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特許7425751セラミック、その生成のための方法、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】セラミック、その生成のための方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/50 20060101AFI20240124BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240124BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240124BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240124BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240124BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240124BHJP
   C04B 35/447 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C04B35/50
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
C04B35/447
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020566570
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 CA2019050740
(87)【国際公開番号】W WO2019227218
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】62/678,020
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/791,144
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パオレラ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】サヴォワ, シルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ガリーピー, ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェルフィ, アブデルバスト
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-223893(JP,A)
【文献】特表2003-520405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/50
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01B 1/06
C04B 35/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムベースのセラミックを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、少なくとも、
a)リチウムイオンの供給源および少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩炭素材料混合して、粉末混合物を得る工程であって前記リチウムイオン:炭素モル比は、0.5(1:2)~2.4(12:5)の範囲にある、工程ならびに
b)工程(a)において得られた前記粉末混合物を処理温度で加熱する工程
を包含し、ここで工程(a)において使用される前記リチウムイオンの供給源は、800℃を下回りかつ工程(b)の前記処理温度を下回る融解点を有するリチウム塩であり、そして
ここで
工程(b)は、不活性雰囲気下で行われ、そして前記プロセスは、前記炭素材料を排除するために十分な期間にわたって工程(b)の生成物を酸素の存在下で加熱する工程(c)をさらに包含するまたは
工程(b)は、前記炭素材料を排除するために十分な期間にわたって酸素の存在下で行われる、
プロセス。
【請求項2】
前記酸素の存在は、空気の存在下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(b)において得られた生成物と、金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料とを混合する工程(b)(i)ならびに(b)(i)において得られた混合物を、第2の処理温度で加熱して、第2の生成物を得る工程(b)(ii)さらに包含し、ここで工程(b)の生成物は、工程(b)(ii)の前記処理温度を上回る融解点を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の酸化物またはリン酸塩である、または
前記少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の少なくとも2種または少なくとも3種の金属酸化物または金属リン酸塩を含むが、ただし少なくとも1種の金属は、ランタンまたはアルミニウムである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1種の酸化物またはリン酸塩は、ランタンまたはアルミニウムの酸化物であり前記プロセスは、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンから選択される第2の金属酸化物をさらに含み、必要に応じて、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、ニオブ、鉄、バリウム、ホウ素、およびケイ素から選択される元素の酸化物をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記少なくとも1種の酸化物またはリン酸塩は、酸化ランタンである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
セラミックを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)炭酸リチウム、第1の金属酸化物、および炭素材料を混合して、第1の粉末混合物を得る工程であって前記LiCO:炭素モル比は、0.25(1:4)~1.2(6:5)の範囲にある、工程
b)工程(a)の前記第1の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程
c)工程(b)の生成物と、第2の金属酸化物と、必要に応じて第3の金属酸化物とを混合して、第2の粉末混合物を得る工程
d)工程(c)において得られた前記第2の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程
を包含し、ここで前記第1の金属酸化物は、前記第2の金属酸化物とは異なる、プロセス。
【請求項8】
前記第1の金属酸化物は、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄、およびニオブの酸化物から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む、および/または
前記第2および第3の金属酸化物は、ランタン、ジルコニウム、およびアルミニウムの酸化物から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む、および/または
工程(b)の生成物は、式LiまたはLiのリチウム金属酸化物を含み、ここでMは、Ga、AlまたはFeであり、Mは、TaまたはNbである、
請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記混合する工程(c)は、第3の金属酸化物をさらに含む、請求項またはに記載のプロセス。
【請求項10】
前記混合する工程(a)は、さらなるリン酸塩をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記炭素材料は、カーボンブラッ、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記カーボンブラックは、アセチレンブラックまたはKetjen TM ブラックである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記加熱する工程は、800~1400℃の範囲にある温度で行われる、および/または30分間~3時の範囲にある期間にわたっ行われる、請求項1~1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記加熱する工程は、45分間~1.5時間の範囲にある期間にわたって行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
セラミックを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)炭酸リチウム(LiCO)と、第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物とを混合して、粉末混合物を得る工程
b)工程(a)において得られた前記粉末混合物を、不活性気体流の下で、LiCOの分解温度を下回る第1の温度まで加熱する工程
c)工程(b)の前記不活性気体流を停止し、前記第1の温度を上回る第2の温度で熱処理する工程
を包含し、ここで前記第1の金属酸化物は、前記第2の金属酸化物とは異な
プロセス。
【請求項16】
前記セラミックは、立方晶構造を有する化合物を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第1の金属酸化物は、式M であり、ここでMは、酸化状態IIIの金である、および/または
前記第2の金属酸化物は、酸化状態(IV)の金の二酸化物であ
