(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電極材料およびそれらの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20240124BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240124BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240124BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20240124BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240124BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240124BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20240124BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20240124BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/40
H01M4/46
H01M4/1395
H01M4/66 A
H01M12/08 K
H01G11/30
(21)【出願番号】P 2021507451
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 CA2019051111
(87)【国際公開番号】W WO2020034036
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-07-01
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マレー, シャルロット
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロー, サージ
(72)【発明者】
【氏名】プロノヴォスト, ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】ローション, シルヴィアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アムゼガル, カムヤブ
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-103260(JP,A)
【文献】特表2017-535927(JP,A)
【文献】特表2020-517054(JP,A)
【文献】Masaru Yao et al.,Indigo Dye as a Positive-electrode Material for Rechargeable Lithium Batteries,Chem. Lett.,2010年07月31日,39,PP.950-952
【文献】Masaru Yao et al.,Indigo carmine: An organic crystal as a positive-electrode material for rechargeable sodium batteries,SCIENTIFIC REPORTS,2014年01月13日,4,3650-1 - 3650-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 12/00-16/00
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の膜、および式I~IV:
【化9】
のいずれか1つの化合物;
式I、IIもしくはIIIの化合物の幾何異性体
、または式IVの化合物の互変異性体、
または酸化型もしくは
塩を含む電極材料であって、式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン
、ハロゲン化
もしくは非ハロゲン化アルキル、
ハロゲン化もしくは非ハロゲン化シクロアルキル、
ハロゲン化もしくは非ハロゲン化アリール
、-OC(O)アルキル、-SO
2
NH
2
、-SO
2
NHアルキル、-SO
2
N(アルキル)
2
、CN、-NO
2、-SO
2OM
2、-OP(O)(OM
2)
2、-P(O)(OM
2)
2、または-C(O)OM
2
から選択される基から独立して選択され、ここで、M
2は、アルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン
であり;
R
10は水素原子または炭水化物であり、ここで、前記炭水化物は
、炭素原子を介して前記酸素原子に共有結合された天然または合成
の単糖または二糖、オリゴ糖
または多糖
であり;
X
1は、各出現において独立して、O、S、
およびNH
から選択され
;
i.a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、X
2はOであり、M
1は、H、またはX
2と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオン
であり、ここで、カチオンの前記式I
、式IIまたは式IIIの化合物の残りに対する比は、電気的中性を提供する
か;または
ii.a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、X
2はOもしくはNOH(オキシム)であり、M
1は存在
せず、そして
前記金属材料はアルカリもしくはアルカリ土類金属、およびそれらの合金から選択され、前記アルカリもしくはアルカリ土類金属が主成分である、
電極材料。
【請求項2】
X
1が、O
またはNHである、請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
X
1が、NHである、請求項1に記載の電極材料。
【請求項4】
前記化合物が式Iの化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項5】
前記化合物が式IIの化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項6】
前記化合物が式IIIの化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項7】
R
2およびR
6が同一であり、ハロゲン
、ハロゲン化
もしくは非ハロゲン化アルキル、-CN、および-SO
2OM
2
から選択される
か;
R
3
およびR
7
が同一であり、ハロゲン、ハロゲン化もしくは非ハロゲン化アルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
から選択されるか;または
R
1
~R
8
はすべて水素原子である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項8】
前記ハロゲン
は、F
である、請求項
7に記載の電極材料。
【請求項9】
R
2
およびR
6
がともに-CNであるか、またはR
3
およびR
7
がともに-CNである、請求項7に記載の電極材料。
【請求項10】
a、cおよびeが単結合であり、bおよびdが二重結合であり、X
2がOであり、M
1が、H、またはX
2と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項11】
M
1が、金属材料の前記膜の金属と同じ金属のカチオンである、請求項10に記載の電極材料。
【請求項12】
M
1
が、Li
+
、Na
+
、K
+
、Ca
2+
、またはMg
2+
である、請求項10に記載の電極材料。
【請求項13】
a、cおよびeが二重結合であり、bおよびdが単結合であり、X
2がOであり、M
1が存在しない、請求項1から9のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項14】
前記化合物が式IVの化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項15】
R
2が、ハロゲン
、ハロゲン化
もしくは非ハロゲン化アルキル、-CN、および-SO
2OM
2から選択され
る、請求項
14に記載の電極材料。
【請求項16】
R
1~R
4
がすべて水素原子である、請求項
14に記載の電極材料。
【請求項17】
R
10が水素原子である、請求項
14から16のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項18】
R
10が、
炭素原子を介して前記酸素原子に共有結合されたβ-D-グルコースまたはセルロースである、請求項
14から16のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項19】
前記化合物が、
【化10】
【化11】
から選択される、請求項1に記載の電極材料。
【請求項20】
前記化合物が、インジゴブルー、インジゴカルミン、イソインジゴ、インジゴプルプリンおよびインドリンジオンから選択される、請求項1に記載の電極材料。
【請求項21】
前記化合物がインジゴブルーである、請求項1に記載の電極材料。
【請求項22】
前記化合物が、ロイコインジゴまたはそのM
1塩である、請求項1に記載の電極材料。
【請求項23】
前記金属膜が、アルカリまたはアルカリ土類金属の膜である、請求項1から
22のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項24】
前記金属膜が、リチウム、リチウム合金
、ナトリウム、ナトリウム合金、マグネシウム、またはマグネシウム合金の膜である、請求項
