(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】機械式時計の時刻合わせ装置、機械式時計及び機械式時計の時刻合わせシステム
(51)【国際特許分類】
G04D 7/00 20060101AFI20240124BHJP
G04B 27/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G04D7/00 Z
G04B27/00 A
(21)【出願番号】P 2020168352
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019208680
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】干川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】関根 彬允
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイン 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晴子
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-22774(JP,A)
【文献】特開2016-90507(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3537234(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 7/00 - 7/12
G04B 27/00 - 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を有する機械式時計と、
前記機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、前記光学特性変化部による光学的な特性の変化を検出することにより、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、前記所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、現在時刻を計時する時刻計時部と、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を有する機械式時計の時刻合わせ装置と、を備
え、
前記制御部は、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を、前記所定の時刻に対応した指針の基準位置まで早送り又は早戻しで駆動するように、前記指針駆動部を制御し、
前記指針位置検出部が、前記基準位置を検出したとき、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を早送り又は早戻しで駆動するように、前記指針駆動部を制御することにより、前記機械式時計の時刻合わせを行う、機械式時計の時刻合わせシステム。
【請求項2】
前記機械式時計は、前記操作部材として、外部の磁場により回転する磁気回転体を有し、
前記時刻合わせ装置は、前記指針駆動部として、前記磁場を発生させることにより前記磁気回転体を回転させる回転駆動部を有する請求
項1に記載の機械式時計の時刻合わせシステム。
【請求項3】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を有する機械式時計と、
前記機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、前記光学特性変化部による光学的な特性の変化を検出することにより、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、前記所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、現在時刻を計時する時刻計時部と、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を有する機械式時計の時刻合わせ装置と、を備
え、
前記機械式時計は、前記操作部材として、外部の磁場により回転する磁気回転体を有し、
前記時刻合わせ装置は、前記指針駆動部として、前記磁場を発生させることにより前記磁気回転体を回転させる回転駆動部を有する、機械式時計の時刻合わせシステム。
【請求項4】
前記磁気回転体は、回転により、前記機械式時計の動力源であるゼンマイを巻き上げる機能も有する請求
項2又は3に記載の機械式時計の時刻合わせシステム。
【請求項5】
前記機械式時計は、動力源であるゼンマイを巻き上げる回転錘を有し、
前記時計配置部は、前記機械式時計を配置したとき、前記回転錘を回転範囲の特定の位置に配置した状態で停止させるように傾斜し、
前記光
学特性変化部は、前記回転錘が前記特定の位置に配置された状態においては、前記回転錘に遮蔽されない位置に設けられている請求
項1に記載の機械式時計の時刻合わせシステム。
【請求項6】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を有する機械式時計と、
前記機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、前記光学特性変化部による光学的な特性の変化を検出することにより、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、前記所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、現在時刻を計時する時刻計時部と、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を有する機械式時計の時刻合わせ装置と、を備
え、
前記機械式時計は、動力源であるゼンマイを巻き上げる回転錘を有し、
前記時計配置部は、前記機械式時計を配置したとき、前記回転錘を回転範囲の特定の位置に配置した状態で停止させるように傾斜し、
前記光学特性変化部は、前記回転錘が前記特定の位置に配置された状態においては、前記回転錘に遮蔽されない位置に設けられている、機械式時計の時刻合わせシステム。
【請求項7】
機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、
前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、
現在時刻を計時する時刻計時部と、
前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、
前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を備
え、
前記時計配置部は、外形の異なる複数種類の機械式時計にそれぞれ対応して、前記複数種類の機械式時計をそれぞれ前記所定位置に位置決めする、前記時計配置部に着脱可能に設けられた複数種類のアダプタを有する、機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項8】
前記時計配置部は、水平面に対して傾けた姿勢で前記機械式時計を保持するように形成され、
前記指針位置検出部は、前記時計配置部に傾いて配置された前記機械式時計の上側半分に対応する位置で、前記指針の位置を検出するように設けられた請求
項7に記載の機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項9】
前記機械式時計の指針に連結された磁気回転体を、磁場の発生により回転させる回転駆動部を有する請求
項7又は8に記載の機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項10】
機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、
前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、
現在時刻を計時する時刻計時部と、
前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、
前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を備
え、
前記時計配置部は、水平面に対して傾けた姿勢で前記機械式時計を保持するように形成され、
前記指針位置検出部は、前記時計配置部に傾いて配置された前記機械式時計の上側半分に対応する位置で、前記指針の位置を検出するように設けられた、機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項11】
前記機械式時計の指針に連結された磁気回転体を、磁場の発生により回転させる回転駆動部を有する請求
項10に記載の機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項12】
機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、
前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、
現在時刻を計時する時刻計時部と、
前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、
前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を備
え、
前記機械式時計の指針に連結された磁気回転体を、磁場の発生により回転させる回転駆動部を有する、機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項13】
前記指針位置検出部は、前記機械式時計の、前記所定の時刻における前記指針の基準位置に対応した光学的な特性の変化を検出する光学センサである請求
項7から12のうちいずれか1項に記載の機械式時計の時刻合わせ装置。
【請求項14】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、
前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、
所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を備
え、
前記光学特性変化部は、前記所定の時刻において、外部から検出できる光量を変化させるように変位する部材である、機械式時計。
【請求項15】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、
前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、
所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を備
え、
裏蓋が透光性を有する部材で形成され、
前記光学特性変化部は、前記裏蓋を通して、前記外部に臨んでいる、機械式時計。
