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特許7425647クリーンルーム及びクリーンルームの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】クリーンルーム及びクリーンルームの使用方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240124BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240124BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20240124BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240124BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F13/02 C
F24F13/08 B
F24F7/10 Z
F24F7/10 101Z
F24F3/044
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020056777
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156488
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中澤 賢
(72)【発明者】
【氏名】中岡 将士
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-141730(JP,A)
【文献】特開2004-093079(JP,A)
【文献】実開平05-044486(JP,U)
【文献】特開2009-293832(JP,A)
【文献】特開2000-300101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 13/02
F24F 13/08
F24F 7/10
F24F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井(2)より下の室内が密閉され、前記天井(2)に空調空気を室内に供給する給気口(3)、及び室内空気を室外に排気するための排気ダクト接続口(4)が設けられたクリーンルーム1において、
前記クリーンルーム(1)の壁面四面のうち少なくとも三面を構成する側板(5)を外板(5a)と内板(5b)からなる2重構造とし、
前記内板(5b)には、全面にわたってクリーンルーム(1)内の室内空気を吸い込む吸込孔(6)が設けられ、
前記側板(5)の外板(5a)と内板(5b)の間には、前記吸込孔(6)から吸い込まれた室内空気を前記排気ダクト接続口(4)へ流すレタンシャフト(7)が構成され、
クリーンルーム(1)内の室内空気が、前記吸込孔(6)から前記レタンシャフト(7)内に流出するのを防止するために内板(5)の表面又は裏面に位置するように密閉性を有するシート又は板体からなる空気流出防止手段(8)が設けられ、
前記空気流出防止手段(8)にクリーンルーム(1)から排出したい空気量に対応した大きさ、形状を備えた空気排出部(8a)が設けられていることを特徴とするクリーンルーム。
【請求項2】
前記排気ダクト接続口(4)から排出される室内空気のうち一部が還気として温調する空調機に戻され、採り入れた外気とともに空調空気として室内に供給されることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルーム。
【請求項3】
天井(2)より下の室内が密閉され、天井(2)に空調空気を室内に供給する給気口(3)、及び室内空気を室外に排気するための排気ダクト接続口(4)が設けられたクリーンルームにおいて、
該クリーンルームの壁面四面のうち少なくとも面が外板(5a)と内板(5b)からなる2重構造の側板(5)と、前記内板(5b)の全面にわたって設けられたクリーンルーム内の空調空気を吸い込む吸込孔(6)と、前記側板(5)の外板(5a)と内板(5b)の間に形成される前記吸込孔(6)から吸い込まれた室内空気を前記排気ダクト接続口(4)へ流すレタンシャフト(7)と、 クリーンルーム内に仕器や機材を配置したり、移動したり、または、台数を変更したりする場合に、前記クリーンルーム内の室内空気が、前記吸込孔(6)から前記レタンシャフト(7)内に流出するのを防止するために内板(5)の一部の表面又は裏面に位置するよう設けられた密閉性を有するシート又は板体からなる空気流出防止手段(8)と、
前記空気流出防止手段(8)にクリーンルーム(1)から排出したい空気量に対応した大きさ、形状を備えた空気排出部(8a)とを備えたクリーンルームの使用方法であって、
当該空気排出部(8a)を介して前記クリーンルーム(1)内を流れる空調空気を前記内板(5b)に設けられた吸込孔(6)から吸い込ませ、前記レタンシャフト(7)を通して前記排気ダクト接続口(4)へ排出することを特徴とするクリーンルームの使用方法。