1~22
のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項25】
前記金属膜が、リチウムまたはリチウム合金の膜である、請求項
23または24に記載の電極材料。
【請求項26】
前記リチウム合金が、少なくとも50重量%
のリチウムを含む、請求項
25に記載の電極材料。
【請求項27】
前記リチウム合金が、少なくとも75重量%のリチウムを含む、請求項25に記載の電極材料。
【請求項28】
前記リチウム合金が、少なくとも90重量%のリチウムを含む、請求項25に記載の電極材料。
【請求項29】
前記リチウム合金が、少なくとも95重量%のリチウムを含む、請求項25に記載の電極材料。
【請求項30】
前記金属膜が、
5μm~
200μm
の間の厚さを有する、請求項1から
29のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項31】
前記化合物が、前記電極材料中、
2重量%もしくはそれ未満
の濃度である、請求項1から
30のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項32】
a)前記化合物を溶媒中で混合して混合
物を得るステップ;
b)ステップ
a)で得られた前記混合物を金属膜上に塗布して処理膜を形成するステップ;および
c)前記溶媒を除去するステップ、
を含む、請求項1から
31のいずれか一項に定義された電極材料を製造するためのプロセス。
【請求項33】
前記溶媒が有機非プロトン性不活性溶媒である、請求項
32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記溶媒が、アルカン溶媒、エーテル溶媒、芳香族溶媒、またはそれらの組合せである、請求項
33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記膜を洗浄溶媒で洗浄するステップ
d)をさらに含む、請求項
32から
34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記洗浄溶媒が、ステップ
a)の前記溶媒と同じである、請求項
35に記載のプロセス。
【請求項37】
ステップ
b)が、ドロップキャスティング、モールドキャスティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、印刷、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、化学蒸着、
または物理蒸着
によって実行される、請求項
32から36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項38】
a)前記化合物を潤滑剤に混合して潤滑組成物を得るステップ;
b)ステップ
a)で得られた前記潤滑組成物を金属箔上に塗布して、処理箔を形成するステップ;ならびに
c)ステップ
b)で得られた前記処理箔を
少なくとも2つのロール間で押出および/または積層するステップ
を含む、請求項1から
31のいずれか一項に定義された電極材料を製造するためのプロセス。
【請求項39】
ステップ
b)および
c)が、同時に実施される、請求項
38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記潤滑剤がポリマーを含む、請求項
38または39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記潤滑剤が溶媒を含む、請求項
38から40のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記溶媒が有機非プロトン性不活性溶媒である、請求項
41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記溶媒が、アルカン溶媒、エーテル溶媒、芳香族溶媒、またはそれらの組合せである、請求項
42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記溶媒を除去するステップ
d)をさらに含む、請求項
41から43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項45】
前記化合物が、前記潤滑組成物中、
0.001重量%~
2重量%の間の濃度である、請求項
38から44のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項46】
a)アルカリ金属またはその合金を溶融して溶融金属を得るステップ;
b)前記化合物を前記溶融金属と混合し、キャスティングし、固化させてインゴットを形成するステップであって、前記混合およびキャスティングを、任意の順序で実施することができる、ステップ;ならびに
c)
b)で得られた前記インゴットを電極材料として使用される膜に押出および/または積層するステップ
を含む、請求項1から
31のいずれか一項に定義された電極材料を製造するためのプロセス。
【請求項47】
集電体上に、請求項1から
31のいずれか一項に定義された
電極材料を含む電極。
【請求項48】
前記集電体が、ニッケルまたは銅の膜である、請求項47に記載の電極。
【請求項49】
請求項1から
31のいずれか一項に定義された
電極材料を含有する電極、電解質および対極を含む電気化学セル。
【請求項50】
請求項47または48に定義された電極、電解質および対極を含む電気化学セル。
【請求項51】
請求項49または50に定義された少なくとも1つの電気化学セルを含む電池。
【請求項52】
前記電池がリチウム電池またはリチウムイオン電池である、請求項51に記載の電池。
【請求項53】
モバイルデバイス、電気もしくはハイブリッド自動車における、または再生可能エネルギー貯蔵における、請求項51または52の電池の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法の下で2018年8月15日出願の米国仮特許出願第62/764,663号に対し優先権を主張するものであり、その内容はすべての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
技術分野は、一般に、電極材料およびそれらの調製のためのプロセス、例えば、電気化学的に活性な金属材料および有機添加剤を含む電極材料に関する。本技術はまた、電極および電気化学セルにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
金属リチウム電極を含むリチウムまたはリチウムイオン電池の使用は、電解質およびセパレータを介したリチウム樹状突起の形成に起因する容量損失のために、多くの場合制限される。したがって、金属リチウムアノードの使用には、一般に、そのような樹状突起形成を防ぐために固体電解質が必要となる。しかし、固体電解質と金属アノードとの間に、固体電解質界面(SEI)層が一般に形成される。このSEIは、例えば、その不安定性または導電性の低さにより、電池性能を損なう場合がある。
インジゴブルーは、元々植物から抽出された顔料で、何世紀にもわたって染料として使用されてきた。分子自体は、その両極性有機半導体特性を含む種々の態様について研究されている。インジゴブルー染料は、基本的に水に不溶性であり、その無色で可溶性のロイコインジゴ形態(インジゴホワイト)に還元されている。この酸化還元特性は、さらに最近、電気化学において研究されている。例えば、インジゴブルーのアナログであるインジゴカルミンは、充電式電池の純粋有機カソード活物質として試験された(Yao M. et al., Scientific Reports, 4, 3650, pages 1-6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Yao M. et al., Scientific Reports, 4, 3650, pages 1-6
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一態様では、本技術は、金属材料の膜、および式I~IV:
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン(例えば、F、Cl、またはBr)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールから選択される基、CN、-NO
2、-SO
2OM
2、-OP(O)(OM
2)
2、-P(O)(OM
2)
2、または-C(O)OM
2
、または-OC(O)アルキル、-SO
2
NH
2
、-SO
2
NHアルキル、もしくは-SO
2
N(アルキル)
2
基から独立して選択され、ここで、M
2は、アルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン
であり;
R
10は水素原子または炭水化物であり、ここで、炭水化物は天然または合成の炭水化物(例えば、単糖または二糖、オリゴ糖、および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)であり;
X
1は、各出現において独立して、O、S、NH、NR
9、およびPHから選択され、ここで、R
9は、天然または合成の炭水化物および保護基、例えば、アミン保護基、例えば、トリフルオロアセトアミド、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bn)などから選択され;
i.a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、X
2はOであり、M
1は、H、またはX