【請求項16】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、
前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、
所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を備
え、
機械式時計の動力源であるゼンマイを巻き上げる回転錘を有し、
前記光学特性変化部は、前記回転錘の回転範囲よりも半径方向の外側において、前記外部に臨んでいる、機械式時計。
【請求項17】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、
前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、
所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を備
え、
前記操作部材として、外部の磁場により回転する磁気回転体を有する、機械式時計。
【請求項18】
前記磁気回転体は、回転により、前記機械式時計の動力源であるゼンマイを巻き上げる機能も有する請求
項17に記載の機械式時計。
【請求項19】
時刻に対応した位置を指し示す指針と、
前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、
所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を備
え、
前記光学特性変化部は、所定の時刻を含む所定の時間内だけ変位するように設定された、機械式時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式時計の時刻合わせ装置、機械式時計及び機械式時計の時刻合わせシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式時計は、内部にモータ等の電子部品を一切備えないため、電波修正時計のように、時計単独で誤差を修正する機能を有しておらず、時刻合わせは、専ら、使用者が手動で行うほかない。
【0003】
しかし、機械式時計の誤差を手動で修正するには、正確な現在時刻を参照しながら指針の修正操作を行わなければならず、面倒である。
【0004】
そこで、機械式時計を配置すると、機械式時計の指針を自動的に修正する外部修正装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の外部修正装置は、セットされた機械式時計の指針を写真に撮影して、その写真の画像を解析することで、機械式時計が表示している時刻(表示時)を検出し、この表示時を、現在時取得部が取得した実際の時刻である現在時に修正するように、指針を駆動するものである。
【0007】
しかし、この外部修正装置は、文字板及び指針を撮影した画像を解析するものであるため、文字板や指針を比較的単純な形状にして、画像認識の精度を高くする必要がある。したがって、文字板や指針に凝った装飾を施すのが難しく、機械式時計のデザイン性を高めることが難しい。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、文字板や指針の形状等に依存することなく、機械式時計の時刻合わせを行うことができる機械式時計の時刻合わせシステム、時刻合わせ装置及び機械式時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、時刻に対応した位置を指し示す指針と、前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を有する機械式時計と、前記機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、前記光学特性変化部による光学的な特性の変化を検出することにより、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、前記所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、現在時刻を計時する時刻計時部と、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を有する機械式時計の時刻合わせ装置と、を備えた機械式時計の時刻合わせシステムである。
【0010】
本発明の第2は、本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステムに用いるのに適した、機械式時計を所定位置に位置決めして配置する時計配置部と、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の、所定の時刻に対応した指針の基準位置を検出する指針位置検出部と、現在時刻を計時する時刻計時部と、前記時計配置部に配置された前記機械式時計の指針を駆動する指針駆動部と、前記指針位置検出部により検出された前記所定の時刻に対応した指針の基準位置に基づいて、前記時刻計時部により計時された現在時刻に対応した位置まで、前記機械式時計の指針を駆動するように、前記指針駆動部を制御する制御部と、を備えた機械式時計の時刻合わせ装置である。
【0011】
本発明の第3は、本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステムに用いるのに適した、時刻に対応した位置を指し示す指針と、前記指針に連結されて、外部から前記指針の位置を操作可能とするように前記指針に連結された操作部材と、所定の時刻における前記指針の基準位置に対応して光学的な特性を変化させる、前記光学的な特性の変化を外部から検出できるように設けられた光学特性変化部と、を備えた機械式時計である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステム、時刻合わせ装置及び機械式時計によれば、文字板や指針の形状等に依存することなく、機械式時計の時刻合わせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である機械式時計の時刻合わせシステムを示す模式図であり、時刻合わせシステムを構成する機械式時計を時刻合わせ装置から外した状態を表す。
【
図2】本発明の一実施形態である機械式時計の時刻合わせシステムを示す模式図であり、機械式時計を時刻合わせ装置の所定の位置に位置決めして配置した状態を表す。
【
図3】
図2に示した時刻合わせシステムの、時刻合わせ装置の指針位置検出部を通る鉛直面による断面図である。
【
図4】
図1~3に示した機械式時計のムーブメント及び光学特性変化部の一例としてのジャンパを示す斜視図であり、ジャンパ駆動車に設けられたボスがジャンパから離れた状態を示す。
【
図5】
図1~3に示した機械式時計のムーブメント及び光学特性変化部の一例としてのジャンパを示す斜視図であり、ボスがジャンパに接してジャンパを変位させている状態を示す。
【
図6】ボスがジャンパに接した状態(二点鎖線)から離れた状態(実線)に切り替わる様子を示す平面図である。
【
図7】撓み部が撓み規制部により撓みの変動を規制されたジャンパを示す斜視図である。
【
図8】検出孔が、回転錘の回転範囲に形成された機械式時計を示す模式図である。
【
図9】回転錘の、検出孔と指針位置検出部とを結ぶ一直線との交差する部分に、小窓や切り欠き等の開口が形成された機械式時計を示す、
図8相当の模式図である。
【
図10】検出孔が、回転錘の回転範囲よりも半径方向の外側に形成された機械式時計を示す、
図8相当の模式図である。
【
図11】筒状の遮光管が、検出孔をガラス板まで延長した範囲に対応するムーブメントとガラス板との間に設けられた機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図12】遮光管や光ファイバが設けられた、手動でゼンマイを巻き上げる機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図13】検出孔がムーブメントを貫通していない構造の機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図14】文字板の裏面に反射板を備え、ジャンパの裏面が光を吸収する構成の機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図15】検出孔に対応する文字板に、外光を検出孔に導くための孔を形成して、外部から文字板の孔を通じて検出孔に導光された外光を、ジャンパで遮光する構成の機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図16】発光部と受光部とが隣接せずに離れ、検出孔が、発光部から出射した光の通る光路と、ジャンパで反射した反射光が受光部に向う光路とに分けられた構成の機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図17】ジャンパに代えて、日板(日車)を光学特性変化部として適用した機械式時計を示す、
図3相当の断面図である。
【
図18】ジャンパに代えて、光学特性変化部として適用された、1日に1回、所定の時間帯にのみ回転する日板(日車)を示す図である。
【
図19】ジャンパに代えて、光学特性変化部として適用された歯車を示す図である。
【
図20】外形の異なる2種類の機械式時計にそれぞれ対応してこれらの機械式時計を位置決めして配置するための、時計配置部220に着脱可能に設けられた2種類のアダプタを示す模式図である。
【
図21】変形例であるジャンパ及びジャンパ駆動車を示す平面図(舌片が撓んでいない状態)ある。
【
図22】変形例であるジャンパ及びジャンパ駆動車を示す平面図(舌片が撓んでいる状態)ある。
【
図23】
図21,22に示したジャンパ及びジャンパ駆動車の要部断面図である。
【
図24】
図1~3に示した機械式時計におけるりゅうずに代えて磁気回転体を備えた機械式時計の時刻合わせシステムを示す図である。
【
図26】磁気回転体の別例(その1)を示す平面図である。
【
図27】磁気回転体の別例(その2)を示す平面図である。
【
図29】検出孔と磁気回転体とが、平面視において重ならない配置の一例であり、機械式時計の平面視での中心に、磁気回転体の中心を一致させた配置例である。
【
図30】検出孔と磁気回転体とが、平面視において重ならない配置の一例であり、磁気回転体の中心が、機械式時計の平面視での中心に対して、検出孔とは反対方向に偏心した配置例である。
【
図31】検出孔と磁気回転体とが、磁気回転体の特定の回転角度位置では平面視において重なるが、他の回転角度位置では重ならない配置の一例(その1)を示す模式図である。
【
図32】検出孔と磁気回転体とが、磁気回転体の特定の回転角度位置では平面視において重なるが、他の回転角度位置では重ならない配置の一例(その2)を示す模式図であって、重なった状態を示す。
【
図33】検出孔と磁気回転体とが、磁気回転体の特定の回転角度位置では平面視において重なるが、他の回転角度位置では重ならない配置の一例(その2)を示す模式図であって、重なっていない状態を示す。
【
図34】時刻合わせ装置における電磁石で構成された回転駆動部に代えて、永久磁石で構成された回転駆動部を適用した場合の、好ましい形態の一例(その1)を示す図であって、永久磁石を厚さ方向に遠ざけたものである。
