(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】近接レーダとのモードSレーダのII/SI識別コードにおける競合を検出するための方法及びかかる方法を実装する二次レーダ
(51)【国際特許分類】
G01S 13/91 20060101AFI20240124BHJP
G01S 13/78 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G01S13/91 200
G01S13/78
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020171692
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-07-06
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ビヨー
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-109228(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121694(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2477103(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第2857859(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0128180(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0024323(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次モードSレーダ(R1)の近傍のレーダのII/SI識別コードにおける競合を検出するための方法において、少なくとも、
- 第1のステップ(31)であって、
- 前記レーダ(R1)のカバー範囲は、拡張されて(SE2)、拡張されたレーダカバー範囲において同期応答を得、
- 前記レーダ(R1)は、拡張されたレーダカバー範囲の領域(42)において、一方的な非同期応答、即ちフルーツを検出し(SE1)、
- 前記フルーツは、前記拡張されたレーダカバー範囲のモードSターゲットに関連付けられ(SE3)、前記フルーツの位置は、それらのモードSアドレスに基づいて、前記ターゲットの同期検出による補間によって特定される、第1のステップ(31)、
- 第2のステップ(32)であって、前記レーダ(R1)は、前記レーダ(R1)及び少なくとも1つの近接レーダ(R2)に共通するレーダカバー範囲の地理的領域(A、B、C、D1及びD2)を分析することにより、II/SIコードにおける競合を検出し、競合は、前記レーダ(R1)が、
- 前記拡張されたレーダカバー範囲のサブ領域(42、region_D1、region_D2)において、前記近接レーダ(R2)をソースとして有する、前記レーダ(R1)と同じII/SIコードのDF11フルーツの存在を検出し(141)、
- 前記近接レーダ(R2)のレーダカバー範囲の領域と重ならない前記レーダ(R1)のレーダカバー範囲の領域(41、領域B)において、前記近接レーダ(R2)によって生じるDF11フルーツの欠如を観測する(142)場合に検出され、
前記レーダ(R1)の前記レーダカバー範囲及び前記近接レーダ(R2)の前記レーダカバー範囲の重なりの領域(region_B)は、II/SIコードにおける競合領域を形成する、第2のステップ(32)、
- 第3のステップ(33)であって、前記レーダ(R1)は、前記競合領域内のターゲットの存在を示す、前記競合領域(region_B、region_C)内の前記近接レーダ(R2)によって生じるDF4、DF5、DF20又はDF21フルーツの検出(143)に基づいて、前記競合領域(region_B、region_C)内の前記近接レーダ(R2)によってロックされたターゲットを検出し(SE5)、
前記ターゲットは、前記近接レーダ(R2)に起因する前記ターゲットのそのDF4、DF5、DF20又はDF21フルーツのそれぞれと、前記近接レーダ(R2)によって生じる、拡張されたレーダカバー範囲の前記領域(region_D1、region_D2)の他のターゲットの前記DF11フルーツのそれぞれとの間の時間差の絶対値を利用することにより、前記競合領域(region_B、region_C)の内側の方位角領域内で事前に位置を特定され(SE6)、前記他のターゲットのそれぞれの方位角位置は、既知である、第3のステップ(33)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ターゲットの正確な距離方向及び方位角位置は、受信ウィンドウに関連付けられる、前記ターゲットの前記事前に位置を特定された方位角領域において、選択的UF4又はUF5呼掛け信号を位置決めすること(131、SE7)によって得られ、前記応答は、前記ターゲットの前記フルーツの強度及び前記レーダの特性に基づいて推定される前記ターゲットの距離における不確実性を考慮に入れて受信され、前記選択的呼掛け信号は、UF11オールコールモードS呼掛け信号に加えて又はその代わりに、ロールコール期間中又はオールコール期間中に前記ターゲットに送信されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
いわゆるUF11オールコール呼掛け信号を、前記レーダの前記UF11オールコール呼掛け信号に応答して前記第1のステップ(31、SE2)において送信し、前記オールコール期間後及び前記ロールコール期間中に同期DF11応答を受信する前記レーダは、拡張されたレーダカバー範囲の前記領域(42)において追加の同期応答(110)を提供し、このようにして得られた前記追加の応答は、前記オールコール期間内に他の同期応答として処理されて、従来のモードSヒットの属性を有するDF11ヒットを構築することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
二次レーダにおいて、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法を実装するよう構成されることを特徴とする二次レーダ。
【請求項5】
前記レーダによって送信された呼掛け信号に関連する受信期間を含み、前記受信期間とは無関係に、前記非同期モードS応答を連続的に処理するための手段(21)を含むことを特徴とする、請求項4に記載のレーダ。
【請求項6】
アンテナ放射パターン(11、12、14、15)を有するアンテナ(1)を含み、前記処理手段は、前記レーダの前記アンテナの前記放射パターンを個別に利用して、
- 前記アンテナを介して受信された全ての前記非同期及び同期応答を検出すること、
- 任意の種類の応答、メッセージのデータを復号し、且つそれらから前記モードSアドレスを抽出すること、
- それぞれの復号された応答をその特性で強化することであって、前記特性は、少なくとも検出時間、検出時の前記アンテナのメインローブの方位角及び前記アンテナ放射パターンを通して受信される強度である、強化すること
を行うことにより、前記非同期応答を検出及び復号することを特徴とする、請求項5に記載のレーダ。
【請求項7】
拡張されたカバー範囲の前記領域(42)におけるDF11ヒットの抽出器(22)を含み、DF11ヒットは、それらのモードSアドレスを介したターゲットの位置特定及び識別のみを目的として、前記レーダの運用範囲を越えて抽出されることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載のレーダ。
【請求項8】
II/SIコードにおける競合を検出し、及びII/SIコードにおける任意の競合領域において前記近接レーダによってロックされたターゲットを検出し、且つその位置を特定するための処理手段(23)を含み、前記手段(23)は、
- フルーツを、同期されたヒットに関連付けること、
- DF11フルーツであって、非同期応答であり、その原因が近接レーダ(R2)であるDF11フルーツのソースを地理的に分析すること、
- 前記競合領域において前記レーダによって検出されないターゲットの存在を隔離すること、
- 前記競合領域における前記レーダに関して、前記ターゲットの方位角上の事前の位置特定を評価すること、
- 前記レーダが他の全てのターゲットと同様にその監視機能を継続することを可能にするために、前記ターゲットを距離方向及び方位角方向で検出し、且つその位置を特定すること
