(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】コアと1つ以上のスキン領域とを含むコンポジット部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20240124BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
B29C43/34
B29K23:00
(21)【出願番号】P 2020519317
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018077371
(87)【国際公開番号】W WO2019068939
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-07
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505412513
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル アドバンスド マテリアルズ コンポジッツ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Mitsubishi Chemical Advanced Materials Composites AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ベーサー、ブラク
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-025523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0237942(US,A1)
【文献】SARA RONCA,High toughness carbon cloth composites for low temperature applications,AIP CONFERENCE PROCEEDINGS,米国,2016年01月,vol.1736,20018-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア(16)と、前記コアに接合したスキンポリマーから形成された1つ以上のスキン領域(20、22)とを含むコンポジット部品を製造する方法であって、前記スキンポリマーは低摩擦熱可塑性ポリマーであり、
a)加熱可能なモールドキャビティ(4、14)を有するモールドを用意する工程と、
b)複数のアンカー部位(10、28、30、34、36)が設けられた1つ以上の接触領域を備えた表面を有するコア要素(6)を前記モールドキャビティに装填し、それより前またはそれより後に、前記接触領域に隣接して前記アンカー部位を埋める粉末形態の前記スキンポリマーの層(2、12)を前記モールドキャビティに装填する工程と、
c)熱プレス工程を適用し、それにより前記スキンポリマーの粉末が溶融し、溶融したスキンポリマーマトリックス(20、22、32)を形成する工程と、
d)冷却工程を適用し、それにより前記スキンポリマーマトリックスが固化し、前記コアを形成している前記コア要素の前記アンカー部位に機械的に係合したスキン領域を形成する工程と、を備え
、前記コア要素(6)が強化繊維(10)とコア熱可塑性ポリマーからなる熱可塑性フリース(8)とから形成され、前記熱可塑性フリース(8)の多孔性表面構造および/または前記強化繊維(10)の表面部分が前記アンカー部位として作用し、前記熱プレス工程により、前記熱可塑性フリース(8)の前記コア熱可塑性ポリマーが溶融し、それによって前記コア要素(6)が前記コア(16)へと形成される方法。
【請求項2】
前記スキンポリマーが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スキンポリマーの粉末の前記層が、前記コア要素の上および下に適用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スキンポリマーの粉末の前記層がパッチ状に適用される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コア熱可塑性ポリマーがポリプロピレンである、請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スキンポリマーがUHMWPEであり、前記熱プレス工程を、190~230℃の温度で20~60バールの圧力により実施する、請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記強化繊維(10)がガラス繊維である、請求項
