(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】LCフィルタ配置、及びこのようなLCフィルタ配置を有する電気又は電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 7/075 20060101AFI20240124BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240124BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240124BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20240124BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240124BHJP
H03H 7/01 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H03H7/075 A
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/00 S
H01F27/06 103
H02M7/48 Z
H03H7/01 A
(21)【出願番号】P 2020529671
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2018083230
(87)【国際公開番号】W WO2019120952
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】102017131045.2
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】フリーベ,イェンス
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】実公平5-13059(JP,Y2)
【文献】特開2006-13168(JP,A)
【文献】特開2008-172442(JP,A)
【文献】特開平1-302809(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/04-17/08
H01F27/00
H01F27/06
H01F27/28-27/32
H01F37/00
H01F41/00-41/12
H02M7/48-7/5395
H03H7/00-7/13
H03H7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体トラック(15)を有する回路基板(16)上に取り付けるためのLCフィルタ配置(1)であって、
-第1の入力端子(2a)及び第2の入力端子(2b)を有する入力部と、
-第1の出力端子(3a)及び第2の出力端子(3b)を有する出力部と、
-前記第1の出力端子(3a)を前記第2の出力端子(3b)に接続するフィルタキャパシタ(8)と、
-磁芯(5)と、
-前記磁芯(5)を取り囲んでいる複数の巻線(6.1~6.n)、並びに、第1のチョーク端子(4a)及び第2のチョーク端子(4b)を有するチョーク(4)と、を含むとともに、
〇前記磁芯(5)を少なくとも部分的に取り囲み、それぞれが第1の端部(7.1.a~7.n.a)及び第2の端部(7.1.b~7.n.b)を有する別々の導体セグメント(7.1~7.n)によって、前記巻線(6.1~6.n)がそれぞれ形成され、
〇前記LCフィルタ配置(1)が前記回路基板(16)上に取り付けられた状態にあるときに、前記第1の端部(7.1.a~7.n.a)及び前記第2の端部(7.1.b~7.n.b)がそれぞれ、前記回路基板(16)の導体トラック(15)に電気接続され、
〇互いに対する既定の位置に前記導体セグメント(7.1~7.n)を位置決めするように、且つ、前記磁芯(5)からそれらを電気的に絶縁するように設計されたホルダ(20)に、前記導体セグメント(7.1~7.n)がそれぞれ配置され、
〇導体セグメント(7.1~7.n-1)の前記第2の端部(7.1.b~7.n-1.b)が、隣接した導体セグメント(7.2~7.n)の前記第1の端部(7.2.a~7.n.a)に電気接続され、
〇前記第1のチョーク端子(4a)が、外側の導体セグメント(7.1)の残りの第1の端部(7.1.a)によって形成され、前記第2のチョーク端子(4b)が、さらなる外側の導体セグメント(7.n)の残りの第2の端部(7.n.b)によって形成され、
-前記第1のチョーク端子(4a)が前記第1の入力端子(2a)に電気接続され、前記第2のチョーク端子(4b)が前記第1の出力端子(3a)に電気接続されているLCフィルタ配置(1)において、
前記導体セグメント(7.1~7.n)の互いに対する前記電気接続が、少なくとも1つのタップ(9.1~9.n-1)であって、追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)が接続されている前記少なくとも1つのタップ(9.1~9.n-1)を有しており、
前記導体セグメント(7.1~7.n)がそれぞれ、U字形に対応する屈曲部(14)を含んでおり、
前記導体セグメント(7.1~7.n)がそれぞれ、リング状に曲げられていることで、隣接した導体セグメント(7.1~7.n)の端面が互いに対面するようになっていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)が、以下のモジュール、すなわち、
-キャパシタ(11.1~11.n)、
-キャパシタ(11.1~11.n-1)及び抵抗器(12.1~12.n-1)のうちの少なくとも1つ、又はその組み合わせを含むことを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項3】
請求項1に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)が、以下のモジュール、すなわち、
-キャパシタ(11.1~11.n)、
-キャパシタ(11.1~11.n-1)、抵抗器(12.1~12.n-1)、及びインダクタ(13.1~13.n-1)、並びに、
-キャパシタ(11.1~11.n-1)及び抵抗器(12.1~12.n-1)、
