(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ゲルプロセスにより粉末形態の構造化ポリマーを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240124BHJP
C08F 20/04 20060101ALI20240124BHJP
C08F 20/54 20060101ALI20240124BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240124BHJP
C08F 2/32 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08F20/04
C08F20/54
C08F2/44 C
C08F2/32
(21)【出願番号】P 2021572030
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 FR2020050760
(87)【国際公開番号】W WO2020245517
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-15
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスエヌエフ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン・デュシャドゥー
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ・タヴェルニエ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・コッコロ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ファヴェロ
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524130(JP,A)
【文献】特表2019-505657(JP,A)
【文献】特開2010-159387(JP,A)
【文献】特表2006-509096(JP,A)
【文献】特開2020-81930(JP,A)
【文献】国際公開第2020/025992(WO,A1)
【文献】特表2020-512330(JP,A)
【文献】特開2021-35677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0345373(US,A1)
【文献】特開2018-1047(JP,A)
【文献】特開2013-248583(JP,A)
【文献】特開2002-114810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F2/00-2/60
6/00-246/00
301/00
C08J3/00-3/28
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量平均分子量が100万ダルトン超であり、ハギンズ係数K
Hが0.4超である
粉末状構造化水溶性ポリマーを調製する方法であって、
ハギンズ係数K
Hが、ポリマー質量濃度5g.L
-1で、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃で測定され、
方法が、以下の連続した工程:
a)少なくとも1種の
非イオン性水溶性一不飽和エチレン性モノマー
及び少なくとも1種のアニオン性又はカチオン性の水溶性不飽和エチレン性モノマーを-20℃~+50℃の間の開始温度で水溶液中でフリーラジカル重合させることによって、ゲル形態のポリマーを調製する工程であって、
重合投入物に対するモノマーの総質量濃度が、10~60%の間であ
り、
非イオン性モノマーが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピリジン及びN-ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン(ACMO)、並びにジアセトンアクリルアミドから選択され、
アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸から選択され、前記アニオン性モノマーが、塩化されていない、又は部分的若しくは完全に塩化されており、
カチオン性モノマーが、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドから選択される、工程;
b)得られたポリマーゲルを粒状化する工程;
c)ポリマーゲルを乾燥させて、粉末形態のポリマーを得る工程;
d)粉末を粉砕し、ふるいにかける工程
を含み、
工程a)で使用す
る複数種の水溶性一不飽和エチレン性モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%の水溶性ポリマーが、重合工程a)中及び任意選択で粒状化工程b)中に添加され、
水溶性ポリマーが、構造化されており、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体として添加される、
方法。
【請求項2】
少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、
まだ重合されていない関与する遊離モノマーの総質量に対して10~50質量%の間の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中及び任意選択で粒状化工程b)中に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、
まだ重合されていない関与する遊離モノマーの総質量に対して10~50質量%の間の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中に2/3~3/4の間の割合で及び粒状化工程b)中に1/4~1/3の間の割合で添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、
まだ重合されていない関与する遊離モノマーの総質量に対して10~30%の間の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
重合温度での重合投入物のブルックフィールド粘度が、100センチポアズ未満(ブルックフィールド弾性率:LV1、回転速度:60rpm
-1)であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー質量濃度5gL
-1で、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃における油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の水溶性構造化ポリマーのハギンズ係数が、0.4超であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
