(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】優れた機械的特性を備えたガラス繊維強化熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240124BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20240124BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240124BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240124BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20240124BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/40
C08K7/14
C08L23/26
C08L51/00
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2020555198
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2019058519
(87)【国際公開番号】W WO2019197270
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(73)【特許権者】
【識別番号】516284183
【氏名又は名称】コベストロ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルク、エーリヒ、バンドナー
(72)【発明者】
【氏名】スベン、ホベイカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、エッケル
(72)【発明者】
【氏名】マリーナ、ログノバ
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-238213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079443(US,A1)
【文献】国際公開第2016/104083(WO,A1)
【文献】特開2005-054152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0032961(US,A1)
【文献】特開2016-108359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243467(US,A1)
【文献】特開昭61-264046(JP,A)
【文献】特開2014-133808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 3/40
C08K 7/14
C08L 23/26
C08L 51/00
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形材料の製造のための組成物であって、以下の成分:
A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステルカーボネートおよびポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、
B)少なくとも1種の酸無水物官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーまたは酸無水物官能化エチレン-α-オレフィンターポリマーであって、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを使用したポリスチレン換算高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量M
wが50000~500000g/molである、前記
酸無水物官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーまたは酸無水物官能化エチレン-α-オレフィンターポリマー、
C)少なくとも1種のゴム変性グラフトポリマー、
D)ガラス繊維、
を混合してなり、
前記ガラス繊維は、前記混合の前の長さが0.5~10mmであり、かつ
40~95重量%の成分A、0.1~10重量%の成分B、0.1~10重量%の成分C、2~40重量%の成分Dを含んでなり、かつ
成分Cが、
C.1 5~95重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、または
C.2 ガラス転移温度が-10℃未満である、5~95重量%の1種以上のエラストマーグラフトベースであって、前記ガラス転移温度は、標準のDIN EN 61006に準拠した示差走査熱量測定により、10K/分の加熱速度で決定される中点の温度として定義されるガラス転移温度である、前記エラストマーグラフトベース、のうち、少なくとも1種のグラフトポリマーであり、
成分C.2が、ジエンゴム、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴム、アクリレートゴム、およびエチレン/プロピレン/ジエンゴムからなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
成分Bが、α-オレフィンおよびエチレン全体に対し、2~40モル%のα-オレフィン単位および60~98モル%のエチレン単位を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分Bの酸無水物含有量が0.1から3.0重量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分Bが、エチレンおよび1-オクテンの無水マレイン酸官能化コポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分Cがコア-シェル構造を有し、成分C.2がジエンゴム
およびアクリレートゴムからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分Dとして、カットガラス繊維が、エポキシサイジング、ポリウレタンサイジングおよびシロキサンサイジングからなる群から選択されるサイジングと共に使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Dのガラス繊維が5~25μmの直径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分Bの成分Cに対する重量比が少なくとも1:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
成分Eとして、さらに0~10重量%の他のポリマー構成要素および/またはポリマー添加剤を含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
工程(i)、(ii)および任意で(iii)を含んでなる、成形材料を製造するための方法であって、
第1の工程(i)において、
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を
熱および/または機械的エネルギーによって加熱し、これにより少なくとも成分A)を溶融し、使用する成分をすべて互いに分散および/または溶解し、
更なる工程(ii)において、
工程(i)から得た溶融物を、(ii)冷却して固化し、
(iii)任意でペレット化し、
ここで、前記工程(ii)および(iii)をいずれかの所望の順序で実行してよい、方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の成形物である、成形材料。
【請求項12】
