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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】車両バックドア開閉用装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/622 20150101AFI20240124BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240124BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E05F15/622
B60J5/10 K
F16H25/20 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020120622
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2021017798
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019130928
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】先山 孝洋
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165441(JP,A)
【文献】特開2017-031634(JP,A)
【文献】特開2017-141577(JP,A)
【文献】特開2018-165440(JP,A)
【文献】特開2017-115404(JP,A)
【文献】特開昭61-062656(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/622, 15/652, 15/673
B60J 5/10
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向の一方に設けられ、バックドアの開閉動作を行う駆動側アクチュエータと、
前記車両の幅方向の他方に設けられ、前記バックドアの開閉動作に追従して伸縮する非駆動側アクチュエータと、
を備え、
前記駆動側アクチュエータは、
筒状の第一ハウジングと、
前記第一ハウジングに収容されたモータと、
前記モータの回転力を受けて回転駆動し、前記第一ハウジングと同軸上に設けられた駆動軸と、
前記駆動軸に連結され、前記駆動軸の回転に伴って前記駆動軸の第一軸線方向に沿って移動し、前記第一ハウジングに対して出没する第一従動部と、
前記第一従動部に設けられ前記駆動軸に対して摺動抵抗を発生させる駆動側摺動抵抗発生部と、
を備え、
前記駆動軸は、前記駆動軸の外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記第一従動部は、
前記第一ハウジングよりも径方向の内側に前記第一ハウジングと同軸上に設けられた第一アウタチューブと、
前記第一アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第一アウタチューブと一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第一アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第一インナチューブと、
前記雄ねじ部に螺合する複数のナットと、
を有し、
前記非駆動側アクチュエータは、
筒状の第二ハウジングと、
前記第二ハウジングの内側に、前記第二ハウジングと同軸上に設けられた固定軸と、
前記開閉動作に追従して前記第二ハウジングに対して前記固定軸の第二軸線方向に出没する第二従動部と、
を備え、
前記駆動側摺動抵抗発生部は、前記複数のナット間に設けられ、前記第一軸線方向で隣り合う前記ナットを互いに離間する方向に付勢する弾性部材であり、前記摺動抵抗の大きさが、前記非駆動側アクチュエータの伸縮動作に伴う前記固定軸と前記第二従動部との間に生じる摺動抵抗よりも大きくなるよう形成されていることを特徴とする車両バックドア開閉用装置。
【請求項2】
車両の幅方向の一方に設けられ、バックドアの開閉動作を行う駆動側アクチュエータと、
前記車両の幅方向の他方に設けられ、前記バックドアの開閉動作に追従して伸縮する非駆動側アクチュエータと、
を備え、
前記駆動側アクチュエータは、
筒状の第一ハウジングと、
前記第一ハウジングに収容されたモータと、
前記モータの回転力を受けて回転駆動し、前記第一ハウジングと同軸上に設けられた駆動軸と、
前記駆動軸に連結され、前記駆動軸の回転に伴って前記駆動軸の第一軸線方向に沿って移動し、前記第一ハウジングに対して出没する第一従動部と、
前記第一従動部に設けられ前記駆動軸に対して摺動抵抗を発生させる駆動側摺動抵抗発生部と、
を備え、
前記駆動軸は、前記駆動軸の外周面に形成された雄ねじ部を有し、
前記第一従動部は、
前記第一ハウジングよりも径方向の内側に前記第一ハウジングと同軸上に設けられた第一アウタチューブと、
前記第一アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第一アウタチューブと一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第一アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第一インナチューブと、
前記雄ねじ部に螺合する複数のナットと、
を有し、
前記非駆動側アクチュエータは、
筒状の第二ハウジングと、
前記第二ハウジングの内側に、前記第二ハウジングと同軸上に設けられた固定軸と、
前記開閉動作に追従して前記第二ハウジングに対して前記固定軸の第二軸線方向に出没する第二従動部と、
前記固定軸と前記第二従動部との間に設けられ、前記固定軸と前記第二従動部との間に生じる摺動抵抗を増幅させる非駆動側摺動抵抗発生部と、
を備え
前記駆動側摺動抵抗発生部は、前記複数のナット間に設けられ、前記第一軸線方向で隣り合う前記ナットを互いに離間する方向に付勢する弾性部材であることを特徴とする車両バックドア開閉用装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両バックドア開閉用装置において、