のうちの少なくとも1つ、又はその組み合わせを含むことを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、2つの外側の導体セグメント(7.1、7.n)に加えて、前記導体セグメント(7.1~7.n)の多くが、内側の導体セグメント(7.2)を含むことを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項5】
請求項4に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記導体セグメント(7.1~7.n)の多くが、複数の内側の導体セグメント(7.2~7.n-1)を含むことを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記LCフィルタ配置(1)が、それぞれに追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)が接続されている複数のタップ(9.1~9.n-1)を有することを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記少なくとも1つのタップ(9.1~9.n-1)が、前記追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)を介して前記第2の出力端子(3b)に接続されていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記ホルダ(20)が、前記導体セグメント(7.1~7.n)を互いに平行にガイドするように設計されていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記導体セグメント(7.1~7.n)がそれぞれ、丸形又は矩形断面を有することを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、導体セグメント(7.1~7.n-1)の前記第2の端部(7.1.b~7.n-1.b)、及び隣接した導体セグメント(7.2~7.n)の前記第1の端部(7.2.a~7.n.a)が、同じ前記導体トラック(15)に電気接続されていることで、隣接した導体セグメント(7.1~7.n)の電気接続が、前記回路基板(16)の前記導体トラック(15)を介して引き起こされるようになっていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項11】
請求項10に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記チョーク(4)の前記導体セグメント(7.1~7.n)が、THT(スルーホール技術)プロセスを使用するか、又は、SMD(表面実装デバイス)プロセスを使用して、前記回路基板に接続されていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記磁芯(5)が閉磁路の磁芯(5)によって形成されることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項13】
請求項12に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記磁芯(5)がトーラス又は矩形形状であることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記フィルタキャパシタ(8)が、2つのフィルタキャパシタ(8.1、8.2)の直列接続によって形成されていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項15】
請求項14に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記タップ(9.1~9.2)のうちの少なくとも1つが、さらなるインダクタ(17)を介して、又は、さらなるインダクタ(17)及びさらなるキャパシタ(18)の並列接続を介して、前記フィルタキャパシタ(8.1、8.2)の前記直列接続のセンタータップ(19)に接続されていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項16】
導体トラック(15)を有する回路基板(16)上に取り付けるためのLCフィルタ配置(1)であって、
-第1の入力端子(2a)及び第2の入力端子(2b)を有する入力部と、
-第1の出力端子(3a)及び第2の出力端子(3b)を有する出力部と、
-前記第1の出力端子(3a)を前記第2の出力端子(3b)に接続するフィルタキャパシタ(8)と、
-磁芯(5)と、
-前記磁芯(5)を取り囲んでいる複数の巻線(6.1~6.n)、並びに、第1のチョーク端子(4a)及び第2のチョーク端子(4b)を有するチョーク(4)と、を含むとともに、
〇前記磁芯(5)を少なくとも部分的に取り囲み、それぞれが第1の端部(7.1.a~7.n.a)及び第2の端部(7.1.b~7.n.b)を有する別々の導体セグメント(7.1~7.n)によって、前記巻線(6.1~6.n)がそれぞれ形成され、
〇前記LCフィルタ配置(1)が前記回路基板(16)上に取り付けられた状態にあるときに、前記第1の端部(7.1.a~7.n.a)及び前記第2の端部(7.1.b~7.n.b)がそれぞれ、前記回路基板(16)の導体トラック(15)に電気接続され、
〇互いに対する既定の位置に前記導体セグメント(7.1~7.n)を位置決めするように、且つ、前記磁芯(5)からそれらを電気的に絶縁するように設計されたホルダ(20)に、前記導体セグメント(7.1~7.n)がそれぞれ配置され、
〇導体セグメント(7.1~7.n-1)の前記第2の端部(7.1.b~7.n-1.b)が、隣接した導体セグメント(7.2~7.n)の前記第1の端部(7.2.a~7.n.a)に電気接続され、
〇前記第1のチョーク端子(4a)が、外側の導体セグメント(7.1)の残りの第1の端部(7.1.a)によって形成され、前記第2のチョーク端子(4b)が、さらなる外側の導体セグメント(7.n)の残りの第2の端部(7.n.b)によって形成され、
-前記第1のチョーク端子(4a)が前記第1の入力端子(2a)に電気接続され、前記第2のチョーク端子(4b)が前記第1の出力端子(3a)に電気接続されているLCフィルタ配置(1)において、
前記導体セグメント(7.1~7.n)の互いに対する前記電気接続が、少なくとも1つのタップ(9.1~9.n-1)であって、追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)が接続されている前記少なくとも1つのタップ(9.1~9.n-1)を有しており、
