IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

特許7425730アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法
<>
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図1
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図2
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図3
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図4
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図5
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図6
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図7
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図8
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図9
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図10
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図11
  • 特許-アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240124BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240124BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240124BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B3/00
B81C1/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020535932
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031730
(87)【国際公開番号】W WO2020032274
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2018151230
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-208578(JP,A)
【文献】特開2016-012042(JP,A)
【文献】特開2013-092744(JP,A)
【文献】特開2010-288435(JP,A)
【文献】特開2009-222900(JP,A)
【文献】特開2017-090638(JP,A)
【文献】特開2015-060105(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126290(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0008401(US,A1)
【文献】特開2008-040460(JP,A)
【文献】特開2008-076570(JP,A)
【文献】特開2012-115981(JP,A)
【文献】特開2005-181394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08 - 26/10
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部を振動させることによって前記第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第2可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がった拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されており、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)は、以下の第1式(1)を満たし、第2式(2)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも大きい、アクチュエータ装置。
【数1】
【数2】
上記式において、ωii=(k/j1/2であり、kは、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、jは、前記第1軸線周りの前記第1可動部の慣性モーメントである。
【請求項2】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第1可動部及び前記第1連結部の少なくとも一方に設けられ、前記第1可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がる拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されており、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)は、以下の第1式(3)を満たし、第2式(4)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも大きい、アクチュエータ装置。
【数3】
【数4】
上記式において、ωio=(k/j1/2であり、ωoo=(k/j1/2であり、kは、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、kは、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数であり、jは、前記第1軸線周りの前記第2可動部の慣性モーメントである。
【請求項3】
前記第2連結部は、前記第1軸線と交差する第2軸線周りに前記第2可動部が揺動可能となるように、前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結している、請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記第2連結部の全長は、前記第1連結部の全長よりも短い、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記第2連結部は、それぞれが前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する複数の部材を有し、
前記複数の部材は、前記第1軸線と交差する方向に沿って並んで配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記複数の部材は、前記第1軸線上に配置された第1部材と、互いの間に前記第1部材を挟むように配置された一対の第2部材と、を含む、請求項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記第2可動部から前記第2連結部を介して前記支持部に延在する配線を更に備え、
前記配線は、前記第1部材を通るように配置されている、請求項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部を振動させることによって前記第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第2可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がった拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されており、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω ,ω (ただしω <ω )は、以下の第2式(6)を満たし、第1式(5)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも小さい、アクチュエータ装置。
【数5】
【数6】
上記式において、ω ii =(k /j 1/2 であり、k は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、j は、前記第1軸線周りの前記第1可動部の慣性モーメントである。
【請求項9】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第1可動部及び前記第1連結部の少なくとも一方に設けられ、前記第1可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がる拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されており、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω ,ω (ただしω <ω )は、以下の第2式(8)を満たし、第1式(7)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも小さい、アクチュエータ装置。
【数7】
【数8】
上記式において、ω io =(k /j 1/2 であり、ω oo =(k /j 1/2 であり、k は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、k は、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数であり、j は、前記第1軸線周りの前記第2可動部の慣性モーメントである。
