側面12n内には、図3に点線で示した内側面12n内の各外部電極23、24a、24b、接続用電極25a~25cが存在する。
【0035】
本実施形態の凹状部3(図1参照)は、アルミナ等のセラミックで構成されており、グリーンシートと呼ばれる柔軟性を有するセラミックのシート材を複数枚積層して焼成して一体化することにより形成されている。各シート材は、下枠12、底板10、上枠11の厚さや枚数を考慮して適宜選択される。
各シート材には、上述した各種電極(内部電極と外部電極)が例えば導体印刷により形成されると共に貫通電極30a~30cが形成され、その後下枠12、底板10、上枠11の順に積層された後に、全体が同時に焼成される。
凹状部3を焼成したのち、上枠11の上面に形成したメタライズ層の上にロウ材の層を形成し、その上にシールリング13がシーム溶接によって接合されることで、圧電振動子容器2が形成される。
【0036】
次に、図2から図4のように構成された圧電振動子容器2に、圧電振動片6の実装とイオンミリングによる周波数調整を含めた圧電振動子1の製造について説明する。
圧電振動片6には、予め励振用の第1励振電極と第2励振電極と、両励振電極から振動腕部7a、7bまで電極が接続されている。また、振動腕部7a、7bにおける先端の拡幅部71a、71bには周波数調整用の重り金属膜が形成されている。
また、実装する圧電振動片6は、実装前に予め所定レベルまでの周波数調整が重り金属膜の除去によって行われている。
【0037】
図5は、圧電振動片6をイオンミリングする状態を表した説明図である。
まず圧電振動片6を圧電振動子容器2における実装部14a、14bの上に配置する。すなわち、実装部14a、14b上に導電性接着剤を塗布した後、各導電性接着剤に圧電振動片6の支持腕部9a、9bを載置する。
その後、圧電振動片6が載置された圧電振動子容器2をベークして導電性接着剤を完成することで、圧電振動片6が圧電振動子容器2に実装される。
【0038】
この圧電振動片6を実装した圧電振動子容器2を、図示しないチャンバ内の治具にセットする。
そして、図5に示すように、圧電振動片6のうちトリミングすべき領域である拡幅部71a、71bの周辺領域に開口窓81(1点鎖線で囲った枠)が形成されたマスク80を、圧電振動子容器2上にセットする(マスクセット工程)。
これにより、圧電振動片6は、基部8、支持腕部9、拡幅部71を除く振動腕部7、及び、拡幅部71における基部8側の端部がマスク80で覆われ、拡幅部71の先端側が露出状態となる。
なお、振動腕部7の基部8側がマスク80で覆われるのは、イオンミリングにより振動腕部7に形成された第1励振電極、第2励振電極まで除去されることを避けるためである。
【0039】
続いて、チャンバ内にセットされた圧電振動子容器2に対してイオンミリングを行う。具体的には、チャンバ内を減圧し、アルゴン等のプロセスガスを導入する。この状態で加速電圧を印加すると、イオン化したプロセスガスがマスク80の開口窓81を通って振動腕部7の重り金属に衝突する。
これにより、振動腕部7の重り金属膜が表層部分から弾き飛ばされ、振動腕部7の質量が変化することで振動腕部の周波数が変化する。
本実施形態の圧電振動子容器2では、図5に点線で示したように、開口窓81近傍に配設されている内部電極32aの一部が長手方向に沿って上枠11で覆われているので、仮に覆われていない内部電極32a部分がプロセスガスによって除去されたとしても、内部電極32aの断線を回避することが可能になる。
【0040】
圧電振動片6の拡幅部71をイオンミリングした後、圧電振動子容器2のシールリング13に封口板4をシーム溶接することで、圧電振動子容器2に圧電振動片6を封止した圧電振動子1が完成する。
【0041】
[第2実施形態]
次に、圧電振動子容器2と圧電振動子1の第2実施形態について説明する。
説明した第1実施形態では、平面視でのサイズとして長さが約16mm、幅が約12mmの圧電振動子容器2を使用し、圧電振動子1を形成する場合を例に説明した。
これに対して、第2実施形態では、平面視のサイズとして長さが同じ16mmで、より狭い幅10mmの圧電振動子容器2を使用する場合である。なお、内部に実装するのは、第1実施形態で説明した圧電振動片6と同じである。
【0042】
図6は、第2実施形態における圧電振動子容器2と圧電振動子1についての説明図であり、第1実施形態との対比で図5と同様に、圧電振動片6をイオンミリングする状態を表している。
図6に示すように、第2実施形態の圧電振動子容器2では、幅が10mmと狭くなった分圧電振動片6の支持腕部9a、9bと上枠11の内側面11nとの距離が短くなる。
この場合でも、内部電極32a、32bの長手方向に延びる領域については、第1実施形態と同様に、その幅方向外側の一部が上枠11で覆われ、更にその先端が接続用電極33a、33bと接続するように形成されている。なお、接続用電極33a、33bの外側の一部についても、第1実施形態と同様に上枠11で覆われている。
第2実施形態の圧電振動子容器2では、第1実施形態に比べて内部電極32aの位置が、イオンミリング用の開口窓81に近くなっているため、よりイオンビームが照射されやすくなるが、長手方向の一部が上枠11で覆われることで、確実に断線を回避することができる。
【0043】
以上の各実施形態では、内部電極32a、32bにおける、長手方向に延びる部分の幅方向の一部が上枠11で覆われている場合について説明した。
これに対して、イオンミリングによりイオン照射の可能性があるのは、内部電極31から拡幅部71a、71b側に延びている内部電極32aだけである。
このため、内部電極31から拡幅部71a、71bから離れる側(基部8側)に延びている内部電極32bについては、長手方向の全てが上枠11で覆われないように形成してもよい。
【0044】
説明した実施形態では、いわゆるサイドアーム型の圧電振動片6を実装する場合の内部電極の一部を上枠11で覆う場合について説明した。
これに対し、支持腕部を形成せずに基部8を実装部に接合する圧電振動子や、両振動腕部7の間に基部8から延設する1本の支持単腕部を形成しこの支持単腕部を実装部に接合する圧電振動片を実装する場合で、周波数調整用の重り金属膜が形成されている振動腕部7a、7bの先端部と上枠11枠の間に内部配線が形成される場合にも適用することができる。この場合の内部配線も、実施形態と同様に長手方向の一部を上枠11で覆うことで、内部配線のイオンミリングによる断線を回避することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 圧電振動子
2 圧電振動子容器
3 凹状部
4 封口板
6 圧電振動片
7 振動腕部
71 拡幅部
8 基部
9 支持腕部
10 底板
10f 底板内面
10r 底板外面
11 上枠
11n 内側面
12 下枠
12n 内側面
13 シールリング
14 実装部
15 切欠部
21、22、23、24 外部電極
25 接続用電極
30 貫通電極
31、32 内部電極
33 接続用電極
35 インデックスマーク
80 マスク
81 開口窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6