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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】マイクロ波加熱システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/68 20060101AFI20240124BHJP
   H05B 6/80 20060101ALI20240124BHJP
   A61L 2/12 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H05B6/68 320M
H05B6/80 Z
A61L2/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020545342
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 US2019020286
(87)【国際公開番号】W WO2019169265
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】62/636,886
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517353862
【氏名又は名称】915 ラボ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マガナ, モーゼ アレキサンダー
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529930(JP,A)
【文献】特表2017-521111(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145534(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0127068(US,A1)
【文献】特開2013-208058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/46- 6/80
H05B 11/00
A61L 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を処理する方法であって、
(a)マイクロ波加熱システムを使用してある種類の物品を加熱するための動作プロファイルを取得することであって、前記動作プロファイルは、第1の加熱処理に従い前記種類の物品を加熱するように、前記マイクロ波加熱システムを動作させるための設定ポイント値の第1のグループと、前記マイクロ波加熱システムを通る前記物品の再通過を行う際に前記第1の加熱処理とは異なる第2の加熱処理に従い前記種類の物品を加熱するように、前記マイクロ波加熱システムを動作させるための設定ポイント値の第2のグループと、を含む、取得することと、
(b)前記マイクロ波加熱システムに動作可能に結合した制御システムを使用して、前記設定ポイント値の第1のグループに従い前記マイクロ波加熱システムを動作させることとを含み、
前記設定ポイント値の第1のグループは、前記マイクロ波加熱システムの制御パラメータの目標を含み、
前記マイクロ波加熱システムを動作させることは、
(i)前記動作プロファイルに対応する前記種類の物品の複数の物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿って液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことで、前記複数の物品を前記マイクロ波加熱チャンバーの液体媒体に浸漬させること、および、
(ii)前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通しながら、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出することであって、前記マイクロ波エネルギーは前記複数の物品を加熱するために使用される、放出すること、を含み、
前記マイクロ波加熱システムを動作させることで、前記複数の物品の各々が目標F値以上のF値を実現する、方法。
【請求項2】
前記制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力であり、前記目標は、約20kW超および約300kW未満の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御パラメータは、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度であり、前記目標は、約40℃以上、約105℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記制御パラメータは、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度であり、前記目標は、約95℃以上、約135℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放出することは、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを出射するように構成された複数のマイクロ波発射器を使用して実行され、前記マイクロ波発射器は、前記搬送ラインに沿った前記キャリアの進行方向に沿って互いに離間され、
ステップ(b)の前記動作させることは、
前記複数のマイクロ波発射器の第1の発射器を越えて、前記第1の発射器と、前記第1の発射器に隣接する前記複数のマイクロ波発射器の第2の発射器との間の空間内に、前記キャリアを通すことと、
休止時間中に前記空間内に前記キャリアを保持することであって、前記休止時間中、前記物品はマイクロ波エネルギーに曝露されない、保持することと、をさらに含み、
前記制御パラメータは総休止時間であり、
前記目標は、約10秒超および約10分未満の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)の前記動作させることは、
前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通す前に、前記キャリアを搬送ラインに沿って液体充填予熱区画に通すことと、
前記キャリアを前記予熱区画に通している間に、前記物品を前記予熱区画の温かい液体媒体に浸漬させることと、をさらに含み、
前記制御パラメータは、前記予熱区画の液体温度であり、
前記目標は、約45℃超および約95℃未満の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前記動作させることは、
前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通すことに続いて、前記キャリアを搬送ラインに沿って液体充填保持区画に通すことと、
前記キャリアを前記保持区画に通している間に、前記物品を前記保持区画の温かい液体媒体に浸漬させることと、をさらに含み、
前記制御パラメータは、前記保持区画の液体温度であり、
前記目標は、約65℃超および約140℃未満の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)の前記動作させることは、
前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通すことに続いて、前記キャリアを搬送ラインに沿って液体充填冷却区画に通すことと、
前記キャリアを前記冷却区画に通している間に、前記物品を前記冷却区画の冷たい液体媒体に浸漬させることと、をさらに含み、
前記制御パラメータは、前記冷却区画の液体温度であり、
前記目標は、約35℃以上から約65°未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の前記動作させることは、
(i)前記加熱することの少なくとも一部の間に、前記制御パラメータの値を測定して測定値を提供することと、
(ii)前記測定値を前記制御パラメータの目標値と比較して差異を判定することと、
(iii)前記差異を事前に決定した許容差(PAD)と比較することと、
(iv)前記差異が前記PADを超えるとき、
前記物品を廃棄すること、
前記マイクロ波加熱システムを通る前記物品の再通過を行うこと、
前記マイクロ波加熱チャンバーに放出される総正味マイクロ波電力を変更すること、
前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量を変更すること、
前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度を変更すること、および、
前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度を変更すること、のうちの1つ以上と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記制御パラメータは、前記マイクロ波加熱システムのある区画の液体流量であり、前記目標は、約1ガロン/分超および約75ガロン/分未満の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記制御パラメータは、前記マイクロ波加熱システムのある区画を通る搬送速度であり、前記目標は、約0.25インチ/秒超および約6インチ/秒未満の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
物品を処理する方法であって、
(a)マイクロ波加熱システムを使用してある種類の物品を加熱するための動作プロファイルを取得することであって、前記動作プロファイルは、第1の加熱処理に従い前記種類の物品を加熱するように、前記マイクロ波加熱システムを動作させるための設定ポイント値の第1のグループと、前記第1の加熱処理とは異なる第2の加熱処理に従い前記種類の物品を加熱するように、前記マイクロ波加熱システムを動作させるための設定ポイント値の第2のグループと、を含む、取得することと、
(b)前記動作プロファイルから前記設定ポイント値の第1のグループを選択することであって、前記設定ポイント値の第1のグループは、前記マイクロ波加熱システムの制御パラメータの第1の目標値を含み、前記第1の目標値は、前記制御パラメータの第1の動作設定ポイントとして前記マイクロ波加熱システムに動作可能に結合した制御システムにより使用される、選択することと、
(c)前記マイクロ波加熱システムに動作可能に結合した前記制御システムを使用して、前記設定ポイント値の第1のグループに従い前記マイクロ波加熱システムを動作させることであって、
(i)前記種類の物品の複数の物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿って液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことであって、前記複数の物品を、前記マイクロ波加熱チャンバーに通している間に、液体媒体に浸漬させる、通すこと、および、
(ii)前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通しながら、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出して、前記複数の物品を加熱すること、によって動作させることと、
(d)ステップ(c)の前記動作の間に、前記制御パラメータの実際の値を測定して測定値を提供することと、
(e)前記測定値と前記第1の目標値との差異が事前に決定した許容差を超えるという判定に応答して、前記動作プロファイルから前記設定ポイント値の第2のグループを選択することと、
(f)前記制御システムを使用して、前記設定ポイント値の第2のグループに従い前記マイクロ波加熱システムを動作させることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記制御パラメータは、前記マイクロ波加熱チャンバーに放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱システムのある区画液体温度、前記マイクロ波加熱システムのある区画の液体流量、および前記マイクロ波加熱システムのある区画を通る前記キャリアの搬送速度のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記設定ポイント値の第1のグループおよび前記設定ポイント値の第2のグループの各々は、前記種類の物品の異なる温度時間プロファイルに対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の加熱処理および前記第2の加熱処理は、前記種類の物品の異なるF値のためのもの、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記設定ポイント値の第1のグループおよび前記設定ポイント値の第2のグループは、前記種類の物品の実質的に類似した温度時間プロファイルに対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の加熱処理および前記第2の加熱処理は、前記種類の物品の実質的に類似したF値のためのものであり、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(e)の前記選択することはさらに、前記制御パラメータの第2の目標値と前記測定値との差異が前記事前に決定した許容差未満で異なることの判定に応答する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記制御パラメータは第1の制御パラメータであり、
前記設定ポイント値の第1のグループは、前記第1の制御パラメータとは異なる第2の制御パラメータの第1の目標値を含み、
前記設定ポイント値の第2のグループは、前記第2の制御パラメータの第2の目標値を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
マイクロ波加熱システムであって、
マイクロ波加熱チャンバー区画を含む複数の液体充填処理区画であって、前記複数の処理区画の各々は、複数の物品を有するキャリアを、前記処理区画を介して送り、その結果、前記物品を、前記処理区画に通している間に液体媒体に浸漬させるように構成されたそれぞれの搬送セグメントを備える、複数の充填処理区画と、
前記複数の処理区画の各々に動作可能に結合して、前記処理区画の動作を制御する制御システムであって、
(a)ある種類の物品に関連した動作プロファイルにアクセスすることと、
(b)前記制御パラメータの第1の動作設定ポイントとして第1の目標値を使用することを含む、設定ポイント値の第1のグループに従って、前記処理区画を動作させることと、
(c)前記マイクロ波加熱チャンバーを含む各処理区画に、複数の物品を搭載したキャリアを通すことと、
(d)前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通しながら、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出して、前記複数の物品を加熱することと、
(e)前記制御パラメータの実際の値を測定して測定値を提供することと、
(f)前記測定値と前記第1の目標値との差異が事前に決定した許容差を超えるという判定に応答して、前記動作プロファイルから前記設定ポイント値の第2のグループを選択することと、
(g)前記設定ポイント値の第2のグループを選択することに続いて、前記設定ポイント値の第2のグループに従って前記処理区画を動作させることと、を行うように適応させた、制御システムと、を備え
前記動作プロファイルは、前記設定ポイント値の第1のグループおよび前記設定ポイント値の第2のグループの各々を含み、前記設定ポイント値の第1のグループおよび前記設定ポイント値の第2のグループの各々は、前記種類の物品の加熱目標を実現するためのものであり、前記設定ポイント値の第1のグループは、前記複数の処理区画のうちの処理区画の制御パラメータの前記第1の目標値を含み、前記設定ポイント値の第2のグループは、前記処理区画の前記制御パラメータの第2の目標値を含む、マイクロ波加熱システム。
【請求項21】
ステップ(b)の前記動作させることは、
(i)前記加熱することの少なくとも一部の間に、前記制御パラメータの値を測定して測定値を提供することと、
(ii)前記測定値を前記制御パラメータの目標値と比較して差異を判定することと、
(iii)前記差異を事前に決定した許容差(PAD)と比較することと、
(iv)前記差異がPADを超える場合、前記動作プロファイルから前記設定ポイント値の第2のグループを選択すること、および前記設定ポイント値の第2のグループに従い前記マイクロ波加熱システムを動作させることの各々と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許協力条約(PCT)出願は、2018年3月1日に出願された米国特許出願第62/636,886号、発明の名称「METHOD FOR CONTROLLING MICROWAVE HEATING SYSTEMS」に関連し、その優先権を主張し、その内容全体はあらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