1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コア要素(6)が、1つ以上の強化層(24a、24b)をさらに備える、請求項
1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記強化層が、ファブリック、多軸ステッチ、または一方向強化から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
コア(16)と、前記コアに接合したスキンポリマーから形成された1つ以上のスキン領域(20、22、32)とを含むコンポジット部品であって、前記スキンポリマーは低摩擦熱可塑性ポリマーであり、
強化繊維(10)とコア熱可塑性ポリマーからなる熱可塑性フリース(8)とを備える熱可塑性フリース(8)から形成されるコア要素
(6)は、
前記熱可塑性フリース(8)の多孔性表面構造および/または前記強化繊維(10)の表面部分により形成された複数のアンカー部位(10、28、30、34、36)が設けられた1つ以上の接触領域を備えた表面を有し、前記スキン領域は、前記コア要素
(6)の前記アンカー部位に機械的に係合しており、前記スキン領域は、0.5~10mmの厚さを有する、コンポジット部品。
【請求項11】
前記スキンポリマーがUHMWPEである、請求項
10に記載のコンポジット部品。
【請求項12】
前記コアは、前記コアの熱可塑性プラスチックの固体マトリックス(18)と、前記強化繊維(10)とを含み、前記固体マトリックス(18)と前記強化繊維(10)とは、前記スキンポリマーによって埋められたアンカー部位をともに形成する、請求項
10または
11に記載のコンポジット部品。
【請求項13】
前記コアの熱可塑性プラスチックがポリプロピレンである、請求項
12に記載のコンポジット部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアと、コアに接合したスキン熱可塑性ポリマーから形成された1つ以上のスキン領域とを含むコンポジット部品を製造する新規な方法に関する。さらに、本発明は、コア要素と、コア要素に接合したスキン熱可塑性ポリマーから形成された1つ以上のスキン領域とを含むコンポジット部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリエチレンポリマー、すなわち低および高密度ポリエチレンは、特別な強度特性では知られていないワックス状の固体である。それらのポリエチレンポリマーは一般に滑らかであるが、比較的柔らかいため、容易に摩耗する。一方、「UHMWPE」としても知られている超高分子量ポリエチレンは、その不十分な類縁材料とはまったく異なり、特別に強力で耐久性を有するポリマーである。
【0003】
UHMWPEは、ポリエチレン鎖が特別に高い分子量(典型的には、数平均分子量は1.5×106~1×107ダルトン)となり、樹脂粉末として供給される、特別な重合プロセスによって調製される。これらのポリマーを独特なものとしているのは、それらの非常に長いポリマー鎖である。しかし、この同じ特徴が、加工上の大きな問題の原因でもある。非常に高い分子量のポリエチレンを含む通常のポリエチレンでも溶融押出することは可能であるが、この分野での多くの研究にもかかわらず、UHMWPEを溶融押出する試みはほとんど成功していない。事実上、すべてのUHMWPE製品は、圧縮成形またはラム押出によって製造されている。特許文献1によって示されているように、従来の熱可塑性プラスチックに適用可能な加工方法、例えば連続押出、カレンダー加工、および射出成形は、一般にUHMWPEには適用できない。
【0004】
UHMWPEの加工に関連する問題は、部分的にはその結晶溶融温度、おおよそ135℃~150℃を超えるとポリマーがゲル状の性質を示すことによる。通常のポリエチレンは、このような温度では粘稠な糖蜜稠度の液体であるが、UHMWPEは膨潤ゲルであり、非常に粘度が高く、押出機の壁等に対して特別な摩擦応力を及ぼす。UHMWPEに関連する問題は、特許文献2および特許文献3によって、非常に明確に記載されている。それらの文献に記載されている理由から、ラム押出および圧縮成形は、これまで、広く使用されているUHMWPE製品を製造する唯一のプロセスであった。
【0005】
圧縮成形では、UHMWPE粉末を非常に厚い断面の棺様のモールドに導入する。次に、モールドキャビティ内に収まる厚いカバーを粉末の上部に置き、アセンブリ全体を非常に高い圧力に圧縮したまま、結晶溶融温度を超えるまで加熱する。次に、モールドをゆっくりと均一に冷却し、製品(一般に厚いスラブの形態である)を脱型する。理解されるように、圧縮成形は、UHMWPE製品を製造するための、コスト集約型かつ労働集約型の方法である。しかし、この方法は、大きな幅のパネルまたはシートを作製するために使用可能な実質的に唯一のプロセスであり、したがって、依然として多く使用されているプロセスである。
