(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/224 20060101AFI20240124BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240124BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20240124BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20240124BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240124BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240124BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240124BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20240124BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240124BHJP
B29K 55/00 20060101ALN20240124BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C08J9/224 CET
B29C44/00 G
B29C44/44
C08L25/02
C08L83/04
C08K5/103
C08K5/098
C08K5/01
C08L71/02
B29K55:00
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2020052074
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-07-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】道畑 直起
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223880(JP,A)
【文献】特開昭60-203648(JP,A)
【文献】特開2020-180241(JP,A)
【文献】特開2013-142106(JP,A)
【文献】特開2019-065074(JP,A)
【文献】特開2011-074242(JP,A)
【文献】特開平04-180941(JP,A)
【文献】特開2012-214725(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121084(WO,A1)
【文献】特開2014-189769(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00- 44/60、 67/20
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B29K 55/00
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子本体が、該発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、
メチルフェニルポリシロキサン:0.001質量部~0.3質量部、
帯電防止剤:0.001質量部~0.3質量部、
脂肪酸金属塩:0.005質量部~0.5質量部、
融着促進剤:0.01質量部~0.8質量部、
によって被覆され、
該帯電防止剤が、非イオン界面活性剤および脂肪酸グリセライドの併用であり、該非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、多価アルコール、1-アミノ-2-ヒドロキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である、
発泡性スチレン系樹脂粒子。
ただし、前記多価アルコールがグリセリンである場合を除く。
【請求項2】
前記脂肪酸グリセライドが脂肪酸モノグリセライドを含む、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍以上80倍未満である、
予備発泡スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項5】
請求項3に記載の予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に幅広く使用されている。中でも、発泡性粒子(代表的には、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子あるいはそれを予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子)を原料として製造される型内発泡成形体が、所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。このような発泡成形体は、互いに融着した複数の発泡性粒子により構成されている。
【0003】
発泡成形体は、その発泡時や成形時にブロッキングが起きやすい。また、発泡成形体には、良好な融着性や表面性が求められる。
【0004】
メチルフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとの併用、且つ、ブロッキング防止剤や融着促進剤として脂肪酸金属塩をもちいることにより、ブロッキングを防止し、さらに、良好な表面性を有した発泡成形体を得るとともに、成形時の冷却時間を短縮する技術が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、メチルフェニルポリシロキサンと非イオン界面活性剤とを併用することで発泡性粒子の剥離を抑制しつつブロッキングを防止し、良好な融着性と表面性を有した発泡成形体を得る技術が提案されている(特許文献2)。
【0006】
さらに、適当な非イオン界面活性剤を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に被覆することにより、メチルフェニルポリシロキサンを効率よく被覆でき、発泡性粒子の剥離を抑制しつつ、ブロッキングを防止し、良好な融着性と表面性を有した発泡成形体を得る技術が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に記載の技術では、ブロッキング防止性能が高すぎるため、発泡性粒子自身が帯電してしまうという問題が生じる。また、この帯電の問題により、例えば、発泡性粒子をサイロで熟成する際に、サイロ表面に付着してしまい、取り扱いにくくなるという問題が生じる。さらに、この帯電の問題により、輸送時の配管内で発泡性粒子が残留してしまい、他品種とのコンタミネーションが生じるという問題が生じる。
【0008】
さらに、特許文献1~3に記載の技術では、成形時に、金型内部で発泡性粒子間の静電気が発生することによって発泡性粒子の充填性が悪くなり、発泡成形体の融着や表面性が低くなるという問題も生じる。
【0009】
また、成形後の発泡成形体はそれ自身が帯電しやすい。このため、発泡成形体が梱包用のプラスチック製の袋に入れられて市場に出回る場合、プラスチック製の袋から取り出す等の作業時に静電気により取り扱い難くなる問題が生じたり、発泡成形体にホコリが付着する問題が生じたりする。特に、弱電分野では、電気製品に異常を及ぼす危険性がある。特に、予備発泡の嵩発泡倍率が80倍未満の予備発泡スチレン系樹脂粒子や、それから成形されるスチレン系樹脂発泡成形体においては、単位面積当たりの樹脂量が多いため、より帯電しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-119109号公報
【文献】特開2018-168265号公報
【文献】特開2019-65074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、発泡時や成形時のブロッキングを防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性を抑制しつつ良好な融着性や表面性を発現し、静電気の少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、発泡性スチレン系樹脂粒子および予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することにある。また、そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子本体が、該発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、
シリコーンオイル:0.001質量部~0.3質量部、
帯電防止剤:0.001質量部~0.3質量部、
脂肪酸金属塩:0.005質量部~0.5質量部、
融着促進剤:0.01質量部~0.8質量部、
によって被覆されている。
【0013】
一つの実施形態においては、上記シリコーンオイルがメチルフェニルポリシロキサンである。
【0014】