成形品の製造のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物または請求項11に記載の成形材料の使用。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物または請求項11に記載の成形材料を含んでなる、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性成形材料の製造のための熱可塑性組成物、熱可塑性成形材料の製造方法、成形材料そのもの、成形品の製造のための組成物または成形材料の使用、および成形品そのものに関する。
【0002】
本発明は特に、熱可塑性ポリカーボネート組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート組成物は長い間知られており、例えば自動車分野、鉄道車両、建設分野、電気/電子分野および家庭用電化製品といった多岐にわたる用途の成形品の製造に使用される材料である。
【0004】
一部の用途、特に薄肉部品では、ポリカーボネート組成物の剛性が十分でないことも知られている。多くの場合、この欠点の技術的な解決策は、組成物に強化剤を含めることである。典型的には、強化剤は、ガラス炭素繊維、ガラス繊維または滑石および珪灰石などの鉱物充填剤から選択される。選択した充填剤のアスペクト比により、補強効果の程度が決まる。強化と充填剤のコストの観点から、ガラス繊維はバランスが魅力的であり、したがってポリカーボネート組成物で広く使用されている。
【0005】
国際公開第2009/021648A1号には、ポリカーボネート、ゴムを含まないビニルコポリマー、サイジングしたガラス繊維および任意でゴム変性グラフトポリマーを含んでなるガラス繊維強化ポリカーボネート組成物が開示されている。この組成物は、高い剛性、高い流動性、高い加工安定性、優れた耐薬品性および老化安定性を提供する。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0329948A1号には、優れた難燃性に加えて高い剛性と優れた熱的およびレオロジー特性を備え、耐衝撃性が改良されたガラス繊維強化ポリカーボネート組成物が開示されている。組成物は、ポリカーボネート、難燃剤、ガラス繊維および無水物変性アルファ-オレフィンターポリマーを含んでなる。
【0007】
熱可塑性組成物において、剛性とは別に別の重要な技術的特性として、成形部品の延性がある。延性は、引張試験における破断時のひずみの観点、アイゾットもしくはシャルピーの衝撃強度、または、ダート貫通試験における多軸延性(破壊エネルギーおよび最大力)として評価できる。あらゆる種類の延性が、ガラス繊維やその他の補強充填剤の使用によって悪影響を受ける可能性がある。
【0008】
延性の低下を補うために、ポリカーボネート組成物に追加のエラストマー成分を導入することができる。
【0009】
欧州特許出願公開第0624621A2号には、芳香族ポリカーボネート、ゴム変性ビニル芳香族-シアン化ビニルグラフトポリマーおよび処理化ガラス繊維を含んでなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。組成物は増強した機械的特性を示す。
【0010】
国際公開第2013/045552A1号では、ポリカーボネートおよび無機充填剤でできた熱可塑性成形材料であって、少なくとも1種の無水物変性アルファ-オレフィンターポリマーを0.01~0.5重量部含んでなり、高度の剛性および良好な延性を有する、熱可塑性成形材料が開示されている。
【0011】
国際公開第2015/189761号には、ポリマーマトリックス、化学反応性を示す衝撃改質剤および熱伝導性充填剤を含んでなる熱伝導性熱可塑性組成物が開示されている。無水マレイン酸グラフト化エチレンコポリマーが、化学反応性を示す衝撃改質剤として開示されている。この組成物は、優れた熱伝導性と延性を特徴としている。
【0012】
欧州特許出願公開第2574642A1号では、難燃性熱可塑性成形組成物であって、少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート、少なくとも1種のグラフトポリマー、少なくとも1種のビニル(コ)ポリマー、少なくとも1種のリン含有難燃剤、少なくとも1種のゴムを含まない無水物変性アルファ-オレフィンターポリマー、少なくとも1種の充填剤および他の従来の添加剤を含んでなる難燃性熱可塑性成形組成物が記載されている。この組成物は、溶融流動性に優れ、ノッチ付きの衝撃強度および耐薬品性が高いことを特徴とし、UL94V-0規格を満たしている。
【0013】
選択された衝撃改質剤を使用すれば良好な延性が達成できることは従来技術によって実証されているが、すべての用途において、特に破断時のひずみおよび多軸延性が十分ではない。
【0014】
したがって、良好な破断時のひずみ、破壊エネルギーおよび最大力のバランスがさらに改善されたガラス繊維強化熱可塑性組成物を提供することが望まれていた。
【発明の概要】
【0015】
熱可塑性成形材料を製造するための組成物であって、以下の構成要素:
A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステルカーボネートおよびポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、
B)少なくとも1種の無水物官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーまたは無水物官能化エチレン-α-オレフィンターポリマーであって、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを使用したポリスチレン換算高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量Mwが50000~500000g/mol、好ましくは10000~400000g/mol、特に好ましくは150000~350000g/molである、前記無水物官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーまたは無水物官能化エチレン-α-オレフィンターポリマー、
C)少なくとも1種のゴム変性グラフトポリマー、
D)ガラス繊維、
を含んでなる前記組成物が、有利な特性を示すことが驚くべきことに分かった。
【0016】
組成物は、好ましくは、
40~95重量%、より好ましくは50~90重量%、特に好ましくは60~85重量%の成分A、
0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、特に好ましくは1~7重量%の成分B、
0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、特に好ましくは1~7重量%の成分C、
2~40重量%、より好ましくは5~30重量%、特に好ましくは10~25重量%の成分D、を含んでなり、
さらに、成分Eとして、0~10重量%、より好ましくは0.1~8重量%、特に好ましくは0.2~5重量%の他のポリマー構成要素および/またはポリマー添加剤をさらに含んでなる。
【0017】
好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも90重量%の成分A~Eからなる。最も好ましくは、組成物は成分A~Eのみからなる。
【0018】
別の実施形態では、成分Bの成分Cに対する重量比は、少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも2:1である。
【0019】
成分Bは、組成物中で、物理的な混合物成分の形態であってもよい。
【0020】
成分Bの無水物基がポリカーボネート(成分A)および/または組成物の他の成分と化学反応を起こすことも可能である。
【0021】
無水物基は、湿気または他の不純物との化学反応を起こすこともあり得る。
【0022】
これらの反応は、特に、高温の溶融物中で起こり、溶融物の混合中(例えば、押出機中)および射出成形による加工中が主である。
【0023】
よって、無水物基含有量は減少する。本特許出願の目的で発明性があると考えられる成形材料は、成分A、B、C、Dおよび任意でEを物理的に混ぜ、溶融物中での混合に供される際に得られるものも含む。