本開示の態様は、少なくとも部分的にマイクロ波エネルギーへの曝露により物品を加熱する加熱システムを対象とする。特に、本開示は、加熱されている物品が所望のレベルの低温殺菌および滅菌を実現するように、このようなマイクロ波加熱システムを制御する手法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
マイクロ波エネルギーは、多くの異なる用途において物品を急速かつ効果的に加熱するためのエネルギー源として使用されてきた。物品を急速かつ徹底的に加熱するその能力のために、マイクロ波エネルギーは特に、例えば、低温殺菌または滅菌処理など、規定の最低温度の急速な実現が望まれる特定の用途において利用される場合がある。加えて、マイクロ波エネルギーは一般に容積的であるため、食品および医薬品など、誘電的および熱的に敏感な多くの物品を加熱するのに役立つ場合もある。しかしながら、今日まで、特に商業規模で、安全かつ効果的にマイクロ波エネルギーを適用することの複雑さおよび微妙な差異が、急速な熱処理におけるその適用を厳しく制限してきた。したがって、広範囲のさまざまな最終用途での使用に適した効率的で費用効果の高い産業規模のマイクロ波エネルギー加熱システム、ならびにそのようなシステムを制御および動作させる対応する方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様では、マイクロ波加熱システムを制御する方法が提供される。この方法は、液体充填マイクロ波加熱システムにおいて、ある種類の物品を加熱するための動作プロファイルを取得することを含み、動作プロファイルは、目標F値のための温度時間プロファイルと、その温度時間プロファイルを実現するための設定値のグループとを含み、設定ポイント値のグループは、マイクロ波加熱システムの制御パラメータの目標を含む。この方法はさらに、マイクロ波加熱システムに動作可能に結合した制御システムを使用して、動作プロファイルに対応する種類の物品の、物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿った液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことによりマイクロ波加熱システムを動作させ、マイクロ波加熱チャンバーの液体媒体に物品を浸漬させることを含む。マイクロ波加熱システムを動作させることはさらに、物品を加熱するためにキャリアをマイクロ波加熱チャンバーに通しながら、マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出することを含む。また、この方法は、マイクロ波加熱システムから物品を取り出すことを含む。マイクロ波加熱システムを動作させることで、複数の物品の各々が目標F値以上のF値を実現する。
【0005】
本開示の別の態様では、物品を処理する方法が提供される。この方法は、液体充填マイクロ波加熱システムにおいて、ある種類の物品を加熱するための動作プロファイルを取得することを含み、動作プロファイルは、目標F値のための温度時間プロファイルと、その温度時間プロファイルを実現するための設定ポイント値の第1のグループとを含む。この方法はさらに、動作プロファイルから設定ポイント値の第1のグループを選択することを含み、設定ポイント値の第1のグループは、マイクロ波加熱システムの制御パラメータの第1の目標値を含み、第1の目標値は、制御パラメータの第1の動作設定ポイントとして、マイクロ波加熱システムに動作可能に結合した制御システムにより使用される。また、この方法は、マイクロ波加熱システムに動作可能に結合した制御システムを使用して、物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿って液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことによりマイクロ波加熱システムを動作させ、マイクロ波加熱チャンバーに通している間に、液体媒体に物品を浸漬させることを含む。制御システムはさらに、キャリアをマイクロ波加熱チャンバーに通しながら、複数の物品を加熱するためにマイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出することと、複数の物品を加熱しながら、測定値を提供するために制御パラメータの実際の値を測定することとにより、マイクロ波加熱システムを動作させる。この方法はさらに、測定値と第1の目標値との差異が事前に決定した許容差を超えることに応答して、動作プロファイルから設定ポイント値の第2のグループを選択することであって、設定ポイント値の第2のグループは、制御パラメータの第2の目標値を含む、選択することと、制御システムを使用して、設定ポイント値の第2のグループに従ってマイクロ波加熱システムを動作させることであって、制御パラメータの第2の動作設定ポイントとして第2の目標値を使用することを含む、動作させることと、を含む。
【0006】
本開示のさらに別の態様では、マイクロ波加熱システムが提供される。マイクロ波加熱システムは、マイクロ波加熱チャンバー区画を含む液体充填処理区画を含む。処理区画の各々は、複数の物品を備えたキャリアを、処理区画を介して送り、その結果、物品を、処理区画に通している間に液体媒体に浸漬させるように構成されたそれぞれの搬送セグメントを含む。マイクロ波加熱システムはさらに、複数の処理区画の各々に動作可能に結合した制御システムを含み、処理区画の動作を制御する。制御システムは、ある種類の物品に関連した動作プロファイルにアクセスするように適応させ、動作プロファイルは、目標F値のための温度時間プロファイルと、その温度時間プロファイルを実現するための設定ポイント値の第1のグループとを含み、設定ポイント値の第1のグループは、処理区画の1つの制御パラメータの第1の目標値を含む。制御システムはさらに、設定ポイント値のグループに従って処理区画を動作させ、制御パラメータの第1の動作設定ポイントとして第1の目標値を使用することを含み、マイクロ波加熱チャンバー区画を含む各処理区画に、物品を搭載したキャリアを通すように適応させる。キャリアをマイクロ波加熱チャンバーに通しながら、制御システムは、マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出し、複数の物品を加熱するように適応させる。制御システムはさらに、制御パラメータの実際の値を測定して測定値を提供し、測定値と第1の目標値との差異が事前に決定した許容差を超えるという判定に応答して、動作プロファイルから設定ポイント値の第2のグループを選択し、設定ポイント値の第2のグループは、制御パラメータの第2の目標値を含む。制御システムはさらに、設定ポイント値の第2のグループに従って処理区画を動作させるように適応させ、設定ポイント値の第2のグループを選択することに続いて、制御パラメータの第2の動作設定ポイントとして第2の目標値を使用することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に記述された本開示の上記のおよび他の目的、特徴、ならびに利点は、添付の図面に示されるように、それらの発明の概念の特定の実装形態についての以降の説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではないことに留意すべきであるが、しかし、代わりに、発明概念の原理を例示することに重点が置かれている。本明細書に開示される実装形態および図面は、限定的ではなく例示的であると考えるべきことが意図される。
【0008】
図1A】1つ以上の物品を加熱するマイクロ波加熱システムの一実装形態を示す処理フロー図であり、特に、熱化ゾーン、マイクロ波加熱ゾーン、任意選択的な保持ゾーン、急冷ゾーン、および一対の圧力調整ゾーンを備えるシステムを示す。
図1B】本開示の一実装形態に従って構成されたマイクロ波加熱システムの概略図であり、特にマイクロ波加熱システムの各ゾーンは図1Aに提供された図に概説されている。
図2】本発明の一実施形態に従って構成されたマイクロ波加熱ゾーンの概略図であり、特に加熱容器とマイクロ波分配システムを示している。
図3】本開示による動作プロファイルスキーマ300の図である。
図4】本開示の実装形態によるマイクロ波加熱システムを使用して、物品を低温殺菌または滅菌する方法を示すフローチャートである。
図5】動作プロファイルを使用してマイクロ波加熱システムを動作させる方法を示すフローチャートである。
図6】処理実行が完了した後に、動作プロファイルを使用する方法を示すフローチャートである。
図7】所与の処理実行の合否結果を分析する方法を示すフローチャートである。
図8図1Aのマイクロ波加熱システムに含まれてもよいコンピュータ/制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、液体充填マイクロ波加熱システムにおいて物品を低温殺菌または滅菌する方法およびシステムに関する。この種類のマイクロ波加熱システムを制御する方法も本明細書に説明され、加熱されている物品が所望のレベルの低温殺菌および滅菌を実現するように使用されてもよい。
【0010】
本開示によるシステムおよび方法は、このシステムにより加熱される物品が所望のレベルの低温殺菌または滅菌を実現するように、マイクロ波加熱システムの動作を制御するための動作プロファイルを利用する。動作プロファイルは経験的データに基づいており、1つ以上のマイクロ波システムパラメータの特定の目標値を提供する。これらの動作プロファイルに従って動作させるマイクロ波加熱システムは、処理される物品の十分な低温殺菌または滅菌が実現されるように役立たせることができ、同時に、物品の最終特性(例えば、味、質感、外観)に影響を与えるように指定された処理基準にも適合させる。本明細書に説明されている動作プロファイルは、一般的な動作条件下でシステムを動作させるために使用してもよく、処理偏差を管理するために使用してもよい。これらのプロファイルを使用して、完了した実行から動作データを評価し、完了した実行中に処理された物品が、目標の致死率を含むが、これには限定されない、特定の処理基準に適合するかどうかを判定してもよい。
【0011】
一般に、殺菌は品物を約80℃~約100℃の最低温度まで急速加熱することを含み、滅菌は品物を約100℃~約140℃の最低温度まで加熱することを含む。いくつかの場合、本明細書に説明される処理およびシステムは、低温殺菌、滅菌、または低温殺菌と滅菌の両方のために構成してもよい。低温殺菌および/または滅菌される適切な種類の品物の例は、包装された食料品、飲料、医療用器具および流体、歯科用器具および流体、獣医用流体、および/または薬剤用流体が含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
本開示の実装形態は、例えば、米国特許第9,357,590号に説明されたマイクロ波加熱システムと同様のもの、ならびに米国特許第7,119,313号に説明されたものを含む、さまざまな異なるマイクロ波加熱システムにおいて実行してもよく、その各々は、本開示と矛盾しない範囲で、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
ここで図1Aおよび1Bを参照すると、本開示のマイクロ波加熱システムにおける主要ステップの概略図が図1Aに示されており、図1Bは、図1Aに概説した処理に従って複数の物品を加熱するように動作可能なマイクロ波システム100の一実装形態を示す。本明細書で使用するとき、「マイクロ波エネルギー」という用語は一般に、300MHz~30GHzの周波数を有する電磁エネルギーを指す。
【0014】
図1Aおよび1Bを参照すると、1つ以上の物品を最初に熱化区画112に導入することができ、そこで物品を実質的に均一な温度に熱化することができる。いったん熱化されると、物品は次に圧力調整区画114aに任意選択的に通すことができ、その後、マイクロ波加熱区画116に導入される。マイクロ波加熱区画116では、図1Bに発射器118として一般的に示される、1つ以上のマイクロ波発射器により加熱区画の少なくとも一部に放出されるマイクロ波エネルギーを使用して、物品を急速に加熱できる。加熱された物品は次に、任意選択的な保持区画120に任意選択的に通すことができ、そこで物品は所定の時間量だけ一定温度に維持できる。続いて、物品は次に急冷区画122に通すことができ、そこで物品の温度は適切な取扱温度まで急速に低下させることができる。その後、冷却された物品は、任意選択的に第2の圧力調整区画114bに通すことができ、その後、システム100から取り出し、さらに利用する。
【0015】
本開示の一実装形態によると、上記の熱化区画112、マイクロ波加熱区画116、保持区画120および/または急冷区画122の各々は、図1Bに一般に示すように、単一の容器内に画定することができるが、別の実装形態では、少なくとも1つの上記の段階を1つ以上の別個の容器内に画定することもできる。一実装形態によると、上記のステップの少なくとも1つは、液体媒体を少なくとも部分的に充填した容器内で実行でき、処理される物品はその液体媒体に少なくとも部分的に浸漬できる。本明細書で使用されるとき、「充填した」という用語は、特定の容積の少なくとも50%が液体媒体で充填されている構成を表す。本開示の所定の実装形態では、「充填した」容積は、液体媒体で少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または100%満たすことができる。
【0016】
使用されるとき、使用される液体媒体は、任意の適切な種類の液体を含んでもよい。液体媒体は、空気の誘電率よりも大きい誘電率を有してもよく、一実装形態では、処理される物品の誘電率と同様の誘電率を有することができる。水(または水を含む液体媒体)は、食用および/または医療用デバイスまたは物品を加熱するために使用されるシステムに特に適していてもよい。一実装形態では、例えば、油、アルコール、グリコールおよび塩などの添加剤を任意選択的に液体媒体に添加して、必要に応じて、処理中にその物理的特性(例えば沸点)を変更または改善してもよい。
【0017】
マイクロ波システム100は、上記の1つ以上の処理区画を介して物品を送る少なくとも1つの搬送システム(図1Aおよび1Bには示されていない)を含むことができる。適切な搬送システムの例は、プラスチックまたはゴムのベルトコンベヤ、チェーンコンベヤ、ローラコンベヤ、フレキシブルまたはマルチフレックスコンベヤ、ワイヤメッシュコンベヤ、バケットコンベヤ、空気コンベヤ、スクリューコンベヤ、トラフコンベヤまたは振動コンベヤ、およびそれらの組み合わせを含むことができるが、それらには限定されない。搬送システムは、任意の数の個々の搬送ラインを含むことができ、処理容器内に任意の適切な形態で配置できる。マイクロ波システム100により利用される搬送システムは、容器内の一般に固定された位置に構成でき、あるいはシステムの少なくとも一部は横方向または垂直方向に調整可能であってもよい。
【0018】
いくつかの場合、マイクロ波加熱システムの1つ以上の処理区画に通すとき、物品を固定するように構成された1つ以上のキャリア内に搭載し、搬送ラインに沿って物品を送ってもよい。本開示のシステムおよび方法とともに使用してもよいキャリアの説明は、米国特許出願第15/284,173号に提供され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
マイクロ波加熱システム100により処理される物品は、任意の適切なサイズおよび/または形状のパッケージを含んでもよく、任意の食品もしくは飲料、任意の医療用、歯科用、医薬用、もしくは獣医用流体、またはマイクロ波加熱システムにおいて処理可能な任意の器具を含んでもよい。適切な物品の例は、例えば、果物、野菜、肉、パスタ、既製の惣菜、スープ、シチュー、ジャム、さらには飲料などの包装食品を含むことができるが、それらには限定されない。特定の種類の包装は限定的ではないが、マイクロ波エネルギーを使用した内容物の加熱を容易にするために、少なくともその一部は、少なくとも部分的にマイクロ波透過性でなければならない。
【0020】
物品は、個々の包装を含むことができ、個々の包装の各々は、例えば、略長方形またはプリズム状の形状を有する。いくつかの場合、物品は上部と底部を有することができ、各物品の上部と底部は異なる幅を有することができる。例えば、いくつかの場合、上部は底部より広くてもよく、各物品の上部エッジは底部エッジよりも長くかつ広くてもよい。他の場合、例えば、物品が可撓性パウチを含むとき、上部は底部よりも狭くてもよい。特定の種類の物品は、注ぎ口ありまたはなしの可撓性および半可撓性のパウチ、カップ、ボトル、ならびに可撓性のふたを含む、ふたありまたはなしの円形、楕円形、または他の断面形状を有する他の剛性または半剛性容器を含むことができるが、それらには限定されない。物品は、プラスチック、セルロース類、および他のマイクロ波透過性材料を含む任意の材料から構成してもよい。
【0021】
図1Aおよび1Bに示すように、マイクロ波システム100に導入された物品は、最初に熱化区画112に導入され、そこで物品を熱化して実質的に均一な温度を実現する。例えば制限なく、本開示の少なくとも所定の実装形態において、熱化区画112から引き出されるすべての物品の少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%は、互いに約5℃以内、約2℃以内、または1℃以内の温度を有する。本明細書で使用されるとき、「熱化する」および「予熱する」という用語は一般に、温度平衡化または均等化のステップを指す。熱化されている物品の最初のおよび所望の温度に依存して、熱交換器113として図1Aに示されている熱化区画112の温度制御システムは、加熱および/または冷却システムであってもよい。