【請求項4】
前記密閉性を有するシート又は板体からなる空気流出防止手段(8)の空気排出部(8a)の位置を変更する場合に、前記空気流出防止手段(8)を張り替えることを特徴とする請求項3に記載のクリーンルームの使用方法。
【請求項5】
前記空気流出防止手段(8)に、
左右の側板(11A、11B)、背板(12)、天板(13)及び底板(14)から構成された前面が解放された断面コ字状の直方体からなり、前記背板(12)に全面にわたって孔(12a)が設けられたインキュベータ用ラック(10)の背板(12)とほぼ同一の大きさの空気排出部(8a)が形成され、
前記空気排出部(8a)を介して前記インキュベータ用ラック(10)の背板(12)を、前記クリーンルーム(1)の側板(5)の内板(5b)に当接して設置することを特徴とする請求項3又は4に記載のクリーンルームの使用方法。
【請求項6】
前記インキュベータ用ラック(10)にインキュベータを載置し、該インキュベータの表面を排気が舐めながら前記背板(12)を通じて前記内板の前記吸込孔(6)へ吸い込ませて室内空気を前記排気ダクト接続口(4)へ排出することを特徴とする請求項5に記載のクリーンルームの使用方法。
【請求項7】
前記排気ダクト接続口(4)から排出される室内空気のうち一部が還気として温調する空調機に戻され、採り入れた外気とともに空調空気として室内に供給されることを特徴とする請求項3乃至請求項6の何れか一項に記載のクリーンルームの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム及びクリーンルームの使用方法に関し、特にiPS細胞やES細胞をはじめとする幹細胞の培養を基に、再生医療等製品や薬剤の開発研究を行う研究施設における再生医療の細胞加工室クリーンルームにおいて、該クリーンルームに配置されている安全キャビネット等の装置類の移動や増設等があっても、細胞加工操作における微生物汚染リスクの低減ができるようクリーンルーム内の空気気流を制御することができるクリーンルーム及びそのクリーンルームの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
iPS細胞やES細胞をはじめとする幹細胞の培養を基に、再生医療等製品や薬剤の開発研究を行う研究施設における再生医療の細胞加工室クリーンルーム(以下、単に「細胞加工室クリーンルーム」という)においては、検体としての細胞などを取り扱う際、多くの場合、有害な微生物による汚染を防止するためのバリア装置として、安全キャビネット等を設置し作業を行う環境を構成している。
安全キャビネットを設置した細胞加工室クリーンルーム内の空気清浄度は、厚生労働省「再生医療等製品の無菌製造法に関する指針」においては、ISO基準(14644-1)におけるISO7(作業時)に設定されている。有害な微生物は、栄養と環境があれば増殖するものの、固体である。よって所定空間内に空気に埃などに付着などして入る際に塵埃として除塵できるもので、除塵したフィルタ後流へ漏れなければ所定空間への侵入を防止できる。通常、微生物の気流からの除去にはHEPAフィルタを通過させると除去できる。
【0003】
例えば、本願出願人らが実施する従来の細胞加工室クリーンルームでは、その清浄度を維持するため、フィルタでろ過した空気を天井に設けられた給気口から室内に大量に供給し、室内で発生した有害な微生物を含む塵埃を該クリーンルームの4隅の壁面下部に設けられた4箇所の吸込口から還気・排気することにより、いち早く塵埃を排出させて還気通路や排気出口前に設置したフィルタに還流して除去し、還気の場合はその清浄化した空気と清浄化した外気とを空調機にて温調し再度クリーンルームに循環させてクリーンルーム内の空気清浄度を前記ガイドラインに適合させて維持するよう構成している。
なお、この場合におけるクリーンルームへの給気風量は、1時間当たり当該クリーンルームの室内容積の30~150倍(換気回数:30~150回/時間)に相当するほどの大風量となっている。
【0004】
前記細胞加工室クリーンルームにおいて、クリーンルーム内の微生物汚染を引き起こす要因の一つとして、クリーンルーム内に設置されることの多いインキュベータが挙げられる。
これは恒温恒湿で細胞を培養する環境を維持する装置であって、本来の意図と異なり、恒温恒湿条件が哺乳類などの体温近辺である35~40℃で高湿度であることが多く、有害なカビ等の微生物を増殖させてしまうことがある。このとき安全キャビネット等の無菌操作等区域側に流れる気流となっている場合、細胞加工操作における微生物汚染となるリスクがあるために、室内の気流の設定が重要となる。
【0005】
また、細胞加工室クリーンルームでは、検体間(異なる患者の細胞)の取り違え・交叉汚染は、絶対にあってはならず、基本的には同一室内で複数検体を同時に取り扱うことを行わない。
そのため、従来のクリーンルームにおいては、1ルームに1台の安全キャビネット等を設置して上記諸条件に対応させることが一般的であった。
【0006】