油中水型逆エマルジョン又は油中分散体が、10~70質量%の間の構造化水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記逆エマルジョン又は油中分散体に含有される構造化水溶性ポリマーが、工程a)で重合されたものと同じ一不飽和エチレン性モノマーで構成されていることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記逆エマルジョン又は油中分散体に含有される構造化水溶性ポリマーを構成する各モノマーの割合が、工程a)で重合されたものと同じ割合の一不飽和エチレン性モノマーで構成されていることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記逆エマルジョン又は前記分散体に含有される構造化水溶性ポリマーが、少なくとも2個の不飽和を有するエチレン性モノマーで構造化されていることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記逆エマルジョン又は前記分散体における油が、60℃超の引火点を有することを特徴とする、請求項1から1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
構造化水溶性ポリマーの油中水型逆エマルジョンが、
- 少なくとも1種の構造化水溶性(コ)ポリマーを含む親水性相;
- 親油性相;
- 式(I)の少なくとも1種のモノマーで構成される少なくとも1種の界面ポリマー
を含むことを特徴とする、請求項1から1
1のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
(式中、
- R1、R2、R3は独立的に、水素原子、メチル基、カルボン酸基、及びZ-Xからなる群から選択され、
- Zは、C(=O)-O;C(=O)-NH;O-C(=O);NH-C(=O)-NH;NH-C(=O)-O;並びに1~20個の炭素原子を含み、窒素及び酸素から選択される1種又は複数種のヘテロ原子を場合により含む、置換又は非置換の飽和又は不飽和の炭素鎖を含む群から選択され、
- Xは、アルカノールアミド、ソルビタンエステル、エトキシ化ソルビタンエステル、グリセリルエステル、及びポリグリコシドから選択される基であり;Xは、飽和又は不飽和の、直鎖状、分枝状、又は環状、任意選択で芳香族の、炭化水素鎖を含む)。
【請求項13】
工程a)少なくとも1種の、水溶液に可溶な一不飽和エチレン性モノマーを、
酸化還元開始剤及びアゾ化合物を用いるラジカル経路によって
、0~20℃の間の開始温度で
重合させる工程であって、
まだ重合されていない関与する遊離モノマーの総質量に対して20~30質量%の逆エマルジョンであり、アクリルアミドと、40~90mol%の間の、塩化メチルで四級化したジメチルアミノエチルアクリレートとで構成された、30~60質量%の間のコポリマーを含有し、0.05%未満のメチレンビスアクリルアミドで構造化された、逆エマルジョンの存在下で
行われ、
重合投入物に対するモノマーの総質量基準での濃度が、25~50%の間であり、
逆エマルジョンのハギンズ係数が、ポリマーの質量基準濃度5gL
-1で、脱イオン水中、及び温度25℃において0.4超であり、重合温度での重合投入物のブルックフィールド粘度が、100センチポアズ未満(ブルックフィールド弾性率:LV1、回転速度:60rpm
-1)である、工程と、
工程b)このようにして得られたゲルを、5~10質量%の逆エマルジョン形態のこのポリマーの存在下で粒状化する工程とからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
石油及びガス産業、水圧破砕、製紙プロセス、水処理、汚泥脱水、建設、鉱業、化粧品、農業、繊維産業、並びに洗剤においての請求項1から13のいずれか一項に記載の方法に従って得られたポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の用途において凝集剤又は増粘剤として使用するための、粉末形態の構造化させた高分子量合成水溶性ポリマーを調製する方法に関する。より正確には、本発明は、高分子量構造化水溶性合成ポリマーを得るためのゲル法を主題としている。
【背景技術】
【0002】
高分子量合成水溶性ポリマーは、その凝集性又は増粘性のために、多くの用途に一般に使用されている。実際、これらのポリマーは、石油及びガス産業、水圧破砕、製紙プロセス、汚泥脱水、水処理、建設、鉱業、化粧品、農業、繊維産業、並びに洗剤において使用される。
【0003】
例を挙げると、これらの高分子量水溶性合成ポリマーの凝集剤としての特性は、水処理/汚泥脱水の分野で活用されている。実際、所与の水のコロイド粒子(1μm未満の径の球体に類似)を不安定にする任意選択の凝析工程の後、凝集は、粒子を高分子量の凝集体に集めて急速に沈降させる工程に相当する。このように水の処理に使用される水溶性ポリマーは、主に粉末又は油中水型逆エマルジョンの形態である。処理する水に応じて、凝集剤の物理的性質が調整される。したがって、水溶性ポリマーのイオン性(非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性、双性イオン性)、分子量、又は構造(直鎖状又は構造化状、更には架橋状)を適応させることが可能である。
【0004】
一方、これらのポリマーの増粘性は、石油高次回収(EOR、「石油高次回収(Enhanced Oil Recovery)」の頭字語)の分野で活用することができる。水注入掃引の効率は、一般に、高分子量水溶性合成(コ)ポリマーの添加によって改善される。これらの(コ)ポリマーの使用から期待且つ証明された利点は、注入した水の「粘性化」により、掃引性が向上し、流体間の粘度の差異が減少して、流体内での易動度比が制御されて、石油が迅速且つ効率的に回収されることである。これらの(コ)ポリマーは、水の粘度を増加させる。
【0005】
高分子構造の水溶性ポリマー(星形又は櫛形の分枝状(枝分かれ状))は、主に油中水型逆エマルジョンの形態で得られる。次いで、このエマルジョンを噴霧して、粉末を得ることができる。しかし、このようにして得られた粉末は、微細な粉状であり、良好な流動性を有しない。
【0006】
最終粉末形態の高分子量直鎖状水溶性合成ポリマーは、効率の良いゲルプロセスによるフリーラジカル重合によって得ることができる。しかし、実際は、このプロセスは、完全に架橋されたポリマー、ひいては水膨潤性ポリマー(超吸収性)が得られることを除いて、ポリマーの構造を細かく制御することが不可能である。したがって、高分子量の構造化水溶性ポリマーを得るのには適していない。
【0007】
ラジカルゲル重合において正確に画定された構造を得るための一方法は、Nalcoによる特許出願WO2010/091333号に記載されているように、ポリアゾ等のマクロ開始剤を使用することで構成される。主な欠点は、このタイプの化合物が不安定で高価なことである。更に、このゲルプロセスによって得られる構造化ポリマーは、逆エマルジョンタイプ重合で達成できるほどの高い構造化速度を達成することは不可能である。
【0008】
或いは、噴霧粉(乳化重合から得られる)を、凝集させても、又はゲルプロセスから得られる他の粉末と混合させてもよいが、これは同様に多くの高価で長々しい工程に相当する(本出願人の日本特許出願特願2018-216407を参照)。
【0009】
凝集剤又は増粘剤の物流、輸送、及び調達の問題のためには、意図された用途に関係なく、これらの水溶性ポリマーの好ましい物理的形態は粉末(高活性材料の質量%)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許出願WO2010/091333号
