(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】外殻付き飛行体
(51)【国際特許分類】
B64U 20/75 20230101AFI20240124BHJP
B64U 10/14 20230101ALI20240124BHJP
B64U 30/299 20230101ALI20240124BHJP
【FI】
B64U20/75
B64U10/14
B64U30/299
(21)【出願番号】P 2020085137
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/186967(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/042354(WO,A1)
【文献】特開2018-100063(JP,A)
【文献】特開2019-181972(JP,A)
【文献】特開2019-135142(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198155(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107352022(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 20/75
B64U 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従動回転可能な外殻を有する外殻付き飛行体であって、
前記外殻の内側に設定した第一回転軸を軸に回転可能な内側フレームと、
該内側フレームの内側に設定した、前記第一回転軸と直交する第二回転軸を軸に回転可能な飛行体と、を有しており、
前記飛行体は、
該飛行体に固定した縦シャフトと、
該縦シャフトと直交し、前記縦シャフトの軸周りを回転可能な横シャフト
と、
前記横シャフトの上方のトッププレートの上面に配置した、姿勢制御部を有する上部ユニットと、
前記横シャフトの下方のベースプレートの上面に配置した、複数のプロペラを有する下部ユニットと、を備え、
該横シャフトが、前記第二回転軸となる
ものであり、
前記縦シャフトには、円管状のカラーが回転可能に取り付けられており、
前記カラーには、一対の前記横シャフトが直線状に取り付けられており、
前記カラーは、上部プレートと下部プレートで回転可能に挟み込まれており、
前記複数のプロペラは、前記下部プレートと前記ベースプレートの間に複数のスペーサを挟んで形成した空間で回転することを特徴とする外殻付き飛行体。
【請求項2】
請求項
1に記載の外殻付き飛行体において、
前記縦シャフトは中空シャフトであり、該中空シャフト内に、前記上部ユニットと前記下部ユニットを接続する、電源線または制御信号線が配線されることを特徴とする外殻付き飛行体。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の外殻付き飛行体において、
前記飛行体の重心は、前記横シャフトより下方に位置することを特徴とする外殻付き飛行体。
【請求項4】
請求項1
または請求項2に記載の外殻付き飛行体において、
前記外殻が、球状、あるいは、多面体で構成されたことを特徴とする外殻付き飛行体。
【請求項5】
請求項1
または請求項2に記載の外殻付き飛行体において、
前記飛行体は、高度検出部を備えることを特徴とする外殻付き飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従動回転可能な外殻を有する、外殻付き飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ設備やプラント内外等の高所や狭隘環境の点検・調査を効率良く、安全に行うため、遠隔操作或いは、自律移動が可能な飛行体を利用する方法がある。狭隘環境では、飛行体は構造物や壁面と一切接触せずに移動させるのは困難であるので、飛行体に従動回転可能な外殻を備え、外殻が障害物と接触して外力を受けた場合でも、飛行体の姿勢が乱れない構造を有することが望ましい。このような外殻付き飛行体を開示する先行技術文献として、特許文献1がある。
【0003】
例えば、特許文献1の請求項1には、「機体と、前記機体に回動可能に接続される外枠と、を有する飛行装置であって、前記機体は、回転翼と、前記回転翼を回転させる回転翼駆動手段と、を有し、前記外枠は、重力方向と交差する第1の回動軸で回動可能な第1の外枠を有し、前記回転翼、及び前記回転翼駆動手段の重心は、前記重力方向において、前記第1の回動軸より下方に位置していることを特徴とする飛行装置」が記載されている。
【0004】
また、同文献の段落0097には、「
図10(a)は、ジオデシックドーム構造の一例を示している。本実施形態では、相互に直交するA軸、B軸、及びC軸で回動可能なジオデシックドーム構造の外枠を含む3つの外枠を有している。第1外枠60cは、C軸回りに回動するジオデシックドーム構造を有している。第1外枠60cの内側には、B軸回りに回動する第2外枠60bが配置されている。また第2外枠60bの内側には、A軸回りに回動する第3外枠60aが配置されている。更に第3外枠60aの内側には、マルチコプタ10が配置されている。マルチコプタ10は、外枠60に対してA軸、B軸、及びC軸の周りに独立に回動することができる。」と記載されており、段落0098には、「
図10(b)は、フラーレン構造の一例を示している。本実施形態では、上記
