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  • 特許-ビールテイスト飲料及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20240124BHJP
   C12G 3/021 20190101ALI20240124BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240124BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240124BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/021
C12G3/06
A23L2/00 B
A23L2/52
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022025208
(22)【出願日】2022-02-22
(62)【分割の表示】P 2020512967の分割
【原出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2022060410
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】乾 隆子
(72)【発明者】
【氏名】米澤 太作
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518510(JP,A)
【文献】特開2003-313581(JP,A)
【文献】特開2016-123357(JP,A)
【文献】特開平06-030756(JP,A)
【文献】特開2015-092832(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102391911(CN,A)
【文献】シェッファーホッファーグレープフルーツ ボトル [ ドイツ 330ml×24本 ],Amazon,2015年,pp.1-4,[online]、インターネット、URL:https://amzn.asia/d/2w43apt、Amazon.co.jpでの取り扱い開始日2015/3/18、<検索日:2023年4月16日>
【文献】数量限定箱根ビール「バレンシアオレンジ」本日よりスタート!,えれんな ごっそ店長おすすめメニュー,2015年09月21日,p.1,[online]、インターネット、URL:http://gossomenu.blog47.fc2.com/blog-entry-643.html、<検索日:2023年4月16日>
【文献】[新ジャンル/第3のビール]サッポロ ホワイトベルグ [350ml×24本],Amazon,2014年,pp.1-4,[online]、インターネット、URL:https://amzn.asia/d/9CxAKQg、<検索日:2023年4月16日>
【文献】Jose A. Del Rio et al.,Variations of nootkatone and valencene levels during the development of grapefruit,J. Agric. Food Chem. ,1992年,Vol.40, No.9,pp.1488-1490,DOI:10.1021/jf00021a003
【文献】April Elston et al.,Determination of the role of valencene in orange oil as a direct contributor to aroma quality,Flavour Fragr. J. ,2005年,Vol.20,pp.381-386,DOI: 10.1002/ffj.1578
【文献】HAWTHORNE, S. B. et al.,Analysis of flavor and fragrance compounds using supercritical fluid extraction coupled with gas chr,Anal. Chem.,1988年,Vol.60,pp.472-477
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C
A23L
Mintel GNPD
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレンジピール、グレープフルーツピール、ユズピール、レモンピール、ライムピール、ミカンピール、ダイダイピール、カボスピール、シークヮーサーピール、及びキンカンピールからなる群より選択される1種以上を含む植物原料の二酸化炭素抽出物を含有し、バレンセンの含有量が5ppb以上200ppb以下、ヌートカトンの含有量に対するバレンセンの含有量の質量比率が100%以上500%以下、リナロールの含有量に対するリナロールオキサイドの含有量の質量比率が15.5%以下である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記植物原料がオレンジピールを含む、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の消費者の嗜好の多様化にともなって、様々な香味特徴をもつビールテイスト飲料の開発が望まれている。