を行うことを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載のレーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にモードSにおける航空機の検出に関してレーダ性能が最も重要であり、約99%の成功率が期待される、航空交通管制(ATC)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
航空交通管制は、主にモードSレーダに基づいており、その検出及び復号の信頼性は、広く認識されている。モードSレーダで達成される性能は、特にレーダがII/SIコード(IIは、インタロゲータ識別子の頭字語である)を介して航空機によって識別されるという事実に関連している。電磁干渉を制限し、従ってレーダのトランザクションの信頼性を高めるために、モードSレーダは、それらのカバー範囲及び担当の領域において、管理しているターゲットにそれらのII/SI識別を固定し、これらのターゲットが非選択的モードS呼掛け信号に応答しないようにしている。
【0003】
以下は、特に対処すべき技術的な問題の1つである。近接レーダのカバー範囲が重なる場合、レーダは、異なるII/SI IDを有する必要がある。逆の場合、即ち2つの近接レーダが同じII/SIコードを共有している場合、2つのレーダのそれぞれは、他のレーダによって既にロックされているターゲットを見ることができない。結果として、安全性の面で深刻な失敗を生じる。
【0004】
先行技術では、レーダのカバー範囲内において、同じII/SIコードを用いて近接レーダによってロックされているため、このレーダのオールコール呼掛け信号に応答しない航空機の存在を検出する様々な方法が提案されてきた。第1の解決策は、英国特許出願公開第201000946号明細書に開示されている。設計上、この解決策は、ADS-B Outを装備した航空機でのみ機能する。レーダは、それが通信するローカルADS-B in受信機に装備されるか又は関連付けられている必要がある。
【0005】
別の解決策は、英国特許出願公開第201316553号明細書に提案されている。これは、レーダのインバウンド及びアウトバウンド検出範囲を比較することにより、近接するインタロゲータ間のII/SIコードの競合を検出することを含む。具体的には、レーダAのカバー範囲から出るアウトバウンド航空機は、選択的モードで管理されるため、レーダAの運用カバー範囲の限界まで管理されるのに対し、レーダAのカバー範囲に入る(レーダBのカバー範囲から到来する)インバウンド航空機は、他のレーダであるレーダBがロックを中止した場合にのみ、レーダAの局から視認される。レーダA及びB間にカバー範囲の重なりがある場合、それは、従って、レーダAのカバー範囲内で発生するため、そのカバー範囲の限界よりも小さい距離で発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】英国特許出願公開第201000946号明細書
【文献】英国特許出願公開第201316553号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
II/SIコードにおける競合領域の検出は、従って、
- 航空機が認識される必要のある機器(ADS-B_out)、又は
- インバウンド及びアウトバウンドカバー範囲間の不一致の事後観察のいずれか一方により、先行技術において制限されており、
- 最後に、先行技術は、航空機を検出するためにII/SIコードにおける競合を回避するためのいずれの手段も提供していない。
モードSステーションで用いられる別の標準化されたアプローチは、同じII/SI識別子を用いてレーダをSCNクラスタ(SCNは、監視調整用ネットワークの頭字語である)に連携させることを含み、これには、レーダが、信頼性の高い地上ネットワークを介して共通領域内におけるターゲットの位置を自由に交換できるように、国境を越えた地上インフラストラクチャが必要である。複雑な構造を用いる欠点に加えて、人為的ミスの問題が解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの目的は、特に、先行技術の欠点なしに、近接レーダ間で共有されるII/SIコードに関連する問題を軽減することである。この目的を達成するために、本発明の1つの主題は、二次モードSレーダの近傍のレーダのII/SI識別コードにおける競合を検出するための方法であって、少なくとも、
- 第1のステップであって、前記レーダは、拡張されたレーダカバー範囲の領域において、一方的な非同期応答、即ちフルーツを検出する、第1のステップ、
- 第2のステップであって、前記レーダは、前記レーダ及び少なくとも1つの近接レーダに共通するレーダカバー範囲の地理的領域を分析することにより、II/SIコードにおける競合を検出し、競合は、前記レーダが、
・前記拡張されたレーダカバー範囲のサブ領域において、前記近接レーダをソースとして有する、前記レーダと同じII/SIコードのDF11フルーツの存在を検出し、
・前記近接レーダのレーダカバー範囲の前記領域と重ならない前記レーダのレーダカバー範囲のその領域において、前記近接レーダによって生じるDF11フルーツの欠如を観測する場合に検出され、
前記レーダのレーダカバー範囲と前記近接レーダのレーダカバー範囲との間の重なりの領域は、II/SIコードにおける競合領域を形成する、第2のステップ
を含む方法である。
【0009】
1つの特定の実施形態において、前記方法は、第3のステップであって、前記レーダは、前記競合領域内の前記近接レーダによってロックされたターゲットを検出し、DF4、DF5、DF20又はDF21フルーツの検出は、前記競合領域内のターゲットの存在を示す、前記競合領域内の前記近接レーダによって生じる、第3のステップを含む。
【0010】
前記第1のステップにおいて、前記レーダのUF11オールコール呼掛け信号に応答して、オールコール期間後及びロールコール期間中に同期DF11応答を受信することは、例えば、前記拡張領域において追加の同期応答を提供し、このようにして得られた前記追加の応答は、オールコール期間内に他の同期応答として処理されて、従来のモードSヒットの属性を有するDF11ヒットを構築する。
【0011】
前記ターゲットは、例えば、前記ターゲットのフルーツと、前記近接レーダによって生じるDF11フルーツを生成する前記拡張領域のターゲットのフルーツのそれぞれとの間の時間差の絶対値を利用することにより、前記競合領域の内側の方位角領域内で事前に位置を特定され、前記ターゲットのそれぞれの方位角位置は、既知である。
【0012】
本発明の別の主題は、前記方法を実装することができるレーダである。
【0013】
前記レーダは、例えば、前記レーダによって送信された呼掛け信号に関連する受信期間とは無関係に、非同期モードS応答を連続的に処理するための手段を含む。
【0014】
前記処理手段は、例えば、前記レーダの前記アンテナの前記放射パターンを個別に利用して、
- 前記アンテナを介して受信された全ての前記非同期及び同期応答を検出すること、
- 任意の種類の応答、メッセージのデータを復号し、且つそれらから前記モードSアドレスを抽出すること、
- それぞれの復号された応答をその特性で強化することであって、前記特性は、少なくとも検出時間、検出時の前記アンテナのメインローブの方位角及び前記アンテナ放射パターンを通して受信される強度である、強化すること
を行うことにより、前記非同期応答を検出及び復号する。
【0015】
前記レーダは、例えば、拡張されたカバー範囲の前記領域におけるDF11ヒットの抽出器を含み、DF11ヒットは、それらのモードSアドレスを介したターゲットの位置特定及び識別のみを目的として、運用範囲を越えて抽出される。
【0016】
前記レーダは、例えば、II/SIコードにおける競合を検出し、及びII/SIコードにおける任意の競合領域において前記近接レーダによってロックされたターゲットを検出し、且つその位置を特定するための処理手段を含み、前記手段は、
- フルーツを、同期されたヒットに関連付けること、
- DF11_R2フルーツのソースを地理的に分析することであって、DF11_R2は、DF11フルーツが、そのソースが近接レーダR2である非同期応答であることを意味する、分析すること、
- 前記競合領域において前記レーダによって検出されないターゲットの存在を隔離すること、
- 前記競合領域における前記レーダに関して、前記ターゲットの方位角上の事前の位置特定を評価すること、
- 前記レーダが他の全てのターゲットと同様にその監視機能を継続することを可能にするために、前記ターゲットを距離方向及び方位角方向で検出し、且つその位置を特定すること
を行う。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】先行技術のモードSレーダに関する例示的な概要図である。
【
図2】本発明を実施することができるモードSレーダの例示的な概要図である。
