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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
H05K13/08 B
H05K13/08 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020124984
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021436
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 純司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昂太郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将也
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038339(JP,A)
【文献】特開2014-053493(JP,A)
【文献】特開平6-196546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドユニットを備えた部品実装機であって、
対象物の位置を測定するとともに、前記対象物の位置を特定する基準となるマーカーの位置を測定する測定部と、
前記マーカーの測定後のデータ上の位置を前記マーカーのデータ上の基準位置に一致させるようにして前記対象物の測定後のデータ上の位置を補正することで前記対象物の補正後のデータ上の位置を算出する補正部と、を備え、
前記マーカーの位置に対する前記対象物の位置の相対的な位置関係は予め決まっており、前記マーカーのデータ上の基準位置と前記相対的な位置関係とから算出される前記対象物のデータ上の位置を前記対象物のデータ上の基準位置とした場合、
前記対象物の補正後のデータ上の位置が前記対象物のデータ上の基準位置からずれている場合に、判定ロジックを用いて異常個所を特定する、部品実装機。
【請求項2】
前記対象物は、前記ヘッドユニットに備えられた実装ヘッドであり、前記実装ヘッドが部品を吸着し、前記実装ヘッドの移動により前記部品を基板に実装し、
前記測定部は、前記部品の実装位置ずれを防止するために用いられるカメラである、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記マーカーは、前記実装ヘッドの位置を特定する基準となるヘッドユニットマーカーであり、
前記カメラは、前記実装ヘッドの位置を測定するとともに、前記ヘッドユニットマーカーの位置を測定する部品カメラである、請求項2に記載の部品実装機。
【請求項4】
ベースと前記ベース上に設けられたヘッドユニットとを備えた部品実装機であって、
前記ベースの上面にはベースマーカーが配置され、前記ヘッドユニットには前記ベースマーカーの位置を測定するマークカメラが設けられており、
前記ベースマーカーは前記ベースに固定されており、前記ベースマーカーの位置は変わらないから、前記ベースマーカーの位置を前記ベースマーカーのデータ上の基準位置とした場合に、
前記マークカメラによって測定された前記ベースマーカーの測定後のデータ上の位置が前記ベースマーカーのデータ上の基準位置からずれている場合に、判定ロジックを用いて異常個所を特定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記補正部によって算出された前記対象物の補正後のデータ上の位置を記憶させる記憶部を備え、
前記測定部による次回以降の測定時に、前記記憶部によって記憶された前記対象物の補正後のデータ上の位置を前記対象物のデータ上の基準位置として使用する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項6】
一回の入力操作で前記測定部による測定動作、前記補正部による補正算出動作、および前記記憶部による記憶動作を順次自動的に実行させる制御部と、
前記補正部によって補正算出された前記対象物の補正後のデータ上の位置を表示させる表示部と、を備える、請求項5に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着ノズルを備えたヘッドユニットにより電子部品を吸着し、ヘッドユニットを回路基板上に移動させて部品を回路基板に実装する部品実装機として、特開2005-38910号公報(下記特許文献1)に記載の部品実装機が知られている。この部品実装機は、サーボモータなどの駆動部によりヘッドユニットなどの移動部をX軸、Y軸、Z軸、R軸の各方向に移動させる。駆動部が正常なとき、移動部を所定の移動ストロークで移動させたときに所定の移動領域で発生する速度偏差、位置偏差などの制御偏差を制御偏差の既定値としてコントローラに記憶しておく。そして、各駆動部の自己診断を行う場合、各駆動部により移動部を前記の移動ストロークで移動させたときに前記移動領域で発生する制御偏差を前記記憶した既定値と比較し、その比較結果に基づいて駆動部の異常を判定する。この自己診断は、部品実装機の製造時の組み立て完了後の試験時やメンテナンス時に実行されるため、実装基板の生産中に実装不良が発生してその不良発生調査のために生産を停止せざるを得ない計画外停止を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-38910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の部品実装機はサーボモータの異常を検知できたとしても、ヘッドユニットの吸着ノズルの位置ずれや基板認識カメラの位置ずれなどの位置ずれ不良を検知できないため、位置ずれ不良による計画外停止が発生するおそれがある。このように上記の部品実装機では、吸着ノズルの位置ずれや基板認識カメラの位置ずれなどの判断材料となる位置測定を行っていないため、不良発生前に異常を検知できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の部品実装機は、ヘッドユニットを備えた部品実装機であって、対象物の位置を測定するとともに、前記対象物の位置を特定する基準となるマーカーの位置を測定する測定部と、前記マーカーの測定後の位置をその基準位置に一致させるようにして前記対象物の測定後の位置を補正することで前記対象物の補正後の位置を算出する補正部と、を備え、前記マーカーの位置に対する前記対象物の位置の相対的な位置関係は予め決まっており、前記マーカーの位置と前記相対的な位置関係とから算出される前記対象物の位置を前記対象物の基準位置とした場合、前記対象物の補正後の位置が前記対象物の基準位置からずれている場合に、判定ロジックを用いて異常個所を特定する、部品実装機である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、対象物の位置を測定することで、不良発生前に異常を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る部品実装機の平面図である。
