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特許7425652書き込み装置、書き込み方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】書き込み装置、書き込み方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/08 20060101AFI20240124BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20240124BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20240124BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G06K7/08 040
G11B5/09 371C
G11B5/02 Z
G11B20/10 311
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020057770
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157559
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 重隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳寛
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-288868(JP,A)
【文献】特開平11-175666(JP,A)
【文献】特開平10-326324(JP,A)
【文献】特開平07-134804(JP,A)
【文献】特開2003-134804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/08
G11B 5/09
G11B 5/02
G11B 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体の書き込み装置であって、
前記磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を出力する保持回路と、
前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込む書込処理部と、
前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、前記書込処理部が書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定する設定部と、
前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行う読出処理部と、
を備える書き込み装置。
【請求項2】
前記保持回路の出力を補正する補正回路を更に有し、
前記設定部は、書き込んだ最後の極性を前記補正回路に入力し、
前記補正回路は、入力された前記極性を反転させて前記保持回路に出力させる、
請求項1に記載の書き込み装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記磁気記録媒体へ書き込んだデータのビット周期を更に取得し、
前記読出処理部は、前記ビット周期に基づいて前記データの読み出しを行う、
請求項1又は2に記載の書き込み装置。
【請求項4】
磁気記録媒体の書き込み方法であって、
前記磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を保持回路から出力するステップと、
前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込むステップと、
前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定するステップと、
前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行うステップと、
を有する書き込み方法。
【請求項5】
磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を出力する保持回路を有する書き込み装置のコンピュータに、
前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込むステップと、
前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定するステップと、
前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行うステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き込み装置、書き込み方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通機関の乗車券、有料道路の通行券等には、磁気ストライプを有する磁気記録媒体が用いられている。例えば、有料道路の通行券は、入口料金所に設けられた通行券処理機により、有料道路へ入場した時刻及び位置(入口料金所)等を示す入口情報が書き込まれて発行される。また、有料道路の通行券は、出口料金所に設けられた通行券処理機により、入口情報が読み取られるとともに、有料道路から退場した時刻及び位置(出口料金所)等を示す出口情報が書き込まれて回収される。
