(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】既設管の更生用支保装置
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20240124BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E03F7/00
F16L1/00 P
(21)【出願番号】P 2020124892
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】乙川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】瀬沼 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 直弥
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145844(JP,A)
【文献】特開2007-046751(JP,A)
【文献】特開2008-045728(JP,A)
【文献】特開2014-196802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内に設けられた更生管の外周と前記既設管の内周との間に裏込め材を充填する際に前記更生管を支持する支保装置であって、
前記更生管内に配置された支保フレームと、
前記更生管の内周面と対面する押し当て面及び前記押し当て面に開口された格納室を有し、かつ長手方向を前記更生管の管軸方向へ向けて前記更生管の内周面に沿わされた腹起しと、
前記腹起しを前記支保フレームに対して前記管軸方向と交差する方向へ進退可能に連結する進退連結手段と、
前記格納室に設けられた車輪と、
前記車輪を、前記押し当て面から突出された突出位置と前記格納室内に引っ込んだ格納位置との間で出没させる出没機構と、
を備えたことを特徴とする支保装置。
【請求項2】
前記車輪が、車輪フレームに回転可能に支持されており、
前記出没機構が、前記車輪フレームに接続されたネジ部材と、前記腹起しに設けられて前記ネジ部材が螺合されるナット部材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の支保装置。
【請求項3】
前記管軸方向に間隔を置いて複数の位置にそれぞれ前記支保フレームが配置され、隣接する支保フレームに前記腹起しが架け渡されることによって、支保ユニットが構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の支保装置。
【請求項4】
前記管軸方向に互いに離れた位置にそれぞれ前記支保ユニットが設置され、隣接する支保ユニットにユニット間腹起しが着脱可能に架け渡されていることを特徴とする請求項3に記載の支保装置。
【請求項5】
前記支保ユニットの腹起しと前記ユニット間腹起しとが、一直線に配置されるとともにこれら腹起しに跨る腹起し連結部材を介して分離可能に連結されており、
前記腹起し連結部材が、前記支保ユニットの腹起しに差し込まれる第1差し込み部と、前記ユニット間腹起しに差し込まれる第2差し込み部とを含むことを特徴とする請求項4に記載の支保装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の更生に用いられる支保装置に関し、特に既設管と更生管の間に裏込め材を充填する際に更生管を支持する支保装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管を更生するために、既設管の内周に更生管をライニングすることは公知である。既設管と更生管との間にはモルタル等の裏込め材が充填される。このとき更生管が変形しないように、更生管の内部に支保装置が設置される。支保装置は、支保フレームと、該支保フレームに支持された腹起しを含む。腹起しが更生管の内周面に押し当てられる(特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献2の支保装置は、車輪を有し、更生管内を走行可能になっている。車輪は腹起しの側方に昇降可能に設けられている。走行時には、車輪を下降させて接地させ、かつ腹起しの押さえ部材を上昇させて、腹起しを押さえ付けから解放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-183885号公報
【文献】特開2017-145844号公報(0032、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、この種の更生工法においては、1つの裏込め区間における裏込め及び養生が終了するたびに、支保装置を解体して、部品ごとに次の裏込め区間まで運んだ後、組み立てる必要があった。
特許文献2の支保装置においては車輪で走行させて移動できるが、移動時、腹起しは切り離されて残置される。このため、別途、腹起しの移動作業が必要である。また、車輪が常時露出されているために、下水などの流下環境においては、夾雑物が車輪に付着したり絡まったりしやすく、走行の度に清掃作業が必要となる。