図2図2は、部品実装機の正面図である。
図3図3は、ヘッドユニットの底面図である。
図4図4は、部品実装機の電気的構成を示したブロック図である。
図5図5は、異常診断を行うユーザーインターフェイスの一例を示した図である。
図6図6は、ヘッドユニットマーカーによる判定ロジック(A)を説明した図である。
図7図7は、ヘッドユニットマーカーによる判定ロジック(B)を説明した図である。
図8図8は、ヘッドユニットマーカーによる判定ロジック(C)を説明した図である。
図9図9は、ベースマーカーによる判定ロジック(D)を説明した図である。
図10図10は、ベースマーカーによる判定ロジック(E)を説明した図である。
図11図11は、ベースマーカーによる判定ロジック(F)を説明した図である。
図12図12は、本開示の実施形態2に係るロータリーヘッドの底面図である。
図13図13は、ヘッドユニットマーカーによる判定ロジック(G)を説明した図である。
図14図14は、ヘッドユニットマーカーによる判定ロジック(H)を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の部品実装機は、ヘッドユニットを備えた部品実装機であって、対象物の位置を測定するとともに、前記対象物の位置を特定する基準となるマーカーの位置を測定する測定部と、前記マーカーの測定後の位置をその基準位置に一致させるようにして前記対象物の測定後の位置を補正することで前記対象物の補正後の位置を算出する補正部と、を備え、前記マーカーの位置に対する前記対象物の位置の相対的な位置関係は予め決まっており、前記マーカーの位置と前記相対的な位置関係とから算出される前記対象物の位置を前記対象物の基準位置とした場合、前記対象物の補正後の位置が前記対象物の基準位置からずれている場合に、判定ロジックを用いて異常個所を特定する、部品実装機である。
【0009】
測定部によってマーカーの位置を測定することで熱的変化や動的変形による対象物の位置変化量を測定できるため、マーカーの位置に基づいて対象物の測定後の位置を補正することで対象物の補正後の位置を算出できる。対象物の補正後の位置を確認することで対象物の位置ずれなどの状態を知ることができる。対象物の補正後の位置が対象物の基準位置からずれている場合、判定ロジックを用いて異常個所を特定できるから、不良発生前に異常を検知できる。
【0010】
(2)前記対象物は、前記ヘッドユニットに備えられた実装ヘッドであり、前記実装ヘッドが部品を吸着し、前記実装ヘッドの移動により前記部品を基板に実装し、前記測定部は、前記部品の実装位置ずれを防止するために用いられるカメラであることが好ましい。
部品の実装位置ずれの原因となり得る対象物の補正後の位置を測定することで、大きな実装位置ずれの不良発生前に異常を検知できる。また、判定ロジックを用いて異常個所を特定することで交換または修正をするべき対象物を特定することができる。
【0011】
(3)前記マーカーは、前記実装ヘッドの位置を特定する基準となるヘッドユニットマーカーであり、前記カメラは、前記実装ヘッドの位置を測定するとともに、前記ヘッドユニットマーカーの位置を測定する部品カメラであることが好ましい。判定ロジックとしては熱的変化による位置変化と機械的要因による位置変化とを切り分けることができるものを用いることが好ましい。
部品の実装位置ずれの原因となり得る部品カメラの位置、実装ヘッドの位置、およびヘッドユニットマーカーの位置を測定することで、大きな実装位置ずれの不良発生前に異常を検知できる。また、判定ロジックを用いて異常個所を特定することで、ヘッドユニットにおいて交換または修正をするべき部位を特定することができる。
【0012】
(4)ベースと前記ベース上に設けられたヘッドユニットとを備えた部品実装機であって、前記ベースの上面にはベースマーカーが配置され、前記ヘッドユニットには前記ベースマーカーの位置を測定するマークカメラが設けられており、前記ベースマーカーは前記ベースに固定されており、前記ベースマーカーの位置は変わらないから、前記ベースマーカーの位置を前記ベースマーカーの基準位置とした場合に、前記マークカメラによって測定された前記ベースマーカーの測定後の位置が前記ベースマーカーの基準位置からずれている場合に、判定ロジックを用いて異常個所を特定することが好ましい。判定ロジックとしては熱的変化による位置変化と機械的要因による位置変化とを切り分けることができるものを用いることが好ましい。
ベースマーカーの補正後の位置がベースマーカーの基準位置からずれている場合、判定ロジックを用いて異常個所を特定できるから、不良発生前に異常を検知できる。すなわち、部品の実装位置ずれの原因となり得るマークカメラの位置およびベースマーカーの位置を測定することで、大きな実装位置ずれの不良発生前に異常を検知できる。また、異常個所を特定することで、マークカメラおよびベースマーカーにおいて交換または修正をするべき部位を特定することができる。
【0013】
(5)前記補正部によって算出された前記対象物の補正後の位置を記憶させる記憶部を備え、前記測定部による次回以降の測定時に、前記記憶部によって記憶された前記対象物の補正後の位置を前記対象物の基準位置として使用することが好ましい。
機械的な修理をすることなく、生産が継続できるため、修理に要する時間を短縮できる。
【0014】
(6)一回の入力操作で前記測定部による測定動作、前記補正部による補正算出動作、および前記記憶部による記憶動作を順次自動的に実行させる制御部と、前記補正部によって補正算出された前記対象物の補正後の位置を表示させる表示部と、を備えることが好ましい。
一回の入力操作で全ての動作を実行し、異常個所を特定できるため、自己診断が容易になる。
【0015】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示の部品実装機の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。実施形態は、図1に示すように、電子部品等の部品Eをプリント基板等の基板B上に実装する部品実装機10を例示している。
【0016】
<部品実装機の全体構成>
部品実装機10は、図1および図2に示すように、平面視略矩形状のベース11と、基板Bを搬送する搬送装置12と、基板B上に部品Eを実装(搭載)する部品搭載ユニット20と、部品搭載ユニット20に部品Eを供給するための部品供給装置13と、を備えて構成されている。
【0017】