【0003】
このような通行券処理機は、磁気ストライプへの読み書き処理を行うためのリーダ/ライタを有している。出口料金所の通行券処理機において、リーダ/ライタは、通行券が挿入されると、通行券を通行券処理機の奥側に引き込みながら、通行券の磁気ストライプの先頭から順方向にデータを読み出す。磁気ストライプには、先頭から順に、磁気ストライプの記録密度(例えば、100bpi、200bpiなど)を示すビット周期の幅を読み取るための「プリアンブル」と、データの開始位置を示す「スタート」が記録されている。
【0004】
リーダ/ライタは、「プリアンブル」として記録されているデータの幅から読み取ったビット周期でデータを読み取ることにより、「スタート」以降のデータ部に記録されている入口情報を正しく読み取ることができる。また、入口料金所の通行券処理機において、リーダ/ライタは、データ部に何も記録されていない(新券である)ことを確認することができる。
【0005】
更に、リーダ/ライタは、通行券を順方向に引き込みながら、所定のビット周期で、磁気ストライプのデータ部に入口情報又は出口情報を書き込む。
【0006】
リーダ/ライタは、入口情報又は出口情報を書き込んだ後、更に書き込まれた情報を読み出して、正常に書き込まれたか検証を行う場合がある。このとき、リーダ/ライタは、引き込んだ通行券を通行券処理機の挿入口側に搬送(排出)しながら、磁気ストライプを後端から逆方向に読み出すこととなる。このように、逆方向から磁気ストライプを読み出し可能とするために、磁気ストライプの後端には、データの終了位置を示す「エンド」と、プリアンブルと同様にビット周期の幅を読み取るための「ポストアンブル」とが記録されている場合がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-326324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、通行券処理機などに用いられるリーダ/ライタには様々な機種があり、「ポストアンブル」を記録しない機種も存在する。例えば、入口料金所の通行券処理機がこのようなリーダ/ライタを有していた場合、この通行券処理機により発行される通行券については、磁気ストライプの後端に「ポストアンブル」が記録されない。そうすると、出口料金所の通行券処理機において、書き込みの検証を行う際、磁気ストライプを逆方向に読み出すと、正常にデータが読み取れない場合がある。
【0009】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、ポストアンブルのない磁気記録媒体であっても、書き込み後の磁気記録媒体を逆方向に搬送しながら書き込みが正常に行われたか検証する際に、正しくデータを読み出すことができる書き込み装置、書き込み方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
本開示の一の態様によれば、磁気記録媒体の書き込み装置は、前記磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を出力する保持回路と、前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込む書込処理部と、前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、前記書込処理部が書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定する設定部と、前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行う読出処理部と、を備える。
【0011】
本開示の一の態様によれば、磁気記録媒体の書き込み方法は、前記磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を保持回路から出力するステップと、前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込むステップと、前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定するステップと、前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行うステップと、を有する。
【0012】
本開示の一の態様によれば、プログラムは、磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を出力する保持回路を有する書き込み装置のコンピュータに、前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込むステップと、前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定するステップと、前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行うステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の少なくとも一の態様によれば、ポストアンブルが記録されていない磁気記録媒体であっても、データ書き込み後の磁気記録媒体を逆方向に搬送しながら書き込みが正常に行われたか検証する際に正しくデータを読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る書き込み装置の機能構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る保持回路の機能を説明するための図である。