【
図35】時刻合わせ装置における電磁石で構成された回転駆動部に代えて、永久磁石で構成された回転駆動部を適用した場合の、好ましい形態の一例(その2)を示す図であって、永久磁石を平面方向に遠ざけたものである。
【
図36】時刻合わせ装置における電磁石で構成された回転駆動部に代えて、永久磁石で構成された回転駆動部を適用した場合の、好ましい形態の例(その3)を示す図であって、機械式時計と回転駆動部との間に耐磁板を挿入可能にしたものである。
【
図37】機械式時計の裏蓋側に指針位置検出部が配置され、機械式時計の風防ガラス側に回転駆動部が配置された時刻合わせ装置の例を示す図である。
【
図38】基板に機械式時計に関する情報を記録したバーコードを付加した磁気回転体の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステム、機械式時計及び機械式時計の時刻合わせ装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1,2は本発明の一実施形態である機械式時計100の時刻合わせシステム300を示す模式図であり、
図1は時刻合わせシステム300を構成する機械式時計100を時刻合わせ装置200から外した状態を表し、
図2は機械式時計100を時刻合わせ装置200の所定の位置に位置決めして配置した状態を表す。
図3は
図2に示した時刻合わせシステム300の、時刻合わせ装置200の指針位置検出部230を通る鉛直面による断面図である。
【0016】
また、
図4,5は
図1~3に示した機械式時計100のムーブメント150及び光学特性変化部の一例としてのジャンパ160を示す斜視図であり、
図4はジャンパ駆動車158に設けられたボス158aがジャンパ160から離れた状態を示し、
図5はボス158aがジャンパ160に接してジャンパ160を変位させている状態を示す。
図6はボス158aがジャンパ160に接した状態(二点鎖線)から離れた状態(実線)に切り替わる様子を示す平面図である。
【0017】
<機械式時計の構成>
本実施形態の機械式時計100は、本発明に係る機械式時計の一例であるとともに、本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステムの一例である時刻合わせシステム300を構成する機械式時計の一例でもある。
【0018】
機械式時計100は、電池等も含めて電子部品を一切備えない、機械的な構造要素のみで構成された純粋な機械式時計である。機械式時計100は例えば腕時計である。機械式時計100は、
図3に示すように、ステンレスやチタン等の金属材料で形成された円筒状のケース110(ベゼルを含む)のおもて面側が風防ガラス120によって塞がれ、裏面側が裏蓋130によって塞がれている。
【0019】
風防ガラス120は透明な円板状に形成され、機械式時計100の外部から、風防ガラス120を通して機械式時計100の内部に設けられた文字板140及び時刻を指し示す指針151,152を視認することができる。
【0020】
なお、文字板140の、後述するりゅうず157に近い半分の側には、孔141が開いていて、風防ガラス120側の外部から、孔141を通して、文字板140の背面側に配置されたムーブメント150のてんぷ153を、視認することができる。
【0021】
裏蓋130は、金属で形成された円環状の枠131と、枠131の内側に設けられた円板状の透光性を有するガラス板132とで形成されている。したがって、裏蓋130側の外部から、ガラス板132を通して機械式時計100の内部で文字板140よりも裏面側に設けられたムーブメント150やムーブメント150よりも裏蓋130に近い側に設けられた回転錘154などを視認することができる。
【0022】
なお、ムーブメント150も、おもて面側(風防ガラス120側)から裏面側(裏蓋130側)に貫通した貫通孔155を有していてんぷ153はこの貫通孔155に配置されている。したがって、裏蓋130の外部からガラス板132を通して、ムーブメント150のてんぷ153を、視認することができる。
【0023】
指針151,152は、回転しながら、文字板140のおもて面側の所定位置にそれぞれ形成された、時刻に対応した数字やインデックスを指し示すことで、時刻を表示する。指針151,152は、例えば、時刻の時を表す時針と時刻の分を表す分針である。文字板140の裏面140bは、光の反射を抑えるように、例えば黒く塗られている。
【0024】
ムーブメント150には、図示を略した連動機構を介して指針151,152に連結されたりゅうず157が設けられている。りゅうず157は、外部から指針151,152を動かせるように構成された操作部材の一例である。りゅうず157はケース110の外側に配置されていて、回転させることにより指針151,152を回転させることができる。
【0025】
ムーブメント150の、てんぷ153が配置された半分の側とは反対の半分の側(りゅうず157から遠い半分の側)には、おもて面側から裏面側に貫通する検出孔156が形成されている。
【0026】
検出孔156のおもて面側は文字板140の裏面140bに臨んでいて、裏面側は裏蓋130に臨んでいる。ムーブメント150のおもて面側には、
図3,4に示すように、ジャンパ160が配置されている。
【0027】
ジャンパ160は、ムーブメント150のおもて面側に固定された輪列押さえ162から円弧状に延びた撓み部163の先端に形成されている。ジャンパ160は、輪列押さえ162及び撓み部163と一体に形成されている。輪列押さえ162、撓み部163及びジャンパ160は、同じ金属で形成されている。撓み部163は、
図5に示すように、輪列押さえ162に繋がった一端を固定端とし、ジャンパ160が形成された他端を自由端として、ムーブメント150の半径方向に撓むことができる。
【0028】
ムーブメント150の、ジャンパ160の傍(裏側)には、ジャンパ駆動車158が配置されている。ジャンパ駆動車158は、指針151(例えば時針)が固定された筒車(12時間で1回転する)に対して、筒車の回転速度の1/2となる回転速度で連動して回転する。
筒車は12時間周期で1回転するため、ジャンパ駆動車158は、時計回り方向に24時間周期で1回転する。
【0029】
ジャンパ駆動車158には、ジャンパ駆動車158の回転軸に平行な方向に突出したボス158aが形成されている。ボス158aは、ジャンパ駆動車158の回転に伴って、ジャンパ駆動車158の所定の回転角度範囲で、ジャンパ160の側面161に接する。
【0030】
ジャンパ駆動車158の回転がさらに進むと、ボス158aは、ジャンパ160の側面161を半径方向の外側に押すことで、ジャンパ360を半径方向の外側に移動させる。これにより、
図5の実線で示すように、撓み部163の曲率半径が大きくなるように、撓み部363が撓む。
【0031】
ボス158aがジャンパ160の側面161の最内周の縁を通過する位置までジャンパ駆動車158が回転すると、ボス158aがジャンパ160から離れ、ジャンパ160を半径方向の外側に押圧していた荷重が無くなる。
【0032】
これにより、撓み部163の撓みによって
図6の二点鎖線で示した最も外側の位置まで変位していたジャンパ160は、撓み部163に蓄えられていた弾性エネルギが一気に解放され、ジャンパ160は瞬時に(例えば、1[秒間]以内に)実線に示す元の位置(半径方向の内方の位置)まで戻された状態となる。
【0033】
ここで、ジャンパ160は、ボス158aが接していない元の位置(
図4に示した位置)にあるときから
図6に示した最も外側の位置まで変位するジャンパ160の軌跡が、検出孔156を徐々に覆うように配置されている。
【0034】
そして、ジャンパ160が、
図4に示す元の位置にあるときは、撓み部163は撓みが無く、検出孔156の一部のみを覆った状態となり、
図5の実線に示す最も外側の位置にあるときは、撓み部163が最も撓んで、検出孔156の略全体を覆った状態となる。
【0035】
ジャンパ160の裏面160bには反射板が設けられている。このため、例えば
図3に示すように裏蓋130の側からおもて面側に向けて検出孔156に光L1を入射すると、撓み部163が撓んでおらずジャンパ160が元の位置にあるときは、入射した光のほとんど全ては、文字板140の黒色に塗られた裏面140bに達する。そして、その裏面140bに入射した光は裏面140bで吸収されて反射が抑えられ、裏蓋130側には、反射光L2がほとんど戻らない。
【0036】
一方、ジャンパ160が最も外側の位置にあるときは、入射した光のほとんど全ては、ジャンパ160の裏面160bに設けられた反射板によって反射されて、裏蓋130側に多くの光量の反射光L2が戻る。
【0037】
ジャンパ駆動車158は上述したように、筒車の動きに連動して24時間で1回転するため、ボス158aの位置は指針151の特定の時刻範囲の位置に対応している。そして、例えば指針151が時刻21時頃に対応した位置で、ボス158aがジャンパ160に接し始め、指針151が時刻0時00分00秒に対応した基準位置において、ボス158aがジャンパ160から離れるように設定されている。
【0038】
つまり、ジャンパ160は21時頃から半径方向の外側に動き始めて、0時00分00秒に、最も外側の位置から元の位置に戻り、その後は、次に21時頃になるまで元の位置に維持されて動かない。
【0039】
したがって、ジャンパ160は、時刻0時00分00秒の指針151に対応して、最も外側の位置から元の位置に移動し、このとき、検出孔156に入射した光L1がジャンパ160の裏面の反射板で反射した反射光L2は、最大の光量から一気に低下する。
【0040】
この結果、ジャンパ160は、検出孔156に入射した光L1に対して、指針151の基準位置に対応して光学的な特性が変化するものとなる。よって、ジャンパ160は、この反射光L2の光量の変化という光学的な特性の変化を、裏蓋130を通して外部から検出できるように設定された光学特性変化部の一例である。
【0041】
回転錘154は、機械式時計100の動力源であるゼンマイを巻き上げるためのものであり、例えば、ムーブメント150の中心に設けられた回転軸回りに回転する。なお、ジャンパ160は、回転錘154の回転範囲Hにおいて、検出孔156を介して外部に臨んでいる。
【0042】
機械式時計100は、指針151,152による時刻表示として、午前と午後とを区別する必要が無い場合は、ジャンパ駆動車158が24時間周期で回転するものでなく、12時間周期で回転するものとしてもよい。この場合、ジャンパ駆動車158は、筒車の回転と同じ角速度で回転するものとすればよい。
【0043】
<時刻合わせ装置の構成>
本実施形態の時刻合わせ装置200は、本発明に係る時刻合わせ装置の一例であるとともに、本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステムの一例である時刻合わせシステム300を構成する時刻合わせ装置の一例でもある。
【0044】
図1~3に示した時刻合わせ装置200は、機械式時計100とは別体に形成されていて、機械式時計100の時刻合わせを行うときに用いられる。時刻合わせ装置200は、時計配置部220と、指針位置検出部230と、時刻計時部240と、指針駆動部250と、制御部260と、を有している。