【
図3】本発明による方法を実装するために用いることができるステップの図である。
【
図4】所定の高度における二次レーダの運用範囲及び拡張範囲の図である。
【
図5】2つの二次レーダの範囲の重なりの図である。
【
図6a】基準レーダへの近接レーダの電磁衝突の図である。
【
図6b】逆に近接レーダへの基準レーダの電磁衝突の図である。
【
図7】ターゲットが2つのレーダにより生成する応答に応じた、重なり合う領域の複数のサブ領域への分割の図である。
【
図8】サブ領域によって重なり合う領域においてレーダR1及びR2にターゲットによって送信される応答の図である。
【
図9】サブ領域によって重なり合う領域において送信された応答に応じた、レーダR1のII/SIコードにおける方位角の競合領域の図である。
【
図10a】オールコール(AC)期間の持続時間を増加させることによって達成される、基準レーダの運用範囲外のDF11ヒットの検出の図である。
【
図10b】次の期間と並行して、AC期間の持続時間を増加させることなく達成される、基準レーダの運用範囲外のDF11ヒットの検出の図である。
【
図11】近接レーダに起因するフルーツの非同期性の図である。
【
図12】近接レーダによって生じるフルーツの時間的及び方位角分析を介した、II/SIコードにおける競合領域内のターゲットの検索及び事前の位置特定の図である。
【
図13】基準レーダの動作を中断することなくロックされたターゲットの検出の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
モードSレーダの例示的な概要を示す
図1を参照すると、かかるレーダの原理が想起されるであろう。モードS二次レーダ(トランスポンダとのインターフェースは、ICAOにより、Annex10のVol.4において詳細に定義されている)の原理は、以下を含む。
- 選択的呼掛け信号の送信。
・目的とする受信機、モードSアドレスによって指定された単一のターゲットを示すか、又は
・送信機の識別子を示すかのいずれか一方。
- 選択的応答の受信。
・送信機の識別子、ターゲットの同じモードSアドレスを示すか、又は
・目的とする受信機、インタロゲータの識別子を示すかのいずれか一方。
- その主な内容は、メッセージによって異なる。
〇取得フェーズ(一時的、滑走路閾値)
■DF11:ターゲットのモードSアドレス。
〇ELS(ELSは、基本監視の頭字語である)
■DF4:高度
■DF5:識別(モードA)
〇EHS(EHSは、拡張監視の頭字語である)
■DF20:高度+BDSレジスタ。その数値は、とりわけ、それを呼び出した呼掛け信号を介して認識される。
■DF21:識別(モードA)+BDSレジスタ。その数値は、とりわけ、それを呼び出した呼掛け信号を介して認識される。
【0020】
従来の方法において用いる場合、二次レーダは、同期モードで動作し、即ち呼掛け信号を送信し、それと一致する応答を待ち、これによりターゲットの位置を(方位角及び距離の)測定によって特定し、ターゲットを(そのモードSアドレスを介して)識別することができる。
【0021】
このタスクを効果的に実行するために、レーダには、複数の放射パターン11、12、14、15を有するアンテナ1(
図1)が装備されており、その役割は、以下のような従来のものである。
- ターゲットの同期応答を問い合わせ、検出するための、以下にSUMで示される合計パターン11。
- SUMビーム内のターゲットを細かく位置特定するための、DIFFで示される差分パターン12。
- アンテナに面しているが、メインSUMビーム内に存在しないターゲットからの応答をブロック及び拒否するための、CONT_Frontで示される第1の管制パターン15。
- アンテナの背後にある(従ってメインSUMビーム内に必ずしも存在しない)ターゲットからの応答をブロック及び拒否するための、CONT_backで示される第2の管制パターン14。
【0022】
ミッション及び従ってレーダの期待される性能レベルに応じて、アンテナは、以下を有し得る。
- 複数の放射パターン。
・4つのパターン:SUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Back。
・3つのパターン:SUM、DIFF、CONT(アンテナにおいて共にグループ化されるCONT_Front及びCONT_Back)。
・2つのパターン:SUM、DIFF/CONT(アンテナにおいて共にグループ化されるDIFF、CONT_Front及びCONT_Back)。
- パターンが設定されている寸法。
・幅方向:
〇幅が広く、高いゲインを提供し、方位角的に選択的且つ正確な細いメインビームを得るためのもの。
・高さ方向:
〇大きい高さ(LVAアンテナ、LVAは、大きい垂直開口の頭字語である)を取得し、ゲイン及び地表反射に対する保護(主にATC)を提供するためのもの、又は
〇小さい高さを得るためのもの(移動性を提供するオープンアレイアンテナ)(主にIFFに使用)。
SUM及びDIFFパターンは、従来、2.4°~10°の3dBローブを有する狭いものである一方、CONT_Front及びCONT_Backパターンは、それぞれ実質的に180°をカバーすることが望ましい。
アンテナは、以下の通りであり得る。
- 固定された放射線パターン、即ち回転する「機械的」パターン、又は
- 固定又は回転する可変電子走査パターンを有すること、即ちAESAであること。
【0023】
説明の残りの部分において、最も完全なアンテナ構成、即ち4つの放射パターンを有する回転アンテナについて説明し、他の構成は、採用されるアンテナ放射パターンの数及びアンテナが回転するか又は固定されるかに関わらず、同様に扱われる。しかし、説明を簡略化するために、CONT_Front及びCONT_Backをグループ化したCONTを有する3パターン構成を用いることも可能である。
【0024】
アンテナ1は、4つの放射パターン:SUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Back、又は3つの放射パターン(SUM、DIFF、CONT)、又は2つの放射パターン(SUM、DIFF/CONT)を介して1030MHzで呼掛け信号の放射を送信し、1090MHzで応答を受信する。
【0025】
回転アンテナにおいて、ロータリージョイント2及びアンテナダウンリードは、以下を保証する。
- 4つの放射パターンに対して独立して、1030MHzで送信され、1090MHzで受信される信号のレーダの回転部分と固定部分との間のRF結合。
- アンテナのメインローブの軸の方位角位置201の転送。
【0026】
RF処理ステージは、以下を含む。
- 4つの放射パターンに対して独立して、1030MHzで送信され、1090MHzで受信される信号間のRF結合を保証する送受切換器又はサーキュレータ3。
- 送信機4であって、
・SUMパターンを介して1030MHzで呼掛け信号を送信し、
・CONT_Front及びCONT_Backパターンを介して1030MHzでSUMローブ外側のトランスポンダをブロックし、
・様々な2次プロトコル:IFF、SSR及びモードSの全てに対してこれを実行する送信機4。
- 4つのパターン、SUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Backを介して1090MHzで応答を受信し、様々な2次プロトコル:IFF、SSR及びモードSの角度誤差を計算する受信機5。
【0027】
リアルタイム処理ステージは、以下を含む。
- 様々な二次プロトコル:IFF、SSR及びモードSに対して、呼掛け期間及び関連する受信期間をリアルタイムで管理する時空間マネージャ6。
- 信号プロセッサ7であって、
・様々な二次プロトコル:IFF、SSR及びモードSに対して、呼掛け信号に関連する受信期間内の応答を処理し、
・以下の4つの放射パターンを利用して、アンテナのメインローブにおいて同期された応答を検出し、復号する信号プロセッサ7。
〇SUM:メインローブにおいて受信した応答を検出する。
〇DIFF:メインSUMローブにおいて受信した応答を方位角によって細かく位置特定し、文字化けした応答を復元させる可能性がある。
〇CONT_Front及びCONT_Back:メインSUMローブにおいて検出された場合、サイドSUM及びDIFFローブを介して受信した応答を拒否する。
【0028】
アンテナのメインローブを処理するステージは、以下を含む。
- ローブに存在するターゲットのマネージャ8であって、
・様々な二次プロトコル:IFF、SSR及びモードSに対して、次のローブにおいて実行される(呼掛け信号応答)トランザクションを準備し、
・ローブのIFF、SSR、オールコールモードS及びロールコールモードSの期間を管理し、