前記第二ハウジングの内側に設けられ、前記第二ハウジングに対して前記第二軸線方向に沿って突出させる方向に前記第二従動部を付勢する付勢部材をさらに備えることを特徴とする車両バックドア開閉用装置。
【請求項4】
前記第二従動部は、
前記第二ハウジングよりも径方向の内側に前記第二ハウジングと同軸上に設けられた第二アウタチューブと、
前記第二アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第二アウタチューブと径方向で一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第二アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第二インナチューブと、
を有し、
前記非駆動側摺動抵抗発生部は、
前記第二インナチューブと前記固定軸との間に設けられていることを特徴とする請求項に記載の車両バックドア開閉用装置。
【請求項5】
前記非駆動側摺動抵抗発生部は、弾性部材であることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の車両バックドア開閉用装置。
【請求項6】
前記非駆動側摺動抵抗発生部は、
前記第二インナチューブに対して摺動抵抗を発生させることを特徴とする請求項に記載の車両バックドア開閉用装置。
【請求項7】
前記非駆動側摺動抵抗発生部は、前記固定軸に取り付けられたOリングであることを特徴とする請求項、請求項、及び請求項の何れか一項に記載の車両バックドア開閉用装置。
【請求項8】
請求項に記載の車両バックドア開閉用装置において、
前記固定軸は、前記Oリングに対して前記固定軸の前記第二軸線方向の両側に設けられた規制部を有することを特徴とする車両バックドア開閉用装置。
【請求項9】
前記非駆動側摺動抵抗発生部は、
前記固定軸に対して摺動抵抗を発生させることを特徴とする請求項、請求項、及び請求項の何れか一項に記載の車両バックドア開閉用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両バックドア開閉用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体側の開口部の周囲と、この開口部を開閉するテールゲートと、の間に設けられたアクチュエータを有する車両バックドア開閉用装置が知られている。これらのアクチュエータは、軸方向に伸縮駆動することによってテールゲートを開閉動作させる。
【0003】
このようなアクチュエータとして、例えば特許文献1には、筒状のヨーク及びアーマチュアと、アーマチュアのシャフトの回転力を受けて回転駆動されるスクリュー軸と、シャフトとスクリュー軸との間に設けられる減速ギヤ部と、スクリュー軸に連係され、スクリュー軸の回転にともなってスクリュー軸の軸方向に沿って移動するナット部材と、を備える車両ドア開閉用アクチュエータの構成が開示されている。ヨークの内周面には、減速ギヤ部のインターナルギヤが設けられており、インターナルギヤに、シャフトを回転自在に支持するための軸受が設けられている。
特許文献1に記載の技術によれば、ヨークの内周面に減速ギヤ部のギヤケースが設けられるので、モータの中心軸と減速ギヤ部の中心軸とを、容易かつ高精度に位置合わせすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-031634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体の幅方向の両側にバックドア開閉用のアクチュエータをそれぞれ配置する場合、一方のアクチュエータはモータを有する駆動側とし、他方のアクチュエータはモータを有さない非駆動側とすることがある。このような片側駆動の車両バックドア開閉用装置では、駆動側のアクチュエータによりテールゲートの重さを保持するため、駆動側アクチュエータの減速比を大きくする必要がある。しかしながら、減速比を大きくすると、駆動時にモータが高回転することにより大きな作動音が生じるおそれがあった。
また、減速比を大きくするために、駆動側のアクチュエータにブレーキ機構を設けると、バックドアの開閉が制限されてしまう恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、片側駆動の車両バックドア開閉用装置において、作動音の発生を抑制した車両バックドア開閉用装置を提供するものである。
また、本発明は、摺動抵抗発生部が有する弾性部材の摩擦力で、駆動側のアクチュエータの減速比を減らすことができるので、複雑なブレーキ機構を設けなくてもよい。そのため、本発明は、バックドアの開閉を制限することなく、かつ、低コストで生産可能な車両バックドア開閉用装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置は、車両の幅方向の一方に設けられ、バックドアの開閉動作を行う駆動側アクチュエータと、前記車両の幅方向の他方に設けられ、前記バックドアの開閉動作に追従して伸縮する非駆動側アクチュエータと、を備え、前記駆動側アクチュエータは、筒状の第一ハウジングと、前記第一ハウジングに収容されたモータと、前記モータの回転力を受けて回転駆動し、前記第一ハウジングと同軸上に設けられた駆動軸と、前記駆動軸に連結され、前記駆動軸の回転に伴って前記駆動軸の第一軸線方向に沿って移動し、前記第一ハウジングに対して出没する第一従動部と、前記第一従動部に設けられ前記駆動軸に対して摺動抵抗を発生させる駆動側摺動抵抗発生部と、を備え、前記駆動軸は、前記駆動軸の外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記第一従動部は、前記第一ハウジングよりも径方向の内側に前記第一ハウジングと同軸上に設けられた第一アウタチューブと、前記第一アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第一アウタチューブと一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第一アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第一インナチューブと、前記雄ねじ部に螺合する複数のナットと、を有し、前記非駆動側アクチュエータは、筒状の第二ハウジングと、前記第二ハウジングの内側に、前記第二ハウジングと同軸上に設けられた固定軸と、前記開閉動作に追従して前記第二ハウジングに対して前記固定軸の第二軸線方向に出没する第二従動部と、を備え、前記駆動側摺動抵抗発生部は、前記複数のナット間に設けられ、前記第一軸線方向で隣り合う前記ナットを互いに離間する方向に付勢する弾性部材であり、前記摺動抵抗の大きさが、前記非駆動側アクチュエータの伸縮動作に伴う前記固定軸と前記第二従動部との間に生じる摺動抵抗よりも大きくなるよう形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置は、車両の幅方向の一方に設けられ、バックドアの開閉動作を行う駆動側アクチュエータと、前記車両の幅方向の他方に設けられ、前記バックドアの開閉動作に追従して伸縮する非駆動側アクチュエータと、を備え、前記駆動側アクチュエータは、筒状の第一ハウジングと、前記第一ハウジングに収容されたモータと、前記モータの回転力を受けて回転駆動し、前記第一ハウジングと同軸上に設けられた駆動軸と、前記駆動軸に連結され、前記駆動軸の回転に伴って前記駆動軸の第一軸線方向に沿って移動し、前記第一ハウジングに対して出没する第一従動部と、前記第一従動部に設けられ前記駆動軸に対して摺動抵抗を発生させる駆動側摺動抵抗発生部と、を備え、前記駆動軸は、前記駆動軸の外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記第一従動部は、前記第一ハウジングよりも径方向の内側に前記第一ハウジングと同軸上に設けられた第一アウタチューブと、前記第一アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第一アウタチューブと一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第一アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第一インナチューブと、前記雄ねじ部に螺合する複数のナットと、を有し、前記非駆動側アクチュエータは、筒状の第二ハウジングと、前記第二ハウジングの内側に、前記第二ハウジングと同軸上に設けられた固定軸と、前記開閉動作に追従して前記第二ハウジングに対して前記固定軸の第二軸線方向に出没する第二従動部と、前記固定軸と前記第二従動部との間に設けられ、前記固定軸と前記第二従動部との間に生じる摺動抵抗を増幅させる非駆動側摺動抵抗発生部と、を備え、前記駆動側摺動抵抗発生部は、前記複数のナット間に設けられ、前記第一軸線方向で隣り合う前記ナットを互いに離間する方向に付勢する弾性部材であることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記第二ハウジングの内側に設けられ、前記第二ハウジングに対して前記第二軸線方向に沿って突出させる方向に前記第二従動部を付勢する付勢部材をさらに備えることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記第二従動部は、前記第二ハウジングよりも径方向の内側に前記第二ハウジングと同軸上に設けられた第二アウタチューブと、前記第二アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第二アウタチューブと径方向で一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第二アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第二インナチューブと、を有し、前記非駆動側摺動抵抗発生部は、前記第二インナチューブと前記固定軸との間に設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記駆動軸は、前記駆動軸の外周面に形成された雄ねじ部を有し、前記第一従動部は、前記第一ハウジングよりも径方向の内側に前記第一ハウジングと同軸上に設けられた第一アウタチューブと、前記第一アウタチューブよりも径方向の内側に、前記第一アウタチューブと一定の間隔を空けて配置され、かつ前記第一アウタチューブと同軸上で一体に設けられた第一インナチューブと、前記雄ねじ部に螺合する複数のナットと、を有し、前記駆動側摺動抵抗発生部は、前記複数のナット間に設けられ、前記第一軸線方向で隣り合う前記ナットを互いに離間する方向に付勢する弾性部材であることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記非駆動側摺動抵抗発生部は、弾性部材であることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記非駆動側摺動抵抗発生部は、前記第二インナチューブに対して摺動抵抗を発生させることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記非駆動側摺動抵抗発生部は、前記固定軸に取り付けられたOリングであることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記固定軸は、前記Oリングに対して前記固定軸の前記第二軸線方向の両側に設けられた規制部を有することを特徴としている。
【0017】
本発明に係る車両バックドア開閉用装置において、前記非駆動側摺動抵抗発生部は、前記固定軸に対して摺動抵抗を発生させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、側駆動の車両バックドア開閉用装置において、作動音の発生を抑制した車両バックドア開閉用装置を提供できる。
また、本発明は、摺動抵抗発生部が有する弾性部材の摩擦力で、駆動側のアクチュエータの減速比を減らすことができるので、複雑なブレーキ機構を設けなくてもよい。そのため、本発明は、バックドアの開閉を制限することなく、かつ、低コストで生産可能な車両バックドア開閉用装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る車両バックドア開閉用装置を備えた車両の後方を示す斜視図。
図2】第1実施形態に係る駆動側アクチュエータの部分断面図。
図3】第1実施形態に係る非駆動側アクチュエータの部分断面図。
図4】第2実施形態に係る駆動側アクチュエータの部分断面図。