【0003】
例えば、麦汁等の糖液中に柑橘系植物の果皮を入れて加熱する工程を有することで、柑橘系植物の風味を有するビールテイスト飲料が提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、鮮度の低い風味が付与されるなど風味がうまく付与されないことがあった。
【0005】
本発明の課題は、柑橘系植物の新鮮な風味が付与されたビールテイスト飲料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
[1]柑橘系植物の果皮を含む植物原料の二酸化炭素抽出物を含有する、ビールテイスト飲料、
[2]柑橘系植物の果皮を含む植物原料から二酸化炭素を用いて植物エキスを抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された植物エキスを二酸化炭素から分離する分離工程と、前記分離工程で得られた二酸化炭素抽出物をビールテイスト飲料の製造工程中に添加する添加工程とを含む、ビールテイスト飲料の製造方法、
[3]バレンセンの含有量が5ppb以上である、ビールテイスト飲料、及び
[4] ヌートカトンの含有量に対するバレンセンの含有量の質量比率が10%以上である、ビールテイスト飲料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柑橘系植物の新鮮な風味が付与されたビールテイスト飲料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】調製例1~5で使用した二酸化炭素循環型の装置概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかるビールテイスト飲料は、柑橘系植物の果皮を含む植物原料の二酸化炭素抽出物を含有する。
【0010】
本発明のビールテイスト飲料において柑橘系植物の新鮮な風味が付与されるメカニズムは定かではないが、ビールテイスト飲料中に二酸化炭素抽出物を使用することで、従来のホップから香気成分を抽出させるための煮沸あるいは加熱工程を必要としないことから、酸化物の生成が抑えられ、たとえば、飲料中のリナロールの含有量に対するリナロールオキサイドの含有量の質量比率(リナロールオキサイド/リナロール)が従来法に比べて低い割合になるためと推定する。前記従来法で得られたビールテイスト飲料では、リナロールが酸化されやすく、リナロールの含有量に対するリナロールオキサイドの含有量の質量比率(リナロールオキサイド/リナロール)が高いものであった。これが風味の鮮度を劣化させる一因であると推測される。
【0011】
植物原料は、柑橘系植物の果皮を少なくとも含んでいればよく、例えば、果皮以外に果実、葉、茎、種などを含む原料であってもよいし、柑橘系以外の植物を含む原料であってもよい。
【0012】
柑橘系植物の果皮としては、特に限定されるものではないが、例えば、オレンジピール、グレープフルーツピール、ユズピール、レモンピール、ライムピール、ミカンピール、ダイダイピール、カボスピール、シークヮーサーピール、キンカンピールなどが挙げられる。
【0013】
二酸化炭素抽出物は、柑橘系植物の果皮を含む植物原料から二酸化炭素を抽出溶剤として用いて植物エキスを抽出し、抽出された植物エキスを二酸化炭素から分離することにより得られる。このようにして得られた二酸化炭素抽出物は、前記のとおり、リナロールの含有量に対するリナロールオキサイドの含有量の質量比率(リナロールオキサイド/リナロール)が低いため、ビールテイスト飲料に鮮度劣化が少ない風味を付与できるものと考えられる。
【0014】
また、柑橘系植物の果皮を含む植物原料の二酸化炭素抽出物には、従来の麦汁中に果皮を入れて加熱抽出した場合に比べて、α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセン、リモネンなどのテルペン系炭化水素成分が多く含まれており、ビールテイスト飲料に柑橘系植物らしいジューシーな風味を良好に付与することができると考えられる。
【0015】
植物原料としてオレンジピールを含む場合においては、α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセン、リモネンなどの他、オレンジ様の芳香成分であるバレンセンが従来法に比べて二酸化炭素抽出物中に多く含まれており、ビールテイスト飲料にオレンジ様の風味を良好に付与することができる。
【0016】
二酸化炭素抽出物中のリナロールの含有量に対するリナロールオキサイドの含有量の質量比率(リナロールオキサイド/リナロール)は、柑橘系植物の新鮮な風味を付与する観点から、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。下限値は特に限定されるものではないが、1%以上、1.5%以上であってもよい。本明細書中、リナロールオキサイドは、cis-リナロールオキサイドと、trans-リナロールオキサイドの合計量を指す。