以下の説明において、X方向とは図1における左右方向(基板Bの搬送方向)を基準とし、左右方向という場合もある。また、Y方向とは図1における上下方向(基板Bの搬送方向に直交する方向)を基準とし、前後方向という場合もある。前後方向という場合、図示下側を前側、図示上側を後側とする。また、Z方向とは図2における上下方向を基準とし、上下方向という場合もある。
【0018】
<ベース>
ベース11は、図1に示すように、左右方向に横長な平面視略矩形状をなし、X方向とY方向に延びるXY平面に平行な上面を有している。ベース11の上面には、左右方向に延びる搬送装置12、部品搭載ユニット20などが配置されている。
【0019】
<搬送装置>
搬送装置12は、図1および図2に示すように、左右方向に循環駆動する一対のコンベアベルト14を有しており、搬送路CPに沿って基板Bを搬送する装置である。コンベアベルト14はコンベアモータ17(図4参照)によって循環駆動する。基板Bは、上流側から一対のコンベアベルト14によって実装作業位置に搬入され、実装作業位置において部品Eの実装作業が行われた後、一対のコンベアベルト14によって下流側に向かって搬出される。これにより、基板Bが搬送路CPに沿って上流側から下流側に向けて搬送されるようになっている。
【0020】
<部品供給装置>
部品供給装置13は、図1に示すように、フィーダ型とされ、搬送装置12の前後両側において左右方向に2つずつ並べることで、合計4箇所に配されている。これらの部品供給装置13には、複数のフィーダ16が左右方向に整列した状態で取り付けられている。各フィーダ16は、複数の部品Eが収容された部品供給テープをリールから引き出す図示しない電動式の送出装置などを備えており、搬送装置12側の端部から部品Eを一つずつ供給する。
【0021】
<部品搭載ユニット>
部品搭載ユニット20は、部品供給装置13から供給される部品Eを取り出して基板B上に実装するものであって、図1に示すように、ベース11の左右方向の両側に配される一対のY軸フレーム23と、一対のY軸フレーム26と、X軸フレーム26に移動可能に取り付けられたヘッドユニット30と、X軸移動装置28と、Y軸移動装置25と、を備えて構成されている。
【0022】
Y軸移動装置25は、一対のY軸ボールねじ軸25Aと、一対のY軸ボールねじ軸25Aに螺合した図示しない一対のボールナットと、一対のY軸サーボモータ25Bと、を備えたツインドライブ方式の装置となっている。一対のY軸フレーム23には、Y方向に延びるY軸ボールねじ軸25Aと、Y方向に延びる一対のY軸ガイドレール24と、が設けられている。各Y軸ボールねじ軸25Aは、Y方向に平行に延び、X方向に所定間隔離れて配置されている。Y軸ボールねじ軸25Aの軸端部にはY軸サーボモータ25Bが設けられている。Y軸サーボモータ25Bが通電制御されると、X軸フレーム26と、X軸フレーム26に取り付けられたヘッドユニット30と、がY軸ガイドレール24に沿って前後方向に移動するようになっている。
【0023】
Y軸移動装置28は、X軸ボールねじ軸28Aと、Y軸ボールねじ軸28Aに螺合した図示しないボールナットと、Y軸サーボモータ28Bと、を備えている。X軸フレーム26には、図3に示すように、X方向に延びるX軸ボールねじ軸28Aと、X方向に延びるX軸ガイドレール27と、が設けられている。X軸ガイドレール27には、ヘッドユニット30がX方向に移動可能に取り付けられている。X軸ボールねじ軸28Aの軸端部にはX軸サーボモータ28Bが設けられている。X軸サーボモータ28が通電制御されると、ヘッドユニット30がX軸ガイドレール27に沿って左右方向に移動するようになっている。
【0024】
<ヘッドユニット>
ヘッドユニット30は、図1および図2に示すように、箱形状をなすヘッドユニット本体31と、部品Eの実装動作を行う複数の実装ヘッド32と、を有している。
【0025】
複数の実装ヘッド32は、ヘッドユニット本体31から下方に突出した形態で左右方向に並んで配列されており、各実装ヘッド32は、上下方向に延びるシャフト33と、シャフト33の先端である下端部に着脱可能な吸着ノズル34と、を有している。
【0026】
シャフト33には、ヘッドユニット本体31内に設けられたZ軸サーボモータ35およびR軸サーボモータ36が取り付けられている。シャフト33は、Z軸サーボモータ35によって上下方向に昇降可能とされ、R軸サーボモータ36によって軸回りに回転可能とされている。
【0027】
吸着ノズル34は、図2に示すように、上下方向に延びる略筒状をなしている。吸着ノズル34は、シャフト33の下端部に設けられた図示しない保持部によって上端部が保持されることで、シャフト33の下端部に保持されている。また、各実装ヘッド32にはエア供給装置51から負圧が供給されるようになっており、吸着ノズル34の先端に吸引力が生じるようになっている。
【0028】
ヘッドユニット本体31の両側面には、図3に示すように、一対のマークカメラ21が設けられており、マークカメラ21が基板Bのフィデューシャルマークを撮像して、基板Bを画像認識するようになっている。一方、ベース11上における基板Bの前後両側には、一対の部品カメラ15が設置されており、部品カメラ15は、ヘッドユニット30の実装ヘッド32に吸着保持された部品Eを撮像するようになっている。
【0029】
<部品実装機の電気的構成>
次に、部品実装機10の電気的構成を、図4を参照して説明する。
部品実装機10は、制御部110によって全体が制御統括されており、制御部110は、CPUなどにより構成される演算処理部111を備えている。演算処理部111には、モータ制御部112、記憶部113、画像処理部114、外部入出力部115、フィーダ通信部116、表示部117、入力部118などが接続されている。
【0030】
モータ制御部112は、演算処理部111の指令により、記憶部113に記憶されている実装プログラムに基づいて、Y軸サーボモータ28、Z軸サーボモータ35、R軸サーボモータ36、コンベアモータ17などを制御し、部品Eを実装する。
【0031】
記憶部113には、基板Bに部品Eを実装するための実装プログラムや各種データなどが記憶されている。各種データには、生産が予定されている基板Bの寸法や搬送速度に関する基板情報、ヘッドユニット30に装着されているシャフト33や吸着ノズル34の識別情報、各カメラ15、21によって測定された対象物の位置、および対象物の位置ずれを判断するための基準位置などが含まれている。
【0032】
画像処理部114は、マークカメラ21や部品カメラ15から出力される画像信号が取り込まれるようになっており、取り込んだ画像信号に基づいて画像を生成する。
【0033】
外部入出力部115は、いわゆるインターフェースであって、演算処理部111は、外部入出力部115を通じて圧力センサ50からの検出信号を取り込み、エア供給装置51との制御信号の受け渡しを行う。圧力センサ50は、外部入出力部115に有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。
【0034】
