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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】測距装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240124BHJP
【FI】
G06T19/00 600
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020054348
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021157270
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】八木 正彰
(72)【発明者】
【氏名】國近 京輔
(72)【発明者】
【氏名】ラムサル ビカス
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-532382(JP,A)
【文献】特開2007-293453(JP,A)
【文献】特開2012-128779(JP,A)
【文献】特開2008-040556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置により現実空間を撮影した撮影画像に、現実空間との位置合わせがされた仮想空間上の3Dモデルを、前記撮影画像が撮影された際の前記撮影装置の位置及び姿勢に応じてレンダリングして重畳する重畳手段と、
前記撮影画像内の現実空間について面検出を行い、検出された面と前記3Dモデルとの間の距離を計測する計測手段と、
を有する測距装置であって、
前記測距装置は、前記撮影装置として機能する携帯端末であり、
前記3Dモデルと、計測対象の前記3Dモデルを指定するためのポインタとを重畳した前記撮影画像を表示する表示手段を有し、
前記計測手段は、前記表示手段で表示される前記3Dモデルが前記測距装置の移動により前記ポインタの位置に来た時に、当該3Dモデルと前記面との間の距離を計測し、
前記表示手段は、計測された前記距離をさらに表示することを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記計測手段は、前記ポインタに対応する前記3Dモデルの表面上の位置を、前記測距装置の移動に関わらず計測対象として固定できることを特徴とする請求項記載の測距装置。
【請求項3】
撮影装置として機能する携帯端末を、
前記携帯端末により現実空間を撮影した撮影画像に、現実空間との位置合わせがされた仮想空間上の3Dモデルを、前記撮影画像が撮影された際の前記携帯端末の位置及び姿勢に応じてレンダリングして重畳する重畳手段と、
前記撮影画像内の現実空間について面検出を行い、検出された面と前記3Dモデルとの間の距離を計測する計測手段と、
前記3Dモデルと、計測対象の前記3Dモデルを指定するためのポインタとを重畳した前記撮影画像を表示する表示手段と、
を有し、
前記計測手段は、前記表示手段で表示される前記3Dモデルが前記携帯端末の移動により前記ポインタの位置に来た時に、当該3Dモデルと前記面との間の距離を計測し、
前記表示手段は、計測された前記距離をさらに表示することを特徴とする測距装置として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
前記計測手段は、前記ポインタに対応する前記3Dモデルの表面上の位置を、前記携帯端末の移動に関わらず計測対象として固定できることを特徴とする請求項3記載のプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離計測を行う測距装置とそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物のリニューアル工事などにおいては、しばしば、壁や設備配管等の既存物の状態が、施工誤差や予定外の増設等により手元の図面と異なっているケースに遭遇する。また新設工事においても、施工現場の隣接建物の外壁などに手元の図面には掲載されていない設備が後付けされていることがある。
【0003】
このようなケースでは、既存物と新設予定物との間の距離を把握したい、というニーズがある。既存物と新設予定物との間の距離を把握するためには、特許文献1に示すように、現実空間の撮影画像に新設予定の仮想物の3Dモデルをレンダリングして重畳するAR(Augmented Reality)システムの活用が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-11564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように現実空間の撮影画像に新設予定の仮想物の3Dモデルを重畳して表示することで、既存物と仮想物の間の距離を目視で把握できるが、両者間の距離を知るためには、その距離の値が計測されることが望ましい。