一つの実施形態においては、上記帯電防止剤が、非イオン界面活性剤および脂肪酸グリセライドから選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
一つの実施形態においては、上記脂肪酸グリセライドが脂肪酸モノグリセライドを含む。
【0016】
本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、
上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍以上80倍未満である。
【0017】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される。
【0018】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発泡時や成形時のブロッキングを防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性を抑制しつつ良好な融着性や表面性を発現し、静電気の少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、発泡性スチレン系樹脂粒子および予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することができる。また、そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0021】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0022】
A.発泡性スチレン系樹脂粒子
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子である。
【0023】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子本体が、該発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、シリコーンオイル:0.001質量部~0.3質量部、帯電防止剤:0.001質量部~0.3質量部、脂肪酸金属塩:0.005質量部~0.5質量部、融着促進剤:0.01質量部~0.8質量部、によって被覆されている。
【0024】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、上記のように、発泡性スチレン系樹脂粒子本体が、特定量のシリコーンオイル、特定量の帯電防止剤、特定量の脂肪酸金属塩、および特定量の融着促進剤が併用されて被覆されていることにより、発泡時や成形時のブロッキングを防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性を抑制しつつ良好な融着性や表面性を発現し、静電気の少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0025】
上記シリコーンオイルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0026】
上記シリコーンオイルの量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、0.001質量部~0.3質量部であり、好ましくは0.003質量部~0.28質量部であり、好ましくは0.005質量部~0.25質量部であり、より好ましくは0.008質量部~0.23質量部であり、特に好ましくは0.01質量部~0.23質量部である。上記シリコーンオイルの量が上記範囲を外れて少なすぎると、予備発泡時に帯電防止剤との親和性が十分でなくなり、静電気が発生しやすくなるおそれがある。上記シリコーンオイルの量が上記範囲を外れて多すぎると、成形時に表面が溶けてしまう等によって表面性が失われるおそれがある。
【0027】
上記シリコーンオイルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なシリコーンオイルを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのストレートシリコーンオイルが挙げられ、好ましくは、メチルフェニルポリシロキサンである。
【0028】
上記帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0029】
上記帯電防止剤の量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、0.001質量部~0.3質量部であり、好ましくは0.005質量部~0.28質量部であり、好ましくは0.01質量部~0.27質量部であり、より好ましくは0.015質量部~0.26質量部であり、特に好ましくは0.02質量部~0.25質量部である。上記帯電防止剤の量が上記範囲を外れて少なすぎると、予備発泡時に帯電防止剤との親和性が十分でなくなり、静電気が発生しやすくなるおそれがある。上記帯電防止剤の量が上記範囲を外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0030】
上記帯電防止剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な帯電防止剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記帯電防止剤としては、非イオン界面活性剤および脂肪酸グリセライドから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、非イオン界面活性剤および脂肪酸グリセライドの併用である。
【0031】
上記非イオン界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
上記非イオン界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な非イオン界面活性剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、多価アルコール、1-アミノ-2-ヒドロキシ化合物などが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエステルとしては、具体的には、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエートなどが挙げられる。多価アルコールとしては、具体的には、グリセリンやプロピレングリコールなどが挙げられる。1-アミノ-2-ヒドロキシ化合物としては、具体的には、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)へキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N-ヒドロキシプロピル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシブチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、及びそれらの塩などが挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記非イオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0033】
上記帯電防止剤の少なくとも一部として上記非イオン界面活性剤を採用する場合、該非イオン界面活性剤の量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~0.3質量部であり、より好ましくは0.005質量部~0.28質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部~0.27質量部であり、特に好ましくは0.015質量部~0.26質量部であり、最も好ましくは0.02質量部~0.25質量部である。上記非イオン界面活性剤の量が上記範囲を外れて少なすぎると、予備発泡時に帯電防止剤との親和性が十分でなくなり、静電気が発生しやすくなるおそれがある。上記非イオン界面活性剤の量が上記範囲を外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0034】
上記脂肪酸グリセライドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
上記脂肪酸グリセライドとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な脂肪酸グリセライドを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記脂肪酸グリセライドとしては、具体的には、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどが挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記脂肪酸グリセライドとしては、ステアリン酸モノグリセライドが好ましい。
【0036】