【発明の具体的説明】
【0024】
成分A
本発明の目的のポリカーボネートとは、ホモポリカーボネートもしくはコポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネートであり;ポリカーボネートは、公知のとおり、直鎖状または分枝状であり得る。本発明によれば、ポリカーボネートの混合物を使用することも可能である。
【0025】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性ポリカーボネートの重量平均モル質量Mwは、GPC(ポリカーボネート換算で塩化メチレン中のゲル浸透クロマトグラフィー)で測定され、15000g/mol~50000g/mol、好ましくは18000g/mol~35000g/mol、より好ましくは20000g/mol~32000g/mol、特に好ましくは23000g/mol~31000g/mol、非常に特に好ましくは24000g/mol~31000g/molである。
【0026】
本発明で使用されるポリカーボネートは、そのカーボネート基の最大80モル%の部分、好ましくは20モル%~50モル%の部分が、芳香族ジカルボン酸エステル基で置換されていてもよい。芳香族ポリエステルカーボネートという用語は、炭酸由来の酸部分だけでなく、分子鎖に組み込まれた芳香族ジカルボン酸の酸部分も含んでなる種類のポリカーボネートに対して使用される。本発明の目的のために、これらは熱可塑性芳香族ポリカーボネートの総称に含まれる。
【0027】
ポリカーボネートは、ジフェノール、炭酸誘導体、任意で連鎖停止剤および任意で分岐剤から既知の方法で製造されるが、ポリエステルカーボネートの製造では、芳香族ポリカーボネート中でカーボネート構造単位が芳香族ジカルボン酸エステル構造単位によって置換される程度で、炭酸誘導体の一部が芳香族ジカルボン酸またはその誘導体で置換される。
【0028】
ポリカーボネートの製造に適したジヒドロキシアリール化合物は、式(1)のものであある:
HO-Z-OH(1)
〔式中、
Zは、6~30個のC原子を有する芳香族部分であり、1つ以上の芳香環を含んでなり得、置換を有していてもよく、脂肪族もしくは脂環式部分またはアルキルアリール部分またはヘテロ原子を架橋要素として含んでなり得る〕。
【0029】
式(1)中のZは、好ましくは式(2)の部分である:
【0030】
【化1】
〔式中、
R
6およびR
7は相互に独立してH、炭素数1~18のアルキル、炭素数1~18のアルコキシ、ClもしくはBrといったハロゲン、または、それぞれ任意に置換されたアリールもしくはアラルキルであり、好ましくはHまたは炭素数1~12のアルキル、特に好ましくはHまたは炭素数1~8のアルキル、非常に特に好ましくはHまたはメチルであり、 Xは単結合、-SO
2-、-CO-、-O-、-S-、炭素数1~6のアルキレン、炭素数2~5のアルキリデンまたは炭素数1~6のアルキルで置換されていてもよい炭素数5~6のシクロアルキリデンであり、好ましくはメチルもしくはエチルまたはヘテロ原子を含んでなる他の芳香環に任意で縮合していてもよい炭素数6~12のアリレンである〕。
【0031】
Xは、好ましくは単結合、炭素数1~5のアルキレン、炭素数2~5のアルキリデン、炭素数5~6のシクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO
2-、
または式(2a)の部分である:
【化2】
【0032】
ジヒドロキシアリール化合物(ジフェノール類)の例としては、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、1,1’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン類、およびこれらから誘導される環アルキル化および環ハロゲン化化合物が挙げられる。
【0033】
本発明に従って使用されるポリカーボネートの製造に適したジフェノール類の例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、α,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン類、およびこれらから誘導されるアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物が挙げられる。
【0034】
好ましいジフェノール類は、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0035】
特に好ましいジフェノール類は、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(3,5-ジメチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0036】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0037】
これらおよび他の適切なジフェノール類は、例えばUS第2999835A号、US第3148172A号、US第2991273A号、US第3271367A号、US第4982014A号およびUS第2999846A号、独国特許出願公開第1570703A号、第2063050A号、第2036052A号、2211956A号および第3832396A号、仏国特許出願第1561518A1号、モノグラフであるH. Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Interscience Publishers, New York 1964, pp. 28ff and pp. 102ff., and in D.G. Legrand, J.T. Bendler, "Handbook of Polycarbonate Science and Technology", Marcel Dekker, New York, 2000, pp. 72ffに記載されている。
【0038】
ホモポリカーボネートの場合、1種のみのジフェノールが使用され、コポリカーボネートの場合、2種以上のジフェノールが使用される。使用されるジフェノール類、および合成に加えられる他の化学物質と補助剤はすべて、合成、取り扱い、および保管中に生じる不純物の汚染を含んでなる可能性がある。しかし、可能な限り最高純度の原材料を使用することが望ましい。
【0039】
分子量調節に必要な単官能性連鎖停止剤、例えばフェノール類またはアルキルフェノール、特にフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、これらのクロロギ酸エステルもしくはモノカルボン酸の塩化アシルまたはこれら連鎖停止剤の混合物は、ビスフェノラートと共に反応へ導入するか、またはホスゲンまたは末端クロロギ酸基が反応混合物中にまだ存在している間に任意の所望の時点で合成に加えるか、または、連鎖停止剤が塩化アシルおよびクロロギ酸エステルの場合は、得られるポリマーの末端フェノール基が充分な量で利用可能である限り合成に加える。しかし、連鎖停止剤は、ホスゲン化手順の後に、ホスゲンはもう存在しないが触媒はまだシステム内に計量供給されていない箇所/時点で添加されるのが好ましく、または、触媒の前、もしくは、触媒と並行もしくは一緒に連鎖停止剤をシステム内に計量供給するのが好ましい。
【0040】
使用される任意の分岐剤または分岐剤の混合物は、同じ方法で添加されるが、通常は連鎖停止剤の前に合成に添加される。通常使用される化合物は、トリカルボン酸もしくはテトラカルボン酸のトリスフェノール類、クアテルフェノール類または塩化アシル、または、ポリフェノールもしくは塩化アシルの混合物である。
【0041】
3つまたは4つ以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する分岐剤として使用できる化合物のいくつかの例としては、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタンが挙げられる。
【0042】