【0006】
ここで、既存物と仮想物の間の距離を計測するためには、仮想物だけでなく現実空間の外形も3Dモデル化されている必要がある。この3Dモデル化については、例えばドローンによる現場測量データの作成、3Dレーザースキャナーによる3Dモデルの作成などの方法が公知技術として存在する。しかしながら、これらの技術を適用するには専用の機械や専門の技術を要し、データ作成に手間やコストがかかるので誰もが容易に出来るわけではない。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、現実空間の既存物と仮想物の間の距離を簡易に計測できる測距装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、撮影装置により現実空間を撮影した撮影画像に、現実空間との位置合わせがされた仮想空間上の3Dモデルを、前記撮影画像が撮影された際の前記撮影装置の位置及び姿勢に応じてレンダリングして重畳する重畳手段と、前記撮影画像内の現実空間について面検出を行い、検出された面と前記3Dモデルとの間の距離を計測する計測手段と、を有する測距装置であって、前記測距装置は、前記撮影装置として機能する携帯端末であり、前記3Dモデルと、計測対象の前記3Dモデルを指定するためのポインタとを重畳した前記撮影画像を表示する表示手段を有し、前記計測手段は、前記表示手段で表示される前記3Dモデルが前記測距装置の移動により前記ポインタの位置に来た時に、当該3Dモデルと前記面との間の距離を計測し、前記表示手段は、計測された前記距離をさらに表示することを特徴とする測距装置である。
【0009】
本発明では、仮想物の3Dモデルをレンダリングして現実空間の撮影画像に重畳するARシステムにおいて、現実空間の面検出を行い、検出された面と3Dモデルとの間の距離を計測することで、現実空間の既存物と仮想物の間の距離を知ることができる。また距離計測においては現実空間の全ての外形を再現することは必要でなく、計測対象の面だけを検出すれば十分であり、本発明では現実空間の面を検出し、3Dモデルとの間の距離を計測することで、ユーザの操作を簡易化して距離計測に必要な手間を削減でき、迅速に距離計測を行うことができる。
【0010】
本発明では、タブレット端末やスマートフォンなどのカメラ付きの携帯端末を測距装置として用いることができ、その表示手段により、現実空間の撮影画像に3Dモデルを重畳して表示することができる。また本発明では、計測対象の3Dモデルを指定するためのポインタをさらに重畳して表示させ、測距装置の移動によって3Dモデルの位置をポインタに合わせることで当該3Dモデルと検出された面との間の距離が計測、表示されるので、計測対象の3Dモデルの指定が直感的な操作で行えるようになり、ユーザ操作の簡易化につながる。
【0011】
前記計測手段は、前記ポインタに対応する前記3Dモデルの表面上の位置を、前記測距装置の移動に関わらず計測対象として固定できることが望ましい。
これにより、手振れなどの影響で計測される距離が変わってしまうのを防ぐことができる。
【0012】
第2の発明は、撮影装置として機能する携帯端末を、前記携帯端末により現実空間を撮影した撮影画像に、現実空間との位置合わせがされた仮想空間上の3Dモデルを、前記撮影画像が撮影された際の前記携帯端末の位置及び姿勢に応じてレンダリングして重畳する重畳手段と、前記撮影画像内の現実空間について面検出を行い、検出された面と前記3Dモデルとの間の距離を計測する計測手段と、前記3Dモデルと、計測対象の前記3Dモデルを指定するためのポインタとを重畳した前記撮影画像を表示する表示手段と、を有し、前記計測手段は、前記表示手段で表示される前記3Dモデルが前記携帯端末の移動により前記ポインタの位置に来た時に、当該3Dモデルと前記面との間の距離を計測し、前記表示手段は、計測された前記距離をさらに表示することを特徴とする測距装置として機能させるためのプログラムである。
前記計測手段は、前記ポインタに対応する前記3Dモデルの表面上の位置を、前記携帯端末の移動に関わらず計測対象として固定できることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、現実空間の既存物と仮想物の間の距離を簡易に計測できる測距装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】測距システム1を示す図。
図2】測距装置3として用いる携帯端末、およびサーバ5のハードウェア構成を示す図。
図3】測距システム1の機能構成を示す図。
図4】測距方法を示すフローチャート。