【請求項10】
前記第2連結部の全長は、前記第1連結部の全長よりも長い、請求項8又は9に記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記第2連結部は、蛇行して延在している、請求項8~10のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項12】
前記支持部、前記第1可動部、前記第2可動部、前記第1連結部及び前記第2連結部は、半導体基板によって構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項13】
前記第1可動部に設けられたセンシング用コイルと、
前記センシング用コイルに接続され、前記第1連結部を介して前記第2可動部に延在する配線と、を更に備え、
前記第1連結部は、半導体材料によって構成されており、
前記配線のうち前記第1連結部上に位置する部分は、前記半導体材料に不純物が拡散された拡散領域によって構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項14】
前記拡散領域は、前記第1連結部から前記第1可動部及び前記第2可動部に延在しており、
前記第1可動部及び前記第2可動部における前記拡散領域の幅は、前記第1連結部における前記拡散領域の幅よりも広い、請求項13に記載のアクチュエータ装置。
【請求項15】
前記配線のうち、前記第1可動部上に位置する部分及び前記第2可動部上に位置する部分は、金属材料によって構成されており、
前記拡散領域と、前記第1可動部上に位置する部分及び前記第2可動部上に位置する部分の各々との接触部分の幅は、前記第1連結部の幅よりも広い、請求項13又は14に記載のアクチュエータ装置。
【請求項16】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部を振動させることによって前記第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第2可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がる拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されている、アクチュエータ装置の製造方法であって、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)が、以下の式(9)を満たし、式(10)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも大きい、アクチュエータ装置の製造方法。
【数9】
【数10】
上記式において、ωii=(k/j1/2であり、kは、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、jは、前記第1軸線周りの前記第1可動部の慣性モーメントである。
【請求項17】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第1可動部及び前記第1連結部の少なくとも一方に設けられ、前記第1可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がる拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されている、アクチュエータ装置の製造方法であって、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)が、以下の式(11)を満たし、式(12)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも大きい、前記アクチュエータ装置を製造する、アクチュエータ装置の製造方法。
【数11】
【数12】
上記式において、ωio=(k/j1/2であり、ωoo=(k/j1/2であり、kは、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、kは、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数であり、jは、前記第1軸線周りの前記第2可動部の慣性モーメントである。
【請求項18】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部を振動させることによって前記第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第2可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がる拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されている、アクチュエータ装置の製造方法であって、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω ,ω (ただしω <ω )が、以下の式(14)を満たし、式(13)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも小さい、アクチュエータ装置の製造方法。
【数13】
【数14】
上記式において、ω ii =(k /j 1/2 であり、k は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、j は、前記第1軸線周りの前記第1可動部の慣性モーメントである。
【請求項19】
支持部と、
第1可動部と、
前記第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、
第1軸線周りに前記第1可動部が揺動可能となるように、前記第1可動部と前記第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、
前記第2可動部と前記支持部とを互いに連結する第2連結部と、
前記第1可動部及び前記第1連結部の少なくとも一方に設けられ、前記第1可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、
前記第1連結部は、前記支持部、前記第1可動部及び前記第2可動部が配置される平面に垂直な方向から見た場合に、前記第1可動部に近づくほど幅が広がる拡幅部を有し、前記拡幅部において前記第1可動部に接続されている、アクチュエータ装置の製造方法であって、
前記第1軸線周りの前記第1可動部及び前記第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω ,ω (ただしω <ω )が、以下の式(16)を満たし、式(15)を満たしておらず、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数よりも小さい、前記アクチュエータ装置を製造する、アクチュエータ装置の製造方法。
【数15】
【数16】
上記式において、ω io =(k /j 1/2 であり、ω oo =(k /j 1/2 であり、k は、前記第1軸線周りの前記第1連結部の捩りばね定数であり、k は、前記第1軸線周りの前記第2連結部の捩りばね定数であり、j は、前記第1軸線周りの前記第2可動部の慣性モーメントである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、アクチュエータ装置、及びアクチュエータ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとして、支持部と、第1可動部と、第1可動部を囲む第2可動部と、第1軸線上において第1可動部と第2可動部とを互いに連結する一対の第1連結部と、第1軸線上において第2可動部と支持部とを互いに連結する一対の第2連結部と、を備えるアクチュエータ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のアクチュエータ装置では、第1可動部に光反射部が設けられており、交流電圧の印加によって第2可動部が第1軸線周りに回転し、それに伴って第1可動部が第1軸線周りに回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-99760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなアクチュエータ装置では、高効率化の観点から、第2可動部の振れ角に対する第1可動部の振れ角の比が大きいことが好ましい。また、上述したようなアクチュエータ装置には、安定的な動作が求められる。
【0005】
本開示の一側面は、高効率かつ安定的な動作を実現することができるアクチュエータ装置、及びそのようなアクチュエータ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るアクチュエータ装置は、支持部と、第1可動部と、第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、第1軸線周りに第1可動部が揺動可能となるように、第1可動部と第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、第2可動部を振動させることによって第1軸線周りに第1可動部が揺動可能となるように、第2可動部と支持部とを互いに連結する第2連結部と、第2可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、第1軸線周りの第1可動部及び第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)は、以下の第1式(1)及び第2式(2)の一方を満たし、他方を満たしていない。
【数1】
【数2】