しかし、最近では、iPS細胞やES細胞など幹細胞を用いた再生医療等製品や薬剤の開発研究が盛んに行われるようになっているために、細胞加工室クリーンルームにおける作業の需要が増大してきている。
また、生産を想定する場合では効率や合理化が要求されるようになり、従来のように1クリーンルームに安全キャビネット1台を配設するのでは、1人の患者の細胞の作業しかできず、引き続き他の患者の細胞を扱う場合には、作業し終えたクリーンルームを出て更衣室で更衣した後、別のクリーンルームに移動して作業を行うなど、交叉汚染を防ぐ手順を行う必要がある。
そのため、作業効率の上でも、また取り扱う検体数や品目を増やすためにも、施設や設備を増設し、1クリーンルームに複数の安全キャビネット等を配置しなければならないといった経済面での問題も出てきた。
【0007】
このような問題に対応するため、1つの細胞加工室クリーンルーム内で複数の培養操作の作業が行えるように複数の安全キャビネットを配設した大部屋方式の細胞加工室クリーンルームが開発されている。
図7及び図8は、従来の細胞加工室クリーンルームの横断面図とクリーンルームにおける安全キャビネット、インキュベータ、冷蔵庫等の配置図である。
図7及び図8に示すように、細胞加工室クリーンルーム31は、天井32より下の室内が密閉され、天井32に外気や還気を図示しない空調機で除塵の後温調した空調空気を室内に供給する給気口33が設けられる。そして、前記給気口33が位置する天井裏には、空調機(図示せず)から主給気ダクト(図示せず)に送られる給気を最終的に清浄化するHEPAフィルタ33bを備えた給気ユニット33aが設けられ、該給気ユニット33aには他端が空調機に接続された給気分岐ダクト33cが接続されている。
【0008】
また、細胞加工室クリーンルーム31に供給された空気を、室外に排気するための排気ダクト(還気ダクト)に接続される排気口34(34a、34b、34c、34d)が側板(壁面)35の下部4隅又は2隅に設けられている。
そして、細胞加工室クリーンルーム31内には、安全キャビネット36、インキュベータ37、冷蔵庫38等が配置されている。
また、前記のような大部屋方式の細胞加工室クリーンルームにあっては、通常は初期設定された安全キャビネットの台数、及びレイアウトに適合した気流が得られるように、排気ダクト・還気ダクトや吸込み器具が初期風量を按分して選定され位置やルートを検討され、それに応じた設計・施工が行われる。そのため、その後に安全キャビネットの追加設置や、レイアウト変更がなされた場合は、再生医療等製品や細胞加工品の汚染防止のため、給気口から室内を流れて排気口へ向かう気流の再調整が必要となるが、排気口で調整できる風量範囲が狭く、また排気口は固定のため場所移動が困難で、適切な気流とすることができなくなる場合も出てくる。
【0009】
さらに、上記のように細胞加工室クリーンルーム内には、意図しない有害な微生物の培養可能性のあるインキュベータ等、無菌操作に対して汚染源となりうる装置が設置されることが多く、このためインキュベータなどの汚染源から安全キャビネット等設置領域側へ空気が流れないように、細胞加工室クリーンルーム内の空気流を安全キャビネット等設置領域側からインキュベータ側へ流れるように初期設定している。
【0010】
本願出願人は、複数の安全キャビネットを配設した大部屋方式の細胞加工室クリーンルームの清浄化が最大化できるように、設置される安全キャビネットの台数とそのレイアウトに基づいて、排気口を予め多く設定配置することで、排気口の位置や数、さらにはそれぞれの排気口から排気する排気量の配分比率を調整可能にする機能を備えたクリーンルーム及び該クリーンルームの排気量調整方法を提供し、作業数の増加による安全キャビネットの追加設置(台数増加)や、それに伴うレイアウトの変更など当初計画と異なる要求が生じた場合にも即時・容易に対応できるようにした大部屋方式細胞加工室クリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法を開発した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-143933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記、特許文献1に記載された大部屋方式の細胞加工室クリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法によれば、前記細胞加工室クリーンルームが、フィルタでろ過した空気を室内に供給する給気口と、室内の空気を室外に排出するための排気口を複数備え、かつそれら各々の排気口の吸込量を調整する吸込量調整装置が設けられ、前記複数個の排気口から排出される排気量の合計が、供給される給気の量と任意に設定した風量差(ゼロを含む)になるように排出されるよう各排気口の吸込量を制御することができる。
したがって、細胞加工室クリーンルーム内において、安全キャビネットの台数増加や細胞加工室クリーンルーム内全体のレイアウトの変更があった場合に、クリーンルームにおける排気口の変更工事や、空調業者による空調風量調整作業を依頼することなく、細胞培養の作業者や研究者などが各自で各排気口における吸込量を容易に変更することができ、室内の空調気流を最適にコントロールできるので汚染のリスクを低下させ、汚染防止を図ることができる。