請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記酸化状態IIIの金属は、La、Al、およびGaから選択される、および/または前記酸化状態(IV)の金属は、Zr、Ti、およびGeから選択される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第1の温度は、800℃に等しいかこれ未満、または750℃に等しいかこれ未満、または700℃に等しいかこれ未満である、および/または
前記第2の温度は、800~1400℃の範囲に含まれるか、または800~1200℃の範囲に含まれるか、または850~1100℃の範囲に含まれるか、または900~1000℃の範囲に含まれる、および/または
工程(b)の前記加熱する工程は、30分間~3時間の範囲に、または1時間~3時間の範囲に含まれる期間、または約2時間の期間にわたって行われる、
請求項15~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
工程(a)は、カーボンブラッ、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから択され炭素材料をさらに含む、請求項1~1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記カーボンブラックは、アセチレンブラックまたはKetjen TM ブラックである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
工程(a)は、炭素材料を含まない、請求項1519のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記混合する工程は、ボールミル粉砕によってまたはプラネタリーミキサーにおいてわれる、請求項1~22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記混合する工程は、ボールミル粉砕によって、二酸化ジルコニウム容器の中で二酸化ジルコニウムボールを使用して行われる、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載のプロセスであって、ここで、前記セラミックが、5重量%未満の残留炭素含有量を有する、プロセス。
【請求項26】
前記セラミックは、式(I)~(IV):
LiLaZr12 (I)
Li7-xLaZr12 (II)
Li3yLa(2/3)-yTi1-y’ y’ (III)
Li1+zAl 2-z(PO (IV)
の化合物から選択される化合物を含み、ここで
Mは、Al、Ga、Ta、Fe、およびNbから選択され
は、TiおよびGeから選択され
は、Ba、B、Al、SiおよびTaから選択され
xは、0~1の範囲内にあり
yは、0より大きくかつ0.67未満かまたは0.67に等しく
y’は、0から1未満の範囲内にありそして
zは、0~1の範囲内にあり
ここで前記化合物は、イオン空白をさらに含んでいてもよい、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記化合物は式(I)または(II)の化合物であり、そして正方晶構造または立方晶構造を有する、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記化合物は、式(III)の化合物であり、そしてペロブスカイト型結晶構造を有す、または式(IV)の化合物であり、そしてNASICON型結晶構造を有す、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記化合物は、立方晶構造を有する式(I)のドープされていない化合物である、請求項2に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用可能な法の下に、2018年5月30日出願の米国仮特許出願第62/678,020号および2019年1月11日出願の米国仮特許出願第62/791,144号(これらの内容は、全ての目的のためにその全体において本明細書に参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
技術分野は、概して、セラミックおよび固体電解質におけるそれらの使用、それらの調製法、ならびにそれらを含む電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
リチウムバッテリーの容量喪失および/または故障の原因である重要な現象は、電解質およびセパレーターを通る金属リチウム樹枝状物の形成(それによって、バッテリーを短絡させる)である。従って、バッテリーにおける金属リチウムアノードの使用は、好ましくは、このようなリチウム樹枝状物の形成を防止するために、固体電解質を要する(例えば、Xu, R. et al., Adv. Funct. Mater., 2018, 1705838, 1-7を参照のこと)。近年、異なるタイプの固体電解質が開発され、これらは、ポリマー、セラミック(例えば、LLZO)またはセラミック-ポリマーハイブリッド(例えば、ポリ(エチレンオキシド)およびLLZO複合材)に基づくものであった(例えば、Stephan, A. M. & Nahm, K. S., Polymer (Guildf), 2006, 47, 5952-5964; Hongxia, G. et al., Rare Metal Mater. Eng., 2016, 45, 612-616;およびChen, L. et al., Nano Energy, 2018, Vol. 46, 176-184を参照のこと)。
【0004】
固体状態の合成を介するセラミックベースの固体電解質の調製は、リチウム塩(例えば、炭酸リチウム)および金属酸化物の使用を要し、次いで、高温(900℃超)で処理される。この技術と関連する主要な問題のうちの1つは、構成要素の坩堝との反応である(Shin, D. O. et al., Sci. Rep., 2015, 5, 18503)。セラミック合成には、長い反応時間もまた概して要求される。
【0005】
Kim et al.は、炭素を使用するLiCOおよびNaCOの炭素熱分解を報告した(Kim, J. & Lee, H., Metall. Mater. Trans. B, 2001, 32, 17-24)。チタン酸リチウム(LiTi12(LTOともいわれる))およびセラミック(例えば、YおよびZrOと合わせたLTO)合成の間の炭素の使用もまた、米国特許公開US2010/0173160においてZaghib et al.によって提示された。
立方相におけるLLZOは一般に、アルミニウム(Hubaud, A. A. et al., J. Mater. Chemsitry A 1, 8813-8818 (2013))またはガリウム(Li, C. “Gallium Substitution in Zirconate-Based Fast Ionic Conducting Ceramics.” (2016) All Theses, Clemson University. 2457)のようなドーパントの存在下で調製される。
よって、例えば、電気化学の分野において有用な、セラミックの調製のための代替プロセスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2010/0173160号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Xu, R. et al., Adv. Funct. Mater., 2018, 1705838, 1-7
【文献】Stephan, A. M. & Nahm, K. S., Polymer (Guildf), 2006, 47, 5952-5964
【文献】Hongxia, G. et al., Rare Metal Mater. Eng., 2016, 45, 612-616
【文献】Chen, L. et al., Nano Energy, 2018, Vol. 46, 176-184
【文献】Shin, D. O. et al., Sci. Rep., 2015, 5, 18503
【文献】Kim, J. & Lee, H., Metall. Mater. Trans. B, 2001, 32, 17-24
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本技術のある局面は、リチウムベースのセラミックを調製するためのプロセスに関する。プロセスは、少なくとも、
a)リチウムイオンの供給源、少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料を混合して、粉末混合物を得る工程;ならびに
b)工程(a)において得られた粉末混合物を処理温度で加熱する工程;
を包含し、ここで工程(a)において使用されるリチウムイオンの供給源は、工程(b)の処理温度を下回る融解点を有する。
【0009】
一実施形態では、工程(b)は、不活性雰囲気下で行われ、プロセスは、工程(b)の生成物を酸素の存在下で(例えば、空気中で)加熱する工程(c)をさらに包含する。代替的には、工程(b)は、酸素の存在下で(例えば、空気の存在下で)行われる。例えば、空気の存在下で加熱する工程は、炭素材料を排除するために十分な期間にわたって行われる。
【0010】
別の実施形態では、プロセスは、工程(b)において得られた生成物と、金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料とを混合する工程(b)(i);ならびに(b)(i)において得られた混合物を、第2の処理温度で加熱して、第2の生成物を得る工程(b)(ii)さらに包含し、ここで工程(b)の生成物は、工程(b)(ii)の処理温度を上回る融解点を有する。
【0011】
ある実施形態では、少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の酸化物またはリン酸塩である。例えば、少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の少なくとも2種の酸化物またはリン酸塩を含むが、ただし少なくとも1種の金属は、ランタンまたはアルミニウムである。別の例によれば、少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、少なくとも3種の金属酸化物または金属リン酸塩を含む。
【0012】