【0006】
非常に低い摩擦係数に起因する高い耐摩耗性および優れた滑り性とは対照的に、UHWMPEは剛性が低く、弾性係数は典型的には500~1000MPaである。したがって、UHMWPEを構造部品として一体的に使用することはできず、ライニングとして適用する必要がある。換言すれば、構造部品は、例えば鋼、木材、または他のポリマーから作製された機械的に高性能な構造から開始し、次に、二次操作によりUHMWPEにライニングされる。
【0007】
強化繊維へのUHMWPEの接着は非常に不十分であるので、UHMWPEは強化繊維を組み込むだけでは強化することができないという点が留意される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,286,576号明細書
【文献】米国特許第3,883,631号明細書
【文献】米国特許第3,887,319号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、機械的に高性能なコアと、UHMWPEまたはコアの面領域に接合した別の低表面エネルギー熱可塑性ポリマーで作製された1つ以上のスキン領域とを含むコンポジット部品を製造する改善された方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、コアと、前記コアに接合したスキンポリマーから形成された1つ以上のスキン領域とを含むコンポジット部品を製造する方法であって、前記スキンポリマーは低表面エネルギー熱可塑性ポリマーであり、
a)加熱可能なモールドキャビティを有するモールドを用意する工程と、
b)複数のアンカー部位が設けられた、1つ以上の接触領域を備えた表面を有するコア要素を前記モールドキャビティに装填し、それより前またはそれより後に、前記接触領域に隣接して前記アンカー部位を埋める粉末形態の前記スキンポリマーの層を前記モールドキャビティに装填する工程と、
c)熱プレス工程を適用し、それにより前記スキンポリマーの粉末が溶融し、溶融したスキンポリマーマトリックスを形成する工程と、
d)冷却工程を適用し、それにより前記スキンポリマーマトリックスが固化し、前記コアを形成している前記コア要素の前記アンカー部位に機械的に係合したスキン領域を形成する工程と、を備える方法が提供される。
【0011】
驚くべきことに、粉末形態のスキンポリマーを適用してポリマー粉末によってアンカー部位を埋めると、スキン領域とコアとの間の機械的結合をはるかに改善させられることが分かった。
【0012】
別の態様によれば、コアと、コアに接合したスキンポリマーから形成された1つ以上のスキン領域とを含むコンポジット部品であって、スキンポリマーは低表面エネルギー熱可塑性ポリマーであり、コア要素は、複数のアンカー部位が設けられた1つ以上の接触領域を備えた表面を有し、スキン領域は、コア要素のアンカー部位に機械的に係合しており、スキン領域は、0.5~10mmの厚さを有する、コンポジット部品が提供される。
【0013】
この方法により、スキン領域の優れた表面特性を有する軽量のコンポジット部品を製造することができる。
本文脈において、「低表面エネルギー熱可塑性ポリマー」という用語は、強化繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維)、に対する接着力が非常に不十分なポリマー、特にUHMWPE、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリクロロトリフルオロエチレン(PCFTE)として理解されるべきであり、したがって、繊維強化は、繊維への十分な接着力を有し、したがって高い機械的性能を提供する異なるポリマーを用いた繊維強化コアを使用することによって提供される。高分子量のUHMWPEもしくはPTFEなどの低表面エネルギーポリマーは、非常に低い流動性を有することが知られている。したがって、本発明によれば、熱プレス工程中に溶融が生じる前に、スキンポリマー粉末を少しずつ加える(trickle)などして表面アンカー部位に投入し、表面アンカー部位を埋めることが重要である。
【0014】
「加熱可能なモールドキャビティを備えたモールド」という用語は、熱可塑性加工の分野で一般的に使用されている最も広い意味で理解されるものとする。特に、モールドは、2つの協働する、実質的に平坦な、またはわずかに曲がったモールド表面を有する非構造化モールドであり得る。下記の理由により、水平に閉じるモールドが好ましいが、原則として、垂直に閉じるモールドの使用を排除するものではない。
【0015】
コア要素の寸法およびモールドキャビティに装填されるスキンポリマーの量は、熱プレス工程を実施し、必要な強化を提供できるようにモールドキャビティの寸法に適当に一致するものであることも理解されよう。