【文献】特願2018-216407
【非特許文献】
【0011】
【文献】Griffin WC、Classification of Surface-Active Agents by HLB、Journal of the Society of Cosmetic Chemists、1949、1、311~326頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
合成凝集剤及び増粘剤の世界市場が本格化する中で、様々な用途の必要性及び特異性を満たすために、高分子量の水溶性合成ポリマーの大きな構造パネルが必要とされている。
【0013】
ポリマーという用語は、ホモポリマー又はコポリマー、つまり、単一タイプのモノマーからなるポリマー(ホモポリマー)、又は少なくとも2種の異なるタイプのモノマーからなるポリマーを示す。(コ)ポリマーは、これら2つの選択肢、即ち、ホモポリマー又はコポリマーの両方を指す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
構造化された合成凝集剤又は増粘剤を粉末形態で得ることの難しさに直面しているが、この物理的形態はあらゆる用途への供給を容易にするものであり、本出願人は驚くべきことに、これらのポリマーを調製するための新しいゲルプロセスを発見した。この方法は、ポリマーのゲル形態での重合プロセス中に、逆エマルジョン又は油中分散体の形態で構造化ポリマーを導入することで構成される。
【0015】
本発明はまた、石油及びガス産業、水圧破砕、製紙プロセス、水処理、汚泥脱水、建設、鉱業、化粧品、農業、繊維産業、並びに洗剤においての本発明の方法のポリマーの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明は、質量平均分子量が100万ダルトン超であり、ハギンズ係数KHが0.4超である構造化水溶性ポリマーを調製する方法であって、
ハギンズ係数KHが、ポリマー質量濃度5g.L-1で、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃で測定され、
方法が、以下の連続した工程:
a)少なくとも1種の水溶性一不飽和エチレン性モノマーを-20℃~+50℃の間の開始温度で水溶液中でフリーラジカル重合させることによって、ゲル形態のポリマーを調製する工程であって、
重合投入物に対するモノマーの総質量濃度が、10~60%の間である、工程;
b)得られたポリマーゲルを粒状化する工程;
c)ポリマーゲルを乾燥させて、粉末形態のポリマーを得る工程;
d)粉末を粉砕し、ふるいにかける工程
を含み、
工程a)で使用する1種の水溶性一不飽和エチレン性モノマー又は複数種の水溶性一不飽和エチレン性モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%の水溶性ポリマーが、重合工程a)中及び任意選択で粒状化工程b)中に添加され、
水溶性ポリマーが、構造化されており、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体として添加される、
方法に関する。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「水溶性ポリマー」は、ポリマーが、25℃で4時間撹拌しながら水に10gL-1の濃度で溶解したときに、不溶性粒子を含まない水溶液を生成することを意味する。
【0018】
本発明によれば、「分子量」(即ち、質量平均分子量)は、固有粘度によって決定される。固有粘度は、当業者に既知の方法で測定することができ、特に、濃度(x軸上)の関数として還元粘度の値(y軸上)をプロットすることからなるグラフ法によって、及び曲線をゼロ濃度に外挿することによって、様々な濃度の還元粘度の値から計算することができる。固有粘度の値は、y軸上で、又は最小二乗法を使用して読み取る。次いで、質量平均分子量は、有名なマルク-ホウインクの式:
[η]=KMα
によって決定することができ、
[η]は、溶液粘度測定法によって決定されるポリマーの固有粘度を表し、
Kは、実験定数を表し、
Mは、ポリマーの分子量を表し、
αは、マルク-ホウインク係数を表し、
α及びKは、特定のポリマー-溶媒系に応じて決まる。
【0019】
本発明の方法に従って得られる構造化水溶性ポリマーの平均分子量は、100万ダルトン超、有利には200万ダルトン超、更により有利には500万ダルトン超である。本発明の方法に従って得られる構造化水溶性ポリマーの平均分子量は、有利には2000万ダルトン未満、より有利には1500万ダルトン未満、更により有利には1000万ダルトン未満である。
【0020】
水溶性構造化ポリマーという用語は、ポリマーが直鎖状であることを除外し、また、ポリマーが完全に架橋され、ひいては水膨潤性ポリマーの形態であることも除外する。言い換えると、構造化ポリマーという用語は、側鎖を有する非直鎖状ポリマーを示す。
【0021】
したがって、構造化ポリマーは、分枝状ポリマー(枝分かれ状)の形でも、櫛形でも、又は星形でもよい。
【0022】
水溶性構造化ポリマーのハギンズ係数KHは、ハギンズの式:
ηred=[η]+KH[η]2C
から得られ、
ηredは還元粘度、Cはポリマーの質量基準濃度、[η]は固有粘度である。
【0023】
したがって、ハギンズ係数KHは、ポリマーの質量基準濃度5gL-1で、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃で決定される。
【0024】
ハギンズ係数KHは、所与の溶媒中、所与の温度及び濃度でのポリマーの形態を示すパラメータである。KHは、ポリマーの分枝とともに増加する。
【0025】
本発明の方法によって得られる水溶性構造化ポリマーのハギンズ係数KHは、0.4超、好ましくは0.5超、更により好ましくは0.6超である。
【0026】
一般に、直鎖状ポリマーは、0.4未満のハギンズ係数を示す。一方、水膨潤性ポリマーを形成する橋架ポリマーでは測定不可能である。
【0027】
油中水型エマルジョン又は油中分散体として構造化された水溶性ポリマー
本発明の方法の工程a)及び任意選択で工程b)で添加する少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含む油中水型逆エマルジョンは、以下のものを含む:
- 少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含む親水性相;
- 親油性相;
- 少なくとも1種の乳化剤;
- 任意選択で、界面活性剤。
【0028】
親油性相は、鉱油、植物性油、合成油、又はこれらの油のいくつかの混合物でよい。鉱油の例は、脂肪族、ナフタレン、パラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、又はナフチルタイプの飽和炭化水素を含有する鉱油である。合成油の例は、水添ポリデセン又は水添ポリイソブテン、ステアリン酸オクチルやオレイン酸ブチル等のエステルである。Exxon社のExxsol(登録商標)製品ラインは、最適なものである。
【0029】
一般に、逆エマルジョンにおける親水性相の親油性相に対する質量比は、好ましくは、50/50~90/10である。
【0030】
