(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】改良されたディーゼル燃料の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C10L 1/32 20060101AFI20240124BHJP
C10L 1/19 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C10L1/32 D
C10L1/19
(21)【出願番号】P 2021544787
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 MX2020000005
(87)【国際公開番号】W WO2020159350
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】521338787
【氏名又は名称】トレヴィーニョ キンタニージャ, セルジオ アントニオ
【氏名又は名称原語表記】TREVINO QUINTANILLA, Sergio Antonio
【住所又は居所原語表記】Cerrada Cerro de Picachos #6235, Colonia Cumbres Quinta Real, Monterrey, Nuevo Leon, 64347 Mexico
(73)【特許権者】
【識別番号】521338798
【氏名又は名称】ロダルテ ヘレラ, ギレルモ ヘラルド
【氏名又は名称原語表記】RODARTE HERRERA, Guillermo Gerardo
【住所又は居所原語表記】Ave. Ricardo Margain #575, Torre C suite 100 Colonia Santa Engracia, San Pedro Garza Garcia, Nuevo Leon, 66267 Mexico
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレヴィーニョ キンタニージャ, セルジオ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ロダルテ ヘレラ, ギレルモ ヘラルド
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081740(JP,A)
【文献】特開昭52-069909(JP,A)
【文献】特開2009-073898(JP,A)
【文献】特表2001-524161(JP,A)
【文献】特開2009-068480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/32
C10L 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良されたディーゼル燃料の製造プロセスであって、
商用ディーゼル燃料を含む第1の流れ(SD)と、界面活性剤として使用されるエトキシル化エステルの混合物を含む第1の添加剤の第2の流れ(S1)と、水溶性界面活性剤と環状芳香族炭化水素との混合物を含有する水性エマルジョンを含む第2の添加剤を含む第3の流れ(S2)と、を混合および均質化して、SD+S1+S2を含む混合され均質化された流れを生成するステップa)と、
前記混合および均質化された混合物を、ローターを有する衝撃波パワーリアクター内の制御されたキャビテーションに送給することによって、ステップa)で得られた前記混合および均質化された流れに含まれる前記ディーゼル燃料を双極ディーゼル燃料に変換することで、改良されたディーゼル燃料を得るステップb)と、を備え、
第1の添加剤は、下記式1で表される化合物であり、
【化1】
第2の添加剤は、4-(2,4-ジメチルヘプタン-3-イル)フェノールである、
製造プロセス。
【請求項2】
前記ステップa)において、前記第1の添加剤は、6から80モルの範囲の酸化エチレンでエトキシル化することが可能なエトキシル化脂肪酸エステルを含み、その分子は、1,4-アンヒドロソルビトールおよび脂肪酸から形成される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記ステップa)において、前記第2の添加剤は、1つまたは2つのメチルラジカルを有するパラ「p-」またはオルト「o-」キシレンなどの芳香族溶媒がアルキルタイプ鎖またはノニルタイプであり得る界面活性剤に由来する4-エトキシル化フェノールに混合されて形成された水系混合物であり、前記界面活性剤の化学的バランスは、前記第1の添加剤のHLB値と一致するように定式化される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項4】