図5】第2実施形態に係る駆動側アクチュエータの摺動抵抗発生部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
(車両バックドア開閉用装置)
図1は、車両バックドア開閉用装置1を備えた車両の後方を示す斜視図である。
車両バックドア開閉用装置1は、例えば自動車等の車体10のテールゲート11(請求項のバックドア)を開閉するためのパワーテールゲートシステムに用いられる。テールゲート11は、車体10の後部に形成された開口部12の上部に、不図示のヒンジ機構を介して開口部12を開閉するように設けられている。車両バックドア開閉用装置1は、車体10の車幅方向の一方に設けられた駆動側アクチュエータ3と、車幅方向の他方に設けられた非駆動側アクチュエータ4と、を備える。
【0022】
駆動側アクチュエータ3は、開口部12の外枠部13に、不図示のボールスタッドを介して駆動側アクチュエータ3の一端3aが回動するように連結されている。テールゲート11には、不図示のボールスタッドを介して駆動側アクチュエータ3の他端3bが回動するように連結されている。
非駆動側アクチュエータ4は、開口部12の外枠部13に、不図示のボールスタッドを介して非駆動側アクチュエータ4の一端4aが回動するように連結されている。テールゲート11には、不図示のボールスタッドを介して非駆動側アクチュエータ4の他端4bが回動するように連結されている。
【0023】
(駆動側アクチュエータ)
図2は、第1実施形態に係る駆動側アクチュエータ3の部分断面図である。
駆動側アクチュエータ3は、筒状の第一ハウジング31と、第一ハウジング31内に収容されるモータ32と、第一ハウジング31に対して出没する第一従動部34と、第一ハウジング31及び第一従動部34に収容される第一付勢部材35と、を備える。
第一ハウジング31は、第一軸線C1を中心とし、一端が閉塞された有底円筒状に形成されている。以下の説明において、第一ハウジング31の第一軸線C1に沿う方向を軸方向といい、軸方向と直交する方向を径方向といい、軸方向回りの方向を周方向ということがある。また、第一ハウジング31の第一軸線C1における車体10側を一端及び一方とし、テールゲート11側を他端及び他方ということがある。
【0024】
第一ハウジング31は、例えば鉄等の金属材料により形成されている。この第一ハウジング31の一端に、開口部12の外枠部13に設けられたボールスタッド(不図示)に連結される第一車体側ジョイント部15が設けられている。第一ハウジング31の軸方向における中央よりもやや一端寄りには、径方向の内側に突出する第一中間フランジ51が設けられている。第一中間フランジ51と第一ハウジング31の一端との間の空間は、モータ収容部52とされている。
第一ハウジング31の径方向の内側には、筒状の第一支持柱38が設けられている。第一支持柱38は、第一ハウジング31と同軸上に配置されている。第一支持柱38は、軸方向において、第一中間フランジ51から第一ハウジング31の他端まで突出している。
【0025】
第一ハウジング31のモータ収容部52には、モータ32が収容されている。モータ32は、円筒状のヨーク及びヨークよりも径方向の内側に回転自在に設けられたアーマチュア(いずれも不図示)と、アーマチュアと一体回転する駆動軸33と、を備える。ヨークは、導電性を有する金属により形成されている。ヨークの外径は、第一ハウジング31の内径よりも所定寸法小さく設定されている。ヨークの内周面には、不図示のマグネットが固定されている。
【0026】
ヨークよりも径方向の内側に設けられたアーマチュアは、ヨーク内で回転するアーマチュアコア(不図示)と、アーマチュアコアに巻回されているコイル(不図示)と、アーマチュアコアに接続されて軸方向に沿って突出する出力軸53と、を備える。
出力軸53は、第一軸線C1と同軸上に配置されている。
アーマチュアは、不図示のブラシを介して外部電源(例えば、バッテリ)と電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力が、ブラシ、コンミテータを介してコイルに供給される。
【0027】
このような構成のもと、外部電源の電力が、不図示のハーネス及びブラシを介してコイルに供給されると、アーマチュアコアに磁界が形成される。そして、この磁界とヨークに固定されたマグネット(不図示)との間に生じる磁気的な吸引力や反発力によって、出力軸53が第一軸線C1回りに回転する。このような出力軸53の他端に、駆動軸33が連結されている。
【0028】
駆動軸33は、第一支持柱38よりも径方向の内側に配置されている。駆動軸33は、第一軸線C1と同軸上に配置されている。駆動軸33は、第一軸線C1回りに出力軸53と一体回転する。駆動軸33の外周部には、雄ねじ54が形成されている。駆動軸33の他端は、軸方向において第一ハウジング31の他端と対応する位置まで突出している。
【0029】
第一ハウジング31の他端には、第一従動部34が設けられている。第一従動部34は、第一ハウジング31、第一支持柱38及び駆動軸33に対して軸方向に沿って出没する。第一従動部34は、第一ハウジング31よりも径方向の内側に設けられる第一アウタチューブ36と、第一支持柱38よりも径方向の内側に設けられる第一インナチューブ37と、を有する。
第一アウタチューブ36は、第一軸線C1を中心とする円筒状に形成されている。第一アウタチューブ36は、例えば樹脂材料等により形成されている。第一アウタチューブ36の外径は、第一ハウジング31の外径よりも若干小さく設定されている。第一アウタチューブ36の一端は、第一ハウジング31の他端に挿入されている。第一アウタチューブ36は、第一ハウジング31の他端の内周面に、この第一ハウジング31に対して出没するように嵌合されている。第一アウタチューブ36の他端には、テールゲート11(図1参照)に設けられたボールスタッド(不図示)に連結される第一ドア側ジョイント部16が設けられている。
【0030】
第一インナチューブ37は、第一アウタチューブ36よりも径方向の内側に配置されている。第一インナチューブ37は、第一アウタチューブ36と同軸な筒状に形成されている。第一インナチューブ37の他端は、第一アウタチューブ36の他端において径方向の内側に曲折形成された第一アウタフランジ55に嵌合するとともに第一ドア側ジョイント部16に固定されている。第一インナチューブ37の軸方向の長さは、第一アウタチューブ36の軸方向の長さとほぼ同等とされている。
【0031】