また、クリーンルームに複数の安全キャビネットを設置して作業を行っている途中で、そのうちの1台で扱う検体が感染性病原体保有の可能性が検出された場合でも緊急措置として気流方向をその時点で容易に変更することができるので、他の安全キャビネットで進行中の細胞加工作業を中断することなく運用が行える。
【0013】
特許文献1に記載された発明は、排気口の吸込量を調整する吸込量調整装置により吸込量を調整するものであるが、本発明者らは、より使いやすい大部屋方式の細胞加工室クリーンルームに適した技術の開発を進めた。その結果、クリーンルームを構成する側板の構造等を改良することで、クリーンルーム室内に給気口から供給される空調空気の気流を容易に手動で制御する方法を見いだした。
また、あわせてクリーンルームに設置したインキュベータを利用してクリーンルーム室内に給気口から供給される清浄空気の気流方向を任意に設定でき、安全キャビネット配置領域を汚染することなく排気口から空気を排出する方法も見いだした。
そこで、本発明では、クリーンルームに配置されている安全キャビネット等の装置類の移動や増設等があっても、細胞加工操作における微生物汚染リスクの低減ができるようにクリーンルーム内の空気気流を制御することができるクリーンルーム及びそのクリーンルームの使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
〈1〉天井(2)より下の室内が密閉され、前記天井(2)に空調空気を室内に供給する給気口(3)、及び室内空気を室外に排気するための排気ダクト接続口(4)が設けられたクリーンルーム1において、
前記クリーンルーム(1)の壁面四面のうち少なくとも面を構成する側板(5)を外板(5a)と内板(5b)からなる2重構造とし、
前記内板(5b)には、全面にわたってクリーンルーム(1)内の室内空気を吸い込む吸込孔(6)が設けられ、
前記側板(5)の外板(5a)と内板(5b)の間には、前記吸込孔(6)から吸い込まれた室内空気を前記排気ダクト接続口(4)へ流すレタンシャフト(7)が構成され、
クリーンルーム(1)内の室内空気が、前記吸込孔(6)から前記レタンシャフト(7)内に流出するのを防止するために内板(5)の表面又は裏面に位置するように密閉性を有するシート又は板体からなる空気流出防止手段(8)が設けられ、
前記空気流出防止手段(8)にクリーンルーム(1)から排出したい空気量に対応した大きさ、形状を備えた空気排出部(8a)が設けられていることを特徴とするクリーンルーム。
〈2〉前記排気ダクト接続口(4)から排出される室内空気のうち一部が還気として温調する空調機に戻され、採り入れた外気とともに空調空気として室内に供給されることを特徴とする前記〈1〉に記載のクリーンルーム。
【0015】
〈3〉天井(2)より下の室内が密閉され、天井(2)に空調空気を室内に供給する給気口(3)、及び室内空気を室外に排気するための排気ダクト接続口(4)が設けられたクリーンルームにおいて、
該クリーンルームの壁面四面のうち少なくとも面が外板(5a)と内板(5b)からなる2重構造の側板(5)と、前記内板(5b)の全面にわたって設けられたクリーンルーム内の空調空気を吸い込む吸込孔(6)と、前記側板(5)の外板(5a)と内板(5b)の間に形成される前記吸込孔(6)から吸い込まれた室内空気を前記排気ダクト接続口(4)へ流すレタンシャフト(7)と、 クリーンルーム内に仕器や機材を配置したり、移動したり、または、台数を変更したりする場合に、前記クリーンルーム内の室内空気が、前記吸込孔(6)から前記レタンシャフト(7)内に流出するのを防止するために内板(5)の一部の表面又は裏面に位置するよう設けられた密閉性を有するシート又は板体からなる空気流出防止手段(8)と、
前記空気流出防止手段(8)にクリーンルーム(1)から排出したい空気量に対応した大きさ、形状を備えた空気排出部(8a)とを備えたクリーンルームの使用方法であって、
当該空気排出部(8a)を介して前記クリーンルーム(1)内を流れる空調空気を前記内板(5b)に設けられた吸込孔(6)から吸い込ませ、前記レタンシャフト(7)を通して前記排気ダクト接続口(4)へ排出することを特徴とするクリーンルームの使用方法。
〈4〉 前記密閉性を有するシート又は板体からなる空気流出防止手段(8)の空気排出部(8a)の位置を変更する場合に、前記空気流出防止手段(8)を張り替えることを特徴とする〈3〉に記載のクリーンルームの使用方法。
〈5〉 前記空気流出防止手段(8)に、
左右の側板(11A、11B)、背板(12)、天板(13)及び底板(14)から構成された前面が解放された断面コ字状の直方体からなり、前記背板(12)に全面にわたって孔(12a)が設けられたインキュベータ用ラック(10)の背板(12)とほぼ同一の大きさの空気排出部(8a)が形成され、
