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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
E06B7/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089290
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183777
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 康生
(72)【発明者】
【氏名】高見 綾一
(72)【発明者】
【氏名】福井 淳央
(72)【発明者】
【氏名】若代 憲宏
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-48514(JP,A)
【文献】特開2004-238960(JP,A)
【文献】特開平11-107648(JP,A)
【文献】特開2013-117143(JP,A)
【文献】実開昭60-148489(JP,U)
【文献】特開2014-173409(JP,A)
【文献】特開2005-97963(JP,A)
【文献】特開2000-192750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/14
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子を囲む枠体の下枠に、前記障子の下側及び室内側に位置する第1枠部と、前記障子の室内側に配置されて前記第1枠部の室内側で前記第1枠部に連結される第2枠部と、を有する建具であって、
前記第1枠部は、前記第2枠部の下側で前記第2枠部に沿って配置される溝部と、前記溝部から前記下枠の室外側まで連通する排水経路と、を有し、
前記第2枠部は、前記下枠の室内側で水を受ける水受け溝と、前記水受け溝から前記溝部に向かって排水する排水部と、前記水受け溝を覆う覆い部と、前記覆い部の上側から前記水受け溝に水を流入させる流入部と、室内側に突出するアングル部と、前記アングル部に取り付けられて前記アングル部を覆うカバー材と、を有し、
前記覆い部は、前記カバー材に形成され、
前記水受け溝は、前記アングル部に形成されて、前記覆い部との間に中空部を形成する建具。
【請求項2】
請求項に記載された建具において、
前記第2枠部は、前記カバー材により覆われた中空部を有する建具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記第2枠部は、前記水受け溝の長手方向の端部に配置された止水材を有する建具。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載された建具において、
前記覆い部の上面は、平坦面に形成されている建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下枠の排水経路を介して排水する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の室内側では、結露等により、水が下枠の室内側の表面に付着して、下枠の上面に水が溜まることがある。そこで、従来、室内側に位置する樹脂下枠の凹部、及び、室外側に位置する金属下枠の排水路を介して、下枠の室内側から室外側に向かって排水する複合窓の排水構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された従来の複合窓の排水構造において、樹脂下枠の凹部は、結露水を受け入れる排水溝(水受け溝)であり、底部に、排水ガイドが装着された開口を有している。結露水は、樹脂下枠の凹部に流れ込み、排水ガイドにより、金属下枠に向かって排水される。ところが、従来の複合窓の排水構造では、樹脂下枠の室内側で、凹部及び排水ガイドが露出しており、ごみが凹部及び排水ガイドに溜まり易く、ごみの清掃が行い難くなる虞がある。また、凹部から円滑に排水するために、凹部及び排水ガイドの頻繁な清掃が必要なこともある。樹脂下枠の凹部及び排水ガイドの露出に伴い、下枠の意匠性に影響が生じることも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3257973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、建具の下枠の室内側から室外側に向かって効率的に排水するとともに、下枠の室内側で水受け溝の露出を抑制して、下枠の意匠性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、障子を囲む枠体の下枠に、前記障子の下側及び室内側に位置する第1枠部と、前記障子の室内側に配置されて前記第1枠部の室内側で前記第1枠部に連結される第2枠部と、を有する建具であって、