第一インナチューブ37の一端には、径方向の内側に曲折させてなる第一インナフランジ56が形成されている。第一インナフランジ56の径方向の内側に、駆動軸33が挿通されている。第一インナチューブ37の径方向の内側には、ナット部材57が固定されている。ナット部材57は、第一インナチューブ37の他端かつ第一インナフランジ56よりも軸方向の他方側に固定されている。
【0032】
ナット部材57は、このナット部材57の軸方向両側に配置され、第一インナチューブ37の内周面に固定された2つの止め輪96a,96bによって、軸方向への移動が規制されている。これにより、第一インナチューブ37内に、ナット部材57が固定される。ナット部材57には、駆動軸33の他端側が螺合されている。駆動軸33が回転すると、このナット部材57及びナット部材57が固定された第一インナチューブ37が軸方向に沿って移動する。
【0033】
第一ハウジング31及び第一アウタチューブ36の内部には、第一付勢部材35が収容されている。具体的に、第一付勢部材35は、第一ハウジング31及び第一アウタチューブ36よりも径方向の内側で、かつ第一支持柱38及び第一インナチューブ37よりも径方向の外側に配置されている。第一付勢部材35は、第一ハウジング31及び第一アウタチューブ36の内周面に沿うように螺旋状に形成されたコイルスプリングである。第一付勢部材35の一端は、第一ハウジング31の第一中間フランジ51に接続されて固定されている。第一付勢部材35の他端は、第一アウタチューブ36の第一アウタフランジ55に接続されて固定されている。
【0034】
第一付勢部材35の自然長は、駆動軸33の最も他端にナット部材57が位置している状態(図2に示す状態)で、軸方向における第一ハウジング31の第一中間フランジ51から第一アウタチューブ36の第一アウタフランジ55までの長さよりも長い。これにより、第一付勢部材35は、常に若干圧縮された状態で収容されている。換言すれば、第一付勢部材35は、常に第一従動部34を第一ハウジング31から突出させる方向に向かって付勢している。
【0035】
このように構成された駆動側アクチュエータ3は、モータ32が駆動することにより、テールゲート11の開閉動作を行う。具体的に、テールゲート11を開ける場合、まず、モータ32の駆動力により駆動軸33が回転する。次に、駆動軸33の他端に螺合されたナット部材57により駆動軸33の回転運動が軸方向に沿う直進運動に変換される。これにより、駆動軸33の回転に伴ってナット部材57が軸方向の一方へ移動することで、第一フランジに対して第一従動部34が突出する。したがって、第一ドア側ジョイント部16を介して第一従動部34の他端と接続されたテールゲート11が車体10に対して開く。その後、モータ32が停止することにより、テールゲート11が開いた状態で保持される。テールゲート11を閉める場合は、モータ32を逆回転させることにより、第一ハウジング31に対して第一従動部34を没入させる。これにより、車体10の開口部12がテールゲート11により閉塞される。
【0036】
(非駆動側アクチュエータ)
図3は、第1実施形態に係る非駆動側アクチュエータ4の部分断面図である。
図3に示すように、駆動側アクチュエータ3と非駆動側アクチュエータ4との主な相違点は、駆動側アクチュエータ3はモータ32を備えているのに対し、非駆動側アクチュエータ4はモータ32を備えていない点、駆動軸33に代わって固定軸42が設けられている点にある。
【0037】
非駆動側アクチュエータ4は、筒状の第二ハウジング41と、第二ハウジング41に対して出没する第二従動部43と、第二ハウジング41及び第二従動部43間に設けられる摺動抵抗発生部44(請求項の非駆動側摺動抵抗発生部)と、第二ハウジング41内に収容される第二付勢部材45(請求項の付勢部材)と、を備える。
第二ハウジング41は、第二軸線C2を中心とし、一端が閉塞された有底円筒状に形成されている。駆動側アクチュエータ3及び非駆動側アクチュエータ4が車体10に取り付けられた状態において、第二軸線C2は、第一軸線C1とほぼ平行となるように配置されている。以下の説明において、第二ハウジング41の第二軸線C2に沿う方向を軸方向といい、軸方向と直交する方向を径方向といい、軸方向回りの方向を周方向ということがある。また、第二ハウジング41の第二軸線C2における車体10側を一端及び一方とし、テールゲート11側を他端及び他方ということがある。
【0038】
第二ハウジング41は、例えば鉄等の金属材料により形成されている。第二ハウジング41の構成は、モータ32を除く第一ハウジング31の構成とほぼ同じとされている。すなわち、第二ハウジング41の一端には、開口部12の外枠部13に設けられたボールスタッド(不図示)に連結される第二車体側ジョイント部17が設けられている。第二ハウジング41の軸方向における一方には、径方向の内側に突出する第二中間フランジ61が設けられている。
第二中間フランジ61よりも軸方向の他方において、第二ハウジング41の径方向の内側には、筒状の第二支持柱48が設けられている。第二支持柱48は、第二ハウジング41と同軸上に配置されている。第二支持柱48は、軸方向において、第二中間フランジ61から第二ハウジング41の他端まで突出している。第二支持柱48のさらに径方向の内側には、固定軸42が設けられている。
【0039】
固定軸42は、第二軸線C2と同軸上に配置されている。固定軸42の一端は、第二ハウジング41の第二中間フランジ61に固定されている。固定軸42の他端は、軸方向において第二ハウジング41の他端と対応する位置まで突出している。固定軸42の他端には、複数(本実施形態では3個)の規制部62が設けられている。具体的に、固定軸42は、固定軸42の他端に設けられた第一規制部21、第一規制部21よりも軸方向の一方に設けられた第二規制部22と、第二規制部22よりも軸方向の一方に設けられた第三規制部23と、を有する。第一規制部21、第二規制部22及び第三規制部23は、第二軸線C2を中心とする円板状に形成されている。各規制部62は、軸方向に沿って等間隔に並ぶとともに、固定軸42に固定されている。
【0040】
第二ハウジング41の他端には、第二従動部43が設けられている。第二従動部43は、第二ハウジング41、第二支持柱48及び固定軸42に対して軸方向に沿って出没する。第二従動部43は、第二ハウジング41よりも径方向の内側に設けられた第二アウタチューブ46と、第二支持柱48よりも径方向の内側に設けられた第二インナチューブ47と、を有する。