本発明の方法によって得られる生成物は、粉末形態の構造化された水溶性ポリマーである。その後の使用のために、これらのポリマーは、容易に溶解するものでなければならない。更に、工程a)の最後に得られるゲルは、工程b)~d)が正常に行われるようなものでなければならない。したがって、好ましくは、逆エマルジョン又は分散体の油は、60℃超の引火点を有する。
【0031】
本発明では、用語「乳化剤」は、油中に水を乳化させることができる薬剤を意味し、「界面活性剤」は、水中に油を乳化させることができる薬剤である。一般に、界面活性剤は、10以上のHLBを有する界面活性剤であると考えられ、乳化剤は、厳密に10未満のHLBを有する界面活性剤である。
【0032】
化学化合物の親水性-親油性バランス(HLB)は、Griffinが1949年に説明したように(Griffin WC、Classification of Surface-Active Agents by HLB、Journal of the Society of Cosmetic Chemists、1949、1、311~326頁)、分子の様々な領域の値を計算することによって決定される、親水性又は親油性の度合いの指標である。
【0033】
有利には、逆エマルジョンは、以下のリストから選択される乳化剤として含有する:1000~3000の間の分子量を有するポリエステル、ポリ(イソブテニル)コハク酸又はその無水物とポリエチレングリコールとの間の縮合生成物、2500~3500の間の分子量を有するブロックコポリマー、例えば、名称Hypermer(登録商標)で販売されているもの、ソルビタン抽出物、例えば、モノオレイン酸ソルビタン又はポリオレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン又はセスキオレイン酸ソルビタン、ポリエトキシル化ソルビタンのエステル、更にはジエトキシル化オレオケチル(oleoketyl)アルコール、又はテトラエトキシ化アクリル酸ラウリル、オレイルアルコールと2個のエチレンオキシド単位との反応生成物のような、エチレンより高級な脂肪族アルコールの縮合生成物;アルキルフェノール類とエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ノニルフェノールと4単位のエチレンオキシドとの反応生成物。Witcamide(登録商標)511等のエトキシ化脂肪アミン、ベタイン製品、及びエトキシ化アミンも乳化剤としての良い候補である。
【0034】
逆エマルジョンは、有利には0.5~10質量%、更により有利には0.5~5質量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。
【0035】
少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含む油中分散体は、親水性相(水)が例えば共沸蒸留によって大部分除去されていることを除いて、本質的に逆エマルジョンと同じ成分を含む。その結果、ポリマーは、親油性相に分散した粒子の形態で見られる。
【0036】
油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の構造化された水溶性ポリマーの平均分子量は、有利には100万ダルトン超、更により有利には150万ダルトン超、更により有利には200万ダルトン超である。それは、有利には2000万ダルトン未満、より好ましくは1000万ダルトン未満、更により有利には700万ダルトン未満である。
【0037】
油中水型逆エマルジョン又は分散体の形態の構造化された水溶性ポリマーは、有利には、非イオン性及び/又はアニオン性及び/又はカチオン性であり得る一不飽和エチレン性モノマーの重合から得られる。
【0038】
有利には、油中水型逆エマルジョン又は分散体の形態の構造化された水溶性ポリマーは、非イオン性一不飽和エチレン性モノマー(有利には10~100mol%)並びに適切な場合にはアニオン性及び/又はカチオン性モノマーのコポリマーである。
【0039】
非イオン性モノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピリジン及びN-ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン(ACMO)、並びにジアセトンアクリルアミドから選択することができる。
【0040】
アニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸から選択することができ、前記アニオン性モノマーは、塩化されていない、又は部分的若しくは完全に塩化されている。
【0041】
アニオン性モノマーの塩(塩化形態)としては、特に、アルカリ土類金属(好ましくは、カルシウム若しくはマグネシウム)又はアルカリ金属(好ましくは、ナトリウム若しくはリチウム)又はアンモニウム(特に、第四級アンモニウム)の塩が挙げられる。
【0042】
カチオン性モノマーは、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドから選択することができる。当業者であれば、例えば、R-X型(Rはアルキル基、Xはハロゲン)のハロゲン化アルキル(特に、塩化メチル)を用いて四級化モノマーを調製する方法を知っているであろう。
【0043】
構造化水溶性ポリマーは、アクリルアミド誘導体、例えば、N-アルキルアクリルアミド類、例えば、ジアセトンアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、オクチルアクリルアミド、及びN,N-ジアルキルアクリルアミド類、例えば、N,N-ジヘキシルアクリルアミド等、並びにアクリル酸誘導体、例えば、アクリル酸アルキル類及びメタクリル酸アルキル類等から好ましくは選択されるペンダント疎水性官能基を有するアクリルアミド、アクリル、ビニル、アリル、又はマレインタイプのモノマーから特に選択される1種又は複数種の疎水性モノマーを任意選択で含んでよい。
【0044】
構造化水溶性ポリマーは、アミン又は第四級アンモニウム官能基と、カルボン酸、スルホン酸、又はリン酸タイプの酸官能基とを有するアクリルアミド、アクリル、ビニル、アリル、又はマレインタイプの双性イオン性モノマーを任意選択で含んでよい。限定するものではないが、特に、ジメチルアミノエチルアクリレートの誘導体、例えば、2-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホナート、3-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホナート、4-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホナート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル)](ジメチルアンモニオ)アセタート等、ジメチルアミノエチルメタクリレートの誘導体、例えば、2-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホナート、3-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホナート、4-(((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホナート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル)](ジメチルアンモニオ)アセタート等、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの誘導体、例えば、2-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホナート、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホナート、4-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホナート、[3-(アクリロイルオキシ)プロピル)](ジメチルアンモニオ)アセタート等、ジメチルアミノプロピルメチルアクリルアミドの誘導体、例えば、2-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホナート、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホナート、4-((3-メタクリルアミドプロピル))ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホナート、及び[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル)](ジメチルアンモニオ)アセタート等を挙げることができる。
【0045】
任意選択で、水溶性ポリマーは、少なくとも1つのLCST基又はUCST基を含んでよい。
【0046】
当業者の一般的な知識によれば、LCST基は、定められた濃度での水への溶解性が、ある温度を超えると塩度の関数として改変される基に相当する。これは、溶媒媒体との親和性の欠如を確定する、加熱による転移温度を示す基である。溶媒との親和性の欠如は、媒体の沈殿、凝集、ゲル化、又は粘性化に起因し得る不透明化又は透明性の喪失をもたらす。最低転移温度は、「LCST」(「Lower Critical Solution Temperature(下限臨界溶液温度)」の頭字語に由来)と呼ばれる。LCSTにおける各基の濃度について、加熱転移温度が観察される。それは、曲線の最低点であるLCSTよりも高い。この温度より下では、(コ)ポリマーは水に溶解し、この温度より上では、(コ)ポリマーは水への溶解性を失う。
【0047】
当業者の一般的な知識によれば、UCST基は、定められた濃度での水への溶解性が、ある温度を超えると塩度の関数として改変される基に相当する。これは、溶媒媒体との親和性の欠如を確定する、冷却転移温度を有する基である。溶媒との親和性の欠如は、媒体の沈殿、凝集、ゲル化、又は粘性化に起因し得る不透明化又は透明性の喪失をもたらす。最高転移温度は、「UCST」(「Upper Critical Solution Temperature(上限臨界溶液温度)」の頭字語に由来)と呼ばれる。UCSTにおける各基の濃度について、冷却転移温度が観察される。それは、曲線の最低点であるLCSTよりも高い。この温度より上では、(コ)ポリマーは水に溶解し、この温度より下では、(コ)ポリマーは水への溶解性を失う。
【0048】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法の工程a)中及び任意選択で工程b)中に存在する油中水型逆エマルジョン又は油中分散体は、有利には、10~70質量%の間の構造化水溶性ポリマーを含む。
【0049】
逆エマルジョンの構造化された水溶性ポリマーは、工程a)で重合されたものとは異なるモノマーで構成されていてよい。例を挙げると、逆相(reverse)エマルジョンの構造化されたポリマーは、カチオン性及び非イオン性モノマーで構成することができ、工程a)で重合されたモノマーは、アニオン性でも非イオン性でもよい。
【0050】
好ましくは、逆エマルジョン又は油中分散体に含有される構造化水溶性ポリマーは、工程a)で重合されたものと同じ一不飽和エチレン性モノマーで構成されている。
【0051】
更により好ましくは、逆エマルジョン又は油中分散体に含有される構造化水溶性ポリマーを構成する各モノマーの割合は、工程a)で重合されたものと同じ割合の一不飽和エチレン性モノマーで構成されている。
【0052】
油中水型逆エマルジョン又は油中分散体に含有される構造化水溶性ポリマーは、少なくとも1種の構造剤であって、例えば、ビニル、アリル、アクリル、及びエポキシ官能基等、ポリエチレン不飽和を有するモノマー(少なくとも2個の不飽和な官能基を有する)を含む群から選択することができ、例えば、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、ジアリルアミン、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコールジメタクリレートを挙げることができる、少なくとも1種の構造剤によって、或いはポリ過酸化物、ポリアゾイック(polyazoics)等のマクロ開始剤、及びポリマーカプタンポリマー等の移動ポリエージェント(polyagent)、又は別法としてヒドロキシアルキルアクリレート若しくはエポキシビニルによって構造化することができる。
【0053】
油中水型逆相エマルジョン又は油中分散体に含有される構造化水溶性ポリマーはまた、逆エマルジョンの制御ラジカル重合(CRP)、及びより詳細にはRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)タイプの技術を使用して構造化することもできる。
【0054】
好ましくは、逆エマルジョン又は分散体に含有される構造化水溶性ポリマーは、少なくとも2個の不飽和を含むエチレン性モノマーで構造化されている。
【0055】
好ましくは、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の水溶性構造化ポリマーのハギンズ係数(本発明の方法によって得られるポリマーの係数KHと同じ条件下で決定される)は、0.4超、更により好ましくは0.5超、更により好ましくは0.6超である。これは、前述の説明で示した条件下で測定される。
【0056】
別の好ましさによれば、構造化水溶性ポリマーの油中水型逆エマルジョンは、
- 少なくとも1種の構造化水溶性(コ)ポリマーを含む親水性相;
- 親油性相;
- 式(I)の少なくとも1種のモノマーで構成される少なくとも1種の界面ポリマー
を含んでよい。
【0057】
【0058】
(式中、
- R1、R2、R3は独立的に、水素原子、メチル基、カルボン酸基、及びZ-Xからなる群から選択され、
- Zは、C(=O)-O;C(=O)-NH;OC(=O);NH-C(=O)-NH;NH-C(=O)-O;並びに
1~20個の炭素原子を含み、窒素及び酸素から選択される1種又は複数種のヘテロ原子を場合により含む、置換又は非置換の飽和又は不飽和の炭素鎖を含む群から選択され、
- Xは、アルカノールアミド、ソルビタンエステル、エトキシ化ソルビタンエステル、グリセリルエステル、及びポリグリコシドから選択される基であり;Xは、飽和又は不飽和の、直鎖状、分枝状、又は環状、任意選択で芳香族の、炭化水素鎖を含む)
【0059】
式(I)の少なくとも1種のモノマーの重合によって得られる界面ポリマーは、親水性相と親油性相との界面で包囲物を形成する。
【0060】