前記第1枠部は、前記第2枠部の下側で前記第2枠部に沿って配置される溝部と、前記溝部から前記下枠の室外側まで連通する排水経路と、を有し、
前記第2枠部は、前記下枠の室内側で水を受ける水受け溝と、前記水受け溝から前記溝部に向かって排水する排水部と、前記水受け溝を覆う覆い部と、前記覆い部の上側から前記水受け溝に水を流入させる流入部と、室内側に突出するアングル部と、前記アングル部に取り付けられて前記アングル部を覆うカバー材と、を有し、
前記覆い部は、前記カバー材に形成され、
前記水受け溝は、前記アングル部に形成されて、前記覆い部との間に中空部を形成する建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建具の下枠の室内側から室外側に向かって効率的に排水できるとともに、下枠の室内側で水受け溝の露出を抑制して、下枠の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建具の正面図である。
図2図1のX1-X1線で切断した本実施形態の建具の縦断面図である。
図3図1のX2-X2線で切断した本実施形態の建具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の建具は、建物の開口部に取り付けられて、建物の室内(屋内)と室外(屋外)の間に設置される。以下では、窓用の建具であるサッシ窓を例にとり、本実施形態の建具について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の建具1の正面図であり、室外側からみた建具1の概略構成を示している。
図示のように、建具1は、開閉窓であり、開閉可能な障子2と、障子2を囲む枠体3を備えている。障子2は、パネル状の可動障子(パネル体)であり、枠体3の開口部3Aに配置されている。障子2が室内外方向に開閉(移動)して、障子2により、枠体3の開口部3Aが開閉される。
【0011】
なお、建物に設けた建具1を正面からみたときに、上下となる方向が上下方向であり、左右となる方向が左右方向である。図1では、上下方向は鉛直方向であり、左右方向は水平方向である。室内外方向は、建物に設けた建具1における室内外方向(屋内外方向)である。このように、建具1に関する方向は、建物に設けた状態での方向で特定する。また、建具1に関して室内側、室外側とは、建物に設けた状態での室内側、室外側である。
【0012】
障子2は、方形状の框体10と、框体10内に配置されたパネル11を有している。框体10は、互いに組み合わされた4つの框12~15(上框12、下框13、一対の縦框14、15)を有している。框12~15は、框体10を構成する框材であり、例えば、押出成形により形成された形材からなる。上框12と下框13は、框体10の上下の横框であり、框体10の上部と下部で左右方向(横方向)に沿って延びる。一対の縦框14、15は、框体10の左右の側部で上下方向(縦方向)に沿って延びる。上框12、下框13、及び、左右の縦框14、15が枠組みされて、框12~15の端部同士が接続されている。パネル11は、例えば、複数のガラス板を有する複層ガラスであり、框体10に嵌め込まれている。
【0013】
枠体3は、方形状の開口枠(窓枠)であり、建物の開口部に設置される。また、枠体3は、互いに組み合わされた4つの枠20~23(上枠20、下枠21、一対の縦枠22、23)を有し、4つの枠20~23により、方形状の開口部3Aを形成する。枠20~23は、枠体3を構成する枠材であり、例えば、押出成形により形成された形材からなる。上枠20と下枠21は、枠体3の上下の横枠であり、枠体3の上部と下部で左右方向に沿って延びる。一対の縦枠22、23は、枠体3の左右の側部で上下方向に沿って延びる。上枠20、下枠21、及び、左右の縦枠22、23が枠組みされて、枠20~23の端部同士が接続されている。