上記帯電防止剤の少なくとも一部として上記脂肪酸グリセライドを採用する場合、該脂肪酸グリセライドの量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~0.3質量部であり、より好ましくは0.005質量部~0.28質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部~0.27質量部であり、特に好ましくは0.015質量部~0.26質量部であり、最も好ましくは0.02質量部~0.25質量部である。上記脂肪酸グリセライドの量が上記範囲を外れて少なすぎると、予備発泡時に帯電防止剤との親和性が十分でなくなり、静電気が発生しやすくなるおそれがある。上記脂肪酸グリセライドの量が上記範囲を外れて多すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体の表面がべたつくおそれがある。
【0037】
上記脂肪酸金属塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0038】
上記脂肪酸金属塩としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な脂肪酸金属塩を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸金属塩、ラウリン酸金属塩などが挙げられる。ステアリン酸金属塩としては、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどが挙げられる。ラウリン酸金属塩としては、具体的には、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウムなどが挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0039】
上記脂肪酸金属塩の量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、0.005質量部~0.5質量部であり、好ましくは0.007質量部~0.45質量部であり、より好ましくは0.01質量部~0.4質量部であり、さらに好ましくは0.015質量部~0.35質量部であり、特に好ましくは0.02質量部~0.3質量部である。上記脂肪酸金属塩の量が上記範囲を外れて少なすぎると、予備発泡時のブロッキングが多く発生してしまい、良好なスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないおそれがある。上記脂肪酸金属塩の量が上記範囲を外れて多すぎると、予備発泡時に金属塩が多く存在してしまい、帯電しやすくなり、静電気が発生しやすくなり、成形品の融着が悪くなるおそれがある。
【0040】
上記融着促進剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0041】
上記融着促進剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な融着促進剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記融着促進剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライド、植物油などが挙げられる。脂肪酸トリグリセライドとしては、具体的には、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどが挙げられる。脂肪酸ジグリセライドとしては、具体的には、ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどが挙げられる。脂肪酸モノグリセライドとしては、具体的には、ラウリン酸モノグリセライドなどが挙げられる。植物油としては、具体的には、硬化ヒマシ油などが挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記融着促進剤としては、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドが好ましい。
【0042】
上記融着促進剤の量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100質量部に対して、0.01質量部~0.8質量部であり、好ましくは0.01質量部~0.7質量部であり、より好ましくは0.01質量部~0.6質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部~0.55質量部であり、特に好ましくは0.013質量部~0.5質量部である。上記融着促進剤の量が上記範囲を外れて少なすぎると、成形時に融着性が低下してしまい、良好なスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないおそれがある。上記融着促進剤の量が上記範囲を外れて多すぎると、予備発泡時にブロッキングするおそれがある。
【0043】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、全体として粒子の形状を有する。発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.3mm~3.0mmであり、より好ましくは0.3mm~2.0mmである。平均粒子径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、平均粒子径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性スチレン系樹脂粒子の形状としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用することができる。このような形状の具体例としては、例えば、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状などが挙げられる。
【0044】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、重量平均分子量が19万~49万である。発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量は、好ましくは20万~48万であり、より好ましくは20万~47万であり、さらに好ましくは20万~46万であり、特に好ましくは20万~45万である。
【0045】
A-1.発泡性スチレン系樹脂粒子本体
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む。
【0046】
A-1-1.ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂は、該ポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分としてスチレン系単量体を含む高分子化合物である。スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体の全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0047】
ポリスチレン系樹脂は、該ポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分の主成分としてスチレン系単量体を含んでいればよく、スチレン系単量体と共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の代表例としては、代表的には、ビニル単量体が挙げられる。本明細書において「主成分」とは、全成分中の該成分の含有割合が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0048】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体などが挙げられる。ビニル単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0049】
多官能単量体の具体例としては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、ポリスチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中の多官能単量体の含有量は、好ましくは0質量%~0.1質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.05質量%である。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中のアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0051】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0052】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルなどが挙げられる。
【0053】