第二アウタチューブ46は、第二軸線C2を中心とする円筒状に形成されている。第二アウタチューブ46は、例えば樹脂材料等により形成されている。第二アウタチューブ46の外径は、第二ハウジング41の外径よりも若干小さく設定されている。第二アウタチューブ46の一端は、第二ハウジング41の他端に挿入されている。第二アウタチューブ46は、第二ハウジング41の他端の内周面に出没するように嵌合されている。第二アウタチューブ46の他端に、テールゲート11(図1参照)に設けられたボールスタッド(不図示)に連結される第二ドア側ジョイント部18が設けられている。
【0041】
第二インナチューブ47は、第二アウタチューブ46よりも径方向の内側に配置されている。第二インナチューブ47は、第二アウタチューブ46と同軸な筒状に形成され、第二アウタチューブ46と一定の間隔を空けて配置されている。第二インナチューブ47の他端は、第二アウタチューブ46の他端において径方向の内側に曲折形成された第二アウタフランジ63に嵌合するとともに第二ドア側ジョイント部18に固定され、第二アウタチューブ46と一体に設けられている。第二インナチューブ47の軸方向の長さは、第二アウタチューブ46の軸方向の長さとほぼ同等とされている。
【0042】
第二インナチューブ47の一端には、径方向の内側に曲折させてなる第二インナフランジ64が形成されている。第二インナフランジ64の径方向の内側に、固定軸42が挿通されている。このとき、固定軸42の第一規制部21、第二規制部22及び第三規制部23は、第二インナフランジ64よりも軸方向の他方に位置している。すなわち、規制部62は、第二インナチューブ47の内部に配置されている。第二インナチューブ47の内径は、規制部62の外径よりも若干大きい。
【0043】
摺動抵抗発生部44は、各規制部62の間に設けられている。つまり、摺動抵抗発生部44は、第二インナチューブ47と固定軸42との間に設けられている。摺動抵抗発生部44は、弾性部材である。本実施形態において、摺動抵抗発生部44は、2個のOリングである。摺動抵抗発生部44は、固定軸42に取り付けられるとともに、軸方向の両側に配置された規制部62により軸方向への移動が規制されている。摺動抵抗発生部44は、固定軸42と第二インナチューブ47との間に配置されている。これにより、摺動抵抗発生部44は、第二ハウジング41、第二支持柱48及び固定軸42に対して第二従動部43が出没する際に、固定軸42と第二インナチューブ47との間に摺動抵抗を発生させる。換言すれば、摺動抵抗発生部44は、第二インナチューブ47に対して、摺動抵抗を発生させる。さらに、摺動抵抗発生部44は、固定軸42と第二従動部43(第二インナチューブ47)との間に生じる摺動抵抗を増幅させる。摺動抵抗発生部44により生じる摺動抵抗の大きさは、駆動側アクチュエータ3の伸縮動作に伴う駆動軸33と第一従動部34との間の摺動抵抗よりも大きい。
【0044】
第二付勢部材45は、第二ハウジング41及び第二アウタチューブ46内に収容されている。具体的に、第二付勢部材45は、第二ハウジング41及び第二アウタチューブ46よりも径方向の内側で、かつ第二支持柱48及び第二インナチューブ47よりも径方向の外側に配置されている。第二付勢部材45は、第二ハウジング41及び第二アウタチューブ46の内周面に沿うように螺旋状に形成されたコイルスプリングである。第二付勢部材45の一端は、第二ハウジング41の第二中間フランジ61に接続されて固定されている。第二付勢部材45の他端は、第二アウタチューブ46の第二アウタフランジ63に接続されて固定されている。
【0045】
第二付勢部材45の自然長は、第二インナチューブ47の第二インナフランジ64に規制部62が当接している状態(図3に示す状態)で、軸方向における第二ハウジング41の第二中間フランジ61から第二アウタチューブ46の第二アウタフランジ63までの長さよりも長い。これにより、第二付勢部材45は、常に若干圧縮された状態で収容されている。換言すれば、第二付勢部材45は、常に第二従動部43を第二ハウジング41から突出させる方向に向かって付勢している。
【0046】
このように構成された非駆動側アクチュエータ4は、駆動側アクチュエータ3によるテールゲート11の開閉動作に追従して所定の摺動抵抗を有しながら伸縮する。具体的に、テールゲート11が開動作するとき、非駆動側アクチュエータ4は、固定軸42に取り付けられた摺動抵抗発生部44と第二インナチューブ47との間に摺動抵抗を生じさせながら、第二ハウジング41に対して第二従動部43が突出する。テールゲート11が閉動作するとき、非駆動側アクチュエータ4は、固定軸42に取り付けられた摺動抵抗発生部44と第二インナチューブ47との間に摺動抵抗を生じさせながら、第二ハウジング41に対して第二従動部43が没入する。
【0047】
(作用、効果)
次に、上述した車両バックドア開閉用装置1の作用、効果について説明する。
車両バックドア開閉用装置1において、駆動側アクチュエータ3のモータ32が駆動することにより、駆動側アクチュエータ3及び非駆動側アクチュエータ4が伸縮する。具体的には、駆動側アクチュエータ3に駆動されてテールゲート11が開閉することにより、テールゲート11の開閉動作に追従して非駆動側アクチュエータ4が伸縮する。このとき、非駆動側アクチュエータ4は、摺動抵抗発生部44を有するので、非駆動側アクチュエータ4の伸縮動作に伴い摺動抵抗が生じる。
【0048】
ここで、例えばテールゲート11を開状態で停止させた場合、テールゲート11の重さにより各アクチュエータには縮退方向の力が作用する。この縮退方向の力に対抗してテールゲート11を開状態に保持するため、従来技術にあっては、駆動側アクチュエータ3の減速比を大きくとる必要があった。このように駆動側アクチュエータ3の減速比を大きくすることにより、縮退方向の力に対してモータ32の意図しない回転が抑制される。しかしながら、減速比を大きくすると、開閉動作の際にモータ32を高速で回転させる必要があり、モータ32の負荷が増大するとともに、大きな作動音が発生するおそれがあった。
【0049】