一般に、親水性相は、親油性相に分散したマイクロメートル単位の小滴の形態をしており、有利には乳化されている。これらの小滴の平均径は、有利には0.01~30μmの間、より有利には0.05~3μmの間である。したがって、界面ポリマーは、各小滴のレベルで親水性相と親油性相との間の界面に配置されることになる。界面ポリマーは、これらの小滴のそれぞれを部分的又は完全に包囲する。平均小滴径は、有利には、当業者の一般的な知識の一部をなす従来技術を使用して、レーザ測定装置で測定される。この目的には、Malvern社のMastersizerタイプの装置を使用することができる。
【0061】
有利には、界面ポリマーは、モノマーの総数に対して、0.0001~10%の間、より有利には0.0001~5%の間、更により有利には0.0001~1%の間の式(I)のモノマーを含む。
【0062】
界面ポリマーは、親水性相を形成する小滴の周りの包囲物を形成する。前述のモノマーに加えて、界面ポリマーは、少なくとも1種の構造剤を含んでよい。構造剤は、有利には、ジアシルアミン類又はジアミン類のメタクリルアミド;ジ、トリ、又はテトラヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル;ジ、トリ、又はテトラヒドロキシ化合物のメタクリル酸エステル;好ましくはアゾ基によって分離されたジビニル化合物;好ましくはアゾ基によって分離されたジアリル化合物;二又は三官能性酸のビニルエステル;二又は三官能性酸のアリルエステル;メチレンビスアクリルアミド;ジアリルアミン;トリアリルアミン;テトラアリルアンモニウムクロリド;ジビニルスルホン;ポリエチレングリコールジメタクリレート;及びジエチレングリコールジアリルエーテルから選択される。
【0063】
ゲル重合
本発明の方法の工程a)の重合は、ラジカル経路によって実施される。これには、UV、アゾ、酸化還元、若しくは熱開始剤を用いたフリーラジカルによる重合、並びに制御ラジカル重合(CRP)技術、又はより詳細にはRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)タイプを使用する重合が含まれる。
【0064】
重合投入物は、水溶性一不飽和エチレン性モノマーの溶液であり、それには重合開始前に従来の重合調節剤が任意選択で補充される。通常の重合調節剤は、例えば、チオグリコール酸、メルカプトアルコール、ドデシルメルカプタン等の硫黄化合物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン等のアミン、及び次亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸塩である。RAFTタイプ重合の場合、-S-CS-官能基を含む移動基を含むもの等、特定の重合調節剤を使用することができる。特に、キサンタート(-S-CS-O-)、ジチオエステル(-S-CS-炭素)、トリチオカルボナート(-S-CS-S-)、又はジチオカルバマート(-S-CS-窒素)のファミリーのこれらの化合物を挙げることができる。キサンタートファミリーの化合物では、O-エチル-S-(1-メトキシカルボニルエチル)キサンタートが、アクリル系モノマーとの適合性から広く使用されている。
【0065】
使用する重合開始剤は、重合条件下でラジカルに解離する任意の化合物、例えば、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ化合物、及び酸化還元触媒でよい。水溶性開始剤の使用が好ましい。場合によっては、様々な重合開始剤の混合物、例えば、酸化還元触媒とアゾ化合物との混合物を使用することが有利である。
【0066】
適切な有機過酸化物及びヒドロ過酸化物は、例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム又はペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化アセチルアセトン、過酸化メチルエチルケトン、ヒドロ過酸化tert-ブチル、ヒドロ過酸化クメン、過ピバル酸tert-アミル、過ピバル酸tert-ブチル、過ネオヘキサン酸tert-ブチル、ペルブト(perbuto)-ブチル酸tert-ブチル、ヘキサン酸エチル、過イソノナン酸tert-ブチル、過マレイン酸tert-ブチル、過安息香酸tert-ブチル、過-3,5,5-トリメチルヘキサン酸tert-ブチル、及び過ネオデカン酸tert-アミルである。
【0067】
適切な過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム等のアルカリ金属過硫酸塩から選択することができる。
【0068】
適切なアゾ開始剤は、有利には、水に溶解し、以下のリスト:2,2'-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレン)二塩酸塩イソブチラミジン、2-(アゾ(1-シアノ-1-メチルエチル))-2-メチルプロパンニトリル、2,2'-アゾビス[2-(2'-ジミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、及び4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)から選択される。前記重合開始剤は、通常の量で、例えば、重合するモノマーに対して0.001~2質量%、好ましくは0.01~1質量%の量で使用する。
【0069】
酸化還元触媒は、酸化成分として、上記の化合物の少なくとも1種、及び還元成分として、例えば、アスコルビン酸、グルコース、ソルボース、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、次亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、又はアルカリ金属、鉄(II)イオン若しくは銀イオンの形態等の金属塩、又はヒドロキシメチルスルホキシル酸ナトリウムを含有する。好ましく使用される酸化還元触媒の還元成分は、モール塩(NH4)2Fe(SO4)2,6H2Oである。重合に使用するモノマーの数に基づいて、一例として、酸化還元触媒系の還元成分を5×10-6~1mol%、酸化還元触媒の酸化成分を5×10-5~2mol%使用することができる。また、酸化還元触媒の酸化成分の代わりに、1種又は複数種の水溶性アゾ開始剤を使用することができる。
【0070】
本発明の方法の工程a)では、重合投入物に対する遊離モノマーの質量全濃度は、10~60%の間、有利には20~55%の間、更により有利には25~50%の間である。
【0071】
この方法の工程a)では、モノマー及び様々な重合添加剤を、例えば、容器中で撹拌しながら、重合させる水性媒体中に溶解させる。この溶液は、重合させる投入物とも呼ばれ、-20℃~50℃の間の開始温度に調整する。有利には、この開始温度は、-5℃~30℃の間、更により有利には0~20℃の間に調整する。
【0072】
本発明の方法の工程a)中に油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の構造化された水溶性ポリマーを添加する場合、重合モノマー及び添加剤の溶解中にそれを添加することができる。したがって、エマルジョン又は逆分散体を重合投入物中に微細に分散させる目的で、撹拌パドルを用いて重合投入物中にそれを混合する。また、混合物をロータ、ロータ/ステータタイプのホモジナイザーに通すことも可能である。