図5】測距方法について説明する図。
図6】測距方法について説明する図。
図7】測距装置3の表示画面の例。
図8】距離計測について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.測距システム1)
図1は本発明の実施形態に係る測距装置3を含む測距システム1を示す図である。測距システム1は現実空間の既存物と仮想物の3Dモデルとの間の距離計測を行うものであり、測距装置3とサーバ5がネットワークを介して通信可能に接続された構成を有する。本実施形態では上記の現実空間を施工現場とし、仮想物を当該施工現場に新設する予定の新設予定物とするが、これに限ることはない。
【0017】
測距装置3は、タブレット端末やスマートフォンなど、撮影装置としても機能するカメラ付きの携帯端末である。
【0018】
図2(a)は、測距装置3として用いる携帯端末のハードウェア構成を示す図である。携帯端末は、例えば制御部31、記憶部32、表示部33、入力部34、カメラ35、音声入出力部36、通信部37、センサ38等をバスにより接続して構成されたコンピュータにより実現できる。ただし携帯端末の構成はこれに限定されず、適宜変更可能である。
【0019】
制御部31は、CPU、ROM、RAM等を備える。CPUは、記憶部32、ROM等の記憶媒体に格納されたプログラムをRAM上のワークエリアに呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部32、ROM等からロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部31が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0020】
記憶部32はフラッシュメモリ等であり、測距装置3が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS等が格納される。これらのプログラムやデータは、制御部31により必要に応じて読み出され実行される。記憶部32には、後述する図4に示す処理を実行するための専用のアプリケーションなども格納される。
【0021】
表示部33は液晶パネル等のディスプレイ装置を有し、測距装置3に入力を行うための入力部34としてタッチパネルが設けられている。
【0022】
カメラ35は、光学レンズ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子、A/D(Analog/Digital)変換部等から構成されるエリアカメラである。カメラ35は、光学レンズを介して入力された被写体像を撮像素子により光電変換し、アナログ画像信号を生成する。そして、A/D変換部によりアナログ画像信号をデジタル画像データに変換する。
【0023】
音声入出力部36は、音声を入力するマイクや音声を出力するスピーカー等を備える。
【0024】
通信部37は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークを介した測距装置3とサーバ5との間の通信を媒介する。
【0025】
センサ38は例えば加速度センサやジャイロセンサであり、測距装置3の移動に伴う測距装置3の位置と姿勢の変化を測定する。
【0026】
図1の説明に戻る。サーバ5は、測距システム1での処理に必要な仮想物の3Dモデル等のデータの格納、ユーザアカウントの管理等を行うものである。
【0027】
図2(b)はサーバ5のハードウェア構成を示す図である。サーバ5は制御部51、記憶部52、通信部53等をバスにより接続して構成したコンピュータにより実現できる。ただしサーバ5の構成はこれに限定されず、適宜変更可能である。またサーバ5が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。
【0028】
制御部51、記憶部52、通信部53の機能は、前記した制御部31、記憶部32、通信部37と同様である。また本実施形態では記憶部52に仮想物の3Dモデル101が格納される。この3Dモデル101については後述する。
【0029】
(2.測距システム1の機能)
図3は測距システム1の機能構成を示す図である。図3に示すように、測距システム1において、測距装置3は重畳手段310、表示手段320、計測手段330等を有する。なお測距装置3の上記各手段は、前記したアプリケーションの機能によって実現できる。
【0030】
重畳手段310は、測距装置3の制御部31が、現実空間を撮影した撮影画像に、現実空間との位置合わせがされた仮想空間上の仮想物の3Dモデル101を、撮影画像が撮影された際の測距装置3の位置及び姿勢に応じてレンダリングして重畳するものである。
【0031】
表示手段320は、測距装置3の制御部31が、3Dモデル101とポインタを重畳した上記の撮影画像を、表示部33にて表示するものである。ポインタは距離計測の対象となる3Dモデル101を指定するためのものであるが、その詳細については後述する。
【0032】
計測手段330は、測距装置3の制御部31が、撮影画像内の現実空間について面検出を行い、検出された面と3Dモデル101との間の距離を計測するものである。上記の表示手段320は、計測された距離も表示部33にて表示する。
【0033】
(3.測距方法)
次に、本実施形態の測距装置3によって実行される測距方法について図4等を参照して説明する。図4は測距方法を示すフローチャートであり、図の各ステップは測距装置3の制御部31が測距装置3の各部を制御して実行する。
【0034】
本実施形態において、ユーザは、まず測距装置3を操作して前記のアプリケーションを立ち上げる。測距装置3は、アプリケーションを起動させると、ユーザの操作に応じてサーバ5にアクセスし、仮想物の3Dモデル101をダウンロードする(S1)。
【0035】
図5(a)はこの3Dモデル101の例であり、本実施形態では、施工現場に新設する予定の仮想物の3Dモデル101の形状と位置が、直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)の座標系を有する仮想空間100上で定められている。仮想空間100の座標は例えばmm単位で表され、3Dモデル101は実物大の仮想物を示すものである。3Dモデル101は個々の施工現場に応じて作成され、記憶部52に記憶される。
【0036】
ユーザは、測距装置3を操作し、図5(b)に示すように、3Dモデル101の存在する仮想空間100においてARマーカーに対応する基準点102の位置を設定し、測距装置3はこの基準点102の設定を受け付ける(S2)。またユーザは、図5(c)に示すように、施工現場200において、所定のARマーカー202を適切な位置に配置する。なお図5(c)の符号201は施工現場200に存在する既存物を示す。
【0037】
ARマーカー202は、仮想空間100と現実空間(施工現場200)との位置合わせのために用いられる。ARマーカー202を用いた位置合わせの技術は既知であり、仮想空間100の3Dモデル101と現実空間の既存物201を互いの空間において定位できるようになる。図8(a)は、仮想空間100の3Dモデル101が現実空間において定位されることを示したものであり、基準点102に対する3Dモデル101の位置が、施工現場200においてはARマーカー202に対する3Dモデル101の位置ということになる。
【0038】
測距装置3は、ユーザの操作に応じてカメラ35を起動し、施工現場200のARマーカー202を撮影する(S3)。この撮影は動画撮影であり、測距装置3は、図6(a)に示すようにARマーカー202が撮影された(画面に入り込んだ)ことを検知すると、撮影されたARマーカー202の大きさや形状から、測距装置3に対するARマーカー202の相対的な位置と姿勢、逆に言うとARマーカー202に対する測距装置3の相対的な位置(撮影位置)と姿勢(撮影方向)を算出することができる(S4)。
【0039】
これにより、測距装置3は、図6(b)に示すように、仮想空間100における仮想の測距装置3の位置と姿勢を、(ARマーカー202に対応する)基準点102に対する位置と姿勢として算出でき(S5)、算出した位置と姿勢から仮想空間100のレンダリング範囲すなわち仮想の測距装置3の撮影範囲を確定できる。
【0040】
ユーザが測距装置3を移動させると、測距装置3は、施工現場200を撮影しつつ、測距装置3の位置と姿勢の変化をセンサ38により測定する。測距装置3は、センサ38による測定結果を用い、S5で算出した仮想の測距装置3の位置と姿勢を測距装置3の移動に応じて修正する(S6)。
【0041】
測距装置3は、例えば施工現場200において測距装置3を図6(c)に示すように移動させたときに、図6(d)に示すように仮想空間100のレンダリング範囲に3Dモデル101が含まれるような位置になると、その時の施工現場200の撮影画像に3Dモデル101をレンダリングして重畳し(S7)、3Dモデル101を重畳した撮影画像を表示部33で表示させる(S8)。
【0042】
図7(a)はこの時表示部33で表示される表示画面の例である。表示部33では、施工現場200の撮影画像に仮想物の3Dモデル101が重畳して表示され、施工現場200に仮想物が実在するかのようなAR表示がなされる。3Dモデル101が表示される位置と形状は、仮想空間100において仮想の測距装置3から3Dモデル101を撮影した場合の位置と形状であり、仮想の測距装置3の位置および姿勢を用いて演算できる。
【0043】