2と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオン(例えば、M
1は、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、またはMg
2+である)であり;ここで、カチオンの式Iの化合物の残りに対する比は、電気的中性を提供する(例えば、M
1は、Li
+または(Mg
2+)
1/2であり得る)か;または
ii.a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、X
2はOもしくはNOH(オキシム)であり、M
1は存在しない)
のいずれか1つの化合物;
式I、IIもしくはIIIの化合物の幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)、または式IVの化合物の互変異性体、酸化型もしくは塩;
あるいは、その炭水化物(単糖または二糖、オリゴ糖、および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)複合体もしくはコンジュゲート
を含む電極材料に関する。
【0006】
一実施形態では、X1はO、SまたはNHであり、例えば、X1はNHである。
【0007】
一実施形態では、化合物は、本明細書で定義された式Iの化合物である。別の実施形態では、化合物は、本明細書で定義された式IIの化合物である。さらなる実施形態では、化合物は、本明細書で定義された式IIIの化合物である。これらの実施形態のいずれか1つにおいて、R2およびR6は同一であり得、かつハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO2OM2、例えば、-CNから選択され得るか、または、R3およびR7は同一であり得、かつ、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO2OM2、例えば、-CNから選択され得るか、または、R1~R8のそれぞれは水素原子である。
【0008】
別の実施形態では、a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、X2はOであり、M1は、H、またはX2と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオンであり、例えば、M1は、金属材料の膜の金属と同じ金属のカチオンである。代替的実施形態では、a、c、およびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、X2はOであり、M1は存在しない。
【0009】
別の実施形態では、化合物は、式IVの化合物であり、例えば、式中、R2は、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO2OM2から選択され、例えば、R2は、-CNであり、または式中、R1~R4のそれぞれは水素原子である。一実施形態では、R10は水素原子である。別の実施形態では、R10は炭水化物、例えば、β-D-グルコースまたはセルロースである。
【0010】
一実施形態では、化合物は、
【化2】
【化3】
から選択される。
【0011】
一実施形態では、化合物はインジゴブルーである。別の実施形態では、化合物は、ロイコインジゴまたはそのM1塩である。別の実施形態では、化合物は、インジゴブルー、インジゴカルミン、イソインジゴ、インジゴプルプリンおよびインドリンジオンから選択される。さらに別の実施形態では、化合物は化合物6である。さらなる実施形態では、化合物は化合物7である。別の実施形態では、化合物は、化合物8~10から選択される。さらなる実施形態では、化合物は、化合物1、8、11、12、および14から選択される。
【0012】
別の実施形態によれば、電極材料に含まれる金属膜は、アルカリまたはアルカリ土類金属の膜、例えば、リチウム、リチウム合金(例えば、Li-Na、Li-Mg、Li-Zn、Li-Alなど)、ナトリウム、ナトリウム合金、マグネシウム、またはマグネシウム合金の膜である。一実施形態では、金属膜はリチウムまたはリチウム合金膜である。例えば、リチウム合金膜は、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%のリチウムを含む。
【0013】
一実施形態では、金属膜は、約5μm~約200μmの間、または約5μm~約100μmの間、または約10μm~約50μmの間の厚さを有する。
【0014】
さらなる実施形態では、電極材料は、約2重量%もしくはそれ未満、約1重量%もしくはそれ未満、または約0.0001重量%~約1重量%、または約0.001重量%~約0.5重量%の間の濃度の化合物を含む。
【0015】
別の態様によれば、本技術は、
a)化合物を溶媒中で混合して混合物(例えば溶液)を得るステップ;
b)ステップ(a)で得られた混合物を金属膜上に塗布して処理膜を形成するステップ;および
c)溶媒を除去するステップ
を含む、本明細書で定義された電極材料を製造するためのプロセスに関する。
【0016】
一実施形態では、溶媒は、有機非プロトン性不活性溶媒、例えば、アルカン溶媒、エーテル溶媒(直鎖状または環状)、芳香族溶媒、またはそれらの組合せである。一実施形態では、溶媒はアルカン(例えば、ヘキサン)である。別の実施形態では、溶媒は、エーテル、例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテルである。
【0017】
別の実施形態では、プロセスは、膜を洗浄溶媒で洗浄して過剰な化合物を除去するステップをさらに含み、例えば、洗浄溶媒は、ステップ(a)の溶媒と同じである。
【0018】
さらなる実施形態では、ステップ(b)は、ドロップキャスティング、モールドキャスティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、印刷、化学蒸着、物理蒸着などによって実行される。
【0019】
さらなる態様によれば、本技術は、
a)化合物を潤滑剤に混合して潤滑組成物を得るステップ;
b)ステップ(a)で得られた潤滑組成物を金属箔上に塗布して、処理箔を形成するステップ;ならびに
c)ステップ(b)で得られた処理箔を押出および/または積層(少なくとも2つのロール間で)するステップ
を含む、本明細書で定義された電極材料を製造するためのプロセスに関する。
【0020】
一実施形態では、ステップ(b)および(c)は、同時に(または実質的に同時モードで)実施される。別の実施形態では、潤滑剤は、必要に応じて溶媒と一緒にポリマーを含む。別の実施形態では、潤滑組成物は、有機非プロトン性不活性溶媒、例えば、アルカン溶媒(例えば、ヘキサン)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)またはそれらの組合せである溶媒を含む。さらなる実施形態では、プロセスは、溶媒を除去するステップをさらに含む。さらに別の実施形態では、化合物は、潤滑組成物中、約0.001重量%~約2重量%の間、例えば、約0.01重量%~約2重量%の間の濃度である。
【0021】
本明細書で定義された電極材料を製造するための別のプロセスは、
a)アルカリ金属またはその合金を溶融して溶融金属を得るステップ;
b)化合物を溶融金属と混合し、キャスティングし、固化させてインゴットを形成するステップであって、前記混合およびキャスティングを、任意の順序で実施することができる、ステップ;ならびに
c)(b)で得られたインゴットを電極材料として使用される膜に押出および/または積層するステップ
を含む。
【0022】
さらなる態様によれば、本技術は、集電体上に、本明細書で定義されるか、または本明細書で定義されるプロセスによって製造される電極材料を含む電極に関する。例えば、集電体はニッケルまたは銅の膜である。
【0023】
さらに別の態様によれば、本技術は、本明細書で定義されるか、または本明細書で定義されるプロセスによって製造される電極材料を含有する電極、電解質および対極(電気化学的活性が反対の電極)を含む電気化学セルに関する
【0024】
さらなる態様では、本技術は、本明細書で定義された少なくとも1つの電気化学セルを含む電池、例えばリチウム電池に関する。
【0025】
さらなる態様によれば、本技術はまた、例えば、電気もしくはハイブリッド自動車における、またはユビキタスITデバイスにおける、ならびにスーパーキャパシタとしての本電気化学セルおよび電極の使用にさらに関し、例えば、使用は、モバイルデバイス、例えば、携帯電話、カメラ、タブレット、もしくはラップトップにおける、電気もしくはハイブリッド自動車における、または再生可能エネルギー貯蔵においてである。
【0026】
本技術の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して本明細書の以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、全固体リチウム電池アセンブリの例の分解図である。
【0028】
【
図2】
図2は、実施例2(c)で定義されたセル1、2、および3(参照)のCレートの関数としての容量の変動として表される負荷試験の結果を示す。
【0029】
【
図3】
図3は、実施例2(c)で定義されたセル1、2、および3(参照)の放電容量を示す。
【0030】
【
図4】
図4は、実施例2(c)で定義されたセル1、2、および3(参照)のSEI(固体電解質界面相)およびリチウム膜自体の、形成前、形成後、および50サイクルごとのインピーダンス結果を示す(未処理リチウム(セル3)のみ200サイクルで試験していない)。
【0031】
【
図5】
図5は、実施例2(c)で定義されたセル4および5(参照)のCレートの関数としての容量の変動として表される負荷試験の結果を示す。
【0032】
【
図6】