1つの実施形態においては、ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との含有比(ポリスチレン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。ポリスチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。ポリスチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。ポリオレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。具体例としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.91g/cm3~0.93g/cm3である。高密度は、好ましくは0.95g/cm3~0.97g/cm3であり、より好ましくは0.95g/cm3~0.96g/cm3である。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0055】
A-1-2.発泡剤
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0056】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;などが挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、発泡剤としては、脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。発泡剤としては、より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0057】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体中における発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~8質量部である。
【0058】
A-1-3.その他
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油などが挙げられる。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、発泡剤とともに難燃剤や難燃助剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモシクロヘキサン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’(2’’,3’’-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパンなどが挙げられる。難燃助剤としては、例えば、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサンなどが挙げられる。
【0060】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0061】
A-2.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法の一つの実施形態としては、(I)スチレン系単量体を重合させる工程と、(II)重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、(III)シリコーンオイル、帯電防止剤、脂肪酸金属塩、融着促進剤を添加する工程と、を含む。
【0062】
スチレン系単量体の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。懸濁重合法は、スチレン系単量体に重合開始剤を溶解して、懸濁剤を分散した水とともに、反応槽中で昇温し重合した後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。
【0063】
重合の途中および/または重合終了後に発泡剤を添加する方法は1段法と呼ばれる。発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを、反応槽の懸濁剤を分散した水中で昇温して、ここで発泡剤を添加して粒子に含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。また、小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を、懸濁剤を分散した水の入っている反応槽に投入し、昇温した後、重合開始剤を溶解した単量体を連続的に反応槽に供給して重合し、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は重合の途中および/または重合終了後に添加される。1段法、2段法(後含浸法)、シード重合法のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。また、いずれの方法によっても、真球状の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られ得るという利点がある。
【0064】
スチレン系単量体の重合における重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0065】
重合開始剤としては、分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50~80℃の範囲にある重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80~120℃の範囲にある重合開始剤とを併用してもよい。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接水性懸濁液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、無機系懸濁安定剤および/またはアニオン界面活性剤とを加え水性懸濁液として添加することが望ましい。
【0066】
シリコーンオイル、帯電防止剤、脂肪酸金属塩、融着促進剤を添加する工程としては、代表的には、シリコーンオイル、帯電防止剤、脂肪酸金属塩、融着促進剤を、上記重合により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に塗布する。シリコーンオイル、帯電防止剤、脂肪酸金属塩、融着促進剤を添加する方法としては、例えば、上記重合により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子本体と、シリコーンオイル、帯電防止剤、脂肪酸金属塩、融着促進剤とを、タンブラー、リボンブレンダー、ナウターミキサーなどの混合機もしくは撹拌機を使用して、混合する方法が挙げられる。
【0067】
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法の別の実施形態においては、発泡性スチレン系樹脂粒子は、溶融押出法により製造され得る。溶融押出法は、ポリスチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。この方法における、いずれかのタイミングで、シリコーンオイル、帯電防止剤、脂肪酸金属塩、融着促進剤を添加する。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。ホットカット法によれば、ほぼ球状の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られ得るという利点がある。
【0068】
B.予備発泡スチレン系樹脂粒子
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。
【0069】
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、表層の平均気泡径が0.04mm~0.15mmであり、好ましくは0.04mm~0.14mmであり、さらに好ましくは0.04mm~0.13mmであり、特に好ましくは0.04mm~0.12mmであり、最も好ましくは0.04mm~0.11mmである。予備発泡スチレン系樹脂粒子の表層の平均気泡径が上記範囲にあれば、発泡時や成形時のブロッキングをより防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性をより抑制しつつより良好な融着性や表面性を発現し、静電気のより少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0070】
すなわち、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、上記A項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性スチレン系樹脂粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍以上80倍未満であり、より好ましくは5倍~78倍であり、さらに好ましくは10倍~75倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率が上記範囲内にあることにより、発泡時や成形時のブロッキングをより防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性をより抑制しつつより良好な融着性や表面性を発現し、静電気のより少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0071】