他の三官能性化合物のいくつかは、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0043】
好ましい分岐剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールおよび1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0044】
任意で使用される分枝剤の量は、再度それぞれ使用されるジフェノール類のモル量に基づいて、0.05モル%~2モル%である。
【0045】
分岐剤は、最初にジフェノール類および連鎖停止剤と一緒に水性アルカリ相で最初に導入しておくか、または、ホスゲン化手順の前に有機溶媒中の溶液に加えることができる。
【0046】
ポリカーボネートの製造のこれらの手段はすべて、当業者にすでに公知である。
【0047】
ポリエステルカーボネートの製造に適した芳香族ジカルボン酸の例としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル-3-フェニルインダン-4,5’-ジカルボン酸が挙げられる。
【0048】
芳香族ジカルボン酸の中でもテレフタル酸および/またはイソフタル酸の使用が特に好ましい。
【0049】
ジカルボン酸の誘導体は、ジアシルジハロゲン化物およびジカルボン酸ジアルキル、特に二塩化ジアシル類および二炭酸ジメチル類である。
【0050】
カーボネート基は、本質的に化学量論的かつ定量的に芳香族ジカルボン酸エステル基によって置換され、したがって、反応物のモル比も、得られるポリエステルカーボネートで維持される。芳香族ジカルボン酸エステル基は、ランダムまたはブロックで組み込まれ得る。
【0051】
本発明に従って使用されるポリカーボネートの好ましい製造形態は、ポリエステルカーボネートを含め、既知の界面法および既知のエステル交換溶融法である(例えば、国際公開第2004/063249A1号、国際公開第2001/05866A1号、国際公開第2000/105867号、US第5,340,905A号、US第5,097,002A号、US-A第5,717,057A号を参照)。
【0052】
前者の場合、使用される酸誘導体は、好ましくはホスゲンおよび任意で二塩化ジアシル類であり、後者の場合、それらは好ましくは炭酸ジフェニルおよび任意でジカルボン酸ジエステルである。触媒、溶媒、後処理、反応条件などは十分に記載されており、ポリカーボネートの製造およびポリエステルカーボネートの製造の両方で知られている。
【0053】
本発明によるポリエステルは、好ましくはポリアルキレンテレフタレートである。特に好ましい実施形態では、これらは、芳香族ジカルボン酸またはジメチルエステルもしくは無水物といったその反応性誘導体と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールの反応生成物、および反応生成物の混合物である。
【0054】
特に好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に基づいて少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%のテレフタル酸ラジカル、ならびに、ジオール成分に基づいて少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%のエチレングリコールおよび/またはブタン-1,4-ジオールラジカルを含有する。
【0055】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸ラジカルと一緒に、最大20モル%、好ましくは最大10モル%の、8~14個の炭素原子を有する他の芳香族または脂環式ジカルボン酸または4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸のラジカルを含有し得、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸のラジカルが挙げられる。
【0056】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコールおよびブタン-1,4-ジオールラジカルと一緒に、最大20モル%、好ましくは最大10モル%の、3~12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオールまたは6個~21個の炭素原子を有する脂環式ジオールを含有し得、例えば、プロパン-1,3-ジオール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、3-エチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシ)-ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンおよび2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン(DE-A第2407674号、第2407776号、第2715932号)のラジカルが挙げられる。
【0057】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えばDE-A第1900270号およびUS-A第3692744号に記載される通りに、比較的少量の3価または4価アルコールまたは3または4塩基カルボン酸を導入することによって分岐させることができる。好ましい分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタンおよび-プロパンおよびペンタエリスリトールである。
【0058】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えば、そのジアルキルエステル)ならびにエチレングリコールおよび/またはブタン-1,4-ジオールのみから調製されたポリアルキレンテレフタレート、ならびに、これらポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0059】
好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは、DIN53728-3に従って、25℃で1重量%濃度のジクロロ酢酸中でウベローデ粘度計を用いて測定された固有粘度が、0.4~1.5dl/g、好ましくは0.5~1.2dl/gである。決定された固有粘度は、測定された比粘度×0.0006907+0.063096で計算される。
【0060】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法により調製することができる(例えば、Kunststoff-Handbuch [Plastics Handbook], volume VIII, p. 695 ff., Carl-Hanser-Verlag, Munich 1973参照)。
【0061】
好ましい実施形態において、使用される成分Aは、芳香族ポリカーボネート、最も好ましくは、ジフェノール単位としてビスフェノールAを用いた芳香族ポリカーボネートからなる。
【0062】
成分B
使用される成分Bは、無水物基をグラフトしたエチレン-α-オレフィンコポリマーまたはターポリマーを含んでなる。本特許出願の目的において、成分Bは、無水物基で官能化されたエチレン-α-オレフィンコポリマーまたはターポリマーとも呼ばれる。
【0063】
無水物は、好ましくは、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水フマル酸および無水イタコン酸ならびにこれらの混合物を含んでなる群から選択される。無水物としては無水マレイン酸が特に好ましい。
【0064】
コポリマーまたはターポリマーは、エチレンとともに、コモノマー(α-オレフィン)として、好ましくは1-プロペン、1-ブテン、1-イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセンおよびこれらの混合物を含んでなる。