【0014】
図2は、図1のX1-X1線で切断した本実施形態の建具1の縦断面図である。図2では、枠体3の下枠21を実線で示し、下框13を含む障子2の下側部分を二点鎖線で示している。
図示のように、下枠21は、下枠21のベース部である第1枠部30と、第1枠部30の室内側で第1枠部30に連結される第2枠部40を有している。第1枠部30は、下枠21の室外側枠部であり、建物の下額縁4よりも室外側に配置される。下額縁4は、建物の開口部の下縁部に設けられる額縁であり、左右方向に延びる。第2枠部40は、下枠21の室内側枠部であり、障子2の室内側及び下額縁4の上側に配置される。
【0015】
第1枠部30は、建物の躯体に固定される下枠本体であり、障子2の下側及び室内側に位置している。第2枠部40は、第1枠部30の室内側において第1枠部30に装着される装着枠部であり、第1枠部30の室内側の露出部分を覆う。障子2の室内側及び下枠21の室内側では、第1枠部30が第2枠部40により遮蔽されて、下枠21の第2枠部40が露出する。ここでは、第1枠部30は、金属(例えば、アルミニウム合金)からなる金属枠部であり、第2枠部40は、合成樹脂からなる樹脂枠部である。従って、建具1は、複合サッシ窓であり、複合枠である枠体3の下枠21に、金属製の第1枠部30と合成樹脂製の第2枠部40を有している。
【0016】
第1枠部30は、板状の見込み部31と、見込み部31の下側に位置する下側部(室外側壁部32、水切り部33、室外側中空部34)と、見込み部31の上側に位置する上側部(立ち上がり部35、上片部36、室内側中空部37)と、見込み部31の室内側に位置する室内側部(溝部38)と、排水経路50を有している。見込み部31は、下枠21の見込み方向(室内外方向)に沿って形成されて、障子2の下側に配置される。室外側壁部32、水切り部33、及び、室外側中空部34は、障子2の下側に配置され、立ち上がり部35、上片部36、室内側中空部37、及び、溝部38は、障子2の室内側に配置される。
【0017】
室外側壁部32は、第1枠部30及び下枠21の室外側の見付け部であり、見込み部31の室外側の端部から下側に突出して、下枠21の見付け方向(上下方向)に沿って形成されている。水切り部33は、室外側壁部32の下側に位置し、室外側に向かって突出している。室外側壁部32と水切り部33は、下枠21の室外側において露出している。室外側中空部34は、室外側壁部32の室内側に位置するとともに、室内側中空部37よりも室外側に形成されている。室外側中空部34は、中空状に形成された凸部であり、見込み部31及び室外側壁部32により区画されて、見込み部31の室外側(室外側壁部32側)の部分から下側に突出している。
【0018】
立ち上がり部35は、第1枠部30の室内側の壁部であり、枠体3の開口部3Aの内方側(上側)に向かって立ち上がる。また、立ち上がり部35は、見込み部31の室内側の端部から上側に突出して、下枠21の見付け方向に沿って形成されている。上片部36は、立ち上がり部35に接続する突片であり、立ち上がり部35の上端部から室外側(障子2側)に突出して、室内側中空部37の上側に位置している。上片部36が室内側中空部37から上側に離隔して、上片部36と室内側中空部37の間に空所が設けられている。
【0019】
室内側中空部37は、立ち上がり部35の室外側に位置するとともに、室外側中空部34よりも室内側に形成されている。室内側中空部37は、中空状に形成された凸部であり、立ち上がり部35及び見込み部31により区画されて、見込み部31の室内側(立ち上がり部35側)の部分から上側に突出している。立ち上がり部35の一部は、室内側中空部37の室内側の第1区画壁部37Aであり、室内側中空部37の室外側の第2区画壁部37Bと室内外方向において対向している。第1区画壁部37Aは、室内側中空部37の室内側の部分を区画し、第2区画壁部37Bは、室内側中空部37の室外側の部分を区画している。
【0020】
溝部38は、下側に向かって窪む凹部であり、立ち上がり部35の室内側に位置して、上側に向かって開放されている。また、溝部38は、立ち上がり部35から室内側に突出して、下額縁4に当接し、第1枠部30、下枠21、及び、下額縁4の長手方向(左右方向)に延びる。溝部38は、第2枠部40の下側で、第2枠部40に沿って配置される。溝部38は、室内外方向に沿って形成された溝底部38Aと、溝底部38Aから上側に突出する一対の溝壁部38B、38C(第1溝壁部38B、第2溝壁部38C)を有している。