本発明は、かかる事情に鑑み、腹起しを含めて移動でき、夾雑物が多い環境でも車輪の清掃の負荷を軽減可能な支保装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、既設管内に設けられた更生管の外周と前記既設管の内周との間に裏込め材を充填する際に前記更生管を支持する支保装置であって、
前記更生管内に配置された支保フレームと、
前記更生管の内周面と対面する押し当て面及び前記押し当て面に開口された格納室を有し、かつ長手方向を前記更生管の管軸方向へ向けて前記更生管の内周面に沿わされた腹起しと、
前記腹起しを前記支保フレームに対して前記管軸方向と交差する方向へ進退可能に連結する進退連結手段と、
前記格納室に設けられた車輪と、
前記車輪を、前記押し当て面から突出された突出位置と前記格納室内に引っ込んだ格納位置との間で出没させる出没機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
当該支保装置を、更生管内の裏込め施工区間に設置する。進退連結手段によって、腹起しを進出させて更生管の内周面に押し当てる。かつ出没機構によって車輪を格納位置に配置する。この状態で裏込めを行う。注入時の裏込め材の圧力が更生管にかかっても、支保装置によって更生管の変形を防止できる。
裏込め材の養生、硬化後、出没機構によって車輪を突出位置にして更生管の内周面に接地させる。かつ、進退連結手段によって腹起しを引っ込めることで前記押し当てを解除し、更には腹起しを更生管の内周面から浮かせる。これによって、支保フレーム及び腹起しを一体で、次の裏込め施工区間へ移動させることができる。
好ましくは支保装置の移動時以外は、車輪を格納室に格納しておく。これによって、下水などの夾雑物が多い環境であっても、車輪に夾雑物が付着したり絡まったりするのが抑制又は防止される。したがって、車輪の清掃の負荷が軽減される。
【0008】
前記車輪が、車輪フレームに回転可能に支持されており、
前記出没機構が、前記車輪フレームに接続されたネジ部材と、前記腹起しに設けられて前記ネジ部材が螺合されるナット部材とを含むことが好ましい。
これによって、出没機構を簡易なネジ機構によって構成できる。ネジ部材を回すことによって、車輪を格納室から出没させることができる。
【0009】
前記管軸方向に間隔を置いて複数の位置にそれぞれ前記支保フレームが配置され、隣接する支保フレームに前記腹起しが架け渡されることによって、支保ユニットが構成されていることが好ましい。
これによって、支保ユニットごとに移動させることができ、移動作業を効率化できる。
【0010】
前記管軸方向に互いに離れた位置にそれぞれ前記支保ユニットが設置され、隣接する支保ユニットにユニット間腹起しが着脱可能に架け渡されていることが好ましい。
これによって、2つの支保ユニットにおける対向する端部の支保フレームどうしが、ユニット間腹起しの長さ分だけ離れて設置される。したがって、管軸方向の実質的に同一位置ないしは近接位置に2つの支保フレームが配置されないようにできる。つまり、1つの支保フレームで強度を担える領域に、2つの支保フレームが配置されることで、強度上の無駄が生じるのを回避できる。
支保装置全体では重すぎる場合、次の裏込め施工区間へ移動する際、ユニット間腹起しを取り外す。これによって、支保装置を個々の支保ユニットに分割して、支保ユニットごとに移動させることができる。
【0011】
前記支保ユニットの腹起しと前記ユニット間腹起しとが、一直線に配置されるとともにこれら腹起しに跨る腹起し連結部材を介して分離可能に連結されており、
前記腹起し連結部材が、前記支保ユニットの腹起しに差し込まれる第1差し込み部と、前記ユニット間腹起しに差し込まれる第2差し込み部とを含むことが好ましい。
これによって、腹起し連結部材が腹起しの外面から突出されないようにできる。移動時には、第2差し込み部をユニット間腹起しから引き抜くことによって、支保ユニットとユニット間腹起しを分離できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支保フレームと腹起しを一体で移動できる。また、夾雑物が多い環境でも車輪の清掃の負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る支保装置が設置された既設管を、裏込め施工時の状態で示す側面断面図である。
【
図2】
図2は、
図3のII-II線に沿う、前記支保装置の正面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う、前記支保装置の側面断面図である。
【
図4(a)】
図4(a)は、
図3の円部IVの、車輪が格納位置における拡大断面図である。
【
図4(b)】
図4(b)は、
図3の円部IVにおいて車輪を突出位置にして示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、