図6は、実施例2(c)で定義されたセル6、7、および8(参照)の最大100サイクルの放電容量の結果を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語および表現は、本技術に関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ定義を有する。それでも、明確にするために、本明細書で使用される一部の用語および表現の定義を以下に提供する。
【0034】
本明細書で「およそ」という用語またはその同等の用語である「約」が使用される場合、それは、およそまたはその領域内、およびその周辺を意味する。「およそ」または「約」という用語が数値に関連して使用される場合、それは数値を修飾する;例えば、10%の変動によりその公称値を超えるおよび公称値を下回ることを意味する場合がある。この用語は、実験測定値におけるランダムエラーの確率または丸めも考慮に入れる場合がある。
【0035】
本明細書に記載された化学構造は、従来の基準に従って描かれている。また、描かれた炭素原子などの原子に不完全な原子価が含まれているように見える場合には、必ずしも明示的に描かれていなくても、1つまたはそれより多くの水素原子が原子価を満たしていると見なされる。
【0036】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖アルキル基を含む、1~12個の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。アルキル基の例としては、限定なく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなどが挙げられる。アルキル基が2つの官能基の間に位置する場合には、「アルキル」という用語は、メチレン、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基も包含する。「低級アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0037】
「アリール」または「芳香族」という表現は、4n+2π電子に等しい数のπ非局在化電子を含む非局在化共役π系を含むことを意図している。寄与原子は、1つまたはそれより多くの環に配置してもよい。代表的な芳香族基としては、5員および6員の炭素単環が挙げられる。芳香族基は、1つまたは複数の縮合ベンゼン環、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどを含み得る。「芳香族基」という表現はまた、1個またはそれより多くのヘテロ原子、例えば、硫黄、酸素および窒素原子を含む芳香族基を含む。少なくとも1個のヘテロ原子を有するこれらの芳香族基は、「ヘテロ芳香族」基または「ヘテロアリール」基と呼ばれることもある。芳香環は、1つまたはそれより多くの環位置で、例えば、ヒドロキシル、アミンなどでさらに置換され得る。
【0038】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、スピロ(1つの原子を共有する)または縮合(少なくとも1つの結合を共有する)炭素環系を含む、3~15の環員を有する単環式または多環式系の飽和または部分的に不飽和の(非芳香族)炭素環を含む基を指す。シクロアルキル基の例としては、限定なく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテン-1-イル、シクロペンテン-2-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロヘキシル、シクロヘキセン-1-イル、シクロヘキセン-2-イル、シクロヘキセン-3-イル、シクロヘプチル、ビシクロ[4,3,0]ノナニル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0039】
この技術は、金属活物質およびインジゴイドまたはその前駆体などの有機化合物を含有する電極材料の調製のためのプロセス、ならびにそのようなプロセスによって得ることができるまたは得られる電極およびそれらの使用に関する。
【0040】
本明細書で使用されるもののようなインジゴイドおよび前駆体は、酸化還元反応中にイオンを貯蔵および放出し得る。有機分子は一般に弱いファンデルワールス型またはπ-π型の相互作用を有するが、無機分子は3D静電相互作用のような強い相互作用を有する。特性の違いにより、有機分子は無機分子よりも柔軟になり、それによって、リチウムイオンまたはNa+イオンのようなより大きな電荷キャリアの電気化学的貯蔵に有利になる。さらに、有機分子の物理化学的特性はより容易に調整可能である。
【0041】
したがって、本技術は、有機添加剤をさらに含む金属電極材料に関する。この電極材料は、一般に金属膜の形態である。有機添加剤は、金属膜の表面上に含まれていてもよく、または金属膜内に組み込まれていてもよく、または表面上と金属膜内の両方でもよい。
【0042】
例えば、有機分子は、インジゴイド化合物、例えば、インジゴブルーもしくはその誘導体、ロイコインジゴ形態、またはその塩である。一実施形態では、化合物は、式I、IIまたはIII:
【化4】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン(例えば、F、Cl、またはBr)、必要に応じてハロゲン化アルキルされている、シクロアルキル、もしくはアリールから選択される基、CN、-NO
2、-SO
2OM
2、-OP(O)(OM
2)
2、-P(O)(OM
2)
2、または-C(O)OM
2
、または-OC(O)アルキル、-SO
2
NH
2
、-SO
2
NHアルキル、もしくは-SO
2
N(アルキル)
2
基から独立して選択され、ここで、M
2は、アルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオン
であり;
X
1は、各出現において独立して、O、S、NH、NR
9、およびPHから選択され、ここで、R
9は、天然または合成の炭水化物および保護基、例えば、アミン保護基、例えば、トリフルオロアセトアミド、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bn)などから選択され;
i.a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、X
2がOはあり、M
1は、H、またはX
2と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオン(例えば、M
1は、Li
+、Na
+、K
+、Ca
2+、またはMg
2+である)であり;ここで、カチオンの式Iの化合物の残りに対する比は、電気的中性を提供する(例えば、M
1は、Li
+または(Mg
2+)
1/2であり得る)か;または
ii.a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、X
2はOもしくはNOH(オキシム)であり、M
1は存在しない)
の化合物、
あるいはその幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)、またはその炭水化物(単糖または二糖、オリゴ糖、および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)複合体もしくはコンジュゲートである。
【0043】
一例では、cが二重結合である場合、この二重結合は、シスまたはトランス幾何学的配置を有してもよい。例えば、c二重結合はトランス幾何学的配置のものである。別の例では、X1はO、SまたはNH、好ましくはNHである。さらなる例では、X2はOである。式I、IIまたはIIIの化合物の一部の例では、R1はR5と同一であり、および/またはR2はR6と同一であり、および/またはR3はR7と同一であり、および/またはR4はR8と同一である。他の例では、R1およびR5は両方とも水素であり、ならびに/またはR2およびR6は両方とも水素原子である。
【0044】
他の例には、R1~R8のうちの少なくとも1つがフッ素、シアノおよびトリフルオロメチルから選択される化合物が含まれる。あるいは、R1、R4、R5およびR8はそれぞれ水素原子であり、R2、R3、R6およびR7は以前に定義されたとおりである。他の例では、R1、R4、R5およびR8はそれぞれ水素原子であり、R2、R3、R6およびR7は、フッ素、シアノおよびトリフルオロメチルから独立して選択される。
【0045】
さらなる実施形態では、M1が存在し、Li+、Na+、およびK+から選択される。例えば、M1が存在し、Li+である。
【0046】
上記で定義されたインジゴブルーまたは誘導体(a、c、およびeが二重結合である)を、例えば、アルカリ還元によって、その還元形態(bおよびdが二重結合である)に変換してもよい。例えば、インジゴブルーの還元形態はロイコインジゴまたはインジゴホワイトと呼ばれ、塩の形態であり得る。
【0047】
別の例では、有機分子はまた、式IV:
【化5】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびX
1は、以前に定義されたとおりであり;
R
10は水素原子または炭水化物であり、ここで、炭水化物は天然または合成の炭水化物(例えば、単糖または二糖、オリゴ糖、および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)である)
の化合物として定義されたインジゴ前駆体もしくはその誘導体;
またはその互変異性体、酸化型、もしくは塩であり得る。
【0048】