これらの課題に対し、本発明の非駆動側アクチュエータ4は摺動抵抗発生部44を有するので、摺動抵抗発生部44で生じる摺動抵抗により、この縮退方向への力に対抗してテールゲート11を開状態に保持できる。このため、片側駆動の車両バックドア開閉用装置1において、非駆動側アクチュエータ4が摺動抵抗発生部44を有しない従来技術と比較して、駆動側アクチュエータ3に作用する縮退方向への力を抑制し、テールゲート11を容易に開状態に保持できる。また、駆動側アクチュエータ3に作用する縮退方向への力を抑制できるので、従来技術と比較して駆動側アクチュエータ3の減速比を小さくできる。これにより、テールゲート11の開閉動作時におけるモータ32の回転数を抑えることができる。よって、モータ32への負荷を低減し、モータ32回転時における作動音を抑制できる。
したがって、片側駆動の車両バックドア開閉用装置1において、作動音の発生を抑制した車両バックドア開閉用装置1を提供できる。
【0050】
第一付勢部材35は、第一ハウジング31に対して第一従動部34を第一軸線C1方向に沿って突出させる方向に付勢する。また、第二付勢部材45は、第二ハウジング41に対して第二従動部43を第二軸線C2方向に沿って突出させる方向に付勢する。このため、例えばテールゲート11を開く際に、第一従動部34及び第二従動部43をテールゲート11側に付勢することにより、駆動側アクチュエータ3におけるモータ32の駆動力をサポートできる。これにより、モータ32の出力を抑え、モータ32の作動音を抑制できる。また、テールゲート11が開いた状態において、第一付勢部材35及び第二付勢部材45はテールゲート11の重みを支える方向に付勢力を作用させるので、テールゲート11の重みによりモータ32が逆回転するのを抑制できる。よって、テールゲート11の開状態を保持できる。
【0051】
第二従動部43は、第二ハウジング41よりも径方向の内側に設けられた第二アウタチューブ46と、第二アウタチューブ46よりも径方向の内側に、第二アウタチューブ46と一定の間隔を空けて配置され、かつ第二アウタチューブ46と一体に設けられた第二インナチューブ47と、を有している。このため、第二アウタチューブ46と第二インナチューブ47との間のスペースを有効活用して第二付勢部材45を配置させることができる。よって、無駄に非駆動側アクチュエータ4が大型化してしまうことを防止できる。
また、摺動抵抗発生部44は、第二インナチューブ47と固定軸42との間に設けられている。このため、第二アウタチューブ46と第二インナチューブ47との間に第二付勢部材45を配置しつつ、第二従動部43(第二インナチューブ47)に安定して摺動抵抗を発生させることができる。
【0052】
非駆動側アクチュエータ4の摺動抵抗発生部44は弾性部材であるので、第二ハウジング41と第二従動部43との間に容易に、かつ大きな摺動抵抗を発生させることができる。
【0053】
非駆動側アクチュエータ4の固定軸42は、第二ハウジング41の内側に設けられ、この固定軸42には摺動抵抗発生部44としてOリングが取り付けられている。このように、摺動抵抗発生部44は、固定軸42と第二従動部43との間に配置されているので、固定軸42に対して第二従動部43を出没させる際に、固定軸42と第二従動部43との間に摺動抵抗を発生させることができる。ここで、固定軸42に取りつけられたOリングを摺動抵抗発生部44とすることができるので、Oリングの緊迫力により、固定軸42と第二従動部43との間に摩擦力を作用させ、この摩擦力により摺動抵抗を発生させることができる。また、摺動抵抗を発生させるために複雑なブレーキ機構等を設ける場合と比較して、簡素な構成により摺動抵抗を発生させることができる。よって、摺動抵抗発生部44の構成を簡素化し、製造コストを削減できる。
固定軸42は第二ハウジング41の内側に設けられているので、摺動する際に振動や音が発生した場合であっても、これらの振動や音が非駆動側アクチュエータ4の外部に漏れ難い。よって、作動音の発生をより一層抑制した車両バックドア開閉用装置1とすることができる。
【0054】
固定軸42は、摺動抵抗発生部44の両端に配置された規制部62を有するので、規制部62により摺動抵抗発生部44の軸方向への移動が規制される。これにより、摺動抵抗発生部44の位置ずれや潰れによる摺動抵抗の低下を抑制し、固定軸42と第二従動部43との間に安定的に摺動抵抗を発生させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、図4図5に基づいて第2実施形態について説明する。なお、以下で説明する第2実施形態において、第1実施形態と対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図4は、第2実施形態に係る駆動側アクチュエータ103の部分断面図である。図5は、第2実施形態に係る駆動側アクチュエータ103の摺動抵抗発生部144(請求項の駆動側摺動抵抗発生部)の拡大図である。
本第2実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、本第2実施形態における摺動抵抗発生部144は、駆動側アクチュエータ103に設けられているが、第1実施形態における摺動抵抗発生部44は、非駆動側アクチュエータ4に設けられている点にある。
また、本第2実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、第2実施形態における摺動抵抗発生部144の構成と、第1実施形態における第一インナチューブ37の内周面に固定された2つの止め輪96a,96bの構成とが異なる点にある。
【0056】
具体的には、図4及び図5に示すように、摺動抵抗発生部144は、駆動軸133の外周面に形成された雄ねじ部54と、雄ねじ部54に螺合された2つのナット72,73(第一ナット72、第二ナット73)と、2つのナット72,73の間に設けられた弾性部材74と、を有している。
雄ねじ部54は、軸方向に沿う断面形状が台形である。雄ねじ部54は、駆動軸133の外周面に螺旋状に形成されている。雄ねじ部54は、駆動軸133の一端から他端に亘って形成されていてもよく、摺動抵抗発生部144として作用する領域にのみ形成されていてもよい。
【0057】
駆動軸133は、第一軸線C1と同軸上に配置されている。駆動軸133の一端は、第一ハウジング31の第一中間フランジ51(図2参照)に固定されている。第一中間フランジ51とは反対側の駆動軸133の他端は、軸方向において第一ハウジング31の他端に対応する位置まで突出している。駆動軸133の他端に、第四規制部78が設けられている。