【0017】
二酸化炭素抽出物中のリナロールの含有量は、柑橘系植物の新鮮な風味を付与する観点から、好ましくは4000ppm以上であり、より好ましくは5000ppm以上であり、さらに好ましくは8000ppm以上である。上限値は特に限定されるものではないが、15000ppm以下であってもよい。
【0018】
二酸化炭素抽出物中のリナロールオキサイドの含有量は、柑橘系植物の新鮮な風味を付与する観点から、好ましくは150ppm以下であり、より好ましくは120ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。下限値は特に限定されるものではないが、10ppm以上、50ppmであってもよい。
【0019】
二酸化炭素抽出物中のα-ピネン、β-ピネン、β-ミルセン、及びリモネンの合計は、柑橘系植物のフレッシュな風味を良好に付与する観点から、好ましくは500000ppm以上であり、より好ましくは600000ppm以上であり、さらに好ましくは900000ppm以上である。上限値は特に限定されるものではないが、950000ppm以下であってもよい。
【0020】
植物原料としてオレンジピールを含む場合において、二酸化炭素抽出物中のバレンセンの含有量は、オレンジ様のジューシーな風味を良好に付与する観点から、エキス濃度で好ましくは70000ppm以上であり、より好ましくは100000ppm以上であり、さらに好ましくは150000ppm以上である。上限値は特に限定されるものではないが、250000ppm以下であってもよい。
【0021】
植物原料としてオレンジピールを含む場合において、二酸化炭素抽出物中のリナロールの含有量に対するバレンセンの含有量の質量比率(バレンセン/リナロール)は、オレンジ様の風味をバランス良く付与する観点から、好ましくは1000%以上であり、より好ましくは1500%以上であり、さらに好ましくは1700%以上であり、さらに好ましくは1800%以上である。上限値は特に限定されるものではないが、2000%以下とすることができる。
【0022】
植物原料としてオレンジピールを含む場合において、本発明にかかるビールテイスト飲料は、オレンジ様の風味を良好に付与する観点から、ビールテイスト飲料中のバレンセンの含有量が、好ましくは5ppb以上であり、より好ましくは20ppb以上であり、さらに好ましくは30ppb以上である。上限値は特に限定されるものではないが、200ppb以下とすることができる。
【0023】
植物原料としてオレンジピールを含む場合において、二酸化炭素抽出物中のヌートカトンの含有量に対するバレンセンの含有量の質量比率(バレンセン/ヌートカトン)は、より強いオレンジのジューシー感の観点から、好ましくは1000%以上であり、より好ましくは5000%以上であり、さらに好ましくは9000%以上であり、さらに好ましくは10000%以上である。上限値は特に限定されるものではないが、20000%以下とすることができる。
【0024】
植物原料としてオレンジピールを含む場合において、ビールテイスト飲料中のヌートカトンの含有量に対するバレンセンの含有量の質量比率(バレンセン/ヌートカトン)は、より強いオレンジのジューシー感の観点から、好ましくは10%以上であり、より好ましくは100%以上であり、さらに好ましくは200%以上であり、さらに好ましくは400%以上である。上限値は特に限定されるものではないが、500%以下とすることができる。ビールテイスト飲料中の上記二成分の比率は、二酸化炭素抽出物中の両者の比率と大きく異なるが、これは、醸造工程における両成分のビールへの移行率や蒸散率が異なるためである。
【0025】
本発明のビールテイスト飲料の製造方法は、柑橘系植物の果皮を含む植物原料から二酸化炭素を用いて植物エキスを抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された植物エキスを二酸化炭素から分離する分離工程と、前記分離工程で得られた二酸化炭素抽出物をビールテイスト飲料の製造工程中に添加する添加工程とを含む。
【0026】
抽出工程では、抽出槽に投入された植物原料に抽出溶剤として二酸化炭素を接触させ、植物原料から二酸化炭素中に植物エキスを抽出する。ここで、二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素であってもよいし、液体の二酸化炭素であってもよい。
【0027】
抽出工程に供される植物原料については前記のとおりである。
【0028】
抽出工程におけるS/F(原料に対する二酸化炭素の質量比)は、収量の観点から、好ましくは20~50であり、より好ましくは30~50であり、さらに好ましくは40~50である。
【0029】
抽出工程における二酸化炭素密度は、収量の観点から、好ましくは200~1000kg/mであり、より好ましくは300~1000kg/mであり、さらに好ましくは700~1000kg/mである。
【0030】