図7のVI-VI線に沿う、前記支保装置の進退連結手段及び腹起しの正面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線に沿う平面断面図である。ある。
【
図8】
図8は、前記支保装置の移動時の状態を示す側面図である。
【
図9】
図9は、前記移動時の支保装置の正面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る支保装置が設置された既設管を、裏込め施工時の状態で示す側面断面図である。
【
図11】
図11は、前記第2実施形態の支保ユニットとユニット間腹起しとの連結部の側面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3実施形態に係る支保装置が設置された既設管を、裏込め施工時の状態で示す側面断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第4実施形態に係る支保装置の正面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第5実施形態に係る支保装置の正面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第6実施形態に係る支保装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図9)>
図1に示すように、本実施形態における更生対象の既設管1は、老朽化した下水道管である。なお、既設管1は、下水道管に限られず、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管、トンネル等であってもよい。
【0015】
既設管1の内周に沿って更生管3がライニングされている。更生管3は、例えば、合成樹脂製の帯状部材(プロファイル)を螺旋状に巻回してなる螺旋管によって構成されている。なお、更生管3が、合成樹脂製のチューブによって構成されていてもよい。
【0016】
既設管1の内周と更生管3の外周との間の管間隙間1dには、裏込め材2が充填される。裏込め施工は、例えば2つの人孔4の間の既設管1を一区間として、区間ごとに行われる。
裏込め施工区間における更生管3の内部には支保装置5が設置される。前記区間の更生管3が、支保装置5によって内周側から支持される。
【0017】
図1に示すように、支保装置5は、複数の支保ユニット6を含む。
図2及び
図3に示すように、支保ユニット6は、2つ(複数)の支保フレーム10と、複数の腹起し20と、各腹起し20に設けられた車輪30を含む。
【0018】
図1に示すように、更生管3の管軸方向(同図において左右)における、支保ユニット6の両端部にそれぞれ支保フレーム10が配置されている。これら支保フレーム10に腹起し20が架け渡されている。腹起し20の両端部にそれぞれ対応する支保フレーム10が連結されている。言い換えると、管軸方向に間隔を置いて2つ(複数)の位置にそれぞれ支保フレーム10が配置され、隣接する支保フレーム10に腹起し20が架け渡されることによって、支保ユニット6が構成されている。
【0019】
複数の支保ユニット6が、更生管3の管軸方向に沿って一列に並べられている。隣接する支保ユニット6どうしが突き当てられ、ないしは近接されている。支保装置5における隣接する支保ユニット6の対向する支保フレーム10どうしが、管軸方向の実質的に同一位置ないしは近接した位置に並んで配置されている。
【0020】
図2に示すように、支保フレーム10は、中央フレーム材11と、複数(図では10本)の支持パイプ12を含む。中央フレーム材11は、環状に形成され、更生管3の断面の中央部に配置されている。中央フレーム材11の周方向に間隔を置いて複数の連結腕部13が設けられている。各連結腕部13に支持パイプ12が接合されている。複数の支持パイプ12が、互いに放射状に中央フレーム材11から更生管3の内周面へ向かって延びている。
【0021】
図2に示すように、中央フレーム材20から真下方向へ延びる支持パイプ12と、左右水平に延びる支持パイプ12との間には、ブレース材14が架け渡されている。
図3に示すように、支保ユニット6の両端中央フレーム材11どうし間には、連結梁材15が架け渡されている。
【0022】
各支持パイプ12の外向き端部(更生管3の内周面を向く端部)には、進退連結手段40を介して、腹起し20が連結されている。
図6に示すように、腹起し20は、中空の四角形の断面になるように組まれたアルミ角材からなり、所定の長さに形成されている。
図3に示すように、該腹起し20が、長手方向を更生管3の管軸方向(
図3の左右方向)へ向けて、更生管3の内周面に沿わされている。
図2に示すように、複数(図では10本)の腹起し20が更生管3の周方向に間隔を置いて配置されている。
【0023】