フィーダ通信部116は、複数のフィーダ16に接続されており、各フィーダ16を統括して制御する。
【0035】
表示部117は、液晶モニタなどの表示装置であり、入力部118は、キーボードやマウスなどの入力装置であり、作業者からの入力の受付や作業者への出力を行う。
【0036】
<異常診断の概要>
部品実装機10は、初期調整状態(例えば製造時の組み立て完了後の状態)からの変化量に基づいて、以下の3項目について異常診断を実施することで吸着エラー、実装ずれが発生する前に異常を検知して復旧させることを特徴としている。この異常診断は、部品実装機10のメンテナンス時に自動的に実行される自己診断の一つである。
【0037】
1.部品の吸着から実装にかけて最も重要な部位の位置、性能を定期的に自動チェック
具体的には、以下の4つについて自動チェックを行う。
・各カメラ15、21の位置チェック
・実装ヘッド32の位置チェック
・ヘッドユニットマーカー37の位置チェック
・各マーカー18、37の認識を繰り返し行うことによる各カメラ21の位置、固定状態の再現性のチェック(認識繰り返し性ともいう)
【0038】
2.正常か異常かの判断
具体的には、以下の2つに基づいて正常か異常かの判断を行う。
・部品実装機10の初期調整状態からの変化量
・各マーカー18、37の認識繰り返し性
【0039】
3.作業者への通知
異常診断の結果が出たら、作業者へ通知する。復旧可能な異常項目については作業者からのフィードバック指示を不要とし、自動でフィードバックを行うこともできる。
【0040】
<ヘッドユニットマーカーによる位置補正>
図3に示すように、ヘッドユニット30の下面には、複数の実装ヘッド32と、一対のヘッドユニットマーカー37と、が配置されている。複数の実装ヘッド32は、等間隔に一列に並んで配置され、これらの実装ヘッド32の左右両側に一対のヘッドユニットマーカー37が配置されている。
【0041】
一対のヘッドユニットマーカー37に対する各実装ヘッド32の相対的な位置関係が予め決まっているため、部品カメラ15によって一対のヘッドユニットマーカー37のXY位置を測定すれば、各実装ヘッド32のXY位置を算出できることになる。したがって、ヘッドユニットマーカー37を基準とした各実装ヘッド32の位置を予め記憶しておくことで、実装ヘッド32が部品Eを吸着した状態を部品カメラ15で撮像した画像中に実装ヘッド32が部品Eの後方に隠れていてもヘッドユニットマーカー37が写っていることから実装ヘッド32の位置を検出でき、部品Eと実装ヘッド32との位置ずれを認識処理することができる。
【0042】
エンコーダから出力されたヘッドユニットマーカー37のXY位置と部品カメラ15によって測定されたヘッドユニットマーカー37の測定位置であるXY測定位置との間のずれ量(以下「マーカーずれ量」という)が認められる場合がある。すなわち、エンコーダの出力に従ってヘッドユニットマーカー37が部品カメラ15の画面中央に停止するようヘッドユニット30が駆動されたときにヘッドユニットマーカー37が画面中央よりずれて撮像される場合がある。このような場合、X軸ボールねじ軸28AもしくはY軸ボールねじ軸25Aの少なくとも一方が熱的変化することで軸伸びが発生していると判定できる(熱的変化による位置変化)。
【0043】
本実施形態ではヘッドユニットマーカー37のXY位置は前回測定時のXY位置と変わらないとして、その変わらないXY位置をヘッドユニットマーカー37の基準位置としている。一方、ヘッドユニットマーカー37に対する各実装ヘッド32の相対的な位置関係は予め決まっているため、ヘッドユニットマーカー37の基準位置と相対的な位置関係とから算出される各実装ヘッド32のXY位置を各実装ヘッド32の基準位置として使用できる。ヘッドユニットマーカー37の測定位置であるXY測定位置が基準位置よりずれている場合、マーカーずれ量に基づいて(すなわちヘッドユニットマーカー37のXY測定位置が基準位置と一致するように)実装ヘッド32のXY位置を補正する処理を行う(補正処理)。軸伸びが発生している場合、エンコーダの出力に従って実装ヘッド32が部品カメラ15の画面中央に停止するようヘッドユニット30が駆動されたときに実装ヘッド32が画面中央よりずれて撮像されることになる。その場合、上記マーカーずれ量に基づいて実装ヘッド32のXY位置を補正することで実装ヘッド32の補正後のXY位置を算出できる。以下においては補正後のXY位置を補正位置という。これらの補正算出動作は演算処理部111によって実行される。
【0044】
<実装ヘッド、ヘッドユニットマーカーの位置、固定状態測定>
実装ヘッド32、ヘッドユニットマーカー37の位置、固定状態を測定する方法について説明する。前回測定時のヘッドユニットマーカー37のXY位置は記憶部113に記憶されるようになっている。したがって、部品カメラ15による次回以降の測定時に、記憶部113によって記憶されたヘッドユニットマーカー37のXY位置が基準位置として使用される。演算処理部111による補正算出の結果、実装ヘッド32の補正位置と実装ヘッド32の基準位置とのずれ量(以下「ヘッドずれ量」という)を算出する。この結果、ヘッドずれ量が所定の閾値以下であれば実装ヘッド32の位置が正常であると判定し、ヘッドずれ量が所定の閾値より大きければ実装ヘッド32の位置が異常である(例えば、実装ヘッド32を何かにぶつけるなどして位置ずれが発生しているようなケース)と判定する。
【0045】
また、ヘッドユニット30を動かした後、部品カメラ15によって同じヘッドユニットマーカー37を撮像するという動作を繰り返し行った場合のヘッドユニットマーカー37のXY測定位置のばらつきが3σで所定の閾値以内であればヘッドユニットマーカー37の固定状態が正常であると判定し、所定の閾値より大きければヘッドユニットマーカー37の固定状態が異常である(例えば、ヘッドユニットマーカー37にがたつきが発生しているようなケース)と判定する。
【0046】
上記判定の結果、異常個所が発生した場合の解決手段として以下の2つが考えられる。
A.異常個所を正規の位置に機械的に修正する。
B.異常個所の位置はそのままで部品実装機10に再度教示することでずれを解消する。
【0047】
<判定ロジックを用いた異常診断1>
図6から図8は3つの判定ロジック(A)から(C)を用いた異常診断について説明している。図6ではA1に示す黒塗りの四角はヘッドユニットマーカー37の基準位置であり、図6ではA1に示す灰色の丸は実装ヘッド32の基準位置である。図6ではA2からA4に示す白抜きの四角はヘッドユニットマーカー37の位置であり、図6ではA2からA4に示す白抜きの丸は実装ヘッド32の位置である。以下の判定ロジック(A)から(C)は、作業者がモニタなどの表示部117を見ながら判断してもよいし、AIによって判断させてもよい。
【0048】