化合物の例には、R2が、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO2OM2から選択され、例えば、R2が-CNであるものが含まれる。他の例には、R1~R4がそれぞれ水素原子である化合物が含まれる。一部の実施形態では、R10は水素原子である。あるいは、R10は炭水化物、例えば、β-D-グルコースまたはセルロースである。
【0049】
一例では、化合物は、式:
【化6】
【化7】
【化8】
の化合物から選択される。
【0050】
一部の例によれば、化合物は、インジゴブルーまたは一方もしくは両方の芳香環に置換基を有するその誘導体である。例えば、1つもしくはそれより多くのスルホネート基(例えば、インジゴカルミン)、1つもしくはそれより多くの塩素もしくは臭素原子(例えば、チリアンパープル、チバブルー)、または1つもしくはそれより多くのニトリル基。他の誘導体としては、硫黄原子による環内のアミン基の置換が含まれ、すなわち、X1はS(例えば、チオインジゴ)である。別の例では、化合物はインジゴカルミンである。さらに別の例では、化合物はイソインジゴである。化合物の別の例は、インジゴプルプリンである。インジゴイド化合物の別の例は、インドリンジオン(すなわち、式IVの化合物の酸化型)である。
【0051】
本明細書で定義された化合物はまた、例えば、炭水化物、例えば糖または多糖(セルロースなど)との複合体またはコンジュゲートの形態であり得る。
【0052】
本明細書に記載の化合物の一部は、商業的供給源から入手可能であり得るか、または公知の技術、例えば、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tanoue et al., Dyes and Pigments, 62, 2004, 101-105;Klimovich I.V., J. Mat. Chem., 2014, 2, 7621-7631;Horn, R.H., et al., Notes. Journal of the Chemical Society (Resumed), 1950, 2900-2908;Voβ, G. and H. Gerlach, Chemische Berichte, 1989, 122(6), 1199-1201;Baltac, T., et al., Revista de Chimie, 2012, 63(6), 618-620;Bailey, J.E. and J. Travis, Dyes and Pigments, 1985, 6(2), 135-154;Leclerc, S., et al., J. Biol. Chem., 2001, 276(1), 251-260;およびKarapetyan G. et al., Chem, Med. Chem., 2011, 6, 25-37に記載されているものを使用して調製してもよい。
【0053】
一部の実装形態では、化合物は、低濃度、例えば、約2重量%もしくはそれ未満、約1重量%もしくはそれ未満、または約0.0001重量%~約1重量%、または約0.001重量%~約0.5重量%の間の濃度で、電極材料に(および/または電極材料上に)含まれる。
【0054】
例えば、本明細書で定義された有機化合物は、電気化学セル内のイオンおよび/または電子伝導性を改善するために使用してもよく、対極材料にさらに含めてもよい。
【0055】
電極材料中における金属膜の例は、アルカリまたはアルカリ土類金属、およびアルカリまたはアルカリ土類金属が主成分(少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)であるそれらの合金の膜、例えば、金属リチウム、リチウム合金(例えば、Li-Na、Li-Mg、Li-Zn、Li-Alなど)、ナトリウム、ナトリウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの膜から選択することができる。例えば、金属膜は、リチウムまたは少なくとも95重量%もしくは少なくとも99重量%のリチウムを有するその合金(本明細書で定義された有機化合物の重量を除く)である。一例では、金属膜は、約5μm~約200μmの間、または約5μm~約100μmの間、または約10μm~約50μmの間の厚さを有する。
【0056】
金属膜は、一般に、例えば、圧延プロセスにおいて、押出また積層によって調製される。金属膜は、任意の適切な方法を使用して有機化合物で処理することができる。金属膜は、その調製前、調製中、または調製後に有機化合物で処理することができる。例えば、形成された金属膜がロールから出てくるときに、有機化合物の溶液を塗布する。あるいは、有機化合物溶液を、押出もしくは積層(圧延)プロセスで使用されるロールに金属膜が入る前に(または入ったところで)塗布するか、またはリチウム箔が通過する前にロールに塗布する。この最後の代替案では、有機化合物を潤滑組成物に含めてもよい。次いで、有機化合物は、金属膜の製造に使用される潤滑組成物、例えば、アルカン溶媒(例えば、ヘキサン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)またはそれらの組合せなどの非プロトン性有機溶媒中の潤滑ポリマー剤またはポリマーの溶液中に溶解していてもよい。例えば、潤滑ポリマーは、液体のままであるために十分に低い分子量のポリエーテルを含み得る。潤滑組成物および方法の例は、国際出願番号PCT/CA2015/050256、ならびに米国特許第5,528,920号、同第5,837,401号および同第6,019,801号に見出され、その内容は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
一例には、処理後に必要に応じて除去される、溶媒中の化合物の溶液または混合物の塗布が含まれる。例えば、溶媒は、金属膜に対して不活性な非プロトン性有機溶媒である。例えば、溶媒は、アルカン(環式または非環式)溶媒、エーテル(環式または非環式)溶媒、芳香族有機溶媒、またはそれらの組合せ、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン、またはテトラヒドロフランなどの環状エーテルなどであってもよい。プロセスはまた、溶媒の追加部分を用いて洗浄して過剰な有機化合物を除去するステップを含んでもよい。化合物の塗布は、任意の公知の適合性のある方法で、例えば、ドロップキャスティング、モールドキャスティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、印刷、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、化学蒸着、物理蒸着などによって、実施してもよい。化合物を溶媒に溶解する必要がない場合がある、化学蒸着法および物理蒸着法などによる塗布方法もまた企図される。
【0058】
押出または積層ステップはまた、処理金属膜の集電体および/または固体ポリマー電解質膜もしくは電解質セパレータ膜へのさらなる塗布を含む多段階プロセスの一部であり得る。これらのステップは、連続的なロールツーロールプロセスで実施することができ、追加のステップ(例えば、電気化学セルの他の部品と組み合わせる)を、必要に応じて含めることができる。
【0059】
合金の調製に使用されるプロセスに類似したプロセスによる本電極材料の製造も企図されている。例えば、有機化合物を、型にキャスティングする前または後に、溶融アルカリまたはアルカリ土類金属に導入する。次に、溶融した金属を冷却および固化させてインゴットを形成し、これを後で押出し、必要に応じて積層して膜を形成する。この方法は、使用される温度および条件により、金属材料内への有機化合物の少なくとも部分的挿入が生じるが、有機材料および金属が無傷のままであることが可能になる場合に適切であり得る。
【0060】
有機化合物で処理された金属膜を含む電極材料は、不動態化層を有していないか、または薄く、均一で安定な不動態化層をさらに含む。
【0061】
本技術は、さらに、集電体(例えば、Cu、Ni)上に電極材料の膜を含む電極に関する。例えば、電極は、リチウム、ナトリウム、またはマグネシウム電池、例えばリチウム電池での使用のためのものである。有機化合物は、電子導電剤として、イオン拡散剤として、および/または過充電保護剤として寄与し得る。例えば、本明細書に記載の有機化合物の存在は、電池容量の増加および/または内部抵抗の低下をもたらすことができる。
【0062】
一般に、本明細書で定義された電極は、対極および電解質をさらに含む電気化学セルの作製での使用のためのものである。したがって、電気化学セル内の本電極は、使用される対極材料および/または充電もしくは放電モードにある電池に応じて、負極または正極として機能し得る。
【0063】
対極材料の例としては、金属酸化物および複合酸化物、リチウム金属酸化物および複合酸化物、金属リン酸塩およびリチウム金属リン酸塩などの電気化学的活物質の粒子が挙げられる。対極の電気化学的活物質の例としては、限定なく、リチウム金属リン酸塩(例えば、M’がFe、Ni、Mn、Co、またはそれらの組合せであるLiM’PO4)、酸化バナジウム(例えば、LiV3O8、V2O5、LiV2O5など)、および他のリチウム金属酸化物、例として、LiMn2O4、LiM’’O2(M’’はMn、Co、Ni、またはそれらの組合せ)およびLi(NiM’’’)O2(M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zrなど、またはそれらの組合せ)、ならびに、上記のリチウム金属酸化物およびリン酸塩の脱リチウム化形態、有機電気化学的に活性なカソード材料、硫黄、空気(酸素)、もしくはそれらの組合せ、または元素周期表の2~15族から選択される適合性のあるドーピング元素をさらに含む上記の材料のいずれかが挙げられる。例えば、対極活物質は、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)、およびリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)から選択される。