さらに別の実施形態では、少なくとも1種の酸化物またはリン酸塩は、ランタンまたはアルミニウムの酸化物である。例えば、少なくとも1種の酸化物またはリン酸塩は、ランタンの酸化物であり、プロセスは、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンから選択される第2の金属酸化物をさらに含む。プロセスは、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、ニオブ、鉄、バリウム、ホウ素、およびケイ素から選択される元素の第3の酸化物も含み得る。
【0013】
上記の実施形態の任意の1つでは、「リチウムイオン:炭素」モル比は、0.5~2.4の範囲にあり、リチウムイオンはリチウムイオンの供給源から生じる。
【0014】
本技術の第2の局面は、セラミックを調製するためのプロセスに関し、プロセスは、
a)炭酸リチウム、第1の金属酸化物、および炭素材料を混合して、第1の粉末混合物を得る工程;
b)工程(a)からの第1の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程;
c)工程(b)の生成物と、第2の金属酸化物と、必要に応じて第3の金属酸化物とを混合して、第2の粉末混合物を得る工程;
d)工程(c)において得られた第2の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程;
を包含し、ここで第1の金属酸化物は、第2の金属酸化物とは異なる。
【0015】
一実施形態では、第1の金属酸化物は、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム、酸化タンタル、酸化鉄、および酸化ニオブから選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む。別の実施形態では、第2および第3の金属酸化物は、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、および酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む。さらなる実施形態によると、工程(b)の生成物は、式LiまたはLiのリチウム金属酸化物を含み、ここでMは、Ga、AlまたはFeであり、Mは、TaまたはNbである。いくつかの実施形態では、混合する工程(c)は、第3の金属酸化物をさらに含む。混合する工程はまた、リン酸塩をさらに含み得る。
【0016】
好ましくは、「LiCO:炭素」モル比は、0.25~1.2の範囲にある。
【0017】
上記の2つのプロセスの実施形態によると、炭素材料は、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、KetjenTMブラックなど)、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0018】
上記のプロセスの加熱する工程は、800~1400℃の範囲内の温度で、例えば、30分間~3時間、または45分間~1.5時間の範囲にある期間にわたって、好ましくは、約1時間の期間にわたって行われ得る。
【0019】
本技術の第3の局面は、セラミックを調製するためのプロセスに関し、プロセスは、
a)炭酸リチウム(LiCO)と、第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物とを混合して、粉末混合物を得る工程;
b)工程(a)において得られた粉末混合物を、不活性気体流の下で、LiCOの分解の温度を下回る第1の温度まで加熱する工程;
c)工程(b)の不活性気体流を停止し、第1の温度を上回る第2の温度で熱処理する工程;
を包含し、ここで第1の金属酸化物は、第2の金属酸化物とは異なる、プロセス。
【0020】
一実施形態によれば、第1の金属酸化物は、式M (ここでMは、酸化状態IIIの金属(例えば、La、Al、Gaなど)であり、好ましくは、Mは、ランタンである)の金属酸化物である。別の実施形態において、第2の金属酸化物は、酸化状態(IV)の金属(例えば、Zr、Ti、Geなど)の二酸化物であり、好ましくは、第2の金属酸化物は、二酸化ジルコニウムである。別の実施形態によれば、セラミックは、立方晶構造を有する化合物を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の温度は、800℃に等しいかこれ未満、または750℃に等しいかこれ未満、または700℃に等しいかこれ未満である。ある実施形態によれば、第2の温度は、800~1400℃の範囲に含まれるか、または800~1200℃の範囲に含まれるか、または850~1100℃の範囲に含まれるか、または900~1000℃の範囲に含まれる。例えば、工程(b)の加熱する工程は、30分間~3時間の範囲に、または1時間~3時間の範囲に含まれる期間、または約2時間の期間にわたって行われる。
【0022】
この第3の局面の実施形態によれば、工程(a)は、例えばカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、KetjenTMブラックなど)、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから選択される、炭素材料をさらに含む。この第3の局面の別の実施形態によれば、工程(a)は、炭素材料の添加を含まない。
【0023】
一実施形態によれば、上記のプロセスのうちの一つまたは他の混合する工程は、ボールミル粉砕によって、またはプラネタリーミキサーにおいて行われる。好ましくは、混合する工程は、ボールミル粉砕によって、例えば、二酸化ジルコニウム容器の中で、二酸化ジルコニウムボールを使用して行われる。
【0024】
第4の局面は、本願に規定されるとおりのプロセスによって得られるまたは得られ得るセラミックに関する。一実施形態によれば、セラミックは、式(I)~(IV):
LiLaZr12 (I)
Li7-xLaZr12 (II)
Li3yLa(2/3)-yTi1-y’ y’ (III)
Li1+zAl 2-z(PO (IV)
の化合物から選択される化合物を含み、ここで:
Mは、Al、Ga、Ta、Fe、およびNbから選択され;
は、TiおよびGeから選択され;
は、Ba、B、Al、SiおよびTaから選択され;
xは、0~1の範囲内にあり;
yは、0より大きくかつ0.67未満かまたは0.67に等しく;
y’は、0から1未満の範囲内にあり;そして
zは、0~1の範囲内にある。
【0025】
一実施形態によれば、化合物は、イオン空白(lacunes ioniques)を含む。別の実施形態によれば、化合物は、イオン空白を含まない。
【0026】
一実施形態において、化合物は、式(I)の、例えば、正方晶構造または立方晶構造を有する化合物である。別の実施形態において、化合物は、式(II)の、例えば、正方晶構造または立方晶構造を有する化合物である。一例によれば、化合物は、式(I)または式(II)、かつ立方晶構造の化合物である。別の例によれば、化合物は、式(I)のドープされていない化合物であり、立方晶構造を有する。別の実施形態によれば、化合物は、式(III)の、例えば、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。さらなる実施形態によれば、化合物は、式(IV)の、例えば、NASICON型結晶構造を有する化合物である。
【0027】
一実施形態によれば、セラミックは、10重量%未満の残留炭素含有量、または5重量%未満の、またはさらには2重量%未満もしくは1重量%未満の残留炭素含有量を有する。別の実施形態によれば、セラミックは、残留炭素を含まない。
【0028】
第5の局面は、本願に規定されるとおりのセラミックを含む電解質に関する。一例によれば、電解質は、固体電解質である。一実施形態によれば、電解質は、ポリマー、溶媒(例えば、極性非プロトン性溶媒)またはこれらの組み合わせをさらに含む。好ましくは、電解質は、10-5~10-3S/cmの範囲内のイオン伝導率を示す。
【0029】
第6の局面は、本明細書で規定されるとおりのセラミックを含む電極材料であって、例えば、電極材料は電気化学的に活性な材料ならびに必要に応じて結合剤および/または導電性材料をさらに含む電極材料に関する。
【0030】
第7の局面によれば、本願は、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここでこれら3種の要素のうちの少なくとも1つは、本セラミックを含む電気化学セルに関する。一実施形態において、電解質は、本願に規定されるとおりである。別の実施形態において、正電極または負電極は、本願に規定されるとおりの電極材料を含む。さらなる実施形態において、正電極または負電極は、本明細書で規定されるとおりの電極材料を含み、電解質は、本明細書で規定されるとおりである。他の局面は、本明細書で規定されるとおりの少なくとも1種の電気化学セルを含むバッテリーに関し、例えば、バッテリーは、リチウムまたはリチウムイオンバッテリーである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
リチウムベースのセラミックを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、少なくとも、
a)リチウムイオンの供給源、少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料を混合して、粉末混合物を得る工程;ならびに
b)工程(a)において得られた前記粉末混合物を処理温度で加熱する工程;
を包含し、ここで工程(a)において使用される前記リチウムイオンの供給源は、工程(b)の前記処理温度を下回る融解点を有する、プロセス。
(項目2)
工程(b)は、不活性雰囲気下で行われ、前記プロセスは、工程(b)の生成物を酸素の存在下で(例えば、空気中で)加熱する工程(c)をさらに包含する、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
工程(b)は、酸素の存在下で(例えば、空気の存在下で)行われる、項目1に記載のプロセス。
(項目4)
空気の存在下で加熱する前記工程は、前記炭素材料を排除するために十分な期間にわたって行われる、項目2または3に記載のプロセス。
(項目5)