【0022】
熱化区画112が液体媒体で少なくとも部分的に充填されると、物品は通している間に少なくとも部分的に液体中に浸漬できる。熱化区画112内の液体媒体は、そこに通している物品の温度よりも温かくても、冷たくてもよい。いくつかの実装形態では制限なく、液体媒体は、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、もしくは少なくとも約60℃、および/または約100℃以下、約95℃以下、約90℃以下、約85℃以下、約80℃以下、約75℃以下、約70℃以下、約65℃以下、もしくは約60℃以下の平均バルク温度を有してもよい。
【0023】
熱化ステップは周囲圧下で実行でき、または加圧容器内で実行してもよい。例えば制限なく、加圧されたとき、熱化は、少なくとも約1psig、少なくとも約2psig、少なくとも約5psig、もしくは少なくとも約10psig、および/または約80psig以下、約50psig以下、約40psig以下、もしくは約25psig以下の圧力において実行してもよい。熱化ゾーン112が液体充填され加圧されているとき、圧力は、液体により及ぼされる任意の上部圧力に加えてもよい。熱化を受けている物品は、さまざまな持続時間の熱化ゾーン112における平均滞留時間を有することができる。例えば制限なく、所定の実装形態において、滞留時間は、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、および/または約60分以下、約20分以下、または約10分以下であってもよい。熱化区画112から引き出された物品は、異なる平均温度を有することができる。例えば制限なく、所定の実装形態において、物品は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、および/または約90℃以下、約75℃以下、約60℃以下、もしくは約50℃以下の平均温度を有してもよい。
【0024】
熱化ゾーン112およびマイクロ波加熱ゾーン116を実質的に異なる圧力で動作させる一実装形態では、図1Aおよび1Bに一般に示されるように、熱化ゾーン112から取り出された物品は、最初に圧力調整ゾーン114aに通し、その後、マイクロ波加熱ゾーン116に侵入させる。圧力調整ゾーン114aは、より低い圧力のエリアとより高い圧力のエリアとの間で、加熱されている物品を遷移させるように構成された任意のゾーンまたはシステムであってもよい。一実装形態では、圧力調整ゾーン114aは、少なくとも約1psi、少なくとも約5psi、少なくとも約10psi、少なくとも約12psi、および/または約75psi以下、約50psi以下、約40psi以下、もしくは約35psi以下の圧力差を有する2つのゾーンの間で、物品を遷移させるように構成できる。図1Aおよび1Bに示される冷却/急冷ゾーン122をマイクロ波加熱ゾーン116とは異なる圧力で動作させるとき、マイクロ波加熱ゾーンまたは保持ゾーン120と、冷却/急冷ゾーン122との間で物品を遷移させるために、別の圧力調整区画が存在してもよい。いくつかの場合、第1の圧力調整ゾーン114aは、より低い圧力の熱化ゾーン112からより高い圧力のマイクロ波加熱ゾーン116に物品を遷移することができるが、第2の圧力調整区画114bは、より高い圧力の保持ゾーン120からより低い圧力の冷却ゾーン122に、またはより低い圧力の冷却ゾーン122から周囲条件に物品を遷移させてもよい。加圧区画の他の構成も可能である。
【0025】
図1Aおよび1Bを再び参照すると、上記のように、熱化区画112を出て、任意選択的に圧力調整区画114aに通した物品は、次にマイクロ波加熱区画116に導入できる。マイクロ波加熱区画116では、マイクロ波エネルギーを使用する熱源で物品を急速に加熱できる。一実装形態では、マイクロ波加熱区画116のさまざまな構成は、約915MHzの周波数、または約2.45GHzの周波数を有するマイクロ波エネルギーを利用でき、その両方とも一般に工業用マイクロ波周波数と呼ばれている。マイクロ波エネルギーに加えて、マイクロ波加熱区画116は、例えば、伝導加熱もしくは対流加熱、または他の従来の加熱方法もしくはデバイスなど、1つ以上の他の熱源を任意選択的に利用してもよい。しかしながら、本開示の少なくともいくつかの実装形態において、マイクロ波加熱区画の物品を加熱するために使用されるエネルギーの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、マイクロ波エネルギーであってもよい。
【0026】
図1Aに示されるように、マイクロ波加熱システム100におけるさまざまな区画の動作は、制御システム150により制御および促進してもよい。制御システム150は一般に、マイクロ波加熱システム100の1つ以上の区画の構成要素と通信するように適応させた1つ以上のコンピューティングデバイスを含む。このような通信は、マイクロ波加熱システム100のセンサー、スイッチもしくは他の構成要素から信号およびデータを受信すること、ならびに/または例えば制限なく、アクチュエータ、加熱素子、駆動部、照明、アラーム、画面など、マイクロ波加熱システム100の構成要素への制御信号などの信号およびデータを送信することを含んでもよい。制御システム150は、ユーザーからの入力を受信し、このような入力に応答して、少なくとも部分的に、マイクロ波加熱システム100の動作を制御するように構成してもよい。同様に、制御システム150は、マイクロ波の動作を自動的に少なくとも部分的に制御するように構成してもよい。
【0027】
ここで図2を参照すると、マイクロ波加熱区画216の一実装形態は、マイクロ波加熱チャンバー220と、マイクロ波エネルギーを発生させる少なくとも1つのマイクロ波発生器212と、マイクロ波エネルギーの少なくとも一部を発生器212からマイクロ波チャンバー220に誘導するマイクロ波分配システム214とを一般的に備えるように示される。マイクロ波分配システム214は、複数の導波路セグメント218と、マイクロ波チャンバー220の内部にマイクロ波エネルギーを放出する、図2の発射器222a~fとして示される1つ以上のマイクロ波発射器とを備える。図2に示されるように、マイクロ波加熱区画216はさらに、マイクロ波チャンバー220を介して、加熱される物品を搭載したキャリア250を送る搬送システム240を含むことができる。マイクロ波加熱区画216の各構成要素は、本開示のさまざまな実装形態に従って、ここで詳しく議論する。
【0028】
マイクロ波加熱区画216内の搬送システム240に沿って移動するとき、各物品の最も冷たい部分が最低目標温度を実現するように物品を加熱してもよい。マイクロ波加熱区画216が滅菌または低温殺菌システムであるとき、目標温度は滅菌または低温殺菌の目標温度であってもよい。例えば制限なく、目標温度は、少なくとも約65℃、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、少なくとも約80℃、少なくとも約85℃、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、少なくとも約120℃、少なくとも約121℃、少なくとも約122℃、および/または約130℃以下、約128℃以下、もしくは約126℃以下であってもよい。
【0029】
マイクロ波加熱チャンバー220が液体で充填されるとき、マイクロ波加熱チャンバー220内の液体の平均バルク温度は、さまざまであってもよく、いくつかの場合、マイクロ波加熱チャンバー220に放出されるマイクロ波エネルギーの量に依存する可能性がある。マイクロ波加熱チャンバー220内の液体の平均バルク温度は、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、少なくとも約80℃、少なくとも約85℃、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、もしくは少なくとも約120℃、および/または約135℃以下、約132℃以下、約130℃以下、約127℃以下、もしくは約125℃以下であってもよい。
【0030】
物品がマイクロ波加熱チャンバー220を通るとき、それらは比較的短時間で目標温度まで加熱してもよく、これは、高温への長時間の曝露により引き起こされる物品の損傷または劣化を最小化するのに役立つ可能性がある。例えば、マイクロ波加熱区画216を通る各物品の平均滞留時間は、所定の実装形態では制限なく、少なくとも約5秒、少なくとも約20秒、少なくとも約60秒、および/または約10分以下、約8分以下、約5分以下、約3分以下、約2分以下、もしくは約1分以下であってもよい。マイクロ波加熱区画216で加熱される物品の最低温度の上昇は、さまざまであってもよい。例えば、所定の実装形態において、物品の最低温度は、少なくとも約20℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約75℃、および/または約150℃以下、約125℃以下、もしくは約100℃以下だけ上昇できる。
【0031】
マイクロ波加熱チャンバー220は、ほぼ周囲圧で動作できる。あるいは、それは、周囲圧を超える少なくとも約5psig、少なくとも約10psig、少なくとも約15psig、または少なくとも約17psig、および/または約80psig以下、約60psig以下、約50psig以下、もしくは約40psig以下を制限なく含む、さまざまな圧力において動作する加圧マイクロ波チャンバーであってもよい。本明細書で使用されるとき、「周囲」圧という用語は、外部加圧デバイスの影響なしでマイクロ波加熱チャンバー220内の流体により及ぼされる圧力を指す。
【0032】
いくつかの場合、マイクロ波加熱区画216を通る物品は、マイクロ波エネルギーに間欠的に暴露され、マイクロ波エネルギーへの暴露期間と「休止」期間が交互に続き、休止期間中、マイクロ波エネルギーは物品に向かっては放出されないが、物品は熱化されてもよい。いくつかの場合、物品は休止期間の少なくとも一部の間、隣接するマイクロ波発射器または発射器の組の間を移動してもよく、他の場合、物品は休止期間中に静止したままであってもよい。物品がマイクロ波加熱チャンバー220を介して移動するとき、物品はマイクロ波加熱チャンバー220の入口と出口との間で単一方向に移動してもよい。あるいは、米国特許出願第62/471,664号および同第15/921,921号に詳しく説明されているように、キャリアまたは物品のグループは搬送ラインに沿って「前後」のパターンで移動させてもよく、これらの特許出願は各々、本開示と矛盾しない範囲で全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
図1Aおよび1Bに示すように、マイクロ波加熱区画116を出ると、物品は保持区画120に送られてもよく、物品の温度は、事前に決定した期間、所定の最低目標温度以上に維持できる。例えば制限なく、保持区画120において、物品の最も冷たい部分の温度は、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、少なくとも約80℃、少なくとも約85℃、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、もしくは少なくとも約120℃、少なくとも約121℃、少なくとも約122℃、および/または約130℃以下、約128℃以下、もしくは約126℃以下の事前に決定した最低温度以上の温度において、少なくとも約1分、少なくとも約2分、もしくは少なくとも約4分、および/または約20分以下、約16分以下、もしくは約10分以下の期間(または「保持期間」)保持できる。
【0034】
いったん加熱された物品が保持区画120を出ると、物品は次に冷却または急冷区画122に導入されてもよく、ここで物品は冷却された流体への浸漬により急速に冷却される。急冷区画122は、物品の外面温度をさまざまな量だけ低下させてもよい。例えば、所定の実装形態では、外面温度は、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、および/または約100℃以下、約75℃以下、もしくは約50℃以下まで、少なくとも約1分、少なくとも約2分、少なくとも約3分および/または約10分以下、約8分以下、または約6分以下の期間に低減されてもよい。任意の適切な流体を急冷区画122内で使用してもよく、流体はマイクロ波加熱区画116および/または保持区画120内で使用される液体と同様のまたは異なる液体を含んでもよい。急冷区画122から取り出されるとき、冷却された物品の温度は、さまざまであってもよい。例えば制限なく、所定の実装形態では、冷却された物品は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、および/または約70℃以下、約60℃以下、もしくは約50℃以下の温度を有することができる。いったん急冷区画122から取り出されると、冷却され、処理された物品は次に、マイクロ波加熱システム100から取り出し、続いて保管および/または使用することができる。
【0035】
本開示は、マイクロ波加熱システムと、動作プロファイルを使用してマイクロ波加熱システムを動作させる方法とを提供する。いくつかの場合、マイクロ波加熱システムは、単一の動作プロファイルに従って選択的に動作させてもよく、他の場合、2つ以上の異なる動作プロファイルに従って動作させてもよい。2つ以上の異なる動作プロファイルによりシステムを動作させる場合、各プロファイルは、異なる種類の物品を加熱するために、または同じ種類の物品を別々に加熱するために具体的に設計できる。各動作プロファイルは、所定の種類の物品を処理するように設計してもよく、したがって、そのプロファイルに従って加熱される種類の物品の所定の仕様を含んでもよい。
【0036】
いくつかの場合、動作プロファイルは、所定の種類の物品を加熱するように選択してもよい。したがって、各プロファイルは、1つ以上の物品パラメータの所定の仕様に基づいて作成してもよい。動作プロファイルにより指定される物品パラメータの例は、食品の種類と特性(例えば、pH、重量、糖度、厚さ、密度、誘電率、含水率など)、パッケージの種類および特性(例えば、形状、厚さ、サイズ、マイクロ波透過性、熱伝導率、バリア特性など)、ならびにパッケージ内の食品または飲料の配置(例えば、充填率、ヘッドスペースなど)を含むことができるが、それらには限定されない。いくつかの場合、動作プロファイルは、1つ以上の上記の物品パラメータの目標値を指定し、そのプロファイルに従って処理可能な種類の物品を線引きしてもよい。あるいは、動作プロファイルは任意の物品パラメータを指定しなくてもよく、ガイドラインとして目標パラメータの値または値の範囲を単に提供してもよい。
【0037】
図3は、本開示による動作プロファイルスキーマ300の図である。以降でさらに詳しく説明するように、動作プロファイルスキーマ300は動作プロファイル302a~nの集まりを含み、それらの各々は、一般に、図1Aのマイクロ波加熱システム100などのマイクロ波加熱システムの動作および制御に関連した情報を格納する。以降の説明では、動作プロファイル302aとその構成要素をさらに詳しく参照し、議論するが、特に指示がない限り、以降の説明は他の動作プロファイル302b~nに同様に当てはまることも理解されるべきである。
【0038】
一般に、各動作プロファイル302a~nは、動作設定ポイントの1つ以上のグループを含み、それらを使用して、物品の処理中にマイクロ波加熱システムのさまざまな態様を制御してもよい。設定ポイントの各グループはさらに、ある温度時間プロファイルに関連付けられ、温度時間プロファイルは設定ポイントの特定のグループが適用される時間上での物品の熱的挙動を一般的に説明する。各温度時間プロファイルはさらに、特定のレベルの低温殺菌または滅菌に関連付けられてもよい。したがって、動作プロファイルは、各々が1つ以上の温度時間プロファイルから生じる1つ以上の滅菌または低温殺菌レベルを含んでもよい。各温度時間プロファイルはさらに、関連する動作設定ポイントの1つ以上のグループを使用して実現してもよい。
【0039】
図3に示すように、動作プロファイル302aは、加熱されている物品の所望のレベルの低温殺菌または滅菌を指定する少なくとも1つの目標F値304を含むことができる。一般に、F値(一般に「滅菌値」とも呼ばれる)は、処理中に物品が遭遇するすべての熱処理の累積的な表現であり、加熱中に物品が実現する最小レベルの微生物致死率を表現できる。Fの値がより高いほど、微生物致死率レベルもより高くなることを示し、それはより高いレベルの低温殺菌または滅菌に対応する。致死率レベルの測定に使用される参照微生物は一般に、物品が低温殺菌されているか滅菌されているかに依存し、一般にClostridium botulinumを使用して、滅菌処理の微生物致死率を特徴付ける。低温殺菌に使用される参照微生物は、低温殺菌される特定の種類の物品により異なるが、例えば、SalmonellaまたはEscherichia coliを含むことができる。
【0040】