前記ステップa)において、第1の流れ(SD)は、流量が35~350ガロン/分で動作圧力が60~100psigの40HPのモータを搭載するヘリコイダルギアポンプを使用して汲み上げられた非極性商用ディーゼル燃料(CD)を含み、前記ポンプは、周囲温度およびタンクの静水圧(最低1psi)で、4~1400L/分の範囲で定量体積流量源からディーゼル燃料を受け取り、前記第1の流れは、コリオリ質量流量計を使用して測定され、主流量制御バルブNPS150クラスの標準RFフランジ接続を使用して、前記ヘリコイダルギアポンプによって提供される圧力と同じ圧力である20~90psigに調整される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項5】
前記ステップa)において、第2の流れ(S1)は、0~5ガロン/分
(ただし、0ガロン/分の場合を除く)の流量と25~120psigの動作圧力とを有するプログレッシブキャビティインジェクションポンプを使用して供給され、前記プログレッシブキャビティインジェクションポンプは、周囲温度およびタンクの静水圧で前記タンクから前記第2の流れを受け取り、前記プログレッシブキャビティインジェクションポンプより供給される前記第2の流れは、25~125psigの圧力で前記第2の流れを調整する制御バルブで調整されるストレートコリオリ質量流量計を使用して測定される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項6】
前記ステップa)において、第3の流れ(S2)は、0~10ガロン/分
(ただし、0ガロン/分の場合を除く)の流量と25~125psigの動作圧力とを有する前記プログレッシブキャビティインジェクションポンプを使用して供給され、前記プログレッシブキャビティインジェクションポンプは、周囲温度およびタンクの静水圧で前記タンクから前記第2の添加剤を受け取り、
前記プログレッシブキャビティインジェクションポンプより供給される前記第3の流れは、25~125psigの圧力で前記第3の流れを調整する制御バルブで調整されるストレートコリオリ質量流量計を使用して測定される、請求項5に記載の製造プロセス。
【請求項7】
前記ステップa)において、
ステップ1.前記第2の流れ(S1)は、前記第1の流れ(SD)に注入され、
ステップ2.得られた流れ(SD+S1)は静的混合器により均質化され、均質化された流れが生成され、
ステップ3.前記第3の流れは、前記ステップ2で得られた前記均質化された流れに注入され、
ステップ4.前記ステップ3で得られた流れ(SD+S1+S2)は静的混合器により均質化される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項8】
前記ステップ1において、前記第2の流れ(S1)は、標準の「T」コネクタを使用して、前記第1の流れ(SD)の圧力よりも高いことが必須である25~125psigの圧力で注入して35~400ガロン/分の流量を有するSD+S1の流れを生成し、前記流量は、前記SDの流量の0.9%から1.5%に相当する、請求項7に記載の製造プロセス。
【請求項9】
前記ステップ2において、前記得られた流れ(SD+S1)は、5つのブレードユニットと150クラスの標準RFフランジ接続を備えた第1の静的混合器を使用して均質化され、8psigの圧力低下を生じさせて20から110psigまでの範囲のSD+S1の混合流を発生させる、請求項7に記載の製造プロセス。
【請求項10】
前記ステップ3において、前記第3の流れ(S2)は、標準の「T」コネクタを使用して前記第1の流れ(SD)の圧力よりも高いことが必須である25~125psigの圧力で注入して、前記静的混合器の下流の位置において、400ガロン/分の流量を有するSD+S1+S2の流れを生成し、S2成分の流量は、SD+S1+S2の流量の1.5%から3.0%に相当する、請求項7に記載の製造プロセス。
【請求項11】
前記ステップ3において、3つのブレードユニットと概ね4psigの圧力低下を生じさせる150クラスの標準RFフランジ接続とを備えた第2の静的混合器を使用して、SD+S1+S2の流れは混合および均質化され、周囲温度において25から125psigまでの圧力を有するSD+S1+S2の混合流を発生させる、請求項7に記載の製造プロセス。