図6に示すように、進退連結手段40は、ジャッキシャフト41と、ハンドル42a付きの受け部材42と、ベース部材43を有するジャッキベースによって構成されている。ジャッキシャフト41の内向き端部(支保フレーム10を向く端部、
図6において上端部)が、支持パイプ12に差し込まれている。受け部材42のナット42bが、ジャッキシャフト41の雄ネジ41bに螺合されるとともに、支持パイプ12の端部に突き当てられている。
【0024】
ジャッキシャフト41の外向き端部(
図6において下端部)には、ベース部材43が連結されている。
図6に示すように、ベース部材43は、ジャッキシャフト41と対面するベース板43aと、一対の側板43eを有し、コ字状に形成されている。該ベース部材43が腹起し20に被さり、側板43eが腹起し20にボルト45によって固定されている。
図6及び
図7に示すように、ベース板43aの中央部には台座43bが設けられ、かつ台座43b及びベース板43aを貫通する貫通穴43cが形成されている。貫通穴43cにジャッキシャフト41の外向き端部が差し込まれている。
【0025】
さらに、台座43bに係止板44が重ねられてボルト46にて固定されている。係止板44には、係止凹部44dが形成されている。係止凹部44dは、係止板44の一端縁に達している。
ジャッキシャフト41の外向き端部の近傍部の外周には、180度離れて一対の切込み溝41dが形成されている。係止凹部44dの一対の縁が、それぞれ対応する切込み溝41dに嵌っている。これによって、ジャッキシャフト41が、ベース部材43に対して回り止め及び抜け止めされている。
【0026】
進退連結手段40の受け部材42を回転操作することによって、ジャッキシャフト41が支持パイプ12に対して進退される。ひいては、腹起し20が、支保フレーム10に対して、ジャッキシャフト41及び支持パイプ12の軸方向(更生管3の管軸方向と交差する方向)へ進退される。
【0027】
図3に示すように、各腹起し20の長手方向の両側部には、格納室23が形成されている。
図4(a)に示すように、腹起し20内の中空部20cには、一対の仕切壁24が設けられており、これら仕切壁24どうしの間が格納室23となっている。腹起し20における、更生管3の内周面と対面する押し当て面20bには、開口23cが形成されている。格納室23が、開口23cに連なることによって、押し当て面20bに開口されている。
【0028】
図4(a)及び
図5に示すように、格納室23には、車輪30及び車輪フレーム32が設けられている。車輪フレーム32はコ字状に形成されている。該車輪フレーム32に車輪30が回転可能に支持されている。車輪30の回転軸は、対応する腹起し20の長手方向(
図4(a)において左右方向)と直交し、かつ対応するジャッキシャフト41及び支持パイプ12の軸方向(
図4(a)において上下方向)と直交している。
好ましくは、車輪30は取り外し可能(着脱可能)である。より好ましくは、車輪30を車輪フレーム23から取り外し可能である。これによって、車輪30が壊れた場合、車輪30のみを交換することができる。車輪30及び車輪フレーム32を一体に交換することにしてもよい。
【0029】
車輪フレーム32ひいては車輪30と、腹起し20とは、出没機構50を介して連結されている。出没機構50は、ネジ部材51と、ナット部材52を含む。ネジ部材51の軸線は、対応するジャッキシャフト41及び支持パイプ12の軸方向(
図4(a)において上下方向)と平行に向けられている。該ネジ部材51の基端部が、車輪フレーム32のトッププレート32aに、軸受け部53を介して回転可能に接続されている。かつネジ部材51は、格納室23ひいては腹起し20の中央フレーム材11を向く表側板部25を貫通して、中央フレーム材11側へ突出されている。
【0030】
表側板部25には、ナット部材52が固定されている。ネジ部材51がナット部材52に螺合されている。ネジ部材51を回すことによって、車輪フレーム32及び車輪30が、ネジ部材51の軸方向に進退される。したがって、出没機構50によって、車輪30が、突出位置(
図4(b))と、格納位置(
図4(a)及び
図5)との間で出没される。突出位置における車輪30は、押し当て面20bから突出される。格納位置における車輪30は、全体が格納室23内に引っ込む。
【0031】
図1に示すように、かかる構成の支保装置5を、更生管3内の裏込め施工区間に設置する。各支保ユニット6の進退連結手段40によって、腹起し20を進出させて更生管3の内周面に押し当てる。車輪30は、出没機構50によって格納位置に配置させておく。
この状態で裏込めを行う。注入時の裏込め材2の圧力が更生管3にかかっても、支保装置5によって更生管3の変形を防止できる。
隣接する支保ユニット6の対向する支保フレーム10どうしが近接して配置されているため、所要の強度を十分に担うことができる。支保装置5は、大断面の既設管1及び更生管3に適している。
【0032】
なお、図示は省略するが、支保装置5には突っ張り材を含む浮上防止手段が設けられている。突っ張り材が、更生管3の頂部を貫通して既設管1に突き当てられて突っ張ることで、更生管3が裏込め材2による浮力で浮上するのを防止できる。その後、突っ張り材は、更生管3内に引っ込められ、更生管3の頂部の貫通穴は閉塞部材で閉塞される。