図3に示されるものなど、いくつかの場合、動作プロファイルは単一の目標F値304を含んでもよい。あるいは、動作プロファイルは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または5個以上の異なる目標F値を含んでもよい。各目標F値は、単一のポイント値であってもよく、値の範囲であってもよい。いくつかの場合、動作プロファイルは目標F値の明示的な値または範囲を含んでいなくてもよいが、温度時間プロファイルおよびそのプロファイル内の設定ポイント値のグループ(それらの各々をさらに詳しく以降で議論する)は、そのプロファイルが特定の目標F値を列挙していなくても、絶対最小F値を実現できるように事前に選択してもよい。一般に、約3または4の目標F値が絶対最小値と考えられ、約5または6の値がより実用的な最小値である。いくつかの場合、動作プロファイルは、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも9、もしくは少なくとも約10、および/または約15以下、約14以下、約13以下、約12以下、約11以下、もしくは約10以下の値を備えた少なくとも1つの目標Fを含むことができる。同様に、参照微生物は1つ以上の上記のものであってもよく、加熱される物品の種類、および物品が低温殺菌されているか滅菌されているかに依存して、異なる微生物であってもよい。
【0041】
また、動作プロファイル302aは、「T-tプロファイル1」から「T-tプロファイルM」として、図3に一般に示される少なくとも1つの温度時間プロファイル306a~306mを含んでもよい。温度時間プロファイル(加熱速度曲線とも呼ばれる)は一般に、加熱処理全体で物品の温度を説明する。一実装形態では、温度時間プロファイルは、物品全体が所望の度合いの低温殺菌または滅菌を実現するように、物品の最も冷たい部分、または加熱速度が最も遅い場所から取得される温度測定に対応してもよい。あるいは、または加えて、温度時間プロファイルは、例えば、最も熱いもしくは最も速い加熱ポイント、または平均温度を実現するか、平均加熱速度を示すポイントなど、物品の別の部分における温度測定に対応してもよい。さらに他の場合、温度時間プロファイルは、物品の幾何学的中心における温度測定に基づいてもよい。所定の実装形態では、第1の温度時間プロファイルは、処理された物品が最低レベルの低温殺菌または滅菌に適合するように、物品の最も冷たい(または最も遅い加熱)部分での測定に対応してもよく、第2の温度時間プロファイルは、物品の最も熱い(または最も急速な加熱)部分での測定に対応し、例えば、物品の過加熱を最小限にすることにより製品の品質確保に役立たせてもよい。
【0042】
動作プロファイル内の各温度時間プロファイルは、F値を実現する。したがって、動作プロファイルが特定の目標F値(図3のF値304など)を含まない場合でも、温度時間プロファイルはF値を実現し、例えば、少なくとも5または6のFなど、いくつかの所望の最小値を実現するように選択してもよい。動作プロファイルは、単一の温度時間プロファイルを含んでもよく、少なくとも約2個、少なくとも約3個、または少なくとも約4個の異なる温度時間プロファイルを含み、目標F値を実現するように各々選択してもよい。動作プロファイルが2つ以上の異なる温度時間プロファイルを含むとき、各プロファイルは、同じ動作プロファイル内の1つ以上の他の温度時間プロファイルと同じ、または異なる目標F値を実現してもよい。例えば、図3では、T-tプロファイル304a~304mは各々、F値304に対応するとして示されている。言い換えると、温度時間プロファイル306a~306mのいずれかに従って物品を加熱することで一般に、F値304を実現するであろう。しかしながら、他の実装形態では、温度時間プロファイル306aは、F値304をもたらす場合があるが、温度時間プロファイル306bは、F値304とは異なる第2のF値をもたらす場合がある。
【0043】
加熱処理中の物品のF値は次に、最低温度を超える温度時間曲線の下のエリアを積分することにより計算してもよい。例えば、物品が低温殺菌されている場合、最低温度は少なくとも約70℃であってもよく、F値は、物品が70℃(または他の最小値)以上の温度を有していた温度時間曲線の下のエリアを積分することにより計算できる。滅菌の場合、この最低温度は約120℃などであってもよい。したがって、ある動作プロファイル内で提供される各温度時間プロファイルは、目標F値がその動作プロファイル内で明示的に指定されていても指定されていなくても、所定の目標F値を実現するように選択される。
【0044】
所定の実装形態では、1つ以上の温度時間プロファイルは、加熱処理中に物品の温度を監視することにより取得してもよい。例えば、所定の種類の1つ以上の物品は、1つ以上の温度センサー(例えば、熱電対)を備え、動作設定ポイントの第1のグループに従って加熱処理を受けてもよい。温度時間プロファイルは次に、熱電対から取得される温度データと、温度データがいつ取得されたかに対応する関連の時間データとに基づいて生成してもよい。得られた曲線を次に使用して、上記のように対応するF値を計算してもよい。上記の処理は、動作設定ポイントの異なるグループを使用して、同じ種類の複数の物品に対して繰り返してもよく、複数の温度時間プロファイルを生成し、それらの各々が特定のF値をもたらす。設定ポイント値のグループは次に、温度時間プロファイルとF値の相対的類似性に基づいて、図3に示すような木構造または類似のリンク構造に編成してもよい。
【0045】
図3に示される温度時間プロファイル306a~306mの温度および時間データは、特定のものであってもよく、ある範囲の値に対応してもよいことも理解されるべきである。例えば、所与の温度時間プロファイルは、ある期間の加熱処理の最低温度、ある期間の加熱処理の最高温度、特定の時間における加熱処理の特定の目標温度、またはそれらの任意の変形形態を含んでもよい。したがって、動作設定ポイントの複数のグループがある物品の異なる熱的挙動をもたらしてもよいが、設定ポイントの複数のグループの熱的挙動はそれにもかかわらず、十分に類似してもよく、もしくは共通のしきい値に適合させ、設定ポイントの複数のグループに対して得られる時間温度プロファイルが、ある動作プロファイルを生成する目的では同じと考えられるようにしてもよい。
【0046】
また、本明細書で説明される動作プロファイルは、設定ポイントの少なくとも1つのグループを含む。例えば、図3の動作プロファイル302aは、設定ポイントグループA~Dの308a~dを含み、設定ポイントグループAとBはT-tプロファイル1の306aを実現し、設定ポイントグループCとDはT-tプロファイル2の306bを実現する。設定ポイントの各グループは、少なくとも1つのマイクロ波システムパラメータの1つ以上の目標値を含む。これらの目標値を使用して、マイクロ波加熱システムの動作を制御し、加熱システムを通った物品の温度が温度時間プロファイルに近似して目標F値を実現する。
【0047】
各動作プロファイルは、設定ポイント値の単一のグループを含んでもよく、いくつかの場合、設定ポイント値の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の異なるグループを含んでもよい。上端に必ずしも限定されないが、動作プロファイルは、設定ポイント値の50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、または15個未満のグループを含んでもよい。動作プロファイルが2つ以上の温度時間プロファイルを含む場合、設定ポイント値の少なくとも1つのグループを選択して、同じ温度時間プロファイルを実現できる。いくつかの場合、設定ポイント値の2つ以上の異なるグループを選択して、同じ温度時間プロファイルを実現してもよい。あるいは、または加えて、設定ポイント値の2つの異なるグループを選択して、異なる温度時間プロファイルを実現してもよい。
【0048】
例えば、動作プロファイルは、単一の温度時間プロファイルと、その温度時間プロファイルを実現するように選択された設定ポイント値の2つ以上のグループとを含むことができる。別の例では、動作プロファイルは、2つの温度時間プロファイルと、各温度時間プロファイルを実現するように選択された設定ポイント値の少なくとも1つのグループとを含むことができる。動作プロファイルが少なくとも2つの温度時間プロファイルを含むとき、各プロファイルはそのプロファイルを実現するために少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、もしくは少なくとも4個、および/または10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、3個以下、2個以下の異なる設定ポイント値のグループを有してもよい。各温度時間プロファイルは、同じまたは異なる動作プロファイル内の1つ以上の他の温度時間プロファイルと同じ、または異なる数の設定ポイント値のグループを有してもよい。
【0049】
設定ポイント値の各グループは、1つ以上の異なるマイクロ波システムパラメータの各々に対して少なくとも1つの目標値を含んでもよい。図3に示すように、例えば、設定ポイントグループAの308aは、とりわけ、マイクロ波(MW)正味電力、水温、および搬送速度の設定ポイント/目標値を含む。動作プロファイルが設定ポイント値の2つ以上のグループを含むとき、各グループは、1つ以上の他のグループ内の同じパラメータの目標値と異なるか、または同じマイクロ波システムパラメータの目標値を有してもよい。いくつかの場合、設定ポイント値の各グループは同じマイクロ波システムパラメータの目標値を含んでもよく、1つ以上のグループが異なるマイクロ波システムパラメータの目標値を含んでもよい。
【0050】
適切なマイクロ波システムパラメータの例は、放出される総正味マイクロ波電力、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、マイクロ波加熱チャンバーを通る搬送ライン速度、放出される正味マイクロ波電力(発射器ごとまたは発射器の対ごと)、休止時間、予熱区画の液体温度、予熱区画の液体流量、予熱区画の搬送ライン速度、保持区画の液体温度、保持区画の液体流量、保持区画の搬送ライン速度、冷却区画の液体温度、冷却区画の液体流量、冷却区画の搬送ライン速度、全体の搬送ライン速度、および全体の生産速度を含むことができるが、それらには限定されない。これらのパラメータの各々の値の例(広い範囲、中間の範囲、狭い範囲として提供)を、以下の表1(低温殺菌)および2(滅菌)にまとめる。本明細書に説明されている1つ以上の他の範囲内の値が適切であってもよい。
【表1】
【表2】
【0051】
設定ポイント値のグループにおいて提供される各目標値の特定の形式は、さまざまであってもよい。例えば、いくつかの場合、目標値は、許容可能な偏差ありまたはなしの単一の目標値であってもよい。この偏差は、例えば、目標値のパーセンテージおよび/または絶対差として表現される目標値からの許容可能な変動であってもよい。例えば、設定ポイント値のグループは、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値の100℃を含んでもよく、設定ポイント値の±5℃または±5%の許容偏差を指定してもよい。許容偏差が設定ポイント値のパーセンテージとして指定されているとき、それは、設定ポイント値の少なくとも約±1%、2%、5%、8%、9%、10%、15%または20%であってもよい。絶対差として表現される特定の偏差は、特定のパラメータ自体に依存する。例えば制限なく、温度関連の値(例えば、いずれかの区画の液体温度)の偏差は、少なくとも約±1、2、3、5または8℃の許容偏差を有してもよい。速度関連の値(例えば、搬送速度)の偏差は、少なくとも約±0.01、0.025、0.05、0.10、0.25または0.50in/sの許容偏差を有してもよい。電力関連の値の偏差(例えば、放出される総正味電力または発射器ごとに放出される正味電力)は、少なくとも約±2、5、10または15kWの許容偏差を有してもよい。
【0052】
他の場合、動作設定ポイントのグループにおいて指定された目標値は、所与のパラメータの値の範囲であってもよい。このような範囲は、すでに説明したような許容偏差を含んでも含まなくてもよい。いくつかの場合、目標値として提供される値の範囲は、望ましい設定ポイント値とその許容偏差とを包含してもよい。例えば、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の100℃±5℃(または±5%)の目標値は、95~105℃のマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値として、動作設定ポイントのグループ内に表現してもよい。
【0053】
あるいは、または加えて、動作プロファイル内の設定ポイント値の1つ以上のグループは、1つ以上のマイクロ波システムパラメータの目標値として、事前に決定した最大値および/または事前に決定した最小値を含んでもよい。これらの最大値と最小値は、食品の最終品質、および/またはその低温殺菌もしくは滅菌の必要レベルを維持するために許容可能な所与のパラメータの最大値と最小値をそれぞれ表現してもよい。
【0054】
低温殺菌または滅菌の目標レベルに関連した最小値と最大値は、例えば、放出される最小総正味マイクロ波電力、マイクロ波加熱チャンバーの最低液体温度、マイクロ波加熱チャンバーを通る最高搬送ライン速度、放出される最小正味マイクロ波電力(発射器ごとまたは発射器の対ごと)、予熱区画の最低液体温度、予熱区画の最高搬送ライン速度、保持区画の最低液体温度、保持区画の最高搬送ライン速度、および最大の全搬送ライン速度を含んでもよい。いくつかの場合、これらの最大値を超えるか、またはこれらの最小値よりも下で動作させることで、物品が所望のレベルの低温殺菌または滅菌を実現できない場合がある。最終製品の全体的な品質に関連した最小値と最大値は、例えば、放出される最大総正味マイクロ波電力、マイクロ波加熱チャンバーを通る最低搬送ライン速度、放出される最大正味マイクロ波電力(発射器ごとまたは発射器の対ごと)、保持区画の最高搬送ライン速度、および最小の総搬送ライン速度を含んでもよい。これらのパラメータのいくつかの例示的な最小および最大目標値は、表1および2にまとめる。
【0055】
動作プロファイル内の設定ポイント値の各グループは、各マイクロ波システムパラメータの単一の目標値を含んでもよく、2つ以上の目標値を含んでもよい。設定ポイントのグループが2つ以上の目標値を含むとき、1つ以上の値は、1つ以上の他のものよりも重要であるとして列挙してもよい。一般に、設定ポイント値の単一のグループは、単一のパラメータに対して3つより多くの異なる目標値を含まなくてもよい。例えば、設定ポイントのグループは、事前に決定した最大値(例えば、100kW)および事前に決定した最小値(例えば、50kW)とともに、許容偏差(例えば、±5kW)ありまたはなしの単一の目標値(例えば、75kWの放出される総正味電力)を含んでもよい。これらは例示的な値であるものとし、必ずしも限定的ではない。
【0056】
いくつかの場合、動作プロファイル内で提供される目標値は、「ポイント」、つまり静的な値であってもよいが、他の場合で、1つ以上の目標値は時間とともに変化してもよい。1つ以上の目標値が時間とともに変化するとき、その変化は階段状であり、目標値の値は、処理中の1つ以上の所与の時間に変化し、次の変化まで一般的に一定に留まってもよく、連続的であり、目標値は、処理時間の関数として直線または滑らかな曲線に従ってもよい。
【0057】
すでに列挙されているマイクロ波システムパラメータは、マイクロ波加熱システムの動作中に直接制御される傾向があるものである。いくつかの場合、動作プロファイルは、1つ以上の他のマイクロ波システムパラメータの目標値または目標値の範囲を含んでもよく、それらは容易に制御可能または測定可能ではないが、所望のレベルの低温殺菌または滅菌を依然として部分的に実現してもよい。このような「間接的な」パラメータの例は、最低物品温度、単一の物品内のホットスポットとコールドスポットとの間の最大温度差、単一のキャリアの物品間のホットスポットとコールドスポットとの間の最大温度差、加熱ゾーン内の物品滞留時間、およびそれらの組み合わせを含むことができるが、それらには限定されない。以降の表3(低温殺菌)および4(滅菌)は、上で列挙した追加パラメータの各々に対する可能な値の広い範囲、中間の範囲および狭い範囲を提供する。
【表3】
【表4】
【0058】
上記の表3および4のパラメータは必ずしも、マイクロ波加熱システムの制御システムへの入力として直接使用されるわけではないが、動作プロファイル内の設定ポイント値の1つ以上のグループは、1つ以上のこれらの間接的なパラメータの所望の範囲を同様に含んでもよい。
【0059】
全体として、設定ポイント値のグループを選択して、所望の温度時間プロファイルを実現し、このプロファイルに従うとき、加熱される物品の目標Fを実現するであろう。動作プロファイルのすべてまたは一部が政府の規制機関により承認されているいくつかの場合、この動作プロファイルに従って作製された物品は、適用可能な食品安全基準に準拠してもよいが、特定の手続きおよび承認は国または地域ごとにさまざまな場合がある。
【0060】
ここで以降の図4を参照すると、本開示の実装形態によるマイクロ波加熱システムを使用して物品を低温殺菌または滅菌する方法400の主なステップが提供されている。
【0061】
図4に示すように、処理は、動作プロファイルを取得するステップで始まる(動作402)。動作プロファイルは、例えば、スプレッドシートまたはデータベースなどの電子形式を含む、任意の適切な形式であってもよい。それはコンピュータまたはメモリデバイスにローカルに保存してもよく、1人以上のリモートユーザーがアクセスできる中央位置に保存してもよい。他の場合、動作プロファイルは、表または他の同様のフォーマットなどの印刷形式であってもよい。単一の動作プロファイルが、電子形式と印刷形式の両方であっってもよい。