上記式において、ωii=(k/j1/2であり、kは、第1軸線周りの第1連結部の捩りばね定数であり、jは、第1軸線周りの第1可動部の慣性モーメントである。
【0007】
本開示の一側面に係るアクチュエータ装置は、支持部と、第1可動部と、第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、第1軸線周りに第1可動部が揺動可能となるように、第1可動部と第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、第2可動部と支持部とを互いに連結する第2連結部と、第1可動部及び第1連結部の少なくとも一方に設けられ、第1可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備え、第1軸線周りの第1可動部及び第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)は、以下の第1式(3)及び第2式(4)の一方を満たし、他方を満たしていない。
【数3】
【数4】
上記式において、ωio=(k/j1/2であり、ωoo=(k/j1/2であり、kは、第1軸線周りの第1連結部の捩りばね定数であり、kは、第1軸線周りの第2連結部の捩りばね定数であり、jは、第1軸線周りの第2可動部の慣性モーメントである。
【0008】
これらのアクチュエータ装置では、2つの固有角振動数ω,ωが第1式を満たし、第2式を満たしていない場合、固有角振動数ωで第1可動部及び第2可動部を揺動させることにより、第2可動部の振れ角に対する第1可動部の振れ角の比(以下、「振幅比」という)を5以上とすることができる。一方、2つの固有角振動数ω,ωが第2式を満たし、第1式を満たしていない場合、固有角振動数ωで第1可動部及び第2可動部を揺動させることにより、振幅比を5以上とすることができる。したがって、いずれの場合にも、振幅比を大きく確保することができ、動作を高効率化することができる。更に、第1式及び第2式の一方のみが満たされており、他方は満たされていないことにより、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。よって、これらのアクチュエータ装置によれば、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【0009】
第2連結部は、第1軸線と交差する第2軸線周りに第2可動部が揺動可能となるように、第2可動部と支持部とを互いに連結していてもよい。この場合、第2可動部を第1可動部と共に第2軸線周りに揺動させることができる。
【0010】
2つの固有角振動数は、第1式を満たし、第2式を満たしておらず、第1軸線周りの第2連結部の捩りばね定数は、第1軸線周りの第1連結部の捩りばね定数よりも大きくてもよい。この場合、振幅比を一層大きく確保することができる。
【0011】
第2連結部の全長は、第1連結部の全長よりも短くてもよい。この場合、第2連結部の捩りばね定数を第1連結部の捩りばね定数よりも好適に大きくすることができる。更に、第2連結部の断面積を大きくするのではなく、長さを短くすることによって第2連結部の捩りばね定数を大きくすることにより、アクチュエータ装置の小型化を図りつつ、振幅比を大きく確保することができる。
【0012】
第2連結部は、それぞれが第2可動部と支持部とを互いに連結する複数の部材を有し、複数の部材は、第1軸線と交差する方向に沿って並んで配置されていてもよい。この場合、第2連結部の捩りばね定数を第1連結部の捩りばね定数よりも一層好適に大きくすることができる。
【0013】
複数の部材は、第1軸線上に配置された第1部材と、互いの間に第1部材を挟むように配置された一対の第2部材と、を含んでいてもよい。この場合、第2連結部の捩りばね定数を第1連結部の捩りばね定数よりも一層好適に大きくすることができる。
【0014】
本開示の一側面に係るアクチュエータ装置は、第2可動部から第2連結部を介して支持部に延在する配線を更に備え、配線は、第1部材を通るように配置されていてもよい。この場合、第2部材と比べて第2可動部の振動時に作用する応力が小さい第1部材を通るように配線が配置されているため、第2連結部における配線の劣化を抑制することができる。
【0015】
2つの固有角振動数は、第2式を満たし、第1式を満たしておらず、第1軸線周りの第2連結部の捩りばね定数は、第1軸線周りの第1連結部の捩りばね定数よりも小さくてもよい。この場合、振幅比を一層大きく確保することができる。
【0016】
第2連結部の全長は、第1連結部の全長よりも長くてもよい。この場合、第2連結部の捩りばね定数を第1連結部の捩りばね定数よりも好適に小さくすることができる。
【0017】
第2連結部は、蛇行して延在していてもよい。この場合、第2連結部の捩りばね定数を第1連結部の捩りばね定数よりも一層好適に小さくすることができる。更に、第2連結部が蛇行して延在していることにより、例えば第2連結部が直線状に延在している場合と比べて、耐衝撃性を向上することができる。
【0018】
支持部、第1可動部、第2可動部、第1連結部及び第2連結部は、半導体基板によって構成されていてもよい。このように構成されたアクチュエータ装置においても、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【0019】
本開示の一側面に係るアクチュエータ装置は、第1可動部に設けられたセンシング用コイルと、センシング用コイルに接続され、第1連結部を介して第2可動部に延在する配線と、を更に備え、第1連結部は、半導体材料によって構成されており、配線のうち第1連結部上に位置する部分は、半導体材料に不純物が拡散された拡散領域によって構成されていてもよい。この場合、配線のうち第1連結部上に位置する部分には第1可動部の揺動時に比較的大きな応力が作用するが、当該部分が拡散領域によって構成されているため、第1連結部における配線の劣化を抑制することができる。
【0020】
拡散領域は、第1連結部から第1可動部及び第2可動部に延在しており、第1可動部及び第2可動部における拡散領域の幅は、第1連結部における拡散領域の幅よりも広くてもよい。この場合、配線を低抵抗化することができる。
【0021】
配線のうち、第1可動部上に位置する部分及び第2可動部上に位置する部分は、金属材料によって構成されており、拡散領域と、第1可動部上に位置する部分及び第2可動部上に位置する部分の各々との接触部分の幅は、第1連結部の幅よりも広くてもよい。この場合、配線を一層低抵抗化することができる。また、製造時等に位置ずれが生じたとしても、拡散領域と、第1可動部上に位置する部分及び第2可動部上に位置する部分の各々とを確実に電気的に接続することができる。
【0022】
本開示の一側面に係るアクチュエータ装置の製造方法は、支持部と、第1可動部と、第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、第1軸線周りに第1可動部が揺動可能となるように、第1可動部と第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、第2可動部を振動させることによって第1軸線周りに第1可動部が揺動可能となるように、第2可動部と支持部とを互いに連結する第2連結部と、第2可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備えるアクチュエータ装置の製造方法であって、第1軸線周りの第1可動部及び第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)が、以下の式(5)及び式(6)の一方を満たし、他方を満たさないように、アクチュエータ装置を製造する。
【数5】
【数6】
上記式において、ωii=(k/j1/2であり、kは、第1軸線周りの第1連結部の捩りばね定数であり、jは、第1軸線周りの第1可動部の慣性モーメントである。
【0023】
本開示の一側面に係るアクチュエータ装置の製造方法は、支持部と、第1可動部と、第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、第1軸線周りに第1可動部が揺動可能となるように、第1可動部と第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、第2可動部と支持部とを互いに連結する第2連結部と、第1可動部及び第1連結部の少なくとも一方に設けられ、第1可動部に駆動力を作用させる駆動部と、を備えるアクチュエータ装置の製造方法であって、第1軸線周りの第1可動部及び第2可動部の振動についての2つの固有角振動数ω,ω(ただしω<ω)が、以下の式(7)及び式(8)の一方を満たし、他方を満たさないように、アクチュエータ装置を製造する。
【数7】
【数8】
上記式において、ωio=(k/j1/2であり、ωoo=(k/j1/2であり、kは、第1軸線周りの第1連結部の捩りばね定数であり、kは、第1軸線周りの第2連結部の捩りばね定数であり、jは、第1軸線周りの第2可動部の慣性モーメントである。
【0024】
これらの製造方法により製造されるアクチュエータ装置によれば、上述した理由により、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一側面によれば、高効率かつ安定的な動作を実現することができるアクチュエータ装置、及びそのようなアクチュエータ装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係るミラー装置の平面図である。
図2】第2実施形態に係るミラー装置の平面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4図3のIV-IV線に沿っての断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、入力角振動数と振れ角との関係の例を示す図である。