前記空気排出部(8a)を介して前記インキュベータ用ラック(10)の背板(12)を、前記クリーンルーム(1)の側板(5)の内板(5b)に当接して設置することを特徴とする前記〈3〉または〈4〉に記載のクリーンルームの使用方法。
〈6〉前記インキュベータ用ラック(10)にインキュベータを載置し、該インキュベータの表面を排気が舐めながら前記背板(12)を通じて前記内板の前記吸込孔(6)へ吸い込ませて室内空気を前記排気ダクト接続口(4)へ排出することを特徴とする前記〈6〉に記載のクリーンルームの使用方法。
〈7〉前記排気ダクト接続口(4)から排出される室内空気のうち一部が還気として温調する空調機に戻され、採り入れた外気とともに空調空気として室内に供給されることを特徴とする前記〈3〉乃至〈6〉の何れか一項に記載のクリーンルームの使用方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクリーンルーム及びクリーンルームの使用方法によって下記の効果が発揮される。
本発明のクリーンルームが、天井より下の室内が密閉され、天井に空調空気を室内に供給する給気口、及び室内空気を室外に排気するための排気ダクト接続口が設けられたクリーンルームにおいて、前記クリーンルームの壁面の少なくとも1面を構成する側板を外板と内板からなる2重構造とし、前記内板には、全面にわたってクリーンルームから流れる空気を吸い込む吸込孔が設けられ、前記側板の外板と内板の間には前記吸込孔から吸い込まれた室内空気を前記排気ダクト接続口へ流すレタンシャフトが構成され、前記吸込孔からレタンシャフト内に流れる空気の流出を防止する空気流出防止手段と、該空気流出防止手段に空気排出部とが設けられているので、クリーンルームから空調空気を排出したい側の側板の内板に設けられた空気流出防止手段を排出したい空気量に対応するように部分的に取り外したり切り取ったりし、空気排出部を形成することで、給気口から供給される清浄空気の気流方向を任意に設定できる。
また、クリーンルーム内において安全キャビネット等の台数増加や全体のレイアウトの変更があった場合に、クリーンルームにおける吸込口の変更工事や空調業者による空調風量調整の作業が不要となり、細胞培養の作業者や研究者など各自で空気の気流方向が最適となるよう設定し排気口から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかるクリーンルームの一実施例を示す横断面図及び平面図
図2】本発明にかかるクリーンルームの一実施例の説明用の一部拡大断面図
図3】本発明にかかるクリーンルームの一実施例の説明用の側板の斜視図
図4】本発明にかかるクリーンルームにおけるインキュベータ用ラックの一実施例の斜視図
図5】本発明にかかるクリーンルームにおけるインキュベータ用ラックにインキュベータを設置した状態を示す平面図
図6】本発明にかかるクリーンルームにおいて、インキュベータ用ラック及び安全キャビネットを設置したクリーンルームの一実施例を示す平面図
図7】従来の細胞加工室クリーンルームの横断面図
図8】従来の安全キャビネット等を設置した細胞加工室クリーンルームの平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかるクリーンルームについて、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明にかかるクリーンルームの一実施例を示す横断面図(a)及び平面図(b)、図2は本発明にかかるクリーンルームの一実施例の説明用の一部拡大断面図、図3は本発明にかかるクリーンルームの一実施例の説明用の側板の斜視図である。
図中、1はクリーンルーム、2はクリーンルームの天井、3は給気口、3aは給気ユニット、3bは天井給気HEPAフィルタ、3cは給気分岐ダクト、4は排気ダクト接続口、5は側板、5aは外板、5bは内板、6は吸込孔、7はレタンシャフト、8は空気流出防止手段、8aは空気排出部、9は取付具、10はインキュベータ用ラック、11A、11Bは左右側板、12は背板、12aは孔、13は天板、14は底板、15はキャスタ、20はインキュベータ、30は安全キャビネットである。
【0019】
図1図3に示すように、クリーンルーム1は、天井2より下の室内が、例えば天井や壁はサンドイッチパネルなどを立設してその目地をシーリングし開口部のドアも閉止時密着する構造として密閉され、天井2には室内に空調空気を供給する給気口3が設けられ、そして前記給気口3が位置する天井裏には、空調機(図示せず)から主給気ダクト(図示せず)に送られる、外気か外気と還気の混合空気を温調した給気を最終的に清浄化する天井給気HEPAフィルタ3bを備えた給気ユニット3aが設けられ、該給気ユニット3aには他端が空調機に接続された給気分岐ダクト3cが接続されている。
【0020】
また、クリーンルーム1の室内空気を室外に排気するための排気ダクト接続口4が、側板(壁面)5の上部4隅又は2隅に設けられている。
前記左右の側板5は、外板(壁面)5aと内板(面)5bからなる2重構造となっていて、前記外板5aと内板5bとは、間隔を開けて配置され、外板5aと内板5bの間にレタンシャフト7を形成している。この側板5は、例えば室の用途である細胞培養に用いる機器が設置される可能性がある壁面に設置されるべきであり、その面が室の壁の1面であっても2面であっても3,4面であってもよい。