-前記LCフィルタ配置(1)が、前記チョーク(4)と構造的に同一の、前記磁芯(5)を取り囲むさらなるチョーク(21)であって、その第1のチョーク端子(21a)によって前記第2の入力端子(2b)に、及びその第2のチョーク端子(21b)によって前記第2の出力端子(3b)に接続された、さらなるチョーク(21)を有するとともに、
-前記フィルタキャパシタ(8)の接点が、前記チョーク(4)の内
側のタッ
プに接続され、前記フィルタキャパシタ(8)の別の接点が、前記さらなるチョーク(21)の内
側のタッ
プに接続され、且つ、
-前記チョーク(4)のタップ(9.1~9.n-1)が、前記追加のインピーダンス(10.1~10.n-1)を介して、前記さらなるチョーク(21)の対応するタップ(9.1~9.n-1)に接続されていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項17】
請求項16に記載のLCフィルタ配置(1)において、
前記チョーク(4)の内側のタップは前記チョーク(4)の中央のタップ(9.n/2)であり、前記さらなるチョーク(21)の内側のタップは前記さらなるチョーク(21)の中央のタップ(9.n/2)であることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項18】
請求項16
又は17に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記チョーク(4)及び前記さらなるチョーク(21)の巻回方向が、前記LCフィルタ配置(1)がそのフィルタ機能に関してコモンモードのチョークとして設計されるように、互いに対して方向付けされていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項19】
請求項16
又は17に記載のLCフィルタ配置(1)において、前記チョーク(4)及び前記さらなるチョーク(21)
の巻回方向が、前記LCフィルタ配置(1)がそのフィルタ機能に関して差動モードのチョークとして設計されるように、互いに対して方向付けされていることを特徴とするLCフィルタ配置(1)。
【請求項20】
電気又は電子デバイスにおいて、請求項1乃至
19の何れか1項に記載のLCフィルタ配置(1)を有することを特徴とする電気又は電子デバイス。
【請求項21】
請求項20に記載の電気又は電子デバイスにおいて、前記電気又は電子デバイスはインバータ
であることを特徴とする電気又は電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCフィルタ配置、及びこのようなLCフィルタ配置を有する電気又は電子デバイスに関する。LCフィルタ配置とは、ペイロード信号と1つ又は複数の妨害信号との混合物からの望まれていない妨害信号成分を低減、理想的には除去する回路ユニットを意味すると理解されるものとする。ペイロード信号の減衰は、その過程において、可能な限り小さくなければならない。妨害信号を低減又は減衰させる場合、誘導分及び容量分の両方の周波数依存インピーダンスが利用される。LCフィルタ配置は、望ましくないレベルの妨害信号がエネルギー供給グリッドに送給されるのを防ぐために、例えば、出力部でエネルギー供給グリッドに接続された光起電力(PV)インバータの出力部で、正弦波フィルタとして知られるフィルタとして使用される。この場合の本発明によるLCフィルタ配置は、従来のLCフィルタ配置と比較して、そのフィルタ特性に関して特に高い再現性を有する。フィルタ特性はまた、LCフィルタ配置の生産の比較的遅い段階においてさえも、所望のプロファイルに適合させることもでき、本発明によるLCフィルタ配置は生産費用が特に安価である。
【背景技術】
【0002】
電気又は電子デバイスは、一方では、アンテナとして作用するデバイスの構成部品を介して、周囲からの妨害信号を捕捉することができる。しかしながら、他方では、妨害信号はまた、例えば、高周波スイッチング動作が原因で、デバイス自体によって生成される場合もある。妨害信号は、概して望まれておらず、デバイス自体の、又はデバイスに接続しているモジュールの誤作動に結びつく場合がある。したがって、デバイスによる妨害信号の受信及び転送の両方を低減するために、適切な手段が講じられる。例として、エネルギー供給グリッドに接続された光起電力(PV)インバータからの高周波妨害信号の許容される送り込みは、適切な規準によって制限されている。
【0003】
外部妨害信号の捕捉、及び/又はデバイス内に存在する妨害信号の伝播を低減するために、デバイスの入力部又は出力部でLCフィルタを使用することが知られている。しかしながら、特定の周波数範囲における妨害信号の所望の減衰は、多段LCフィルタを使用して初めて実現できる場合が多い。これは、第1に、通常、十年間当たり40dBの単一段のフィルタのフィルタ効果では、当該周波数範囲の妨害信号レベルを所望の程度に減衰させるには十分ではない、という事実が原因である。第2に、常に存在するフィルタチョークの巻線間浮遊キャパシタンスは、限界周波数を超えた周波数以降の、フィルタチョークのフィルタ効果の停滞に結びつく。この場合、妨害信号の高周波数成分が、元々常に存在するフィルタチョークの巻線間浮遊キャパシタンスを介して短絡する。
【0004】
多段LCフィルタは、単一段のLCフィルタのカスケード型の相互接続を含む。それらは通常、構成部品の数が多くなるため、コストが高くなり、占有する設置スペースが大きくなることにより、ここでもまたデバイスのコストに影響を及ぼす。さらなるコスト要因は、複雑な、手動の場合が多い、従来のLCフィルタのチョークの巻回プロセスである。同時に、巻回プロセスは、単に再現性を制限するだけであり、したがって、同じ型の、異なるLCフィルタのフィルタパラメータの公差が大きくなる。一度LCフィルタを設計してしまうと、そのフィルタ効果を後で調節することは困難である。したがって、少なくともこれらの特性に関して最適化されたLCフィルタが望ましい。
【0005】
特許文献米国特許出願公開第2009/0160596A1号明細書は、回路基板と、磁気誘導素子と、絶縁構造と、複数の導電性ワイヤセグメントと、を含む磁気デバイスについて記載している。絶縁構造によって被覆された磁気誘導素子は、回路基板上に配置されている。回路基板は導電性層を有し、コイルループを形成するために、各導電性ワイヤセグメントの2つの端部が導電性層に電気接続されている。