図3】本開示の一実施形態に係る磁気記録媒体のデータ構成の一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る読出処理部の機能を説明するための図である。
図5】本開示の一実施形態に係る書き込み装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本開示の一実施形態に係る書込波形及び読出波形の一例を示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係る書き込み装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態に係る書き込み装置、書き込み方法、及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る書き込み装置の機能構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の書き込み装置20は、例えば有料道路の通行券処理機1の筐体10内に設けられる。通行券処理機1は、筐体10の前面側(+Y側)から奥側(-Y側)に向かって延びる搬送路12を有しており、通行券Tを順方向(-Y方向)又は逆方向(+Y方向)に搬送しながら、通行券Tの磁気ストライプMに対するデータの読み書きを行う。
【0017】
通行券処理機1は、例えば、有料道路の入口料金所において、有料道路を利用する車両に通行券Tを発行する通行券発行機である。入口料金所に車両が到来すると、通行券処理機1は、筐体10内部の供給部(不図示)から新たな通行券Tを搬送路12に供給する。そうすると、通行券処理機1の書き込み装置20は、車両が有料道路へ入場した時刻及び地点(入口料金所)等を含む入口情報を通行券Tの磁気ストライプMに書き込んで、通行券処理機1の排出口11Aから排出する。
【0018】
また、通行券処理機1は、例えば、有料道路の出口料金所において、車両の搭乗者により操作される料金自動収受機(不図示)、又は収受員により操作される料金収受機(不図示)に内蔵又は外付けされる通行券処理機である。出口料金所に車両が到来すると、通行券Tは通行券処理機1の挿入口11Bから挿入されて、搬送路12内を奥側(-Y側)に向かって搬送される。そうすると、通行券処理機1の書き込み装置20は、通行券Tの磁気ストライプMから入口情報を読み出すとともに、利用者が退出した時刻及び地点(出口料金所)等を含む出口情報を磁気ストライプMに記録して、通行券Tを筐体内10の回収ボックス(不図示)に回収する。
【0019】
なお、本実施形態において、通行券Tは磁気記録媒体の一態様である。他の実施形態では、磁気記録媒体は、例えば交通機関の乗車券、プリペイドカード、ポイントカード等であってもよい。
【0020】
(書き込み装置の機能構成)
書き込み装置20は、CPU21と、読出磁気ヘッド22と、書込磁気ヘッド23と、保持回路24と、補正回路25と、搬送機構26とを備えている。なお、本実施形態において、書き込み装置20は、読出磁気ヘッド22及び書込磁気ヘッド23をそれぞれ1つずつ備えている。
【0021】
読出磁気ヘッド22は、通行券Tを搬送路12に沿って搬送する際に、磁気ストライプMに書き込まれた極性のパターンにより生じる誘起電圧を検出して、保持回路24に出力する。
【0022】
書込磁気ヘッド23は、読出磁気ヘッド22よりも搬送路12の奥側(-Y側)に設けられ、CPU21の指令に基づいて、通行券Tの磁気ストライプMを磁化させてデータを記録する。
【0023】
保持回路24は、読出磁気ヘッド22により検出された誘起電圧に応じて2値の何れかの保持電圧をCPU21に出力する。
【0024】
図2は、本開示の一実施形態に係る保持回路の機能を説明するための図である。
図2の(a)に示すように、読出磁気ヘッド22により検出された電圧は、まず、保持回路24で増幅される。次に、保持回路24は、図2の(b)に示すように、増幅された電圧が第1の閾値+X以上となったときに出力を「HIGH」とし、以降、出力を「HIGH」のまま保持する。また、保持回路24は、増幅された電圧が第2の閾値-X以下となったときに出力を「LOW」とし、以降、出力を「LOW」のまま保持する。保持回路24は、読出磁気ヘッド22が検出した電圧をこのように2値化した波形に整形して、CPU21に出力する。
【0025】
補正回路25は、CPU21の指令に基づいて、書込磁気ヘッド23が書き込んだ最後の極性を反転させて保持回路24に出力させる。
【0026】
搬送機構26は、通行券Tを搬送路12の奥側(-Y側)又は手前側(+Y側)に搬送する。搬送機構26は、搬送ローラ260と、搬送ベルト261と、モータ262とを有している。モータ262は、CPU21からの指令に基づいて回転動作する。そうすると、モータ262の回転駆動力が搬送ローラ260に伝達され、搬送ベルト261の通行券Tとの接触面を搬送路12の奥側又は手前側に移動させる。これにより、搬送機構26は、通行券Tを搬送路12の奥側又は手前側に搬送させる。
【0027】
CPU21は、所定のプロセッサに従って動作することにより、書き込み装置20の機能を実現するプロセッサである。CPU21は、書き込み装置20の機能部として、読出処理部210、書込処理部211、設定部212、及び搬送制御部213を有している。
【0028】