また、前記内板5bには、全面にわたってクリーンルーム1から流れる空気を吸い込む吸込孔6が設けられている。
そして、吸込孔6から吸い込まれた室内空気(クリーンルーム1から排出される空気)は、前記外板5aと内板5bの間に形成されたレタンシャフト7を通過して前記排気ダクト接続口4へ排出する構成となっている。
【0021】
本発明の実施形態においては、前記内板5bは、パンチングプレートを用いているが、クリーンルーム1内を循環した空調空気を吸い込む吸込孔6を形成することができるものであれば、これに限定されるものではない。
また、本実施例において、前記吸込孔6は、円形のパンチング孔としているがこれに限定されるものではなく、前記クリーンルーム1から排出される空調空気を吸い込み、レタンシャフト7へ流すことができる形状であれば、横長楕円形、縦長楕円形であってもよく、また内板5bにスリットを形成し吸込孔6としても良い。
前記吸込孔6は、後述するインキュベータ用ラック10の背板12に設けられた孔12aと同程度の大きさで形成される。
なお、前記吸込孔6は、内板5bの全面にわたって設けると、様々なクリーンルーム1内の設備の配置変更等に対応できるので好適であるが、高さ方向については、少なくともインキュベータ用ラック10の高さと略同一の高さの範囲に吸込孔6を設け、クリーンルーム1から流れる空気を吸い込む空気量に対応できれば、吸込孔6を設ける範囲や個数は限定されるものではない。
【0022】
空気流出防止手段8は、クリーンルーム1に流れる空調空気が、側板5の内板5bに設けられた吸込孔6からレタンシャフト7内に流入するのを防止するものである。
したがって、クリーンルーム1から空調空気が吸込孔6へ流入するのを防止できる形態であれば、シート状、板体、カバー形態等、特に限定されることなく適用でき、特に密閉性を有するシートが好適に用いられる。
また、室の給気および排気(還気)を確保して空気流通を図ってクリーンルームを構築するため、空気流出防止手段8には空気排出部8aが形成され、前記空気排出部8aにより封止されていない吸込孔6からクリーンルーム1内の空調空気を吸い込んで排出する構成となっている。
そして、前記空気排出部8aは、空気流出防止手段8の任意の箇所を吸込可能面積に相当する範囲を切り取って開口することで形成される。したがって、空気流出防止手段8は切り取りしやすい部材で構成されることが好ましい。
例えば、樹脂製の可撓性を有するシートなど、密閉性が高く、取り扱いやすい。また、軟質性ゴムのシート、可動邪魔板や嵌め込み邪魔板などであってもよく、これらであれば、側板5の内板5bに設けられた吸込孔6の吸込位置に合わせて空気排出部8aを形成しやすく、また吸込可能面積の変更もしやすく、容易に空気吸込量を変更することができる。
【0023】
なお、前記空気流出防止手段8は、クリーンルーム1から空調空気が吸込孔6へ流入するのを防止できるよう、吸込孔6が形成されている内板5bの近傍に取り付けられる。
本実施形態においては、前記空気流出防止手段8は取付具9を用いて天井2に取付けられているが、これに限定されるものではなく、可撓性シートを直接側板5の内板5bに貼り付けて設けて、吸込孔6を塞ぐようにしても良いし、邪魔板を嵌め込む構成としてもよい。
【0024】
図3は、本発明にかかるクリーンルームの一実施例の側板の斜視図であり、側板5は、外板5aと内板5bからなる2重構造で構成される。そして、前記側板5がクリーンルーム1の対向する壁面にそれぞれ配置される。側板5は、クリーンルーム1の側壁を形成するものであってもよく、また、例えば既存のクリーンルーム1の壁面に沿って配置したものであってもよい。
そして、前記側板5の外板5aと内板5bは、間隔を空けて配置され、その外板5aと内板5bの間の間隔が、レタンシャフト7を構成している。
レタンシャフト7は、前記内板5bの吸込孔6から吸い込んだクリーンルーム1内の空調空気を排気ダクト接続口4へ送る構成となっていて、吸い込まれる室内空気は、空気流出防止手段8および空気排出部8aにより任意の箇所の吸込孔6から吸い込むよう調整される。
前記排気ダクト接続口4から排出される室内空気のうち一部が還気として温調する空調機に戻され、採り入れた外気とともに空調空気として室内に供給されるようにしてもよい。
【0025】
図3に示す実施例では、(a)は、外板5aと内板5bとで2重構造に構成される側板5を示している。この実施例においては、内板5bのほぼ全面にわたって吸込孔6が形成されている。
そして、(b)は(a)に示した側板5に、空気流出防止手段8が配置された状態を示す図であり、側板5の内板5bの前面に空気流出防止手段8が配置され、吸込孔6から空調空気が流出するのを防止している。
なお、図において、前記空気流出防止手段8の一部が切り取られて開口し吸込孔6を塞ぐものがない状態となっている部分が、空気排出部8aである。