【0016】
本発明によれば、スキン領域が設けられたコア要素は、その外面上に、複数のアンカー部位が設けられた1つ以上の接触領域を有するものとする。このアンカー部位は、スキンポリマーのための機械的繋留ゾーンまたは把持係合ゾーンを提供することを目的としている。スキンポリマーは粉末形態で供給され、良好な結果を得るためには、すべての接触ゾーンが粉末と十分に接触していることを確認する必要がある。特に、スキンポリマー粉末は、アンカー部位によって画定されたキャビティにできるだけ均一かつ完全に進入するものとする。この目的のため、充填されたモールドに振動または揺動を加えることが適切な場合がある。コア要素の上部にわたってスキンポリマー粉末を広げる場合、適切な粉末ディスペンサー手段を使用することが有用である。簡単に言うと、熱プレス工程を実施する前のモールドキャビティの装填には、以下の工程:
-適切な量のスキンポリマー粉末を下部のモールド要素の上面に広げ、それによって粉末床を形成する工程、
-コア要素を粉末床上に置く工程、
-任意選択により、コア要素を振動または揺動させて、コア要素の底部側の任意の接触ゾーンにスキンポリマー粉末を装填する工程、
-コア要素の上面にさらなる適切な量のスキンポリマー粉末を広げる工程、
-任意選択により、コア要素を振動または揺動させて、コア要素の上部側の接触ゾーンの任意のキャビティにスキンポリマー粉末を落下させる工程、
-スキンポリマーを完全に埋め込むことを目的とする、コア要素を取り囲む周辺領域にさらにスキンポリマー粉末を装填する工程、
のいずれかを含めてもよい。
【0017】
スキンポリマー粉末の「適切な量」は、所定の厚さの溶融スキン層の形成が可能になる量である。
モールドキャビティに適切に装填した後、特にスキンポリマー粉末がコア表面のキャビティに進入し、接触ゾーンのアンカー部位を可能な限り密接かつ完全に形成した後、熱プレス工程を適用して、これによりスキンポリマー粉末が溶融して、溶融スキンポリマーマトリックスを形成する。一般的に、このためには、適切な加工温度まで加熱する必要があり、スキン領域全体を効果的に圧縮するために実質的な圧力も必要とする。
【0018】
その後の冷却工程では、溶融スキンポリマーマトリックスを固化させる。次に、コア要素のキャビティおよび凹部に進入したマトリックスの任意の部分が機械的に係合され、したがって、スキン領域およびコアの所望のアンカーを提供する。
【0019】
本文脈において、「コア要素」という用語は、モールドキャビティ内に置かれている初期構造を指すのに使用される。コア要素のタイプに応じて、熱プレス工程においてコア要素の特性および形状が変化する場合と変化しない場合がある。特に、コア要素が、ある種の熱可塑性ポリマー、以降、「コア熱可塑性ポリマー」と呼ぶ、を含む場合、熱プレスにより、スキンポリマーだけでなくコア要素の溶融および再配置がもたらされる。このため、「コア」という用語は、一般に、熱プレス処理前に元々コア要素であった領域を指すのに使用される。コアはコア要素と実質的に同一であってもよく、または元のコア要素の若干変形したバージョンであってもよいことが理解されるであろう。また、コア要素は、熱プレス工程中に主流である条件によってポリマー鎖が分解されない材料および構成のものであることも理解されるであろう。
【0020】
単数形の「コア要素」には、同一平面上にまたは積み重ねられて配置された複数のコア要素である可能性も含まれる。後者の場合、いわゆるスキン領域は、積み重ねられたコア要素の間の領域まで延びる場合がある。
【0021】
有利な実施形態は、従属請求項において定義され、さらに以下の実施例において説明される。
本発明の原理は、粉末形態で入手可能な多くの低表面エネルギーポリマーに適用可能である。特に有利な実施形態によれば、スキンポリマーは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。本文脈において、UHMWPEは、1.5×106~1×107ダルトンの数平均分子量を有すると定義される。UHMWPEには、ASTM D4020-05、D6712-01、およびISO 1 1542-2により定義されたポリマーも含まれる。一般に、実質的にホモポリマーであるが、UHMWPEはまた、限られた量の他の共重合可能なコモノマーを有するコポリマーも含む。コポリマーUHMWPEの場合、前述のASTMおよびISOの要件を満たす必要がある。
【0022】
「スキン」という用語は、その最も広い意味で、内部またはコア構造に接合した表面層を指すものとして理解されるものとする。一実施形態によれば、スキンポリマーの層は、コア要素の片面に、すなわちコア要素の上または下のいずれかに適用される。このような片面構成の場合、最初にコア要素をモールドキャビティに挿入し、次にスキンポリマー粉末を上方からコア要素上に分布させるのが好ましい場合がある。このような構成では、水平に閉じるモールドが有利である。