【0033】
図4(b)に示すように、裏込め材2の養生、硬化後、出没機構50によって車輪30を突出位置にして、更生管3の内周面に車輪30を接地させる。かつ、
図8及び
図9に示すように、進退連結手段40によって腹起し20を引っ込めることで押し当てを解除し、更には腹起し20を更生管3の内周面から浮かせる。
これによって、車輪30を更生管3の内周面に接触させて転がすことによって、支保ユニット6を軽い力で、次の裏込め施工区間へ移動させることができる。少なくとも更生管3の底部ないしは下側部と面する車輪30を突出位置にする。好ましくは、更生管3の側方部及び上側部に面する車輪30をも突出位置にする。これによって、支保ユニット6を容易に移動させることができる。
【0034】
支保ユニット6ごとに、該支保ユニット6の支保フレーム10及び腹起し20を一体で移動でき、移動作業を効率化できる。
支保装置5の全体の重量は過大であっても、支保ユニット6に分割することで、移動作業を一層容易化できる。特に第1実施形態の支保装置5は、1本の腹起し20の長さごとに支保ユニット6に分割されているために、大断面の既設管1の更生施工に適している。
【0035】
好ましくは支保装置5の移動時以外は、車輪30を格納室23に格納しておく。これによって、下水などの夾雑物が多い環境であっても、車輪30に夾雑物が付着したり絡まったりするのが抑制又は防止される。したがって、車輪30の清掃の負荷が軽減される。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図10~
図12)>
図10に示すように、第2実施形態の支保装置5Bにおいては、各支保ユニット6Bが、3つの支保フレーム10を有している。支保フレーム10は、支保ユニット6Bの両端部及び中央部(管軸方向に間隔を置いた3つ(複数)の位置)に配置されている。隣接する2つの支保フレーム10に腹起し20が架け渡され、支保ユニット6Bが構成されている。
【0037】
3つの支保フレーム10にわたる2つの腹起し20が一直線に連なっている。中央部の支保フレーム10のベース部材43が、これら2つの腹起し20の対向端部に跨り、2つの腹起し20を連結している。
各腹起し20に車輪30が出没可能に格納されている点は、第1実施形態と同様である。
【0038】
支保装置5Bにおける隣接する支保ユニット6Bどうしは、更生管3の管軸方向(
図10において左右)に互いに離れて設置されている。言い換えると、管軸方向に互いに離れた位置にそれぞれ支保ユニット6Bが設置されている。隣接する2つの支保ユニット6Bどうしの離間距離は、腹起し1本分の長さと実質的に等しい。
【0039】
図11に示すように、隣接する2つの支保ユニット6Bにユニット間腹起し29が着脱可能に架け渡されている。各支保ユニット6Bのユニット内腹起し20と、ユニット間腹起し29とが、一直線をなすように配置され、腹起し連結部材60を介して連結されている。
【0040】
図12に示すように、腹起し連結部材60は、一対の差し込み部材61と、接続板62を含む。差し込み部材61は、長手方向を腹起し20,29と同方向へ向けた断面コ字状の板材によって構成されている。一対の差し込み部材61が互いに向き合うように配置されている。差し込み部材61の側板部には、雌ネジ穴61bが形成されている。これら差し込み部材61の長手方向の中間部に接続板62が介在されている。接続板62は、腹起し20,29の断面と同形状の平板形状に形成されている。各差し込み部材61が接続板62を貫通するとともに接続板62と溶接等で固定されている。一対の差し込み部材61どうしが接続板62を介して連結されている。接続板62を挟んで、一方側の一対の差し込み部材61によって第1差し込み部63が構成され、他方側の一対の差し込み部材61によって第2差し込み部64が構成されている。
【0041】
図11に示すように、第1差し込み部63が、ユニット内腹起し20に差し込まれている。第2差し込み部64が、ユニット間腹起し29に差し込まれている。接続板62が、腹起し20,29に挟まれている。接続板62の両側面に腹起し20,29の端面がそれぞれ突き当てられている。これによって、腹起し連結部材60が、腹起し20,29の対向端部に跨っている。
【0042】
ボルト65が、ベース部材43及びユニット内腹起し20を貫通して、第1差し込み部63の雌ネジ孔61にねじ込まれている。ボルト66が、ユニット間腹起し29を貫通して、第2差し込み部64の雌ネジ孔61bにねじ込まれている。これによって、各腹起し20,29と腹起し連結部材60とが分離可能に接合され、腹起し20,29どうしが、腹起し連結部材60を介して分離可能に連結されている。
腹起し連結部材60は、接続板62の周端面を除いて外部に露出されておらず、腹起し20,29の外面から突出されていない。
【0043】