【0021】
溝底部38Aは、立ち上がり部35から室内側に突出している。溝部38及び溝底部38Aは、見込み部31よりも上側に位置するとともに、下額縁4の上面よりも下側に位置している。第1溝壁部38Bは、溝底部38Aの室外側の端部に接続する室外側溝壁部であり、第2溝壁部38Cは、溝底部38Aの室内側の端部に接続する室内側溝壁部である。ここでは、第1溝壁部38Bは、立ち上がり部35の一部であり、第2溝壁部38Cは、下額縁4に当接する当接部である。
【0022】
第1枠部30は、立ち上がり部35(第1溝壁部38B、第1区画壁部37A)、第2区画壁部37B、見込み部31の室外側中空部34を区画する部分、及び、室外側壁部32のそれぞれに形成された排水孔51~54を有している。排水孔51~54は、第1枠部30の排水経路50に位置している。室外側壁部32の排水孔54には、排水弁55が取り付けられている。排水経路50は、排水孔51~54、溝部38、室内側中空部37、見込み部31、及び、室外側中空部34により構成されており、室内側から室外側に向かって次第に低くなるように第1枠部30に設けられている。排水経路50は、溝部38から第1枠部30及び下枠21の室外側まで連通して、水を溝部38から下枠21の室外側に向かって排水する。
【0023】
下枠21の室内側で溝部38内に水が流入したときには、水は、溝部38から排水経路50を通って下枠21の室外側に排水される。その際、水は、溝部38から立ち上がり部35の排水孔51を通って室内側中空部37に排水されて、室内側中空部37内に流入する。また、水は、室内側中空部37から第2区画壁部37Bの排水孔52を通って排水されて、見込み部31の上面を室外側に向かって流れる。続いて、水は、見込み部31の排水孔53を通って室外側中空部34内に流入し、室外側中空部34から室外側壁部32の排水孔54(排水弁55)を通って下枠21の室外側に排水される。
【0024】
第2枠部40は、第1枠部30に装着される装着材41と、装着材41の室内側の部分を覆うカバー材60を有している。第2枠部40の装着材41は、第1枠部30の第2溝壁部38C及び上片部36の室外側の先端部に係合して、第1枠部30に装着される。第1枠部30の立ち上がり部35、上片部36、及び、溝部38は、第1枠部30の室内側の露出部分であり、第2枠部40は、装着材41により、第1枠部30の室内側の露出部分(立ち上がり部35、上片部36、溝部38)を覆う。第1枠部30の溝部38は、下枠21の内側に位置する内溝部であり、下枠21の室内側で第2枠部40の装着材41により遮蔽されて、下枠21の外部には露出しない。
【0025】
第2枠部40は、装着材41に形成された室内側壁部42、上片部43、凸部44、アングル部45、水受け溝46、及び、排水部47を有するとともに、カバー材60に形成された上面部61、覆い部62、突片63、及び、複数の当接片64~66(第1当接片64、第2当接片65、第3当接片66)を有している。室内側壁部42は、下枠21の室内側の見付け部であり、下枠21の見付け方向に沿って形成されて、第1枠部30の溝部38の上側に位置している。また、室内側壁部42は、第1枠部30の立ち上がり部35から室内側に離隔して配置されて、室内外方向において立ち上がり部35と対向している。
【0026】
室内側壁部42と立ち上がり部35の間には、内側空間48が形成されるとともに、凸部44が配置されている。内側空間48は、下枠21の内側(第1枠部30と第2枠部40の間)に形成されて、障子2の室内側、及び、溝部38の上側に位置している。第2枠部40の上片部43は、室内側壁部42に接続する突片であり、室内側壁部42の上端部から室外側(障子2側)に突出している。第2枠部40の上片部43は、第1枠部30の立ち上がり部35と上片部36の上側に位置して、第1枠部30の上片部36に載置されている。凸部44は、中空状に形成された装着材41の中空部であり、内側空間48に配置されている。凸部44は、室内側壁部42から室外側に突出して、立ち上がり部35に当接する。
【0027】