・実行されたばかりのトランザクションの状態及びローブに入る任意の新しいインバウンド航空機に応じて、次のロールコール期間内に選択的モードS呼掛け信号及び応答を動的に配置するマネージャ8。
- ローブにおいて受信された同期応答に基づき、呼掛け信号に用いたプロトコルに応じて、様々な二次プロトコル:IFF、SSR及びモードSのそれぞれに対してヒットを生成する抽出器9。
【0029】
マルチ回転処理ステージ10は、以下を含む。
- ターゲット位置(アンテナ交点)を予測し、内部要求、外部要求及び先の回転のトランザクションの状態のためにこれらの位置に関連付けられる実行されるべきタスクを準備するカバー範囲内のターゲットに関して実行されるモードSタスクのマネージャ101。
- (特に偽ヒットの削除及び復号データのチェックによる)性能の向上及びモードSにおける、それだけではないが、主にその将来の位置の予測を目的としてターゲットが追跡されることを保証する、カバー範囲内のターゲットのヒット及び追跡の関連付け102。
【0030】
ユーザインターフェースにより、レーダは、様々な要求を考慮に入れ、ターゲットのヒット及び追跡されるターゲットを確認することが可能となる。
【0031】
モードS二次レーダが動作する方法を想起して、本発明をより詳細に説明する前にその実装原理を以下に説明する。本発明による解決策は、このレーダ、レーダAが受信するか又はむしろII/SIコードの競合の場合にもはや受信しないフルーツを利用することにより、レーダAの環境を分析する。フルーツ(「時間的に同期していない誤った応答」という表現の頭字語)は、レーダによって誘導されない非同期応答である。これらのフルーツは、以下の通りである。
- 同じ空間を共有する別のインタロゲータ(別のレーダ、WAM、TCAS等)によって誘導されるか、又は
- ターゲット自体(ADS-B等)によって自動的に生成されるかのいずれか一方である。
フルーツは、以下によって特徴付けられる。
- ターゲットのモードSアドレス。
- アンテナの放射パターンを介して受信する電力。
- アンテナの方位角。
- その受信のレーダ時間。
【0032】
モードSフルーツは、航空機が他のレーダR2、R3、R4等に送信するメッセージ(様々なダウンリンク形式(DF)のモードS応答)である。メッセージの形式に応じて、後者は、航空機の識別に関する情報を提供し、場合により応答の性質に応じて、航空機が通信している別のレーダ(R2、R3、R4等)の識別に関する情報を提供する。航空機が、フルーツにも存在するそのモードSアドレスを用いてこのレーダR1によって参照されている場合、これにより、レーダR1及びレーダR2のII/SIコードにおける競合が存在する空間領域の位置を地理的分析により略リアルタイムで特定することが可能となる。
【0033】
具体的には、共通のカバー範囲領域を共有する近接レーダR1及びR2によって同じII/SIコードを用いた場合、異なるII/SIコードで運用した場合と比較して環境内のフルーツの分布に不一致が見られる。これらの不一致は、特に以下の通りである。
- RF共通領域(運用領域を越えた領域)内のいずれのターゲットも、2つのレーダR1及びR2が航空機を同じII/SIコードにロックするため、DF11フルーツを生成しない。
- 各レーダR1又はR2のカバー範囲のそれぞれ共通していない領域内のターゲットは、同じII/SIコードのDF11フルーツを生成する。
・各レーダR1、R2は、そのカバー範囲内の航空機を他のレーダと同じII/SIコードにロックする一方、2つのレーダR1、R2のカバー範囲の2つの領域を越える航空機は、2つのレーダR1、R2のII/SIコードを有するDF11フルーツを生成するため。
・それらが2つのレーダのいずれか一方、即ちR1又はR2のいずれによってもロックされなくなったため。
【0034】
この種の完全な分析により、レーダR1及びR2のII/SIコードにおける競合が存在する領域にフラグを付け、R1(及びそれぞれR2)に対して方位角による位置を特定することが可能となる。加えて、共通領域においてレーダR1が以下のフルーツを検出し得る。
- 高度を付与するDF4フルーツ。
- 識別(モードA)を付与するDF5フルーツ。
- 高度及び必要なBDSレジスタを付与するDF20フルーツ。
- 高度及び必要なBDSレジスタを付与するDF21フルーツ。
航空機とのレーダR2のELS(基本監視の頭字語)又はEHS(拡張監視の頭字語)運用モードSトランザクションによって生成される。
- レーダR1が依然として認識していないモードSターゲットを検出することが可能となる。
【0035】
同じレーダR2による他のターゲットのDF11フルーツとのかかるターゲットのDF4/5/20/21フルーツの略同期した生成(時間分析)により、数回転で以下が可能になる。
- 各ターゲットのDF4/5/20/21フルーツがレーダR2により隔離される。
- II/SI競合領域において依然として検出されていない新規ターゲットが、以下によってレーダAの方位角において位置を事前に特定される。
・このターゲットのDF4/5/20/21フルーツと、その位置がR1に認識されている他のターゲットによって生成されるDF11フルーツとの間の時間差に基づく時間分析により、又は
・各アンテナ放射パターン(SUM、DIFF、CONT)を介してフルーツから受信したエネルギーに応じて、レーダR1が各DFxxフルーツに割り当てる署名によって(ADS-B(DF17)スキッタに適用されるこの原理の詳細については、仏国特許出願公開第1800657号明細書を参照されたい)。
【0036】
R2と共通の領域でのII/SIコードの競合により、レーダR1のUF11オールコールに対するDF11応答のための受信は、無意味になるが、それにもかかわらず、より近傍の新規ターゲットの取得に引き続き有用である。従って、このターゲットの位置を距離方向に(より望ましくは方位角上)正確に特定するために、レーダR1は、ターゲットの事前に特定される方位角でのみ、そのオールコール期間を、極めて広い受信範囲にわたってターゲットのモードSアドレスによる第3の選択的呼掛け信号で補完する(このターゲットのフルーツは、同期されていないため、その距離に関する情報は、一切提供されない)。第3のモードS(UF4又はUF5)呼掛け信号を、非選択的(UF11)モードS呼掛け信号及びSSR(MA/MC/M1/M2)呼掛け信号をすでに含む特定のオールコール期間に追加することができ、これは、これらの3つの呼掛け信号が異なるターゲットを対象とし、加えて、関連する同期応答が異なる形式のものであることから、解釈におけるいずれのエラーも防ぐためである。
【0037】
選択的受信ウィンドウの大きさを小さくするために、ターゲットの距離は、ターゲットのフルーツにおいて受信される強度に基づいて評価され得る。この目的を達成するために、ターゲットから受信した各フルーツについて、後者の方位角が特定されると、ターゲットの距離は、受信したフルーツの方位角におけるアンテナ利得を考慮しながら、計算によって推定される。これにより特にレーダR2によってR1のUF11オールコールにロックされている場合でも、略リアルタイムでターゲットを取得し、正確に位置を特定し、次いでこれらのターゲットをロールコール(RC)期間内の選択的トランザクションを介して他の全てのターゲットと同様にその後管理することが可能となる。
【0038】
説明の残りの部分が示すように、本発明は、少なくとも以下の利点を有する。
- 本発明は、II/SIコードを用いて、いずれのレーダモードSターゲットがロックされているかを特定するという概念そのものに基づいており、従ってターゲットがモードSトランスポンダを有し、他の種類の搭載機器(例えば、ADS-Bシステム等)を必要としないという条件で適用可能である。
- 領域内の全てのターゲットのフルーツを分析することにより、II/SIコードにおける競合領域を、ターゲットの数が多くても、(これらの全てのターゲットの位置により)より高い地理的精度で極めて迅速に定義することが可能となる。
- レーダR2とのターゲットのフルーツを分析することにより、前記ターゲットの位置を方位角上で事前に特定することが可能となる。
- 事前に特定された方位角におけるこのターゲットの距離の大きい許容誤差を有するオールコール内の選択的呼掛け信号により、レーダR1の動作性能に悪影響を及ぼすことなく正確に検出することが可能となる。
【0039】
ここで、本発明を実施するために必要な変更と共に
図1に示すモードSレーダの概要を再考する。本発明を実施することができるレーダのこの新規概要を
図2に示す。4つの放射パターンを有するアンテナを有するモードSレーダに適用される、本発明によって追加される主要な構成部品及び処理動作を
図2の太線で示す。
【0040】
モードSレーダの動作は、同期化されているのに対し、本発明によって追加される処理動作は、送信に関連しておらず、アンテナのメインローブの軸の方位角位置のみを利用する。ほとんどの構成要素は、変更されておらず、結果として、