【0006】
特許文献独国特許出願公表第112016002174T5号明細書は、配線パターンが形成されたプリント回路基板と、トロイダル形状のコアを有するチョークコイルと、を有する干渉フィルタを開示している。トロイダル形状のチョークコイルを平面視したときに、ハウジンググランド部が、チョークコイルの中空部と重なるプリント回路基板の位置に形成されている。干渉フィルタは、第1の端子が配線パターンによってハウジンググランド部に接続されているキャパシタをさらに含む。
【0007】
特許文献独国特許出願公開第102016224472A1号明細書は、自動車用の整流器デバイスを開示している。既定のスイッチング周波数で動作可能なスイッチング装置が、整流器デバイスの中間回路に接続されている。複数のフィルタ素子が中間回路内で接続されており、そのそれぞれが、中間回路キャパシタンスを有する。フィルタ素子は、それぞれのフィルタ素子の全周波数応答の最小値が、他のフィルタ素子の全周波数応答のそれぞれの最小値とは異なる周波数間隔内にあるように設計されている。この場合、周波数間隔はそれぞれ、中心周波数として高調波のスイッチング周波数、及びスイッチング周波数に対応する間隔長さを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、独立特許請求項1の前提部に記載のLCフィルタ配置を開示するという目的に基づき、このLCフィルタ配置は、その生産に関して容易に再現可能なフィルタ特性を有する。LCフィルタ配置は、この場合、その生産の比較的遅い段階においてさえも、フィルタ効果を適合させることができるように意図されている。同時に、LCフィルタ配置は、占有する設置スペースが可能な限り小さくなければならず、また、生産費用が特に安価でなければならない。本発明の別の目的は、このようなLCフィルタ配置を有する電気又は電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、独立特許請求項1に記載の特徴を有するLCフィルタ配置により実現される。従属特許請求項2乃至17は、LCフィルタ配置の好適な実施形態を対象としている。特許請求項18は、本発明によるLCフィルタ配置を有する電気又は電子デバイスを対象としている。
【0010】
発明の説明
本発明によるLCフィルタ配置は、導体トラックを有する回路基板上に取り付けるのに適している。この場合のLCフィルタ配置は、
-第1の入力端子及び第2の入力端子を有する入力部と、
-第1の出力端子及び第2の出力端子を有する出力部と、
-第1の出力端子を第2の出力端子に接続するフィルタキャパシタと、
-磁芯と、
-磁芯を取り囲んでいる複数の巻線、並びに第1のチョーク端子及び第2のチョーク端子を有するチョークと、を含む。
この場合の巻線はそれぞれ、磁芯を少なくとも部分的に取り囲み、それぞれが第1の端部及び第2の端部を有する別々の導体セグメントによって形成されている。LCフィルタ配置が回路基板上に取り付けられた状態にあるときに、第1の端部及び第2の端部がそれぞれ、回路基板の導体トラックに電気接続されている。導体セグメントはそれぞれ、電気的に絶縁性の材料を有するホルダであって、互いに対する既定の位置に導体セグメントを位置決めするように、且つ、磁芯からそれらを電気的に絶縁するように設計されたホルダに配置されている。さらに、導体セグメントの第2の端部は、隣接した導体セグメントの第1の端部に電気接続されている。第1のチョーク端子は、外側の導体セグメントの残りの第1の端部によって形成され、一方、第2のチョーク端子は、さらなる外側の導体セグメントの残りの第2の端部によって形成されている。この場合、第1のチョーク端子は、第1の入力端子に電気接続され、第2のチョーク端子は、LCフィルタ配置の第1の出力端子に電気接続されている。LCフィルタ配置は、導体セグメントの互いへの電気配線が、-少なくともLCフィルタ配置が回路基板に取り付けられている状態では-少なくとも1つのタップを有するとともに、追加のインピーダンスがこの少なくとも1つのタップに接続されていることを特徴とする。
【0011】
この場合、一方ではフィルタキャパシタは、第1の出力端子及び第2の出力端子を互いに直接、すなわち、さらなるインピーダンスを介入させずに接続することができる。この場合、フィルタキャパシタは、その接点のうちの1つによって、チョーク出力部に直接接続され、それにより、チョークの外側の巻線に接続されていている。しかしながら、フィルタキャパシタが、第1の出力端子及び第2の出力端子を間接的にのみ、すなわち、フィルタキャパシタと直列に接続されたさらなるインピーダンス、例えば、抵抗器などを介入させて接続することもまた、本発明の範囲内である。フィルタキャパシタは、特に、その接点のうちの1つによって、チョークの内側の巻線に割り当てられたタップに接続させてもまたよい。
【0012】
ホルダが導体セグメントを互いに対して既定の位置に位置決めするように設計されているので、LCフィルタ配置のチョークの巻回特性に関して、したがって、フィルタパラメータに関して高い再現性が確保される。同時に、これにより、高度に再現可能であるだけでなく、単純で安価でもあるLCフィルタ配置の生産が可能になる。具体的には、導体セグメントは、低コストで、高度に自動化された-したがって高スループットの-ホルダに位置決めすることが可能である。導体セグメントが設けられたホルダを回路基板上に取り付けること、したがって、チョークの巻回又はチョーク巻線の完成だけでなく、LCフィルタ配置全体の完成もまた、通常は高度に自動化された回路基板の生産プロセスに問題なく組み込むことができる。これは、特に、導体セグメントの端部の、回路基板の対応する導体トラックへの電気接続にもまた当てはまり、これは、例えば、回路基板の生産プロセスにはいずれにしても存在するはんだ付けプロセスを介して実行することができる。タップ、すなわち、個々の巻線又はそれらの導体セグメントとの電気接点は、導体セグメントの端部の電気接続を通して容易に生み出すことができる。例として、様々な巻線上のこのようなタップ又は複数のこのようなタップは、開始から対応する導体トラックまでの回路基板上に設けることができる。少なくとも1つのインピーダンスは、少なくとも1つのタップに電気接続することができ、このとき、このインピーダンスを介して、フィルタ効果に影響を及ぼすことができ、目的通りに適合させることができる。フィルタ効果を適合させるときには、巻線が磁芯を介して互いに誘導結合されることが非常に重要である。