【0062】
いくつかの場合、動作プロファイルは1つ以上の処理実行から経験的データを収集することにより取得してもよく、そこでは同じ(または類似の)物品が、同じまたは異なるマイクロ波加熱システムを使用して低温殺菌または滅菌される。これらの実行中、さまざまなマイクロ波システムパラメータの値が測定または計算され、得られるデータの相関をとって、動作プロファイルを作成してもよい。各プロファイルは、同じまたは異なる条件下で動作させた少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つ以上の処理実行からのデータから構成してもよい。いくつかの場合、これらの予備実行は、動作プロファイルを使用する同じ個人または当事者により実行してもよく、別の場合、別の個人または当事者がこれらの予備実行を行って、別の個人または当事者が使用する動作プロファイルを作成してもよい。2人以上の当事者が関与するとき、当事者は同じ組織(例えば、R&D部門と運用部門)の一部であってもよく、異なる組織の一部であってもよい。
【0063】
図4に示すように、いったん取得されると、動作プロファイル内の情報のすべてまたは一部は、コンピューティングデバイスに提供してもよい(動作404)。一般に、コンピューティングデバイスは、制御システムであるか、またはマイクロ波加熱システムの制御システムに関連している。いくつかの場合、コンピューティングデバイスは、例えば、処理ロジック制御部(PLC)などの制御システムに直接接続してもよく、他の場合、コンピューティングデバイスは、データが入力され、PLCまたは他の制御部で使用するために、データの少なくとも一部を出力する補助コンピュータであってもよい。補助コンピュータを使用するいくつかの場合、出力データは制御システムに直接送信してもよく、オペレータがPLCに入力するために印刷フォーマットまたは電子フォーマットで提供してもよい。
【0064】
動作プロファイルが、設定ポイント値の2つ以上のグループ(および任意選択的に、2つ以上の温度時間プロファイル)を含むとき、その動作プロファイルを提供することは、システムを動作させる設定ポイント値の最初のグループを選択することを含んでもよい。設定ポイント値の最初のグループは、すでにコンピュータに入力されていてもよく、ユーザーによりアクセス可能である。この選択は、コンピュータへの動作プロファイルの入力中または入力後に手動で実行してもよく、コンピュータまたはPLCにより自動的に実行してもよい。いくつかの場合、動作プロファイルをコンピューティングデバイスに提供するステップは、一度に複数の動作プロファイルをコンピューティングデバイスに提供することを含み、設定ポイント値の最初のグループを選択することは、プロファイルが入力された後、しばらくして異なる動作プロファイル内の設定ポイント値のグループの中から選択してもよい。
【0065】
上記の図4に示すように、いったん設定ポイント値のグループが選択されると、マイクロ波加熱システムは次に、これらの値に基づいて動作できる(動作406)。例えば、動作プロファイルの値は、適用可能なマイクロ波システムパラメータの各々の制御設定ポイントとして制御システムにより使用してもよい。例えば、設定ポイント値の選択されたグループが、放出される正味マイクロ波電力と、マイクロ波加熱チャンバーを通る搬送ライン速度と、予熱区画の液体温度との目標値を含む場合、これらの値は、これらのパラメータの各々の設定ポイント値として制御システムにより使用されてもよい。マイクロ波加熱システムの動作は、動作プロファイルが入力されたコンピューティングデバイス、および、例えば、オペレータなどにより間接的に選択された設定ポイント値のグループ、またはそれらの任意の組み合わせにより直接実行してもよい。
【0066】
いったん入力されると、マイクロ波加熱システムの動作は制御設定ポイントを使用して制御される。ここで図5を参照すると、動作プロファイルを使用してマイクロ波加熱システムを動作させる方法500が提供されている。
【0067】
図5に示すように、いったん制御設定ポイントが入力されると、システムが動作している間に、制御設定ポイントが設定されたマイクロ波システムパラメータの実際の値が測定される(動作502)。例えば、設定ポイント値の選択されたグループが、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値と、制御設定ポイントとしての設定用の目標値とを含んでいた場合、動作502は、システムが動作している間に(例えば、物品が処理されている間に)、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の実際の値を測定することを含むであろう。実際の値の測定は、直接測定を含んでもよく、および/または測定値を提供するために直接測定上で実行される計算を含んでもよい。
【0068】
各パラメータの測定値をそのパラメータの制御設定ポイントと次に比較して、差異(D1)を判定する(動作504)。この比較は制御システムにより実行してもよいが、オペレータが手動で実行することもできる。このような比較は、例えば、10秒、30秒、1分、2分、または5分ごとなどの設定された間隔で判定されるポイント比較であってもよい。あるいは、実際の値と、所与のパラメータの制御設定ポイントとを継続的に比較することにより、「実時間」で実行することもできる。これらの種類の比較の組み合わせを使用することもできる。
【0069】
測定された差異(D1)を事前に決定した許容差(PAD)と次に比較して、測定された差異がPADを超えるか、それ未満かを判定してもよい(動作506)。いくつかの場合、PADは、超えなくてもよい絶対最大値と、制御設定ポイントとの差異を見つけることにより計算してもよい。他の場合、PADは、制御設定ポイントと、マイクロ波システムパラメータの実際の値が下回らなくてもよい絶対最小値との差異を見つけることにより計算してもよい。他の場合、PADは、設定ポイントからの最大許容偏差から計算してもよく、それは絶対偏差(例えば、±10℃)または設定ポイントのパーセンテージ(例えば、設定ポイントの±10%)として表現してもよい。PADは、絶対値(例えば、±50kW)を含むことができ、制御設定ポイント(例えば、-1in/sまたは+20℃)を超えるかそれ未満の値を示す、正または負であってもよい。
【0070】
測定値とマイクロ波システムパラメータの制御設定ポイント値(D1)との差異(D1)がPAD未満である限り、システムは、設定ポイント値の選択されたグループに従って動作を継続する(つまり、システムは動作502に戻る)。いくつかの場合、D1とPADとの差異は、システム自体にさまざまな調整をもたらす場合がある(例えば、バルブを開く、より多くの冷却水を加える、発電機の出力を調整する、または搬送ラインの開始、速度の変更、もしくは停止を行う)。このような調整は、一般的な制御システムの動作と一致するが、制御設定ポイントの変更はもたらさず、元々選択された制御設定ポイントに従って物品の処理を継続することを除いて、物品に対する処置は行われない。
【0071】
しかしながら、マイクロ波加熱システムの動作中、マイクロ波システムパラメータの測定値と、その制御設定ポイント値(D1)とを比較することにより判定された差異(D1)が、事前に決定した許容差(PAD)を超える場合、マイクロ波加熱システムおよび/または処理を受けている物品に対して修正または他の処置を行ってもよい。従来、これらの種類の偏差は一般に、望ましくない動作条件に暴露された物品を処分しなければならなかったことを意味し、その結果、物品が無駄になることはなかったが、動作コストを増加させ、システムのシャットダウンと再起動により時間を損失していた。
【0072】
しかしながら、動作プロファイルを使用してマイクロ波加熱システムを制御する本開示の方法は、システムの制御設定ポイントを調整し、「範囲外」の値が新しい許容可能な範囲内になり、物品が所望のレベルの低温殺菌または滅菌を実現可能にすることにより、これらの処理偏差を「除去」可能にしてもよい。
【0073】
再び図5を参照すると、D1がPADを超えるとき、マイクロ波システムパラメータの測定値を、動作プロファイル内の設定ポイント値の他のグループにおいて提供された同じマイクロ波システムパラメータの他の目標値と次に比較することにより、この偏差を「除去」できる(動作508)。例えば、実際の測定値と、設定ポイント値の第1のグループにおけるマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の設定ポイント値との差異がPADを超える場合、次にマイクロ波加熱の液体温度の実際の測定値は、動作プロファイル内の設定ポイント値の1つ以上の他のグループにおけるこのパラメータの他の設定ポイント値と次に比較できる。測定値と設定ポイント値の他のグループの他の目標値との比較はそれぞれ、第2の差異(D2)をもたらす。
【0074】
第2の差異(D2)をそれぞれPADと次に比較し、新しい差異(D2)のいずれかがPAD未満かどうかを判定する(動作510)。この比較ステップが、パラメータの測定値と、設定ポイント値の2つ以上の異なるグループにおけるそのパラメータの目標値とを比較することを含む場合、2つ以上の第2の差異(D2)が判定されるであろう。新しい差異をそれぞれPADと次に比較し、新しい差異(D2)のいずれかがPAD未満かどうかを判定する。
【0075】
少なくとも1つの新しい差異(D2)がPAD未満であるとき、設定ポイント値の新しいグループは、システムを動作させる制御ポイントの新しい組として使用するために選択してもよい(動作512)。2つ以上の新しい差異(D2)がPAD未満であるとき、これらの目標値を含む設定ポイント値の2つのグループの一方を、新しい制御設定ポイントとして使用するために選択してもよい。いくつかの場合、マイクロ波システムパラメータの測定値からの最も小さい差異(例えば、最も小さいD2)を備えた目標値を含む設定ポイント値のグループを選択してもよい。いくつかの場合、例えば、生産速度の向上、生産時間の短縮、またはエネルギー節約などのいくつかの追加の利点を提供するため、より大きな差異D2を備えた設定ポイント値のグループを選択してもよい。いくつかの場合、制御システムは、どの設定ポイント値のグループを使用するかを選択するようにオペレータに要求してもよく、他の場合、選択を与えなくてもよく、制御システムは設定ポイント値の新しいグループの1つを自動的に選択してもよい。
【0076】
設定ポイント値の新しいグループ内のマイクロ波システムパラメータの目標値は、以前の目標値に対して「範囲外」であったマイクロ波システムパラメータの測定値により近づくであろう。これは、システムの動作に使用される設定ポイント値のグループを変更することにより、偏差を実質的に「範囲内」にする。マイクロ波システムパラメータの測定値は、もはや新しく選択した設定ポイントのグループの範囲外ではなくなる。いったん選択されると、設定ポイント値の新しいグループはコンピュータまたは制御システムに任意選択的に入力されるか、または提供され(まだ行われていない場合)、これらの設定ポイント値は次に、新しい制御設定ポイントとして選択される(動作514)。マイクロ波加熱システムは、その新しい動作パラメータに調整でき、このシステムはここで制御設定ポイントの新しいグループに従って制御できる。上記のように測定および調整を行うステップは、システムが動作し続けるとき新しい制御設定ポイントで継続する。
【0077】
一例として、85℃のマイクロ波加熱チャンバーの液体の目標値を含んだ設定ポイント値のグループを使用する温度プロファイルと、処理実行のいくつかのポイント中に70℃まで低下したマイクロ波加熱チャンバーの液体の実際の温度とで、マイクロ波加熱システムが動作している場合、設定ポイント値と、そのポイントにおける測定値との差異は15℃となるであろう。動作プロファイルが10℃のマイクロ波加熱チャンバーの液体温度のPADを指定した場合、この測定された差異(D1)は、システムが動作していた設定ポイント値の最初のグループに対しては「範囲外」になるであろう。
【0078】
この偏差に対処するために、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の「範囲外」の値(例えば、70℃)は、同じまたは異なる動作プロファイル内の設定ポイント値の1つ以上の他のグループにおけるマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値と比較できる。これらの他のグループは、同じまたは異なる温度時間プロファイルを実現するように設計してもよく、設定ポイント値の最初のグループおよび最初の温度時間プロファイルと同じ、または異なる目標F値を実現するように、それ自体を選択してもよい。範囲外の測定値(例えば、70℃)を、設定ポイント値の各々の他のグループにおける同じパラメータ(例えば、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度)の目標値と比較するとき、差異(D2)は各々に対して判定される。これらの差異(D2)の各々は、次にPADと比較する。これらの個々の差異のいずれかがPAD未満である場合、設定ポイント値のグループ(より小さな差異をもたらした目標値を含む)は、システムを動作させる設定ポイント値の新しいグループとして選択できる。
【0079】
上記の例では、70℃のマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の測定値は、設定ポイントのいくつかの他のグループにおけるマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値と比較できる。これらのグループは、他のパラメータの目標値(例えば、放出される正味電力、マイクロ波加熱チャンバー内の搬送速度など)を有してもよく、それらは、元のグループにおけるこれらのパラメータの目標値と同じか、または異なってもよい。例えば、グループBと呼ばれる設定ポイント値の1つのグループは、95℃のマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値を有してもよく、別のグループのグループCは、例えば、65℃の同じパラメータの目標値を有してもよい。したがって、測定値の70℃とグループBの目標値との差異(D2)は25℃であり、測定値の70℃とグループCの目標値との差異(D2)は5℃である。
【0080】
この例では、事前に決定した許容差が10℃である場合、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値と、この温度の測定値との差異の5℃(D2)は、事前に決定した許容差の10℃未満になるので、グループCは設定ポイント値の新しいグループとして選択されるであろう。設定ポイント値のこのグループにおけるマイクロ波加熱チャンバーの液体温度の目標値と、この温度の測定値との差異の25℃(D2)は、事前に決定した許容差の10℃を超えるので、グループBは設定ポイント値の新しいグループとして選択されないであろう。
【0081】
設定ポイント値の新しいグループとしてグループCを選択した後、このグループにおける設定ポイント値は、新しい制御設定ポイント値として制御システムにより使用され、マイクロ波加熱システムの動作は、必要に応じて設定ポイント値に適合するように調整できる。いくつかの場合、これは、1つ以上の他のマイクロ波システムパラメータの少なくとも1つの他の設定ポイント値を変更することを含むことができるが、他の制御設定ポイントを変更する必要があってもなくてもよい。例えば、マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の新しい設定ポイント値の65℃が、制御システムの新しい制御設定ポイントとして入力されるとき、これにより、1つ以上の他のマイクロ波システムパラメータの制御設定ポイントが同様に変化する場合がある。または、1つ以上の制御設定ポイントは同じままであってもよい。次に、マイクロ波加熱システムは、上で概説したようにその動作を継続できる。別の偏差が生じた場合、上記の処理を必要に応じて繰り返してもよい。
【0082】
図5に戻り参照すると、いくつかの場合、新しい差異(D2)はいずれも事前に決定した許容差未満にはならないであろう。これは、動作プロファイルが「範囲外」の値を許容範囲内にして、物品が依然として低温殺菌または滅菌の目標レベルに到達できる条件の任意の組を含まないため、偏差を除去できないことを意味する。図5に示されるように、これにより、物品に対して処置が行われることになる(動作516)。このような処置は、実行の停止、物品の取り出しおよび処分、物品の再実行、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0083】
図4に戻ると、動作プロファイルに従ってシステムを動作させた後、低温殺菌または滅菌された物品は、マイクロ波加熱システムから取り出してもよい(動作408)。そうする前に、すでに説明したように、物品を任意選択的に保持区画および/または冷却区画に通してもよい。いくつかの場合、動作プロファイルの少なくとも一部は、例えば、液体温度、搬送速度など、これらの区画に関連したさまざまなパラメータの目標値を含んでもよい。マイクロ波加熱システムから取り出された物品は、目標F値を実現していてもよく、例えば、目標値以上のF値を有することができる。いくつかの場合、低温殺菌または滅菌された物品の実際のF値は、目標F値よりも少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上のパーセンテージであってもよい。マイクロ波加熱システムにおいて処理された物品のグループにより実現される実際のF値は、物品が最低しきい温度以上であった実際の温度時間曲線の下のエリアを数値的に積分することにより測定できる。すでに議論したように、この最低しきい温度は、物品が低温殺菌されているか滅菌されているかに依存する。