抽出工程における二酸化炭素の圧力は、収量の観点から、好ましくは6~50MPaであり、より好ましくは6~30MPaであり、さらに好ましくは6.5~9.0MPaである。抽出工程における二酸化炭素の圧力は、抽出槽内の圧力を指す。
【0031】
抽出工程における温度は、収量と質の観点から、好ましくは10~60℃であり、より好ましくは10~55℃であり、さらに好ましくは10~50℃である。抽出工程における温度は、抽出槽内の温度を指す。
【0032】
抽出時間は、特に限定されるものではないが、収量の観点から、好ましくは1.0時間以上であり、より好ましくは2.0時間以上であり、さらに好ましくは3.0時間以上である。
【0033】
抽出工程に使用される抽出槽は公知のものを使用することができ、例えば、外部を完全に遮断したステンレス製圧力容器などを使用することができる。
【0034】
分離工程では、分離槽において二酸化炭素の圧力を低下させる又は温度を上げるなどして、二酸化炭素の密度を小さくして溶剤としての能力を低下させることによって、抽出工程で得られた植物エキスを二酸化炭素から分離する。
【0035】
分離工程における二酸化炭素の圧力は、収量の観点から、好ましくは4.0~6.0MPaであり、より好ましくは4.0~5.0MPaであり、さらに好ましくは4.5~4.8MPaである。分離工程における二酸化炭素の圧力は、分離槽内の圧力を指す。
【0036】
分離工程における温度は、収量の観点から、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下であり、さらに好ましくは25℃以下であり、さらに好ましくは20℃以下である。下限値は特に限定されるものではないが、例えば、0℃以上とすることができる。分離工程における温度は、分離槽内の温度を指す。
【0037】
分離工程に使用される分離槽は公知のものを使用することができ、例えば、ステンレス製容器などを使用することができる。
【0038】
分離工程で得られた二酸化炭素抽出物の好ましい成分量や比率については、前記のとおりである。
【0039】
添加工程では、二酸化炭素抽出物をビールテイスト飲料の製造工程中に添加する。分離工程で得られた二酸化炭素抽出物は、水層とオイル層の混合物として得られるが、これをそのまま使用してもよいし、遠心分離などによりアロマが存在するオイル層のみを取得して使用してもよい。
【0040】
添加工程において、二酸化炭素抽出物の添加はビールテイスト飲料の製造工程中であれば、任意の時期に添加することができるが、発酵工程を有する場合には、柑橘系植物のジューシーな風味を良好に付与する観点から、発酵工程後に添加することが好ましい。本発明において、ビールテイスト飲料は、アルコールを含有するビールテイスト飲料であっても、ノンアルコールビールテイスト飲料であってもよく、それぞれ公知の製造方法で製造することができる。以下にそれぞれの場合における製造方法を例示するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0041】
本発明にかかるビールテイスト飲料の一態様として、アルコールを含有するビールテイスト飲料が挙げられるが、分離工程で得られた二酸化炭素抽出物をビールテイスト飲料の製造工程中に添加する以外は、一般的なビールテイスト飲料と同様にして製造できる。また、このときのアルコールとはエタノールを指し、エタノール含量としては容量比で1%~10%が好ましいが、特に限定されるものではない。さらに、該ビールテイスト飲料に含まれるアルコール分の由来としては、醗酵、非醗酵に限定されるものではない。以下に、一般的なビールテイスト飲料の製造工程を示す。一般的なビールテイスト飲料は麦芽を原料として使用するものとしないものとがあり、以下のように製造することができる。
【0042】
麦芽を原料として使用して製造されるアルコールを含有するビールテイスト飲料は、まず、麦芽等の麦の他、必要に応じて他の穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料及び水を含む混合物に、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、糖化液とする。必要に応じてホップや苦味料などを糖化液に加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。この糖化液の代替として、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。醗酵・貯酒工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。得られた醗酵液を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のビールテイスト飲料を得る。このとき、前記各工程においてビールテイスト飲料としてより好ましい風味を得るために、脂肪酸エステルや酢酸エチル、酢酸イソアミルといった香気成分の添加を充填までのどの工程で行ってもよい。前記各工程において二酸化炭素抽出物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、成分移行率の観点から、貯酒ろ過前工程において添加することが好ましい。