図6図6(a)は、図5(a)の共振点Aにおける第1可動部及び第2可動部の振れ角の関係の例を示す模式図であり、図6(b)は、図5(a)の共振点Bにおける第1可動部及び第2可動部の振れ角の関係の例を示す模式図である。
図7図7(a)は、例示的なミラー装置の模式平面図であり、図7(b)は、図7(a)のミラー装置の振動モデルを示す図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、外側駆動の場合の数値間の関係を示すグラフである。
図9図9(a)及び図9(b)は、外側駆動の場合の数値間の関係を示すグラフである。
図10図10(a)及び図10(b)は、内側駆動の場合の数値間の関係を示すグラフである。
図11】第1変形例に係るミラー装置の平面図である。
図12】第2変形例に係るミラー装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0028】
図1に示されるように、第1実施形態のミラー装置1Aは、支持部2と、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1連結部5,6と、一対の第2連結部7,8と、磁界発生部9と、を備えている。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、第1連結部5,6及び第2連結部7,8は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板等の半導体基板によって一体的に形成されている。つまり、ミラー装置1Aは、MEMSデバイスとして構成されている。
【0029】
ミラー装置1Aでは、互いに直交するX軸(第1軸線)及びY軸(第1軸線に垂直な第2軸線)の各々の周りに、ミラー面(光学面)10を有する第1可動部3が揺動させられる。ミラー装置1Aは、例えば、光通信用光スイッチ、光スキャナ等に用いられ得る。磁界発生部9は、例えば、ハルバッハ配列がとられた永久磁石等によって構成されている。
【0030】
支持部2は、例えば、平面視において四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。支持部2は、磁界発生部9に対してX軸及びY軸に垂直な方向における一方側に配置されている。第1可動部3は、磁界発生部9から離間した状態で、支持部2の内側に配置されている。なお、「平面視」とは、X軸及びY軸に垂直な方向から見た場合を意味し、換言すれば、支持部2、第1可動部3及び第2可動部4等が配置される平面に垂直な方向から見た場合を意味する。
【0031】
第1可動部3は、本体部3aと、本体部3aを囲む枠部3bと、を有している。本体部3aは、例えば、平面視において楕円形状に形成されている。本体部3aにおける磁界発生部9とは反対側の表面には、例えば、円形状のミラー面10が設けられている。ミラー面10は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、銀、銀系合金、金、誘電体多層膜等からなる反射膜によって構成されている。枠部3bは、例えば、平面視において四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。本体部3aは、Y軸上における両側において枠部3bに接続されている。
【0032】
第2可動部4は、例えば、平面視において八角形状の外形を有し、枠状に形成されている。第2可動部4は、磁界発生部9から離間した状態で、第1可動部3を囲むように支持部2の内側に配置されている。
【0033】
第1連結部5,6は、X軸上における第1可動部3の両側に配置されている。各第1連結部5,6は、第1可動部3がX軸周りに(X軸を中心線として)揺動可能となるように、X軸上において第1可動部3と第2可動部4とを互いに連結している。各第1連結部5,6は、第1可動部3がX軸周りに揺動する際に、X軸周りに捩れ変形する。各第1連結部5,6は、例えば、X軸に沿って直線状に延在している。各第1連結部5,6は、例えば、X軸及びY軸に垂直な平面に沿って延在する板状に形成されている。
【0034】
第1連結部5は、X軸に沿って延在すると共に一定の幅を有する直線状部5aと、直線状部5aの両端に接続された一対の拡幅部5bと、を有している。平面視において、一方の拡幅部5bの幅は、第1可動部3に近づくほど広がっており、他方の拡幅部5bの幅は、第2可動部4に近づくほど広がっている。各拡幅部5bの一対の縁は、互いに向けて凸となるように湾曲している。
【0035】
第1連結部6は、X軸に沿って延在すると共に一定の幅を有する直線状部6aと、直線状部6aの両端に接続された一対の拡幅部6bと、を有している。平面視において、一方の拡幅部6bの幅は、第1可動部3に近づくほど広がっており、他方の拡幅部6bの幅は、第2可動部4に近づくほど広がっている。各拡幅部6bの一対の縁は、互いに向けて凸となるように湾曲している。
【0036】
第2連結部7,8は、Y軸上における第2可動部4の両側に配置されている。各第2連結部7,8は、第2可動部4がY軸周りに(Y軸を中心線として)揺動可能となるように、Y軸上において第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。各第2連結部7,8は、第2可動部4がY軸周りに揺動する際に、Y軸周りに捩れ変形する。各第2連結部7,8は、平面視において蛇行して延在している。各第2連結部7,8は、複数の直線状部11aと、複数の折り返し部11bと、を有している。複数の直線状部11aは、それぞれY軸方向に沿って延在し、X軸方向に並んで配置されている。複数の折り返し部11bは、隣り合う直線状部11aの両端を交互に連結している。
【0037】
X軸周りの各第2連結部7,8の捩りばね定数は、X軸周りの各第1連結部5,6の捩りばね定数よりも小さい。X軸周りの各第1連結部5,6の捩りばね定数とは、X軸周りの各第1連結部5,6の捩れ角度に対する、各第1連結部5,6に作用するX軸周りの捩りモーメントの比である。X軸周りの各第2連結部7,8の捩りばね定数とは、X軸周りの各第2連結部7,8の捩れ角度に対する、各第2連結部7,8に作用するX軸周りの捩りモーメントの比である。
【0038】
各第2連結部7,8の全長は、各第1連結部5,6の全長よりも長い。各第1連結部5,6の全長とは、各第1連結部5,6の延在方向(この例では、X軸に沿った方向)に沿っての全長である。第2連結部7の全長とは、第2連結部7の延在方向に沿っての全長であり、この例では、各直線状部11a及び各折り返し部11bを含む各部分の長さを足し合わせた総長さである。この点は、第2連結部8の全長についても同様である。
【0039】
ミラー装置1Aは、コイル(駆動用コイル)21,22と、複数の配線12,13,14,15と、複数の電極パッド31,32,33,34と、を更に備えている。コイル21は、例えば、第1可動部3の枠部3bに埋め込まれており、平面視において渦巻き状に延在している。コイル22は、例えば、第2可動部4に埋め込まれており、平面視において渦巻き状に延在している。各コイル21,22は、例えば銅等の金属材料によって構成されている。図1では、コイル21,22の配置領域がハッチングで示されている。
【0040】
複数の電極パッド31,32,33,34は、支持部2に設けられ、絶縁層23から外部に露出している。絶縁層23は、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、第1連結部5,6及び第2連結部7,8の表面(磁界発生部9とは反対側の表面)を覆うように一体的に形成されている。絶縁層23は、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン等によって構成されている。
【0041】
配線12は、コイル21の一端と電極パッド31とを電気的に接続している。配線12は、コイル21の一端から第1連結部5、第2可動部4及び第2連結部7を介して電極パッド31に延在している。配線13は、コイル21の他端と電極パッド32とを電気的に接続している。配線13は、コイル21の他端から第1連結部6、第2可動部4及び第2連結部8を介して電極パッド32に延在している。配線12,13のうち、第1連結部5,6を通る部分12a,13aは、例えば、タングステン等の金属材料によって構成されている。配線12,13の他の部分は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、銅等の金属材料によって構成されている。図1では、部分12a,13aがハッチングで示されている。
【0042】
配線14は、コイル22の一端と電極パッド33とを電気的に接続している。配線14は、コイル22の一端から第2連結部7を介して電極パッド33に延在している。配線15は、コイル22の他端と電極パッド34とを電気的に接続している。配線15は、コイル22の他端から第2連結部8を介して電極パッド34に延在している。
【0043】
以上のように構成されたミラー装置1Aでは、電極パッド33,34及び配線14,15を介してコイル22にリニア動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル22にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と第2連結部7,8の弾性力とのつり合いを利用することで、Y軸周りにミラー面10(第1可動部3)を第2可動部4と共にリニア動作させることができる。
【0044】
一方、電極パッド31,32及び配線12,13を介してコイル21に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル21にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、X軸周りにミラー面10(第1可動部3)を共振動作させることができる。すなわち、ミラー装置1Aでは、コイル21と磁界発生部9とによって、第1可動部3に直接的に駆動力(ローレンツ力)を作用させる駆動部が構成されており、コイル22と磁界発生部9とによって、第2可動部4に直接的に駆動力(ローレンツ力)を作用させる駆動部が構成されている。