【0023】
さらなる実施形態によれば、スキンポリマー粉末の層は、サンドイッチ型コンポジット部品を形成するように、コア要素の上および下に適用される。このようにして形成された上部および下部スキン領域は、等しい厚さを有しても有さなくてもよい。
【0024】
さらに別の実施形態によれば、コアは、スキン領域によって完全に取り囲まれ得る。
別の実施形態によれば、スキンポリマー粉末の層はパッチ状に適用される。これには、コアの片側に対し1つのパッチ領域のみ、例えば長方形または正方形のパッチを適用することだけでなく、複数のパッチ領域を適用することも含まれる。このような実施形態の場合、適切に配置された接触領域だけでコア要素を構成することが可能である。あるいは、コア要素の面全体または表面全体を接触領域として構成してもよく、その場合、パッチ状のスキン構成を、スキンポリマーを適切に局所化して適用することによって決定する。
【0025】
特に有利な実施形態によれば、コア要素は、強化繊維を備える熱可塑性フリースから形成されており、熱可塑性フリースはコア熱可塑性ポリマーからなる。繊維強化熱可塑性フリース材料は、特に有利な構造特性を有する軽量フォーム部品を製造するために、マニホールド技術分野において広く使用されている。本発明の文脈において、熱可塑性フリース、またタイプに応じては、その中に組み込まれた強化繊維も、突出した熱可塑性および/または強化繊維部分と、それらの間の空いているまたは多孔性領域とを有する不規則な表面領域を設けている。突出部分は、熱可塑性繊維または強化繊維の末端部分であり得るが、それらはまた、長い繊維要素のループ状の突出セクションであり得る。いずれの場合でも、熱プレス工程により、スキンポリマーとコア熱可塑性ポリマーの両方が溶融し、それによってコア要素がコアに形成される。最初にスキンポリマー粉末で充填された任意の表面キャビティは、強化繊維部分に対してトラップされ、溶融コア熱可塑性ポリマーの指状の領域に埋め込まれた溶融スキンポリマーで充填される。その後の冷却により、固化したスキンポリマーとコア熱可塑性ポリマーとの複雑に結合した境界領域が形成される。
【0026】
コア熱可塑性ポリマーは、様々な既知のポリマー、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などから選択することができる。コア熱可塑性ポリマーの溶融温度は、スキンポリマーに適合した温度で行われるプレス加熱が、コア熱可塑性ポリマーの溶融をもたらす程度に、十分に低い必要がある。例えば、PTFEをスキンポリマーとして使用する場合、好適なコアポリマーは、例えばPPS、PEI、およびPEEKであると思われる。UHMWPEをスキンポリマーとして使用する場合、好適なコアポリマーとしては、特にPPが挙げられる。
【0027】
一実施形態によれば、コア熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレン、好ましくはメルトフローインデックスMFI(230℃、2.16kg)が5~500、好ましくは10~200g/10分のポリプロピレンである。
【0028】
さらなる実施形態によれば、スキンポリマーはUHMWPEであり、熱プレス工程は、190~230℃の温度で20~60バールの圧力により実施される。
繊維強化熱可塑性プラスチックの分野においても知られているように、強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維およびバサルト繊維を含むがこれらに限定されない多種多様なものから選択することができる。あるいは、強化繊維を、高融点熱可塑性プラスチック、すなわち、熱プレス工程の加工温度で溶融しない材料から作製してもよい。有利な実施形態によれば、強化繊維はガラス繊維である。
【0029】
繊維強化熱可塑性プラスチックの分野からも知られているように、強化繊維を備える熱可塑性フリースから形成されたコア要素は、構造強化要素を含んでもよい。したがって、一実施形態によれば、コア要素は、1つ以上の強化層をさらに含む。特定の実施形態では、強化層は、ファブリック、多軸ステッチまたは一方向強化から選択される。
【0030】
さらに別の実施形態によれば、コア要素は中実または中空の本体として形成され、アンカー部位は、凹部、リム、またはアンダーカットなどの表面不連続部として構成される。そのような不連続部のサイズは、その上に分散したスキンポリマー粉末が容易に進入できる程度に十分大きい必要がある。本発明のコア要素として好適な本体の例は、単純な板または棒であるが、管などの中空プロファイルでもある。アンカー部位は、適切な表面処理によって形成されてもよく、表面処理としてはサンドブラストまたはガラスビーズブラストを挙げることができる。さらに、コア要素の表面上に好適なカップリング剤、例えばオレフィン系接着剤の薄層などを適用することにより、追加のアンカーを提供してもよい。