【0043】
麦芽を原料として使用せずに製造されるアルコールを含有するビールテイスト飲料は、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液とする。該液糖溶液は、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。この糖化液の代替として、麦芽以外の原料を用いたエキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。醗酵・貯酒工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。得られた醗酵液を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のビールテイスト飲料を得る。このとき、前記各工程においてビールテイスト飲料としてより好ましい風味を得るために、脂肪酸エステルや酢酸エチル、酢酸イソアミルといった香気成分の添加を充填までのどの工程で行ってもよい。前記各工程において二酸化炭素抽出物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、成分移行率の観点から、貯酒ろ過前工程において添加することが好ましい。
【0044】
非醗酵かつアルコールを含有するビールテイスト飲料は、麦芽を使用する、しないに限らず、原料用アルコールなどを加えることにより最終製品のアルコール分を調整したものでもよい。原料用アルコールの添加は、糖化工程から充填工程までのどの工程で行ってもよい。前記各工程においてビールテイスト飲料としてより好ましい風味を得るために、脂肪酸エステルや酢酸エチル、酢酸イソアミルといった香気成分の添加を充填までのどの工程で行ってもよい。前記各工程において二酸化炭素抽出物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、成分移行率の観点から、貯酒ろ過前工程において添加することが好ましい。
【0045】
本発明にかかるビールテイスト飲料の一態様として、ノンアルコールビールテイスト飲料が挙げられるが、分離工程で得られた二酸化炭素抽出物をビールテイスト飲料の製造工程中に添加する以外は、一般的なノンアルコールビールテイスト飲料と同様にして製造できる。以下に、一般的な非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料の製造工程を下記に示す。酵母による発酵工程を有さないことにより、ノンアルコールビール等のノンアルコールビールテイスト飲料を容易に製造することができる。一般的な非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料は麦芽を原料として使用するものとしないものとがあり以下のように製造することができる。
【0046】
麦芽を原料として使用して製造されるノンアルコールビールテイスト飲料は、まず、麦芽等の麦の他、必要に応じて他の穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料及び水を含む混合物に、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、糖化液とする。必要に応じてホップや苦味料などを糖化液に加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。この糖化液の代替として、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。煮沸後、得られた麦汁を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のノンアルコールビールテイスト飲料を得る。前記各工程においてビールテイスト飲料としてより好ましい風味を得るために、脂肪酸エステルや酢酸エチル、酢酸イソアミルといった香気成分の添加を充填までのどの工程で行ってもよい。前記各工程において二酸化炭素抽出物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、成分移行率の観点から、貯酒ろ過前工程において添加することが好ましい。
【0047】
麦芽を原料として使用しないノンアルコールビールテイスト飲料を製造する場合には、まず、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液とする。該液糖溶液は、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。煮沸後の液糖溶液に対して、炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のノンアルコールビールテイスト飲料を得る。前記各工程においてビールテイスト飲料としてより好ましい風味を得るために、脂肪酸エステルや酢酸エチル、酢酸イソアミルといった香気成分の添加を充填までのどの工程で行ってもよい。前記各工程において二酸化炭素抽出物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、成分移行率の観点から、貯酒ろ過前工程において添加することが好ましい。