工程(b)において得られた生成物と、金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料とを混合する工程(b)(i);ならびに(b)(i)において得られた混合物を、第2の処理温度で加熱して、第2の生成物を得る工程(b)(ii)さらに包含し、ここで工程(b)の生成物は、工程(b)(ii)の前記処理温度を上回る融解点を有する、項目1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目6)
前記少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の酸化物またはリン酸塩である、項目1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目7)
前記少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の少なくとも2種の金属酸化物または金属リン酸塩を含むが、ただし少なくとも1種の金属は、ランタンまたはアルミニウムである、項目1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目8)
前記少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩は、少なくとも3種の金属酸化物または金属リン酸塩を含む、項目7に記載のプロセス。
(項目9)
前記少なくとも1種の酸化物またはリン酸塩は、ランタンまたはアルミニウムの酸化物である、項目1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目10)
前記少なくとも1種の酸化物またはリン酸塩は、酸化ランタンであり、前記プロセスは、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンから選択される第2の金属酸化物をさらに含む、項目9に記載のプロセス。
(項目11)
アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、ニオブ、鉄、バリウム、ホウ素、およびケイ素から選択される元素の酸化物をさらに含む、項目10に記載のプロセス。
(項目12)
前記リチウムイオン:炭素モル比は、0.5~2.4の範囲にある、項目1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目13)
セラミックを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)炭酸リチウム、第1の金属酸化物、および炭素材料を混合して、第1の粉末混合物を得る工程;
b)工程(a)の前記第1の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程;
c)工程(b)の生成物と、第2の金属酸化物と、必要に応じて第3の金属酸化物とを混合して、第2の粉末混合物を得る工程;
d)工程(c)において得られた前記第2の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程;
を包含し、ここで前記第1の金属酸化物は、前記第2の金属酸化物とは異なる、プロセス。
(項目14)
前記第1の金属酸化物は、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄、およびニオブの酸化物から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む、項目13に記載のプロセス。
(項目15)
前記第2および第3の金属酸化物は、ランタン、ジルコニウム、およびアルミニウムの酸化物から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む、項目13または14に記載のプロセス。
(項目16)
工程(b)の生成物は、式Li またはLi のリチウム金属酸化物を含み、ここでM は、Ga、AlまたはFeであり、M は、TaまたはNbである、項目13~15のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目17)
前記混合する工程(c)は、第3の金属酸化物をさらに含む、項目13~16のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目18)
前記Li CO :炭素モル比は、0.25~1.2の範囲にある、項目13~17のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目19)
前記混合する工程(a)は、リン酸塩をさらに含む、項目1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目20)
前記炭素材料は、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、Ketjen TM ブラックなど)、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから選択される、項目1~19のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目21)
前記加熱する工程は、800~1400℃の範囲にある温度で行われる、項目1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目22)
前記加熱する工程は、30分間~3時間、または45分間~1.5時間の範囲にある期間にわたって、好ましくは、約1時間の期間にわたって行われる、項目1~21のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目23)
セラミックを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)炭酸リチウム(Li CO )と、第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物とを混合して、粉末混合物を得る工程;
b)工程(a)において得られた前記粉末混合物を、不活性気体流の下で、Li CO の分解温度を下回る第1の温度まで加熱する工程;
c)工程(b)の前記不活性気体流を停止し、前記第1の温度を上回る第2の温度で熱処理する工程;
を包含し、ここで前記第1の金属酸化物は、前記第2の金属酸化物とは異なる、プロセス。
(項目24)
前記第1の金属酸化物は、式M であり、ここでM は、酸化状態IIIの金属(例えば、La、Al、およびGa)であり、好ましくは前記第1の金属酸化物は、酸化ランタンである、項目23に記載のプロセス。
(項目25)
前記第2の金属酸化物は、酸化状態(IV)の金属(例えば、Zr、Ti、およびGe)の二酸化物であり、好ましくは前記第2の金属酸化物は、二酸化ジルコニウムである、項目23または24に記載のプロセス。
(項目26)
前記セラミックは、立方晶構造を有する化合物を含む、項目23~25のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目27)
前記第1の温度は、800℃に等しいかこれ未満、または750℃に等しいかこれ未満、または700℃に等しいかこれ未満である、項目23~26のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目28)
前記第2の温度は、800~1400℃の範囲に含まれるか、または800~1200℃の範囲に含まれるか、または850~1100℃の範囲に含まれるか、または900~1000℃の範囲に含まれる、項目23~27のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目29)
工程(b)の前記加熱する工程は、30分間~3時間の範囲に、または1時間~3時間の範囲に含まれる期間、または約2時間の期間にわたって行われる、項目23~28のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目30)
工程(a)は、炭素材料をさらに含む、項目23~29のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目31)
前記炭素材料は、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、Ketjen TM ブラックなど)、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから選択される、項目30に記載のプロセス。
(項目32)
工程(a)は、炭素材料を含まない、項目23~29のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目33)
前記混合する工程は、ボールミル粉砕によってまたはプラネタリーミキサーにおいて行われる、項目1~32のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目34)
前記混合する工程は、ボールミル粉砕によって行われる、項目33に記載のプロセス。
(項目35)
前記ボールミル粉砕は、二酸化ジルコニウム容器の中で二酸化ジルコニウムボールを使用して行われる、項目33に記載のプロセス。
(項目36)
項目1~35のいずれか1項に記載のプロセスによって得られるかまたは得ることができるセラミック。
(項目37)
前記セラミックは、式(I)~(IV):
Li La Zr 12 (I)
Li 7-x La Zr 12 (II)
Li 3y La (2/3)-y Ti 1-y’ y’ (III)
Li 1+z Al 2-z (PO (IV)
の化合物から選択される化合物を含み、ここで:
Mは、Al、Ga、Ta、Fe、およびNbから選択され;
は、TiおよびGeから選択され;
は、Ba、B、Al、SiおよびTaから選択され;
xは、0~1の範囲内にあり;
yは、0より大きくかつ0.67未満かまたは0.67に等しく;
y’は、0から1未満の範囲内にあり;そして
zは、0~1の範囲内にあり;
ここで前記化合物は、イオン空白をさらに含んでいてもよい、項目36に記載のセラミック。
(項目38)
前記化合物は、式(I)の化合物である、項目37に記載のセラミック。.