【0065】
特に、エチレンと1-オクテンのコポリマーが使用される。
【0066】
オレフィンコポリマーは、US第5272236A号およびUS第5278272A号に記載されているように製造され得る。
【0067】
無水物基によるグラフト化は、例として、US第323691A号に記載されている。
【0068】
α-オレフィンコモノマーの含有量は、エチレンおよびコモノマーの総量に対し、好ましくは2~40モル%、より好ましくは5~35モル%、特に好ましくは10~25モル%である。
【0069】
記載されているエチレン-α-オレフィンコポリマーまたはターポリマーは、好ましくはランダムコポリマーである。
【0070】
グラフトされた無水物基を有するコポリマーまたはターポリマーは、エラストマー特性を最適化するために、国際公開第98/02489号に記載されているように初期架橋に供してもよい。
【0071】
エチレンとコモノマーの比率は、溶媒としてトリクロロエタンを使用した1Hおよび13C NMR分光法によって決定され得る。
【0072】
無水物変性ポリマーは、好ましくは以下の組成により特徴付けられる:
B(1) 90.0重量%~99.99重量%、より好ましくは97.0重量%~99.99重量%、特に好ましくは99.0重量%~99.8重量%のコポリマーまたはターポリマー、
B(2) 0.01~10.0重量%、より好ましくは0.1~3.0重量%、特に好ましくは0.2~1.0重量%の無水物。
【0073】
さらに好ましい実施形態では、成分Bの主鎖は、エチレンおよび1-オクテン単位で構成されたランダムコポリマーからなる。
【0074】
無水物変性コポリマーまたはターポリマーの重量平均モル質量Mwは、50000超~500000g/mol、好ましくは100000~400000g/mol、特に好ましくは150000~350000g/molであり、重量平均モル質量は、いずれの場合も溶媒としてオルトジクロロベンゼンを使用したポリスチレン換算HTGPC(高温ゲル浸透クロマトグラフィー)で決定する。
【0075】
好ましい生成物のガラス転移温度は-50℃以下である。
【0076】
ガラス転移温度は、標準DIN EN 61006(2004バージョン)に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により、10K/分の加熱速度で決定し、Tgは中点の温度として定義する(接線法)。
【0077】
成分C
組成物は、成分Cとして、ゴム変性グラフトポリマーまたはゴム変性グラフトポリマーの混合物を含んでなる。
【0078】
ゴム変性グラフトポリマーCは、
C.1 成分Cに対し、5~95重量%、好ましくは15~92重量%、特に25~60重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、
C.2 成分Cに対し、95~5重量%、好ましくは85~8重量%、特に75~40重量%の少なくとも1種のエラストマーグラフト基材であって、ガラス転移温度が好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下、特に好ましくは-20℃以下であるエラストマーグラフト基材、
を含んでなる。
【0079】
ガラス転移温度Tgは、標準のDIN EN 61006に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により、10K/分の加熱速度で決定し、Tgは中点の温度として定義する(接線法)。
【0080】
エラストマーグラフトベースは、ゴムコアとも呼ばれる。
【0081】
グラフト基材(グラフトベースとも呼ばれる)C.2は一般に、0.05~10μm、好ましくは0.1~5μm、特に好ましくは0.2~1μmの平均粒径(d50値)を有する。
【0082】
平均粒径d50は、いずれの場合も50重量%の粒子がその上下で存在する直径である。これは、超遠心分離測定(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782-1796)によって決定され得る。
【0083】
モノマーC.1は、好ましくは、次の混合物である:
C.1.1:
C.1に対し、50~99重量部、好ましくは60~80重量部、特に70~80重量部の、ビニル芳香族化合物および/もしくは環上で置換されている(スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレンなど)ビニル芳香族化合物および/またはメタクリル酸(炭素数1~8の)アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ならびに
C.1.2:
C.1に対し、1~50重量部、好ましくは20~40重量部、特に20~30重量部のシアン化ビニル(アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(炭素数1~8の)アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレートおよび/もしくは不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN-フェニル-マレイミド。
【0084】
好ましいモノマーC.1.1は、モノマーであるスチレン、α-メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1種から選択され、好ましいモノマーC.1.2は、モノマーであるアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも1種から選択される。特に好ましいモノマーは、C.1.1スチレンおよびC.1.2アクリロニトリルまたはC.1.1=C.1.2メチルメタクリレートである。
【0085】
グラフトポリマーCに適したグラフト基材C.2は、例えば、ジエンゴム、ジエン-ビニルブロックコポリマーゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび任意でジエン系のもの、アクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴムおよびエチレン/酢酸ビニルゴム、およびそのようなゴムの混合物またはシリコーンおよびアクリレート成分が互いに化学的に結合されている(例えば、グラフト化で)シリコーン-アクリレート複合ゴムである。
【0086】
好ましいグラフト基材C.2は、ジエンゴム(例えば、ブタジエンまたはイソプレン系)、ジエン-ビニルブロックコポリマーゴム(例えば、ブタジエンおよびスチレンブロック系)、ジエンゴムとさらに共重合性モノマー(例えばC1.1およびC1.2に従ったもの)とのコポリマーならびに上記のゴム種の混合物である。純粋なポリブタジエンゴムおよびスチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムが特に好ましい。
【0087】
純粋なポリブタジエンゴムおよびスチレン-ブタジエン-ブロックコポリマーゴムは、グラフト基材C.2として特に好ましい。
【0088】
特に好ましいポリマーCは、例として、例えばDE-OS第2035390号(=US-PS第3644574号)またはDE-OS第2248242号(=GB-PS第1409275号)、または、Ullmanns, Enzyklopaedie der Technischen Chemie, Vol. 19 (1980), p. 280 ff.に記載されているようなABSまたはMBSポリマーである。
【0089】
グラフトコポリマーCは、例えば乳化、懸濁、溶液または塊状重合、好ましくは乳化または塊状重合、特に乳化重合による、ラジカルの重合によって調製される。
【0090】
グラフトベースC.2のゲル含有量は、いずれの場合においてもC.2に対して少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に少なくとも60重量%であり、トルエンに不溶な部分として測定される。
【0091】