【0048】
本明細書における「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、ビール風味の炭酸飲料を全て包含する。このうち、「ノンアルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール度数が1%未満のビールテイスト飲料であり、好ましくは、アルコールを実質的に含まない。ここで、アルコールを実質的に含まない態様の飲料は、検出できない程度の極微量のアルコールを含有する飲料を除くものではない。アルコール度数が四捨五入により0.0%となる飲料、中でも、アルコール度数が四捨五入により0.00%となる飲料は、ノンアルコールビールテイスト飲料に包含される。本発明のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、ノンアルコールのビールテイスト飲料、ビールテイストの清涼飲料などが含まれる。なお、ここでの「アルコール度数(アルコール含有量)」はエタノールの含有量を意味し、脂肪族アルコールは含まれない。
【0049】
本発明にかかるビールテイスト飲料のアルコール度数は、飲料中のアルコール分の含有量(v/v%)を意味し、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール度が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。
【0050】
本発明にかかるビールテイスト飲料に、酒感を付与する観点から、脂肪族アルコールを添加してもよい。脂肪族アルコールとしては、公知のものであれば特に制限されないが、炭素数4~5の脂肪族アルコールが好ましい。本発明において、好ましい脂肪族アルコールとしては、炭素数4のものとして、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール等が、炭素数5のものとして、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の組み合せで用いることができる。炭素数4~5の脂肪族アルコールの含有量は好ましくは0.0002~0.0007質量%であり、より好ましくは0.0003~0.0006質量%である。本明細書において、脂肪族アルコールの含有量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法を用いて測定することができる。
【0051】
(カロリー)
本発明にかかるビールテイスト飲料のうち、ノンアルコールビールテイスト飲料については、近年の低カロリー嗜好に合わせて、低カロリーであることが望ましい。従って、本発明にかかるビールテイスト飲料のカロリー数は、好ましくは5kcal/100mL未満、より好ましくは4kcal/100mL未満、更に好ましくは3kcal/100mL未満である。
【0052】
本発明にかかるビールテイスト飲料に含まれるカロリー数は、基本的に健康増進法に関連して公表されている「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」に従って算出する。すなわち、原則として、定量した各種栄養成分の量に、それぞれの成分のエネルギー換算係数(タンパク質:4kcal/g、脂質:9kcal/g、糖質:4kcal/g、食物繊維:2kcal/g、アルコール:7kcal/g、有機酸:3kcal/g)を乗じたものの総和として算出することができる。詳細は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」を参照されたい。
【0053】
本発明にかかるビールテイスト飲料に含まれる各栄養成分量の具体的な測定手法は、健康増進法「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」に記載の各種分析法に従えばよい。または、財団法人 日本食品分析センターに依頼すれば、このような熱量及び/又は各栄養成分量を知ることができる。
【0054】
(糖質)
本発明にかかるビールテイスト飲料に含まれる糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、アルコール分及び水分を除いたものをいう。また、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量を控除することにより算定される。この場合に、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。具体的には、タンパク質の量は窒素定量換算法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法またはレーゼゴットリーブ法で測定し、食物繊維の量は高速液体クロマトグラフ法またはプロスキー法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法または硫酸添加灰化法で測定し、水分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧過熱乾燥法、常圧加熱乾燥法またはプラスチックフィルム法で測定する。