(項目39)
前記化合物は、式(II)の化合物である、項目37に記載のセラミック。
(項目40)
前記化合物は、式(III)の化合物である、項目37に記載のセラミック。
(項目41)
前記化合物は、式(IV)の化合物である、項目37に記載のセラミック。
(項目42)
前記化合物は、正方晶構造を有する、項目38または39に記載のセラミック。
(項目43)
前記化合物は、立方晶構造を有する、項目38または39に記載のセラミック。
(項目44)
前記化合物は、立方晶構造を有する式(I)のドープされていない化合物である、項目43に記載のセラミック。
(項目45)
前記化合物は、ペロブスカイト型結晶構造を有する、項目40に記載のセラミック。
(項目46)
前記化合物は、NASICON型結晶構造を有する、項目41に記載のセラミック。
(項目47)
前記セラミックは、10重量%未満の残留炭素含有量を有する、項目36~46のいずれか1項に記載のセラミック。
(項目48)
前記セラミックは、5重量%未満の残留炭素含有量を有する、項目47に記載のセラミック。
(項目49)
項目36~48のいずれか1項に記載のセラミックを含む電解質。
(項目50)
前記電解質は、固体電解質である、項目49に記載の電解質。
(項目51)
ポリマー、溶媒(例えば、極性非プロトン性溶媒)またはこれらの組み合わせをさらに含む、項目49または50に記載の電解質。
(項目52)
前記電解質は、10 -5 ~10 -3 S/cmの範囲内のイオン伝導率を示す、項目49~51のいずれか1項に記載の電解質。
(項目53)
項目36~48のいずれか1項に記載のセラミックを含む電極材料。
(項目54)
電気化学的に活性な材料および必要に応じて結合剤および/または導電性材料をさらに含む、項目53に記載の電極材料。
(項目55)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記電解質は、項目49~52のいずれか1項に記載の電解質である、電気化学セル。
(項目56)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記正電極または負電極は、項目53または54に記載の電極材料を含む、電気化学セル。
(項目57)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記正電極または負電極は、項目53または54に記載の電極材料を含み、前記電解質は、項目49~52のいずれか1項に記載の電解質である、電気化学セル。
(項目58)
項目55~57のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー。
(項目59)
前記バッテリーは、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである、項目58に記載のバッテリー。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、参照標準と比較した、実施例1に従って調製したLLZOのX線回折分析の結果を示す。
【0032】
図2図2は、参照標準と比較した、実施例2に従って調製したLLZOのX線回折分析の結果を示す。
【0033】
図3図3は、参照標準と比較した、実施例3に従って調製したLATPのX線回折分析の結果を示す。
【0034】
図4図4は、参照標準と比較した、実施例4に従って調製したLLZOのX線回折分析の結果を示す。
【0035】
図5図5は、参照標準と比較した、実施例5における中間体として調製した、LiGaOと、LaおよびZrOとの混合物のX線回折分析の結果を示す。
【0036】
図6図6は、参照標準と比較した、実施例5において調製したLiGaOを伴うLLZOのX線回折分析の結果を示す。
【0037】
図7図7は、参照標準と比較した、(a)立方相LLZO(気体流なしで加熱)、および(b)正方晶LLZO(気体流ありで加熱)のX線回折分析の結果を示し、両方のLLZOは、ドープされておらず、実施例6に従って調製した。
【0038】
図8図8は、参照標準と比較した、実施例7に従って調製したドープされていない立方晶LLZO(炭素の存在下で気体流なしでアニーリングした)のX線回折分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語ならびに表現は、本発明の技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。それでも、使用されるいくつかの用語および表現の定義は、明瞭性の目的で以下に提供される。
【0040】
用語「およそ」またはその等価な用語「約」は、本明細書で使用される場合、それは、その領域およびその周囲の領域であることを意味する。例えば、用語「およそ」または「約」が、数値に関連して使用される場合、それは、その数値を、公称値に対して10%または5%の変動だけ上下に修飾し得る。この用語はまた、例えば、測定デバイスの実験誤差または丸めを考慮に入れ得る。
【0041】
本願は、電気化学的用途において、電解質組成物において、ならびにカソードおよびアノード材料において使用するためのリチウムベースのセラミックの調製のための新たなプロセスを提示する。この方法は、後に、熱処理の間に排除される犠牲炭素添加剤(additif de carbone sacrificiel)を使用する。例えば、炭素添加剤は、熱処理温度を下回る融解点を有するリチウムイオン源(例えば、炭酸リチウム)が使用される場合、分散剤または界面活性剤として働き得る。例えば、この分散は、均質な粒子分布およびより小さなセラミック粒子サイズ、すなわち、それらの市販の等価物のものより小さな粒子サイズを得ることを補助し得る。プロセスはまた、単純かつ経済的であり、かつ/またはより短い反応時間を要する。
【0042】
よって、リチウムベースのセラミックの調製のための本プロセスは、少なくとも、リチウムイオンの供給源と、少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩、炭素材料とを混合して、粉末混合物を提供する工程、およびこの粉末混合物を、所定の処理温度で加熱する工程を包含する。好ましくは、リチウムイオンの供給源は、処理温度を下回る融解点を有するリチウム塩である。例えば、リチウム塩は、800℃を下回る融解点を有する(例えば、炭酸リチウム)。炭酸リチウムは、0.25~1.2の間、または0.5~1.1の間のLiCO:炭素モル比において使用され得る。例えば、Li:炭素モル比は、0.50~2.4の間、または1~2.2の間である。
【0043】
プロセスは、混合する工程/加熱する工程の1シーケンスを含んでもよいし、2もしくはこれより多くの混合する工程/加熱する工程のシーケンスを含んでもよいことが理解される。後者において、第1の混合する工程/加熱する工程のシーケンスは、リチウムイオンの供給源および少なくとも1種の金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料を混合する工程、ならびに混合物を加熱して、第1のリチウム化金属酸化物化合物を得る工程を包含する。次いで、この化合物は、第2の混合する工程において、少なくとも1種のさらなる金属酸化物または金属リン酸塩および炭素材料と混合され、得られた混合物は、第2の処理温度において加熱される。炭素は、第1の加熱する工程がその排除をもたらさない条件(例えば、不活性雰囲気下で、炭素材料を完全にもしくは部分的に燃焼させるのに不十分な温度でおよび/または期間にわたって加熱する)下で行われた場合、第1の混合する工程/加熱する工程のシーケンスから生じる。炭素材料はまた、第2の混合する工程において添加され得る第2の炭素材料であり得る。この場合、第2の炭素材料は、第1の炭素材料と同じ性質の材料であっても異なる性質の材料であってもよい。
【0044】