- 本発明は、モードSレーダの運用上の動作に悪影響を及ぼさないだけでなく、
- レーダが採用しているものと同じ以下のような構成要素も用いられている。
・広い意味での航空用に関して:アンテナ、ロータリージョイント、アンテナダウンリード、送受切換器。
・処理に関して:受信機。
これにより、特に同じ航空機からの同期応答及び非同期応答の相関が可能となる。追加される主な機能を以下に説明する。
【0041】
リアルタイム処理ステージにおいて、特に信号の処理において以下を行う。
- 非同期モードS応答の連続処理21の追加(呼掛け信号に関連する受信期間とは無関係)により、4つの放射パターンSUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Backを個別にだけでなく、それらの全てを活用することによって非同期応答の検出及び復号を保証し、
・受信した全ての応答:非同期及び同期応答を検出し、
・任意の形式(DF4/5/11/20/21)の応答、メッセージのデータ及び上記の全てを復号して、それらからモードSアドレスを抽出し、
・復号された各応答を、その特性:検出時間、検出時のアンテナのメインローブの方位角、SUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Backを介して受信した強度で強化する。
- SUM、DIFF及びCONT_Frontを介して測定された強度及びアンテナ方位角による同期応答の強化。
- レーダの運用範囲外の同期応答の検出。
【0042】
メインローブを処理するステージにおいて、運用範囲を越えて生成されたDF11ヒットのモードS抽出器22が追加され、DF11ヒットは、それらのモードSアドレスを介したターゲットの位置特定及び識別を目的として、この範囲を越えて抽出される。
【0043】
マルチ回転処理ステージにおいて、
- II/SIコードにおける任意の競合領域を検出する処理23の追加。
・カバー範囲の同期されたヒット(動作範囲以上)とのフルーツ(非同期応答)の関連付け。
・DF11_R2フルーツのソースの地理的分析(DF11_R2は、DF11フルーツが、そのソースがレーダR2である非同期応答であり、即ちレーダR2によって送信されるオールコールに続いて、R1によって誘導されない非同期応答であることを意味する)。
- II/SIコードにおける競合領域内でR2によってロックされるターゲットの正確な検出及び位置特定23の追加。
・DF4/5/20/21_R2フルーツの解析により、競合領域内でレーダR1によって検出されないターゲットの存在の隔離(DF4/5/20/21_R2は、フルーツがDF4形式、又はDF5形式、又はDF20形式、又はDF21形式であり、レーダR2によって運用管理されるターゲットによって生成されることを意味する)。
・競合におけるカバー領域内のR1に関するその方位角上の事前の位置特定の評価。
・次いで、他の全てのターゲットに関してその監視を継続するための、このターゲットの距離方向及び方位角上の検出及び正確な位置特定。
【0044】
図3は、本発明を実施するための様々なステップを示し、これらのステップは、運用レーダ30によって実行される。後者は、それが担当する(ELS又はEHS)運用カバー範囲の領域を監視する、即ち強化された同期応答を介して、考えられる全てのモードSターゲットを検出及び位置特定するという従来の任務を実行する。レーダによって誘導される同期応答は、方位角上の選択的SUM及びDIFF放射パターンを用いて受信される。本発明が実施する3つの可能性のあるステップを以下に説明する。
【0045】
第1のステップ31は、3つのサブステップSE1、SE2及びSE3を含む。第1のサブステップSE1において、レーダ30は、フルーツを検出する。レーダによって誘導されないこれらの非同期応答は、4つの放射パターンSUM、DIFF、CONT_front及びCONT_backを介して受信される。本発明によれば、レーダによって実行される処理は、特にRF信号及び応答構造の両方の点で同期応答の形式と同一の形式のフルーツを利用する。
【0046】
フルーツを活用するために、依然としてサブステップSE1において、従来のレーダが通常拒絶するこれらの非同期応答を検出及び復号するステージが処理に追加される。これらの非同期応答は、従来の応答属性で制限され、これらの属性は、特に以下の通りである。
- 検出時間。
- フルーツの瞬間におけるアンテナの方位角。
- 送信トランスポンダのモードSアドレス。
- メッセージの内容。
- アンテナの各放射パターンにおけるフルーツの強度。
【0047】
ターゲットからレーダまでの距離に応じて、フルーツは、複数の放射線パターンを介して同時に検出され得る。これらの条件下において、この第1のステップでは、1フルーツ当たり1つの非同期応答メッセージのみが存在することを保証するために複数の検出(同時に検出される)が連結される。この時点において、フルーツのソースを区別することはできず、以下の可能性がある。
- 同じ空間を共有する別のインタロゲータ(別のレーダ、WAM、TCAS等)によって誘導されるか、又は
- ターゲット自体(ADS-B等)によって自動的に生成されるかのいずれか一方であるが、本発明ではこの不測の事態を利用しない。
【0048】
サブステップSE2において、レーダの検出範囲は、II/SIコードの競合領域を定義することが可能な測定領域を作成するために、はるかに大きいか又はその最大の同期検出範囲まで拡張される(運用範囲は、多くの場合、その保証される最大範囲よりも小さくなるようにユーザによって設定されることが公知である)。このようにして得られた追加の同期応答(同じレーダUF11オールコール動作呼掛け信号を有し、従ってレーダの運用上の動作に悪影響を及ぼさない)は、従って、特に以下のような基本モードSヒットの従来の基本属性を有するヒットを生成することを目的として、オールコール(AC)期間内のレーダのカバー範囲の他の同期応答と同様に処理される。
- ヒット中心の検出時間。
- 送信トランスポンダのモードSアドレス。
- ヒット中心の方位角。
- ヒットの距離。
- ヒットが形成された各応答に対して、
・検出時間(従来、50nsのオーダー)。
・アンテナの方位角。
・呼掛け信号の成功又は失敗(応答を受信したか否か)。
・ローブの指示エラー。
・メッセージの内容。
・アンテナの各放射パターン(SUM、DIFF及びCONT_Front)における応答の強度。
【0049】
サブステップSE3において、フルーツは、レーダの拡張されたカバー範囲のモードSヒットに関連付けられる。同期された(DF4/5/11/20/21)応答を生成した選択的呼掛け信号を介して、レーダにより、レーダのカバー範囲の拡張又は運用空間内に位置特定される各ターゲットにより、本発明は、それが以下に関して(ターゲット識別子として用いられるトランスポンダの一意のモードSアドレスに基づいて)生成したフルーツを関連付ける。
- モードSにおいて2つの連続する同期検出(1回転に近い)間、又は
- 例えば、回転に基づいて。
フルーツは、本質的に非同期であるため、フルーツの検出時におけるターゲットの位置は、フルーツの受信時におけるその運用機能の一部としてレーダによって特定されるその軌道に基づいてターゲットの位置を補間することによって特定される。
【0050】
第2のステップ32において、レーダは、2つのレーダ間の様々な地理的領域を分析することにより、II/SIコードにおける潜在的な競合領域を検出し、特徴付ける。この動作は、レーダが、2つのレーダ間の様々な地理的領域に対して以下を分析することによってこの検出及び特性化を実行するサブステップSE4に対応する。
- II/SIコードの競合領域(
図7の領域D1及びD2)の側面に位置する2つの領域D1及びD2内のターゲットのDF11フルーツの存在。
- レーダR2の運用カバー範囲の重複しない領域A(
図7の領域A)におけるターゲットからのDF11フルーツの欠如。
- 領域D1及びD2内のレーダR1のものと同一のフルーツに関連付けられるII/SIコード。
- 領域C(
図7の領域C)内のレーダの運用カバー範囲を越えて同期されたDF11ヒットがないこと。
II/SIコードにおける競合が確認された場合、対象の領域は、問題の修正を目的として、レーダによってATMスーパーバイザに送信される。
【0051】
第3のステップ33は、少なくとも3つのサブステップSE5、SE6及びSE7を含む。このステップにおいて、(ATCに不可欠な)レーダ監視の安全性を保証するために、II/SIコードにおける競合が検出された場合、本発明は、以下を可能にする。
- 競合領域内のレーダによって検出されないターゲットの存在を隔離すること。
- 競合領域内のこのターゲットの方位角上の事前の位置特定を評価すること。