【0045】
時計配置部220は、機械式時計100を、時刻合わせ装置200の外装であるスタンド210の所定位置に位置決めして配置する。具体的には、時計配置部220は、
図3に示すように、機械式時計100の枠131の外周部に接し、機械式時計100を、りゅうず157を下側にしてムーブメント150を水平面に対して傾けた姿勢で保持する。
【0046】
時計配置部220に配置された状態で、機械式時計100は、水平面に対して傾いているため、回転錘154は自重により、ムーブメント150の下側半分の領域、すなわち、りゅうず157に近い半分の側に位置する。
【0047】
指針駆動部250は、駆動部251と、連結軸252とを備えている。駆動部251は、モータと減速輪列とを有している。連結軸252は、時計配置部220に配置された機械式時計100のりゅうず157に嵌合して連結され、駆動部251の回転をりゅうず157に伝達し、りゅうず157を回転させることで、りゅうず157に連結された指針151,152を駆動する。
【0048】
指針位置検出部230は、時計配置部220に所定の姿勢で配置された機械式時計100の、裏蓋130を通して検出孔156に対向した位置に設けられている。指針位置検出部230は、検出孔156に向けて光L1を発光するLED等の発光部231と、検出孔156を通じてジャンパ160からの反射光L2を受光する受光部232とを備えた反射型のフォトリフレクタである。
【0049】
この指針位置検出部230は、種々の電子部品とともに回路基板233に実装されている。なお、指針位置検出部230の保護のため、指針位置検出部230が配置されたスタンド210の外面には、光L1及び反射光L2を透過する透光性を有する保護板211が設けられている。
【0050】
指針位置検出部230は、検出孔156を通したジャンパ160からの反射光L2の光量変化を検出することにより、0時00分00秒に対応した指針151,152の基準位置を検出する。
【0051】
時刻計時部240は、例えば、いわゆる電波修正時計が受信する、時刻を表す情報を含む電波を受信することで、正確な現在時刻を計時する。
【0052】
制御部260は、指針位置検出部230により検出された0時00分00秒に対応した指針151,152の基準位置に基づいて、時刻計時部240により計時された現在時刻に対応した指針の位置まで、機械式時計100の指針151,152を駆動するように、指針駆動部250を制御する。
【0053】
なお、制御部260は、駆動部251の駆動量と、指針151,152の駆動量(回転角度)との対応関係を記憶していて、指針151,152を特定の角度だけ回転させるために必要な駆動部251の駆動量を、対応関係に基づいて算出して、駆動部251を制御する。
【0054】
<機械式時計の時刻合わせシステムの動作>
以上のように構成された時刻合わせシステム300は、以下のように動作する。
【0055】
まず、使用者によって、時刻合わせ装置200の時計配置部220に、機械式時計100が所定の姿勢で配置される。このとき、機械式時計100は、りゅうず157が最も下側になる姿勢で配置され、指針位置検出部230に機械式時計100の検出孔156が対向し、連結軸252にりゅうず157が連結された状態となる。
【0056】
機械式時計100が所定の姿勢で時計配置部220に配置されたとき、回転錘154は自重によってりゅうず157に近い最も下側の位置に停止した状態となる。りゅうず157とは反対の側は上側に位置し、上側に形成されている指針位置検出部230と検出孔156との間に回転錘154が位置することはない。これにより、検出孔156は回転錘154によって遮蔽されないため、指針位置検出部230による指針151,152の位置の検出が阻害されることはない。
【0057】
使用者が、時刻合わせ装置200のスタンド210に設けられた、図示を省略した時刻合わせ動作の開始ボタンを押すと、制御部260が、機械式時計の指針151,152を、0時00分00秒に対応した位置まで早送りで駆動するように、指針駆動部250を制御する。
【0058】
なお、使用者が開始ボタンを手動で押すことに代えて、時刻合わせ装置200が、時計配置部220に機械式時計100が配置されたことを検出し、この検出結果に基づいて、上述した制御部260による制御を自動的に開始するようにしてもよい。
【0059】
時計配置部220に機械式時計100が配置されたことの検出は、例えば、指針位置検出部230の受光部232が検出している受光量の変化(機械式時計100が配置されていないときの環境光による受光量が、機械式時計100が配置されたことにより変化したときの光量変化)を検出することで行うことができる。
【0060】
制御部260は、駆動部251を駆動し、駆動部251に連結された連結軸252を回転させて、連結軸252に連結されたりゅうず157を回転し、指針151,152を、通常の時刻表示のための回転よりも速い速度の早送りで回転させる。
【0061】
指針151,152が早送りで回転されている間、指針位置検出部230の発光部231が検出孔156に向けて光L1を出射し、受光部232がジャンパ160からの反射光L2を受光し続け、受光した反射光L2の光量が瞬時に小さくなる瞬間を検出するのを待つ。
【0062】
ジャンパ160からの反射光L2の受光量が瞬時に小さくなる瞬間は、前述したように、ジャンパ160が、最も外側の位置から元の位置に戻った瞬間であり、指針151,152の位置が0時00分00秒に対応した基準位置になった瞬間である。
【0063】
指針位置検出部230が、受光した反射光L2の光量が瞬時に小さく切り替わる瞬間を検出することにより、0時00分00秒に対応した指針の基準位置を検出し、指針位置検出部230は、その検出した瞬間に、機械式時計100の指針151,152が時刻0時00分00秒に対応した基準位置にあることを検出し、制御部260は指針151,152の基準位置を認識する。
【0064】
制御部260は、0時00分00秒に対応した基準位置を指示している指針151,152が、時刻計時部240が計時している現在時刻に対応した位置になるように、機械式時計100の指針151,152を早送りで駆動するように、指針駆動部250を制御する。
【0065】
指針151,152が、現在時刻に対応した位置まで駆動された時点で、制御部260は、指針駆動部250の駆動を停止するように制御するとともに、指針位置検出部230の動作を終了(発光部231の発光を停止し、受光部232の受光動作及び受光量の検出動作を停止)させる。
【0066】
以上の通り、本実施形態の機械式時計100の時刻合わせシステム300によれば、文字板140及び指針151,152の画像を解析することが無い。したがって、本実施形態の機械式時計100の時刻合わせシステム300は、機械式時計100の文字板140や指針151,152の形状等に依存することなく、機械式時計100の時刻合わせを精度よく行うことができる
【0067】
図7は、撓み部163が撓み規制部により撓みの変動を規制されたジャンパ160を示す斜視図である。
【0068】
本実施形態の時刻合わせシステム300における機械式時計100は、ジャンパ160の動きの変化により、光学的な特性の変化(反射光量が急激に小さくなる変化)のタイミングを検出するが、ジャンパ160の動きは、撓み部163の撓みのわずかな変動によってばらつきが出る可能性がある。
【0069】
そこで、撓み部163の撓みのばらつきを低減するために、
図7に示すように、撓み部163が撓む方向を規制する撓み規制部を設けてもよい。ここで、撓み規制部は、例えば撓み部163の、ジャンパ160に近い部分に形成された、ジャンパ160が変位するムーブメント150の半径方向外側に延びた溝部164と、溝部164に挿入された、ムーブメント150に固定されたピン159とにより構成されている。
【0070】
このように構成された撓み規制部によれば、ジャンパ160が半径方向の外側に変位する際、溝部164がピン159に規制された状態で半径方向の外側に変位し、ジャンパ160が元の位置に戻る際も、溝部164がピン159に規制された状態で半径方向の内側に変位する。これにより、撓み部163の撓みのばらつきを低減することができる。
【0071】
図8は、検出孔156が、回転錘154の回転範囲Hに形成された機械式時計100を示す模式図である。
【0072】
本実施形態の時刻合わせシステム300における機械式時計100は、
図8に示すように、回転錘154の回転範囲Hに検出孔156が形成されているが、時刻合わせ装置200の時計配置部220が、検出孔156が形成された半分の側を上側、検出孔156が形成されていない半分の側を下側とする姿勢で機械式時計100を配置するため、回転錘154が、検出孔156と指針位置検出部230との間に配置されるのを防いでいる。
【0073】
しかし、本実施形態における時刻合わせシステム300はこの形態に限定されるものではない。すなわち、例えば、時刻合わせ装置200の時計配置部220が、検出孔156が形成された半分の側を下側にする姿勢で機械式時計100を配置するものであってもよい。
【0074】
図9は、回転錘154の、の検出孔156と指針位置検出部230とを結ぶ一直線との交差する部分に、小窓や切り欠き等の開口154cが形成された機械式時計100を示す、
図8相当の模式図である。
【0075】
このように構成すると、自重で下側に停止した回転錘154が、検出孔156と指針位置検出部230との間に配置され得る。この場合、機械式時計100を、例えば、
図9に示すように、回転錘154の、検出孔156と指針位置検出部230とを結ぶ一直線との交差する部分に、小窓や切り欠き等の開口154cを形成したものとすればよい。これにより、指針位置検出部230の、検出孔156を通した光学的な変化の検出が妨げられるのを防ぐことができる。
【0076】
図10は、検出孔156が、回転錘154の回転範囲Hよりも半径方向の外側に形成された機械式時計100を示す、
図8相当の模式図である。
【0077】
また、機械式時計100を、
図10に示すように、検出孔156を回転錘154の回転範囲Hよりも、半径方向の外側に形成されたもの(又は、回転錘154を、その回転範囲Hが検出孔156よりも半径方向の内側となるように形成されたもの(半径が小さいもの))としてもよい。
【0078】
この場合、回転錘154の回転範囲Hの任意の角度位置で停止しても、検出孔156と指針位置検出部230との間に回転錘154が配置されることはない。したがって、検出孔156は、
図10に示すように、回転錘154が停止する下側半分に形成されていてもよく、このように形成されても、指針位置検出部230による、検出孔156を通した光学的な変化の検出が妨げられるのを防ぐことができる。
【0079】
図11は、筒状の遮光管171が、検出孔156をガラス板132まで延長した範囲に対応するムーブメント150とガラス板132との間に設けられた機械式時計100を示す、
図3相当の断面図である。
【0080】
なお、検出孔156が回転錘154の回転範囲Hの、半径方向の外側に形成された機械式時計100においては、
図11に示すように、検出孔156をガラス板132まで延長した範囲に対応するムーブメント150とガラス板132との間に、筒状の遮光管171を設けるのが好ましい。