【請求項12】
前記ステップb)において、前記混合および均質化されたSD+S1+S2の流れが、25~125psigの圧力および周囲温度で衝撃波パワーリアクター(SPR)に導入され、その流れを、前記SPRリアクターは600RPMから3000RPMの間の速度で回転するローターを備える、請求項7に記載の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の炭化水素燃料を改良するためのシステムおよび方法に関し、より具体的には、点火特性が強化された、改良されたディーゼル燃料を連続製造するためのプロセスに関する。改良されたディーゼル燃料は、より具体的には、より大きな電気伝導性および/または潤滑性を有し、完全燃焼の割合をより大きくし得、その結果、内燃ディーゼルエンジンで燃焼するときの出力低下がごくわずかな状態で、煤の生成およびNOxの両方を同時に減少させる。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル燃料は、世界で最も使用されている液体炭化水素燃料の1つである。内燃機関でディーゼル燃料を使用するときの主な問題は、重負荷または軽負荷、道路上の車両または特殊車両のエンジンで、固体炭素粒子(煤)と窒素酸化物(NOx)との排出量が相反することである。煤の排出量を減らす必要があるときは、エンジンの燃焼室の温度を上げて、燃焼を改善し得るものの、煤の排出量が減少する一方で燃焼室はより多くの酸化剤を生成し、NOxの排出量は大幅に増加する。燃焼室の温度を下げると逆の効果が生じ、NOx排出量が減少するが煤の形成がはるかに多くなる。
【0003】
従来の技術において、上記の問題に対処するためのいくつかの工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料の分解および分子の破断の最適化、ならびに添加剤または燃料増強剤を有する燃料の再結合に係る方法であって、燃料を余熱するステップと、マイクロエマルジョン混合物が形成されるまで前記予熱された燃料を水および少なくとも1つの添加剤と混合するステップと、所望の圧力に達するまで前記混合物をポンプに通すステップと、混合物を、キャビテーション気泡が形成され、解重合および新しいポリマー鎖形成が起こる流体力学的キャビテーション反応装置に送り、改質燃料を提供するステップと、を備える方法が開示される。特許文献1は開示された方法が、安価な添加剤を使用して燃料量を増やし、API指標を改善し、「よりクリーンな」燃料を生成し、燃焼中において硫黄、CO、Ox、炭素粒子などの燃料中の望ましくない元素を減少させるとともに原油の粘度を低減し、発熱量を向上し、D6燃料およびD2燃料のセタン価を向上させ、より軽い燃料のオクタン価を上げ、よりクリーンな燃焼プロセスにより関連するシステムのメンテナンスを軽減する、と主張している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は次に示すいくつかの欠点がある。
・特許文献1は、気泡発生装置として説明するだけであり、「キャビテーション」が意味するところを適切かつ明確に説明していない。そして、引用文献1は、得ようとする効果を達成するための理想的なプロセス条件についても説明していない。また、キャビテーションリアクターが何をするかについての技術的に合理的な説明もしない。
・特許文献1は、添加される添加剤や燃料改良剤について説明していない。水、メタノールなどの一連の純物質についてのみ言及しているが、これらの物質は、燃料に何らかの特性を追加するものではなく、添加剤ではない。
・特許文献1は、ディーゼル燃料の分子の破断と解重合、およびその後の再重合について言及する。第一に、ディーゼル燃料には破断するポリマー分子が含まれておらず、いずれにしても、ディーゼル燃料はポリマーではない。また、発熱量が失われるため、分子を破断することは望ましくない。これらの技術的な議論はすべて、ディーゼル燃料がポリマーである、またはポリマー分子を含むという誤った仮定に基づく。炭化水素の知識を持っている人は誰も、この語義を適切であると見なすことも、議論を有効であると見なすこともない。
特許文献1に記載されているすべての利点には明確な目的がなく、燃焼を「改善」するために燃料を変更しているようであるが、「改善」が意味するところは説明していない。