図6の判定ロジック(A)は、左から2本目の実装ヘッド32のみがY方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。A1は、前回教示した実装ヘッド32の位置と、ヘッドユニットマーカー37の位置と、を示しており、それぞれが実装ヘッド32の基準位置、ヘッドユニットマーカー37の基準位置として使用される。A2は、全ての実装ヘッド32の位置ずれがなかったとした場合(正常な場合)における今回測定した実装ヘッド32の測定位置と、ヘッドユニットマーカー37の測定位置と、を示している。A3は、A2で測定した実装ヘッド32の測定位置を補正した補正位置を示している。つまり、A3に示した実装ヘッド32の補正位置は、ヘッドユニットマーカー32の測定位置をその基準位置に一致させるようにして実装ヘッド32の測定位置を補正したものである。ここで、正常な場合であれば、実装ヘッド32の補正位置と実装ヘッド32の基準位置とは一致することになる。A4の実線は、左から2本目の実装ヘッド32のみがY方向に位置ずれしていた場合における実装ヘッド32の補正位置を示している。A4では、基準位置との比較がしやすいように、実装ヘッド32の基準位置を二点鎖線で示している。このような場合、左から2本目の実装ヘッド32のみがY方向に位置ずれしたものであると判定できる(機械的要因による位置変化)。したがって、異常個所は左から2本目の実装ヘッド32であると特定できる。
【0049】
図7の判定ロジック(B)は、左側のヘッドユニットマーカー37のみがY方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。B1は、前回教示した実装ヘッド32の位置と、ヘッドユニットマーカー37の位置と、を示しており、それぞれが実装ヘッド32の基準位置、ヘッドユニットマーカー37の基準位置として使用される。B2は、全てのヘッドユニットマーカー37の位置ずれがなかったとした場合(正常な場合)における今回測定した実装ヘッド32の測定位置と、ヘッドユニットマーカー37の測定位置と、を示している。B3は、B2で測定した実装ヘッド32の測定位置を補正した補正位置を示している。つまり、B3に示した実装ヘッド32の補正位置は、ヘッドユニットマーカー32の測定位置をその基準位置に一致させるようにして実装ヘッド32の測定位置を補正したものである。ここで、正常な場合であれば、実装ヘッド32の補正位置と実装ヘッド32の基準位置とは一致することになる。B4の実線は、左側のヘッドユニットマーカー37のみがY方向に位置ずれした場合における実装ヘッド32の補正位置を示している。B4では、基準位置との比較がしやすいように、実装ヘッド32及び左側のヘッドユニットマーカー37の測定位置を二点鎖線で示している。実装ヘッド32の測定位置は基準位置に一致している場合について示している。B4の実線で示すように、複数の実装ヘッド32はY方向に回転するように位置ずれしている。左側のヘッドユニットマーカー37に近づくほど実装ヘッド32のずれ量が大きくなり、左側のヘッドユニットマーカー37から遠ざかるほど実装ヘッド32のずれ量が小さくなる。このような場合、左側のヘッドユニットマーカー37のみがY方向に位置ずれしたものであると判定できる(機械的要因による位置変化)。したがって、異常個所は左側のヘッドユニットマーカー37であると特定できる。
【0050】
図8の判定ロジック(C)は、右側のヘッドユニットマーカー37のみがX方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。C1は、前回教示した実装ヘッド32の位置と、ヘッドユニットマーカー37の位置と、を示しており、それぞれが実装ヘッド32の基準位置、ヘッドユニットマーカー37の基準位置として使用される。C2は、今回測定した実装ヘッド32の測定位置と、ヘッドユニットマーカー37の測定位置と、を示している。C3は、C2で測定した実装ヘッド32の測定位置を補正した補正位置を示している。つまり、C3に示した実装ヘッド32の補正位置は、ヘッドユニットマーカー37の測定位置をその基準位置に一致させるようにして実装ヘッド32の測定位置を補正したものである。右側のヘッドユニットマーカー37に近い実装ヘッド32ほど大きくX方向に変化したら、より大きくずれた実装ヘッド32に近い右側のヘッドユニットマーカー37がX方向にずれたと判断する。(機械的要因による位置変化)。したがって、異常個所は右側のヘッドユニットマーカー37であると特定できる。なお、X方向への位置ずれとY方向への位置ずれは両方同時に起こる可能性もあるため、その場合には、図7の判定ロジック(B)と図8の判定ロジック(C)とを両方用いることになる。
【0051】
<ベースマーカーによる位置補正>
図1に示すように、ベース11の上面には、3つのベースマーカー18が配置されている。ベースマーカー18は、主軸(X軸ボールねじ軸28A、Y軸ボールねじ軸25A)の動的変形を補正するのに用いられる。すなわち、ベースマーカー18は、各ボールねじ軸28A、25Aの熱による軸伸びの補正をするのに用いられる。3つのベースマーカー18のうち図示左上のベースマーカー18は図示左上の部品供給装置13の右端部寄りに配され、図示右上のベースマーカー18は図示右上の部品供給装置13の右端部寄りに配され、図示右下のベースマーカー18は図示右下の部品供給装置13の右端部寄りに配されている。
【0052】
3つのベースマーカー18のXY位置をマークカメラ21で測定し、これらのベースマーカー18のXY位置を基準にXY座標系を補正する。すなわち、ベースマーカー18は、ベース11に固定されており、ベースマーカー18のXY位置は変わらないから、ベースマーカー18のXY位置を基準位置として各ボールねじ軸28A、25Aの軸伸びの補正を行う。エンコーダの出力に従ってベースマーカー18がマークカメラ21の画面中央に停止するようヘッドユニット30が駆動されたときにベースマーカー18が画面中央よりずれて撮像される場合、ベースマーカー18が画面中央に位置するように補正することでX軸駆動装置28、Y軸駆動装置25の駆動による実装ヘッド32の移動量(移動後の位置)を補正する。この補正動作は演算処理部111によって実行される。
【0053】
<マークカメラの位置、固定状態測定>
ヘッドユニット30の両側には一対のマークカメラ21が設けられており、一方のマークカメラ21を基準として他方のマークカメラ21の位置、固定状態を測定する方法について説明する。ヘッドユニット30を所定のベースマーカー18の周辺でランダムに移動させてから、そのベースマーカー18を認識すること(振動を与えてからベースマーカー18を撮像すること)を複数回繰り返す。この動作を2つのマークカメラ21それぞれで同じベースマーカー18に対して実施する。
【0054】