【0081】
このように構成された機械式時計100によれば、回転する回転錘154が干渉することのない遮光管171は、指針位置検出部230と検出孔156との間で行き来する光L1及び反射光L2の光路に、例えば、文字板140の孔141及びムーブメント150の貫通孔155を通してムーブメント150の裏面側に到達した外光L3が入射するのを防止する。これにより、指針位置検出部230は、外光L3の影響を排除して、精度よく反射光L2の光量の変化を検出することができる。
【0082】
なお、遮光管171に代えて、又は遮光管171と併せて、検出孔156とガラス板132との間に、内部で光を全反射させて導光する光ファイバ172を設けてもよい。これにより、指針位置検出部230と検出孔156との間で行き来する光L1及び反射光L2が外部に散乱するのを防止又は抑制することができる。
【0083】
図12は、遮光管171や光ファイバ172が設けられた、手動でゼンマイを巻き上げる機械式時計100を示す、
図3相当の断面図である。
【0084】
ムーブメント150とガラス板132との間に、遮光管171や光ファイバ172を設けるのは、検出孔156が回転錘154の回転範囲Hの、半径方向の外側に形成された機械式時計100に限定されるものではない。すなわち、
図12に示すように、回転錘154を備えない、いわゆる手動でゼンマイを巻き上げる機械式時計100においても、回転錘154が干渉することはないため、遮光管171や光ファイバ172を設けることができる。
【0085】
なお、例えば
図3に示すように、回転錘154の回転範囲Hが大きいために、回転範囲Hに検出孔156が配置されている実施形態においては、遮光管171や光ファイバ172を設けることはできない。
【0086】
しかし、文字板140の孔141及びムーブメント150の貫通孔155が回転範囲Hに存在する構成により、時計配置部220に機械式時計100が位置決めされた状態で、下側に配置された回転錘154が、貫通孔155を覆った状態となる。
【0087】
したがって、回転錘154のおもて面154aを黒色で塗る等して、貫通孔155を通じて入射した外光L3をおもて面154aで吸収することにより、指針位置検出部230と検出孔156との間で行き来する光L1及び反射光L2の光路に、外光L3が入射するのを防止することができる。
【0088】
上述した実施形態の時刻合わせシステム300で用いられた機械式時計100は、検出孔156がムーブメント150を貫通していて、ジャンパ160が元の位置にあるとき、指針位置検出部230の発光部231から出射した光L1は、文字板140の黒色の裏面140bで吸収されて、ほとんど反射しないように構成されていた。
【0089】
図13は、検出孔156がムーブメント150を貫通していない構造の機械
式時計100を示す、
図3相当の断面図である。
【0090】
しかし、機械式時計100はこの形態に限定されるものではなく、
図13に示すように、検出孔156がムーブメント150を貫通していないものであってもよい。この場合、検出孔156の底となる面(突き当りの面)150bが、光L1を反射しないように形成されていればよい。
【0091】
このように構成された機械式時計100は、検出孔156の底の面150bが、
図3に示した機械式時計100における文字板140の裏面140bと同じ作用を奏するため、本実施形態の時刻合わせシステム300に用いられる機械式時計とすることができる。
【0092】
上述した実施形態の時刻合わせシステム300で用いられた機械式時計100は、ジャンパ160の裏面160bが反射板を有し、ジャンパ160で反射した反射光L2を、受光部232で検出するものであるが、本発明に係る時刻合わせシステムはこの形態に限定されるものではない。
【0093】
図14は、文字板140の裏面140bに反射板143を備え、ジャンパ160の裏面160bが光L1を吸収する構成の機械式時計100を示す、
図3相当の断面図である。
【0094】
すなわち、上述した実施形態の時刻合わせシステム300に用いられる機械式時計100は、
図14に示すように、文字板140の裏面140bに反射板143を備え、ジャンパ160の裏面160bが、光L1を吸収する構成としてもよい。
【0095】
この時刻合わせシステム300は、時刻合わせ装置200の指針位置検出部230が、ジャンパ160が最も外側に位置するときに最小の反射光L2の光量を検出し、指針151,152の基準位置に対応してジャンパ160が元の位置に戻ったときに、最大の反射光L2の光量を検出する。
【0096】
したがって、指針位置検出部230は、検出した反射光L2の光量が最小から最大に切り替わったタイミングで、指針151,152が基準位置にあることを検出することができる。
【0097】
上述した実施形態の時刻合わせシステム300は、指針位置検出部230が発光部231を有し、検出孔156に向けて発光部231から光L1を出射する形態であるが、時刻合わせ装置200の指針位置検出部230が発光部231を備えない構成としてもよい。
【0098】
図15は、検出孔156に対応する文字板140に、外光L4を検出孔156に導くための孔144を形成して、外部から文字板140の孔144を通じて検出孔156に導光された外光L4を、ジャンパ160で遮光する構成の機械式時計100を示す、
図3相当の断面図である。
【0099】
この場合、例えば
図15に示すように、検出孔156に対応する文字板140に、外光L4を検出孔156に導くための孔144を形成して、機械式時計100の外部から、文字板140の孔144を通じて検出孔156に導光された外光L4を、ジャンパ160で遮光する構成とすればよい。
【0100】
この時刻合わせシステム300は、時刻合わせ装置200の指針位置検出部230(受光部232)が、ジャンパ160が最も外側に位置するときに最小の外光L4の光量を検出し、指針151,152の基準位置に対応してジャンパ160が元の位置に戻ったときに、最大の外光L4の光量を検出する。
【0101】
したがって、指針位置検出部230は、検出した外光L4の光量が最小から最大に切り替わったタイミングで、指針151,152が基準位置にあることを検出することができる。
【0102】
図16は、発光部231と受光部232とが隣接せずに離れ、検出孔156が、発光部231から出射した光L1の通る光路と、ジャンパ160で反射した反射光L2が受光部232に向う光路とに分けられた構成の機械式時計100を示す、
図3相当の断面図である。
【0103】
上述した実施形態の時刻合わせシステム300は、指針位置検出部230の発光部231と受光部232とが隣接し、一体のフォトリフレクタとして配置された構成であるが、
図16に示すように、機械式時計100は、発光部231と受光部232とが隣接せずに離れ、検出孔156が、発光部231から出射した光L1の通る光路と、ジャンパ160で反射した反射光L2が受光部232に向う光路とに分けられた構成としてもよい。
【0104】
このように構成された時刻合わせシステム300によっても、上述した各実施形態の時刻合わせシステムと同様の効果を得ることができる。
【0105】
図18は、ジャンパ160に代えて、光学特性変化部として適用された、1日に1回、所定の時間帯にのみ回転する日板(日車)180を示す図である。
【0106】
本実施形態の時刻合わせシステム300は、機械式時計100のジャンパ160を、光学的な特性を変化させる光学特性変化部として適用したものであるが、ジャンパ160に代えて、
図17及び
図18に示すように、1日に1回、所定の時間帯にのみ回転する日板(日車)180を光学特性変化部として適用してもよい。
【0107】
すなわち、例えば、日板180の裏面180bに、光学的な特性が変化する模様を形成する。具体的には、
図18に示すように、日板180は、1日に回転する各角度範囲Jが、黒色に塗られた非反射部181の範囲J1と、白色に塗られた反射部182の範囲J2とに塗り分けられている。非反射部181は光L1を反射せずに吸収し、反射部182は光L1を反射して反射光L2を出射する。
【0108】
そして、指針151,152の基準位置に対応した時刻0時00分00秒よりも以前は、日板180は非反射部181が検出孔156に臨んだ状態となっていて、時刻0時00分00秒に、反射部182が検出孔156に臨んだ状態に切り替わる。
【0109】
これにより、日板180をジャンパ160に代えた光学特性変化部として備えた機械式時計100とすることができる。
【0110】
図19は、ジャンパ160に代えて、光学特性変化部として適用された歯車190を示す図である。
【0111】
同様に、ジャンパ160の代わりに、
図19に示した、孔191の開いた歯車190を光学特性変化部として適用することもできる。この歯車190は、
図4に示したジャンパ駆動車158と同様に、24時間周期で1回転する。そして、孔191が時刻0時00分00秒に、検出孔156に臨むように構成することにより、指針位置検出部230が、反射光L2の変化により、指針151,152の基準位置を検出することができる。
【0112】
本発明における光学特性変化部は、24時間周期で光学的な特性を変化させるものに限定されず、例えば、光学的な特性を変化させる分解能をより高くすることができるように、例えば、1時間周期で光学的な特性を変化させるように作動する(1時間ごとに1度作動する)部分をさらに加えて、異なる周期で光学的な特性を変化させる複数の部分の組み合わせにより、光学的な特性の変化の精度を高めてもよい。
【0113】
また、本発明における光学特性変化部は、上述した反射光L2の光量や反射率、透過率に限らず、位相、光路長、偏光方向、波長、色調、屈折、光線の向き又は焦点などのうち1つ又は組み合わされた2つ以上を変化させるものでもよい。
【0114】
また、本発明に係る機械式時計又は時刻合わせ装置に、光学素子として、レンズ、プリズム、ミラー、波長板、偏光板、カラーフィルタ又は光導波路などを設けてもよい。
【0115】
また、機械式時計の内部や時刻合わせ装置の内部での迷光を低減するために、機械式時計の内部や時刻合わせ装置の内部を、光を吸収する黒色に塗装してもよい。
【0116】
本実施形態の時刻合わせシステム300は、機械式時計100のジャンパ160による反射光L2の瞬間的な光量変化を発生させる指針151,152の基準位置が、時刻0時00分00秒に対応したタイミングであるが、ジャンパ160が反射光のL2の瞬間的な光量変化を発生させる指針151,152の基準位置は、時刻0時00分00秒に対応したタイミングに限定するものではなく、他のいかなる時刻に対応したタイミングであってもよい。
【0117】
上述した実施形態の時刻合わせシステム300及び時刻合わせ装置200は、特定の時刻(例えば、時刻0時00分00秒)に対応した指針151,152の基準位置のみで、指針151,152の位置を検出するものであるが、本発明に係る時刻合わせシステム及び時刻合わせ装置は、機械式時計100の、任意の時刻に対応した指針151,152の位置を検出するものであってもよい。
【0118】
本実施形態の機械式時計100は、機械式時計100であることの最も特徴的なてんぷ153を視認可能に構成したものであるが、本発明に係る機械式時計及び時刻合わせシステムは、てんぷ153が外部から視認可能であるものに限定されるものではなく、てんぷ153が外部から視認できるものでなくてもよい。