【0031】
コンポジット部品の有利な実施形態によれば、コアは、スキンポリマーによって埋められたアンカー部位をともに形成する、コア熱可塑性プラスチックおよび強化繊維の固体マトリックスを含む。
【0032】
本発明の上記および他の特徴および目的、ならびにそれらを達成する方法が、より明らかになり、本発明自体は、本発明の種々の実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1a】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーをコア要素に適用する前の状況を示す図。
【
図1b】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーを適用した後の状況を示し、コア要素の表面構造内に同じものを配置している図。
【
図1c】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、コンポジット部品の左上部のセグメントの拡大部分を含む、熱プレス工程後の状況を示す図。
【
図2a】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーをコア要素に適用する前の状況を示す図。
【
図2b】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーを適用した後の状況を示し、コア要素の表面構造内に同じものを配置している図。
【
図2c】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、コンポジット部品の左上部のセグメントの拡大部分を含む、熱プレス工程後の状況を示す図。
【
図3a】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーをコア要素に適用する前の状況を示す図。
【
図3b】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーを適用した後の状況を示し、コア要素の表面構造内に同じものを配置している図。
【
図3c】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、コンポジット部品の左上部のセグメントの拡大部分を含む、熱プレス工程後の状況を示す図。
【
図4a】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーをコア要素に適用する前の状況を示す図。
【
図4b】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、スキンポリマーを適用した後の状況を示し、コア要素の表面構造内に同じものを配置している図。
【
図4c】本発明の種々の実施形態のコンポジット部品の概略垂直断面図であって、コンポジット部品の左上部のセグメントの拡大部分を含む、熱プレス工程後の状況を示す図。
【
図5】さらなる実施形態のコンポジット部品の垂直断面図。
【
図6】さらなる実施形態のコンポジット部品の垂直断面図。
【
図7】さらなる実施形態のコンポジット部品の垂直断面図。
【
図8】コンポジット部品の一実施形態の写真複写を示す図。
【
図9】
図8のコンポジット部品の縁部領域の拡大断面(顕微鏡写真)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図は必ずしも正確な縮尺で描かれていないことが理解されるであろう。場合によっては、視覚化を容易にするために、相対寸法が実質的に歪んでいる。種々の図における同一のまたは対応する特徴は、一般に同じ参照番号で表す。
【0035】
以下の例では、UHMWPEをスキンポリマーとして使用し、ポリプロピレンをコア熱可塑性ポリマーとして使用し、ガラス繊維を強化繊維として使用した。上記から理解されるように、他の好適な材料を選択してもよい。材料の選択に応じて、温度、および場合によっては熱プレス工程で適用される圧力も、調整する必要があり得る。このためには、系統的に温度および圧力を変化させる一連の小試験を行うのが適切な場合がある。
【0036】
図1の例では、およそ2mmの粉末形態のUHMWPEの第1の層2を、加熱可能なモールドキャビティ(図示せず)の下部モールドプレート4上に均一に分布する。その後に、強化繊維10を含有する熱可塑性フリース8を含む嵩高いマットから形成されたコア要素6、例えば、20~80重量%のランダム配向ポリプロピレン(PP)繊維および80~20重量%のガラス繊維を、スキンポリマー粉末の第1の層2上に置く。その後、およそ2mmの粉末形態のUHMWPEの第2の層12を、コア要素6の上部に均一に分布する。