これにより、一方のマークカメラ21を基準として他方のマークカメラ21の位置を算出し、記憶部113に記憶されている基準位置(前回測定した位置)からのずれ量を算出する。この結果、ずれ量が所定の閾値以下であればマークカメラ21の位置が正常であると判定し、ずれ量が所定の閾値より大きければマークカメラ21の位置が異常である(例えば、他方のマークカメラ21を何かにぶつけるなどして位置ずれが発生しているようなケース)と判定する。
【0055】
また、算出された他方のマークカメラ21のばらつきが3σで所定の閾値以内であればマークカメラ21の固定状態が正常であると判定し、所定の閾値より大きければマークカメラ21の固定状態が異常である(例えば、他方のマークカメラ21にがたつきが発生しているようなケース)と判定する。
【0056】
上記判定の結果、異常個所が発生した場合の解決手段として以下の2つが考えられる。
A.異常個所を正規の位置に機械的に修正する。
B.異常個所の位置はそのままで部品実装機10に再度教示することでずれを解消する。
【0057】
<判定ロジックを用いた異常診断2>
図9から図11は3つの判定ロジック(D)から(F)を用いた異常診断について説明している。黒塗りの四角はベースマーカー18の基準位置であり、黒い二点鎖線で囲まれた白抜きの四角はベースマーカー18の測定位置である。ベースマーカー18はベース11に固定されており、ベースマーカー18の基準位置は、通常、変わらないはずであるから、記憶部113に予め記憶されている位置データを使用する。その他異常診断1と重複する説明については省略する。
【0058】
図9の判定ロジック(D)は、右上のベースマーカー18のXY位置のみがXY方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。D1は、ベースマーカー18の基準位置を示し、D2は、マークカメラ21によって撮像されたベースマーカー18の測定位置を示している。右上のベースマーカー18の測定位置のみが基準位置から大きく変化している様子を示している。その他のベースマーカー18の測定位置も基準位置からわずかに変化しているものの、右上のベースマーカー18に比べると変化量が圧倒的に少ないことがわかる。このような場合、右上のベースマーカー18のみがXY方向に位置ずれしたものであると判定できる(機械的要因による位置変化)。したがって、異常個所は右上のベースマーカー18であると特定できる。
【0059】
図10の判定ロジック(E)は、マークカメラ21がX方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。E1は、ベースマーカー18の基準位置を示し、E2は、マークカメラ21によって撮像されたベースマーカー18の測定位置を示している。全てのベースマーカー18の測定位置が基準位置からX方向に平行移動して変化しており、隣り合う一対のベースマーカー18間の距離は変化していない。このような場合、マークカメラ21のみがX方向に位置ずれしたものと判定できる(機械的要因による位置変化)。この判定ロジックは全てのベースマーカー18の測定位置が基準位置からY方向に平行移動して変化している場合にも適用できる。したがって、異常個所はマークカメラ21であると特定できる。
【0060】
図11の判定ロジック(F)は、各ボールねじ軸28A、25Aが正常に熱によって軸伸びした場合の判定ロジックを示している。F1は、ベースマーカー18の基準位置を示し、F2は、マークカメラ21によって撮像されたベースマーカー18の測定位置を示している。3つのベースマーカー18の基準位置を結んで形成される三角形の領域を基準領域19とした場合、マークカメラ21によって撮像された3つのベースマーカー18は、いずれも基準領域19の外側に位置している。各ベースマーカー18の測定位置の基準位置からのずれ量は、ほぼ等しいものとなっている。このような場合、各ベースマーカー18の位置ずれは、各ボールねじ軸28A、25Aの軸伸びによるものであり、正常であると判定できる(正常な熱伸縮による位置変化)。
【0061】
<異常診断の操作方法>
上記の異常診断は、例えば図5に示すGUI(Graphical User Interface)によって簡易に行うことができる。モニタなどの表示部117には、簡易異常診断と書かれたウィンドウ60が表示されており、ウィンドウ60には、異常診断と書かれた左側のタブ61と、測定結果と書かれた右側のタブ62と、が表示されている。図5では、左側のタブ61が選択されており、異常診断画面が表示されている。
【0062】
異常診断画面の左側には、診断開始と書かれた入力部118と、フィードバックと書かれた入力部118と、が表示されている。診断開始と書かれた入力部118を一回押すという入力操作を行うと、選択されているTableCについての異常診断が自動的に実行される。具体的には、一回の入力操作で入力部118から制御部110に補正指令が入力されると、制御部110は、部品カメラ15による測定動作、演算処理部111による補正算出動作、および記憶部113による記憶動作を順次自動的に実行させる。異常診断が終了すると、診断結果が自動的に表示され、フィードバックと書かれた入力部118を押すと、診断結果に基づいて実装ヘッド32の位置や高さの修正が自動的に行われるようになっている。
【0063】
以上のように本開示の部品実装機10は、ヘッドユニット30を備えた部品実装機10であって、対象物(実装ヘッド32)の位置を測定するとともに、対象物の位置を特定する基準となるマーカー(ヘッドユニットマーカー37)の位置を測定する測定部(部品カメラ15)と、マーカーの位置に基づいて対象物の位置を補正することで対象物の補正後の位置を算出する補正部(演算処理部111)と、を備え、マーカーの位置に対する対象物の位置の相対的な位置関係は予め決まっており、マーカーの位置と相対的な位置関係とから算出される対象物の位置を対象物の基準位置とした場合、対象物の補正後の位置が対象物の基準位置からずれている場合に、判定ロジック(A)、(B)、(C)を用いて異常個所を特定する、部品実装機10である。
【0064】
測定部(部品カメラ15)によってマーカー(ヘッドユニットマーカー37)の位置を測定することで熱的変化や動的変形による対象物(実装ヘッド32)の位置変化量を測定できるため、マーカーの位置に基づいて対象物の測定後の位置を補正することで対象物の補正後の位置を算出できる。対象物の補正後の位置を確認することで対象物の位置ずれなどの状態を知ることができる。対象物の補正後の位置が対象物の基準位置からずれている場合、判定ロジック(A)、(B)、(C)を用いて異常個所を特定できるから、不良発生前に異常を検知できる。
【0065】
また、対象物は、ヘッドユニット30に備えられた実装ヘッド32であり、実装ヘッド32が部品Eを吸着し、実装ヘッド32の移動により部品Eを基板Bに実装し、測定部は、部品Eの実装位置ずれを防止するために用いられるカメラ(部品カメラ15)であることが好ましい。