前記空気排出部8aは、吸込孔6が塞がれていないので、空調空気の吸込が可能となり、クリーンルーム1内から吸込む室内空気の量に合わせて切り取る面積を決定し形成される。
このように、本発明において、クリーンルーム1内の空調空気を吸い込む箇所は、内板5bの前面に設けられた空気流出防止手段8にクリーンルーム1から吸い込みたい空気量に対応した空気排出部8aを設けることにより形成される。
【0026】
本実施例においては、前述のように、側板5の内板5bはその全面にわたって吸込孔6が設けられているため、空気流出防止手段8のどの部分に空気排出部8aを形成しても、クリーンルーム1内の空調空気を吸込可能となっている。
なお、前記空気流出防止手段8は、シートや板体を天井2や内板5bに取り付けて構成されるので、簡単に新しい物と交換可能であり、インキュベータ用ラック20や安全キャビネット30を移動したり、台数を変更する場合には、空気流出防止手段8を取り替えることで、簡単に対応することができる。
【0027】
図4は、本発明にかかるクリーンルームで使用されるインキュベータ用ラックの斜視図で、(a)は後方から、(b)は前方からみた斜視図である。
図5は、図4に示すインキュベータ用ラックにインキュベータを設置した状態を示す説明図であり、(a)は断面図であり、(b)は斜視図である。
図6は、本発明のインキュベータ用ラックを設置したクリーンルームの一実施例を示す平面図である。
図4図6に示すように、本実施例におけるインキュベータ用ラック10は、左右の側板11A、11B、背板12、天板13、底板14から構成され前面が解放された断面コ字状の直方体からなり、前記解放された前面からインキュベータ20が格納される。
そして、前記インキュベータ用ラック10の背板12には、孔12aが設けられている。孔12aは、背板12の全面にわたって設けてもよく、背板12の一部に設けてもよい。
【0028】
前記孔12aは、クリーンルーム1の側板5の内板5bに設けられた吸込孔6とほぼ同一の形状で、ほぼ同一の位置に設けられ、インキュベータ用ラック10の背板12を側板5の内板5bに当接させた際に、前記インキュベータ用ラック10の孔12aと、側板5の内板5bの吸込孔6の位置が一致するように構成される。
前記一致した孔12aと吸込孔6により形成された部分は、貫通した状態となり、クリーンルーム1内の室内空気を吸込みレタンシャフト7へ排出する部分となる。
なお、インキュベータ用ラック10は、底板14の4隅にキャスタやアジャスター15を設けておくと移動しやすく好適である。ただ、側板の内板5bに開口された吸込孔6と、インキュベータ用ラック10の孔12aとがずれやすい場合はキャスタは取り外して位置合わせするのも好適である。
【0029】
以下、図1図6を用いて、本発明のクリーンルーム及びクリーンルームの使用方法について説明する。
本発明にかかるクリーンルーム1は、天井2より下の室内が密閉され、天井2に空調空気を室内に供給する給気口3、クリーンルーム1に供給された空調空気を室外に排気するための排気ダクト接続口4が設けられ、前記クリーンルーム1の壁面を構成する側板5を、外板5aと内板5bの二重構造とし、前記外板5aと内板5bの間の隙間でレタンシャフト7を構成してなる。
【0030】
また、前記側板5の内板5bには、全面にわたってクリーンルーム1内を流れる空気を吸い込む吸込孔6が設けられている。
そして、内板5bの前面には、前記吸込孔6からレタンシャフト7に空調空気が流れるのを防止する空気流出防止手段8が設けられている。クリーンルーム1内の空調空気が全部の吸込孔6から排出されないように、吸込孔6の一部を塞ぐように空気流出防止手段8が設置される。
【0031】
本発明のクリーンルーム1は、室の給気および排気(還気)を確保して空気流通を図ってクリーンルームを構築するため、側板5の内板5bの吸込孔6を塞いでいる空気流出防止手段8に、排出したい空気量に対応した範囲を切り取って空気排出部8aを設け、吸込孔6の封止を取り除くことにより、クリーンルーム1から吸い込む空調空気の量を任意に調整することができる。
【0032】
例えば、図6に示すクリーンルーム1は、その壁面50a、50bを構成する側板5が、外板5aと内板5bの二重構造で形成され、内板5bには吸込孔6が設けられ、空気流出防止手段8には空気排出部8aが排出したい空気量に対応した大きさに開口して設けられている。
そして、図6に示すクリーンルーム1は、一方の壁面50a側にインキュベータ用ラック10が、他方の壁面50b側に安全キャビネット30が設置されている。
【0033】
本実施例では、前記インキュベータ用ラック10が配置されている壁面50a側に設けられている空気流出防止手段8は、排出したい空気量、すなわち、吸込孔6から吸込み換気回数を確保する空気量に対応して切り取られて形成された空気排出部8aが設けられている。
一方、安全キャビネット30が配置されている壁面50b側に設けられている空気流出防止手段8は、切り取らずそのまま使用されている。
【0034】