炭素材料は、任意の公知の形態の炭素(好ましくは、市販のもの)、例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、KetjenblackTMなど)、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、またはこれらの組み合わせのうちの1つであり得る。
【0045】
プロセスが、混合する工程/加熱する工程の2つのシーケンスを含む場合、第1のシーケンスの生成物は、好ましくは、第1の加熱する工程の処理温度を上回る融解温度を有する。
【0046】
一変形によれば、加熱する工程は、酸素の存在下で行われ、炭素材料は、燃焼によって排除される。別の変形によれば、加熱する工程は、不活性雰囲気下で(例えば、アルゴン下で)行われ、プロセスは、燃焼によって炭素源を排除するために、酸素の存在下でさらなる加熱する工程を含む。用語「排除する」は、完全な排除および部分的排除または実質的排除、例えば、10重量%未満の、または5重量%未満の、または2重量%未満の、またはさらには1重量%未満の残留炭素含有量を包含し得る。
【0047】
例えば、金属酸化物または金属リン酸塩は、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される金属の酸化物またはリン酸塩である。プロセスは、単一の混合する工程/加熱する工程のシーケンスにおける、または別個の混合する工程/加熱する工程のシーケンスの各々における、リチウムイオン源との、少なくとも2種の金属酸化物または金属リン酸塩の反応を包含する。
【0048】
第1の金属酸化物または金属リン酸塩の例としては、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択され得る金属の酸化物またはリン酸塩が挙げられる。第2の金属酸化物の例としては、酸化ランタンおよび酸化アルミニウムが挙げられる。例えば、プロセスは、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄およびニオブから選択される少なくとも2種の金属の酸化物またはリン酸塩を含むが、ただし少なくとも1つの金属は、ランタンまたはアルミニウムである。一例はまた、3種の金属酸化物または金属リン酸塩を含む。
【0049】
本プロセスは、金属酸化物の組み合わせ(リチウムイオンベースの材料および必要に応じて炭素に加えて)の以下の非限定的な例を含み得る:
- 必要に応じてAl、Ge、Ga、Ta、Nb、またはFeの酸化物の存在下での、LaおよびZrの酸化物;
- 必要に応じてBa、B、Al、Ta、またはSiの酸化物の存在下での、LaおよびTiの酸化物;ならびに
- リン酸イオン(好ましくは、リン酸アンモニウム、例えば、[NH][HPO])の存在下での、Alの酸化物ならびにTiまたはGeの酸化物。
【0050】
本プロセスのさらなる例は、以下の工程:
a)LiCO、第1の金属酸化物、および炭素材料を混合して、第1の粉末混合物を得る工程;
b)工程(a)の第1の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程;
c)工程(b)の生成物と、第2の金属酸化物と、必要に応じて第3の金属酸化物とを混合して、第2の粉末混合物を得る工程;
d)工程(c)において得られた第2の粉末混合物を、少なくとも800℃の温度で加熱する工程;
を包含し、ここで記第1の金属酸化物は、第2の金属酸化物とは異なる。
【0051】
第1の金属酸化物の例は、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム、ガリウム、タンタル、鉄、およびニオブの酸化物から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む。例えば、第2酸化物は、ランタン、ジルコニウム、およびアルミニウムの酸化物から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含み得る。
【0052】
ある例によれば、工程(b)の生成物は、式LiまたはLiのリチウム金属酸化物を含み、ここでMは、Ga、AlまたはFeであり、Mは、TaまたはNbである。
【0053】
本プロセスにおける混合する工程は、ボールミル粉砕、プラネタリーミキサーなどのような、当該分野において公知の任意の方法によって行われ得る。好ましくは、混合する工程は、例えば、二酸化ジルコニウムジャーの中で、二酸化ジルコニウムボールを用いてボールミル粉砕することによって行われる。
【0054】
上記で示されるように、加熱する工程は、酸素の存在下で(炭素排除を伴って)または不活性雰囲気下で行われ得るが、ただし最後の加熱する工程は、炭素反応およびその排除のために、酸素の存在下で行われる。例えば、工程(b)は、不活性雰囲気下で行われ、工程(d)は、酸素の存在下で行われる。一変形によれば、工程(b)および(d)は、不活性雰囲気下で行われ、プロセスは、酸素の存在下で少なくとも800℃の温度で加熱するさらなる工程(e)を包含する。本プロセスにおける加熱する工程は、少なくとも800℃の温度に耐える坩堝の中で、例えば、グラファイト坩堝またはアルミナ坩堝の中で、行われる。
【0055】
代替的に、本プロセスは、
a)LiCOと、第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物とを混合して、粉末混合物を得る工程;
b)工程(a)において得られた粉末混合物を、気体(例えば、不活性気体、例えば、アルゴンまたは窒素)流の下で、LiCOの分解温度を下回る第1の温度まで加熱する工程;
c)工程(b)の気体流を停止し、第1の温度を上回る第2の温度で熱処理する工程;
を包含し、ここで第1の金属酸化物は、第2の金属酸化物とは異なる。
【0056】
この代替のプロセスの一例において、第1の金属酸化物は、式M の金属酸化物(ここでMは、酸化状態IIIの金属、例えば、La、Al、Gaなどである)である。例えば、第1の酸化物は、酸化ランタンである。別の例において、第2の金属酸化物は、任意の金属酸化物、例えば、酸化状態(IV)の金属の二酸化物であり得る。第2の酸化物の例としては、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウムなどの酸化物が挙げられる。好ましくは、第2の酸化物は、酸化ジルコニウムである。いくつかの場合には、このプロセスを使用して、ドープする元素の使用を回避しながら、立方晶構造を有する化合物が提供され得る。従って、得られるセラミックは、立方晶構造を有する化合物を含み得る。
【0057】
このプロセスにおいて、第1の温度は、概して、800℃に等しいかもしくはこれ未満、または750℃に等しいかもしくはこれ未満、または700℃に等しいかもしくはこれ未満であり、第2の温度は、800~1400℃の間、または800~1200℃の間、または850~1100℃の間、または900~1000℃の間に含まれる。例えば、工程(b)の熱処理は、30分間~3時間の間、または1時間~3時間の間に含まれる期間、または約2時間にわたって行われ得る。プロセスの混合する工程は、ボールミル粉砕によって、またはプラネタリーミキサーにおいて、例えば、二酸化ジルコニウム容器の中で、二酸化ジルコニウムボールを使用してボールミル粉砕によって行われ得る。
【0058】
この代替のプロセスにおいて、混合する工程(a)は、炭素性材料の添加ありまたはなしで行われ得る。添加される場合、炭素性材料は、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、KetjenblackTMなど)、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーまたはナノファイバー、およびこれらの組み合わせから選択され得る。一例によれば、このプロセスの混合する工程(a)は、炭素材料の添加を除外する。
【0059】
本プロセスによって得られ得るセラミックもまた、企図される。上記で示されるように、本プロセスによって生成されるセラミックは、均質な粒子分布およびより小さなセラミック粒子サイズ、例えば、市販の等価物より小さな粒子サイズを有し得る。