部品Eの実装位置ずれの原因となり得る実装ヘッド32の補正後の位置を測定することで、大きな実装位置ずれの不良発生前に異常を検知できる。また、判定ロジック(A)、(B)、(C)を用いて異常個所を特定することで交換または修正をするべき実装ヘッド32を特定することができる。
【0066】
また、マーカーは、実装ヘッド32の位置を特定する基準となるヘッドユニットマーカー37であり、カメラは、実装ヘッド32の位置を測定するとともに、ヘッドユニットマーカー37の位置を測定する部品カメラ15であることが好ましい。判定ロジック(A)、(B)、(C)としては熱的変化による位置変化と機械的要因による位置変化とを切り分けることができるものを用いることが好ましい。
部品Eの実装位置ずれの原因となり得る部品カメラ15の位置、実装ヘッド32の位置、およびヘッドユニットマーカー37の位置を測定することで、大きな実装位置ずれの不良発生前に異常を検知できる。また、判定ロジックを用いて異常個所を特定することで、ヘッドユニット30において交換または修正をするべき部位を特定することができる。
【0067】
ベース11とベース11上に設けられたヘッドユニット30とを備えた部品実装機10であって、ベース11の上面にはベースマーカー18が配置され、ヘッドユニット30にはベースマーカー18の位置を測定するマークカメラ21が設けられており、ベースマーカー18はベース11に固定されており、ベースマーカー18の位置は変わらないから、ベースマーカー18の位置をベースマーカー18の基準位置とした場合に、マークカメラ21によって測定されたベースマーカー18の測定後の位置がベースマーカー18の基準位置からずれている場合に、判定ロジック(D)、(E)、(F)を用いて異常個所を特定することが好ましい。判定ロジック(D)、(E)、(F)としては熱的変化による位置変化と機械的要因による位置変化とを切り分けることができるものを用いることが好ましい。
部品Eの実装位置ずれの原因となり得るマークカメラ21の位置およびベースマーカー18の位置を測定することで、大きな実装位置ずれの不良発生前に異常を検知できる。また、異常個所を特定することで、マークカメラ21およびベースマーカー18において交換または修正をするべき部位を特定することができる。
【0068】
また、補正部(演算処理部111)によって算出された対象物の補正後の位置を記憶させる記憶部113を備え、測定部による次回以降の測定時に、記憶部113によって記憶された対象物の補正後の位置を基準位置として使用することが好ましい。
機械的な修理をすることなく、生産が継続できるため、修理に要する時間を短縮できる。
【0069】
また、一回の入力操作で測定部による測定動作、補正部による補正算出動作、および記憶部113による記憶動作を順次自動的に実行させる制御部110と、補正部(演算処理部111)によって補正算出された対象物の補正後の位置を表示させる表示部117と、を備えることが好ましい。
例えば入力部118への一回の入力操作で全ての動作を実行し、異常個所を特定できるため、自己診断が容易になる。
【0070】
[本開示の実施形態2の詳細]
次に、図12から図14を参照しながら実施形態2について説明する。実施形態2の部品実装機は、実施形態1のインラインヘッド型のヘッドユニット30の代わりに、図12に示すロータリーヘッド型のロータリーユニット130を備えている。
【0071】
<ロータリーユニット>
ロータリーユニット130は、ロータリーユニット本体131と、複数本(本実施形態では18本)の実装ヘッド132と、を備えて構成されている。実装ヘッド132は円形に配置され、シャフト133と、シャフト133の下端部に着脱可能に取り付けられた吸着ノズル134と、を備えている。吸着ノズル134には、シャフト133を介して、エア供給装置51(図4参照)から負圧が供給されるようになっている。吸着ノズル134は負圧により部品Eを吸着保持することができ、負圧を開放することで、部品Eの保持を解くことができる。各シャフト133は、Z軸サーボモータ35によりシャフト133毎に昇降可能に構成されている。また、各シャフト133は、R軸サーボモータ36によりシャフト133毎にその中心軸回りに回転可能に構成されている。
【0072】
<ロータリーユニットマーカーによる位置補正>
ロータリーユニット130は、ロータリーシャフト138を回転軸として回転可能となっている。ロータリーシャフト138の下端部にはロータリーユニットマーカー137が配置されている。ロータリーユニットマーカー137は、その中心がロータリーシャフト138の中心軸と同軸となるように配置されている。
【0073】
実装ヘッド132の回転中心は、シャフト133を0度、90度、180度、-90度の4角度に回してそれぞれ部品カメラ15で認識し、これによって測定された4つのXY位置の平均をとることで算出する。また、部品カメラ15でロータリーユニットマーカー137を認識し、これによってロータリーユニットマーカー137のXY位置を測定する。
【0074】
エンコーダから出力されたロータリーユニットマーカー137のXY位置と部品カメラ15によって測定されたロータリーユニットマーカー137の測定位置であるXY測定位置との間のずれ量(以下「マーカーずれ量」という)が認められる場合がある。すなわち、エンコーダの出力に従ってロータリーユニットマーカー137が部品カメラ15の画面中央に停止するようにロータリーユニット130が駆動されたときにロータリーユニットマーカー137が画面中央よりずれて撮像される場合がある。このような場合、X軸ボールねじ軸28AもしくはY軸ボールねじ軸25Aの少なくとも一方が熱的変化することで軸伸びが発生していると判定できる(熱的変化による位置変化)。
【0075】
本実施形態ではロータリーユニットマーカー137のXY位置は前回測定時のXY位置と変わらないとして、その変わらないXY位置をロータリーユニットマーカー137の基準位置としている。一方、ロータリーユニットマーカー137に対する各実装ヘッド132の相対的な位置関係は予め決まっているため、ロータリーユニットマーカー137の基準位置と相対的な位置関係とから算出される各実装ヘッド132のXY位置を各実装ヘッド132の基準位置として使用できる。ロータリーユニットマーカー137の測定位置であるXY測定位置が基準位置よりずれている場合、マーカーずれ量に基づいて(すなわちロータリーユニットマーカー137のXY測定位置が基準位置と一致するように)実装ヘッド132のXY位置を補正する処理を行う(補正処理)。軸伸びが発生している場合、エンコーダの出力に従って実装ヘッド132が部品カメラ15の画面中央に停止するようロータリーユニット130が駆動されたときに実装ヘッド132が画面中央よりずれて撮像されることになる。その場合、上記マーカーずれ量に基づいて実装ヘッド132のXY位置を補正することで実装ヘッド132の補正後のXY位置を算出できる。以下においては補正後のXY位置を補正位置という。これらの補正算出動作は演算処理部111によって実行される。