【0073】
構造化ポリマーエマルジョン又は分散体を重合投入物に添加する別の手段は、エマルジョン又は分散体の注入点と反応器との間に静的ミキサーを挿入して、重合反応器に向かう重合投入物にエマルジョンを注入することである。
【0074】
重合投入物から残留酸素を除去するために(逆エマルジョン又は油中分散体の形態の構造化ポリマーに添加剤が含まれているかどうかにかかわらず)、通常、それに不活性ガスを通す。これに適する不活性ガスは、例えば、窒素、二酸化炭素、又はネオン若しくはヘリウム等の希ガスである。重合は、当業者に既知の適切な順序で、開始剤を酸素の不在下で重合させる溶液に導入することによって行われる。開始剤は、水性媒体に可溶な形態で、又は所望により、有機溶媒中の溶液の形態で導入される。
【0075】
重合は、バッチ式又は連続式で行うことができる。バッチ法では、反応器にモノマー溶液、次いで開始剤溶液を充填する。重合が始まるとすぐに、水溶液中のモノマーの濃度及びモノマーの性質等、選択した開始条件に応じて反応混合物が熱くなる。放出される重合熱のために、反応混合物の温度は、例えば、30から180℃、好ましくは40℃から130℃に上昇する。重合は、標準圧力、減圧下、更には高圧下で行うことができる。重合で予想される最高温度が使用する溶媒の混合物の沸点よりも高い場合、高圧での作業が有利な可能性がある。一方、特に、非常に高分子量の生成物の調製中、例えば冷却流体を用いた冷却によって最高温度を下げることが有利な可能性がある。多くの場合、反応混合物を必要に応じて冷却又は加熱することができるように、反応器をジャケットで覆う。重合反応の完了後、得られたポリマーゲルを、例えば反応器の壁を冷却することによって、迅速に冷却することができる。
【0076】
反応の終了時、重合から得られた生成物は、自立するほどの粘性を有する水和ゲルである(したがって、一辺が2.5cmの立方体のゲルは、平らな面に置いたときにその形状を実質上維持する)。このようにして得られたゲルは粘弾性ゲルである。
【0077】
反応が反応器内で行われる場合、反応終了時のゲルの排出を容易にするために、反応器は、有利には、ゲルの表面に不活性ガス又は空気圧を加えることによってゲルを下方に排出させるために逆円錐管形(下向きの円錐)であるか、又は反応器を振動させることによってゲルの塊を排出させるためにロッカーの形であることに留意されたい。
【0078】
本発明の方法の工程b)は、工程a)で得られた水溶性ポリマーゲルを粒状化することで構成される。粒状化は、ゲルを小片に切断することからなる。有利には、これらのゲル片の平均径は、1cm未満、より有利には4~8mmの間である。当業者であれば、最適な粒状化に適した手段を選択する方法を知っているであろう。
【0079】
本発明の方法の粒状化工程b)中に水溶性構造化ポリマーの逆エマルジョン又は油中分散体を添加する場合、それをゲル片の表面に噴霧することによって添加することができる。
【0080】
有利には、工程b)中に、液体形態の0.1%~2.0%の間の界面活性剤を噴霧することができる(工程a)で使用した遊離モノマーの総質量に対する質量%)。
【0081】
方法の工程c)は、ポリマーを乾燥させることにある。乾燥手段の選択は、当業者には通例である。工業的には、乾燥は、有利には、70℃~200℃の間の温度に加熱された空気を使用する流動床又は回転式乾燥機によって行われ、空気温度は、生成物の性質並びに適用する乾燥時間に応じる。乾燥後、水溶性ポリマーは、物理的に粉末状になる。
【0082】
方法の工程d)では、粉末を破砕し、ふるいにかける。粉砕工程では、大きなポリマー粒子をより小さな径の粒子に崩す。これは、2つの硬い面の間で粒子を剪断又は機械的に粉砕することによって行うことができる。当業者に既知の様々なタイプの装置をこの目的に使用することができる。例えば、圧縮ブレードの回転部分によって粒子を粉砕するローターを備えたミル、又は2つの回転シリンダーの間で粒子を粉砕するローラーミルを挙げることができる。ふるい分けの目的は、仕様に応じて、小さすぎる又は大きすぎる中間径の粒子をその後に除去することである。
【0083】
有利には、方法の工程d)中に、固体形態の0.1%~2.0%の間の界面活性剤を添加することができる(工程a)で使用した遊離モノマーの総質量に対する質量%)。
【0084】
本発明の方法は、少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、使用する遊離モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中及び任意選択で粒状化工程b)中に添加する。定義上、遊離モノマーはまだ重合されていない。したがって、これらには、逆エマルジョン又は油中分散体の形態の構造化ポリマーのモノマーは含まれない。
【0085】
好ましくは、少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、関与する遊離モノマーの総質量に対して10~50質量%の間の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中及び任意選択で粒状化工程b)中に添加する。
【0086】
更により好ましくは、少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、関与する遊離モノマーの総質量に対して10~50質量%の間の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中に2/3~3/4の間の割合で及び粒状化工程b)中に1/4~1/3の間の割合で添加する。
【0087】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の構造化水溶性ポリマーを含有する、関与する遊離モノマーの総質量に対して10~30質量%の間の、油中水型逆エマルジョン又は油中分散体の形態の水溶性ポリマーを、重合工程a)中に添加する。
【0088】
有利には、重合工程a)では、少なくとも1種の非イオン性の水溶性一不飽和エチレン性モノマー(有利には10~100mol%の間)及び適切な場合には少なくとも1種のアニオン性又はカチオン性の水溶性不飽和エチレン性モノマーを重合させる。
【0089】
非イオン性、アニオン性、又はカチオン性のモノマーは、好ましくは、逆エマルジョン又は油分散のポリマーに関する前述のリストから選択する。
【0090】
他の好ましさによれば、本発明の方法の工程a)における重合中、重合温度での重合投入物のブルックフィールド粘度は、100センチポアズ未満(ブルックフィールド弾性率:LV1、回転速度:60rpm-1)である。この粘度は、油中水型逆エマルジョン又は水性分散体の形態の構造化ポリマーを重合投入物に添加及び均質化した後に測定した粘度に相当する。