グラフトベースC.2のゲル含有量は、適切な溶媒中、25℃で、これらの溶媒に不溶な部分として決定される(M. Hoffmann, H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I und II, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
【0092】
特に適切なグラフトベースは、US-P第4937285号に記載される通り、有機ヒドロペルオキシドおよびアスコルビン酸の開始剤システムを用いた酸化還元の開始により調製されるABSポリマーである。
【0093】
公知のとおり、グラフトモノマーは、グラフト反応において必ずしもグラフトベースに完全にグラフトされるわけではないため、グラフトポリマーCは、本発明において、グラフトベース存在下でのグラフトモノマーの(共)重合によって得られる生成物、および、後処理で同時に得られる生成物であるとも理解される。したがって、そのような生成物は、グラフトモノマーの遊離(コ)ポリマー、すなわち、ゴムに化学的に結合されていない(コ)ポリマーも含有し得る。
【0094】
C.2による適切なアクリレートゴムは、好ましくは、C.2に対し、任意で最大40重量%の他の重合可能なエチレン系不飽和モノマーを有するアクリル酸アルキルエステルのポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルの例としては、炭素数1~8のアルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n-オクチルおよび2-エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ-C1-8-アルキルエステル、例えばアクリル酸クロロエチルならびにこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0095】
C.2による適切なグラフトベースとしてはさらに、DE-OS第3704657号、DE-OS第3704655号、DE-OS第3631540号およびDE-OS第3631539号に記載されているようなグラフト活性部位を有するシリコーンゴムがある。
【0096】
成分D
組成物は成分Dとしてガラス繊維を含んでなる。
【0097】
ガラス繊維は、エンドレス繊維(ロービング)、ガラス長繊維およびカットガラス繊維であり得る。カットガラス繊維が好ましい。
【0098】
ガラス繊維は、M-、E-、S-、R-またはC-ガラスから製造され、E-およびC-ガラスが好ましい。
【0099】
繊維径は、好ましくは5~25μm、さらに好ましくは6~20μm、特に好ましくは7~17μmである。
【0100】
カットガラス繊維は、好ましくは、混合前の長さが0.5~10mm、より好ましくは1~8mm、特に好ましくは3~6mmである。
【0101】
ガラス繊維は様々な断面を有してもよい。円形、楕円形、長円形、八角形および平坦な断面が好ましく、円形および長円形の断面が特に好ましい。
【0102】
ガラス繊維の上記の幾何学的特徴(長さおよび直径)は、使用される成分D(すなわち、本発明の組成物の製造および更なる熱処理の前)において決定される。混合による組成物の製造中および成形品を得るための更なる熱処理中に、例えば剪断による上記繊維の長さが小さくなることを排除することは当然不可能であり、したがって、最終組成物または成形品におけるガラス繊維の長さは、一般に、使用される成分Dで最初に決定されたものよりも小さくなる。
【0103】
成分Dによるガラス繊維は、ガラス繊維とある程度の化学結合を有することができ(カップリング剤)、また、結合せずにガラス繊維を物理的に濡らすことによってある程度非結合の形で存在する(フィルム形成剤、界面活性添加剤、潤滑剤など)、少なくとも1種の有機物質または複数の有機物質の組み合わせを含んでなる糊付け(サイジング)のコーティングを有することが好ましい。含有される非結合サイジング、すなわち、ガラス繊維に化学的に結合されていない含有物は、例えば、好ましくはジクロロメタンでの抽出によって分離することができ、分析することができる。
【0104】
サイジングは、エポキシ系のサイジング、ポリウレタンサイジングまたはシランサイジング、またはこれらのサイジングの混合物であり得る。
【0105】
ガラス繊維の選択は、好ましくはポリカーボネートマトリックスである熱可塑性マトリックスとの繊維の相互作用特性に制限されない。
【0106】
成分E
組成物は、成分Eとして、難燃剤(例えば、有機リンまたはハロゲン化合物、特にビスフェノールA系オリゴリン酸塩)、ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーン、およびアラミド繊維のクラス由来の化合物)、難燃相乗剤(例えば、ナノサイズの金属酸化物)、発煙防止剤(例えば、ホウ酸亜鉛)、潤滑剤および離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート)、成核剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤(加水分解、熱老化およびUV安定剤、ならびに、エステル交換阻害剤および酸/塩基クエンチ剤など)、流動促進剤、相溶化剤、その他のポリマー構成要素(例えばポリエステルもしくはビニル(コ)ポリマーまたは機能性ブレンド成分)、成分Dとは異なる充填剤および補強材(例えば、炭素繊維、タルク、マイカ、カオリン、CaCO3)ならびに染料および顔料(例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄)からなる群から好ましくは選択される、1種以上の添加剤をさらに含んでなり得る。
【0107】
好ましい実施形態では、組成物は、難燃剤、ドリップ防止剤、難燃相乗剤および発煙防止剤を含まない。
【0108】
好ましい実施形態では、組成物は、潤滑剤および離型剤、安定剤、流動促進剤、相溶化剤、他のポリマー構成要素、染料ならびに顔料からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー添加剤を含んでなる。
【0109】
好ましい実施形態では、組成物は、潤滑剤/離型剤および安定剤からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー添加剤を含んでなる。
【0110】
好ましい実施形態では、組成物は、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレートを含んでなる。
【0111】
好ましい実施形態において、組成物は、安定剤として、立体障害フェノール、有機ホスファイト、硫黄系共安定剤ならびに有機および無機ブレンステッド酸からなる群から選択される少なくとも1種の代表的なものを含んでなる。
【0112】
特に好ましい実施形態では、組成物は、安定剤として、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群から選択される少なくとも1種の代表的なものを含んでなる。
【0113】
特に好ましい組成物は、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート、安定剤としてオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群から選択される少なくとも1種の代表的なもの、および、任意でブレンステッド酸を含んでなり、他のポリマー添加剤を含まない。
【0114】
さらに好ましい組成物は、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート、安定剤としてオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトの組み合わせ、および、任意でブレンステッド酸を含んでなり、他のポリマー添加剤を含まない。
【0115】
成形材料および成形品の製造
本発明による組成物は、熱可塑性成形材料を製造するために使用することができる。
【0116】