【0055】
本発明にかかるビールテイスト飲料は、近年の低糖質嗜好に合わせて、低糖質であることが望ましい。従って、本発明にかかるビールテイスト飲料の糖質の含有量は、好ましくは0.5g/100mL未満、より好ましくは0.4g/100mL以下、更に好ましくは0.3g/100mL以下である。また、下限は特に設定されないが、通常、0.1g/100mL程度であり、例えば、0.15g/100mL以上であっても、0.2g/100mL以上であってもよい。
【0056】
(酸味料)
本発明にかかるビールテイスト飲料において使用される酸味料としては、クエン酸、乳酸、リン酸、及びリンゴ酸からなる群より選ばれる1種以上の酸を用いることが好ましい。また、本発明においては、前記酸以外の酸として、コハク酸、酒石酸、フマル酸および氷酢酸等も用いることができる。これらは食品に添加することが認められているものであれば制限なく用いることができる。本発明においては、まろやかな酸味を適切に付与する観点から乳酸と、やや刺激感のある酸味を適切に付与する観点からリン酸との組み合わせを用いることが好ましい。
【0057】
酸味料の含有量は、本発明にかかるビールテイスト飲料中、クエン酸換算で、ビールテイスト感の付与の観点から、200ppm以上が好ましく、550ppm以上がより好ましく、700ppm以上がさらに好ましく、また、酸味の観点から、15000ppm以下が好ましく、5500ppm以下がより好ましく、2000ppm以下がさらに好ましい。従って、本発明において、酸味料の含有量は、クエン酸換算で、200ppm~15000ppm、好ましくは550ppm~5500ppm、より好ましくは700ppm~1500ppmなどの好適範囲が挙げられる。なお、本明細書において、クエン酸換算量とは、クエン酸の酸味度を基準として各酸味料の酸味度から換算される量のことであり、例えば、乳酸100ppmに相当するクエン酸換算量は120ppm、リン酸100ppmに相当するクエン酸換算量は200ppm、リンゴ酸100ppmに相当するクエン酸換算量は125ppmとして換算する。
【0058】
ビールテイスト飲料中の酸味料の含有量については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により分析して算出されたものを指す。
【0059】
(ホップ)
本発明にかかるビールテイスト飲料においては、原料の一部にホップを用いることができる。香味がビールに類似する傾向にあることから、原料の一部にホップを用いることが望ましい。ホップを使用する際には、ビール等の製造に使用される通常のペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを、所望の香味に応じて適宜選択して使用することができる。また、イソ化ホップ、還元ホップなどのホップ加工品を用いてもよい。本発明にかかるビールテイスト飲料に使用されるホップには、これらのものが包含される。また、ホップの添加量は特に限定されないが、典型的には、飲料全量に対して0.0001~1重量%程度である。
【0060】
(その他の原料)
本発明にかかるビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、その他の原料を用いてもよい。例えば、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、苦味料、香料、酵母エキス、カラメル色素などの着色料、大豆サポニンやキラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーンや大豆などの植物タンパク質およびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、食物繊維やアミノ酸などの調味料、アスコルビン酸等の酸化防止剤を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。
【0061】
香料を添加する場合、香料中にリナロール、リナロールオキサイド、α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセン、リモネン、バレンセンが含まれている場合は、ビールテイスト飲料中のこれらの含有量は、二酸化炭素抽出物由来のものとの合計量である。
【0062】
かくして本発明にかかるビールテイスト飲料が得られる。本発明にかかるビールテイスト飲料のpHは、飲料の風味を良好にする観点から、3.0~5.0であり、3.5~4.5が好ましく、さらに好ましくは3.5~4.0である。
【0063】
(容器詰飲料)
本発明にかかるビールテイスト飲料は、容器詰めとすることができる。容器の形態は何ら制限されず、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