- 他の全てのターゲットと同様にそれを監視することを可能にするために、このターゲットを検出し、距離方向及び方位角上で正確に位置を特定すること。
【0052】
サブステップSE5において、レーダは、競合領域内の検出されていないターゲットの存在を隔離する(II/SIコードにおける競合が検出された場合)。この目的を達成するため、II/Siコードにおける競合領域(
図7の領域B又はC)内の別のレーダR2によってロックされる可能性のあるターゲットの存在を検出するために、レーダは、最初に、捕捉した全てのフルーツの中から、そのモードSアドレスが依然としてR1に認識されていない他のレーダR2に起因するDF4/5/20/21フルーツ(即ちターゲットとの運用上の相互作用中にレーダR2によって生じたフルーツ)を隔離する。従って、そのモードSアドレスによって参照されるターゲット、そのDF4/5/20/21フルーツは、以下の通りである。
- 領域D1及びD2内のR1に認識されるターゲットのDF11_R2フルーツ間で時間的であり、
- 領域D1及びD2のDF11_R2フルーツ間でR1のP回転(例えば、約10回転)にわたって時間的に同期され、
領域B又はC内でロックされる可能性のあるターゲットであり、その特定のフルーツは、この他のレーダR2によって生じる(これらの領域は、以下で定義される)。ターゲットのフルーツとD1及びD2内の各ターゲットのフルーツとの間の同期の基準は、これらのフルーツ間の時間差に関する許容差を考慮に入れ、P回転にわたるD1及びD2内のターゲットの既知の方位角変動並びにR2のローブにおけるその呼掛け信号の未知の位置を考慮する。ターゲットは、異なるレーダによりフルーツを生成するため、この時間的選択により、領域B又はC内のターゲットのR2に起因するもののみを選択することが可能となる。
【0053】
サブステップSE6において、レーダは、方位角上のII/SIコードにおける競合領域内のターゲットの位置を事前に特定する。より正確には、レーダは、分析中のターゲットのフルーツと、領域D1及びD2内の既知のターゲットのフルーツとの間の時間差の絶対値を利用することにより、競合領域内の隔離されたターゲットの方位角上の事前の位置特定を評価する。R2の回転速度が安定したままであり、D1及びD2内のターゲットが回転毎にR1によって方位角及び距離において位置を特定されることを考慮すると、これにより、回転毎に、R1によるフルーツの検出時間を用いて、単純補間に基づく分析によってターゲットの方位角を推定することが可能となり、先行する時間分析のP回転にわたって(又は所望の精度に応じてそれを超えて)行うことが可能となる。回転毎に、ターゲットのフルーツ及びD1又はD2の既知のターゲットのフルーツから構成される各対により、方位角を推定することが可能となる。ターゲットの方位角上の事前の位置特定は、これらの推定値の平均である。
【0054】
サブステップSE7において、本発明は、R1を介して、その後、他の全てのターゲットと同様に監視を継続するために、方位角位置の検出及びR2によってロックされたターゲットの距離の計算を実行する。この目的を達成するために、そのフルーツを介して認識されるこのモードSアドレスに対する追加の選択的呼掛け信号は、(通常、非選択的オールコール呼掛け信号を目的とする)AC期間内に位置決めされ、従ってロールコール(RC)呼掛け信号による既知のターゲットの選択的監視の運用動作は、変更されない。具体的には、このターゲットの距離は、これまでのところ正確にわかっていないため、関連する受信ウィンドウの大きさが大きく、RC期間内で採用された場合、シーケンス時間の約半分を占め、従って管理する他のターゲット(領域A及びB)に悪影響を及ぼす。
【0055】
図3に示すプロセスにおいて、II/SIコードにおける競合を検出するサブステップSE4後、コードにおける競合領域を示す警告タイプの外部宣言39が続き、ATC監視の全体的な安全性を向上させることが可能となる第1の処理ステージ31を形成する。サブステップSE5、SE6及びSE7は、II/SIコードにおける競合が発生した場合でも、レーダ30による監視を保証することを可能にする第2の処理ステージ32を形成し、この監視は、II/SIコードにおける競合領域内の航空機の検出及び位置特定により保証される。
【0056】
上で紹介した本発明の文脈及び段階をここでより詳細に説明する。第1に、二次レーダによって受信したフルーツの文脈が想起されるであろう。これらのフルーツは、常に実際のターゲットによって生成され、主に二次レーダの電磁カバー範囲内のターゲットによって生成される。
【0057】
図4は、XY平面内のレーダの様々な範囲を示す。所定の領域におけるその監視の役割を保証するために、以下においてR1で示す二次レーダのカバー領域41は、通常、99%より高い検出率を保証するために送信マージンを組み込んでいる。この領域41において、1030MHzの感度下限のトランスポンダを装備したターゲットは、モードS呼掛け信号を正しく解釈することができ、1090MHzでの強度下限のトランスポンダは、レーダによって正しく検出され得る。その結果、1030MHzにおける感度及び1090MHzにおける強度の分散により重点を置いた又はその上端にさえあるトランスポンダを有するターゲットは、依然として、この領域41よりもはるかに大きい最大範囲において正しく解釈(従って応答)することができる。従って、ほとんどのターゲットが依然として呼掛け信号に応答することができるより大きい領域42が得られる。加えて、レーダは、1030MHzでの呼掛け信号によって誘導される1090MHzでの同期応答を検出しなければならない。従って、その受信範囲は、多くの場合、実際には最大送信範囲よりもはるかに大きく、先行する領域41、42を包含する受信領域43に通じている。領域42の限界に対応する送信範囲及び領域43の限界に対応する受信範囲は、以下においてそれぞれRange_TX及びRange_RXで示す。対象の二次レーダをR1で示し、これは、領域41の中心に位置し、その送信範囲及び受信範囲は、このレーダR1を基準にしてそれぞれRange_TX1及びRange_RX1で示す。その上、レーダオペレータは、多くの場合、保証された電磁範囲よりも狭い範囲で受信範囲を採用することが多く、従ってロックするターゲットに関して、主にレーダサイトからのターゲットの視認性の限界に起因する理由のため、41よりも小さい半径の運用範囲を採用する。
【0058】
図5は、第2のレーダR2がレーダR1の近傍に位置する2レーダ構成を示す。より正確には、
図5は、2つのレーダ間のカバー領域の重なりを示す。説明の残りの部分で実施する分析は、レーダR1の観点から与えられ、相互分析がレーダR2の観点から可能である。レーダR2は、その送信範囲Range_TX2の限界までR1のカバー範囲内のターゲットに呼掛ける。
【0059】
図6a及び6bは、2つのレーダR1、R2間の衝突領域を示す。
図6aは、領域61に対応するR1へのR2の衝突量を示す。
図6bは、領域62に対応するR2へのR1の衝突を示す。
【0060】
図7に示すように、2つのレーダ間の重なりの領域(ここでは、R2がR1に衝突する場合)は、各レーダがサブ領域のターゲットと交換するメッセージの種類に応じて様々なサブ領域A、B、C、D1/D2、E、F1/F2に分割される。本発明の原理は、仏国特許出願公開第1800914号明細書に記載されている装置と同様に、この種のメッセージの有無を詳細に分析して、これらのサブ領域を方位角により定義することを含む。本発明では、目的は、II/SIコードにおける競合を検出することである。レーダと航空機のトランスポンダとの間で交換される応答の形式は、当業者に公知である。応答の種類は、レーダと、ターゲットが位置するレーダ領域内でレーダに起因するタスクとの両方に依存する。
【0061】
II/SIコードにおいて競合が発生した場合に対象となる領域は、ターゲットがR2のカバー範囲(領域E、C、B)からR1に向かって進入した場合、領域Aの前のR1によって検出されない領域Bであり、これは、領域Bにおいて、R2によってロックされているため、R1のオールコール(DF11)に応答せず、従ってR1が認識されないためである。
【0062】
以下の表1は、異なるII/SIコード(R1の場合にはII1、R2の場合にはII2)を有するモードSレーダの通常動作の例として、所定の領域におけるR1及びR2のそれぞれのタスクをまとめたものである。
【0063】
【0064】
図8は、様々なII/SIコードについて、サブ領域による応答の種類を示す。より具体的には、上記の表1に関して、サブ領域に応じて重なる領域内で交換されるメッセージを示す。R1と同期している応答は、太字で表し、R1と同期していない応答は、太字で表さない。後者は、R2に起因するフルーツである。更に、応答が同期しているか又はフルーツであるかは、それぞれ拡張子S及びFで示す。
【0065】