アングル部45は、下額縁4に載置される載置部であり、室内側壁部42から室内側に突出して、下額縁4の上面に当接する。アングル部45は、上側に向かって突出する2つの突起45A、45B(第1突起45A、第2突起45B)を有している。室外側の第1突起45Aは、アングル部45の室内外方向の中間部に形成され、室内側の第2突起45Bは、アングル部45の室内側の端部(先端部)に形成されている。
【0028】
水受け溝46は、下側に向かって窪む凹部であり、上側に向かって開放されている。また、水受け溝46は、室内側壁部42の室内側に位置して、下枠21の室内側で水を受ける。水受け溝46は、アングル部45に形成された溝部であり、アングル部45の室外側の部分において第1突起45Aと室内側壁部42の間に形成されている。従って、第1突起45Aは、水受け溝46の室内側の溝壁部であり、室内側壁部42の一部(下側部)は、水受け溝46の室外側の溝壁部である。水受け溝46は、室内側壁部42から室内側に突出して、下額縁4の上側に配置され、第2枠部40、下枠21、及び、下額縁4の長手方向に延びる。
【0029】
第1枠部30の溝部38は、水受け溝46の下側に配置されて、水受け溝46に沿って配置されている。溝部38の第2溝壁部38Cは、水受け溝46の溝底部及びアングル部45に当接する。水受け溝46及びアングル部45(ここでは、水受け溝46の室外側の部分及びアングル部45の室外側の端部)は、溝部38の上側に位置し、溝部38に沿って配置されている。水受け溝46と溝部38は、上下方向に隣り合い、互いに並列して配置されている。
【0030】
排水部47は、水受け溝46に形成された貫通孔(排水孔)であり、水受け溝46を区画する溝壁部又は溝底部に形成されている。ここでは、排水部47は、水受け溝46の室外側の溝壁部(室内側壁部42)に形成され、水受け溝46の内側及び溝部38の上側に向かって開口している。水受け溝46と溝部38は、排水部47により、互いに連通している。水受け溝46内の水は、排水部47により、水受け溝46から第1枠部30の溝部38に向かって排水される。溝部38は、水受け溝46から流入する水を受ける。
【0031】
カバー材60は、アングル部45に取り付けられて、アングル部45の上側で、上面部61及び突片63により、アングル部45を覆う。カバー材60の覆い部62は、上面部61の一部(室外側部)であり、覆い部62を含む上面部61は、アングル部45の上側に配置されている。上面部61は、室内外方向に沿って配置される板状部であり、アングル部45から上側に離隔して、上下方向において、アングル部45と対向して配置されている。突片63は、上面部61の室内側の端部から下側に突出して、アングル部45の室内側に配置されている。
【0032】
当接片64~66は、上面部61から下側に突出して、アングル部45に当接する。室内外方向に離隔する3つの当接片64~66のうち、室内側の第1当接片64と第2当接片65がアングル部45の突起45A、45Bに係合して、カバー材60がアングル部45に着脱可能に取り付けられる。3つの当接片64~66のうち、最も室外側に位置する第3当接片66は、覆い部62から下側に突出して、水受け溝46内に配置され、水受け溝46の溝底部に当接する。
【0033】
覆い部62は、室外側に突出するヒレ状の突部であり、アングル部45の一部である水受け溝46の上側に張り出す。カバー材60がアングル部45に取り付けられた状態で、覆い部62は、水受け溝46の上側に配置されて、水受け溝46を上側から覆う。また、覆い部62は、水受け溝46から上側に離隔して、上下方向において、水受け溝46と対向して配置されている。上面部61及び覆い部62の上面は、凹凸のない平坦面に形成されており、室内外方向に沿って配置されて、下枠21の室内側で露出している。
【0034】
第2枠部40は、覆い部62を含むカバー材60により覆われた中空部70~72(第1中空部70、第2中空部71、第3中空部72)を有している。中空部70~72は、カバー材60の上面部61(覆い部62)とアングル部45の間に形成されて、第2枠部40の長手方向に延び、下額縁4の上側に配置される。複数の中空部70~72は、カバー材60の当接片65、66により室内外方向に仕切られて、室内外方向に並べて形成される。中空部70~72のうち、最も室外側に位置する第3中空部72は、覆い部62と水受け溝46の間に形成されて、水受け溝46の内側の箇所を含む。
【0035】