発泡性スチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm3)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm3/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0072】
1つの代表的な実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡スチレン系樹脂粒子をそのまま用いる場合、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、多数の予備発泡スチレン系樹脂粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0073】
C.スチレン系樹脂発泡成形体
本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。本発明の別の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0074】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、予備発泡スチレン系樹脂粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に「発泡粒子」と称する場合がある)を含む。
【0075】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0076】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡スチレン系樹脂粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡スチレン系樹脂粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡スチレン系樹脂粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること、を含む。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡スチレン系樹脂粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0077】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.1MPaであり、より好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0078】
必要に応じて、スチレン系樹脂発泡成形体の成形前に予備発泡スチレン系樹脂粒子を熟成させてもよい。予備発泡スチレン系樹脂粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0079】
スチレン系樹脂発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍以上80倍未満であり、より好ましくは5倍~78倍であり、さらに好ましくは10~75倍である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0081】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。ここで、重量平均分子量は、ポリスチレン換算平均分子量を意味する。具体的には、以下の手順で測定した。
試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに室温24時間かけて完全溶解させた後、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上で、次の測定条件にてクロマトグラフをも用いて測定し、予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の重量平均分子量を求めた。
(測定条件)
装置:高速GPC装置(商品名:東ソー社製、HLC-8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
分析条件:
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ-H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-H(4.6mmID×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側=0.175mL/分、リファレンス側=0.175mL/分
検出器:RI検出器、試料濃度=0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0分~25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料は、東ソー社製、商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5480000、3480000、1090000、355000、102000、37900、9100、2630、および589である標準ポリスチレン試料を用いた。
上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1090000のもの)、グループB(重量平均分子量が3480000、102000、9100、および589のもの)、およびグループC(重量平均分子量が5480000、355000、37900、および2630のもの)にグループ分けした。グループAに属する重量平均分子量が1090000である標準ポリスチレン試料を5mg秤量した後に、THF20mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入した。グループBに属する重量平均分子量が3480000、102000、9100、および589である標準ポリスチレン試料をそれぞれ5mg、5mg、5mg、および10mg秤量した後に、THF50mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入した。グループCに属する重量平均分子量が5480000、355000、37900、および2630である標準ポリスチレン試料をそれぞれ1mg、5mg、5mg、及び5mg秤量した後に、THF40mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入した。これら標準ポリスチレン試料の保持時間から較正曲線(三次式)をHLC-8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC-WS)にて作成し、これをポリスチレン換算重量平均分子量測定の検量線として用いた。
【0082】
<予備発泡スチレン系樹脂粒子の表層の平均気泡径>
平均気泡径は、ASTM D2842-69の試験方法に準拠して測定した。具体的には、予備発泡スチレン系樹脂粒子の中から、任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて予備発泡スチレン系樹脂粒子の中心付近を通る平面で2等分し、その一方の切断面を走査型電子顕微鏡(日立社製、商品名「SU3900」)を用いて、予備発泡スチレン系樹脂粒子の中心から半径の50%に相当する円の外側を100倍に拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描き、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。
平均弦長t(μm)=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにした。また、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、さらに、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含めた。そして、算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出した。
平均気泡径(μm)D=t/0.616
更に、撮影した画像の任意の3箇所において上述と同様の要領で気泡径を算出し、計5画像分の気泡径の相加平均値を予備発泡スチレン系樹脂粒子の平均気泡径とした。
【0083】
<予備発泡スチレン系樹脂粒子の帯電性評価>
発泡直後の発泡粒子(予備発泡スチレン系樹脂粒子)25Lを気流乾燥機にて5分間乾燥させることにより、発泡粒表面の水分を除去した後、すぐに直径25mm長さ450mmの塩化ビニル製パイプを10秒間差し込み25回/10秒の速さで30秒間攪拌した後、パイプを10秒間かけて取り出し、このパイプに付着した発泡粒子(予備発泡スチレン系樹脂粒子)の数量を測定した。