以下の表2は、両方のレーダによって同じII/SIコードを用いる場合の、所定のサブ領域に属するターゲットに対するR1及びR2のそれぞれのタスクをまとめたものであり、このコードをIIcで示す。
【0066】
【0067】
図9は、同じII/SIコードについて、サブ領域による応答の種類を示す。より具体的には、表2に関して、サブ領域に応じて重なる領域内で交換されるメッセージを示す。太字の文字は、同じII/SIコード(IIc)の場合に消滅するDF11フルーツを示す。太字ではない文字は、依然として存在する同期及び非同期応答を示す。レーダR1及びR2が同じII/SIコード(IIc)を用いた結果、各レーダのオールコールに対するDF11応答の分布は、
図8に対して以下のように変更される。
- サブ領域D1及びD2において、R1と同期され、R2と同期されていない応答が依然として存在し、加えて、それらは、同じコードIIcを用いる。
- サブ領域Aにおいて、カバー範囲又はR1のターゲットは、R2とのいずれのフルーツDF11も生成しない。
- サブ領域Cにおいて、R1のカバー範囲(サブ領域B)から出るターゲットは、R1がそれ以上ロックしなくても、R1のオールコールに応答しなくなる。
【0068】
以下の表3は、R1について、II/SIコードにおける競合がある場合及び競合がない場合のサブ領域間の差異をまとめたものである。
【0069】
【0070】
4つのサブ領域1~4の航空機の空間分布に応じて、基準は、以下を満たす可能性がある。
- 領域D1及びD2:R1ヒットの存在により、R2と同じIIcコードのフルーツが生成される。
- 領域C:領域Bから出るR1のヒットは、R1のオールコール(UF11)に応答しない。
- 領域A:R1のヒットは、R2の識別子であるコードIIcのフルーツを一切生成しない。
- インバウンドヒットは、領域B内のR1に認識されず、領域AのACにのみ表示される:アウトバウンド範囲>インバウンド範囲。
この分析に続いて、レーダR1は、2つの領域D1及びD2間に含まれる方位角領域内でII/SIコードにおける競合があるという推定を考慮し、この領域は、
図9の2つの直線91及び92によって図式的に制限されている。実際には、これら直線の位置は、レーダR1及び以下を通る直線を引くことによって得られる。
- D1において:R1から見て、最大方位角を有する同じコードIIcのフルーツを生成するR1のターゲット。
- D2において:R1から見て、最小方位角を有する同じコードIIcのフルーツを生成するR1のターゲット。
【0071】
レーダ運用カバー範囲外のDF11ヒットの検出を示す
図10a又は
図10bを参照して、II/SIコードにおける競合の方位角を確認するために実行されるフルーツの特定処理をここで説明する。II/SIコードにおける競合の方位角を検出及び定義するために、レーダR1において、レーダの運用上の動作に干渉することなく、2つの領域D1及びD2からの同期応答を処理することが必要である。
【0072】
その運用上の動作において、レーダは、そのカバー範囲(領域A及びB)内の航空機に対する以下の2種類の期間を管理する。
- モードSにおいてインバウンド航空機を検出するためのオールコール(AC)期間。
・モードSレーダビーム管理は、各AC内に一般的なUF11呼掛け信号コールを配置する。
・モードS応答処理は、レーダの運用範囲においてDF11応答を検出する。
・モードS抽出器は、レーダの運用範囲においてDF11モードSヒットを再度構築する。
- モードSにおいて航空機の監視(ELS又はEHS)を保証するためのロールコール(RC)期間。
・モードSレーダビーム管理は、UF4/5/20/21要求を介してACにおいて以前に検出された航空機に対して順に選択的に呼掛ける。
・モードS応答処理は、レーダの運用範囲においてDF4/5/20/21応答を検出する。
・モードS抽出器は、レーダの運用範囲において強化されたモードSヒットを再度構築する。
・次いで、このレーダのオールコール、従ってその識別子、即ちII/SIコードにそれ以上応答しないように、レーダは、RCにおいて取得されたターゲットをロックする。
【0073】
本発明において、非同期応答の処理21におけるモードS機能は、たとえそれらがレーダの運用範囲を越えてから到来したとしても、R1のレーダのAC期間の最後のUF11呼掛け信号の後に受信されるR1のコードII1を有するDF11フルーツの全てを参照する。以下に示されているように、2つのアプローチが可能である。
-
図10aにおいて(AC期間の持続時間の増加)、及び
-
図10bにおいて(同期したDF11応答が受信される期間は、AC期間の外側、RC期間内に位置する)。
両方の解決策により、DF11抽出機能22は、運用カバー範囲外(AC期間の従来の受信フェーズ外)、従って領域D1、C及びD2に対して同期したDF11ヒットを構築することが可能となる。
図10a及び10bは、従って、運用上のAC受信期間外の追加受信フェーズ110を特徴とし(これは、先行技術レーダの動作要件ではない)、このフェーズは、従って、
図10bの場合、レーダの運用上の動作を混乱させない。この追加受信フェーズは、領域42に対して実行される(
図4を参照されたい)。従って、レーダの運用カバー範囲内の同期したDF11応答は、ACにおけるレーダの運用上の動作によって既に利用されているため、この新しい機能22によって処理されないことに留意されたい。
【0074】
DF11応答を受信するこの追加フェーズの期間は、
図10bの場合、次のAC期間前にこの期間と並行して実行されるため、実際にはRC期間の持続時間によってのみ制限される。実際には、RC期間の持続時間は、AC期間の約1.5~2倍であるため、必ず運用範囲の2倍を超える距離からの応答を受信することができる。従って、最大受信範囲は、実際には電磁範囲によってのみ制限される。
【0075】
図11を参照して、ターゲットへの時間的アプローチによる領域B内のターゲットの検索についてここで説明する。この時間的アプローチについて、レーダは、機械的に回転するアンテナであると仮定され、この仮定は、大多数のATCレーダに当てはまる。
図11は、例として、概略図の形式において、共通RFカバー範囲の領域内の全てのターゲットが以下に向かっている場合の先行レーダR1及びR2に対する事例を示す。
- レーダR1の北東。
- レーダR2の南西。
また、(この例において)R2のアンテナの回転周期がR1の約3/4であることも追加で仮定されている。
【0076】
図11は、この共通領域内のターゲットのR1と同期した応答111と、R2と同期した応答112と、R1と同期していない応答113(フルーツ)とを示す。2つのアンテナ回転間の自然な動きのため、R2に起因するフルーツもR1に対して方位角的に同期しておらず、それでも、その後にそれらの方位角を計算することを意図して、フルーツに正確なタイムスタンプを付け得ることがわかる。
【0077】
領域B内において潜在的にR2によってロックされたターゲットの存在を検出するために本発明が用いる原理は、第1に、R1によって捕捉された全てのフルーツの中で、レーダR2に起因するDF4/5/20/21のフルーツを必要とし、後者は、領域B又はC内のターゲットを含むターゲットとの運用上の相互作用中に隔離されるように誘導する。DF4/5/20/21メッセージは、R2の識別子を含まず、ターゲットのモードSアドレスのみを含むため、メッセージを誘導したレーダをそれら自体で識別せず、ターゲットを識別することのみを可能としていることに留意されたい。
【0078】
この隔離を達成するために、
図12に示すように、本発明は、R2のフルーツがアンテナR2のある回転から次の回転まで互いに略同期しているという事実を利用する。先行する分析により、R1は、
図9の例において、R1の南東(R2の南西)の領域D1及びR1の北東(R2の西)のD2において、R2に起因する(その識別子により)DF11フルーツを生成するターゲットの位置を特定することが可能であった。分析の次のステップは、複数の回転にわたり、それらのフルーツを、ターゲットのフルーツ又は領域D1及びD2に関して、これらのターゲットの動きを考慮した場合に略一定のままである時間差を分析することにより、R2のこれらのDF11フルーツと同期するDF4/5/20/21フルーツを検索することを含む(これらのターゲットは、運用カバー範囲外でR1と同期するヒットを生成するため、R1は、この動きを計算し得る)。従って、
- ある回転から次の回転まで、領域D1及びD2のR1に認識されるターゲットのDF11_R2フルーツ間で時間的であり、
- 領域D1及びD2のフルーツDF11_R2間でR1のP回転(約10回転 - 本発明のパラメータ)にわたって時間的に同期する、
これらのDF4/5/20/21フルーツは、領域B及びCに潜在的に存在するターゲットに起因するものであり、R2によって誘導される。
【0079】