図2bに関連して示されているように、調節は、例えば、インピーダンス及び関連付けされたタップを適切に選択して、このように行うことができ、これにより、そうしないと元々常に存在するチョークの巻線間浮遊キャパシタンスを著しく低減させ、理想的には、排除するようにさえなっている。フィルタ効果は、LCフィルタ配置の基本設計がすでに確立されてしまった、比較的遅い段階においてさえも、チョークの様々な巻線上に複数のタップを分布させることによって、適合させることができる。例として、タップは、これらのタップをそれぞれインピーダンスの接続に使用することを必ずしも必須とせずに、巻線のすべてに設けることができる。
【0013】
LCフィルタ配置の1つの有利な実施形態では、追加のインピーダンスは、以下のモジュール、すなわち、
-キャパシタ、
-キャパシタ、抵抗器、及び任意選択的に、インダクタの直列接続、並びに、
-キャパシタ及び抵抗器の並列接続、
のうちの少なくとも1つ、又はその組み合わせを有する。この場合、少なくとも1つのタップは、追加のインピーダンスを介して第2の出力端子に好都合に接続されている。
【0014】
LCフィルタ配置の一実施形態では、2つの外側の導体セグメントに加えて、導体セグメントの多くは、少なくとも1つの内側の導体セグメント、特に、複数の内側の導体セグメントを含む。フィルタ配置のチョークは、したがって、2つの(外側の)巻線よりも多くの巻線を有する。このような場合では、LCフィルタ配置は、それぞれに追加のインピーダンスが接続された、複数のタップを有してもまたよい。チョークの2つの導体セグメント間の接続部はそれぞれ、特に、タップを有してもよい。これらのタップのうちの複数、任意に、これらのタップのそれぞれ、この場合にはそれぞれは、追加のインピーダンスを介して、第2の出力端子に接続されてもよい。この実施形態では、内側の隣接した導体セグメントのうちの一部についてだけでなく、内側の隣接した導体セグメントの1つ1つについてもまた、導体セグメントの第2の端部を隣接した導体セグメントの第1の端部に電気接続することができる。具体的には、各場合において、導体セグメントの第1の端部は、それぞれ直前にある導体セグメントの第2の端部に電気接続することができ、導体セグメントの第2の端部は、それぞれ直後にある導体セグメントの第1の端部に電気接続することができる。
【0015】
LCフィルタ配置の一実施形態では、導体セグメントの第2の端部及び後続の隣接した導体セグメントの第1の端部は、それぞれ、同じ導体トラックに、例えば、はんだ付けされて、電気接続されている。この場合、隣接した導体セグメントは、隣接した導体セグメントの端部もまたそこに電気接続されている、回路基板の同じ導体トラックを介して電気接続されている。導体セグメントはそれぞれ、この場合、丸形又は矩形断面を有することができる。導体セグメントはそれぞれ、U字形に対応する2つの突起部分、及びU字形に関連付けされた基部を有する屈曲部を有利に含むことができる。このようなU字形によって、導体セグメントはその周囲の3つの面で磁芯を取り囲むように設計されている。磁芯は第4の面で包囲され、対応する巻線が、回路基板の導体トラックによってこのように完成する。チョークの導体セグメントは、この場合、回路基板の導体トラックに、特に、スルーホール技術(THT:through-hole technology)プロセスとして知られている技術を使用して、はんだ付けして、接続することができる。THTプロセスの一部として、U字形の突起部分に配置された導体セグメントのそれらの端部は、回路基板の対応する穴の中へとガイドされる。導体トラックは、この場合、回路基板の裏側に、チョークの反対側に面して、さもなければ、例えば、多層の回路基板の場合には、回路基板の中心層に配置することができる。
【0016】
U字形の代わりとして、導体セグメントはそれぞれ、リング状の屈曲部を有し、たとえ閉磁路でなくても、その周囲の4つの面で磁芯を取り囲んでもまたよい。リング状屈曲部は、同時に螺旋状のずれを有することができ、これにより、隣接した導体セグメントの端面が互いに対面するようになっている。この場合、表面実装デバイス(SMD:surface mount device)プロセスとして知られている技術を使用して、チョークの導体セグメントを回路基板の導体トラックに接続すること、特に、はんだ付けすることが好都合である。SMDプロセスでは、導体トラックは通常、回路基板のチョークに面する側に、又は、多層の回路基板の場合には特に、回路基板の中心層に配置される。この代わりとして、導体セグメントの端面は、互いに直接対面していてもまたよく、隣接した導体セグメントの電気接続は、対応してずらせた導体トラックによって実現される。
【0017】
LCフィルタ配置の一実施形態では、磁芯は閉磁路の磁芯によって形成されている。この場合の磁芯は、ワンピースで構築すること、すなわち、ただ1つの磁心セグメントだけを含むことができる。しかしながら、この代わりとして、磁芯は、複数の磁心セグメントで構成してもまたよい。磁芯は、1つ又は複数のギャップを有することができる。しかしながら、この代わりとして、ギャップなしで構築してもまたよい。磁芯は、リング状、特に、トーラス又は矩形形状であってもよい。
【0018】
LCフィルタ配置のさらなる実施形態では、ホルダは、導体セグメントを互いに平行にガイドするように設計されている。この場合、導体セグメントは、一方では、それぞれ、それらの全長にわたって互いに平行にガイドされてもよい。これは、例えば、磁芯が真っすぐな、すなわち、曲げられていない磁芯であり、磁芯部及びホルダが、真っすぐな、すなわち曲げられていない磁芯部に配置されているときに当てはまる。しかしながら、この代わりとして、導体セグメントをそれらの長さのごく一部分のみにわたって互いに平行にガイドするように、ホルダを設計することもまた可能である。これは、u字形又はリング状に曲げられた導体セグメントに関連して曲げられた、例えば、リング状の磁芯を有する場合に当てはまる。このような配置では、導体セグメントの(磁芯の内側の周囲及び外側の周囲に位置する)2つの区域だけを、互いに平行にガイドし、その一方で、残りの区域、例えば、U字形に曲げられた区域の基部を、互いに平行に位置合わせ、又はガイドしないことが可能である。
【0019】