読出処理部210は、保持回路24から出力された保持電圧に基づいて、通行券Tの磁気ストライプMに書き込まれたデータを取得する。また、読出処理部210は、後述の設定部212による保持回路24の出力設定後に、逆方向(+Y方向)に通行券Tを搬送しながら、磁気ストライプMに書き込まれたデータの読み出しを行う。
【0029】
図3は、本開示の一実施形態に係る磁気記録媒体のデータ構成の一例を示す図である。
図3に示すように、通行券Tの磁気ストライプMには、長手方向(±Y方向)の先頭(-Y側)から順に、「プリアンブル」、「スタート」、「データ」、及び「エンド」が記録される。プリアンブルは、書き込まれたデータのビット周期(例えば、100bpi又は200bpi)の幅を読み取るための情報であり、例えば固定値「0000」が記録される。スタート及びエンドはデータの開始位置及び終了位置を示す情報であり、例えば固定値「1111」が記録される。データには、入口情報、出口情報などの各種情報が所定の位置に2値化されて(「1」又は「0」の値で)記録される。
【0030】
図4は、本開示の一実施形態に係る読出処理部の機能を説明するための図である。
磁気ストライプMには、例えば図4に示すように、「1」及び「0」の周波数を変えて記録するFM(Frequency Modulation)方式で記録されているとする。読出処理部210は、保持回路24から出力された読出波形(増幅及び整形後の波形)に基づいて、磁気ストライプMに記録されたデータ(「1」又は「0」)を読み取る。なお、磁気ストライプMへの記録方式はFM方式に限らず、MFM(Modified Frequency Modulation)方式、NRZ(Non-Return-to-Zero)方式等が用いられてもよい。
【0031】
書込処理部211は、書込磁気ヘッド23を通じて、通行券Tの磁気ストライプMにデータを記録する。具体的には、書込処理部211は、書き込むデータに応じて書込磁気ヘッド23のコイルに流れる信号電流の向きを変化させて、書込磁気ヘッド23を磁化させる。そうすると、書込磁気ヘッド23に発生した磁界によって近接する磁気ストライプMに1ビットずつ「HIGH」又は「LOW」(若しくは、「N極」又は「S極」)で示される極性が書き込まれる。この極性反転の周波数により、図4に示すような2値の値(「1」又は「0」)を表現することができる。なお、書込処理部211は、予め設定されたビット周期、又は、読出処理部210が読み取ったビット周期でデータの書き込みを行う。
【0032】
設定部212は、通行券Tへの書き込み完了後に、書込処理部211が書き込んだ最後の極性に応じて、保持回路24の出力を設定する。具体的には、設定部212は、書込処理部211が書き込んだ最後の極性を示す値を補正回路25に入力する。そうすると、次の読み出し開始時における保持回路24の出力は、補正回路25により最後の極性を反転させたものに補正される。
【0033】
搬送制御部213は、搬送機構26の動作を制御する。新たな通行券Tに入口情報の記録を行う場合、又は、入口情報が記録された通行券Tが挿入口11Bに挿入された場合、搬送制御部213は搬送機構26に対し、通行券Tを順方向(図1の-Y方向)に搬送する指令を出力する。また、書込処理部211によるデータの書き込みが完了すると、搬送制御部213は、通行券Tを逆方向(図1の+Y方向)に搬送する指令を出力する。
【0034】
(書き込み装置の処理フロー)
図5は、本開示の一実施形態に係る書き込み装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、図5を参照しながら、本実施形態に係る書き込み装置20の処理の一例について詳細に説明する。ここでは、出口料金所に設けられた通行券処理機1の書き込み装置20が入口情報の読み出し及び出口情報の書き込み処理を行う例について説明する。
【0035】
通行券処理機1の挿入口11Bに通行券Tが挿入されると、書き込み装置20の搬送制御部213は、図5に示すように通行券Tを順方向(図1の-Y側)に搬送するように搬送機構26を制御する(ステップS01)。
【0036】
次に、読出処理部210は、通行券Tの磁気ストライプMから、順方向にデータ(入口情報)を読み出す(ステップS02)。
【0037】
図6は、本開示の一実施形態に係る書込波形及び読出波形の一例を示す図である。
図6において、(a)は書込処理部211が書き込むデータの書込波形の例、(b)は読出処理部210が読み出すデータの読出波形の例、(c)は従来技術における読出波形の比較例を示す。
磁気ストライプMに記録されたデータは、読出磁気ヘッド22及び保持回路24を通じて、図6の(b)に示す読出波形としてCPU21(読出処理部210)に入力される。読出処理部210は、この読出波形に基づいてデータ(「1」又は「0」)を読み取る。また、読出処理部210が磁気ストライプMの後端(図3の+Y側の端部)までデータ読み出しを完了すると、図6の(b)に示すように、保持回路24には、最後の読み取ったデータの極性(最後の読出極性P1)が保持されたままとなる。なお、図6の(b)の例では、最後の読出極性P1は「HIGH」である。
【0038】
次に、書込処理部211は、磁気ストライプMに新たなデータ(出口情報)を書き込む(ステップS03)。
【0039】
書込処理部211によるデータの書き込みが完了すると、搬送制御部213は、通行券Tの搬送を停止させる(ステップS04)。
【0040】
また、設定部212は、書込処理部211が書き込んだ最後の極性(最後の書込極性P2)、及びビット周期を取得する(ステップS05)。
【0041】