【0060】
例えば、セラミックは、以下の式(I)~(IV):
LiLaZr12 (I)
Li7-xLaZr12 (II)
Li3yLa(2/3)-yTi1-y’ y’ (III)
Li1+zAl 2-z(PO (IV)
の少なくとも1つの化合物を含み、ここで:
Mは、Al、Ga、Ta、Fe、およびNbから選択され;
は、TiおよびGeから選択され;
は、Ba、B、Al、SiおよびTaから選択され;
xは、0~1の範囲内にあり;
yは、0より大きくかつ0.67未満であり;
y’は、0より大きく1未満であり;そして
zは、0~1の範囲内にある。
【0061】
上記の化合物の任意の1つは、イオン空白をさらに含み得る(示さず)。セラミックはまた、酸化物および/またはリン酸塩の混合物を含み得る。例えば、セラミックは、上記の式の1つの化合物および少なくとも1種の他の金属酸化物の混合物である。セラミックはまた、上記の式の1つの化合物を含み、ドープする材料、例えば、さらなる金属酸化物をさらに含み得る。好ましくは、セラミックは、式I~IVの1つの化合物を少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、またはさらには少なくとも90重量%含む。
【0062】
セラミックは、式(I)または(II)の、例えば、正方晶構造もしくは立方晶構造、またはその混合物を有する化合物を含み得る。例えば、化合物は、式(I)の、立方晶構造を有するドープされていない化合物であり得る。あるいは、セラミックは、式(III)の、例えば、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含み得る。別の代替によれば、セラミックは、式(IV)の、例えば、NASICON型結晶構造を有する化合物を含む。
【0063】
セラミックは、炭素を含まなくてもよいし、実質的に含まなくてもよいし、10重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは2重量%未満、もしくはさらには1重量%未満の残留炭素含有量を含んでもよい。
【0064】
上記のセラミックは、例えば、電気化学における、またはリチウムイオン交換が要求されるいずれかにおける使用が意図される。例えば、本記載はまた、本セラミックの1つを、単独でまたは他の電解質要素(例えば、他の無機粒子、リチウム塩、セパレーター、溶媒、および溶媒和化ポリマー)との組み合わせにおいて含む電解質を企図する。例えば、電解質は、固体またはゲル電解質、好ましくは固体電解質である。電解質は、好ましくは、10-5~10-3S/cmの範囲内のイオン伝導率を示す。
【0065】
例えば、溶媒は、非水性の極性非プロトン性溶媒である。非水性の溶媒の例としては、以下が挙げられる:環式カーボネート(例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、および炭酸ビニレン(VC));非環式カーボネート(例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、および炭酸ジプロピル(DPC));ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL));非環式エーテル(例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、およびトリメトキシメタン);環式エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、およびこれらの誘導体);ならびに他の溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、およびこれらの混合物)。
【0066】
電解質における使用に適した溶媒和化ポリマーの非限定的な例としては、以下が挙げられる:ポリ(エチレンオキシド)、およびエチレンオキシドユニットを含むコポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)およびプロピレンオキシドユニットを含むコポリマー、ポリ(ジメチルシロキサン)、およびジメチルシロキサンユニットを含むコポリマー、ポリ(アルキレンカーボネート)、およびアルキレンカーボネートユニットを含むコポリマー、ポリ(アルキレンスルホン)、およびアルキレンスルホンユニットを含むコポリマー、ポリ(アルキレンスルファアミド)、およびアルキレンスルファミドユニットを含むコポリマー、ポリウレタン、およびポリウレタン、およびウレタンユニットを含むコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、およびビニルアルコールユニットを含むコポリマー、ならびにこれらの組み合わせ。さらに、溶媒和化ポリマーは、直鎖状であってもよいが、分枝状または架橋されていてもよい。
【0067】
本記載はまた、本セラミックのうちの1つを、例えば、他の電極材料構成要素(例えば、電気化学的に活性な材料、導電性材料、無機粒子、リチウム塩、および結合剤)との組み合わせにおいて含む電極材料をさらに企図する。
【0068】
電気化学的に活性な材料の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:チタン酸塩およびチタン酸リチウム(例えば、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11、HTi、またはこれらの組み合わせ)、リチウム化金属リン酸塩(例えば、LiMPO(ここでMは、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである))、リチウム化または非リチウム化バナジウム酸化物(例えば、LiV、V、LiVなど)、ならびに他のリチウム化金属酸化物(例えば、LiMn、LiM(Mは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM)O(Mは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zrなど、またはこれらの組み合わせである))、グラファイト、元素硫黄、元素セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウムおよびヨウ素、または適合性である場合これらの材料のうちの2種もしくはこれより多くの組み合わせ。例えば、活性な材料は、リン酸リチウム鉄(LFP)、リン酸リチウムマンガン鉄(LMFP)、チタン酸リチウム(LTO)、酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA)、酸化リチウムコバルト(LCO)および酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)から選択される。粒子は、微粒子またはナノ粒子の形態において、新たに形成されてもよいし、市販の供給源のものであってもよく、炭素コーティングをさらに含んでいてもよい。
【0069】
導電性材料の例としては、カーボンブラック、KetjenTMブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー(またはナノファイバー)(例えば、VGCF)、カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