・特許文献1は、変更された燃料により、CO、NOx、およびSO2の排出量が「少なくなる」と説明する。最新のエンジンは、現在COガスを生成しないため、その削減にはほとんど関心がない。NOxの削減は適切ですが、特許文献1はそのような効果を証明しておらず、その効果を達成することの意味のある説明もしていない。SOxの排出量は燃料中の硫黄の濃度に依存するため、その削減もまた不正確である。また、硫黄酸化物の生成を停止する効果を生成するためにディーゼル燃料に行うことができる変更や分子分解は存在しない。燃料を分離して別の硫黄の流れを生成するだけで、硫黄濃度は下げ得る。もう1つの不正確さは、エンジンがSO2を生成することはめったになく、SO3の放出がより一般的であることである。また、特許文献1が示す削減率も、それを正当化する論理的な説明が不足している。
【0006】
特許文献2は、内燃機関およびボイラーで燃焼するための様々な含水燃料混合物を調製すること、ならびに水から石油および石油製品の微粒子およびナノ粒子を除去することを目的とするキャビテーション反応装置について開示する。特許文献2は、充満した水と油の混合物がキャビテーションフィールドで高強度の液圧処理(キャビテーション処理)を受けると、水が微細分散した相に移行し、マイクロレベルで液体燃料の燃焼にプラスの効果をもたらす(1滴のスケールとトーチでの液滴のグループ燃焼のプロセスの両方で)油水エマルジョンの形の代替タイプの燃料に変わることを開示する。
【0007】
特許文献2は、広く知られている燃料エマルジョンの製造を開示しています。特許文献2で開示されているエマルジョン中の水の濃度は非常に高く(8%以上)、特許文献2で説明されている燃料油などの燃料を燃焼させるときに非常によく知られている効果を奏する。
【0008】
特許文献3は、重油原料の品質をアップグレードまたは改善するためのシステムおよび方法を開示する。特許文献3に記載されているシステムおよび方法は、超音波キャビテーションエネルギーなどのキャビテーションエネルギーを利用して、超音波または他のキャビテーションエネルギー(例えば、キャビテーション力、剪断、マイクロジェット、衝撃波、微小対流、局所ホットスポットなど)を重油に伝達し、重油の処理に適していると従来は考えられていなかった低圧水素条件下(たとえば、500psig未満)で水素転化を駆動する。
【0009】
特許文献3は、明確な改良をもたらさない重質原油の改質を開示する。キャビテーションを利用して重質原油を改善しているとだけ言及する。それは燃焼を中心とするものではない。一方、特許文献2は、動圧キャビテーションと超音波を混同しているが、それらは異なる現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2014/168889号
【文献】国際公開第2015/053649号
【文献】米国特許出願公開第2016/0046878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この問題を解決するために世界でも多くの科学的努力がなされてきたが、NOxを増加させずに煤の削減が可能な技術の多くが、基本的に燃料の発熱量を約20%減少させ、それらはまた、燃料を、多くのパラメータで仕様から外れるものとする、との事実により、それらの努力が成功することはなかった。それらは間違いなく技術的に実行不可能である。
【0012】
上記の問題と必要性を考慮して、出願人は、点火特性が向上し、特に電気伝導率が高く、完全燃焼の割合を高くさせるように潤滑性が向上する、改良されたディーゼル燃料の連続生産方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の方法は、改良された双極ディーゼル燃料を得るために、ディーゼル燃料を2つの特別な添加剤と混合および均質化するステップと、その混合および均質化された混合物を、ローターを有する衝撃波パワーリアクター内の制御されたキャビテーションに送給するステップと、を含む。改良されたディーゼル燃料を内燃機関に使用することで、総窒素酸化物(NOx)の排出量と同様に、総煤および総PMの排出量の30%以上が削減可能である。改良されたディーゼル燃料は、0%から3%の燃料ペナルティでディーゼル燃焼エンジンのNOxと煤との生成の相反関係を消滅させる。
【0014】
したがって、本発明の主な目的は、改良されたディーゼル燃料の連続生産のための方法を提供するところにあり、より具体的には、より大きな電気伝導率および向上した潤滑性を有し、完全燃焼の割合をより大きくし得、その結果、煤の生成およびNOxの両方を同時に減少させることである。