[第2実施形態]
【0045】
第1実施形態のミラー装置1Aでは、X軸及びY軸の各々の周りに第1可動部3が揺動させられたが、図2に示される第2実施形態のミラー装置1Bでは、X軸周りのみに第1可動部3が揺動させられる。ミラー装置1Bでは、第1可動部3の本体部3aは、平面視において円形状に形成されている。本体部3aは、X軸上における両側及びY軸上における両側において、枠部3bに接続されている。第2可動部4は、平面視において四角形状の外形を有している。
【0046】
第2連結部7,8は、X軸上における第2可動部4の両側に配置されている。第2連結部7,8は、第2可動部4を振動させることによってX軸周りに第1可動部3が揺動可能となるように、X軸上において第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。各第2連結部7,8は、第2可動部4が振動する際に、X軸周りに捩れ変形する。
【0047】
ミラー装置1Bは、コイル21、配線12,13及び電極パッド31,32を備えておらず、コイル22と、コイル(起電力モニタ用コイル、センシング用コイル)24と、複数の配線14,15,16,17と、複数の電極パッド33,34,35,36と、を備えている。コイル24は、例えば、第1可動部3の枠部3bに埋め込まれており、平面視において渦巻き状に延在している。コイル24は、例えば銅等の金属材料によって構成されている。
【0048】
配線16は、コイル24の一端と電極パッド35とを電気的に接続している。配線17は、コイル24の一端から第1連結部5、第2可動部4及び第2連結部7を介して電極パッド35に延在している。配線17は、コイル24の他端と電極パッド36とを電気的に接続している。配線17は、コイル24の他端から第1連結部6、第2可動部4及び第2連結部8を介して電極パッド36に延在している。
【0049】
ミラー装置1Bでは、電極パッド33,34及び配線14,15を介してコイル22に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル22にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、X軸周りにミラー面10(第1可動部3)を共振動作させることができる。具体的には、X軸周りの第1可動部3の共振周波数に等しい周波数の駆動信号がコイル22に入力されると、第2可動部4がX軸周りに当該周波数で僅かに振動する。この振動が第1連結部5,6を介して第1可動部3に伝わることにより、第1可動部3をX軸周りに当該周波数で揺動させることができる。
【0050】
また、ミラー装置1Bでは、第1可動部3の動作中に、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル24に起電力が発生する。そのため、配線16,17を介して電極パッド35,36から出力される信号をモニタすることで、第1可動部3の振れ角、すなわち、ミラー面10の振れ角を把握することができる。このように、コイル24は、起電力モニタ用コイルとして機能する。
【0051】
続いて、図2及び図3を参照しつつ、ミラー装置1Bの各部の構成について更に説明する。以下では、第1連結部5及び第2連結部7の周辺の構造を説明するが、第1連結部6及び第2連結部8についても同様に構成されている。
【0052】
第2連結部7は、第1部材7aと、一対の第2部材7bと、を有している。第1部材7a及び一対の第2部材7bは、それぞれ、X軸に沿って延在し、第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。第1部材7a及び一対の第2部材7bは、例えば、Y軸に平行な方向に沿って並んで配置されている。第1部材7aは、X軸上に配置されており、一対の第2部材7bは、互いの間に第1部材7aを挟むように配置されている。第1部材7a及び一対の第2部材7bは、例えば、互いに近接するように、等間隔に並んで配置されている。第1部材7a及び一対の第2部材7bは、例えば、互いに同一の形状に形成されている。各第2部材7bは、X軸周りの第2可動部4の振動を抑制する振動抑制部として機能する。
【0053】
支持部2には、X軸上に位置する凹部2aが設けられており、第1部材7a及び一対の第2部材7bは、凹部2aにおいて支持部2に接続されている。これにより、第1部材7a及び一対の第2部材7bの長さを確保しつつ、ミラー装置1Bの小型化を図ることができる。
【0054】
X軸周りの第2連結部7の捩りばね定数は、X軸周りの第1連結部5の捩りばね定数よりも小さい。X軸周りの第2連結部7の捩りばね定数とは、第1部材7a及び一対の第2部材7bによって構成される第2連結部7の全体についてのX軸周りの捩りばね定数である。第2連結部7の全長は、第1連結部5の全長よりも短い。例えば、第2連結部7の全長は、第1連結部5の全長の1/2よりも短い。第2連結部7の全長とは、この例では、第1部材7a及び一対の第2部材7bの各々の長さを足し合わせた総長さである。この例では、第1部材7a及び一対の第2部材7bの長さは、互いに等しい。
【0055】
配線16のうち第1連結部5上に位置する部分は、半導体材料に不純物が拡散された拡散領域41によって構成されている。拡散領域41は、例えば、p型のシリコン基板の表面にn型の不純物を拡散することによって形成されている。配線16は、拡散領域41の一方の端部41aとコイル24とを電気的に接続する内側部分16aと、拡散領域41の他方の端部41bとコイル24とを電気的に接続する外側部分16bと、を更に有している。
【0056】
拡散領域41は、第1連結部5から第1可動部3に延在しており、第1可動部3上において内側部分16aに接続されている。また、拡散領域41は、第1連結部5から第2可動部4に延在しており、第2可動部4上において外側部分16bに接続されている。外側部分16bは、第2連結部7の第1部材7aを通るように延在して、電極パッド35に接続されている。コイル22から延在する配線14についても同様に、第2連結部7の第1部材7aを通るように延在して、電極パッド33に接続されている。
【0057】
端部41aの幅は、コイル24に近づくほど広がっており、端部41bの幅は、コイル22に近づくほど広がっている。端部41a,41bは、それぞれ、第1連結部5の一対の拡幅部5bに沿った外形状を有している。端部41aの幅W1及び端部41bの幅W2の各々は、第1連結部5の幅W3よりも広い。すなわち、幅W1,W2の各々は、第1連結部5上の拡散領域41の幅よりも広い。拡散領域41の各部の幅とは、平面視における最大幅であり、拡散領域41の延在方向に垂直な方向(この例では、Y軸に平行な方向)における幅である。第1連結部5の幅とは、平面視における最小幅であり、例えば、第1連結部5の延在方向に垂直な方向(この例では、Y軸に平行な方向)における直線状部5aの幅である。なお、第1連結部5は、第1可動部3がX軸周りに揺動する際にX軸周りに捩り変形する部分であり、ミラー装置1Bでは、第1連結部5は一対の拡幅部5bを含む。
【0058】
図4に示されるように、第1可動部3には、コイル24に対応する形状を有する溝42aが設けられており、第2可動部4には、コイル22に対応する形状を有する溝42bが設けられている。溝42a,42bの内面上には絶縁層43,44が設けられ、絶縁層44上には絶縁層45,46が設けられている。コイル24は、絶縁層43,44を介して溝42内に配置されている。
【0059】
各絶縁層43~46は、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン等によって構成されている。配線16の内側部分16a及び外側部分16bは、絶縁層45上に配置されている。内側部分16a及び外側部分16bは、絶縁層43~45を貫通する開口47に入り込むように形成され、開口47において拡散領域41に接続されている。
【0060】
内側部分16a及び外側部分16bは、それぞれ、第1層48と、第1層48上に配置された第2層49と、を有している。第1層48は、拡散領域41に接触するコンタクト層として機能すると共に、第2層49に含まれる金属元素のシリコン基板への拡散を防止するバリア層としても機能する。第1層48は、例えば、タングステン、窒化チタン、モリブデン、タンタル、窒化タンタル等の金属材料によって構成されている。第2層49は、例えば、アルミニウム合金、銅等の金属材料によって構成されている。
【0061】
拡散領域41と内側部分16aとの接触部分の幅W4、及び拡散領域41と外側部分16bとの接触部分の幅W5の各々は、第1連結部5の幅W3よりも広い。これらの接触部分の幅とは、平面視における第1連結部5の延在方向に垂直な方向(この例では、Y軸に平行な方向)における幅である。
[ミラー装置の製造方法]
【0062】
続いて、上述したようなミラー装置1A,1Bの製造方法(設計方法)について説明する。図5(a)は、駆動信号の角振動数(角周波数)と、第1可動部3及び第2可動部4のX軸周りの振れ角との関係の例を示す図であり、図5(b)は、当該関係の他の例を示す図である。図5(a)及び図5(b)では、第1可動部3の振れ角が実線で示されており、第2可動部4の振れ角が破線で示されている。
【0063】
図5(a)及び図5(b)に示されるように、ミラー装置1A,1Bにおいて支持部2、第1可動部3、第2可動部4、第1連結部5,6及び第2連結部7,8によって構成される2自由度振動系は、X軸周りの振動について、2つの共振点A,Bを有する。ただし、この2自由度振動系では、X軸周りの振動のみが考慮されており、Y軸周りの振動については考慮されていない。共振点Aにおける固有角振動数ω、及び共振点Bにおける固有角振動数ω(ただしω<ω)は、X軸周りの第1可動部3及び第2可動部4の振動についての固有角振動数である。共振点Aは、比較的小さな周波数でミラー面10を動作させる場合に使用され得る。共振点Bは、比較的大きな周波数でミラー面10を動作させる場合に使用され得る。