一実施形態では、フィルタキャパシタは、ただ1つのフィルタキャパシタだけを有することができる。しかしながら、この代わりとして、フィルタキャパシタが、複数の、特に、2つのフィルタキャパシタの直列接続を含むことが可能である。2つのキャパシタの直列接続を含む場合では、タップのうちの少なくとも1つは、さらなるインダクタを介して、又は、さらなるインダクタ及びさらなるキャパシタの並列接続を介して、フィルタキャパシタの直列接続のセンタータップに接続することができる。これにより、結果として、
図3a及び
図3bにもまた関連して示されているように、LCフィルタ配置を微調整するためのさらなる選択肢が得られる。
【0020】
一実施形態では、LCフィルタ配置はさらなるチョークを有し、さらなるチョークは、特に、チョークと構造的に同一であるとともに、磁芯を取り囲んでいる。この場合のさらなるチョークは、その第1のチョーク端子によって第2の入力端子に接続され、また、第2のチョーク端子によって第2の出力端子に接続されている。この場合、フィルタキャパシタの接点が、チョークの内側、特に、中央タップに接続され、フィルタキャパシタの別の接点が、さらなるチョークの内側、特に、中央タップに接続されている。チョークのタップは、追加のインピーダンスを介して、さらなるチョークの対応するタップにさらに接続されている。任意に、チョークの複数のタップがそれぞれ、追加のインピーダンスを介してさらなるチョークの、一致する該当タップに接続されている。LCフィルタ配置の第1の変形形態では、チョーク及びさらなるチョークの巻回方向は、LCフィルタ配置がそのフィルタ機能に関してコモンモードのチョークとして設計されるように、互いに対して方向付けされている。この変形形態では、第1の入力端子から第1の出力端子に流れる第1の電流が、第1の電流と同期して流れる第2の入力端子から第2の出力端子に流れる第2の電流と協働して、電流によって生成された磁束の建設的な重畳をもたらす。それに応じて、この変形形態により、コモンモード信号の減衰が生じるとともに、LCフィルタ配置はコモンモードのチョークに類似したフィルタ効果を有する。対照的に、第1の入力端子から第1の出力端子に流れる第1の電流が、第1の電流に差動モードで流れる第2の入力端子から第2の出力端子に流れる第2の電流と協働して、電流によって生成された磁束の破壊的な重畳をもたらす。したがって、この配置では、差動モード信号は、減衰の程度が小さくなるか、又は、ほとんど減衰しない。第1の変形形態の代わりとして、実施形態の第2の変形形態では、チョーク及びさらなるチョークの巻回方向は、そのフィルタ機能に関してLCフィルタ配置が差動モードのチョークとして設計されるように、互いに対して方向付けされている。第2の変形形態では、第1の入力端子から第1の出力端子に流れる第1の電流が、第1の電流に差動モードで流れる第2の入力端子から第2の出力端子に流れる第2の電流と協働して、電流によって生成された磁束の建設的な重畳をもたらす。これにより、差動モード信号の減衰が生じる一方で、コモンモード信号は、減衰の程度が小さくなるか、又は、ほとんど減衰しない。
【0021】
本発明による電気又は電子デバイスは、本発明によるLCフィルタ配置を含む。デバイスは、DC電流をグリッドに準拠したAC電流に変換するための、エネルギー供給グリッドに接続することが可能なインバータ、特に、光起電力(PV)インバータとすることができる。本発明によるLCフィルタ配置は、この場合、インバータのグリッド側出力フィルタの少なくとも一部を形成することができる。しかしながら、この代わりとして、又はこれに加えて、インバータのDC側入力フィルタは、本発明によるLCフィルタ配置を有してもまたよい。これにより、LCフィルタ配置に関連してすでに列挙した利点が得られる。
【0022】
以下の本文は、図面に図示されている好適な例示的な実施形態を参照しながら本発明をさらに説明及び記載する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1a】
図1aは、本発明によるLCフィルタ配置を分解した図、及びTHTプロセス用に設計された第1の実施形態における導体トラックを有する、回路基板上のその配置を示す。
【
図1b】
図1bは、第2の実施形態における本発明によるLCフィルタ配置の、SMDプロセス用に設計されたチョークを示す。
【
図2a】
図2aは、第3の実施形態における本発明によるLCフィルタ配置のトポロジの概略的な描写を示す。
【
図2b】
図2bは、
図2aによるLCフィルタ配置の周波数応答のシミュレーション結果を示す。
【
図3a】
図3aは、第4の実施形態における本発明によるLCフィルタ配置のトポロジの概略的な描写を示す。
【
図3b】
図3bは、
図3aによるLCフィルタ配置の周波数応答のシミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1aは、本発明によるLCフィルタ配置1、及び回路基板16上のその配置の第1の実施形態を分解図において概略的に図示する。LCフィルタ配置1は、チョーク4を含み、チョーク4は回路基板16上に取り付けられた状態で複数の(ここでは例として9個の)巻線を有する。巻線はそれぞれ、U字形に曲げられた導体セグメント7.1~7.9を含む。導体セグメント7.1~7.9は、電気的に絶縁性の材料で作られたホルダ20に配置されている。ホルダ20は、この場合、導体セグメント7.1~7.9を互いに平行にガイドし、且つ、それらを固定するように設計されている。ホルダ20は、そこに固定された導体セグメント7.1~7.9とともに、磁芯5に配置されるように設計されている。この目的のために、磁芯5は、例として、曲げられた磁芯部5.1及び曲げられていない磁芯部5.2を有する矩形形状を有する。LCフィルタ配置1を取り付けると、導体セグメント7.1~7.9の第1の端部7.1.a~7.9.a及び第2の端部7.1.b~7.9.bが、回路基板16の対応する穴の中に挿入される。穴はこの場合、回路基板16の裏側に配置された導体トラック15を介して、それぞれペアで互いに接続され、このため、破線形式で示されている。導体セグメント7.1~7.9の端部7.1.a、b~7.9.a、bが、対応する導体トラック15に電気接続(例えば、はんだ付け)されることにより、磁芯5の周りにチョーク4の閉磁路の巻線が得られる。チョーク4の外側の第1の端部7.1.aは、導体トラック15を介してLCフィルタ配置1の第1の入力端子2aに電気接続されている。チョーク4の残りの外側の第2の端部7.9.bは、LCフィルタ配置1の第1の出力端子3aに電気接続されている。第2の入力端子2bは、導体トラック15を介して第2の出力端子3bに接続されている。フィルタキャパシタ8が、回路基板16上に配置され、第1の出力端子3aを(ここでは直接)第2の出力端子3bに接続している。