【0015】
本発明の主な目的はまた、改良された双極ディーゼル燃料を得るために、ディーゼル燃料を2つの特別な添加剤と混合および均質化するステップと、ローターを有する衝撃波パワーリアクター内の制御されたキャビテーションに送給するステップと、を含み、上記の性質の改良ディーゼル燃料の連続生産のための方法を提供するところにある。
【0016】
また、本発明の追加の目的は、上記の性質の改良されたディーゼル燃料の連続生産のための方法を提供するところにあり、改良されたディーゼル燃料は、総窒素酸化物(NOx)排出量と同様に、総煤煙および総PMの排出量の30%以上が削減可能とする。
【0017】
本発明の別の主な目的は、上記の性質の改良されたディーゼル燃料の連続生産のための方法を提供するところあり、改良されたディーゼル燃料は、0%から3%の燃料ペナルティでディーゼル燃焼エンジンのNOxと煤との生成の相反関係を消滅させる。
【0018】
本発明の改良されたディーゼル燃料を連続生産するための方法のこれらの目的および他の目的、ならびに利点は、添付の図面を参照して作成される本発明の実施形態の以下の詳細な説明から、当業者に明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の改良されたディーゼル燃料の連続生産のための方法の流れ図である。
【
図2】
図2は、試験1の定常状態試験の結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、試験1の過渡試験の結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、試験2の最初の定常状態試験を示すグラフである。
【
図5】
図5は、試験2の2番目の定常状態試験を示すグラフである。
【
図6】
図6は、試験2の過渡試験を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の改良されたディーゼル燃料は、「通常の」商用ディーゼル燃料系に、2つの混合物成分が添加されている。これらの成分は、「S1」(添加剤番号1に対応)および「S2」(添加剤番号2に対応)として記述される。
【0021】
「S1」は、6モルから80モルまでの範囲の酸化エチレンでエトキシル化することが可能なエトキシル化脂肪酸エステルを含む。この分子は、1,4-アンヒドロソルビトールと脂肪酸から形成される(式1を参照)。通常、この物質は、ソルビトールのステアリン酸エステルおよびパルミチン酸エステル、およびそれらの一水素化物および二無水物の混合物で構成されている。このエトキシル化誘導体は、モノグリセロールエステルの形態に数モルの酸化エチレンを添加することによっても調製することができ、添加された酸化エチレンのモル数に応じて、広範囲のHLB値を有する。
【化1】
【0022】
S2は、1つまたは2つのメチルラジカルを有するパラ「p-」キシレンまたはオルト「o-」キシレンなどの芳香族溶媒と、アルキルタイプ鎖またはノニルタイプであり得る界面活性剤に由来する4-エトキシル化フェノールと、が混合されて形成される複雑な水系混合物である。界面活性剤の化学的バランスは、S1のHLB値と一致するように定式化する必要がある。
【化2】
【0023】
S2の水分濃度は50%~90%の範囲である必要があり、水はアミン石鹸の形態で添加される。アミン石鹸は、それぞれ粘性有機化合物である3級アミンと3つのアルコール基を持つトリオール(下の図を参照)の両方が含まれる化学反応器で調製する必要がある。3つのアルコール基を持つトリオールは、1つの二重結合と6から18の炭素のアルキル鎖とを有する脂肪族脂肪酸によって中和される。
【化3】
【0024】
S1は非極性物質であり、S2は双極性混合物である。どちらも、ディーゼル燃料または超低ディーゼル燃料で複雑な分子分散を生じさせる物質である。
【0025】
両方の添加剤が主プロセスフローに注入され、衝撃波パワーリアクター(SPR)により完全に混合する。
【0026】
本発明のプロセスは、ディーゼル燃料の連続する流れで処理するように設計された特定の実施形態にしたがって説明され、本発明のプロセスは、以下のステップを含む。