【0119】
図20は、外形の異なる2種類の機械式時計100′,100″にそれぞれ対応してこれらの機械式時計100′,100″を位置決めして配置するための、時計配置部220に着脱可能に設けられた2種類のアダプタ221,222を示す模式図である。
【0120】
本実施形態の時刻合わせ装置200は、
図20に示すように、時計配置部220が、外形の異なる複数種類の機械式時計(例えば、直径D1の機械式時計100′と直径D2(<D1)の機械式時計100″)にそれぞれ対応して、複数種類の機械式時計100′,100″をそれぞれ所定位置に位置決めする、時計配置部220に着脱可能に設けられた複数種類のアダプタ221,222を有するものとしてもよい。
【0121】
この時刻合わせ装置200によれば、直径D1の機械式時計100′に対応したアダプタ221と、直径D2の機械式時計100″に対応した別のアダプタ222のうち一方を選択的に時計配置部220に付加するだけで、外形の異なる2種類の機械式時計100′,100″を選択的に一つの時刻合わせ装置200に設置することができ、外形の異なる2種類の機械式時計100′,100″ごとに専用の時刻合わせ装置200を用意する場合に比べて、コストを抑えることができる。
【0122】
なお、
図20に示した時刻合わせ装置200は、いずれのアダプタ221,222も時計配置部220に付加しないことにより、2種類の機械式時計100′,100″とはまた別の外形の機械式時計100を時計配置部220に配置することができる。
【0123】
また、本発明に係る時刻合わせ装置は、配置される機械式時計として上述した外形の異なる複数種類のものに対応させるだけでなく、光学特性変化部が異なる位置に設けられた複数種類の機械式時計にも対応できるように、光学特性変化部の位置に対応した複数の指針位置検出部を備えたものとしてもよい。
【0124】
本実施形態の時刻合わせシステム300は、機械式時計100を時刻合わせ装置200に配置した状態で、時刻合わせのために指針151,152を駆動するものであるが、指針の駆動の他に、ゼンマイを巻くためにりゅうず157を駆動するようにしてもよい。この場合、機械式時計100が、りゅうず157の回転方向に応じて、指針151,152を駆動する操作と、ゼンマイを巻く操作とを切り替えるように構成すればよい。
【0125】
なお、本実施形態の時刻合わせシステム300は、機械式時計100を時刻合わせ装置200に配置した状態で、使用者が時刻合わせ開始のボタンを押したときに、機械式時計100の指針151,152を駆動して時刻合わせを実行するが、時刻合わせ後に、機械式時計100が時刻合わせ装置200に配置された状態が継続されているときは、その後に時刻合わせ開始のボタンが押されなくても、所定の時間間隔ごとに、再度時刻合わせの動作をしたり、又は、特定の時刻になったときに、再度時刻合わせの動作をしたりしてもよい。
【0126】
また、本実施形態の時刻合わせシステム300は、機械式時計100を時刻合わせ装置200に配置した状態で、機械式時計100の指針151,152を駆動した時刻合わせが行われた後に、機械式時計100が時刻合わせ装置200に配置された状態が継続されているときは、機械式時計100のゼンマイを動力として機械式時計100を動作させるのではなく、時刻合わせ装置200の時刻計時部240が計時している時刻に指針151,152の位置を常時合わせ続けるように、指針駆動部250を制御部260が制御するようにしてもよい。
【0127】
この場合、機械式時計100は、時刻合わせ装置200に配置されている期間中は、時刻合わせ装置200によって時刻合わせされ続けているため、電子時計の精度が維持される。したがって、時刻合わせ装置200から取り外した瞬間の機械式時計100は、常に正確に時刻合わせが行われた状態にすることができる。
【0128】
上述した実施形態における機械式時計100は、所定の時刻0時00分00秒のタイミングで、反射光L2の光量が瞬間的に変化するように設定されているが、実際の機械式時計100においては、構成部品の設計許容差の範囲での製造誤差や、構成部品同士を組み合わせたときの集積誤差によって個体差が発生し得る。
【0129】
つまり、製造された機械式時計100は、時刻0時00分00秒に指針151,152が0時00分00秒を指し示していても、個体差によって、反射光L2の光量が瞬間的に変化する時刻が、0時00分02秒であったり、23時29分51秒であったりすることが起こる。
【0130】
そして、機械式時計100がこのような個体差を有するにも拘わらず、時刻合わせ装置200が、その個体差を考慮しないで、各機械式時計100の時刻合わせを行うと、それぞれの個体差分だけ、指針151,152の位置が時刻からずれてしまう。
【0131】
そこで、各機械式時計100には、製造時の個体差を記録しておいて、時刻合わせ装置200により機械式時計100の時刻合わせを実行する際に、時刻合わせ装置200が機械式時計100に記録された個体差を読み取り、時刻合わせ装置200は読み取った個体差に対応した分だけ、オフセットした時刻を指し示すように、指針151,152を駆動すればよい。
【0132】
なお、機械式時計100は、電子的な部品を一切備えないため、上述した個体差の記録として、半導体のメモリ等を用いることはできない。
【0133】
したがって、機械式時計100の裏蓋130やケース110に、その機械式時計100に対応した個体差を1次元バーコードや2次元バーコードなどの符号で表したシール等非電子的に情報を記録したものを貼付することで、個体差を記録することができる。
【0134】
この場合、時刻合わせ装置200は、1次元バーコードや2次元バーコードなどで表された符号を読み取る読取部を備えるとともに、制御部260が、読取部で読み取られた符号に対応する個体差を取得し、取得した個体差に対応した分だけ、指針駆動部250による指針151,152の駆動量をオフセットさせればよい。
【0135】
なお、機械式時計100は、ムーブメント150を含む時計本体が電子部品を備えないため、時計本体ではない時計バンドに、個体差を電子的に記録したRFIDタグなどを内蔵させてもよい。
【0136】
この場合、時刻合わせ装置200は、RFIDタグに記憶された個体差の情報を、無線により読み取る読取部を備えるとともに、制御部260が、読取部で読み取られた個体差の情報に基づいて個体差を取得し、取得した個体差に対応した分だけ、指針駆動部250による指針151,152の駆動量をオフセットさせればよい。
【0137】
なお、機械式時計100の時刻合わせシステム300を、機械式時計100と時刻合わせ装置200とを一対一で対応付けたセットとしたものでは、時刻合わせ装置200の制御部260に、その対応する機械式時計100の個体差を予め記録しておき、制御部260は、対応付けられた機械式時計100の時刻合わせを実行する際は、その制御部260に記録されている個体差に基づいて、個体差に対応した分だけ、指針駆動部250による指針151,152の駆動量をオフセットさせるようにしてもよい。
【0138】
本発明に係る機械式時計の時刻合わせ装置、機械式時計及び機械式時計の時刻合わせシステムは、機械式時計の時刻を指示する指針の位置合わせを行うもの、又はその指針の位置合わせを行うものに適した機械式時計であるが、位置合わせの対象となる指針は、必ずしも時刻を指示する指針のみに限定されるものではなく、時刻以外の、例えば、年月日、曜、月齢、経年、パワーリザーブなどをそれぞれ指示する指針や指示板等を、位置合わせの対象とすることができる。
【0139】
したがって、本発明に係る機械式時計の時刻合わせ装置は、時刻以外の上述した年月日、曜等を指示する指針を対象とする場合は、機械式時計の指針位置合わせ装置とし、また、本発明に係る機械式時計の時刻合わせシステムは、時刻以外の上述した年月日、曜等を指示する指針を対象とする場合は、機械式時計の指針位置合わせシステムとすることができる。
【0140】
<ジャンパ及びジャンパ駆動車の変形例>
図21,22は、ジャンパ160の変形例であるジャンパ360及びジャンパ駆動車158の変形例であるジャンパ駆動車358を示す平面図、
図23は、
図21,22に示したジャンパ360及びジャンパ駆動車358の要部断面図である。
【0141】
図示のジャンパ360は、ジャンパ160におけるボス158aに対応した突起359aが、ジャンパ360の裏側に沈み込むように撓むことができるように形成されている。具体的には、ジャンパ駆動車358は、舌片359が形成されている。
【0142】
舌片359は、ジャンパ駆動車358の周方向に沿って延びた円弧状で、可撓性を有する。舌片359は、一端がジャンパ駆動車358に固定された固定端359bであり、他端が固定されていない自由端であって、固定端359bを支点としてジャンパ駆動車358の厚さ方向に撓むことが可能である。
【0143】
舌片359の自由端には、ジャンパ駆動車358の厚さ方向に突出した突起359aが形成されている。
【0144】
突起359aは、ジャンパ駆動車358のおもて面側(文字板140に近い側)の上方に配置されたジャンパ360に当たる高さまで突出して形成されている。突起359aの、固定端359bに向いた面は、厚さ方向に対して傾斜した傾斜面359dとなっている。一方、突起359aの、傾斜面359dとは反対側の面、すなわち舌片359の先端面は、厚さ方向に沿った鉛直面359cとなっている。
【0145】
ジャンパ駆動車358が、
図21に示すように、時計回り方向に回転すると、突起359aの鉛直面359cが、ジャンパ360の側面361に接する。ジャンパ駆動車158の回転がさらに進むと、鉛直面359cがジャンパ360の側面361を押すことで、ジャンパ360を半径方向の外側に移動させる。
【0146】
これにより、先端にジャンパ360が形成された撓み部363の曲率半径が大きくなるように、撓み部363が撓む。ジャンパ360の半径方向の外側への移動により、ジャンパ360は検出孔156の大部分を覆う。
【0147】
ジャンパ駆動車158の回転がさらに進むと、突起359aが移動するとともにジャンパ360が半径方向の外側にさらに移動することで、ジャンパ360の側面361は鉛直面359cから離れる。しかし、
図22に示すように、ジャンパ360の半径方向内側の先端360cが、突起359aの半径方向外側面359eに接することで、ジャンパ360が検出孔156の大部分を覆った状態が維持される。
図22における二点鎖線は、撓み部363が撓む前のジャンパ360及び撓み部363を示す。
【0148】
その後、ジャンパ駆動車158のさらなる回転により、突起359aがジャンパ360の先端360cから離れ、ジャンパ360は撓み部363の撓みによって生じた弾性力によって、
図21に示した撓み前の位置まで戻された状態となる。
【0149】
したがって、ジャンパ360は、例えば、時刻0時00分00秒の指針151に対応して、最も外側の位置から元の位置に移動し、このとき、検出孔156に入射した光L1がジャンパ360の裏面の反射板で反射した反射光L2は、最大の光量から一気に低下する。
【0150】
これにより、ジャンパ360及びジャンパ駆動車358は、ジャンパ160及びジャンパ駆動車158と同様の作用効果を発揮する。