【0084】
加えて、いくつかの場合、マイクロ波加熱システムは、1回以上の実行における物品の処理中に取得された1つ以上のマイクロ波システムパラメータの測定値を格納するように構成してもよい。このデータは、適用可能な規制手順に従って格納してもよく、新しい温度時間プロファイル、新しい動作プロファイル、または設定ポイント値の新しいグループを作成するために使用してもよい。
【0085】
あるいは、または加えて、1つ以上の前の処理実行中に生成されたマイクロ波システムパラメータの測定値を使用して、より最近の処理実行からのデータを評価し、最新の処理実行が、例えば、所定の温度時間プロファイルまたは特定の目標Fなど、所定の基準に適合していたかどうかを判定してもよい。一般的に、これは、所望の温度時間プロファイルおよび/またはF値を実現するように選択された設定ポイント値の1つ以上のグループを含む動作プロファイルと、所与の処理実行中に測定された1つ以上のマイクロ波システムパラメータの値を比較することにより実行できる。いくつかの場合、この方法は、処理実行の完了後に行うことができ、少なくとも1つのマイクロ波システムパラメータの1つ以上の実際の値を、少なくとも1つの動作プロファイル内の設定ポイント値の1つ以上のグループにおけるそのパラメータの目標値と比較することを含んでもよい。いくつかの場合、2つ以上の異なる動作プロファイル内の設定ポイント値の複数のグループをこの比較に使用してもよい。マイクロ波加熱システムにおいて物品を低温殺菌または滅菌するために、動作プロファイルをこのように使用することは、R&Dまたはパイロットプラントの規模拡大の目的に役立ってもよいが、商業規模の施設においてさまざまな用途を有してもよい。
【0086】
図6は、処理実行が完了した後に動作プロファイルを使用する方法600である。図のように、物品のグループをマイクロ波加熱システムにおいて加熱しながら、1つ以上のマイクロ波システムパラメータの測定値の組を取得してもよい(動作602)。処理実行の少なくとも一部またはすべてが完了した後、実行中に収集したマイクロ波システムパラメータの測定値は、動作プロファイル内の設定ポイント値の1つ以上のグループにおける同じパラメータの1つ以上の目標値と比較できる(動作604)。いくつかの場合、測定値は、いくつかの差異を判定するために、設定ポイント値の2つ以上の異なるグループに存在する同じパラメータの2つ以上の目標値と比較してもよい。測定値と各目標値との比較ごとに差異(D3)が生じる。設定ポイント値のグループは、同じまたは異なる温度時間プロファイルを実現するように選択してもよく、同じまたは異なる動作プロファイル内に存在してもよい。
【0087】
測定値と所与のマイクロ波システムパラメータの対応する各目標値との差異(D3)が、事前に決定した許容差(PAD)未満である場合、測定値は「合格」ということができる(動作606、608)。あるいは、測定値と所与のマイクロ波システムパラメータの目標値との差異(D3)が、事前に決定した許容差を超える場合、測定値は「不合格」ということができる(動作610)。そのパラメータの測定値と、設定ポイント値の各グループにおける目標値とに依存して、単一の測定値は、設定ポイント値の1つ以上のグループと比較するとき「合格」し、1つ以上の他のグループに対して「不合格」になる可能性がある。
【0088】
これらの合否分析は、設定ポイント値のいくつかのグループにわたる単一のマイクロ波システムパラメータに対して実行して、いくつかの差異を判定でき、実行中に実際の値が測定された1つ以上の他のマイクロ波システムパラメータを使用して、このステップを任意選択的に繰り返してもよい。言い換えると、図6の動作602~610に示される一般的な処理は、マイクロ波システムパラメータの組の各々に対して繰り返してもよい。
【0089】
いったんすべての比較が行われたら、合否結果の分析を使用して、もしあれば、設定ポイント値の既存のグループのどれが処理実行からの測定データを十分に包含しているかを判定できる。例えば、図7は、所与の処理実行の合否結果を分析する例示的な方法700を示す。図7に示すように、方法700は、合否データを取得することから始まる(動作702)。図6の状況において上で議論したように、合否データは一般に、システムパラメータのリストと、処理実行中に取得された測定値がシステムパラメータの設定ポイントのPAD内にあったか(「合格」)、またはPAD外にあったか(「不合格」)の対応する指示とを含む。合否データは、設定ポイントの複数のグループに対してこのような情報を含んでもよい。
【0090】
動作704において、最初の分析を実行し、処理実行の測定値が、設定ポイントのグループに対する各設定ポイント要件に対して「合格」したかどうかを判定する(動作704)。言い換えると、合否データを評価して、処理実行中のすべてのシステムパラメータが許容可能な物品を製造するための既知の範囲内にあるように、処理実行が完了したかどうかを判定する。その場合、物品を受け入れる(動作706)。
【0091】
設定ポイント値の既存のグループが、測定データを十分に包含していない場合、処理実行の温度時間曲線を分析して、物品が所望のF値を実現したかどうかを判定してもよい(動作708)。その場合、測定データの相関をとって、設定ポイント値の新しいグループ(動作710)、新しい温度時間プロファイル、および/または新しい動作プロファイルを形成できる。言い換えると、処理実行中に取得された測定値が、設定ポイントの確立されたグループの設定ポイント範囲内にはなかったが、それでもなお物品の十分な滅菌または低温殺菌を実現した場合、処理実行の測定値は、以降の処理実行で使用するための動作設定ポイントの新しいグループとして格納してもよい。一方、物品の温度時間プロファイルが適合しない場合、物品の処分または物品の再実行を含むが、これらに限定されない、物品に関するさらなる処置を行ってもよい(動作712)。
【0092】
加えて、または代わりに、測定データの組を目標値と比較するステップは、処理実行中に生成された実際の温度時間プロファイルを、動作プロファイルに存在する少なくとも1つの目標の温度時間プロファイルと比較することを含んでもよい。いくつかの場合、実際の温度時間プロファイルは、同じまたは異なる動作プロファイル内の2つ以上の温度時間プロファイルと比較してもよい。この比較は、例えば、実際の温度時間プロファイルと目標プロファイルの最大偏差を計算することと、これらの偏差を、動作プロファイルに示されている最大許容偏差と比較することとを含むことができる。あるいは、この比較は、実際の温度時間プロファイルに基づいてF値を計算することと、それを、1つ以上の温度時間プロファイルに固有の目標F値、またはその温度時間プロファイルに明示的に列挙された目標F値と比較することを含む。所定の実装形態では、例えば、実際の温度時間プロファイルは、目標温度時間プロファイルから、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下、または約1%以下だけ、加熱ステップのすべてまたは一部にわたって偏位してもよい。
【0093】
上記のように、完了した処理実行からの実際のデータを、設定ポイント値のグループ、温度時間プロファイル、および/または1つ以上の動作プロファイル内の目標F値と比較することにより判定した差異に基づいて、マイクロ波加熱システムに対して1つ以上の処置を行うことができる。いくつかの場合、物品が所望のレベルの低温殺菌または滅菌を実現していないと判定されれば、物品の廃棄または再実行を行ってもよい。しかしながら、物品が所望の処理レベルを実現している場合、低温殺菌または滅菌された物品を送って、さらに処理、保管、および/または販売を行うことができる。あるいは、マイクロ波システムの物理的構成、および/またはその全体的な動作に対して、1つ以上の調整を実行することができる。さらに、その差異により、既存の動作プロファイルを変更してもよく、設定ポイント値の新しいグループ、温度時間プロファイル、または動作プロファイルを作成してもよい。
【0094】
本開示のマイクロ波加熱システムは、比較的短時間で大量の物品を処理可能な商業規模の加熱システムであってもよい。マイクロ波エネルギーを利用して複数の物品を加熱する従来のレトルトシステムおよび他の小規模システムと比べて、本明細書に説明されたマイクロ波加熱システムは、少なくとも約5パッケージ/分、少なくとも約10パッケージ/分、約20パッケージ/分・搬送ライン、少なくとも約25パッケージ/分・搬送ライン、または少なくとも約30パッケージ/分・搬送ラインの総生産速度を実現するように構成でき、これらは、米国特許第9,357,590号に説明されたように測定され、この特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
図8を参照すると、本明細書で議論されるさまざまなシステム、処理および方法を実施してもよい1つ以上のコンピューティングユニットを有する例示的なコンピューティングシステム800の概略図が提供される。例えば、例示的なコンピューティングシステム800は、とりわけ、図1Aのマイクロ波加熱システム100の制御システム150(または制御システム150と通信するか、もしくはやり取り可能なコンピューティングデバイス)に対応してもよい。これらのデバイスの特定の実装形態は、すべてが本明細書で具体的に議論されているわけではないが、当業者には理解される異なる可能な特定のコンピューティングアーキテクチャであってもよいことも理解されるであろう。
【0096】
コンピュータシステム800は、コンピュータプログラム製品を実行し、コンピュータ処理を実行可能なコンピューティングシステムであってもよい。データおよびプログラムファイルは、ファイルを読み取り、その中のプログラムを実行するコンピュータシステム800に入力してもよい。コンピュータシステム800のいくつかの要素が図8に示され、それは1つ以上のハードウェアプロセッサ802、1つ以上のデータストレージデバイス804、1つ以上のメモリデバイス808、および/または1つ以上のポート808~812を含む。加えて、当業者により認識される他の要素が、コンピューティングシステム800に含まれてもよいが、図8には明示的に描写されていないか、または本明細書ではさらに議論されない。コンピュータシステム800のさまざまな要素は、1つ以上の通信バス、ポイントツーポイント通信経路、または図8に明示的に描写されていない他の通信手段を介して互いに通信してもよい。
【0097】
プロセッサ802は、例えば、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、および/または1つ以上の内部レベルのキャッシュを含んでもよい。1つ以上のプロセッサ802があってもよく、プロセッサ802は、単一の中央処理装置、または一般に並列処理環境と呼ばれる、命令を実行し、互いに並列に動作を実行可能な複数の処理装置を備える。
【0098】
コンピュータシステム800は、従来のコンピュータ、分散型コンピュータ、またはクラウドコンピューティングアーキテクチャを介して利用可能になる1つ以上の外部コンピュータなど、任意の他の種類のコンピュータであってもよい。現在説明されている技術は、データストレージデバイス804に格納され、メモリデバイス806に格納され、および/または1つ以上のポート808~812を介して通信されるソフトウェアにおいて任意選択的に実施され、それにより図8のコンピュータシステム800を、本明細書に説明された動作を実施するための専用機に変換する。コンピュータシステム800の例は、パーソナルコンピュータ、端末、ワークステーション、携帯電話、タブレット、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、マルチメディアコンソール、ゲームコンソール、セットトップボックスなどを含む。
【0099】
1つ以上のデータストレージデバイス804は、コンピュータ処理を実行するコンピュータ実行可能命令など、コンピューティングシステム800内で生成または利用されるデータを格納可能な任意の不揮発性データストレージデバイスを含んでもよく、それは、アプリケーションプログラムと、コンピューティングシステム800のさまざまな構成要素を管理するオペレーティングシステム(OS)の両方の命令を含んでもよい。データストレージデバイス804は、制限なく、磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュドライブなどを含んでもよい。データストレージデバイス804は、取り外し可能なデータストレージ媒体、取り外し不可能なデータストレージ媒体、および/または1つ以上のデータベース管理製品、ウェブサーバー製品、アプリケーションサーバー製品、および/または他の追加のソフトウェア構成要素を含む、このようなコンピュータプログラム製品と、有線または無線ネットワークアーキテクチャを介して利用可能な外部ストレージデバイスを含んでもよい。取り外し可能なデータストレージ媒体の例は、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク読み取り専用メモリ(DVD-ROM)、光磁気ディスク、フラッシュドライブなどを含む。取り外し不可能なデータストレージ媒体の例は、内部磁気ハードディスク、SSDなどを含む。1つ以上のメモリデバイス806は、揮発性メモリ(例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)および/または不揮発性メモリ(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリなど)を含んでもよい。
【0100】
ここで説明される技術に従ってシステムおよび方法を実現するメカニズムを含むコンピュータプログラム製品は、機械可読媒体とも呼ばれるデータストレージデバイス804および/またはメモリデバイス806内に存在してもよい。機械可読媒体は、任意の有形の非一時的媒体を含んでもよく、それは機械による実行のために、本開示の動作の任意の1つ以上を実行する命令を格納もしくは符号化できるか、またはこのような命令により利用されるか、もしくはそれらと関連したデータ構造を格納もしくは符号化できることも理解されるであろう。機械可読媒体は、単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型または分散型データベース、および/または関連のキャッシュおよびサーバー)を含んでもよく、それらは1つ以上の実行可能な命令またはデータ構造を格納する。
【0101】
いくつかの実装形態では、コンピュータシステム800は、入出力(I/O)ポート808、通信ポート810、およびサブシステムポート812などの1つ以上のポートを含み、他のコンピューティング、ネットワーク、または同様のデバイスと通信を行う。ポート808~812は、組み合わせても分離してもよく、より多いまたはより少ないポートがコンピュータシステム800に含まれてもよいことも理解されるであろう。
【0102】
I/Oポート808は、I/Oデバイスまたは他のデバイスに接続してもよく、それにより、情報がコンピューティングシステム800に入力されるか、そこから出力される。このようなI/Oデバイスは、制限なく、1つ以上の入力デバイス、出力デバイス、および/または環境変換デバイスを含んでもよい。
【0103】
一実装形態では、入力デバイスは、I/Oポート808を介してコンピューティングシステム800への入力データとして、人間の声、物理的な動き、物理的な接触または圧力などの人間が生成した信号を電気信号に変換する。同様に、出力デバイスは、I/Oポート808を介してコンピューティングシステム800から受信した電気信号を、音、光、および/または接触など、人間による出力として感知し得る信号に変換してもよい。入力デバイスは、英数字入力デバイスであってもよく、I/Oポート808を介してプロセッサ802に、情報および/またはコマンド選択を通信するための英数字および他のキーを含む。入力デバイスは、別の種類のユーザー入力デバイスであってもよく、マウス、トラックボール、カーソル方向キー、ジョイスティック、および/またはホイールなどの方向制御および選択制御デバイス、カメラ、マイクロフォン、位置センサー、方位センサー、重力センサー、慣性センサー、および/または加速度計などの1つ以上のセンサー、ならびに/またはタッチ感知ディスプレイスクリーン(「タッチスクリーン」)を含むが、これらに限定されない。出力デバイスは、制限なく、ディスプレイ、タッチスクリーン、スピーカー、触知および/または触覚出力デバイスなどを含んでもよい。いくつかの実装形態では、例えば、タッチスクリーンの場合、入力デバイスと出力デバイスは同じデバイスであってもよい。
【0104】
環境変換デバイスは、I/Oポート808を介して、コンピューティングシステム800への入力またはそこからの出力のために、一形態のエネルギーまたは信号を別の形態に変換する。例えば、コンピューティングシステム800内で生成された電気信号は、別の種類の信号に変換してもよく、および/またはその逆を行ってもよい。一実装形態では、環境変換デバイスは、光、音、温度、圧力、磁場、電場、化学的性質、物理的動き、方向、加速度、重力など、コンピューティングデバイス800の近くの、またはそこから離れた環境の特性または状況を感知する。さらに、環境変換デバイスは、いくつかのオブジェクト(例えば、機械的アクチュエータ)の物理的移動、物質の加熱または冷却、化学物質の追加など、例示的なコンピューティングデバイス800の近くの、またはそこから離れたいずれかの環境に何らかの影響を与える信号を生成してもよい。