図10に示すように、支保装置5Bによれば、2つの支保ユニット6Bにおける対向する端部の支保フレーム10どうしが、ユニット間腹起し29の長さ分だけ離れて設置される。したがって、管軸方向の実質的に同じ位置に2つの支保フレーム10が配置されないようにできる。つまり、1つの支保フレーム10で強度を担える領域に2つの支保フレーム10が配置されることで、強度上の無駄が生じるのを回避できる。
支保装置5Bは、第1実施形態の支保装置5(
図1)より小さい断面の既設管1及び更生管3に適している。
【0044】
支保装置5Bを次の裏込め施工区間へ移動させる際は、ボルト66を外して、腹起し連結部材60の第2差し込み部64をユニット間腹起し29から引き抜き、ユニット間腹起し29を取り外す。これによって、支保ユニット6Bとユニット間腹起し29を分離でき、1の支保ユニット6Bごとに移動させることができる。
移動先の裏込め施工区間では、隣接する支保ユニット6Bをユニット間腹起し29及び腹起し連結部材60によって再度連結する。
【0045】
<第3実施形態(
図13)>
図13に示すように、第3実施形態の支保装置5Cにおいては、複数の支保ユニット6Cの各々が、4つの支保フレーム10を有している。これら支保フレーム10が、管軸方向(
図13において左右)に等間隔置きに配置されている。すなわち、管軸方向に間隔を置いて4つ(複数)の位置にそれぞれ支保フレーム10が配置され、隣接する支保フレーム10に腹起し20が架け渡されることによって、支保ユニット6Cが構成されている。
腹起し20に車輪30が出没可能に格納されている点は、第1、第2実施形態(
図1、
図10)と同様である。
隣接する支保ユニット6Cにユニット間腹起し29が着脱可能に架け渡されている点は、第2実施形態(
図10)と同様である。
【0046】
<第4実施形態(
図14)>
図14に示すように、第4実施形態の支保装置5Dにおいては、中央フレーム材11Dが更生管3の内周に沿う環状に形成されている。支持パイプ12(
図2)は省略されている。ジャッキシャフト41が中央フレーム材11Dに直接連結されている。
腹起し20に車輪30が出没可能に格納されている点は、既述の実施形態と同様である。
【0047】
<第5実施形態(
図15)>
既設管1及び更生管3の断面形状は円形に限られない。
図15に示すように、第5実施形態においては、既設管1及び更生管3が、長方形ないしは長円形の断面形状になっている。これに合わせて、支保装置5Eの中央フレーム材11Eが長方形に形成されている。ジャッキシャフト41が中央フレーム材11Eに直接連結されている。
腹起し20に車輪30が出没可能に格納されている点は、既述の実施形態と同様である。
【0048】
<第6実施形態(
図16)>
図16に示すように、第6実施形態においては、更生管3の外周部(たとえば更生管3を構成する帯状部材(プロファイル)の背面リブ(特許文献2の
図13参照))が、既設管1の内周面の全周にわたって当たる程度に近接して製管されている。これによって、管間隙間1dが全体的に狭くなっている。このため、裏込め材2の所要注入量が第1実施形態(
図2)より少ない。
【0049】
これに対応して、第6実施形態の支保装置5Fにおいては、ブレース材14(
図2)が省略されている。要するに、裏込め材2の注入量が僅かで済むために、支保装置5Fにかかる負荷が小さく、ブレース材14が不要である。また、支持パイプ12及び腹起し20の本数を少なくできる。例えば第1実施形態の支保装置5では、支持パイプ12及び腹起し20が10本ずつであったが、本実施形態においては8本ずつで済む。
このように、既設管1及び更生管3の管径、裏込め材2の注入量などから支保装置にかかる荷重が小さい場合には、支保装置を構造的に簡易にすることができる。
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第1実施形態においても、第2、第3実施形態と同様に、隣接する支保ユニット6を腹起し1本分の間隔を置いて配置し、これら支保ユニット6の間にユニット間腹起し29を架け渡してもよい。
腹起し連結部材が、ユニット内腹起し20とユニット間腹起し29との外面に跨る板部材であってもよい。
出没機構は油圧アクチュエーターを含んでいてもよい。
進退連結手段は油圧アクチュエーターを含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば、老朽化した下水道管の更生施工に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 既設管
1d 管間隙間
2 裏込め材
3 更生管
5 支保装置
5B,5C,5D,5E,5F 支保装置
6 支保ユニット
6B,6C 支保ユニット
10 支保フレーム
20 腹起し
20b 押し当て面
23 格納室
23c 開口
29 ユニット間腹起し
30 車輪
32 車輪フレーム
40 進退連結手段
41 ジャッキシャフト
50 出没機構
51 ネジ部材
52 ナット部材
60 腹起し連結部材
63 第1差し込み部
64 第2差し込み部