【0064】
図5(a)の共振点Aでミラー面10を動作させる場合の第1可動部3及び第2可動部4の振れ角の関係は、図6(a)のように示すことができ、図5(a)の共振点Bでミラー面10を動作させる場合の第1可動部3及び第2可動部4の振れ角の関係は、図6(b)のように示すことができる。
【0065】
図6(a)に示されるように、図5(a)の共振点Aでミラー面10を動作させると、第1可動部3及び第2可動部4が同程度回転し、第1可動部3及び第2可動部4の振れ角の差が小さくなる。すなわち、第1連結部5,6が殆ど捩れ変形しない。図6(b)に示されるように、図5(a)の共振点Bでミラー面10を動作させると、第2可動部4が殆ど回転しない一方で第1可動部3が回転し、第1可動部3及び第2可動部4の振れ角の差が大きくなる。すなわち、第1連結部5,6が効率良く捩れ変形する。
【0066】
図5(a)の例とは逆に、図5(b)の例では、共振点Aでミラー面10を動作させた場合に、第2可動部4が殆ど回転しない一方で第1可動部3が回転し、共振点Bでミラー面10を動作させた場合に、第1可動部3及び第2可動部4が同程度回転する。高効率化の観点からは、共振点A,Bのいずれでミラー面10を動作させる場合にも、第1可動部3の振れ角が大きい一方で第2可動部4の振れ角が小さいことが好ましい。すなわち、第2可動部4の振れ角に対する第1可動部3の振れ角の比(以下、「振幅比」という)を大きく確保することが好ましい。以下では、振幅比を大きく確保するためのミラー装置1A,1Bの製造方法を説明する。
[外側駆動の場合]
【0067】
まず、ミラー装置1Bのように、第2可動部4に駆動力を作用させることによって第1可動部3を共振動作させる場合(外側駆動の場合)について説明する。図7(a)は、例示的なミラー装置1Cの模式平面図であり、図7(b)は、ミラー装置1Cの振動モデルを示す図である。図7(b)に示される振動モデルにより、X軸周りの第1可動部3及び第2可動部4の振動をモデル化することができる。X軸周りの第1可動部3及び第2可動部4の振動についての運動方程式は、以下の式(9)及び式(10)で表される。
【数9】
【数10】
上記式において、θは第1可動部3の振れ角(各第1連結部5,6の捩れ角)(rad)であり、jは第1可動部3の慣性モーメント(kgm)であり、kは第1連結部5,6の捩りばね定数(Nm/rad)であり、cは第1可動部3の粘性減衰係数(Ns/m)であり、Tは第1可動部3に作用するトルク(Nm)であり、θは第2可動部4の振れ角(各第2連結部7,8の捩れ角)(rad)であり、jは第2可動部4の慣性モーメント(kgm)であり、kは各第2連結部7,8の捩りばね定数(Nm/rad)であり、cは第2可動部4の粘性減衰係数(Ns/m)であり、Tは第2可動部4に作用するトルク(Nm)であり、ωは駆動信号の角振動数(rad/s)であり、tは時間(s)である。これらの各値は、X軸周りの振動についての値である。粘性減衰係数c,cは、以下の式(11),(12)で表される。ただし、ζは第1可動部3の減衰比であり、ζは第2可動部4の減衰比である。
【数11】
【数12】
外側駆動の場合、第1可動部3には駆動力が作用しないため(すなわちT=0のため)、式(9)の右辺はゼロとなる。
【0068】
式(9)及び式(10)より、第1可動部3の振れ角θ、及び第2可動部4の振れ角θが、以下の式(13)、(14)で表されるとおりに得られる。
【数13】
【数14】
ただし、
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【0069】
このとき、振幅比θ/θは、以下の式(20)で表される。なお、ζは、例えば0.01以下であり、1よりも極めて小さい。
【数20】
【0070】
したがって、振幅比を5以上とするための条件は、以下の式(21)で表される。
【数21】
【0071】
共振点Aにおける固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合(すなわち、ω=ωの場合)、1-(ω/ωiiはゼロよりも大きいため、振幅比を5以上とするための条件は、以下の式(22)で表される。
【数22】
【0072】
共振点Bにおける固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合(すなわち、ω=ωの場合)、1-(ω/ωiiはゼロよりも小さいため、振幅比を5以上とするための条件は、以下の式(23)で表される。
【数23】
【0073】
すなわち、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合には、式(22)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができ、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合には、式(23)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。
【0074】
図8(a)及び図8(b)は、外側駆動の場合において固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合の数値間の関係を示すグラフである。図8(a)では、1-(ω/ωiiと振幅比θ/θとの関係が示されており、図8(b)では、各第2連結部7,8の捩りばね定数kと振幅比θ/θとの関係が示されている。図8(a)に示されるように、式(22)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。図8(b)に示されるように、捩りばね定数kが増加するほど、振幅比が増加する。したがって、捩りばね定数kを大きくすることで、振幅比を大きく確保することができる。
【0075】
図9(a)及び図9(b)は、外側駆動の場合において固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合の数値間の関係を示すグラフである。図9(a)では、(ω/ωii-1と振幅比θ/θとの関係が示されており、図9(b)では、第2連結部7,8の捩りばね定数kと振幅比θ/θとの関係が示されている。図9(a)に示されるように、式(23)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。図9(b)に示されるように、捩りばね定数kが増加するほど、振幅比が減少する。したがって、捩りばね定数kを小さくすることで、振幅比を大きく確保することができる。
【0076】
ここで、固有角振動数ω,ωの値同士が近く、固有角振動数ω,ω間の差が小さいと、式(22)及び式(23)の双方が満たされる。しかし、固有角振動数ω,ω間の差が小さい場合、例えば、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる際に固有角振動数ωについての共振応答が生じてしまい、ミラー面10の動作が不安定になるおそれがある。そこで、本実施形態のミラー装置の製造方法では、外側駆動の場合、式(22)及び式(23)の一方のみが満たされ、他方は満たされないように、ミラー装置を設計及び製造する。これにより、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。この点は、固有角振動数ω,ωのいずれでミラー面10を動作させる場合にも共通する。
【0077】
例えば、上記第2実施形態に係るミラー装置1Bでは、式(22)のみが満たされており、式(23)は満たされていない。したがって、固有角振動数ωでミラー面10を動作させることにより、振幅比を5以上とすることができる。また、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。
[内側駆動の場合]
【0078】
次に、ミラー装置1Aのように、第1可動部3に駆動力を作用させることによって第1可動部3を共振動作させる場合(内側駆動の場合)について説明する。この場合、X軸周りの第1可動部3及び第2可動部4の振動についての運動方程式は、以下の式(24)及び式(25)によって表される。
【数24】
【数25】
内側駆動の場合、第2可動部4には第1可動部3を駆動するための駆動力が作用しないため(すなわちT=0のため)、式(25)の右辺はゼロとなる。
【0079】
式(24)及び式(25)より、第1可動部3の振れ角θ、及び第2可動部4の振れ角θが、以下の式(26)、(27)で表されるとおりに得られる。
【数26】
【数27】
ただし、
【数28】
【数29】
【0080】
このとき、振幅比θ/θは、以下の式(30)で表される。
【数30】
【0081】
したがって、振幅比を5以上とするための条件は、以下の式(31)で表される。
【数31】
【0082】
共振点Aにおける固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合(すなわち、ω=ωの場合)、1-(ωio/ωoo+(ω/ωooはゼロよりも大きいため、振幅比を5以上とするための条件は、以下の式(32)となる。
【数32】
【0083】
一方、共振点Bにおける固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合(すなわち、ω=ωの場合)、1-(ωio/ωoo+(ω/ωooはゼロよりも小さいため、振幅比を5以上とするための条件は、以下の式(33)となる。
【数33】
【0084】