次に、設定部212は、最後の書込極性P2に基づいて保持回路24の出力を補正する(ステップS06)。上述のように、保持回路24には、読出磁気ヘッド22を通じて読み出した最後の読出極性P1が保持されたままとなっている。設定部212は、補正回路25に最後の書込極性P2を示す値を入力する。そうすると、補正回路25は、最後の書込極性P2を反転させて保持回路24に出力させる。図6の(b)の例では、最後の書込極性P2は「HIGH」であるので、補正回路25は、保持回路24に「LOW」を出力させる。
【0042】
設定部212による設定が完了すると、搬送制御部213は、通行券Tを逆方向(図1の+Y側)に搬送するように搬送機構26を制御する(ステップS07)。
【0043】
次に、読出処理部210は、データ(出口情報)が正しく書き込まれたか検証するために、通行券Tの磁気ストライプMから、逆方向にデータを読み出す(ステップS08)。このとき、読出処理部210は、ステップS05において設定部212が取得したビット周期に基づいて、データの読み出しを行う。
【0044】
例えば、従来の技術では、図6の(c)に示すように、保持回路に最後の読出極性P1が保持されたまま、逆方向の読み出しを開始する。そうすると、図6の(c)の例のように、最後の読出極性P1及び最後の書込極性P2が一致している場合、読出処理部は磁気ストライプの後端1ビット目の開始エッジを検出できないので、逆方向読み出し時の最初の半ビットを正常に読み取ることが困難である。
【0045】
一方、本実施形態に係る保持回路24は、図6の(b)に示すように、設定部212及び補正回路25により、最後の書き込み極性(「HIGH」)を反転させたもの(「LOW」)を出力するように設定される。このため、読出処理部210は、磁気ストライプMの後端1ビット目の開始エッジを検出することが可能となるため、逆方向読み出し時であっても正常にデータを読み取ることができる。
【0046】
なお、CPU21は、読出処理部210により読み出されたデータに基づいて、磁気ストライプMに正常にデータが記録されたかを確認した後、通行券Tを回収ボックス(不図示)に回収する。
【0047】
通行券処理機1の書き込み装置20は、通行券Tが挿入される度に、図5の一連の処理を実行する。
【0048】
また、書き込み装置20は、通行券処理機1が入口料金所に設置された通行券発行機であった場合も同様に、図5の一連の処理を実行する。このとき、搬送制御部213は、供給部(不図示)から供給された通行券Tを搬送路12の奥側に搬送する(ステップS01)。また、読出処理部210が通行券Tの磁気ストライプMからデータを読み出して(ステップS02)、通行券Tが新券であることが確認されると、書込処理部211は、磁気ストライプMにデータ(入口情報)を書き込む(ステップS03)。また、読出処理部210により、磁気ストライプMから逆方向にデータが読み出されると(ステップS08)、CPU21は、読み出したデータに基づいて、磁気ストライプMに正常にデータが記録されたかを確認した後、通行券Tを排出口11Aから排出する。その他の処理は、出口料金所における書き込み装置20の処理と同じである。
【0049】
(書き込み装置のハードウェア構成)
図7は、本開示の一実施形態に係る書き込み装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、図7を参照しながら、本実施形態に係る書き込み装置20のハードウェア構成について説明する。
【0050】
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0051】
上述の書き込み装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。プロセッサ901の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0052】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0053】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0054】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0055】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る書き込み装置20は、設定部212が最後の書込極性P2に応じて保持回路24の出力を設定する。このようにすることで、書き込み装置20は、ポストアンブルが記録されていない通行券Tであっても、データ書き込み後の通行券Tを逆方向(図1の+Y方向)に搬送しながら書き込みが正常に行われたか検証する際に、正しくデータを読み出すことができる。これにより、ポストアンブルを記録できない既存の通行券処理機を継続して使用することができるので、料金所への機器設置コストの増加を抑制することができる。
【0056】
また、設定部212は、補正回路25に最後の書込極性P2を入力し、補正回路25は保持回路24に最後の書込極性P2を反転して出力させる。このようにすることで、読出処理部210が通行券Tの磁気ストライプMを逆方向に読み出すときに、磁気ストライプM後端の1ビット目から正しくデータを読み出すことができる。
【0057】
また、設定部212は、書込処理部211が書き込んだデータのビット周期を取得し、読出処理部210は、このビット周期に基づいてデータの読み出しを行う。このようにすることで、読出処理部210は、磁気ストライプMに書き込まれたデータを正しく読み出すことができる。
【0058】