【0064】
別の例によれば、対極の電気化学的活物質は、式LiM’PO4(ここで、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはそれらの組合せであって、適合性のある元素が必要に応じてドープされている、例えば、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、Sr、およびW、またはそれらの組合せから選択される元素が必要に応じてドープされている)のものである。例えば、電気化学的活物質は、LiFePO4またはLiMnxFe1-xPO4(ここで、0<x<1、適合性のある元素が必要に応じてドープされている、例えば、Co、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Mo、Sn、Ca、Sr、およびW、またはそれらの組合せから選択される元素が必要に応じてドープされている、例えば、必要に応じてマグネシウムがドープされている)である。対極の電気化学的活物質の例としては、式LiM’’O2(ここで、M’’はMn、Co、Ni、またはそれらの組合せである)の化合物も挙げられる。例えば、対極の電気化学的活物質は、LiNiwMnyCozO2(ここで、w+y+z=1)である。
【0065】
対極の電気化学的活物質粒子は、新たに形成されるか、または商業的供給源からのものである。それらは、微粒子またはナノ粒子の形態であってもよく、さらに炭素コーティングを含んでもよい。
【0066】
対極材料は、必要に応じて、導電性材料、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子、塩(例えば、リチウム塩)などのような追加の成分を含む。導電性材料の例としては、カーボンブラック、KetjenTM ブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維もしくはナノ繊維(例えば、VGCF)もしくはナノチューブ、またはそれらの組合せが挙げられる。別の例では、上で定義された対極材料はまた、本明細書で定義された有機化合物をさらに含み得る。
【0067】
対極材料は、少なくとも1つのバインダーをさらに含み得る。バインダーの例としては、水溶性バインダー、例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリルゴム)など、およびセルロース系バインダー(例えば、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、および組合せ)、またはこれらの2つもしくはそれよりも多い任意の組合せが挙げられる。例えば、カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはカルボキシエチルセルロースであり得る。ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースの一例である。バインダーの他の例としては、フッ素含有ポリマーバインダー、例えば、PVDFおよびPTFE、ならびにイオン伝導性ポリマーバインダー、例えば、少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメントおよび少なくとも1つの架橋性セグメントから構成されるブロックコポリマーが挙げられる。例えば、バインダーは、ポリエーテルタイプのポリマー、例えばポリ(エチレンオキシド)(PEO)に基づくものであり、これは、架橋性部分をさらに含み得る。一実施形態では、バインダーは、水溶性バインダーおよびセルロース系バインダー、例えば、SBRおよびCMCの組合せを含む。
【0068】
対極材料は通常、基材フィルム、例えば集電体上にコーティングされる。対極材料は、コンマバー法、ドクターブレード法などの種々の方法によって、またはスロットダイキャスティングによって、連続モードで基材フィルム上にスラリーとしてコーティングしてもよい。
【0069】
電解質は、液体、ゲル、または固体のポリマー電解質であってもよく、リチウムまたはリチウムイオン電池の場合、リチウム塩を含み、そして/またはリチウムイオンに伝導性である。液体電解質の非限定的な例としては、極性非プロトン性溶媒を含む有機液体電解質、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、炭酸ビニル(VC)、およびそれらのうちの2つまたは2つ超のものの混合物、ならびにアルカリまたはアルカリ土類金属の塩が挙げられる。適合性のある液体電解質の他の例としては、溶融塩電解質が挙げられる。セパレータ、例えば、ポリマーセパレータ(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはプロピレンおよびエチレンコポリマー)にはまた、液体電解質を浸透させることができる。
【0070】
ゲル電解質は、一般に、適合性のあるポリマーおよび塩を含み、必要に応じて、溶媒および/またはセパレータをさらに含む。例示的なゲル電解質としては、PCT公開番号WO2009/111860(Zaghibら)およびWO2004/068610(Zaghibら)に記載されるものが挙げられる。
【0071】
固体ポリマー電解質(SPE)は、一般に、必要に応じて架橋された、1つまたはそれより多くの固体極性ポリマー、および塩を含み得る。ポリ(エチレンオキシド)(PEO)に基づくものなどのポリエーテルタイプのポリマーを使用することができるが、他のいくつかの適合性のあるポリマーもまた、SPEの調製のために公知である。ポリマーはまた、さらに架橋され得る。そのようなポリマーの例としては、星型または櫛型の多分岐ポリマー、例えばPCT公開番号WO2003/063287(Zaghibら)に記載されているものが挙げられる。
【0072】
図1は、本実施形態の1つによる全固体リチウム電池の構成の分解図を示す。この構成では、以下の要素を積み重ねる:ニッケルタブ(2)を備えたニッケル集電体(1)、アノードLi-インジゴ電極材料膜(3)、固体ポリマー電解質(4)、マスク(5)、カソード材料膜(6)、およびアルミニウムタブ(8)を備えたアルミニウム集電体(7)。積み重ねた層を、金属製プラスチックポーチ(9)または任意の他のタイプの電池シェルに入れ、密閉する。
【0073】
したがって、本技術は、本電極、対極、および電解質を含む電気化学セルにもさらに関する。例えば、電気化学セルは、コンデンサもしくはスーパーキャパシタにおいて、またはアルカリもしくはアルカリ土類金属電池、例えば、リチウム、ナトリウム、もしくはマグネシウム電池、例えばリチウム電池において使用することができる。
【実施例】
【0074】
以下の非限定的な実施例は、例示的な実施形態であり、本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図を参照することでよりよく理解される。
(実施例1)
処理金属膜の調製
a)処理リチウム膜(Li-1、洗浄なし)の調製
【0075】
押出リチウム金属膜(40μm)を使用した。インジゴブルー(化合物1)の飽和溶液を、10mLのヘキサン中で調製した(15gあたり8mgのインジゴ)。濾過せずに、液相をリチウム膜上にドロップキャストした。溶媒を蒸発させて、リチウム表面上に無色形態のインジゴブルーおよび若干の有色インジゴブルーを含む膜を残した。処理リチウム膜(Li-1)を得られた状態で使用した。
b)処理リチウム膜(Li-2、洗浄あり)の調製
【0076】
(a)と同様に、押出リチウム金属膜(40μm)を使用した。インジゴブルー(化合物1)の飽和溶液を、10mLのヘキサン中で調製した。濾過せずに、液相をリチウム膜上にドロップキャストした。溶媒を蒸発させ、リチウム表面をヘキサンで3回洗浄した。洗浄ステップで、残存する有色インジゴブルーを除去した。処理リチウム膜(Li-2)を得られた状態で使用した。
c)処理リチウム膜(Li-3、積層による)の調製
【0077】
処理リチウム合金(0.2重量%Al)膜を、インジゴブルー(化合物1)を約0.003重量%の濃度で潤滑剤(テトラヒドロフラン)に添加することを除いて、US5,528,920の実施例2に記載された方法などの方法によって調製する。厚さ250マイクロメートルの押出Li-Al合金を、およそ1m/分の速度で2つの積層ステンレス鋼ローラーの間に通過させることにより、42マイクロメートルまで薄くした。
d)処理リチウム膜(Li-4、モールドキャスティングによる)の調製
【0078】
押出リチウム金属膜(40μm)を使用した。インジゴブルー(化合物1)の飽和溶液を、THF(テトラヒドロフラン)中で調製し、濾過した。Li金属膜を、ステンレス鋼の型(内部寸法は9.2cm×6.7cm×1.6cm、L×W×H)に入れた。濾過したインジゴ飽和THF溶液を、ステンレス鋼の型に含有されたLi金属に塗布した。溶媒を蒸発させて、リチウム表面上に無色形態のインジゴブルーおよび若干の有色インジゴブルーを含む膜を残した。処理リチウム膜(Li-4)を得られた状態で使用した。
e)処理リチウム膜(Li-5、洗浄なし)の調製
【0079】
押出リチウム金属膜(40μm)を使用した。インジゴブルー(化合物1)の飽和溶液を、THF中で調製し、濾過した。溶液を、リチウム膜上にドロップキャストした。溶媒を蒸発させて、リチウム表面上に無色形態のインジゴブルーおよび若干の有色インジゴブルーを含む膜を残した。処理リチウム膜(Li-5)を得られた状態で使用した。
(実施例2)
例示的な電気化学セルの作製
a)対極の調製:
【0080】