a)最大流量が35~350ガロン/分で動作圧力が60~100psigの40HPのモータを搭載するヘリコイダルギアポンプ(BPS002)を使用して、60~100psigの圧力で(無極性)商用ディーゼル燃料(超低硫黄ディーゼル(ULSD)も使用可能)の連続した主流(SD)を提供するステップであって、ポンプは、周囲温度およびタンクの静水圧(最低1psi)で4~1400L/minの範囲の定体積流量源(タンクULSD)からディーゼル燃料を受け取り、主流(SD)は4インチのパイプを通って流れ、プロセス全体の規模によっては直径が異なる他のパイプを使用し得る、ステップ。
b)4インチの「V字型」コリオリ質量流量計を使用して主流(SD)の流量を測定し、主流量制御バルブNPS4インチ150クラスの標準RFフランジ接続を使用して主流量を調整するステップであって、主流は、ヘリコイダルギアポンプによって提供される圧力と同じ圧力である20~90psigで調整される、ステップ。
c)最大比例流量が0~5ガロン/分(好ましくは4.55ガロン/分)で動作圧力が25~120psig(好ましくは100psigで、主流(SD)の圧力よりも高いことが必須)の圧力の5HPモータを有する、プログレッシブキャビティインジェクションポンプ(BPS002)を使用して、S1成分の流れを提供するステップであって、プログレッシブキャビティインジェクションポンプは、周囲温度においてタンクの静水圧でタンクからS1成分を受け取るステップ。
d)25~125psig(好ましくは100psig)の最大圧力でS1成分の流れを調整する制御バルブNPS3/4インチで調整された、1インチのストレートコリオリ質量流量計を使用してS1成分S1の流れを測定するステップ。
e)標準の「T」コネクタを使用してS1成分の流れを主流(SD)の4インチのパイプに、主流の圧力よりも高いことが必須である25~125psig(好ましくは100psig)の圧力で注入して、主流量制御バルブの下流の位置において、35~400ガロン/分(好ましくは359.55ガロン/分)の最大質量流量を有するSD+S1の流れを生成するステップであって、入力質量流量は、SDの流量の0.9%から1.5%に相当するステップ。
f)長さ約120cm、直径4インチで5つのPMSブレードユニットと150クラスの標準RFフランジ接続を備えた第1の静的混合器(MEZC001)を使用して、SD+S1の流れを混合および均質化し、概ね8psigの圧力低下を生じさせて約20から110psigまで(好ましくは67psig)の範囲のSD+S1の混合流を発生させるステップ。
g)最大流量が0~10ガロン/分(好ましくは8.75ガロン/分)で動作圧力が25~125psig(好ましくは100psig)の圧力3HPモータを有する、プログレッシブキャビティインジェクションポンプ(BPS003)を使用して、S2成分の流れを提供するステップであって、プログレッシブキャビティインジェクションポンプは、周囲温度においてタンクの静水圧でタンクからS1成分を受け取るステップ。
h)25~125psig(好ましくは100psig)の圧力でS2成分の流れを調整する制御バルブNPS3/4インチ、150クラスの標準RFフランジ接続により調整されたストレートコリオリ質量流量計を使用してS2成分の流れを測定するステップ。
i)標準の「T」コネクタを使用してS2成分の流れをSD+S1の流れの4インチのパイプに、主流の圧力よりも高いことが必須である25~125psig(好ましくは100psig)の圧力で注入して、第1の静的混合器の下流の位置において、400ガロン/分の最大質量流量を有するSD+S1+S2の流れを生成するステップであって、S2成分の入力質量流量は、SD+S1+S2の流量の1.5%から3.0%に相当するステップ。
j)長さ約87cm、直径4インチで3つのPMSブレードユニットと150クラスの標準RFフランジ接続を備えた第2の静的混合器(MEZC021)を使用して、SD+S1+S2の流れを混合および均質化し、概ね4psigの圧力低下を生じさせることで、周囲温度において25から125psigまで(好ましくは63psig)の圧力を有するSD+S1+S2の混合流を発生させるステップ。
k)周囲温度で25~125psig(好ましくは63psig)の圧力を有するSD+S1+S2の流れを衝撃波パワーリアクター(SPR)に導入して、その流れを、非極性ディーゼル燃料を潤滑性パラメータが40%以上向上する双極性ディーゼル燃料に変換する「制御されたキャビテーション」に送給するステップであって、SPRリアクターは600RPMから3000RPMの間の速度で回転するローターを備え、その回転動作は金属表面から離れたローターキャビティに、十分に制御され損傷を生じさせない流体力学的なキャビテーションを発生させるステップ(ここで、微視的なキャビテーション気泡が生成されて崩壊する際、衝撃波は過熱し混合し得る液体中に放出される(Hydrodynamics、2018年)。この装置は、SD+S1+S2の流れの均一な混合を保証し、その結果、ディーゼル燃料は概ね30°Cの温度上昇に対応する約30°Cから80°Cの温度を有する)。