【0091】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、工程a)少なくとも1種の、水溶液に可溶な一不飽和エチレン性モノマーを、ラジカル経路によって、酸化還元開始剤及びアゾ化合物を用いて、0~20℃の間の開始温度で、関与する遊離モノマーの総質量に対して20~30質量%の逆エマルジョンであり、アクリルアミドと、40~90mol%の間の、塩化メチルで四級化したジメチルアミノエチルアクリレートとで構成された、30~60質量%の間のコポリマーを含有し、0.05%未満のメチレンビスアクリルアミドで構造化された、逆エマルジョンの存在下で、重合させる工程であって、重合投入物に対するモノマーの総質量基準での濃度が、25~50%の間であり、逆エマルジョンのハギンズ係数が、ポリマーの質量基準濃度5gL-1で、脱イオン水中、及び温度25℃において0.4超であり、重合温度での重合投入物のブルックフィールド粘度が、100センチポアズ未満(ブルックフィールド弾性率:LV1、回転速度:60rpm-1)である、工程と、工程b)このようにして得られたゲルを、5~10質量%の逆エマルジョン形態のこのポリマーの存在下で粒状化する工程とからなる。
【0092】
本発明の最終態様は、石油及びガス産業、水圧破砕、製紙プロセス、水処理、汚泥脱水、建設、鉱業、化粧品、農業、繊維産業、並びに洗剤においての本発明の方法に従って得られたポリマーの使用に関する。
【0093】
本発明及びそれから得られる利点は、以下の例示的な実施形態からより明確に明らかになるであろう。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
20質量%の逆相エマルジョン形態の構造化ポリマーを重合投入物に添加することによる、四級化アクリルアミド/ジメチルアミノエチルアクリレートコポリマー(Adame Quat)のゲル合成。
2L容のビーカーにおいて、水中50質量%のアクリルアミド113g、水中80質量%のAdame Quat(Adame Quat=塩化メチルで四級化したジメチルアミノエチルアクリレート)773g、水177gを含む水性投入物を室温で調製し、次いで、リン酸を使用してpHを3~4の間に調整する。次いで、この投入物を10℃に冷却した後、デュワーに入れる。投入物に、アゾビスイソブチロニトリル1.5g、並びに41質量%のアクリルアミド/Adame Quatコポリマー(20/80mol%)を含有する逆エマルジョン(EM1)420gを導入する。水相/油相合成物(Exxsol D100)の割合は70/30である。逆エマルジョンのコポリマーは、MBAで架橋されており、ハギンズ係数(ポリマー質量基準濃度5gL-1、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃において)が0.8である。
【0095】
投入物の均質化は、ハンドミキサーを使用して、500rpmの速度で20秒間行う。次いで、モノマー及び逆エマルジョン形態の分枝状ポリマーを含むこの投入物を、窒素バブリングで20分間脱気する。脱気後に測定した粘度は、82cP(ブルックフィールド弾性率:LV1、回転速度:60rpm-1)である。次いで、関与するモノマーの総量に対して表した場合、1.3×10-3mol%の次亜リン酸ナトリウムを投入物に添加し、その後、3.2×10-3mol%の過硫酸ナトリウム、次いで、1.9×10-3mol%のモール塩を連続添加することによって、反応を開始する。反応時間は45分で、最終温度は80℃である。得られたポリマーはゲル形態であり、それは、粒状化し、次いで、70℃の空気流で60分間乾燥させることが可能なテクスチャを有している。次いで、乾燥したポリマーの粒を、1.7mm未満の粒子径を得るために粉砕する。得られた製品は、100%水溶性であり、190万ダルトンの質量平均分子量及び0.69のKH(ポリマー質量濃度5gL-1、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃において)を有する。
【0096】
(実施例2)
20質量%の逆エマルジョン形態の構造化ポリマーを重合投入物に添加することによる、アクリルアミド/Adame QuatコポリマーのRAFTタイプゲル経路による合成。
2L容のビーカーにおいて、水中50質量%のアクリルアミド113g、水中80質量%のAdame Quat773g、水177gを含む水性投入物を室温で調製し、次いで、リン酸を使用してpHを3~4の間に調整する。次いで、この投入物を10℃に冷却した後、デュワーに入れる。投入物に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.5g、並びに実施例1で使用した逆エマルジョン(EM1)420gを導入する。投入物の均質化は、ハンドミキサーを使用して、500rpmの速度で20秒間行う。次いで、モノマー及び逆エマルジョン形態の分枝状ポリマーを含むこの投入物を、窒素バブリングで20分間脱気する。脱気後に測定した粘度は、82cP(ブルックフィールド弾性率:LV1、回転速度:60rpm-1)である。次いで、関与するモノマーの総量に対して表した場合、5.2×10-3mol%の次亜リン酸ナトリウム、並びに5.2×10-4mol%のO-エチル-S-(1-メトキシカルボニルエチル)キサンタート(RAFT移動剤)を投入物に添加し、その後、3.2×10-3mol%の過硫酸ナトリウム、次いで、1.9×10-3mol%のモール塩を連続添加することによって、反応を開始する。反応時間は60分で、最終温度は80℃である。得られたポリマーはゲル形態であり、それは、粒状化し、次いで、70℃の空気流で60分間乾燥させることが可能なテクスチャを有している。次いで、乾燥したポリマーの粒を、1.7mm未満の粒径を得るために粉砕する。得られた製品は、100%水溶性であり、210万ダルトンの質量平均分子量及び0.73のKH(ポリマー質量濃度5gL-1、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃において)を有する。
【0097】
(実施例3)(対比例)
N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)(MBA)を使用する分枝状アクリルアミド/Adame Quatコポリマーのゲル合成
2L容のビーカーにおいて、水中50質量%のアクリルアミド126g、水中80質量%のAdame Quat858g、水534gを含む水性投入物を室温で調製し、次いで、リン酸を使用してpHを3~4の間に調整する。次いで、この投入物を0℃に冷却した後、デュワーに入れる。投入物にアゾビスイソブチロニトリル1.5gを導入し、これを窒素バブリング下で20分間脱気する。バブリング中、関与するモノマーの総量に対して、2.1×10-2mol%の次亜リン酸ナトリウム及び6.6×10-3mol%のMBAを導入する。次いで、温度0℃で、関与するモノマーの総量に対して常に表すと3.4×10-3mol%の過硫酸ナトリウム及び3.4×10-4mol%のモール塩を連続的に添加することによって反応を開始する。反応時間は30分で、最終温度は70℃である。得られたポリマーはゲル形態であり、それは、粒状化し、次いで、70℃の空気流で60分間乾燥させることが可能なテクスチャを有している。次いで、乾燥したポリマーの粒を、1.7mm未満の粒径を得るために粉砕する。得られた製品は、100%水溶性であり、240万ダルトンの質量平均分子量及び0.24のKH(ポリマー質量濃度5gL-1、0.4Nの硝酸ナトリウム水溶液中、pH3.5、及び温度25℃において)を有する。
【0098】
構造化ポリマーを本発明の方法により得た場合(実施例1及び2)、そのKHは0.4超であり、一方、ゲル重合の投入物に構造化剤(MBA)を直接添加した場合、KHは依然として0.3未満である(実施例3:対比例)。