本発明による熱可塑性成形材料は、例として、内部ミキサー、押出機および二軸システムなどの従来のアセンブリを用い、既知の方法でそれぞれの構成要素を混ぜて溶融物中で混合し、好ましくは200℃~340℃、特に好ましくは240~320℃、非常に特に好ましくは240℃~300℃の温度で、溶融物のまま押し出すことにより製造することができる。本出願の目的において、この方法は一般に混合と呼ばれる。
【0117】
ここでの手順は、少なくとも成分Aを溶融し、組成物のすべての構成要素を互いに分散および/または溶解し、更なる工程で、得られた溶融物を冷却により固化し、任意でペレット化する。固化およびペレット化の工程は、いずれかの所望の順序で実行され得る。
【0118】
したがって、成形材料という用語は、組成物の構成要素が溶融物中で混合され、溶融物のまま押し出されたときに得られる生成物を意味する。
【0119】
個々の構成要素は、既知の方法で連続してまたは同時に混ぜることができ、具体的には約20℃(室温)または高温で混ぜることができる。したがって、例として、一部の構成要素を押出機の主な取り入れ口からシステムに計量供給し、続いて残りの構成要素を側方押出機から混合プロセスに導入することが可能である。
【0120】
特に、側方押出機を介して成分Dを導入することが有利であり得る。
【0121】
本発明はまた、本発明の成形材料の製造方法を提供する。
【0122】
本発明の成形材料は、いずれかの種類の成形品の製造に使用することができる。本発明の成形材料は、例として、射出成形、押出およびブロー成形方法によって製造することができる。別の種類の加工としては、既成のシートまたはフィルムの熱成形による成形品の製造がある。
【0123】
これらの成形品の例は、フィルム、外形材、いずれかの種類の住宅部品、例えば、ジュースプレス、コーヒーマシン、ミキサーなどの家庭用電化製品;モニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンター、コピー機などのオフィス機器;シート、パイプ、電気設備ダクト、窓、ドア、その他の建設セクター向け外形材(内部装備および外部用途)、ならびに、商用車両用、特に自動車セクター用のスイッチ、プラグ、ソケット、および要素部品などの電気および電子要素が挙げられる。本発明による組成物は、以下の成形品の製造にも適している:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび他の自動車用の内部設備部品、自動車用の車体部品、小型変圧器を含む電気機器のハウジング、情報の処理伝送機器のハウジング、医療機器のハウジングおよびクラッディング、マッサージ機器とそのハウジング、子供用の車両おもちゃ、シート状の壁要素、安全装置のハウジング、断熱輸送コンテナ、衛生用および浴室設備の成形部品、換気口の保護グリル、ならびに、庭設備のハウジング。
【0124】
本発明の更なる実施形態1~35を以下に記載する:
1. 熱可塑性成形材料の製造のための組成物であって、以下の成分:
A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステルカーボネートおよびポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、
B)少なくとも1種の無水物官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーまたは無水物官能化エチレン-α-オレフィンターポリマーであって、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを使用したポリスチレン換算高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量Mwが50000~500000g/molである、前記無水物官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーまたは無水物官能化エチレン-α-オレフィンターポリマー、
C)少なくとも1種のゴム変性グラフトポリマー、
D)ガラス繊維、を含んでなる前記組成物。
【0125】
2. 成分Bが、α-オレフィンおよびエチレン全体に対し、2~40モル%のα-オレフィン単位および60~98モル%のエチレン単位を有する、実施形態1に記載の組成物。
【0126】
3. 成分Bが、α-オレフィンおよびエチレン全体に対し、5~35モル%のα-オレフィン単位および65~95モル%のエチレン単位を有する、実施形態1または2に記載の組成物。
【0127】
4. 成分Bが、α-オレフィンおよびエチレン全体に対し、10~25モル%のα-オレフィン単位および75~90モル%のエチレン単位を有する、実施形態1~3のいずれかに記載の組成物。
【0128】
5. 成分Bの無水物含有量が0.01から10.0重量%である、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物。
【0129】
6. 成分Bの無水物含有量が0.1から3.0重量%である、実施形態1~5のいずれかに記載の組成物。
【0130】
7. 成分Bの無水物含有量が0.2から1.0重量%である、実施形態1~6のいずれかに記載の組成物。
【0131】
8. 成分Bが無水マレイン酸官能化エチレン-α-オレフィン-コポリマーまたは無水マレイン酸官能化エチレン-α-オレフィン-ターポリマーである、実施形態1~7のいずれかに記載の組成物。
【0132】
9. 成分Bが、エチレンおよび1-オクテンの無水マレイン酸官能化コポリマーである、実施形態1~8のいずれかに記載の組成物。
【0133】
10. 成分Bの、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを使用したポリスチレン換算高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量Mwが100000~400000g/molである、実施形態1~9のいずれかに記載の組成物。
【0134】
11. 成分Bの、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを使用したポリスチレン換算高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量Mwが150000~350000g/molである、実施形態1~10のいずれかに記載の組成物。
【0135】
12. 成分Aが芳香族ポリカーボネートからなる、実施形態1~11のいずれかに記載の組成物。
【0136】
13. 成分Cが:
C.1 5~95重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、
C.2 ガラス転移温度が-10℃以下である、5~95重量%の1種以上のエラストマーグラフトベースであって、前記ガラス転移温度は、標準のDIN EN 61006に準拠した示差走査熱量測定により、10K/分の加熱速度で決定される中点の温度として定義されるガラス転移温度である、前記エラストマーグラフトベース、
のうち、少なくとも1種のグラフトポリマーである、実施形態1~12のいずれかに記載の組成物。
【0137】
14. 成分Cが:
C.1 25~60重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、
C.2 ガラス転移温度が-20℃以下である、75~40重量%の1種以上のエラストマーグラフトベースであって、前記ガラス転移温度は、標準のDIN EN 61006に準拠した示差走査熱量測定により、10K/分の加熱速度で決定される中点の温度として定義されるガラス転移温度である、前記エラストマーグラフトベース、
のうち、少なくとも1種のグラフトポリマーである、実施形態1~13のいずれかに記載の組成物。
【0138】
15. 成分C.2が、ジエンゴム、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴム、アクリレートゴム、シリコーンゴム、シリコーン/アクリレート複合ゴムおよびエチレン/プロピレン/ジエンゴムからなる群から選択される、実施形態13または14に記載の組成物。