図10(a)と同様に、相互に直交するA軸、B軸、及びC軸で回動可能なフラーレン構造の外枠を含む3つの外枠を有している。第1外枠60cは、C軸回りに回動するフラーレン構造を有している。第1外枠60cの内側には、B軸回りに回動する第2外枠60bが配置されている。また第2外枠60bの内側には、A軸回りに回動する第3外枠60aが配置されている。更に第3外枠60aの内側には、マルチコプタ10が配置されている。マルチコプタ10は、外枠60に対してA軸、B軸、及びC軸の周りに独立に回動することができる。」と記載されている。
【0005】
このように、特許文献1では、マルチコプタ、第1外枠60c、第2外枠60b、第3外枠60aの各接続部をそれぞれ直交配置した3軸ジンバル構造によって、A軸、B軸、C軸(ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸)の3軸回転自由度を得ていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、飛行体には、より長時間の飛行が求められる。プロペラ推力は、プロペラ直径の3乗に比例するため、飛行効率の観点から、可能な限り大きな直径のプロペラを使用することが望ましい。
【0008】
しかしながら、上記した従来の3軸ジンバル構造では、外殻内に2つのフレーム(内側フレーム、外側フレーム)が存在するため、外殻に寸法制限がある場合、それらと干渉しないように飛行体のプロペラの直径を小さくする必要があり、結果として、飛行体の推力が抑制され、ペイロードや飛行時間も抑制される課題があった。また、外殻内に2つのフレームがあると、飛行体が点検などを行う際の視認性が劣化するという課題もあった。
【0009】
そこで、本発明では、直径のより大きなプロペラを採用したり、点検時の視認性をより高めたりするため、飛行体と外殻を接続するフレーム数を削減した、外殻付き飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の外殻付き飛行体は、従動回転可能な外殻を有するものであって、前記外殻の内側に設定した第一回転軸を軸に回転可能な内側フレームと、該内側フレームの内側に設定した、前記第一回転軸と直交する第二回転軸を軸に回転可能な飛行体と、を有しており、前記飛行体は、該飛行体に固定した縦シャフトと、該縦シャフトと直交し、前記縦シャフトの軸周りを回転可能な横シャフトと、前記横シャフトの上方のトッププレートの上面に配置した、姿勢制御部を有する上部ユニットと、前記横シャフトの下方のベースプレートの上面に配置した、複数のプロペラを有する下部ユニットと、を備え、該横シャフトが、前記第二回転軸となるものであり、前記縦シャフトには、円管状のカラーが回転可能に取り付けられており、前記カラーには、一対の前記横シャフトが直線状に取り付けられており、前記カラーは、上部プレートと下部プレートで回転可能に挟み込まれており、前記複数のプロペラは、前記下部プレートと前記ベースプレートの間に複数のスペーサを設けて形成した空間で回転する外殻付き飛行体とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外殻と、単一の内側フレームで3軸回転自由度を得られるため、外側フレームが無い分、飛行体のプロペラ直径を大きく取ることが可能となり、推力の低下を抑えることができる。また、外殻内のフレームが1つとなるため、遠隔操作時の視認性が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1の外殻付き飛行体の主要構造の分解図である。
【
図4】
図3の飛行体の上下ユニット接合部の外観図である。
【
図6】
図1の外殻付き飛行体の内側フレームである。
【
図8】
図1の外殻付き飛行体の各回転軸をある程度回転させた状態の様子である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施例に係る外殻付き飛行体1を説明する。なお、各図において、同一の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合は、その説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施例の外殻付き飛行体1の外観図であり、
図2は、その要素分解図である。両図に示すように、外殻付き飛行体1は、飛行体10と、外殻20と、内側フレーム30で構成されており、外殻20内のフレームが単一である構成、すなわち、特許文献1の第2外枠を省略した構成が特徴である。なお、
図1の座標系定義に示すように、ロール軸をX軸、ピッチ軸をY軸、ヨー軸をZ軸とする。以下、断らない限りこの座標系で説明する。
【0015】
始めに、
図3を用いて、飛行体10の構成を説明する。飛行体10は、上部ユニット10uと、下部ユニット10bで構成され、両者間に横シャフト12が回転可能に配置される。
【0016】
上部ユニット10uは、トッププレート15bの上面に、飛行体10の姿勢や高度を制御する姿勢制御部15cと、気圧センサ等の高度検出部15d等を配置したものである。なお、姿勢制御部15cには、3軸角速度と3軸加速度を検出する慣性計測装置(Inertial measurement unit、IMU)が搭載されている。また、トッププレート15bの上面には、図示しない、カメラ、操縦無線受信機、映像無線送信機、LED照明等も配置される。
【0017】