結合剤の例としては、上記の溶媒和化ポリマー、および水溶性結合剤(例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アルキルアクリレートゴム)、および他の類似の結合剤)、ならびにセルロースベースの結合剤(例えば、カルボキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース)のうちの1種、または前述の結合剤のうちの2種もしくはこれより多くの組み合わせが挙げられる。例えば、カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはカルボキシエチルセルロースであり得る。ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースの一例である。他の結合剤の例としては、フッ素含有ポリマー結合剤(例えば、PVDFおよびPTFE)が挙げられる。
【0071】
本記載はまた、電気化学セルであって、本セラミックの少なくとも1つを、その構成要素のうちの少なくとも1種の中に、すなわち、正電極もしくは負電極のための材料の中に、または電解質の中に含む電気化学セルに関する。例えば、電気化学セルは、本セラミックを含む本明細書で規定されるとおりの電解質、負電極および正電極を含む。
【0072】
電気化学セルはまた、本セラミックを含む本明細書で規定されるとおりの電解質、負電極および正電極を含み得、ここで負電極は、上記で記載されるとおりであり、本セラミックの少なくとも1つを含む。
【0073】
電気化学セルはまた、本セラミックを含む本明細書で規定されるとおりの電解質、負電極および正電極を含み得、ここで正電極は、上記で記載されるとおりであり、本発明のセラミックの少なくとも1つを含む。
【0074】
本電気化学セルにおいて使用される電極材料は、本発明のセラミックを添加することなく、例えば、上記で規定されるとおりの電気化学的に活性な材料、および必要に応じたさらなる構成要素(例えば、導電性材料、無機粒子、塩および結合剤)から調製され得る。電極材料はまた、金属リチウムもしくはその合金のフィルム(例えば、押し出し成形されたリチウムフィルム)を含んでもよいし、グラファイトのような材料から作製されてもよい。
【0075】
本願はまた、本明細書で規定されるとおりの少なくとも1種の電気化学セルを含むバッテリーを記載する。例えば、バッテリーは、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである。本セラミックのさらなる使用としてはまた、エレクトロクロミックデバイス(ECD)および光電子デバイスが挙げられ得る。
【実施例
【0076】
以下の非限定的な実施例は、例示目的であり、本発明の範囲をさらに限定すると解釈されるべきでない。これらの実施例は、添付の図面を参照しながらよりよく理解される。
【0077】
実施例1 - LiLaZr12(LLZO)
LiCO(3.38g)、La(5.82g)、ZrO(2.93g)、およびアセチレンブラック(0.500g)を、酸化ジルコニウムジャーの中で、酸化ジルコニウムボールで10分間、いっしょにミル粉砕した。そのようにして得た粉末を、次いで、アルミナ坩堝の中に入れ、停滞空気炉の中で900℃で1時間加熱した。室温へと冷却した後、最終粉末をX線回折によって分析したところ、正方相を有するLiLaZr12(LLZO)が観察された(図1を参照のこと)。
【0078】
実施例2: Alを伴うLiLaZr12
LiCO(2.99g)、Al(0.150g)、La(5.76g)、ZrO(2.90g)、およびアセチレンブラック(0.500g)を、酸化ジルコニウムジャーの中で、酸化ジルコニウムボールで10分間、いっしょにミル粉砕した。そのようにして得た粉末を、次いで、アルミナ坩堝の中に入れ、停滞空気炉の中で900℃で1時間加熱した。室温へと冷却した後、最終粉末をX線回折によって分析した。図2は、立方晶構造を有するLiLaZr12(LLZO)が主に観察され、Alがあったことを示す。いくらかの正方晶構造LLZOがまた、微量相として観察された。
【0079】
実施例3: Li1.3Al0.3Ti1.7(PO (LATP)
LiCO(0.79g)、Al(0.22g)、TiO(2.03g)、NHPO(5.17g)およびアセチレンブラック(0.12g)を、酸化ジルコニウムジャーの中で、酸化ジルコニウムボールで10分間、いっしょにミル粉砕した。そのようにして得た粉末を、次いで、アルミナ坩堝の中に入れ、停滞空気炉の中で1000℃で1時間加熱した。冷却した後、最終粉末をX線回折によって分析した。NASICON型構造を有するLi1.3Al0.3Ti1.7(PO(LATP)を、TiO微量相と同様に観察した(図3を参照のこと)。
【0080】
実施例4: LiLaZr12
LiCO(3.38g)、La(5.82g)、ZrO(2.93g)、およびアセチレンブラック(0.750g)粉末を、酸化ジルコニウムジャーの中で、酸化ジルコニウムボールで10分間、いっしょにミル粉砕した。そのようにして得た粉末を、次いで、アルミナ坩堝の中に入れ、停滞空気炉の中で900℃で1時間加熱した。室温へと冷却した後、最終粉末をX線回折によって分析した。正方晶構造を有するLaZr(LZO)およびLiLaZr12(LLZO)を観察した(図4を参照のこと)。
【0081】
実施例5: LiGaOを伴うLiLaZr12
LiCO(3.83g)、Ga(1.94g)およびアセチレンブラック(1.24g)を、酸化ジルコニウムジャーの中で、酸化ジルコニウムボールで10分間、いっしょにミル粉砕した。得られた粉末を、カーボン坩堝の中で、アルゴン雰囲気下で加熱した。次いで、黒い粉末(1.29g)を、La(0.53g)およびZrO(0.26g)と混合し、酸化ジルコニウムジャーの中で、酸化ジルコニウムボールで10分間、再びミル粉砕した。その中間体粉末をX線回折によって分析したところ、LiGaO、LaおよびZrOの存在が示された(図5を参照のこと)。次いで、この粉末を、グラファイト坩堝の中で、アルゴン雰囲気下で1200℃へと加熱し、最終的に、アルミナ坩堝の中で、900℃で1時間、空気下で加熱した。X線回折による分析から、LiGaOとともに正方晶構造のLiLaZr12を特定することが可能であった(図6を参照のこと)。
【0082】
実施例6 - 立方晶LiLaZr12(LLZO)(ドープなし)
LiCO(6.77g)、La(11.94g)、およびZrO(5.87g)を、酸化ジルコニウムボールとともに、空気雰囲気下で10分間混合した。次いで、得られた粉末を、管状炉の中でグラファイトボート上で加熱した。炉の中の窒素流を、室温から700℃まで、2L/分において維持した。次いで、窒素流を停止し、温度を、950℃に達するまで上昇させた。粉末を、静的条件で窒素流なしで、この温度(950℃)で2時間にわたってアニーリングし、次いで、冷却した。得られた粉末は、図7(a)のX線回折パターンにおいて示されるとおりの立方晶構造を有した。
【0083】
比較すると、気体流を最後まで一定に維持したことを除いて同じ手順に倣った場合、得られる粉末は、X線回折によって観察されるとおりの正方晶構造を有する(図7(b)を参照のこと)。
【0084】
実施例7 - 立方晶LiLaZr12(LLZO)(炭素あり、ドープなし)
LiCO(6.77g)、La(11.94g)、ZrO(5.87g)およびグラファイト(1g)を、酸化ジルコニウムボールとともに、空気雰囲気下で10分間混合した。得られた粉末を、管状炉の中でグラファイトボート上で加熱した。炉の中の窒素流を、室温から700℃まで、2L/分において維持した。次いで、窒素流を停止し、温度を、950℃に達するまで上昇させた。粉末を、静的条件で窒素流なしで、この温度(950℃)で2時間にわたってアニーリングし、次いで、冷却した。得られた粉末は、図8のX線回折パターンにおいて示されるとおりの立方晶構造を有した。いくらかのLaZrもまた、不純物として検出した。
【0085】
多くの改変を、企図されるとおりの本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態のいずれに対しても行うことができる。本願において言及される参考文献、特許または科学文献は、全ての目的のためにそれらの全体ふぁ本明細書に参考として援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8