【0151】
ここで、ジャンパ駆動車358は筒車に連動して回転するため、例えば、時計100の使用者が、手動で指針の位置合わせ(時刻修正)を行った場合に、その指針の動きと連動してジャンパ駆動車358も回転する。
【0152】
そして、使用者が、指針の位置合わせを、指針を反時計回りに回転させることで行った場合、ジャンパ駆動車358の回転方向が、
図21,22に示した時計回り方向ではなく、反時計回り方向に回転する。この場合、ジャンパ駆動車358の傾斜面359dが、ジャンパ360の、側面361とは反対側の側面362に当たる。
【0153】
ここで、傾斜面359dが、鉛直面359cと同様の鉛直面で形成されていると仮定すると、その鉛直面がジャンパ360の側面362を反時計回り方向に押圧するため、ジャンパ360は半径方向の外側ではなく、反時計回り方向に移動する。
【0154】
このため、撓み部363は引っ張られるだけとなって、撓みの変形ができずに突っ張った状態となり、ジャンパ駆動車358も停止する。したがって、使用者による手動での指針の位置合わせもできなくなる。
【0155】
しかし、本変形例のジャンパ駆動車358は、ジャンパ360の側面362に接する面が鉛直面ではなく傾斜面359dであるため、傾斜面359dがジャンパ360の側面362に接した後は、ジャンパ駆動車358の反時計回りの回転によって、ジャンパ360の側面362が傾斜面359dを下方に押す。
【0156】
この結果、
図23に示すように、舌片359が下方に撓み、突起359aは、ジャンパ360の下方に逃げる。そして、突起359aは、ジャンパ360の下面360bに接した状態で、ジャンパ駆動車358の反時計回りの回転が許容される。
【0157】
ジャンパ駆動車358の反時計回りの回転により、突起359aがジャンパ360が配置された領域を通過し、ジャンパ360の配置された領域から外れたとき、舌片359の撓みによる弾性力により、突起359aは撓んでいない状態の姿勢に戻る。
【0158】
このように、本変形例のジャンパ360及びジャンパ駆動車358は、ジャンパ駆動車358が反時計回り方向に回転した場合も、ジャンパ駆動車358の回転は許容されるため、使用者による手動での指針の位置合わせの際に、指針を反時計回り方向に回転させても位置合わせも行うことができる。
【0159】
なお、本変形例のジャンパ360は、撓み部363の自由端側に形成されているが、ジャンパ360よりもさらに、固定端側から遠い位置に、規制部364が形成されている。この規制部364は、撓み部363が上方に、すなわち文字板140側に撓んだ際に、ジャンパ360が、文字板140の裏面140bに接しないように、ジャンパ360の上方への変位を規制するものである。
【0160】
つまり、文字板140の裏面140bには、前述したように検出孔156に入射した光Lの反射を防止又は抑制するために、黒色に塗られている。しかし、撓み部363が厚さ方向に撓むことでジャンパ360が上方に移動し、ジャンパ360が裏面140bに接した状態で、半径方向に移動すると、ジャンパ360が裏面140bと摺動する。このため、裏面140bに塗布された黒色の塗料が剥がれてしまう恐れがある。
【0161】
特に、突起359aがジャンパ360の下面360bに接した状態となる本変形例のジャンパ360は、突起359aが形成された舌片359の撓みによる、上方向きの弾性力が作用するため、上方に変位し易い。
【0162】
しかし、規制部364が形成されていることにより、ジャンパ360の、上方への変位が規制されて、ジャンパ360が文字板140の裏面140bに接するのを防止又は抑制することができる。また、撓み部363の厚さ方向の変位(撓み量)が抑制されることで、ジャンパ360は、平面内での撓みに限定され、ジャンパ360の平面内での変位の再現性(光量変化のタイミングの精度)を向上させることができる。
【0163】
規制部364は、
図21,22に示すように、撓み部363の、ジャンパ360よりもさらに固定端から遠い位置に形成されているため、撓み部363が上方に撓んだ状態になっても、ジャンパ360よりも規制部364の方が高い位置に変位する。この結果、規制部364が文字板140に接することで、ジャンパ360が文字板140に接するのを防止又は抑止する。
【0164】
なお、規制部364は、ジャンパ360よりも先に文字板に当たるように形成されていればよく、撓み部363の、ジャンパ360よりも固定端に近い側に形成されていてもよい。
【0165】
また、規制部364は、
図23に示すように、時計の厚さ方向において、ジャンパ360よりも文字板140に近い位置に形成されている。これにより、撓み部363の厚さ方向への撓み量がより少ない状態で、規制部364が文字板140に接する。したがって、規制部364が文字板140に当たって撓み部363の撓みが制限された状態で、ジャンパ360と文字板140との間の隙間を、より大きく確保することができ、ジャンパ360が文字板140に接するのを一層防止又は抑止することができる。
【0166】
なお、規制部364は、ジャンパ360と異なる位置で文字板140に当たるため、規制部364によって、文字板140の裏面140bの塗料が剥がれても、検出孔156を通じての反射光の検出には影響がない。ただし、規制部364を
図23に示すように、球面に形成したことにより、文字板140に接する規制部364の面積を小さくするとともに滑らかな摺動となって、塗料の剥がれる面積を少なくしつつ、剥がれを抑制することができる。
【0167】
<磁気回転体を備えた機械式時計の時刻合わせシステムの実施形態>
図24は、
図1~3に示した機械式時計100におけるりゅうず157に代えて磁気回転体380を備えた機械式時計100′の時刻合わせシステム300′を示す図である。
【0168】
機械式時計100′は、りゅうず157に代えて磁気回転体380を備えた以外は、時計100と基本的な構成が同じである。
【0169】
図25は磁気回転体380の一例を示す平面図、
図26,27は磁気回転体の別例を示す平面図である。磁気回転体380は、例えば
図25に示すように、軸381と、基板382と、永久磁石383,384とを備えている。永久磁石383はN極、永久磁石384はS極が、基板382の表面上に配置されたものである。
【0170】
永久磁石383と永久磁石384とは、軸381を中心とする周方向に沿って交互に、軸381回りの等角度間隔で並ぶように配置されている。永久磁石383と永久磁石374とは、2個ずつでなくてもよく、1個ずつであってもよいし、3個以上ずつであってもよい。
【0171】
基板382は、軸381を中心とする円板状に形成されているが、
図26に示すように、両端に永久磁石383,384が配置されたバー状の基板385であってもよいし、
図27に示すように、バー状の基板385に、軸381を中心とする円環状の基板386を付加した基板387であってもよい。
【0172】
磁気回転体380は、連動機構を介して指針151,152に連結されている。また、磁気回転体380は、外部の磁場により、軸381を中心として回転する。つまり、時計100の外部から磁場を掛けることで、磁気回転体380が回転し、指針151,152を回転させることができる。したがって、磁気回転体380は、りゅうず157と同様に、操作部材の一例である。
【0173】
なお、機械式時計100′における磁気回転体380は、機械式時計100′の動力源であるゼンマイとも連結されている。これにより、磁気回転体380が回転することにより、ゼンマイの巻き上げを行うこともできる。したがって、機械式時計100′は、ゼンマイを巻き上げる機能を有する回転錘154を備えなくてもよい。ただし、回転錘154の回転によりゼンマイを巻き上げる機構を備えていてもよい。
【0174】
時刻合わせ装置200′は、時刻合わせ装置200における、りゅうず157を操作することで指針151,152を駆動する指針駆動部250に代えて、磁場を発生させることにより磁気回転体380を回転させる回転駆動部280を有する点が異なる以外は、時刻合わせ装置200と基本的な構成が同じである。
【0175】
なお、回転駆動部280も、操作部である磁気回転体380を介して指針151,152を駆動するものであるから、指針駆動部の一例である。
【0176】
図28は回転駆動部280の一例を示す平面図である。回転駆動部280は、
図28に示すように、基板282に配置された6個の電磁石283,284と、これらの電磁石283,284を駆動する電気回路281とを備えている。
【0177】
電磁石283と電磁石284とは、例えば、巻き線の巻き付け方向が互いに反対向きであり、電気回路281の駆動によって互いに反対の磁極となるように形成されている。そして、電磁石283と電磁石284とは、円周上に沿って等角度間隔で交互に並ぶように配置されている。電磁石283と電磁石284とは、
図28に示した3個ずつでなくてもよく、1個ずつや2個ずつ、又は4個以上ずつであってもよい。
【0178】
回転駆動部280は、電気回路281の駆動により、各電磁石283,284が磁化されることにより磁場を発生させる。そして、制御部260が、各電磁石283,284を磁化させて形成する磁極を順次反転させることで磁場が変化させる。これにより、回転駆動部280に対向して配置された、機械式時計100′の磁気回転体380を軸381回りに回転する。
【0179】
したがって、時刻合わせ装置200′は、機械式時計100′の磁気回転体380を回転させることにより、機械式時計100′の時刻合わせ(指針151、152の位置合わせ)及びゼンマイの巻き上げを行うことができる。
【0180】
このように、本変形例の機械式時計100′、時刻合わせ装置200′及び時刻合わせシステム300′によれば、文字板140や指針151,152の形状等に依存することなく、機械式時計100′の時刻合わせを行うことができる。
【0181】
また、本変形例の機械式時計100′、時刻合わせ装置200′及び時刻合わせシステム300′は、前述した実施形態の機械式時計100、時刻合わせ装置200及び時刻合わせシステム300と同様の作用、効果を発揮する。
【0182】
なお、本変形例の機械式時計100′、時刻合わせ装置200′及び時刻合わせシステム300′によれば、機械式時計100′がケース110から外部に突出したりゅうずを備える必要がないため、機械式時計100′の防水性を堅牢にすることができる。
【0183】
また、本変形例の機械式時計100′、時刻合わせ装置200′及び時刻合わせシステム300′によれば、時刻合わせ装置200′が、機械式時計100におけるりゅうず157を、掴む、離す、引く、押す及び回す、という機械的な動作を行うアクチュエータを必要としないため、構成を簡単化及び小型化することができる。
【0184】
なお、機械式時計100′は、機械式時計100に備えられた光学特性変化部の一例としてのジャンパ160や検出孔156等を、機械式時計100と同様に備えている。また、時刻合わせ装置200′も、時刻合わせ装置200が備えた指針位置検出部230を備えている。
【0185】
そして、時刻合わせ装置200′の指針位置検出部230が、機械式時計100′のジャンパ160の動きに応じた、検出孔156を通じて検出された光量の変化を検出することにより、機械式時計100′の指針151,152の基準位置を検出する点については、前述した実施形態の機械式時計100及び時刻合わせ装置200の時刻合わせシステム300と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0186】