a.1-カソード材料は、エタノール/H2O(80/20)中で、カーボンコーティングLiFePO4(65重量%、LCP420M、Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd.)、KetjenTM ブラック(2.5重量%、ECP600)、炭素繊維(2.5重量%、VGCF-H)、LiTFSI(7.4重量%)、およびPEO系架橋性ポリマー(22.6重量%)を、機械的に混合することによって調製した。得られた粘稠なスラリーを、集電体として機能するアルミ箔上に均一にキャストした。カソード材料は、64.97重量%の活物質を10.13mg/cm2の担持量で含有する。
【0081】
a.2-カソード材料は、エタノール/H2O(80/20)中で、カーボンコーティングLiFePO4(58.24重量%、LCP420M、Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd.)、DenkaTM ブラック(10.24重量%、HS100)、炭素繊維(3.06重量%、VGCF-H)、LiTFSI(3.50重量%)、およびPEO系架橋性ポリマー(24.96重量%)を、機械的に混合することによって調製した。得られた粘稠なスラリーを、集電体として機能するアルミ箔上に均一にキャストした。カソード材料は、58.24重量%の活物質を3.70mg/cm2の担持量で含有する。
b)電解質の調製:
【0082】
試験したセルで使用した電解質は、PEO系架橋性ポリマー(200g)、LiTFSI(65.25g)、アセトニトリル(492mL)、トルエン(123mL)、およびIrgacureTM 651(0.4g)を含んでいた。ポリマー混合物を基材上にコーティングし、架橋した後、基材を除去した。
c)作製されたセルの構成:
【0083】
以下のセルを、プラスチックポーチ内に組み立て、密閉した。
セル1:
アノード:ニッケル集電体上のLi-1
実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.1)のように調製されたLFPカソード。
セル2:
アノード:ニッケル集電体上のLi-2
上記実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.1)のように調製されたLFPカソード。
セル3(参照):
アノード:ニッケル集電体上のLi(40μm)
上記実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.1)のように調製されたLFPカソード。
セル-4:
アノード:ニッケル集電体上のLi-3(Li-Al 0.2%)
実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.1)のように調製されたLFPカソード。
セル-5(参照):
アノード:ニッケル集電体上のLi-Al 0.2%(40μm)
上記実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.1)のように調製されたLFPカソード。
セル-6:
アノード:ニッケル集電体上のLi-4
実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.2)のように調製されたLFPカソード。
セル-7:
アノード:ニッケル集電体上のLi-5
実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.2)のように調製されたLFPカソード。
セル-8(参照):
アノード:ニッケル集電体上のLi(40μm)
上記実施例2(b)で定義された固体ポリマー電解質
カソード:アルミニウム集電体上で実施例2(a.2)のように調製されたLFPカソード。
(実施例3)
電気化学的特性
a)電気化学的性能:
【0084】
サイクル試験の前に、電池を、80℃にてC/24で2回充放電し、xCは、1/x時間でセル容量を完全に充電/放電することができる電流である。CC-CV(定電流定電圧)モードで充電し、CCモードで放電する。
【0085】
有効容量は、LFPの(1C)155mAh/gで評価した。使用された電圧は、放電時に3.65V~2.0ボルトの間で変動した。長期サイクルを、C/3で実行した。サイクルを、VMP-300で80°Cにて行った。
【0086】
実施例2で定義されたセル1、2、および3の負荷テストの結果を
図2に示す。これらは、C/24、C/12、C/6、C/3、C/2、およびC/1のレートで完了した。未処理リチウムセル3(実線)と比較した場合、インジゴ処理リチウムセル1および2(それぞれ丸および四角)では容量の改善が観察された。セル2の容量はまた、C/3、C/2、およびC/1のレートで、セル1の容量よりもわずかに良好である。
【0087】
図3は、最大100サイクルのセル1、2、および3の放電容量の結果を示す。結果は、未処理リチウムを含有するセル3と比較して、インジゴ処理リチウムアノードを含有するセル1および2の明らかな改善を実証している。セル2(四角)をセル1(丸)と比較すると、放電における改善も観察される。
【0088】
Li-2の調製に含まれる洗浄ステップにより、表面の過剰なインジゴが除去され、SPE/リチウム界面が改善されると仮定される。
【0089】
実施例2で定義されたセル4および5の負荷テストの結果を
図5に示す。これらは、C/24、C/12、C/6、C/3、C/2、およびC/1のレートで完了した。C/24、C/12、C/6、およびC/3のレートで未処理リチウムセル5(ひし形)と比較した場合、インジゴ処理リチウムセル4(丸)では容量の改善が観察された。
【0090】
図6は、最大100サイクルのセル6、7、および8の放電容量の結果を示す。結果は、未処理リチウムを含有するセル8と比較して、インジゴ処理リチウムアノードを含有するセル6および7の明らかな改善を実証している。セル6(丸)をセル7(四角)と比較すると、放電における改善も観察される。
b)電気化学的インピーダンス:
【0091】
電気化学的インピーダンス試験も、実施例3(a)の長期サイクル条件(C/3)を使用して、実施例2に記載のLFP-Liセル1、2および3を使用して実行した。リチウム自体およびリチウム電極の固体電解質界面相(SEI)に関連するインピーダンスを、各セルに対して、形成前、形成後、および50サイクルごとに、セル1および2の場合は最大200サイクル、セル3の場合は最大150サイクルまで測定した。
【0092】
図4は、3つのセルのインピーダンス結果を示す。一般に、SEIの抵抗は、サイクルが起こるにつれてより重要になる(SEIがLi表面に形成され、一方、塩およびSPEが劣化するため)。この場合、インジゴは少なくとも部分的にSEIの形成を妨げるので、表面にインジゴ層を追加すると、SEIに関連する抵抗が制限される。換言すれば、インジゴは電解質を金属リチウムから保護する。
【0093】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態のいずれかに多くの改変を行うことができる。この文書で言及されている参考文献、特許、または科学文献文書はすべて、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
金属材料の膜、および式I~IV:
【化9】
のいずれか1つの化合物;
式I、IIもしくはIIIの化合物の幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)、または式IVの化合物の互変異性体、酸化型もしくは塩;
あるいは、その炭水化物(単糖または二糖、オリゴ糖、および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)複合体またはコンジュゲート
を含む電極材料であって、式中、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
7
、およびR
8
はそれぞれ、水素原子、ハロゲン(例えば、F、Cl、またはBr)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールから選択される基、CN、-NO
2
、-SO
2
OM
2
、-OP(O)(OM
2
)
2
、-P(O)(OM
2
)
2
、または-C(O)OM
2
、または-OC(O)アルキル、-SO
2
NH
2
、-SO
2
NHアルキル、もしくは-SO
2
N(アルキル)
2
基から独立して選択され、ここで、M
2
は、アルカリもしくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
R
10
は水素原子または炭水化物であり、ここで、前記炭水化物は天然または合成の炭水化物(例えば、単糖または二糖、オリゴ糖、および多糖、例えば、β-D-グルコースまたはセルロース)であり;
X
1
は、各出現において独立して、O、S、NH、NR
9
、およびPHから選択され、ここで、R
9
は、天然または合成の炭水化物および保護基、例えば、アミン保護基、例えば、トリフルオロアセトアミド、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bn)などから選択され;
i.a、cおよびeは単結合であり、bおよびdは二重結合であり、X
2
はOであり、M
1
は、H、またはX
2
と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオン(例えば、M
1
は、Li
+
、Na
+
、K
+
、Ca
2+
、またはMg
2+
である)であり、ここで、カチオンの前記式Iの化合物の残りに対する比は、電気的中性を提供する(例えば、M
1
は、Li
+
または(Mg
2+
)
1/2
であり得る)か;または
ii.a、cおよびeは二重結合であり、bおよびdは単結合であり、X
2
はOもしくはNOH(オキシム)であり、M
1
は存在しない、
電極材料。
(項目2)
X
1
が、O、SまたはNHである、項目1に記載の電極材料。
(項目3)
X
1
が、NHである、項目1に記載の電極材料。