また表示部33には、測距ボタン331、キャプチャボタン332、ロックボタン333、透過率調整スライダ334、回転ボタン335、336、平面位置調整ボタン337、高さ調整ボタン338などの各種のボタンも表示される。
【0044】
測距ボタン331は距離計測を行うためのボタンである。この距離計測については後述する。
【0045】
キャプチャボタン332は、表示部33に表示されている画像を静止画として取得するものである。静止画として取得される画像には、表示部33に表示されている3Dモデル101や上記計測された距離なども含まれる。
【0046】
ロックボタン333は、3Dモデル101について、距離の計測対象を固定するためのボタンである。
【0047】
透過率調整スライダ334は3Dモデル101の透過率を調整するためのスライダである。3Dモデル101の透過率を高くすれば3Dモデル101の背後の施工現場200が視認でき、透過率を低くすれば3Dモデル101の背後の施工現場200が3Dモデル101に遮られて視認できなくなる。
【0048】
回転ボタン335、336、平面位置調整ボタン337、高さ調整ボタン338はそれぞれ3Dモデル101の配置を調整するためのボタンであり、回転ボタン335、336により3Dモデル101の向きが、平面位置調整ボタン337により3Dモデル101の平面位置が、高さ調整ボタン338により3Dモデル101の高さがそれぞれ調整できる。
【0049】
フローチャートの説明に戻る。距離計測を行う際、ユーザは前記した測距ボタン331をタップするなどして選択する。測距装置3はその選択を受け付け、所定位置へのポインタの表示(S9)と施工現場200における面検出を行う(S10)。
【0050】
ポインタは、距離の計測対象の3Dモデル101を指定するためのものであり、本実施形態において、測距装置3は図7(b)の符号339で示すように画面中央部にボール状のポインタを表示させる。このポインタ339は、画面法線方向に延びるレーザーの断面をイメージしたものであり、ユーザの直感的な操作性を向上させるため、画面中央部に表示されるようにしている。
【0051】
S10の面検出については、PTAM(Parallel Tracking and Mapping)等の既知の技術を用いることができ、ここでは詳細な説明を省略する。本実施形態では、S10の面検出処理により、図7(b)のグレー部分で示すように既存物201の面Aの測距装置3に対する位置と姿勢が検出されるものとする。ここでは検出される面Aが水平面であるが、検出される面は垂直面であっても傾斜面であってもよい。検出された面Aは、色付き表示などの識別表示を行うことで、検出されたものであることを識別可能とする。
【0052】
ユーザは、測距装置3を移動させて図7(c)に示すように3Dモデル101をポインタ339の位置に合わせることで、距離の計測対象となる3Dモデル101を指定することができる。
【0053】
図7(b)のポインタ339に対応する上記のレーザーを仮想空間100で示したものが図6(d)の符号Bであり、レーザーBは3Dモデル101を通らない。しかし、図7(c)に示すようにポインタ339を3Dモデル101の位置に合わせることで、図6(d)の符号B’に示すようにレーザーが3Dモデル101の表面上の位置103に突き当たる。測距装置3は、ポインタ339に対応するこのような3Dモデル101の表面上の位置103を、仮想の測距装置3の位置と姿勢を用いた演算により求め、ユーザにより指定された計測対象とする。こうして、測距装置3は計測対象の3Dモデル101の指定を受け付ける(S11)。
【0054】
測距装置3は、計測対象の3Dモデル101の指定を受け付けると、図8(b)に示すように、指定された3Dモデル101の表面上の位置103とS10で検出した既存物201の面Aの間の距離(最短距離)Dを算出し(S12)、図7(d)にて「+165mm」と示されるように計測した距離Dを表示する(S13)。算出した距離Dは、測距装置3の記憶部32に格納し、後で参照することも可能である。
【0055】
また本実施形態では、表示部33に表示されるロックボタン333を選択することで、計測対象として指定された3Dモデル101の表面上の位置103を、測距装置3の移動に関わらず固定することができる。そのため、計測される距離Dが手振れなどの影響により変わってしまうことがない。
【0056】
本実施形態に係る測距システム1は、3Dモデル101の設定により、様々な場面で適用できる。例えば、建物のリニューアル工事時に新設予定の壁(3Dモデル101)と既存壁の距離の計測を行ったり、敷地境界までの距離が少ない施工現場において新設建物躯体(3Dモデル101)と隣接建物との距離を計測し新築工事での仮設計画や工法選定を行ったり、既存建物に新しい設備機器を設置するために新設機器(3Dモデル101)と現状の設備機器との干渉の有無を定量的に確認したりする際に用いることができる。その他、土木工事においても、掘削工事時の掘削精度管理のため、目標掘削面(3Dモデル101)と現状の掘削面との間の距離計測を行ったりすることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、仮想物の3Dモデル101をレンダリングして現実空間の撮影画像に重畳するARシステムにおいて、現実空間の面検出を行い、検出された面Aと3Dモデル101の間の距離Dを計測することで、現実空間の既存物201と仮想物の間の距離を知ることができる。