すなわち、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合には、式(32)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができ、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合には、式(33)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。式(32)及び式(33)の一方のみが満たされ、他方は満たされないようにミラー装置を設計及び製造することで、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる点は、外側駆動の場合と同様である。
【0085】
図10(a)及び図10(b)は、内側駆動の場合の数値間の関係を示すグラフである。図10(a)では、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合の4ωio /(ωoo -ω )と振幅比θ/θとの関係が示されており、図10(b)では、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合の(ωoo -ω )/ωio と振幅比θ/θとの関係が示されている。
【0086】
図10(a)に示されるように、式(32)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。また、内側駆動の場合において固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合、外側駆動の場合と同様に(図8(b))、捩りばね定数kが増加するほど、振幅比が増加する。したがって、捩りばね定数kを大きくすることで、振幅比を大きく確保することができる。
【0087】
図10(b)に示されるように、式(33)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。また、内側駆動の場合において固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合、外側駆動の場合と同様に(図9(b))、捩りばね定数kが増加するほど、振幅比が減少する。したがって、捩りばね定数kを小さくすることで、振幅比を大きく確保することができる。
【0088】
例えば、上記第1実施形態に係るミラー装置1Aでは、式(33)のみが満たされており、式(32)は満たされていない。したがって、固有角振動数ωでミラー面10を動作させることにより、振幅比を5以上とすることができる。また、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。
[作用及び効果]
【0089】
以上説明したように、ミラー装置1Aでは、2つの固有角振動数ω,ωが式(33)(第1式)のみを満たしており、式(32)(第2式)を満たしていないため、固有角振動数ωで第1可動部3及び第2可動部4を揺動させることにより、振幅比を5以上とすることができる。したがって、振幅比を大きく確保することができ、動作を高効率化することができる。更に、式(33)のみが満たされており、式(32)は満たされていないことにより、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。よって、ミラー装置1Aによれば、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【0090】
ミラー装置1Bでは、2つの固有角振動数ω,ωが式(22)(第1式)のみを満たしており、式(23)(第2式)を満たしていないため、固有角振動数ωで第1可動部3及び第2可動部4を揺動させることにより、振幅比を5以上とすることができる。したがって、振幅比を大きく確保することができ、動作を高効率化することができる。更に、式(22)のみが満たされており、式(23)は満たされていないことにより、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。よって、ミラー装置1Bによれば、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【0091】
ミラー装置1Aでは、各第2連結部7,8が、Y軸周りに第2可動部4が揺動可能となるように、第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。そのため、第2可動部4を第1可動部3と共にY軸周りに揺動させることができる。
【0092】
ミラー装置1Bでは、X軸周りの各第2連結部7,8の捩りばね定数が、X軸周りの各第1連結部5,6の捩りばね定数よりも大きい。そのため、振幅比を一層大きく確保することができる。
【0093】
ミラー装置1Bでは、各第2連結部7,8の全長が、各第1連結部5,6の全長よりも短い。そのため、第2連結部7,8の捩りばね定数を第1連結部5,6の捩りばね定数よりも好適に大きくすることができる。更に、第2連結部7,8の断面積を大きくするのではなく、長さを短くすることによって第2連結部7,8の捩りばね定数を大きくすることにより、ミラー装置1Bの小型化を図りつつ、振幅比を大きく確保することができる。
【0094】
ミラー装置1Bでは、第1部材7a及び一対の第2部材7b(複数の部材)が、Y軸に平行な方向に沿って並んで配置されている。そのため、第2連結部7,8の捩りばね定数を第1連結部5,6の捩りばね定数よりも一層好適に大きくすることができる。
【0095】
ミラー装置1Bでは、各第2連結部7,8が、X軸上に配置された第1部材7aと、互いの間に第1部材7aを挟むように配置された一対の第2部材7bと、を有している。そのため、第2連結部7,8の捩りばね定数を第1連結部5,6の捩りばね定数よりも一層好適に大きくすることができる。
【0096】
ミラー装置1Bでは、各配線14,16が、第1部材7aを通るように配置されている。第2部材7bと比べて第2可動部4の振動時に作用する応力が小さい第1部材7aを通るように配線14,16が配置されているため、第2連結部7における配線14,16の劣化を抑制することができる。
【0097】
ミラー装置1Aでは、X軸周りの各第2連結部7,8の捩りばね定数が、X軸周りの各第1連結部5,6の捩りばね定数よりも小さい。そのため、振幅比を一層大きく確保することができる。
【0098】
ミラー装置1Aでは、各第2連結部7,8の全長が、各第1連結部5,6の全長よりも長い。そのため、第2連結部7,8の捩りばね定数を第1連結部5,6の捩りばね定数よりも好適に小さくすることができる。
【0099】
ミラー装置1Aでは、各第2連結部7,8が蛇行して延在している。そのため、第2連結部7,8の捩りばね定数を第1連結部5,6の捩りばね定数よりも一層好適に小さくすることができる。更に、各第2連結部7,8が蛇行して延在していることにより、例えば各第2連結部7,8が直線状に延在している場合と比べて、耐衝撃性を向上することができる。
【0100】
ミラー装置1A,1Bでは、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、第1連結部5,6及び第2連結部7,8が、半導体基板によって構成されている。このように構成されたミラー装置1A,1Bにおいても、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【0101】
ミラー装置1Bでは、配線16のうち各第1連結部5,6上に位置する部分が、半導体材料に不純物が拡散された拡散領域41によって構成されている。配線16のうち第1連結部5,6上に位置する部分には第1可動部3の揺動時に比較的大きな応力が作用するが、当該部分が拡散領域41によって構成されているため、第1連結部5,6における配線の劣化を抑制することができる。すなわち、当該部分が拡散領域41によって構成されている場合、例えば当該部分が金属によって構成されている場合と比べて、金属疲労、割れ等を抑制することができ、信頼性を向上することができる。なお、配線16は起電力モニタ用のコイル24に接続されているため、例えば駆動用のコイルに接続される配線と比べて、配線16には比較的小さな電流が流れる。そのため、配線16については極端な低抵抗化の必要はない。
【0102】
ミラー装置1Bでは、第1可動部3及び第2可動部4における拡散領域41の幅(端部41aの幅W1及び端部41bの幅W2)が、第1連結部5,6における拡散領域41の幅よりも広い。そのため、配線16を低抵抗化することができる。
【0103】
ミラー装置1Bでは、配線16のうち、第1可動部3上に位置する内側部分16a及び第2可動部4上に位置する外側部分16bが、金属材料によって構成されている。そして、拡散領域41と内側部分16aとの接触部分の幅W4、及び拡散領域41と外側部分16bとの接触部分の幅W5の各々が、各第1連結部5,6の幅W3よりも広い。そのため、配線16を一層低抵抗化することができる。また、製造時等に位置ずれが生じたとしても、拡散領域41と内側部分16a及び外側部分16bの各々とを確実に電気的に接続することができる。
[変形例]
【0104】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限られない。第1実施形態のミラー装置1Aにおいて、第2可動部4に駆動力を作用させることによって第1可動部3を共振動作させてもよい。すなわち、ミラー装置1Aの構造が外側駆動に用いられてもよい。この場合、第1可動部3にはコイル21が設けられず、第2可動部4には、コイル22に加えて、第1可動部3の共振動作用のコイルが設けられてもよい。ミラー装置1Bの場合と同様に、当該共振動作用のコイルと磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によって発生するローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、X軸周りにミラー面10を共振動作させることができる。なお、共振動作用のコイルが設けられず、コイル22が、第2可動部4のリニア動作用及び第1可動部3の共振動作用のコイルとして用いられてもよい。このようなミラー装置は、上記式(23)のみが満たされ、式(22)は満たされないように設計及び製造される。これにより、固有角振動数ωでミラー面10を動作させることで、振幅比を5以上とすることができる。また、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。