【0025】
LCフィルタ配置1は、複数のタップ9.2、9.4、9.6を有し、そのそれぞれが、導体トラック15を介して生み出された、2つの対応する導体セグメント7.2と7.3との間、7.4と7.5との間、及び7.6と7.7との間の電気接続部に接続されている。タップ9.4を第2の出力端子3bに接続する、追加のインピーダンス10.4が、タップ9.2、9.4、9.6のうちの1つ(ここでは9.4)に接続されている。追加のインピーダンス10.4は、この場合キャパシタを有し、そのキャパシタンスは、巻線によってLC配置1のフィルタ効果に生じた浮遊キャパシタンスの負の効果を、少なくとも低減するように選択されている。これにより、特に高周波数では、LCフィルタ配置1からの望ましくない妨害信号の減衰が大きくなる。
【0026】
図示されている実施形態のフィルタキャパシタ8は、出力端子3a、3bを直接、さらなるインピーダンスを介入させずに接続しているが、フィルタキャパシタ8を介して出力端子3a、3bを間接的に電気接続させることもまた、本発明の範囲内で可能である。例として、さらなるインピーダンスは、フィルタキャパシタ8と直列に接続することができる。具体的には、フィルタキャパシタ8は、接点のうちの1つによって、チョーク4の内側のタップ9.2~9.8に接続してもまたよい。ただし、この内側のタップ9.2~9.8は、さらなるインピーダンス10.4がそこに接続されているタップ9.4とは異なっていることが条件である。
【0027】
図2は、チョーク4及びさらなるチョーク21の詳細図を示し、それぞれが、LCフィルタ配置1の第2の実施形態の磁芯5に前もって取り付けられている。回路基板16は、わかり易くするためにここには示されていない。チョーク4及びさらなるチョーク21を有するLCフィルタ配置1の第2の実施形態は、LCフィルタ配置1が完全に取り付けられた状態で、チョーク4及びさらなるチョーク21の巻回方向の方向付けに応じて、そのフィルタ効果に関してコモンモードのチョークとして、又は差動モードのチョークとして動作するように、構成されている。
図1aによる実施形態の導体セグメント7.1~7.9は、U字形に曲げられており、したがって、THTプロセスによって回路基板16上に取り付けるのに適しており、その一方で、
図1bによる実施形態の導体セグメント7.1~7.9は、リング状の屈曲部を有する。この場合、導体セグメント7.1~7.9はそれぞれ、完全にではないが、その周囲の4つの面で磁芯5を包囲している。加えて導体セグメント7.1~7.9は、軸方向に螺旋状にずらした屈曲部を有し、それは、端面でそれぞれが互いに対面する、隣接した導体セグメント7.1~7.9の端部をもたらしている。
【0028】
導体セグメント7.1~7.9のこのような配置は、SMDプロセスによって回路基板16上に取り付けるのに適している。SMDプロセスでは、チョーク4、さらなるチョーク21、及び、導体セグメント7.1~7.9の対向する端部7.1.a、b~7.9.a、bを有する磁芯5からなる事前に組み立てられた配置は、回路基板16の対応する導体トラック15に位置決めされる。導体トラック15は、この場合、回路基板16のチョーク4又はさらなるチョーク21に面した表側に配置され、はんだを用いて設けられる。SMDプロセスの間に、はんだが液化して、チョーク4及びさらなるチョーク21の巻線6.1~6.9であって、磁芯5を完全に取り囲む巻線が形成される。隣接した導体セグメント7.1~7.9の相互の電気接続は、ここでは、
図1bによる実施形態におけるように、はんだ及び/又はそれぞれの導体トラック15を介して生み出される。
【0029】
図2aは、本発明によるLCフィルタ配置1の第3の実施形態のトポロジを図示するが、それは、LCフィルタ配置1の電気的特性、特にその周波数応答のシミュレーションの根拠としての役割を果たす。LCフィルタ配置1の第1の入力端子2aは、第1のチョーク端子及び第2のチョーク端子4bを有するチョーク4を介して第1の出力端子3aに接続されている。第1の出力端子3aは、フィルタキャパシタ8を介して第2の出力端子3bに接続されている。第2の入力端子2bは、第2の出力端子3bにさらに電気接続されている。
【0030】
例として示されている例示的な実施形態では、チョーク4は、4つの巻線6.1~6.4を有する。巻線6.1~6.4は、チョーク4が配置されている磁芯5を介して互いに誘導結合されている。巻線6.1~6.4と並列に描写されているのは、それぞれに対応する、元々常に存在するチョーク4の浮遊キャパシタンスCparである。従来のLCフィルタでは、浮遊キャパシタンスCparは、入力端子2a、2b間の高周波信号を不十分な程度にしか減衰する効果がなく、したがって、出力端子3a、3bでは、依然として望ましくないレベルで存在する。
【0031】
例えば、浮遊キャパシタンスCPar及び関連する効果を抑える目的でLCフィルタ配置を微調整するために、LCフィルタ配置1は、連続した巻線6.1~6.4のそれぞれの電気接続用のタップ9.1~9.3を有する。タップ9.1~9.3に接続されているのは、例として、ここではそれぞれがキャパシタの形態での、インピーダンス10.1~10.3であり、それらは、タップ9.1~9.3をそれぞれ第2の出力端子3bに接続している。インピーダンス10.1~10.3を適切に選択することによってLCフィルタ配置1を最適化、及び/又は微調整することが可能である。
【0032】
図2bは、インピーダンス10.1~10.3としての異なるキャパシタンス値についての
図2aのLCフィルタ配置の周波数応答のシミュレーション結果を示す。シミュレーションでは、第1のインピーダンス10.1及び第3のインピーダンス10.3に割り当てられたキャパシタのキャパシタンスは、無視できるほどに小さくなるように選択された。第2のインピーダンス10.2に割り当てられたキャパシタのキャパシタンスだけを、複数の個別のステップにおいて最小値と最大値との間で変動させた。
【0033】
第2のタップ9.2に接続されたキャパシタのキャパシタンス値が小さい場合には、周波数応答は、実際のLC低域通過要素の典型的な周波数応答に依然として対応し、それは、