第2枠部40は、覆い部62の上側から水受け溝46に水を流入させる流入部73を有している。流入部73は、水受け溝46に向かって水を通過させる流入口であり、水受け溝46の上側に位置して、覆い部62の上側から水受け溝46の内側(覆い部62の下側)に向かって開口している。ここでは、流入部73は、覆い部62と室内側壁部42の間に設けられた隙間であり、覆い部62の室外側の先端部及び室内側壁部42(水受け溝46の室外側の溝壁部)に沿って延びる。覆い部62は、室内側壁部42から室内側に離隔して配置されて、室内側壁部42との間に隙間(流入部73)を形成する。覆い部62は、水受け溝46における流入部73の下側に位置する箇所を除いて、水受け溝46を覆う。
【0036】
例えば、第2枠部40の室内側の表面に結露が生じたときには、結露水は、室内側壁部42に沿って下側に流れる。このような結露水を含む水は、下枠21の室内側で、覆い部62の上側から流入部73を通って水受け溝46内に流入する。水受け溝46内に流入した水は、水受け溝46の排水部47、第1枠部30の溝部38、及び、排水経路50を介して、下枠21の室外側に排水される。その際、水は、水受け溝46から排水部47を通って溝部38に向かって排水されて、水受け溝46から溝部38内に流入する。続いて、水は、溝部38から排水経路50を通って下枠21の室外側に排水される。
【0037】
図3は、図1のX2-X2線で切断した本実施形態の建具1の縦断面図であり、図2と同様に、下枠21と障子2の下側部分を示している。また、図3では、下枠21の長手方向の端部における断面を示している。
図示のように、第2枠部40は、水受け溝46の長手方向(左右方向)の両側の端部に配置された止水材74を有している。水受け溝46の端部は、第2枠部40の長手方向の端部に位置している。
【0038】
止水材74は、ブロック状に形成されたシール材であり、水受け溝46の両側の端部のそれぞれで、第3中空部72に収容されている。また、止水材74は、覆い部62と水受け溝46の溝底部の間に挟まれて、覆い部62、水受け溝46の溝底部、及び、第3当接片66に密着する。止水材74は、水受け溝46の端部に収容されて、水受け溝46の端部から水受け溝46の長手方向の外側に水が流出するのを規制する。これにより、下枠21の端部と縦枠22、23の端部の接続箇所から水が漏れるのが規制されて、水が建物の躯体まで到達するのが防止される。
【0039】
以上説明した建具1では、下枠21の室内側から室外側に向かって効率的に排水できるとともに、下枠21の室内側で、第2枠部40の覆い部62により、水受け溝46の露出を抑制して、下枠21の意匠性を向上させることができる。また、覆い部62により、水受け溝46及び水受け溝46に溜まった水を隠すことができる。水受け溝46にごみも溜まり難くなるため、下枠21の室内側の箇所を容易に清掃することができる。覆い部62がカバー材60に形成されており、カバー材60をアングル部45から取り外すことで、水受け溝46を容易に清掃することができる。
【0040】
カバー材60により、第2枠部40に中空部70~72を容易に形成することができる。また、中空部70~72が第2枠部40の断熱層となり、下枠21の断熱性を向上させることができる。止水材74により、水受け溝46の長手方向の端部から水が流出するのを抑制することができる。これにより、水受け溝46から溝部38に確実に排水できるとともに、下枠21の端部と縦枠22、23の端部の接続箇所から建物の躯体側に水が浸入するのを防止することができる。覆い部62の上面が平坦面に形成されており、覆い部62の上面を容易に清掃することができる。覆い部62の上面に水が溜まるのを抑制して、流入部73から水受け溝46に水を円滑に流入させることもできる。
【0041】
なお、覆い部62(上面部61)の上面は、水平方向に沿った水平面であってもよく、水平方向に対して傾斜した傾斜面であってもよい。覆い部62の上面に、室内側から室外側(流入部73側)に向かって次第に低くなる勾配を設けるようにしてもよい。このように、覆い部62の上面に、流入部73に向かって次第に低くなる勾配を設けることで、覆い部62の上面に水が滞留するのを抑制することができる。また、覆い部62の上面から流入部73に水を流して、流入部73を通して水受け溝46に水を円滑に流入させることができる。
【0042】