【0139】
16. 成分Cがコア-シェル構造を有し、成分C.2がジエンゴム、アクリレートゴムおよびシリコーン/アクリレート複合ゴムからなる群から選択される、実施形態15に記載の組成物。
【0140】
17. 成分Dとして、カットガラス繊維がエポキシサイジング、ポリウレタンサイジングおよびシロキサンサイジングからなる群から選択されるサイジングと共に使用される、実施形態1~16のいずれかに記載の組成物。
【0141】
18. 成分Dのガラス繊維が5~25μmの直径を有する、実施形態1~17のいずれかに記載の組成物。
【0142】
19. 成分Dのガラス繊維が6~20μmの直径を有する、実施形態1~18のいずれかに記載の組成物。
【0143】
20. 成分Dのガラス繊維が7~17μmの直径を有する、実施形態1~19のいずれかに記載の組成物。
【0144】
21. ガラス繊維が、混合前に0.5~10mmの長さを有する、実施形態1~20のいずれかに記載の組成物。
【0145】
22. ガラス繊維が、混合前に1~8mmの長さを有する、実施形態1~21のいずれかに記載の組成物。
【0146】
23. ガラス繊維が、混合前に3~6mmの長さを有する、実施形態1~22のいずれかに記載の組成物。
【0147】
24. 成分Bの成分Cに対する重量比が少なくとも1:1である、実施形態1~23のいずれかに記載の組成物。
【0148】
25. 40~95重量%の成分A、
0.1~10重量%の成分B、
0.1~10重量%の成分C、
2~40重量%の成分Dを含んでなり、
ならびに、成分Eとしてさらに0~10重量%の他のポリマー構成要素および/またはポリマー添加剤を含んでなる、実施形態1~24のいずれかに記載の組成物。
【0149】
26. 50~90重量%の成分A、
0.5~8重量%の成分B、
0.5~8重量%の成分C、
5~30重量%の成分Dを含んでなり、
ならびに、成分Eとしてさらに0.1~8重量%の他のポリマー構成要素および/またはポリマー添加剤を含んでなる、実施形態1~25のいずれかに記載の組成物。
【0150】
27. 60~85重量%の成分A、
1~7重量%の成分B、
1~7重量%の成分C、
10~25重量%の成分Dを含んでなり、
ならびに、成分Eとしてさらに0.2~5重量%の他のポリマー構成要素および/またはポリマー添加剤を含んでなる、実施形態1~26のいずれかに記載の組成物。
【0151】
28. 成分Bの成分Cに対する重量比が少なくとも2:1である、実施形態1~27のいずれかに記載の組成物。
【0152】
29. 成分Dが、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート、安定剤として立体障害フェノール、有機ホスファイト、硫黄系共安定剤ならびに有機および無機ブレンステッド酸からなる群から選択される少なくとも1種の代表的なものを含んでなる、実施形態1~28のいずれかに記載の組成物。
【0153】
30. 少なくとも90重量%の成分A~Eからなる、実施形態1~29のいずれかに記載の組成物。
【0154】
31. 成分A~Eのみからなる、実施形態1~30のいずれかに記載の組成物。
【0155】
32. 工程(i)、(ii)および任意で(iii)を含んでなる、成形材料を製造するための方法であって、
第1の工程(i)において、
実施形態1~31のいずれかに記載の組成物を
熱および/または機械的エネルギーによって加熱し、これにより少なくとも成分A)を溶融し、使用する成分をすべて互いに分散および/または溶解し、
そして、
更なる工程(ii)で、
工程(i)から得た溶融物を、(ii)冷却して固化し、
(iii)任意でペレット化し、
ここで、前記工程(ii)および(iii)をいずれかの所望の順序で実行してよい、方法。
【0156】
33. 実施形態32による方法によって得られた、または得ることができる成形材料。
【0157】
34. 実施形態1~31のいずれかに記載の組成物または実施形態33に記載の成形材料の成形品製造のための使用。
【0158】
35. 実施形態1~31のいずれかに記載の組成物または実施形態33に記載の成形材料を含んでなる成形品。
【実施例】
【0159】
使用する成分:
成分A:
A1:ポリカーボネート換算で塩化メチレン中のゲル浸透クロマトグラフィーで測定した重量平均モル質量MWが28000g/molである、ビスフェノールA系の直鎖ポリカーボネート。
【0160】
成分B:
B1:MAH含有量が0.8重量%、エチレン:1-オクテン比率が87:13mol%、重量平均モル質量MWが200000g/molの無水マレイン酸官能化エチレン-1-オクテンコポリマー(パラロイド(商標)EXL3808D、ダウ・ケミカル社製)。
【0161】
B2:MAH含有量が0.4重量%、エチレン:1-オクテン比率が83:17mol%、重量平均モル質量MWが322000g/molの無水マレイン酸官能化エチレン-1-オクテンコポリマー(パラロイド(商標)EXL3815、ダウ・ケミカル社製)。
【0162】
成分C
C1:コアシェル構造と、エラストマーグラフトベース(ゴムコア)としてブタジエンゴムを使用した衝撃改質剤(カネエース(商標)M732、カネカ社製)。
【0163】
C2:コアシェル構造とエラストマーグラフトベースとしてシリコーン-アクリレート複合ゴムを使用した衝撃改質剤(メタブレン(商標)S2001、三菱レイヨン社製)。
【0164】
C3:コアシェル構造と、エラストマーグラフトベースとしてアクリレートゴムを使用した衝撃改質剤(パラロイド(商標)EXL2300、ダウ・ケミカル社製)。
【0165】
成分D:
D1:ビスフェノールA系のエポキシサイジングをした、平均繊維径11μm、平均繊維長4.5mmのカットガラス繊維(CS7968、ランクセス社製)。
【0166】
D2:ポリウレタンサイジングをした平均繊維径14μm、平均繊維長4.5mmのカットガラス繊維(CS7942、ランクセス社製)。
【0167】
成分E:
E1:熱安定剤、イルガノックス(商標)B900(80%イルガホス(商標)168(tris(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトおよび20%イルガノックス(商標)1076(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)の混合物);BASF社製(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)。
【0168】
E2:離型剤、ペンタエリスリトールテトラステアレート。
【0169】
本発明の成形材料の製造および試験
Werner&Pfleiderer社のZSK-25二軸押出機を使い、溶融温度300℃で成分を混ぜた。Arburg270E射出成形機を用い、成形品を300℃の溶融温度および80℃の金型温度で製造した。
【0170】
ISO527(1996版)に準拠した23℃引張試験により、破断時のひずみを測定した。
【0171】
最大力と破壊エネルギー(多軸延性)を測定する衝撃貫通テストは、ISO6603-2(2000版であるが、試験サンプルの視覚的な観察を除く)に準拠した寸法60mm×60mm×2mmの試験サンプルに対して23℃で実施する。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
表1の実施例により、成分BおよびCの混合物を有する本発明の組成物(2、3および4)が、成分Bのみを含有する組成物(V1)または成分Cのみを含有する組成物(V5)よりも、最大力、破壊エネルギー、破壊時のひずみに関してより優れた性能を提供することが分かる。分子量、エチレン:1-オクテン比、および無水マレイン酸の含有量に関して成分Bを適合させると(表2、組成物7および8をV6およびV5と比較)、同じ相乗効果が観察される。また、成分Cのグラフトベースをアクリレートゴムまたはシリコーン/アクリレート複合ゴムに変更しても、成分BとCを組み合わせる利点は依然と観察される(表3および4)。最後に、表5から明らかなように、異なるガラス繊維のグレードでも、成分BとCを使用した場合の相乗特性の組み合わせが観察される。