図1bから理解されるように、この時点で、スキンポリマー粉末の一部が、コア要素の表面近くの領域の種々のPPおよびガラス繊維の間の隙間領域に進入している。
【0037】
次に、このようにして準備された積み重ね配置を、熱プレス工程にかけ、適切な加熱下で、上部モールドプレート14を下部モールドプレート4に対して押しつける。このプロセス中に、UHMWPE粉末はコア要素内にさらに押し込まれ、溶融が起こり、同時に、コア要素のPP繊維も溶融し、嵩高い繊維配置がある程度圧縮される。冷却後、得られたコンポジット部品は、ガラス繊維10と固体PPコアマトリックス18とで構成された中央コア16を含む。固体PPコアマトリックス18は、UWHMPEの固体マトリックスから形成された下部スキン20と上部スキン22との間に積み重ねられている。特に
図1cの拡大断面から分かるように、スキン領域とコア領域の間の境界領域は、固化したPP、固化したUHMWPE、およびガラス繊維部分の幾何学的に絡み合った領域の配置で構成され、したがって種々の層の強力な機械的結合を提供する。
【0038】
同じ原理が、
図2および3の例に適用され、したがって、それぞれの違いについてのみ考察する。
図2の例では、上部スキン層12のみが適用されている。さらに、コア要素6は、PP繊維8およびガラス繊維10に加えて、2つの内部強化層24aおよび24bを含有する。これらの強化層は、例えば、強化ファブリックまたは多軸もしくは一方向強化層から形成することができる。このような強化層は、繊維強化熱可塑性プラスチックの分野において周知である。あるいは、強化のために板状の固体要素を使用することもできる。
【0039】
第1の例と同様に、熱プレス工程によってコンポジット部品が形成され、ここでは、コア16は強化層24aおよび24bを収容する。強化要素のタイプに応じて、溶融PPは強化要素の凹部およびキャビティに押し込まれ、コアマトリックスへの機械的結合を提供する。
【0040】
図3の例は、上部スキン22がコア16の上部表面全体を覆わないという点でのみ
図3の例と異なる。したがって、UHMWPE粉末の上層は、コア要素の一部を覆うパッチ12aとしてのみ適用され、それに応じて、上部スキンはスキンパッチ22aとして形成される。
【0041】
実質的に異なる実施形態を
図4に示す。この場合、コア要素6は、複数の垂直通路28と、板の側面に配備された複数の水平凹部30とを備えた板要素26から構成されている。およそ10mmのUHMWPE粉末の第1層2を適用した後、コア要素6をその上に置き、さらに垂直通路28と水平凹部30を充填するように注意しながらUHMWPE粉末を適用し、上部UHMWPE層12を形成する。熱プレスおよび冷却後、
図5cに示すようなコンポジット部品が形成される。UHMWPEスキン32は、元々挿入されたコア要素6と実質的に同一である固体コア16を完全に取り囲んでいる。UHWMPEスキン32のコア16へのアンカーは、垂直通路28および水平凹部30によって形成された幾何学的構造によって提供される。
【0042】
すでに述べたように、方法およびコンポジット部品の種々の実施形態が可能である。
図5は、パッチのUHMWPEスキンを備えたコンポジット部品の一例を示しており、これは、例えば、コンポジット部品の選択された露出領域22aで低摩擦を提供するような形状にすることができる。
図6に示すように、適切な水平凹部30および垂直アンダーカット34を備える実質的に固体のコア16は、任意選択により、追加の機能要素36を含有することができる。
図7に示すように、コア16は、実質的にコンポジット部品の主平面に沿って配置された複数の管状要素38から形成することができる。スキンマトリックスとコアとの間の機械的繋留は、管状要素38の幾何学的配置によって、ある程度提供される。それにもかかわらず、管状要素の表面に好適な接着剤を塗布することにより、さらなるアンカーを提供することが適切であり得る。
【0043】
図8および9に示されているコンポジット部品は、それぞれ約2mmのスキン厚に圧密化された上部UHMWPEスキン層および下部UHMWPEスキン層を含む。コア層は、GF含有量がおよそ50%で、厚さがそれぞれ約1mmの上部および下部のPP-GFフリースと、その間に挟まれた強化PP-GFファブリック層の積み重ねを含む。25℃から開始して20バールの圧力下で200℃まで上昇する熱プレスを実施し、200℃に達した後、圧力および温度を10分間維持し、続いて20バールの圧力下で200℃から70℃に冷却した。
図8、特に
図9から理解されるように、UHMWPEスキン(
図9の底部)は、PP-GFフリースの種々の突出構造を密接に埋めており、それにより強化材として機能するPP-GFファブリック層に繋留されている。