また、本実施形態に係る書き込み装置20は、読出磁気ヘッド22を一つのみ有しており、書き込みデータの検証を行う際は、通行券Tを逆方向(図1の+Y方向)に搬送させながらデータの読み出しを行う。このようにすることで、書き込み装置20は、書込磁気ヘッド23の奥側(図1の-Y側)に書き込みデータ検証用の読出磁気ヘッドを追加する必要がない。この結果、書き込み装置20の製造コストを低減することができるとともに、書き込み装置20が大型化することを抑制することができる。
【0059】
以上、図面を参照して第1の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。即ち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0060】
例えば、上述の実施形態において、書き込み装置20が通行券処理機1内に設けられる態様を例として説明したが、これに限られることはない、他の実施形態では、書き込み装置20は、交通機関の乗車券発行機内に設けられてもよい。また、書き込み装置20は、小売店等に設置されたプリペイドカード、ポイントカードなどの処理装置内に設けられてもよい。この場合、磁気記録媒体は、例えば交通機関の乗車券、プリペイドカード、ポイントカード等である。
【0061】
(付記)
上述の実施形態に記載の書き込み装置20、書き込み方法、及び書き込み装置20のプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0062】
本開示の第1の態様によれば、磁気記録媒体の書き込み装置(20)は、前記磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を出力する保持回路(24)と、前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込む書込処理部(211)と、前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、前記書込処理部が書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定する設定部(212)と、前記保持回路(24)の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行う読出処理部(210)と、を備える。
【0063】
このようにすることで、書き込み装置(20)は、ポストアンブルが記録されていない磁気記録媒体であっても、データ書き込み後の磁気記録媒体を逆方向(図1の+Y方向)に搬送しながら書き込みが正常に行われたか検証する際に、正しくデータを読み出すことができる。
【0064】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る書き込み装置(20)において、前記保持回路(24)の出力を補正する補正回路(25)を更に有し、前記設定部(212)は、書き込んだ最後の極性を前記補正回路(25)に入力し、前記補正回路(25)は、入力された前記極性を反転させて前記保持回路(24)に出力させる。
【0065】
このようにすることで、読出処理部(210)が磁気記録媒体を逆方向に読み出すときに、磁気記録媒体の後端の1ビット目から正しくデータを読み出すことができる。
【0066】
本開示の第3の態様によれば、第1又は第2の態様に係る書き込み装置(20)において、前記設定部(212)は、前記磁気記録媒体へ書き込んだデータのビット周期を更に取得し、前記読出処理部(210)は、前記ビット周期に基づいて前記データの読み出しを行う。
【0067】
このようにすることで、読出処理部(210)は、磁気記録媒体に書き込まれたデータを正しく読み出すことができる。
【0068】
本開示の第4の態様によれば、磁気記録媒体の書き込み方法は、前記磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を保持回路から出力するステップと、前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込むステップと、前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定するステップと、前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行うステップと、を有する。
【0069】
本開示の第5の態様によれば、プログラムは、磁気記録媒体の搬送中に生じた誘起電圧に応じて2値のいずれかの保持電圧を出力する保持回路(24)を有する書き込み装置(20)のコンピュータ(900)に、前記磁気記録媒体を磁化させてデータを書き込むステップと、前記磁気記録媒体への書き込み完了後に、書き込んだ最後の極性に応じて、前記保持回路の出力を設定するステップと、前記保持回路の出力設定後に、逆方向に前記磁気記録媒体を搬送しながら書き込まれた前記データの読み出しを行うステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0070】
1 通行券処理機
10 筐体
11A 排出口
11B 挿入口
12 搬送路
20 書き込み装置
21 CPU
210 読出処理部
211 書込処理部
212 設定部
213 搬送制御部
22 読出磁気ヘッド
23 書込磁気ヘッド
24 保持回路
25 補正回路
26 搬送機構
260 搬送ローラ
261 搬送ベルト
262 モータ
T 通行券(磁気記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7