覆い部62は、カバー材60に形成せずに、第2枠部40のカバー材60以外の部分(例えば、装着材41)に形成してもよい。この場合には、カバー材60を第2枠部40に設けないようにしてもよい。水受け溝46は、アングル部45に形成せずに、第2枠部40のアングル部45以外の部分(例えば、装着材41の室内側壁部42とアングル部45の間の部分)に形成してもよい。
【0043】
排水部47は、水受け溝46に形成された貫通孔に限定されず、例えば、水受け溝46に形成された切欠き、又は、スリットであってもよい。また、排水部47は、水受け溝46から溝部38に排水可能な部分であればよく、水受け溝46と溝部38を連通すれば、その形状は限定されない。
【0044】
流入部73は、覆い部62と室内側壁部42の間の隙間に限定されず、例えば、覆い部62に形成された孔、又は、スリットであってもよい。また、流入部73は、覆い部62の上側から水受け溝46に水を流入可能な部分であればよく、第2枠部40の覆い部62以外の箇所に設けるようにしてもよい。そのため、覆い部62により、流入部73の箇所を除いた水受け溝46を覆ってもよく、水受け溝46の全体を覆ってもよい。本発明は、種々の開閉窓(例えば、縦すべり出し窓、引き違い窓、倒し窓)に適用することができ、開閉窓以外の建具(例えば、固定窓)に適用することもできる。
【0045】
以上のとおり、建具は、下枠に、第1枠部と、前記第1枠部の室内側で前記第1枠部に連結される第2枠部と、を有する建具であって、
前記第1枠部は、前記第2枠部に沿って配置される溝部と、前記溝部から前記下枠の室外側まで連通する排水経路と、を有し、
前記第2枠部は、前記下枠の室内側で水を受ける水受け溝と、前記水受け溝から前記溝部に向かって排水する排水部と、前記水受け溝を覆う覆い部と、前記覆い部の上側から前記水受け溝に水を流入させる流入部と、を有する建具である。
従って、建具の下枠の室内側から室外側に向かって効率的に排水できるとともに、下枠の室内側で水受け溝の露出を抑制して、下枠の意匠性を向上させることができる。
【0046】
前記第2枠部は、室内側に突出するアングル部と、前記アングル部に取り付けられて前記アングル部を覆うカバー材と、を有し、
前記覆い部は、前記カバー材に形成される。
カバー材をアングル部から取り外すことで、水受け溝を容易に清掃することができる。
【0047】
前記第2枠部は、前記カバー材により覆われた中空部を有する。
カバー材により、第2枠部に中空部を容易に形成することができる。また、中空部が第2枠部の断熱層となり、下枠の断熱性を向上させることができる。
【0048】
前記第2枠部は、前記水受け溝の長手方向の端部に配置された止水材を有する。
止水材により、水受け溝の長手方向の端部から水が流出するのを抑制することができる。これにより、水受け溝から溝部に確実に排水できるとともに、水が下枠の端部と縦枠の端部の接続箇所から建物の躯体側に浸入するのを防止することができる。
【0049】
前記覆い部の上面は、平坦面に形成されている。
そのため、覆い部の上面を容易に清掃することができる。覆い部の上面に水が溜まるのを抑制して、流入部から水受け溝に水を円滑に流入させることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・建具、2・・・障子、3・・・枠体、3A・・・開口部、4・・・下額縁、10・・・框体、11・・・パネル、12・・・上框、13・・・下框、14・・・縦框、15・・・縦框、20・・・上枠、21・・・下枠、22・・・縦枠、23・・・縦枠、30・・・第1枠部、31・・・見込み部、32・・・室外側壁部、33・・・水切り部、34・・・室外側中空部、35・・・立ち上がり部、36・・・上片部、37・・・室内側中空部、37A・・・第1区画壁部、37B・・・第2区画壁部、38・・・溝部、38A・・・溝底部、38B・・・第1溝壁部、38C・・・第2溝壁部、40・・・第2枠部、41・・・装着材、42・・・室内側壁部、43・・・上片部、44・・・凸部、45・・・アングル部、45A・・・第1突起、45B・・・第2突起、46・・・水受け溝、47・・・排水部、48・・・内側空間、50・・・排水経路、51・・・排水孔、52・・・排水孔、53・・・排水孔、54・・・排水孔、55・・・排水弁、60・・・カバー材、61・・・上面部、62・・・覆い部、63・・・突片、64・・・第1当接片、65・・・第2当接片、66・・・第3当接片、70・・・第1中空部、71・・・第2中空部、72・・・第3中空部、73・・・流入部、74・・・止水材。
図1
図2
図3