【0027】
本発明のプロセスの他の実施形態では、ステップe)およびi)において、成分S1は常に主流(SD)の圧力よりも高いまたはわずかに高い圧力で注入され、成分S2は常にSD+S1の流れの圧力よりも高いまたはわずかに高い圧力で注入される。
【0028】
このプロセスはディーゼル燃料の連続した流れを処理するように設計されていると説明されるが、ディーゼル燃料をバッチで処理することは可能もあり得る。
【0029】
本発明の方法によって製造された改良ディーゼル燃料は、点火特性が向上し、特に、通常のディーゼル燃料と比較して1000倍以上の高い電気伝導率および通常のディーゼル燃料と比較して100%を超える潤滑性の値を有し、完全燃焼の割合が高いことから、内燃ディーゼルエンジンでの煤煙の生成とNOxが同時に減少する。
【0030】
本発明の方法によって得られた前記改良されたディーゼル燃料は、概ね0.300mmの潤滑性パラメータを有する双極ディーゼル燃料である。
【0031】
改良されたディーゼル燃料は、EPAおよびCARB標準サイクルに基づくエンジン上での試験で、通常のULSDをベースとするこの燃料の効果として、総煤煙および総PMの排出量が、総窒素酸化物(NOx)の排出量と同様に30%以上も減少することが証明された。改良されたディーゼル燃料(ND)は、0~3%の燃料ペナルティで、ディーゼル燃焼エンジンでのNOxと煤の生成の相反関係を消滅させる。
【0032】
ベース燃料との差別化を図った改良ディーゼル燃料の特徴は、顕微鏡で観察すると極性粒子の分散が観察されるところにあり、これが双極特性をもたらす。
【0033】
前述のように、ASTMD2624に従って測定すると、添加剤を追加することなく、ベース燃料に対して電気伝導率が1000以上増加することも確認できる。
【0034】
ASTMD6079で測定された潤滑性は、潤滑性添加剤を追加することなく、はるかに高くなっている。
【実施例】
【0035】
本発明の改良ディーゼル燃料の仕様
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0036】
現在の発明の改良されたディーゼル燃料を使用するエンジン試験
エンジンの試験方法は、EPAによって管理および承認されているFTP(Federal Test Protocol)である。試験は、定常状態(定常状態)と過渡サイクル(過渡状態)で実行された。
試験1
ナビスター
・ モデルイヤー: 2016N13
・ 排出量コンプライアンス: 2010
・ 排気量、リットル: 12.4
・ 電力定格: 1700rpmで475hp
・ 排気ガス再循環(EGR)
・ HPCR燃料システム
米国とヨーロッパでの現在の生産を代表するベースエンジン
定常状態試験
・ 1700rpmおよび50%の負荷
・ 改良燃料で33%の煤の削減
図2のグラフを参照
過渡試験
・ FTPテストの実証:
煤が14%少ない
NOxが8.6%少ない
図3のグラフを参照
試験2
DDシリーズ60
・ モデルイヤー:1998シリーズ60
・ 排出量コンプライアンス:1998
・ 排気量、リットル:14.0
・ 電力定格:1800rpmで450hp
・ EGRなし
・ 後処理なし
・ ユニットインジェクター
レガシーフリートインベントリの代表
定常状態試験1
・ 1800rpmおよび25%の負荷
・ 改良燃料で34%の煤の削減
・ NOxと燃料消費量は変わらない
図4のグラフを参照
定常状態試験2
・ 1200rpmおよび100%の負荷
・ 改良燃料で28%の煤の削減
・ NOxと燃料消費量は変わらない
図5のグラフを参照
過渡試験
・ FTPテストの実証:
NOxと燃料消費量は変わらない
29%の煤の削減
図6のグラフを参照
【0037】
シェブロンフィリップスが実施した未処理のレギュラーディーゼルの分析
【表8】
【0038】
サウスウエスト研究所が実施した本発明の改良されたディーゼル燃料(改良ディーゼル燃料)の分析
【表9】
改良ディーゼル燃料#1
【表10】
【表11】
【表12】
改良ディーゼル燃料#2
【表13】
【表14】
【表15】