下部ユニット10bは、ベースプレート15eの上面に、4個のモータ15fと4個のスペーサ15gを配置し、ベースプレート15eの下面に、動力源15hを配置したものである。モータ15fは、プロペラ15aを回転させるためのものであり、スペーサ15gは、プロペラ15aと横シャフト12が干渉しないように空間を設けるためのものである。なお、モータ15fとスペーサ15gの個数はここに例示した数に限定されない。また、動力源15hは、姿勢制御部15cやモータ15fを駆動させるためのバッテリ等である。
図3のように、重量物である動力源15hを横シャフト12の下方に配置して、飛行体10を低重心設計としたことで、外殻付き飛行体1が不整地に着陸した場合でも、外殻20内の飛行体10は常に水平を維持することができ、安定した再浮上が可能となる。
【0018】
なお、
図3では、上部ユニット10uと下部ユニット10bの両方に機能分散した飛行体10を例示したが、上部ユニット10uの機能を下部ユニット10bに集約することで、上部ユニット10uを省略した構成としても良い。ただし、下部ユニット10bに機能を集約すると、下部ユニット10bが大型化し、内側フレーム30と干渉する可能性が高まるため、
図3のように、各機能を上下に分散配置させて、外殻20内の空間を有効に利用する構成がより望ましい。
【0019】
次に、
図4、
図5を用いて、飛行体10の上部ユニット10uと下部ユニット10bを接合する上下ユニット接合部の詳細を説明する。
図4は、上下ユニット接合部の外観図であり、
図5は、その分解図である。この上下ユニット接合部は、
図5に示すように、一対の横シャフト12を直線状に取り付けた円管状のカラー13と、略十字状の上部プレート14uと、中空の縦シャフト11を上面に配置した略十字状の下部プレート14bと、から構成され、
図4に示すように、上部プレート14uと下部プレート14bで、カラー13を回転可能に挟み込んだ構造である。つまり、本実施例では、縦シャフト11が1軸目のヨー軸となり、ヨー軸と直交する横シャフト12がヨー軸周りを回転する。また、上下ユニットを繋ぐ電源線や制御信号線が回転する横シャフト12と干渉しないように、中空の縦シャフト11内に電源線等を配線する構造となっている。なお、横シャフト12の先端には、後述する接続ピン31aが挿入される孔12aが設けられている。また、上部プレート14uには上部ユニット10uのトッププレート15bをボルトで締結するためのボルト穴が設けられており、下部プレート14bには下部ユニット10bのスペーサ15gをボルトで締結するためのボルト穴が設けられている。
【0020】
続いて、本実施例の内側フレーム30の構成を、
図6を用いて説明する。ここに示すように、内側フレーム30には、内向きに接続ピン31aを備えた一対の接続部31と、外向きに接続ピン32aを備えた一対の接続部32を、直交に配置している。飛行体10の横シャフト12の先端の孔12aには、接続部31の接続ピン31aが挿入される。したがって、飛行体10は、横シャフト12を軸として回転可能であり、この軸が2軸目のピッチ軸となる。特許文献1では、第1外枠60c内には、第3外枠60aに加え、第2外枠60bも存在していたため、第2外枠60bの厚みの分、第3外枠60aを小さくする必要があり、結果としてマルチコプタのプロペラの直径も小さくしなければならなかった。一方、本実施例の構成では、外殻20内には特許文献1の第2外枠60bに相当するものがなく、内側フレーム30を外殻20の内径近くまで拡大できるため、飛行体10のプロペラ15aの直径を従来よりも大きく取ることが可能である。また、従来構成に比べ、飛行体10が点検や調査を行う際の視認性も改善する。
【0021】
最後に、外殻20の構成を、
図7を用いて説明する。ここに示すように、外殻20は、多数の外殻ロッド21を外殻接続部22で接続したジオデシックドーム構造であり、対向する一対の外殻接続部22に孔を設けたものを、接続部23としている。外殻20と内側フレーム30は、外殻20の接続部23の孔に、
図6で示した接続部32の接続ピン32aを挿入することで回転可能に接続される。この接続部23で得られる回転軸が3軸目のロール軸となる。このような本実施例の構成により、3軸回転自由度を有する外殻付き飛行体1が実現可能となる。
【0022】
よって、
図8に示すように、各回転軸がどのように回転しても、飛行体10、内側フレーム30、外殻20の三者は互いに干渉することなく、飛行体10と外殻20は独立した系となる。その結果、外殻20が障害物に接触して外力を受けた場合でも、従来同様に、飛行体10の姿勢が乱れない構造を維持することが可能である。
【0023】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、上記の実施例では、飛行体10は、4つのプロペラを備えるクワッドコプタ型であったが、飛行体であれば、プロペラの枚数や有無に関わらず、特に限定しない。また、内側フレーム30や、外殻20の形状に関しても特に限定せず、外殻は球状或いは球状に近い多面体以外でも構わない。
【符号の説明】
【0024】
1、2…外殻付き飛行体、
10…飛行体、
10u…上部ユニット、
10b…下部ユニット、
11…縦シャフト、
12…横シャフト、
12a 孔、
13…カラー、
14u…上部プレート、
14b…下部プレート、
15a…プロペラ、
15b…トッププレート、
15c…姿勢制御部、
15d…高度検出部、
15e…ベースプレート、
15f…モータ、
15g…スペーサ、
15h…動力源、
20…外殻、
21…外殻ロッド、
22…外殻接合部、
23…接続部、
30…内側フレーム、
31、32…接続部、
31a、32a…接続ピン