【0058】
また距離計測においては現実空間の全ての外形を再現することは必要でなく、計測対象の面だけを検出すれば十分であり、本実施形態では現実空間の面Aを検出し、3Dモデル101との間の距離Dを計測することで、ユーザの操作を簡易化して距離計測に必要な手間を削減でき、迅速に距離計測を行うことができる。
【0059】
また本実施形態では、タブレット端末やスマートフォンなどのカメラ付きの携帯端末を測距装置3として用いることができ、その表示手段320により、現実空間の撮影画像に3Dモデル101を重畳して表示することができる。
【0060】
また本実施形態では、計測対象の3Dモデル101を指定するためのポインタ339をさらに重畳して表示させ、測距装置3の移動によって3Dモデル101の位置をポインタ339に合わせることで当該3Dモデル101と上記検出された面Aとの間の距離Dが計測、表示されるので、計測対象の3Dモデル101の指定が直感的な操作で行えるようになり、ユーザ操作の簡易化につながる。
【0061】
また本実施形態では、前記のロックボタン333を選択することで、ポインタ339により計測対象として指定された3Dモデル101の表面上の位置103を、測距装置3の移動に関わらず計測対象として固定でき、手振れなどの影響により計測される距離Dが変わってしまうのを防ぐことができる。
【0062】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限らない。例えば、現実空間における2以上の面Aを検出してこれらの面Aと3Dモデル101の間の距離を計測することも可能である。また、前記のポインタ339を表示させず、表示部33の画面上でタップされた位置に対応する3Dモデル101と面Aとの間の距離や、画面上でタップされた2つの位置に対応する2つの3Dモデル101の間の距離を計測することも可能である。
【0063】
また本実施形態ではタブレット端末やスマートフォンなどのカメラ付きの携帯端末を用いて3Dモデル101の重畳や距離計測に係る処理を行っているが、これらの処理はサーバ5によって行うこともできる。すなわち、サーバ5を前記したS4~S7、S10~12の処理(重畳手段310、計測手段330に対応する)を行う測距装置として機能させることもでき、携帯端末は、施工現場200の撮影画像をはじめとする上記処理に必要なデータをサーバ5に送信する。携帯端末は、3Dモデル101を重畳した撮影画像や距離計測の結果をサーバ5から受信してAR表示を行うことができる。
【0064】
さらに、S5においてセンサ38の測定結果から仮想の測距装置3の位置等を修正した結果、誤差が大きくなる場合には、前記したARマーカー202以外の修正用マーカーに基づく修正を行ってもよい。その方法は前記と同様であり、例えば施工現場200において修正用マーカーを撮影した際に、撮影された修正用マーカーの大きさや形状から修正用マーカーに対する測距装置3の位置と姿勢を求めることで、仮想空間上の基準点(修正用マーカーに対応して予め設定される)に対する仮想の測距装置3の位置と姿勢を前記と同様に求めることができ、これを正とした修正を行うことができる。
【0065】
複数の修正用マーカーを設ける場合には、これらの修正用マーカーを同種のものとしてもよい。この場合、測距装置3はいずれかの修正用マーカーを撮影すると、撮影した修正用マーカーの大きさや形状から測距装置3に対する修正用マーカーの位置を求め、これにより、仮想空間100における修正用マーカーの位置を、仮想の測距装置3に対する位置として算出することができる。そして、測距装置3は、撮影した修正用マーカーが、複数の修正用マーカーのうち上記算出した位置と最も近い位置に基準点が設定されている修正用マーカーであったと推定し、前記と同様の修正を行うことができる。
【0066】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
1:測距システム
3:測距装置
5:サーバ
100:仮想空間
101:3Dモデル
102:基準点
200:施工現場
201:既存物
202:ARマーカー
310:重畳手段
320:表示手段
330:計測手段
339:ポインタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8