第一インナチューブ37の一端には、この一端から径方向内側に向かって張り出す第一インナフランジ56が一体成形されている。第一インナフランジ56は、駆動軸133を取り囲む様に設けられている。また、第一インナチューブ37の内周面には、第一インナフランジ56と軸方向で間隔をあけて設けられた第三インナフランジ77が一体成形されている。第三インナフランジ77は、第一インナチューブ37の内周面から径方向内側に向かって張り出している。これら第一インナフランジ56と第三インナフランジ77との間に、2つのナット72,73及び弾性部材74が配置されている。第一インナフランジ56と第三インナフランジ77とによって、第一インナフランジ56に対する2つのナット72,73の移動が規制される。このため、2つのナット72,73及び弾性部材74と第一インナチューブ37とが一体となって移動する。
【0058】
2つのナット72,73は、第一ドア側ジョイント部16からこの順に第一軸線C1方向に並んで配置されている。第一ナット72は、雄ねじ部54に噛合う雌ねじ部75を有している。第二ナット73は、雄ねじ部54に噛合う雌ねじ部76を有している。第一ナット72及び第二ナット73は同一構成である。
【0059】
弾性部材74は、2つのナット72,73(第一軸線C1方向で隣り合うナット72,73)を互いに離間する方向に付勢している。具体的に、2つのナット72,73のうち第一ナット72は、弾性部材74によって、駆動側アクチュエータ103の第一ドア側ジョイント部16方向に押圧されている。2つのナット72,73のうち第二ナット73は、弾性部材74によって、駆動側アクチュエータ103の第一中間フランジ51方向に押圧されている。
これにより、駆動軸133の雄ねじ部54のうち、第一中間フランジ51側の側面に、第一ナット72の雌ねじ部75の第一中間フランジ51とは反対側(第一ドア側ジョイント部16側)の側面が押圧される。また、駆動軸133の雄ねじ部54のうち、第一中間フランジ51とは反対側(第一ドア側ジョイント部16側)の側面に、第二ナット73の雌ねじ部76の第一中間フランジ51側の側面が押圧される。
【0060】
(作用、効果)
駆動軸133の雄ねじ部54に、各ナット72,73の雌ねじ部75,76が押圧されることにより、雄ねじ部54と各ナット72,73の雌ねじ部75,76との間の摺動抵抗が大きくなる。このため、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、上述の第2実施形態によれば、雄ねじ部54またはナット72,73の何れか一方が回転する構成を選択することができる。このため、駆動側アクチュエータ103の設計の自由度を高めることができる。
【0061】
上述の第2実施形態の構成では、弾性部材74が、ナット72,73間を離間するように弾性変形する。このため、ナット72,73と、駆動軸133の雄ねじ部54との接触面に摩擦力が作用し、摺動抵抗を発生させることができる。具体的に、第一ナット72の雌ねじ部75の第一ドア側ジョイント部16側の側面と、雄ねじ部54の第一中間フランジ51側の側面との当接箇所、及び、第二ナット73の雌ねじ部76の第一中間フランジ51側の側面と、雄ねじ部54の第一ドア側ジョイント部16側の側面との当接箇所に摩擦力が働く。
【0062】
上述の第2実施形態の構成によれば、各ナット72,73とは別に弾性部材74が設けられている。このため、弾性部材74の弾性率を調節することがで、摺動抵抗の強さを適宜設定することができる。弾性部材74は、ナット72,73を離間させる弾性を有するバネが好ましい。
なお、ナットの数は2つに限られるものでない。ナットの数を3つ以上としてもよい。ナットの数を3つ以上とする場合、各ナットの間に弾性部材74を設ける。
【0063】
(第3実施形態)
本第3実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、駆動側アクチュエータ3に第2実施形態の摺動抵抗発生部144を有している点である。すなわち、第3実施形態に係る車両バックドア開閉用装置は、非駆動側アクチュエータ4に第1実施形態の摺動抵抗発生部44を有し、駆動側アクチュエータ3に第2実施形態の摺動抵抗発生部144を有する。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、車幅方向の一方に駆動側アクチュエータ3が設けられ、他方に非駆動側アクチュエータ4が設けられた構成について説明したが、これに限らない。車幅方向の一方に非駆動側アクチュエータ4が設けられ、他方に駆動側アクチュエータ3が設けられてもよい。
【0065】
規制部62の個数及びOリングの個数は上述した実施形態に限定されない。
摺動抵抗発生部44、144は、Oリング以外の弾性部材であってもよい。
付勢部材は、コイルスプリング以外のバネ等により構成されてもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 車両バックドア開閉用装置
3、103 駆動側アクチュエータ
3a (駆動側アクチュエータの)一端
3b (駆動側アクチュエータの)他端
4 非駆動側アクチュエータ
4a (非駆動側アクチュエータの)一端
4b (非駆動側アクチュエータの)他端
10 車体
11 テールゲート(バックドア)
12 開口部
13 外枠部
15 第一車体側ジョイント部
16 第一ドア側ジョイント部
17 第二車体側ジョイント部
18 第二ドア側ジョイント部
21 第一規制部
22 第二規制部
23 第三規制部
31 第一ハウジング
32 モータ
33 駆動軸
34 第一従動部
35 第一付勢部材
36 第一アウタチューブ
37 第一インナチューブ
38 第一支持柱
41 第二ハウジング
42 固定軸
43 第二従動部
44、144 摺動抵抗発生部
45 第二付勢部材(付勢部材)
46 第二アウタチューブ
47 第二インナチューブ
48 第二支持柱
51 第一中間フランジ
52 モータ収容部
53 出力軸
55 第一アウタフランジ
56 第一インナフランジ
57 ナット部材
61 第二中間フランジ
62 規制部
63 第二アウタフランジ
64 第二インナフランジ
72 第一ナット
73 第二ナット
74 弾性部材
75 (第一ナットの)雌ねじ部
76 (第二ナットの)雌ねじ部
77 第三インナフランジ
78 第四規制部
96a、96b 輪
C1 第一軸線
C2 第二軸線
図1
図2
図3
図4
図5