(磁気回転体と検出孔との位置関係)
検出孔156は、裏蓋130のガラス板132側から光学特性の変化を検出するための通路であるため、磁気回転体380によって覆われた配置においては、光学特性の変化を、時刻合わせ装置200′の指針位置検出部230が検出できない。そこで、機械式時計100′における検出孔156と磁気回転体380との好ましい配置の例を、以下に説明する。
【0187】
図29,30は、検出孔156と磁気回転体380とが、平面視において重ならない配置の一例である。
図29は、機械式時計100′の平面視での中心に、磁気回転体380の中心を一致させた配置例である。この配置例は、磁気回転体380の中心が機械式時計100′の中心に一致しているため、重量が中心回りに均されて重量バランスが良い。
【0188】
図30は、磁気回転体380の中心が、機械式時計100′の平面視での中心に対して、検出孔156とは反対方向に偏心した配置例である。この配置例は、磁気回転体380の中心が機械式時計100′の中心から偏心しているため、磁気回転体380の基板382を、
図29に示した配置例における基板382よりも大きいサイズに形成することができ、弱い磁力で磁気回転体380を回転させることができる。
【0189】
図31,32,33は、検出孔156と磁気回転体380とが、磁気回転体380の特定の回転角度位置では平面視において重なるが、他の回転角度位置では重ならない配置の一例を示す模式図である。
【0190】
図31は、磁気回転体380の中心を機械式時計100′の平面視での中心に一致させた配置例である。この配置例では、磁気回転体350のバー状の基板385が、特定の回転角度位置にあるとき、基板385が検出孔156に平面視で重なるが、その重なる回転角度位置以外の回転角度位置では、基板385は検出孔156に平面視で重ならない。
【0191】
磁気回転体380の回転角度位置は、回転駆動部280の磁場との関係で制御することができる。したがって、時刻合わせ装置200′の制御部260による回転駆動部280に対する制御により、磁気回転体380の基板385が検出孔156に重複しない回転角度範囲であることを検知し、その検知した回転角度範囲において指針位置検出部230が機械式時計100′の指針位置を検出するように、制御部260が指針位置検出部230の動作を制御すればよい。
【0192】
図32,33も、磁気回転体380の中心を機械式時計100′の平面視での中心に一致させた配置例である。この配置例では、磁気回転体350のバー状及び円環状を組み合わせた基板387が特定の回転角度位置にあるとき、基板387が検出孔156に平面視で重なる(
図32参照)が、その重なる回転角度位置以外の回転角度位置では、基板387は検出孔156に平面視で重ならない(
図33参照)。
【0193】
そこで、
図31に示した配置例のものと同様に、時刻合わせ装置200′の制御部260による回転駆動部280に対する制御により、磁気回転体380の基板387が検出孔156に重複する回転角度範囲である(
図32の配置)ことを検知したときは、その検知した回転角度範囲において指針位置検出部230が機械式時計100′の指針位置を検出する動作を行わないように、制御部260が指針位置検出部230の動作を制御する。
【0194】
一方、磁気回転体380の基板387が検出孔156に重複しない回転角度範囲である(図
33の配置)ことを検知したときは、その検知した回転角度範囲において指針位置検出部230が機械式時計100′の指針位置を検出するように、制御部260が指針位置検出部230の動作を制御する。
【0195】
これにより、検出孔156と磁気回転体380とが、磁気回転体380の特定の回転角度位置において平面視で重なる配置であっても、時刻合わせ装置200′は、光学特性の変化を検出することができる。
【0196】
図34,35,36は、時刻合わせ装置200′における電磁石283,284で構成された回転駆動部280に代えて、永久磁石で構成された回転駆動部280′を適用した場合の、好ましい形態の例を示す図である。
【0197】
電磁石283,284は、電気回路281によって電流の向きを変えることで磁極を変えることができるため、これにより磁場を変化させることができる。しかし、永久磁石は、磁極が変化しないので、電磁石283,284のように、電流の向きを変えるだけでは磁場を変化させることができない。
【0198】
したがって、回転駆動部280′は、電磁石283,284に代えて基板282に配置された永久磁石を、基板282と一体に回転させる必要があり、そのように回転させるモータを備えている。このモータは、制御部260によって動作が制御される。
【0199】
また、電磁石283,284は、電気回路281によって電流が流されている期間だけ磁化されて磁場を形成するため、時刻合わせの動作の期間だけ電磁石283,284を磁化させ、時刻合わせをしない、単に機械式時計100′を置いているだけの期間は、電磁石283,284を磁化させない状態とすることができる。
【0200】
しかし、永久磁石は、常時、磁場を形成している。このため、磁気回転体380を回転させていない期間も、磁場を形成する。したがって、機械式時計100′が時刻合わせ装置200′に置かれている期間中、常に磁場に晒された状態となり得る。
【0201】
そこで、時刻合わせ装置200′は、永久磁石を用いた回転駆動部280′を、磁気回転体380を回転させるときは、
図34の実線で示すように、機械式時計100に近接させた位置に配置し、磁気回転体380の回転が終了した後は、
図34の二点鎖線で示すように、機械式時計100から、厚さ方向に遠ざけた位置に配置するように、制御部260が、永久磁石を移動させるアクチュエータ等を制御するのが好ましい。
【0202】
このように、磁気回転体380を回転させていない期間は、永久磁石を機械式時計100′から遠ざけた配置とすることで、機械式時計100′は、時刻合わせ装置200′に置かれているだけの期間中に、永久磁石によって形成された磁場に晒された状態となるのを防止することができる。
【0203】
なお、永久磁石を機械式時計100′から遠ざける方向としては、
図34に示した、機械式時計100の厚さ方向だけでなく、
図35の二点鎖線で示すように、機械式時計100の面と平行な方向であって、機械式時計100′と平面視で重ならない位置であってもよい。
【0204】
また、時刻合わせ装置200′は、永久磁石を機械式時計100′から遠ざける構成に代えて、
図36に示すように、外部磁場を遮蔽する耐磁板290を備えた構成としてもよい。
【0205】
すなわち、時刻合わせ装置200′は、磁気回転体380を回転させるときは、
図36の実線で示すように、耐磁板290を、機械式時計100と、永久磁石を用いた回転駆動部280′との間から外れた位置に配置し、磁気回転体380の回転が終了した後は、
図36の二点鎖線で示すように、機械式時計100と回転駆動部280′との間に、耐磁板290を挿入するように、制御部260が、耐磁板290を移動させるアクチュエータ等を制御すればよい。
【0206】
このように、磁気回転体380を回転させていない期間は、永久磁石と機械式時計100′との間に耐磁板290を配置とすることで、機械式時計100′は、時刻合わせ装置200′に置かれているだけの期間中に、永久磁石によって形成された磁場に晒された状態となるのを防止することができる。
【0207】
<その他の変形例>
上述した実施形態や変形例の時刻合わせ装置200′は、機械式時計100′の裏蓋130のガラス板132側に、指針位置検出部230及び回転駆動部280,280′を配置した構成であるが、指針位置検出部230と、回転駆動部280,280′とを、機械式時計100の厚さ方向の別々の側にそれぞれ配置したものとしてもよい。
【0208】
図37は、機械式時計100′の裏蓋130のガラス板132側に指針位置検出部230が配置され、機械式時計100′の風防ガラス120側に回転駆動部280が配置された時刻合わせ装置200′の例を示す図である。
図37に示した時刻合わせ装置200′は、機械式時計100′の裏蓋130のガラス板132側に指針位置検出部230が配置され、機械式時計100′の風防ガラス120側に回転駆動部280(,280′)が配置されている。
【0209】
このように、指針位置検出部230と、回転駆動部280,280′とを、機械式時計100の厚さ方向の別々の側に配置した構成により、指針位置検出部230と、回転駆動部280,280′との配置の自由度を向上させることができる。
【0210】
なお、
図37に示した時刻合わせ装置200′とは反対に、機械式時計100′の裏蓋130のガラス板132側に回転駆動部280が配置され、機械式時計100′の風防ガラス120側に指針位置検出部230が配置されてもよい。
【0211】
また、回転駆動部280は、機械式時計100′の裏蓋130のガラス板132側と風防ガラス120側の両方に配置されてもよい。このように、回転駆動部280が機械式時計100′の厚さ方向の両側に配置された構成によれば、磁気回転体380をより強い磁場で回転させることができる。
【0212】
図38は、基板382に機械式時計100′に関する情報を記録したバーコード389を付加した磁気回転体380の例を示す平面図である。磁気回転体380の基板382(,385,387)に、
図38に示すように、機械式時計100′に関する情報を記録したバーコード389を付加してもよい。このバーコード389として記録される情報としては、機械式時計100′の個体差に関する情報などを適用することができる。
【0213】
すなわち、前述したように、機械式時計100′は、時刻0時00分00秒に指針151,152が0時00分00秒を指し示していても、個体差によって、反射光L2の光量が瞬間的に変化する時刻が、0時00分02秒であったり、23時29分51秒であったりという個体差を有する。
【0214】
そこで、機械式時計100′の、製造時点でのそのような個体差を、光学的に読み取り可能のバーコード289として記録しておくことができる。そして、時刻合わせ装置200′により、磁気回転体380を回転させた際に、時刻合わせ装置200′が備えたバーコード読取装置によってバーコード289を読み取ることで、機械式時計100′が有する、光学特性が変化する時刻のずれ(個体差)を制御部260が記憶する。
【0215】
制御部260は、指針位置検出部230により検出された光学特性の変化と指針151,152の位置との対応関係を、記憶した個体差に基づいて補正する。これにより、機械式時計100′ごとの、光学特性が変化するときの指針151,153の位置の個体差によるずれがあっても、時刻合わせ装置200′は、機械式時計100′ごとに、精度よく時刻合わせを行うことができる。
【符号の説明】
【0216】
100 機械式時計
151,152 指針
157 りゅうず
160 ジャンパ(光学特性変化部)
200 時刻合わせ装置
220 時計配置部
230 指針位置検出部
240 時刻計時部
250 指針駆動部
260 制御部
300 時刻合わせシステム
L1 光
L2 反射光