【0076】
<実装ヘッド、ロータリーユニットマーカーの位置、固定状態測定>
実装ヘッド132、ロータリーユニットマーカー137の位置、固定状態の測定について説明する。前回測定時のロータリーユニットマーカー137のXY位置は記憶部113に記憶されるようになっている。したがって、部品カメラ15による次回以降の測定時に、記憶部113によって記憶されたロータリーユニットマーカー137のXY位置が基準位置として使用される。演算処理部111によって実装ヘッド132の補正位置を算出し、実装ヘッド132の補正位置と実装ヘッド132の基準位置とのずれ量(以下「ヘッドずれ量」という)を算出する。この結果、ヘッドずれ量が所定の閾値以下であれば実装ヘッド132の位置が正常であると判定し、ヘッドずれ量が所定の閾値より大きければ実装ヘッド132の位置が異常である(例えば、実装ヘッド132を何かにぶつけるなどして位置ずれが発生しているようなケース)と判定する。
【0077】
また、ロータリーユニット130を動かした後、部品カメラ15によって同じロータリーユニットマーカー137を撮像するという動作を繰り返し行った場合のロータリーユニットマーカー137のXY測定位置のばらつきが3σで所定の閾値以内であればロータリーユニットマーカー137の固定状態が正常であると判定し、所定の閾値より大きければロータリーユニットマーカー137の固定状態が異常である(例えば、ロータリーユニットマーカー137にがたつきが発生しているようなケース)と判定する。
【0078】
上記判定の結果、異常個所が発生した場合の解決手段として以下の2つが考えられる。
A.異常個所を正規の位置に機械的に修正する。
B.異常個所の位置はそのままで部品実装機10に再度教示することでずれを解消する。
【0079】
<判定ロジックを用いた異常診断3>
図13図14は2つの判定ロジック(G)と(H)を用いた異常診断について説明している。図13ではG1に示す黒塗りの四角はロータリーユニットマーカー137の基準位置であり、図13ではG1に示す灰色の丸は実装ヘッド132の基準位置である。図13ではG2に示す白抜きの四角はヘッドユニットマーカー137の位置であり、図13ではG2に示す白抜きの丸は実装ヘッド132の位置である。その他異常診断1と重複する説明については省略する。
【0080】
図13の判定ロジック(G)は、ロータリーユニットマーカー137がX方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。G1は、前回教示した実装ヘッド132の位置と、ロータリーユニットマーカー137の位置と、を示しており、それぞれが実装ヘッド132の基準位置、ロータリーユニットマーカー137の基準位置として使用される。G2は、実装ヘッド132の測定位置(二点鎖線で示した符号132の位置)を補正した補正位置(実線で示した符号132の位置)を示している。つまり、G2に示した実装ヘッド132の補正位置は、ロータリーユニットマーカー132の測定位置(二点鎖線で示した符号137の位置)をその基準位置(実線で示した符号137の位置)に一致させるようにして実装ヘッド132の測定位置を補正したものである。全ての実装ヘッド132の補正位置が基準位置からX方向に平行移動して変化しており、隣り合う一対の実装ヘッド132間の距離は変化していない。ヘッドユニットマーカー137の移動方向と実装ヘッド132の移動方向とは同じである。このような場合、ヘッドユニットマーカー137のみが位置ずれしたものと判定できる(機械的要因による位置変化)。したがって、異常個所はヘッドユニットマーカー137であると特定できる。
【0081】
図14の判定ロジック(H)は、図示上端の実装ヘッド132を1本目とした場合に、反時計回り方向に3本目の実装ヘッド132のみがXY方向に位置ずれした場合の判定ロジックを示している。その他の実装ヘッド132の補正位置も基準位置からわずかに変化しているものの、3本目の実装ヘッド132に比べると変化量が圧倒的に少ないことがわかる。このような場合、3本目の実装ヘッド132だけがXY方向に位置ずれしたものであると判定できる(機械的要因による位置変化)。したがって、異常個所は3本目の実装ヘッド132であると特定できる。
【0082】
<他の実施形態>
(1)実施形態1と2では判定ロジックを用いて作業者もしくはAIによって異常個所を特定しているが、制御部110によって位置ずれ量が閾値を超えた場合に異常であると判定するとともに異常個所を特定してもよい。
【0083】
(2)実施形態1と2では部品カメラ15とマークカメラ21を用いて測定しているが、これら以外に利用できるカメラがあれば、そのカメラを用いて測定してもよい。
【0084】
(3)実施形態1と2ではヘッドユニットマーカー37とロータリーユニットマーカー137を用いて対象物の位置補正を行っているが、これら以外に利用できるリファレンスマーカーがあれば、そのリファレンスマーカーを用いて位置補正を行ってもよい。
【0085】
(4)実施形態1と2では記憶部113に記憶された前回測定した位置を基準位置としているが、基準位置を予め設定してもよい。
【0086】
(5)実施形態1と2では入力部118に入力することで異常診断を実行しているが、実装プログラムの中に異常診断プログラムを組み込むなどして自動で実行して生産を継続してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…部品実装機
11…ベース、12…搬送装置、13…部品供給装置、14…コンベアベルト、15…部品カメラ、16…フィーダ、17…コンベアモータ、18…ベースマーカー、19…基準領域
20…部品搭載ユニット、21…マークカメラ、23…Y軸フレーム、24…Y軸ガイドレール、25…Y軸移動装置、25A…Y軸ボールねじ軸、25B…Y軸サーボモータ、26…X軸フレーム、27…X軸ガイドレール、28…X軸移動装置、28A…X軸ボールねじ軸、28B…X軸サーボモータ
30…ヘッドユニット、31…ヘッドユニット本体、32…実装ヘッド(対象物)、33…シャフト、34…吸着ノズル、35…Z軸サーボモータ、36…R軸サーボモータ、37…ヘッドユニットマーカー
50…圧力センサ、51…エア供給装置
60…ウィンドウ、61…タブ、62…タブ
110…制御部、111…演算処理部、112…モータ制御部、113…記憶部、114…画像処理部、115…外部入出力部、116…フィーダ通信部、117…表示部、118…入力部
130…ロータリーユニット、131…ヘッドユニット、132…実装ヘッド(対象物)、133…シャフト、134…吸着ノズル、137…ヘッドユニットマーカー、138…メインシャフト
B…基板、CP…搬送路、E…部品、(A)から(H)…判定ロジック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14