【0105】
第2実施形態のミラー装置1Bにおいて、第1可動部3に駆動力を作用させることによって第1可動部3を共振動作させてもよい。すなわち、ミラー装置1Bの構造が内側駆動に用いられてもよい。この場合、第2可動部4にはコイル22が設けられず、第1可動部3には、コイル24に代えて又は加えて、駆動用のコイルが設けられてもよい。ミラー装置1Aの場合と同様に、当該駆動用のコイルと磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によって発生するローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、X軸周りにミラー面10を共振動作させることができる。このようなミラー装置は、上記式(32)のみが満たされ、式(33)は満たされないように設計及び製造される。これにより、固有角振動数ωでミラー面10を動作させることで、振幅比を5以上とすることができる。また、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。
【0106】
ミラー装置1A,1Bでは、ミラー面10の駆動が電磁力によって行われていたが、ミラー面10の駆動は、圧電素子又は静電力によって行われてもよい。この場合、コイルに代えて、圧電膜又は静電櫛歯等の他の駆動素子が設けられる。ミラー装置1Aにおいて、第2連結部7,8は、X軸に沿って延在し、X軸上において第2可動部4と支持部2とを互いに連結していてもよい。この場合でも、X軸及びY軸の各々の周りに第1可動部3を揺動させることができる。ミラー装置1Aにおいて、第2連結部7,8は、第1軸線と交差する第2軸線周りに第2可動部4が揺動可能となるように、第2可動部4と支持部2とを互いに連結していてもよい。すなわち、第2軸線は必ずしも第1軸線と直交していなくてもよい。ミラー装置1Bにおいて、第2部材7bは、X軸に対して傾斜して延在していてもよい。第2部材7bは、Y軸に平行な方向に沿って延在して第2可動部4と支持部2とを互いに連結していてもよい。上述した例では、振幅比の下限値が5に設定されていたが、下限値は10に設定されてもよい。ミラー装置1Bにおいて、コイル24は、温度検出用コイル(センシング用コイル)として用いられてもよい。
【0107】
ミラー装置1Aでは、第1可動部3に駆動力を作用させるための駆動部(コイル21、駆動素子)が第1可動部3に設けられていたが、当該駆動部は、第1可動部3及び/又は第1連結部5,6に設けられていればよく、例えば、各第1連結部5,6に設けられていてもよい。ミラー装置1A,1Bでは、第2可動部4に駆動力を作用させるための駆動部(コイル22、駆動素子)が第2可動部4に設けられていたが、当該駆動部は、第2可動部4及び/又は第2連結部7,8に設けられていればよく、例えば、各第2連結部7,8に設けられていてもよい。
【0108】
ミラー装置1A,1Bにおいて、第1可動部3及び/又は第1連結部5,6に、第1可動部3に直接的に駆動力を作用させるための第1駆動素子(例えばコイル)が設けられると共に、第2可動部4及び/又は第2連結部7,8に、第2可動部4に直接的に駆動力を作用させるための第2駆動素子(例えばコイル)が設けられてもよい。このような構成においては、第1駆動素子により第1可動部3に直接的に作用する駆動力、及び、第2駆動素子により第2可動部4を振動させることによって第1可動部3に間接的に作用する駆動力の双方を用いて(双方の協働により)、X軸周りにミラー面10(第1可動部3)を共振動作させることができる。ミラー装置1Aにおいて当該構成が採用される場合、例えば、第1可動部3には、X軸周りに第1可動部3を揺動させるためのコイルが設けられ、第2可動部4には、Y軸周りに第2可動部4を揺動させるためのコイルと、第2可動部4を振動させることよってX軸周りに第1可動部3を揺動させるためのコイルと、が設けられる。ミラー装置1Bにおいて当該構成が採用される場合、例えば、第1可動部3には、X軸周りに第1可動部3を揺動させるためのコイルが設けられ、第2可動部4には、第2可動部4を振動させることによってX軸周りに第1可動部3を揺動させるためのコイルが設けられる。なお、ミラー装置1Bにおいて当該構成が採用される場合、第1駆動素子により第1可動部3に直接的に作用する駆動力を用いてX軸周りにミラー面10(第1可動部3)を共振動作させると共に、第2駆動素子により第2可動部4に直接的に作用する駆動力を用いてX軸周りに第2可動部4を動作させることもできる(すなわち、内側駆動に適用することもできる)。
【0109】
各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。第1可動部3及び第2可動部4は、平面視において略円形状、略楕円形状、略四角形状又は略菱形状等の任意の外形を有していてもよい。枠部3bが設けられず、第1連結部5,6が本体部3aに直接に接続されていてもよい。第1連結部5には、一対の拡幅部5bの少なくとも一方が設けられていなくてもよく、第1連結部6には、一対の拡幅部6bの少なくとも一方が設けられていなくてもよい。第1可動部3は、ミラー面10以外の光学面を有していてもよく、例えば回折格子面を有していてもよい。すなわち、本開示のアクチュエータ装置は、ミラー面10以外を駆動するための装置であってもよい。
【0110】
図11に示される第1変形例のミラー装置1Dでは、互いに直交するX軸及びY軸の各々の周りに第1可動部3が揺動させられる。第1可動部3は、平面視において楕円形状に形成されている。第1連結部5,6はX軸に沿って直線状に延在している。第2連結部7,8はY軸に沿って直線状に延在している。第2可動部4は、第1可動部3を囲む枠状部4aと、枠状部4aに接続された中間部4bと、を有している。
【0111】
枠状部4aは、平面視において四角形状の外形を有している。中間部4bは、例えば、平面視において略四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。中間部4bは、一対の第1部分4b1と、一対の第1部分4b1にそれぞれ接続された一対の第2部分4b2と、を有している。一対の第1部分4b1は、X軸に平行な方向に沿って延在し、Y軸方向において互いに向かい合っている。一対の第2部分4b2は、Y軸に平行な方向に沿って延在し、X軸方向において互いに向かい合っている。第1部分4b1の幅(Y軸方向における長さ)は、第2部分4b2の幅(X軸方向における長さ)よりも広い。中間部4bは、枠状部4aの内側に配置され、第1部分4b1において枠状部4aに接続されている。中間部4bは、第2部分4b2において第1連結部5,6に接続されている。
【0112】
ミラー装置1Dでは、第1可動部3に駆動力を作用させるための駆動部として、一対の圧電膜51が設けられている。一対の圧電膜51は、それぞれ、中間部4bの一対の第1部分4b1に配置されている。各圧電膜51は、例えば、平面視において、X軸に平行な方向に沿った長辺を有する長方形状を呈している。
【0113】
ミラー装置1Dでは、電極パッド及び配線(図示省略)を介して圧電膜51に駆動信号が入力されると、圧電膜51が長手方向に撓み変形する。一対の圧電膜51の変形のタイミングを制御することで、中間部4b(第2可動部4)に駆動力を作用させることができる。例えば、一対の圧電膜51は、交互に撓み変形させられる。中間部4bの剛性は、枠状部4aの剛性よりも小さく、中間部4bは、枠状部4aよりも柔らかい。
【0114】
ミラー装置1Dにおける第1可動部3の駆動は、第2可動部4に駆動力を作用させることによって第1可動部3を共振動作させる外側駆動である。ミラー装置1Dにおいても、ミラー装置1Bと同様に、第1固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合には、式(22)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができ、固有角振動数ωでミラー面10を動作させる場合には、式(23)が満たされるようにミラー装置を設計及び製造することで、振幅比を5以上とすることができる。また、式(22)及び式(23)の一方のみが満たされ、他方は満たされないようにミラー装置を設計及び製造することで、固有角振動数ω,ω間の差を大きく確保することができ、不要な共振応答を抑制して動作を安定化することができる。ミラー装置1Dによっても、ミラー装置1Bと同様に、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【0115】
図12に示される第2変形例のミラー装置1Eは、中間部4bの第2部分4b2に圧電膜51が配置されている点でミラー装置1Dと相違している。具体的には、一対の第2部分4b2の各々に、一対の圧電膜51がY軸に平行な方向に並んで配置されている。ミラー装置1Eにおいても、各圧電膜51の変形のタイミングを制御することで、中間部4b(第2可動部4)に駆動力を作用させることができる。ミラー装置1Eによっても、ミラー装置1Bと同様に、高効率かつ安定的な動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0116】
1A,1B,1C…ミラー装置(アクチュエータ装置)、2…支持部、3…第1可動部、4…第2可動部、5,6…第1連結部、7,8…第2連結部、7a…第1部材、7b…第2部材、9…磁界発生部(駆動部)、14,15,16,17…配線、16a…内側部分、16b…外側部分、41…拡散領域、21…コイル(駆動部)、22…コイル(駆動部)、24…コイル(起電力モニタ用コイル、センシング用コイル)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12