(項目4)
前記化合物が式Iの化合物である、項目1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目5)
前記化合物が式IIの化合物である、項目1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目6)
前記化合物が式IIIの化合物である、項目1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目7)
R
2
およびR
6
が同一であり、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
、例えば、-CNから選択される、項目1から6のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目8)
R
3
およびR
7
が同一であり、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
、例えば、-CNから選択される、項目1から7のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目9)
R
1
~R
8
のそれぞれが、それぞれ水素原子である、項目1から6のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目10)
a、cおよびeが単結合であり、bおよびdが二重結合であり、X
2
がOであり、M
1
が、H、またはX
2
と塩を形成するアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンのカチオンである、項目1から9のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目11)
M
1
が、金属材料の前記膜の金属と同じ金属のカチオンである、項目10に記載の電極材料。
(項目12)
a、cおよびeが二重結合であり、bおよびdが単結合であり、X
2
がOであり、M
1
が存在しない、項目1から9のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目13)
前記化合物が式IVの化合物である、項目1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目14)
R
2
が、ハロゲン(例えば、F)、必要に応じてハロゲン化されているアルキル、-CN、および-SO
2
OM
2
から選択され、例えば、R
2
が-CNである、項目13に記載の電極材料。
(項目15)
R
1
~R
4
のそれぞれが、それぞれ水素原子である、項目13に記載の電極材料。
(項目16)
R
10
が水素原子である、項目13から15のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目17)
R
10
が、炭水化物、例えば、β-D-グルコースまたはセルロースである、項目13から15のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目18)
前記化合物が、
【化10】
【化11】
から選択される、項目1に記載の電極材料。
(項目19)
前記化合物が、インジゴブルー、インジゴカルミン、イソインジゴ、インジゴプルプリンおよびインドリンジオンから選択される、項目1に記載の電極材料。
(項目20)
前記化合物がインジゴブルーである、項目1に記載の電極材料。
(項目21)
前記化合物が、ロイコインジゴまたはそのM
1
塩である、項目1に記載の電極材料。
(項目22)
前記金属膜が、アルカリまたはアルカリ土類金属の膜である、項目1から21のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目23)
前記金属膜が、リチウム、リチウム合金(例えば、Li-Na、Li-Mg、Li-Zn、Li-Alなど)、ナトリウム、ナトリウム合金、マグネシウム、またはマグネシウム合金の膜である、項目22に記載の電極材料。
(項目24)
前記金属膜が、リチウムまたはリチウム合金の膜である、項目22または23に記載の電極材料。
(項目25)
前記リチウム合金が、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%のリチウムを含む、項目24に記載の電極材料。
(項目26)
前記金属膜が、約5μm~約200μmの間、または約5μm~約100μmの間、または約10μm~約50μmの間の厚さを有する、項目1から25のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目27)
前記化合物が、前記電極材料中、約2重量%もしくはそれ未満、または約1重量%もしくはそれ未満の濃度である、項目1から26のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目28)
前記化合物が、前記電極材料に対して約0.0001重量%~約1重量%、または約0.001重量%~約0.5重量%の間の濃度である、項目27に記載の電極材料。
(項目29)
a)前記化合物を溶媒中で混合して混合物(例えば溶液)を得るステップ;
b)ステップ(a)で得られた前記混合物を金属膜上に塗布して処理膜を形成するステップ;および
c)前記溶媒を除去するステップ、
を含む、項目1から28のいずれか一項に定義された電極材料を製造するためのプロセス。
(項目30)
前記溶媒が有機非プロトン性不活性溶媒である、項目29に記載のプロセス。
(項目31)
前記溶媒が、アルカン溶媒、エーテル溶媒、芳香族溶媒、またはそれらの組合せである、項目30に記載のプロセス。
(項目32)
前記溶媒がアルカン溶媒(例えば、ヘキサン)である、項目31に記載のプロセス。
(項目33)
前記膜を洗浄溶媒で洗浄するステップ(d)をさらに含む、項目29から32のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目34)
前記洗浄溶媒が、ステップ(a)の前記溶媒と同じである、項目33に記載のプロセス。
(項目35)
ステップ(b)が、ドロップキャスティング、モールドキャスティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、印刷、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、化学蒸着、物理蒸着などによって実行される、項目29から34のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目36)
a)前記化合物を潤滑剤に混合して潤滑組成物を得るステップ;
b)ステップ(a)で得られた前記潤滑組成物を金属箔上に塗布して、処理箔を形成するステップ;ならびに
c)ステップ(b)で得られた前記処理箔を押出および/または積層(少なくとも2つのロール間で)するステップ
を含む、項目1から28のいずれか一項に定義された電極材料を製造するためのプロセス。
(項目37)
ステップ(b)および(c)が、同時に実施される、項目36に記載のプロセス。
(項目38)
前記潤滑剤がポリマーを含む、項目36または37に記載のプロセス。
(項目39)
前記潤滑剤が溶媒を含む、項目36から38のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目40)
前記溶媒が有機非プロトン性不活性溶媒である、項目39に記載のプロセス。
(項目41)
前記溶媒が、アルカン溶媒、エーテル溶媒、芳香族溶媒、またはそれらの組合せである、項目40に記載のプロセス。
(項目42)
前記溶媒がアルカン溶媒(例えば、ヘキサン)である、項目41に記載のプロセス。
(項目43)
前記溶媒が芳香族溶媒(例えば、トルエン)である、項目41または42に記載のプロセス。
(項目44)
前記溶媒を除去するステップ(d)をさらに含む、項目39から43のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目45)
前記化合物が、前記潤滑組成物中、約0.001重量%~約2重量%の間の濃度である、項目36から44のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目46)
a)アルカリ金属またはその合金を溶融して溶融金属を得るステップ;
b)前記化合物を前記溶融金属と混合し、キャスティングし、固化させてインゴットを形成するステップであって、前記混合およびキャスティングを、任意の順序で実施することができる、ステップ;ならびに
c)(b)で得られた前記インゴットを電極材料として使用される膜に押出および/または積層するステップ
を含む、項目1から28のいずれか一項に定義された電極材料を製造するためのプロセス。
(項目47)
集電体上に、項目1から28のいずれか一項に定義されたか、または項目29から46のいずれか一項に定義されたプロセスによって製造された電極材料を含む電極。
(項目48)
前記集電体が、ニッケルまたは銅の膜である、項目47に記載の電極。
(項目49)
項目1から28のいずれか一項に定義されたか、または項目29から46のいずれか一項に定義されたプロセスによって製造された電極材料を含有する電極、電解質および対極を含む電気化学セル。
(項目50)
項目47または48に定義された電極、電解質および対極を含む電気化学セル。
(項目51)
項目49または50に定義された少なくとも1つの電気化学セルを含む電池。
(項目52)
前記電池がリチウム電池またはリチウムイオン電池である、項目51に記載の電池。
(項目53)
モバイルデバイス、電気もしくはハイブリッド自動車における、または再生可能エネルギー貯蔵における、項目51または52の電池の使用。