【0105】
一実装形態では、通信ポート810はネットワークに接続され、それを介して、コンピュータシステム800は、本明細書に記述された方法およびシステムを実行し、それにより決定された情報およびネットワーク構成変更を送信するのに役立つネットワークデータを受信してもよい。言い換えると、通信ポート810は、1つ以上の有線または無線通信ネットワークまたは接続を介して、コンピューティングシステム800と他のデバイスとの間で情報を送信および/または受信するように構成された1つ以上の通信インターフェースデバイスに、コンピュータシステム800を接続する。このようなネットワークまたは接続の例は、制限なく、Universal Serial Bus(USB)、イーサネット、WiFi、Bluetooth(登録商標)、Near Field Communication(NFC)、Long-Term Evolution(LTE)などが含む。1つ以上のこのような通信インターフェースデバイスは、通信ポート810を介して利用し、ポイントツーポイント通信経路、ワイドエリアネットワーク(WAN)(例えば、インターネット)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、セルラー(例えば、第3世代(3G)または第4世代(4G))ネットワーク、または別の通信手段上のいずれかで1つ以上の他の機械と通信を行ってもよい。さらに、通信ポート810は、電磁信号の送信および/または受信用のアンテナを介して通信を行ってもよい。
【0106】
コンピュータシステム800は、1つ以上のサブシステムと通信を行うサブシステムポート812を含み、1つ以上のサブシステムの動作を制御し、コンピュータシステム800と1つ以上のサブシステムとの間で情報を交換してもよい。このようなサブシステムの例は、制限なく、撮像システム、レーダー、LIDAR、モーター制御部およびシステム、バッテリー制御部、燃料電池または他のエネルギー貯蔵システムまたは制御部、照明システム、ナビゲーションシステム、環境制御部、エンターテインメントシステムなどを含む。
【0107】
図8に示されるシステムは、本開示の態様に従って利用または構成してもよいコンピュータシステムの1つの可能な例にすぎない。現在開示されている技術をコンピューティングシステム上で実施するコンピュータ実行可能命令を格納する他の非一時的な有形のコンピュータ可読ストレージ媒体を利用してよいことも理解されるであろう。
【0108】
本開示の理解を深めるために、多数の例が本明細書に提供されている。記述の特定の組は、次のように提供される。このような記述は、本開示の潜在的な実装形態の例とすることのみを意図し、本開示の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【0109】
本明細書で使用されるとき、「備える(comprising、comprisesおよびcomprise)」という用語は、その用語の前に記述された主題から用語の後に記述された1つ以上の要素に転換するために使用される非限定的な転換語であり、転換語の後に列挙された1つ以上の要素は、必ずしも主題を構成する唯一の要素ではない。
【0110】
本明細書で使用されるとき、「含む(including、includesおよびinclude)」という用語は、「備える」と同じ非限定的な意味を有する。
【0111】
本明細書で使用されるとき、「有する(having、hasおよびhave)」という用語は、「備える」と同じ非限定的な意味を有する。
【0112】
本明細書で使用されるとき、「包含する(containing、containsおよびcontain)」という用語は、「備える」と同じ非限定的な意味を有する。
【0113】
本明細書で使用されるとき、「ある(a、an)」、「その(the)」および「前記(said)」という用語は、1つ以上を意味する。
【0114】
本明細書で使用されるとき、「および/または」という用語は、2つ以上の項目のリストにおいて使用されるとき、いずれか1つの列挙された項目を単独で利用することも、2つ以上の列挙された項目の任意の組み合わせを利用することもできることを意味する。例えば、組成物が構成要素A、Bおよび/またはCを包含すると説明されている場合、組成物はAのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを組み合わせて、AとCを組み合わせて、BとCを組み合わせて、またはA、BおよびCを組み合わせて包含することができる。
【0115】
本明細書で一般的に使用されるように、「約」、「実質的に」、および「ほぼ」という用語は、測定の性質または精度を考慮して、測定された量の許容可能な誤差の度合いを指す。一般的な例示的な誤差の度合いは、所与の値または値の範囲の20%以内、10%以内、または5%以内であってもよい。
【0116】
本明細書に記述されたすべての数量は、特に指示がない限り、「約」という用語によりすべての場合に修正されるものとして理解されるべきである。本明細書に開示される数量は近似であり、各数値は、記述された値と、その値を取り囲む機能的に等価な範囲との両方を意味するものとする。少なくとも、請求項の範囲に対する等価物の原理の適用に限定しようとはせず、各数値は少なくとも、報告された有効桁数の数字を考慮して、通常の丸め手法を適用することにより解釈するべきである。本明細書に記述された数量の近似にもかかわらず、実際の測定値の特定の例において説明されている数量は、可能な限り正確に報告されている。
【0117】
本明細書に記述されたすべての数値の範囲は、そこに包含されたすべての部分範囲を含む。例えば、「1~10(1 to 10)」および「1~10(between 1 and 10)」の範囲は、記述された最小値1と記述された最大値10との間(それらの最小値1と最大値10とを含む)を含むすべての部分範囲を含むものとする。
【0118】
すべてのパーセンテージと比率は、特に指示がない限り、重量により計算する。すべてのパーセンテージと比率は、特に指示がない限り、化合物または組成物の総重量に基づいて計算する。
【0119】
本開示は、さまざまな実装形態を参照しながら説明してきたが、これらの実装形態は例示的であり、本開示の範囲はそれらに限定されないことが理解されるであろう。多くの変形、修正、追加および改善も可能である。より一般的には、本開示による実装形態は、特定の実装形態の状況において説明してきた。機能は分離してもよく、本開示のさまざまな実装形態において異なるようにブロック内で組み合わせてもよく、異なる用語で説明してもよい。これらおよび他の変形、修正、追加および改善は、以降の請求において定義されるように、本開示の範囲内にあってもよい。
【0120】
以上のことから、特定の実装形態を図示し説明してきたが、当業者には明らかなように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、そこにさまざまな修正を実行できることが理解されるべきである。このような変更および修正は、添付の特許請求の範囲に定義されているように、本開示の範囲および教示内である。
【0121】
本開示の理解を深めるために、多数の例が本明細書に提供されている。記述の特定の組は、次のように提供される。このような記述は、本開示の潜在的な実装形態の例としてのみ意図され、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0122】
記述1.液体充填マイクロ波加熱システムにおいて、複数の物品を低温殺菌または滅菌する方法であって、この方法は、(a)前記マイクロ波加熱システムにおいて、第1の種類の物品を加熱するのに適した動作プロファイルを取得することであって、前記動作プロファイルは、目標F値を実現するように選択された少なくとも1つの温度時間プロファイルと、前記温度時間プロファイルを実現するように選択された設定ポイント値の少なくとも1つのグループとを含み、設定ポイント値の各グループは、システム制御パラメータの少なくとも1つの目標値を含む、取得することと、(b)制御システムに関連したコンピュータに前記動作プロファイルの少なくとも一部を入力し、前記マイクロ波加熱システムの動作を調整することと、(c)設定ポイント値の前記グループに基づいて前記マイクロ波加熱システムを動作させることであって、動作させることは、複数の前記第1の種類の物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿って液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことを含み、前記物品は、前記通している間に液体媒体に浸漬させ、前記通すことの少なくとも一部の間に、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出し、前記マイクロ波エネルギーの少なくとも一部を使用して前記物品を加熱し、前記通すことおよび/または前記加熱することの少なくとも一部は、前記制御システムを使用して実行される、動作させることと、(d)前記マイクロ波加熱システムから低温殺菌または滅菌された物品を取り出すことであって、前記低温殺菌または滅菌された物品は、前記目標F値以上のF値を実現している、取り出すことと、を含む、方法。
【0123】
記述2.前記動作プロファイルは、前記目標F値、設定ポイント値の第1のグループおよび設定ポイント値の第2のグループを実現するように選択された第1の温度時間プロファイルを備え、設定ポイント値の前記第1のグループは、前記システム制御パラメータの第1の目標値を含み、設定ポイント値の前記第2のグループは、前記システム制御パラメータの第2の目標値を含む、記述1に記載の方法。
【0124】
記述3.前記動作プロファイルはさらに、前記目標F値を実現するように選択された第2の温度時間プロファイルを含む、記述2に記載の方法。
【0125】
記述4.設定ポイント値の前記第1のグループは、前記第1の温度時間プロファイルを実現するように選択され、設定ポイント値の前記第2のグループは、前記第2の温度時間プロファイルを実現するように選択される、記述3に記載の方法。
【0126】
記述5.設定ポイント値の前記第1および前記第2のグループの各々は、前記第1の温度時間プロファイルを実現するように選択され、前記第1の目標値は第2の目標値とは異なる、記述2に記載の方法。
【0127】
記述6.前記システム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、および前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度からなるグループから選択される、記述1に記載の方法。
【0128】
記述7.前記システム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力であり、設定ポイント値の前記グループは、放出される総正味マイクロ波電力の少なくとも1つの目標値を含む、記述6に記載の方法。
【0129】
記述8.放出される前記総正味マイクロ波電力の前記目標値は、25kW~250kWの範囲内にある、記述7に記載の方法。
【0130】
記述9.放出される総正味マイクロ波電力の前記目標値は、放出される総正味マイクロ波電力の最小値を含み、かつ少なくとも20kWであり、および/または放出される前記総正味マイクロ波電力の前記目標値は、放出される総正味マイクロ波電力の最大値を含み、かつ300kW以下である、記述7に記載の方法。
【0131】
記述10.前記システム制御パラメータは、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度であり、設定ポイント値の前記グループは、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の少なくとも1つの目標値を含む、記述6に記載の方法。
【0132】
記述11.前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の前記目標値は、55℃~105℃の範囲内であるか、または95℃~125℃の範囲内にある、記述10に記載の方法。
【0133】
記述12.前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の前記目標値は、最低液体温度であり、かつ少なくとも40℃または少なくとも90℃であり、および/または前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度の前記目標値は、最高液体温度であり、かつ95℃以下または135℃以下である、記述10に記載の方法。
【0134】
記述13.前記システム制御パラメータは、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量であり、設定ポイント値の前記グループは、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量の少なくとも1つの目標値を含む、記述6に記載の方法。
【0135】
記述14.前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量の前記目標値は、2~50ガロン/分(gpm)の範囲内であり、および/または前記マイクロ波加熱チャンバー内の液体流量の前記目標値は、最低流量で少なくとも1gpmであり、および/または前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量の前記目標値は、最大流量で75gpm以下である、記述13に記載の方法。
【0136】
記述15.前記システム制御パラメータは、前記マイクロ波加熱チャンバーを通る搬送速度であり、設定ポイント値の前記グループは、前記マイクロ波加熱チャンバーを通る搬送速度の少なくとも1つの目標値を含む、記述6に記載の方法。
【0137】
記述16.搬送速度の前記目標値は、0.50~5インチ/秒(in/s)の範囲内であり、および/または搬送速度の前記目標値は、最低搬送速度で少なくとも0.25in/sであり、および/または搬送速度の前記目標値は、最高搬送速度で6in/s以下である、記述15に記載の方法。
【0138】
記述17.前記放出することは、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出するように構成された少なくとも2つのマイクロ波発射器を使用して実行される、記述1に記載の方法。
【0139】
記述18.前記マイクロ波発射器は、前記マイクロ波加熱チャンバーの反対側に配置される、記述17に記載の方法。
【0140】
記述19.前記マイクロ波発射器は、前記マイクロ波加熱チャンバーの同じ側に配置され、かつ前記搬送ラインに沿った前記キャリアの進行方向に沿って互いに離間され、ステップ(c)の前記動作させることは、前記キャリアを前記マイクロ波発射器の1つに通し、前記発射器と隣接するマイクロ波発射器との間の空間に通し、事前に決定した休止時間に前記空間に保持された前記キャリアと前記物品とは、前記休止時間中にマイクロ波エネルギーに暴露されず、前記システム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度、および総休止時間からなるグループから選択される、記述17に記載の方法。
【0141】
記述20.前記システム制御パラメータは総休止時間であり、設定ポイント値の前記グループは、総休止時間の少なくとも1つの目標値を含み、総休止時間の前記目標値は、30秒~5分の範囲内であり、および/または総休止時間の前記目標値は、最短休止時間であり、かつ少なくとも10秒であり、および/または総休止時間の前記目標値は、最長休止時間であり、かつ10分以下である、記述19に記載の方法。
【0142】
記述21.前記動作させることはさらに、前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通す前に、搬送ラインに沿って液体充填予熱区画に前記キャリアを通すことを含み、前記物品は前記通している間に、前記予熱区画の温かい液体媒体に浸漬させ、前記システム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度、前記予熱区画の液体温度、前記予熱区画の液体流量、および前記予熱区画を通る前記キャリアの搬送速度からなるグループから選択される、記述1に記載の方法。
【0143】
記述22.前記システム制御パラメータは、前記予熱区画の液体温度であり、設定ポイントの前記グループは、前記予熱区画の液体温度の少なくとも1つの目標値を含む、記述21に記載の方法。
【0144】
記述23.前記予熱区画の液体温度の前記目標値は、60℃~95℃の範囲内である、記述22に記載の方法。
【0145】
記述24.前記予熱区画の液体温度の前記目標値は、最低液体温度で少なくとも45℃であるか、または前記予熱区画の液体温度の前記目標値は、最高液体温度で95℃以下である、記述22に記載の方法。
【0146】