したがって、本実施例では、給気口3からクリーンルーム1に供給された空調空気は、インキュベータ用ラック10が設置されている壁面50a側に設けられている空気流出防止手段8の空気排出部8aから、側板5の内板5bに設けられた吸込孔6に吸い込まれレタンシャフト7を通り排気ダクト接続口4から排出される。
一方、安全キャビネット30が設置されている壁面50b側の側板5の内板5bに設けられた吸込孔6は、空気流出防止手段8により吸込孔6が塞がれ空調空気の流出が防止されているので排出口4への排出が制限される。
このように給気口3からクリーンルーム1内に供給された空調空気は、安全キャビネット30側からインキュベータ用ラック10側へと流れて排出されるので、インキュベータ用ラック10側から安全キャビネット30側へ空調空気が流れることはなく、安全キャビネット30等の無菌操作等区域側がインキュベータ用ラック10側からの空気によって汚染されることを防ぐことができる。
【0035】
以下に、本発明のクリーンルームの使用方法について、前記図6に示す実施例に基づいて説明する。
図6に示すクリーンルーム1では、壁面50a側にインキュベータ用ラック10、壁面50b側に安全キャビネット30が設置されている。
同図に示すようにインキュベータ用ラック10が設置されている壁面50a側は、クリーンルーム1の側板5の内板5bの吸込孔6を塞いでいる空気流出防止手段8を、前記インキュベータ用ラック10の背板12に合わせて切り取り空気排出部8aを設けてあり、前記空気排出部8aに対応させるようにして前記側板5の内板5bにインキュベータ用ラック20の背板12を当接させて設置する。
【0036】
すなわち、前記側板5の内板5bの吸込孔6を塞いでいる空気流出防止手段8は、インキュベータ用ラック10の背板12の大きさに合わせて切り取られ空気排出部8aが形成されているので、前記空気排出部8aに対応する部分の内板5bは、空気流出防止手段8がなく、吸込孔6が露出している。
そして、その吸込孔6が露出している部分に当接するように、前記インキュベータ用ラック10の背板12を前記空気排出部8aに嵌め込んで設置する。
前記背板12の孔12aと吸込孔6は、同程度の位置に同程度の大きさで形成されているので、図2(b)に示すように、内板5bと前記背板12を当接することで、背板12の孔12aと吸込孔6とで貫通孔が形成され、前記貫通孔から空調空気が吸い込まれる。
【0037】
このように、壁面50b側に安全キャビネット30を設置した本実施例の場合、給気口3からクリーンルーム1に供給された空調空気は、インキュベータ用ラック10の背板12に設けられた孔12aから前記クリーンルーム1の側板5の内板5bに設けられた吸込孔6に吸い込まれ、側板5の外板5aと内板5bの間に形成されたレタンシャフト7を通り排出口4から排出される。
一方、安全キャビネット30が設置された壁面50b側の側板5の内板5bに設けられた吸込孔6は、空気流出防止手段8により空気の流出が塞がれているので、排出口4への空調空気の排出は制限され、安全キャビネット30側の空調空気は、インキュベータ用ラック10側へ送られ、前記吸込孔6に吸い込まれる気流が形成される。つまり、インキュベータ用ラック10にインキュベータ20を載置し、該インキュベータ20の表面を排気が舐めながら背板12の孔12aを通じて内板5bの吸込孔6へ吸い込ませて室内空気を排気ダクト接続口4へ排出するので、インキュベータ20から漏出する有害な微生物を、強い気流の排気によって排気ダクト接続口4までレタンシャフト7を通じて高速で持ち出し、還気や排気系統にあるフィルタにて除去するので、室内への漏出が防止できる。また、インキュベータ20はその恒温恒湿の内部雰囲気を作るため発熱や湿分の発生があるが、これも排気に同伴されて室内へ出てこないので温調負荷として排気に捨てられ室内温調負荷が助かる。
【0038】
上記のように本実施例に係るクリーンルーム1は、給気口3からクリーンルーム1内に供給された空調空気を、前記インキュベータ用ラック10の背板12に設けられた孔12aから積極的にインキュベータ用ラック10を設置した側の側板5の内板5bに設けられた吸込孔6へ送りレタンシャフト7を通り排気ダクト接続口4から排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、クリーンルーム、特に再生医療における細胞培養や研究を行う施設に適しているが、それ以外の例えば薬剤の製造及び研究を行う施設等、一般的なクリーンルームにおいても有効に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 :クリーンルーム
2 :クリーンルームの天井
3 :給気口
3a:給気ユニット
3b:天井給気HEPAフィルタ
3c:給気分岐ダクト
4 :排気ダクト接続口
5 :側板
5a:外板
5b:内板
6 :吸込孔
7 :レタンシャフト
8 :空気流出防止手段
8a:空気排出部
9 :取付具
10:インキュベータ用ラック
11A、11B :左右側板
12:背板
12a:孔
13:天板
14:底板
15:キャスタ
20:インキュベータ
30:安全キャビネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8