予備発泡スチレン系樹脂粒子の帯電性の評価は以下の通りとした。
5個未満:5
5個以上10個未満:4
10個以上20個未満:3
20個以上30個未満:2
30個以上:1
【0084】
<予備発泡スチレン系樹脂粒子のブロッキング性評価>
発泡性スチレン系樹脂粒子W1(g)を発泡した直後、目開き10mmの篩にかけ、その上に残留した予備発泡スチレン系樹脂粒子の重量W2(g)を測定した。
以下の式にてブロッキング率B(%)を測定した。
B(%)=(W2/W1)×100
予備発泡スチレン系樹脂粒子のブロッキング性の評価は以下の通りとした。
2%未満:5
2%以上5%未満:4
5%以上8%未満:3
8%以上10%未満:2
10%以上:1
【0085】
<スチレン系樹脂発泡成形体の帯電性評価>
成形後のスチレン系樹脂発泡成形体を室温23℃、湿度50%の場所で12時間保管し、スチレン系樹脂発泡成形体の2枚の平滑な表面同士を36回/10秒間擦り合わせ、それら成形体3組(合計6枚)を厚み21μmのポリエチレン製の袋(ケミカルジャパン社製)に入れ、この袋に接着する成形体の個数を数えた。
スチレン系樹脂発泡成形体の帯電性の評価は以下の通りとした。
1個以下:5
2個以上3個未満:4
3個以上4個未満:3
4個以上5個未満:2
5個以上6個以下:1
【0086】
<スチレン系樹脂発泡成形体の融着性評価>
幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約2mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って該スチレン系樹脂発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100~150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。
スチレン系樹脂発泡成形体の融着性の評価は以下の通りとした。
80%以上:5
60%以上80%未満:4
50%以上60%未満:3
30%以上50%未満:2
30%未満:1
【0087】
<スチレン系樹脂発泡成形体の表面性評価>
幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面(300mm×400mmの面)の発泡粒子間において2mm以上の隙間を要する数で表面性を評価した。
スチレン系樹脂発泡成形体の表面性の評価は以下の通りとした。
5個未満:5
5個以上10個未満:4
10個以上15個未満:3
15個以上20個未満:2
20個以上:1
【0088】
〔実施例1〕
<発泡性スチレン系樹脂粒子本体の作製>
内容積100リットルの攪拌機付反応器にリン酸三カルシウム120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1g、過酸化ベンゾイル(純度75%)140g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、粒子径が0.5mm~0.7mmとなるように撹拌することにより懸濁液を形成した。その後、反応器内の温度を90℃まで昇温した後、6時間保持した。その後、さらに反応器内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して粒子径が0.5mm~0.7mmで重量平均分子量が30万のスチレン系樹脂粒子を得た。
100リットルの攪拌機付反応器に純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、上記で得られたスチレン系樹脂粒子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。
次いで、予め用意しておいた乳濁液を80℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)137g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート34gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。
その後、ポリスチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを180分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、上記80℃から120℃まで0.22℃/分の割合で昇温した。次に、125℃に昇温し、その温度を120分保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、ピロリン酸マグネシウム15gの分散液に、エチレンビスステアリン酸アマイド38gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。
この乳濁液を添加した後、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3ジブロモ,2メチルプロピルエーテル)915g、ジクミルパーオキサイド340gを投入し、30分間保持した。その後、発泡剤として、ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)1910gとペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン=20/80)765gとを圧入し、その状態で15分保持した後、80℃まで昇温した後、6時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性スチレン系樹脂粒子本体を得た。
<発泡性スチレン系樹脂粒子の作製>
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子本体:100質量部に対し、
メチルフェニルポリシロキサン:0.01質量部、
ポリエチレングリコール:0.02質量部、
ステアリン酸モノグリセライド:0.10質量部
ステアリン酸亜鉛:0.05質量部、
ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド:0.30質量部、
を塗布し、発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を、13℃の恒温室にて5日間放置した。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を加熱して、嵩密度0.033g/cm3に予備発泡(嵩発泡倍率=30倍)させ、予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を20℃で24時間熟成させ、続いて、室温雰囲気下、24時間放置した後、型内発泡成形を行った。型内発泡成形には積水工機社製のACE-3SP成形機を用い、幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状に発泡成形した。加熱時間は15秒とし、成形圧(蒸気吹き込みゲージ圧)を0.07MPaとした。これにより、スチレン系樹脂発泡成形体(1)を得た。
結果を表1に示した。なお、表1中の「量」は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体:100質量部に対する量(質量部)である。
【0089】
〔実施例2~10〕
発泡性スチレン系樹脂粒子本体への添加剤の量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(2)~(10)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(2)~(10)、スチレン系樹脂発泡成形体(2)~(10)を得た。
結果を表1に示した。
【0090】
〔比較例1~9〕
発泡性スチレン系樹脂粒子本体への添加剤の量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子(C1)~(C9)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C1)~(C9)、スチレン系樹脂発泡成形体(C1)~(C9)を得た。
結果を表2に示した。なお、表2中の「量」は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体:100質量部に対する量(質量部)である。
【0091】
【0092】
【0093】
表1、2から明らかなように、本発明によれば、発泡性スチレン系樹脂粒子本体が、特定量のシリコーンオイル、特定量の帯電防止剤、特定量の脂肪酸金属塩、および特定量の融着促進剤が併用されて被覆されていることにより、発泡時や成形時のブロッキングを防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性を抑制しつつ良好な融着性や表面性を発現し、静電気の少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、発泡性スチレン系樹脂粒子および予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。