図12は、時間軸に沿って、R1の方位角において、スキャンN(scan_Nを参照されたい)から始まるR2のアンテナによる連続スキャンを示し、この図は、領域「R2の南西のD1」から領域「R2の西のD2」まで、従って領域BとCを通るR2のアンテナの通過の連続的な時間的拡大を示す。破線は、拡大部分を強調するために意図的に縮小された時間スケール上のR2の他の方位角へのR2のアンテナの回転の残りの部分を示す。領域「R2の南西のD1」及び「R2の西のD2」において、R2によって誘導されたDF11_R2フルーツを送信するターゲットのみが(黒丸によって)示されている。領域D1及びD2間の中央期間において、R1が捕捉するDF4/5/20/21フルーツは、2種類である。本発明によるレーダは、これらのフルーツをターゲット毎(DF4/5/20/21メッセージにおいて利用可能なモードSアドレス)に分析して、各回転において、2つの領域D1及びD2のDF11_R2フルーツに関するそれらの時間差を特定する。
- 領域B又はC内のターゲットに対してR2によって誘導されるフルーツは、それらが同じレーダによって誘導されるため、R2のDF11フルーツに対して略安定している(太い円で表されるフルーツ)。
- 任意の方位角におけるターゲットに対して他のレーダによって誘導され、R1がそれにもかかわらず全方向性アンテナ(放射パターンCONT)を介して検出するフルーツは、これらのレーダ及びR2のアンテナの回転における差が許容された後、R2のフルーツに関して時間の関数として安定しない(太くなっていない円で表されたフルーツ)。
図12において、P(パラメータ)回転の深さにわたる分析のため、DF11_R2フルーツ(D1の@MS
A及びD2の@MS
B)に関して安定したままである(パラメータ化可能な時間許容差ΔTを有する)モードSアドレスMS1(@MS1)の太い円で表されたターゲットは、領域B又はCにあると考えられる。
図12の分析により、従ってフルーツを相互に関して位置決めすることが可能となる。
【0080】
R1のUF11オールコールに応答せずに、領域Bにあるものとして方位角上に潜在的にロックされるターゲットの位置を事前に特定するには、少なくとも2つの方法:時間差による方位角上の事前の位置特定又はアンテナ放射パターンの使用による方位角上の事前の位置特定を用い得る。
【0081】
方位角上の事前の位置特定について、前のステップにおいて、アドレスMS1(@MS1)のターゲットのフルーツと領域D1及びD2のDF11_R2フルーツとの間の時間差の安定性が、領域B又はCに属するかどうかを隔離するために用いられることに留意されたい。ここで、レーダR1は、DF11_R2フルーツを生成した領域D1及びD2内のターゲットの方位角上の位置をその基準フレームにおいて認識する。
【0082】
領域Dの各ターゲット(@MSA及び@MSB)に対する分析中のターゲット(@MS1)の時間差の絶対値により、ターゲット@MS1の方位角を、先行する分析のP回転の各回転(又は所望の精度に応じてそれを超えて)に関して推定できる。所定の回転におけるターゲット@MS1の方位角上の事前の位置特定は、これらの推定値の平均である。P回転にわたる線形回帰により、方位角を調整し、加えてR1に対するターゲットの角速度を評価することが可能となる。
【0083】
方位角上の事前位置を特定し得、即ちアンテナの放射パターンを用いる他の方法の原理は、特に仏国特許出願公開第1800657号明細書において説明されている。
【0084】
領域B内にある可能性のあるロックされたターゲットが方位角上で位置を特定されると、距離方向にその位置を特定することが残る。前の例の残りの部分において、ターゲット@MS1が考慮される。R1に対して距離方向に位置を特定されるこのターゲット@MS1は、
- 領域Aにはなく、その場合、R1のUF11呼掛け信号に応答したはずだからである。
- 潜在的に領域Bにあり、従ってR1が担当する領域にある(この場合、それを検出しなければならない)。
- 潜在的に領域Cにあり、従ってR1が担当する領域の外側にある(この場合、それを検出する必要はない)。
領域Aの最大距離を超え、領域Bの最小距離より下のターゲット@MS1を検索する必要がある。ターゲット@MS1は、少なくとも以下の2つの方法:
- モードSプロトコルの機能を利用すること、又は
- 領域Bターゲットの選択的呼掛け信号を利用すること
のいずれか一方を用いて検出され、正確に位置決めされ得る。
【0085】
モードSプロトコルは、II/SIコードにおける競合が発生した場合、UF11オールコール呼掛け信号を受信するターゲットのロックを強制的に解除し、ロックされたトランスポンダにUF11要求のII/SIコードに応答するように強制するように準備する。このアプローチは、
- レーダR1が既に認識しており、UF11コールの送信の方位角上にあるか、又は送信アンテナのローブの方位角幅(6°に近いEBW_TX)によってカバーされる、領域A及び領域Bにおけるそれらの全てのターゲットが応答するため、多くのクラッターを生成するだけでなく、
- これらの全てのモードS応答も重なり合うため、常に効果的でもなく、
・ターゲットの数がこの方位角方向において多い場合、又は
・単にターゲットが@MS1に距離的に近い場合でも、
@MS1は、従って、1回目の試行で検出されない可能性が高く、その都度、既に認識されているターゲットから不必要な応答を多数誘導する多数の回転にわたる多数の試行を必要とする。
【0086】
図13に示す他の方法において、既に認識されている領域A又は領域Bにおけるターゲットからの応答を防ぐために、ターゲット@MS1は、事前に位置を特定された方位角において選択的に呼掛けられる。
図13に示すように、モードSアドレスMS1のターゲットに対して選択的である選択的呼掛け信号は、AC期間(通常、非選択的オールコール呼掛け信号を対象としている)内に位置決めされ、従ってロールコールによる既知のターゲットの選択的監視の運用動作を変更する必要がない。
図13の例において、AC期間内に、ターゲットの方位角において、アドレスMS1に対して選択的であるUF4呼掛け信号がAC
m+2期間に追加される(即ちUF11オールコールに追加される)。
【0087】
直前に与えられた本発明の実施の説明に照らして、
図14は、3つのレーダが関与する場合の本発明の原理を示し、より具体的には第2のステップ32及び第3のステップ33(
図3を参照されたい)を示す。考慮される二次レーダは、依然としてレーダR1であるが、ここでは、2つの近接レーダ、レーダR2及びレーダR3が存在する。R2に関して説明した原則は、R3にも適用可能である。レーダR1は、従って、そのカバー領域に存在する可能性のあるオールコールに応答しないターゲットを検出し、これらのターゲットは、II/SIコードにおける競合のためにレーダR2によってロックされる。第1のステップ31において、レーダR1がその範囲を拡張領域42に事前に拡張しており、この領域42内のフルーツを検出していることにより、検出は、以下のように進行する。
- レーダR1は、カバー領域41を越えた拡張領域42において、R1と同じII/SIコードのDF11_R2フルーツ(そのソースは、レーダR2である)を検出する141(サブ領域Dにおける検出)。
- レーダR1は、R2のカバー領域(サブ領域A)と重ならないR1のカバー領域内にDF11_R2フルーツがないことを観測する142。
- レーダR1は、その運用カバー範囲(サブ領域C)を出る航空機からの同期DF11_R1応答がないことを観測する。
これらの条件下において、レーダR1は、上記から、2つのレーダR1及びR2間でII/SIコードにおける競合が存在すること(R2ロック応答)を推定し、これは、サブステップSE4に対応する。その起点が2つのレーダR1及びR2のカバー範囲間の重なりの領域B又はC内のR2であるDF4、DF5、DF20又はDF21フルーツの存在から、レーダR1は、航空機がこの領域B又はCに存在することを推定する143。この見えないターゲットの方位角及び距離は、次いで、上で説明したように特定される。
【符号の説明】
【0088】
1 アンテナ
2 ロータリージョイント
3 サーキュレータ
4 送信機
5 受信機
6 時空間マネージャ
7 信号プロセッサ
8、101 マネージャ
9 抽出器
10 マルチ回転処理ステージ
11、12、14、15 アンテナ放射パターン
21、23 処理手段
22 抽出器
30 レーダ
31 第1のステップ
32 第2のステップ
33 第3のステップ
39 外部宣言
40 カバー領域
42、region_D1、region_D2 サブ領域
43 受信領域
61、62 領域
110 追加の同期応答
111、112、113 応答
201 方位角位置
A、B、C、D1及びD2 地理的領域
R1 二次モードSレーダ
R2 近接レーダ
region_B、region_C 競合領域