記述25.前記システム制御パラメータは、前記予熱区画の液体流量であり、設定ポイント値の前記グループは、前記予熱区画の液体流量の少なくとも1つの目標値を含み、前記予熱区画の液体流量の前記目標値は、2~50ガロン/分(gpm)の範囲内であり、前記予熱区画の液体流量の前記目標値は、最低流量で少なくとも1gpmであり、および/または前記予熱区画の液体流量の前記目標値は、最大流量で75gpm以下である、記述21に記載の方法。
【0147】
記述26.前記システム制御パラメータは、前記予熱区画を通る搬送速度であり、設定ポイント値の前記グループは、前記予熱区画を通る搬送速度の少なくとも1つの目標値を含み、前記予熱区画を通る前記搬送速度の前記目標値は、0.50~5インチ/秒(in/s)の範囲内であり、および/または搬送速度の前記目標値は、最低搬送速度であり、かつ少なくとも0.25in/sであり、および/または前記搬送速度の目標値は、最高搬送速度であり、かつ6in/s以下である、記述21に記載の方法。
【0148】
記述27.前記ステップ(c)の前記動作させることはさらに、前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通すことに続いて、前記キャリアを搬送ラインに沿って液体充填保持区画に通すことを含み、前記通している間に、前記保持区画の加熱した液体媒体内に前記物品を浸漬させ、前記システム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度、前記保持区画の液体温度、前記保持区画の液体流量、および前記保持区画を通る前記キャリアの搬送速度からなるグループから選択される、記述1に記載の方法。
【0149】
記述28.前記システム制御パラメータは、前記保持区画の液体温度であり、設定ポイントの前記グループは、前記保持区画の液体温度の少なくとも1つの目標値を含む、記述27に記載の方法。
【0150】
記述29.前記保持区画の液体温度の前記目標値は、75℃~100℃の範囲内であるか、または110℃~135℃の範囲内にある、記述28に記載の方法。
【0151】
記述30.前記保持区画の液体温度の前記目標値は、最低液体温度で少なくとも65℃であるか、または少なくとも100℃であり、および/または前記保持区画の液体温度の前記目標値は、最高液体温度であり、かつ110℃以下または140℃以下である、記述28に記載の方法。
【0152】
記述31.前記システム制御パラメータは、前記保持区画の液体流量であり、設定ポイント値の前記グループは、前記保持区画の液体流量の少なくとも1つの目標値を含み、前記保持区画の液体流量の前記目標値は、2~50ガロン/分(gpm)の範囲内であり、および/または前記保持区画の液体流量の前記目標値は、最低流量で少なくとも1gpmであり、前記保持区画の液体流量の前記目標値は、最高流量であり、かつ75gpm以下である、記述27に記載の方法。
【0153】
記述32.前記システム制御パラメータは、前記保持区画を通る搬送速度であり、設定ポイント値の前記グループは、前記保持区画を通る搬送速度の少なくとも1つの目標値を含み、前記保持区画を通る搬送速度の前記目標値は、0.50~5インチ/秒(in/s)の範囲内にあり、および/または搬送速度の前記目標値は、最低搬送速度であり、かつ少なくとも0.25in/sであり、および/または搬送速度の前記目標値は、最高搬送速度であり、かつ6in/s以下である、記述27に記載の方法。
【0154】
記述33.ステップ(c)の前記動作させることはさらに、前記キャリアを前記マイクロ波加熱チャンバーに通すことに続いて、前記キャリアを搬送ラインに沿って液体充填冷却区画に通すことを含み、前記物品は、前記通している間に、前記冷却区画の冷たい液体媒体に浸漬させ、前記システム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度、前記冷却区画の液体温度、前記冷却区画の液体流量、および前記冷却区画を通る前記キャリアの搬送速度からなるグループから選択される、記述1に記載の方法。
【0155】
記述34.前記システム制御パラメータは、前記冷却区画の液体温度であり、設定ポイントの前記グループは、前記冷却区画の液体温度の少なくとも1つの目標値を含み、前記冷却区画の液体温度の前記目標値は、35℃~60℃の範囲内にあり、および/または前記冷却区画の液体温度の前記目標値は、最低液体温度で少なくとも30℃であり、および/または前記冷却区画の液体温度の前記目標値は、最高液体温度であり、かつ65℃以下である、記述33に記載の方法。
【0156】
記述35.前記システム制御パラメータは、前記冷却区画の液体流量であり、設定ポイント値の前記グループは、前記冷却区画の液体流量の少なくとも1つの目標値を含み、前記冷却区画の液体流量の前記目標値は、2~50ガロン/分(gpm)の範囲内にあるか、または前記冷却区画の液体流量の前記目標値は、最低流量で少なくとも1gpmであり、および/または前記冷却区画の液体流量の前記目標値は、最大流量であり、かつ75gpm以下である、記述33に記載の方法。
【0157】
記述36.前記システム制御パラメータは、前記冷却区画を通る搬送速度であり、設定ポイント値の前記グループは、前記冷却区画の搬送速度の少なくとも1つの目標値を含み、搬送速度の前記目標値は、0.50~5インチ/秒(in/s)の範囲内であり、および/または搬送速度の前記目標値は、最低搬送速度であり、かつ少なくとも0.25in/sであり、および/または搬送速度の前記目標値は、最高搬送速度であり、かつ6in/s以下である、記述33に記載の方法。
【0158】
記述37.ステップ(c)の前記動作させることはさらに、(i)加熱することの少なくとも一部の間に、前記システム制御パラメータの値を測定して測定値を提供することと、(ii)前記測定値を、設定ポイント値の前記グループにおける前記システム制御パラメータの前記目標値と比較して差異を判定することと、(iii)前記差異を事前に決定した許容差と比較し、前記差異が前記事前に決定した許容差未満であるとき、前記マイクロ波加熱システムの動作を継続し、前記差異が前記事前に決定した許容差を超えるとき、前記システムに対して処置を行うことと、を含む、記述1に記載の方法。
【0159】
記述38.前記処置は、前記物品を廃棄すること、前記マイクロ波加熱システムを通す前記物品の再実行を行うこと、放出される総正味マイクロ波電力を増大もしくは減少させること、前記マイクロ波加熱チャンバー内の液体流量を増大もしくは減少させること、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度を上昇もしくは低下させること、または前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度を上昇もしくは低下させること、またはそれらの2つ以上の組み合わせからなるグループから選択される、記述37に記載の方法。
【0160】
記述39.前記取得することは、前記マイクロ波加熱システムまたは別のマイクロ波加熱システムにおいて、前記第1の種類の物品のグループを加熱することと、前記加熱している間に1つ以上のシステム制御パラメータの値を測定して、測定値の組を提供することと、前記測定値の相関をとって前記動作プロファイルを提供することと、を含む、記述1に記載の方法。
【0161】
記述40.前記取得することは、他の当事者から前記加熱プロファイルを取得することを含む、記述1に記載の方法。
【0162】
記述41.第2の種類の物品を低温殺菌または滅菌するのに適した別の動作プロファイルを取得することと、前記別の動作プロファイルを使用してステップ(b)~(e)を繰り返し、複数の前記第2の種類の物品を低温殺菌または滅菌することと、をさらに含む、記述1に記載の方法。
【0163】
記述42.前記マイクロ波加熱システムは、少なくとも20パッケージ/分の総生産速度を有する、記述1に記載の方法。
【0164】
記述43.液体充填マイクロ波加熱システムにおいて、複数の物品を低温殺菌または滅菌する方法であって、(a)前記マイクロ波加熱システムの動作プロファイルを取得することであって、前記動作プロファイルは、目標F値を実現するための少なくとも1つの温度時間プロファイルと、設定ポイント値の少なくとも2つのグループとを含み、設定ポイント値の各グループは、第1のシステム制御パラメータの少なくとも1つの目標値を含む、取得することと、(b)前記液体充填マイクロ波加熱システムの動作を調整する制御システムに関連した少なくとも1つのコンピュータに、前記動作プロファイルを入力することと、(c)前記動作プロファイルから設定ポイント値の第1のグループを選択することであって、設定ポイント値の前記第1のグループは、前記第1のシステム制御パラメータの第1の目標値を含み、前記第1の目標値は、前記第1のシステム制御パラメータの動作設定ポイントとして前記制御システムにおいて使用される、選択することと、(d)設定ポイント値の前記第1のグループに従って、前記マイクロ波加熱システムを動作させることであって、前記動作させることは、(i)複数の物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿って液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことであって、前記通している間に、液体媒体に前記物品を浸漬させる、通すこと、(ii)前記通すことの少なくとも一部の間に、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出することであって、前記マイクロ波加熱チャンバーに放出される前記マイクロ波エネルギーの少なくとも一部を使用して、最初の温度から最終の目標温度まで、前記物品のそれぞれの最も冷たい部分の温度を上昇させる、放出すること、(iii)前記加熱することの少なくとも一部の間に、前記第1のシステム制御パラメータの実際の値を測定し、測定値を提供すること、および(iv)前記第1のシステム制御パラメータの測定値を前記動作設定ポイントと比較して、差異を判定すること、を含む、動作させることと、(e)ステップ(iv)で判定した差異が事前に決定した許容差を超えるとき、前記動作プロファイルから設定ポイント値の新しいグループを選択することであって、設定ポイント値の前記新しいグループは、前記第1のシステム制御パラメータの第2の目標値を含み、前記第2の目標値は、前記第1のシステム制御パラメータの新しい動作設定ポイントとして前記制御システムにおいて使用される、選択することと、(f)動作設定ポイントの前記新しいグループに従って前記マイクロ波加熱システムを動作させることと、(g)低温殺菌または滅菌した物品を前記マイクロ波加熱システムから取り出すことと、を含む、方法。
【0165】
記述44.前記第1のシステム制御パラメータは、放出される総正味マイクロ波電力、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体温度、前記マイクロ波加熱チャンバーの液体流量、および前記マイクロ波加熱チャンバーを通る前記キャリアの搬送速度からなるグループから選択される、記述43に記載の方法。
【0166】
記述45.設定ポイント値の前記第1のグループと、設定ポイント値の前記新しいグループとはそれぞれ、前記温度時間プロファイルを実現するように選択される、記述43に記載の方法。
【0167】
記述46.前記動作プロファイルは、少なくとも第1の温度時間プロファイルと第2の温度時間プロファイルとを含み、設定ポイント値の前記第1のグループは、前記第1の温度時間プロファイルを実現するよう選択され、設定ポイント値の前記新しいグループは、前記第2の温度時間プロファイルを実現するように選択される、記述43に記載の方法。
【0168】
記述47.設定ポイント値の前記グループは、第1の目標F値を実現するように選択され、設定ポイント値の前記新しいグループは、第2の目標F値を実現するように選択され、前記マイクロ波加熱システムから取り出される低温殺菌または滅菌された物品は、前記第1のおよび前記第2の目標F値のうちの少なくとも一方以上のF値を実現している、記述43に記載の方法。
【0169】
記述48.設定ポイント値の前記グループと、設定ポイント値の前記新しいグループとは、目標F値を実現するように選択され、前記マイクロ波加熱システムから取り出された低温殺菌または滅菌された物品は、前記目標F値以上のF値を実現している、記述43に記載の方法。
【0170】
記述49.ステップ(e)の前記選択することは、前記第1のシステム制御パラメータの測定値を、前記動作プロファイルの設定ポイント値の1つ以上の他のグループにおける前記第1のシステム制御パラメータの目標値と比較することと、設定ポイント値の前記新しいグループとして、前記第1のシステム制御パラメータの目標値を含む設定ポイント値のグループを選択することであって、その目標値は、前記事前に決定した差異未満で前記第1のシステム制御パラメータの測定値と異なる、選択することと、を含む、記述43に記載の方法。
【0171】
記述50.設定ポイント値の前記第1のグループは、第2のシステム制御パラメータの第1の目標値を含み、設定ポイント値の前記新しいグループは、前記第2のシステム制御パラメータの第2の目標値を含み、ステップ(c)の前記選択することは、ステップ(d)の前記動作させている間に、前記第2のシステム制御パラメータの動作設定ポイントとして、前記第2のシステム制御パラメータの前記第1の目標値を使用することを含み、ステップ(e)の前記選択することは、ステップ(f)の前記動作させている間に、前記第2のシステム制御パラメータの新しい動作設定ポイントとして、前記第2のシステム制御パラメータの前記第2の目標値を使用することを含む、記述49に記載の方法。
【0172】
記述51.液体充填マイクロ波加熱システムを使用して複数の物品を加熱する方法であって、(a)複数の物品を搭載したキャリアを、搬送ラインに沿って液体充填マイクロ波加熱チャンバーに通すことであって、前記通している間に、液体媒体に前記物品を浸漬させる、通すことと、(b)前記通すことの少なくとも一部の間に、前記マイクロ波加熱チャンバーにマイクロ波エネルギーを放出することであって、前記マイクロ波エネルギーの少なくとも一部を使用して前記物品を加熱する、放出することと、(c)前記放出することの少なくとも一部の間に、第1のシステム制御パラメータの少なくとも1つの値を測定し、少なくとも1つの測定値を提供することと、(d)前記マイクロ波加熱チャンバーから加熱された物品を取り出すことと、(e)前記マイクロ波加熱システムの動作プロファイルにアクセスすることであって、前記動作プロファイルは、設定ポイント値の1つ以上のグループであり、設定ポイント値の各グループは、前記第1のシステム制御パラメータの少なくとも1つの目標値を含む、アクセスすることと、(f)前記測定値を、少なくとも1つの設定ポイント値の前記グループにおける目標値と比較して、差異を判定することと、(g)前記差異に基づいて、前記物品が前記動作プロファイルに従って加熱されたかどうかを判定することと、を含む、方法。
【0173】
記述52.ステップ(g)の前記判定することは、前記差異を事前に決定した許容差と比較することであって、前記差異が前記事前に決定した許容差未満であるとき、前記物品は、前記動作プロファイルに従って加熱されており、前記差異が前記事前に決定した許容差よりも大きいとき、前記物品は前記動作プロファイルに従って加熱されていない、比較することを含む、記述51に記載の方法。
【0174】
記述53.前記物品が前記動作プロファイルに従って加熱されていないとき、物品に対して1つ以上の処置を行うことであって、前記処置は、物品の少なくとも一部を廃棄すること、物品を再加熱すること、前記動作プロファイルを修正すること、および前記測定値に基づいて新しい動作プロファイルを作成することからなるグループから選択さる、処置を行うことをさらに含む、記述52に記載の方法。
【0175】
記述54.前記測定値を前記コンピュータに入力することをさらに含み、ステップ(c)の前記測定することは、第1の測定値を提供する第1のシステム制御パラメータの値と、第2の測定値を提供する第2のシステム制御パラメータの値とを測定することを含み、ステップ(e)の前記入力することは、前記第1のおよび前記第2の測定値を前記コンピュータに入力することを含み、設定ポイント値の前記グループの各々は、前記第1のシステム制御パラメータの目標値と、前記第2のシステム制御パラメータの目標値とを含み、前記比較することは、前記第1の測定値を、設定ポイント値の第1のグループにおける前記第1のシステム制御パラメータの第1の目標値と比較して、第1の差異を判定することと、前記第2の測定値を、設定ポイント値の前記第1のグループにおける前記第2の制御パラメータの第2の目標値と比較して、第2の差異を判定することと、前記第1のおよび前記第2の差異に基づいて、前記物品が前記動作プロファイルに従って加熱されたかどうかを判定することと、を含む、記述51に記載の方法。
【0176】
記述55.前記動作プロファイルは、前記第1のシステム制御パラメータの第1の目標値を含む少なくとも第1のグループ設定ポイント値と、前記第1のシステム制御パラメータの第2の目標値を含む設定ポイント値の第2のグループとを含み、前記比較することは、前記測定値を前記第1の目標値と比較して第1の差異を判定することと、前記測定値を前記第2の目標値と比較して第2の差異を判定することとを含み、前記判定することは、前記第1のおよび第2の差異を事前に決定した許容差と比較し、前記物品が前記動作プロファイルに従って加熱されたかどうかを判定することを含む、記述51に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8