図2bでは太線で表示された曲線30aによって図示されている。この場合の低周波数での共振の増加は、LCフィルタ配置の事前設定された共振周波数を特徴付けするが、これは、チョーク4のインダクタンス及びフィルタキャパシタ8のキャパシタンスから生じる。周波数が高くなると、チョーク4のインダクタンス及びその浮遊キャパシタンスC
Parに関する第2の共振条件がそこでは満たされているので、共振が減少する。これ以降、入力信号のそれ以上の減衰は存在しない。その代りに、周波数応答は横座標に平行に延びている。
【0034】
第2のタップ9.2に接続されたキャパシタのキャパシタンスが増加するにつれて、最初は共振の減少が、より高い周波数にシフトする。これは、
図2bでは曲線30b、30c及び30dによって図示されている。第2のインピーダンス10.2に割り当てられたキャパシタの特定のキャパシタンス値において、チョーク4の浮遊キャパシタンスC
Parは、ほぼ完全に補償されている。この場合、LCフィルタ配置1はまた、周波数が高いほど減衰も増加しており、それは、
図2bでは曲線30eによって図示されている。第2のタップ9.2に接続されたキャパシタのキャパシタンス値がさらに増加するにつれて、減衰は、高周波数で再び減少し、そこで最初に論じた曲線30aに近づくが、ここでは共振の減少はない。これは、
図2bでは曲線30f、30g、30h及び30iによって示されている。
【0035】
選択されたLCフィルタ配置1の設計、例えば、キャパシタとしてのインピーダンス10.1~10.3の選択は、チョーク4の巻線6.1~6.3の数と同様に、このシミュレーションでは、純粋に例示的なものである。さらなるシミュレーションは、曲線30eによって図示されている周波数応答は、異なるインピーダンス10.1~10.3を選択することによってもまた、少なくともほぼ、実現し得ることを示している。
【0036】
LCフィルタ配置1の重要な利点の1つは、ホルダ20が導体セグメント7.1~7.9を互いに上手くガイドし合い、その結果、チョーク4の特定のジオメトリがかなりの程度まで再現可能である、ということである。特定の型のチョーク4、したがって、LCフィルタ配置1の特定の既定のフィルタ特性も同様に、非常に良好に再現することができ、最小限のばらつきしかない。本発明によるLCフィルタ配置1のフィルタ特性の再現性は、手動で巻回される場合が多いチョーク4を有する従来のLCフィルタ配置を用いる場合よりも著しく良くなる。タップ9.1~9.3があること、及びタップに接続されるインピーダンス10.1~10.3を適切に選択することにより、生産の遅い段階においてさえも、LCフィルタ配置1の周波数応答の望ましくない効果を大部分低減させることが可能である。同じ型の、異なるLCフィルタ配置1の間で小さなずれが残っていても、対応するタップ9.1~9.3でインピーダンス10.1~10.3を目的通りに追加及び/又は変更することによって、容易に調節することができる。この場合、フィルタ特性の高い再現性は、LCフィルタ配置1の比較的単純な生産と特に有利に関連している。これは、
図3aに示されているLCフィルタ配置1の配置にもまた同様に当てはまる。
【0037】
図3aは、第4の実施形態における本発明によるLCフィルタ配置1のトポロジを示す。トポロジは、大部分は、
図2aにすでに示されているLCフィルタ配置1の実施形態に類似しており、この理由により、一致する態様に関しては
図2aの説明を参照する。しかしながら、
図2aに示されている変形形態とは対照的に、
図3aによるLCフィルタ配置1のフィルタキャパシタ8は、ここでは2つのフィルタキャパシタ8.1、8.2の直列接続を有する。2つのフィルタキャパシタ8.1、8.2の直列接続のセンタータップ19は、さらなるインダクタ17及びさらなるキャパシタ18の並列接続を介して、LCフィルタ配置1の第3のタップ9.3に接続されている。
【0038】
図3bは、
図3aに示されているトポロジに従うLCフィルタ配置1のシミュレーション結果を、異なる曲線30a~30gの形で図示する。この場合の曲線はそれぞれ、周波数の関数としてのシミュレーションの周波数応答を再現している。シミュレーションでは、
図2aで論じた配置に従って第1のインピーダンス10.1、及び第3のインピーダンス10.3が選択された。第2のインピーダンス10.2については、
図2bの曲線30eのキャパシタンス値に相当するキャパシタンス値を有するキャパシタが選択された。シミュレーションの間、第1のインピーダンス10.1、第2のインピーダンス10.2、第3のインピーダンス10.3、及びさらなるインダクタ18の値が、一定に保たれた。対照的に、さらなるキャパシタ18のキャパシタンスは、6つの個別のステップにおいて最小値と最大値との間で変動させた。さらなるキャパシタ18のキャパシタンスが増加するにつれて、図示されている曲線40b~40gによる周波数応答がこのように生じる。比較のために、曲線40aは、ここでもまた、タップ9.1~9.3に接続されたインピーダンス10.1~10.3がなく、さらなるインダクタ17がなく、さらなるキャパシタ18がないLCフィルタ配置1の周波数応答を表している。
【0039】
このシミュレーションの意図は、100kHz~1500kHzまでの周波数範囲における減衰が可能な限り大きいLCフィルタ配置1を設計することである。所望の減衰を実現するために、準拠する限界値プロファイルの特徴に応じて、ここでは曲線40b~40gのうちの1つ、又はこの曲線40b~40gに関連付けされた、さらなるキャパシタ18のキャパシタンス値を選択することができる。この場合もまた、特定の型のチョークを有するLCフィルタ配置1のフィルタ特性のばらつきを最小限にするためには、LCフィルタ配置1の生産に関して非常に良好な再現性があるので、有利である。
【符号の説明】
【0040】
1 LCフィルタ配置
2a、2b 入力端子
3a、3b 出力端子
4 チョーク
4a、4b チョーク端子
5 磁芯
5.1 磁芯部
5.2 磁芯部
6.1~6.n 巻線
7.1~7.n 導体セグメント
7.1.a~7.n.a 端部
7.1.b~7.n.b 端部
8、8.1、8.2 フィルタキャパシタ
9.1~9.n-1 タップ
10.1~10.n-1 インピーダンス
11.1~11.n-1 キャパシタ
12.1~12.n-1 抵抗器
13.1~13.n-1 インダクタ
14 区域
15 導体トラック
16 回路基板
17 インダクタ
18 キャパシタ
19 センタータップ
20 ホルダ
21 チョーク
30a~30i 曲線
40a~40f 曲線