【実施例
【0064】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0065】
二酸化炭素抽出物の調製例1~5
図1に示す二酸化炭素循環型の装置を用いて、オレンジピールの粉砕物を原料として表1に記載の条件にて抽出を行った。得られた抽出物から遠心分離によりオイル層のみを取得しオレンジピール抽出物とした。結果を表1に示す。なお、表1における抽出オイル平均重量は、各試験条件にて3回試験を行い、得られたオイル層の平均重量を示す。
【0066】
オレンジピール抽出物の成分分析
二酸化炭素抽出物の調製例で得られたオレンジピール抽出物における特定の成分についての定量は、元原料一定重量あたりから抽出された二酸化炭素抽出物重量を計り取り、適宜エタノールおよびジクロロメタンにて希釈しGC-MS(SIM法)により定量分析した。カラムはVF-WAXms(アジレント社製:60m×250μm×0.5μm)を使用した。希釈倍率から、成分量(ppm)を算出した。結果を表1に示す。
【0067】
また、前記「オレンジピール抽出物の成分分析」と同様にして算出した、オレンジピール抽出物における特定の成分の質量比率(%)について、文献値で示される水蒸気蒸留で得られた抽出物の濃度から質量比率を算出し対比を行った。結果を表1に示す。「文献値」は、オレンジピールについて水蒸気蒸留を行った結果を開示する文献「International Food Research Journal 18(4): 1275-1282 (2011)」のTable3に記載された値を用いた。
【0068】
【表1】
【0069】
表1において、調製例1、3~5と調製例2との対比から明らかなように、調製例2ではリナロールに対するリナロールオキサイドの質量比率(リナロールオキサイド/リナロール)が低く、またリナロールに対するバレンセンの質量比率(バレンセン/リナロール)が高いものであった。一方で、分離温度の低い調製例1、3~5では分離温度の高い調製例2の9~17倍ものオイルが得られており、収量の観点からは格段に優れるものであった。また、分離温度の低い調製例1、3~5では分離温度の高い調製例2に比べて、ヌートカトンに対するバレンセンの質量比率(バレンセン/ヌートカトン)が高く、調製例2より強いオレンジのジューシー感が得られた。
また、水蒸気蒸留(文献値)と二酸化炭素抽出(各調製例)との対比から、二酸化炭素抽出ではリナロールに対するリナロールオキサイドの質量比率(リナロールオキサイド/リナロール)が低く、またリナロールに対するバレンセンの質量比率(バレンセン/リナロール)や、ヌートカトンに対するバレンセンの質量比率(バレンセン/ヌートカトン)が高いものであったことがわかる。
【0070】
実施例1~4
評価液の調製
20mMクエン酸緩衝液(pH5.3)100gを200ml容2口枝付きフラスコに計りとり、共通球入冷却器(20℃)を設置し、100℃まで加熱した。ここに表2に示すように、粉末重量(原料)0.2g相当の調製例1、3~5のオレンジピール抽出物を添加し、20分間保持した。その後、すぐに氷冷し、加熱により蒸発した水分量を計量にて算出し、その分の水を加えて加熱前の重量に戻した。さらにポアサイズ0.45μmのディスクフィルターにてろ過し、ろ液を得た。これを実施例1~4の評価液とした。
【0071】
比較例1
評価液の調製
20mMクエン酸緩衝液(pH5.3)100gを200ml容2口枝付きフラスコに計りとり、共通球入冷却器(20℃)を設置し、100℃まで加熱した。ここにオレンジピールの粉砕物0.2gを投入し、すぐにヒーターを切って、20分間保持した。その後、すぐに氷冷し、加熱により蒸発した水分量を計量にて算出し、その分の水を加えて加熱前の重量に戻した。さらにポアサイズ0.45μmのディスクフィルターにてろ過し、ろ液を得た。これを比較例1の評価液とした。
【0072】
評価液の官能評価
実施例1~4、比較例1の評価液を官能用のグラスに注ぎ、オレンジ様のジューシーな香りと、フレッシュ感について以下の基準でスコア付けを行った。いずれの評価も8人で行い平均点を算出した。結果を表2に示す。
0:まったく感じない
1:かすかに感じる
2:やや感じる
3:明確に感じる
4:強く感じる
5:非常に強く感じる
【0073】
評価液の成分分析
各評価液に含まれる成分の定量は、固相抽出による濃縮とGC-MS(SIM法)により行った。各評価液2.0gに3-ヘプタノールを終濃度50ppbとなるよう添加し、固相MonoTrap DCC18(ジーエルサイエンス社製)を1枚添加し、30分浸透させた。MonoTrapを取り出し、MonoTrap抽出専用カップにジクロロメタン200μLを加え、5分間超音波照射した。ジクロロメタン溶液をGCバイアルに回収し、GC-MS(SIM法)にて定量分析を行った。カラムはVF-WAXms(アジレント社製:60m×250μm×0.5μm)を使用した。各評価液の成分定量結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
二酸化炭素抽出物を添加した実施例1~4の評価液は、クエン酸緩衝液中に果皮を入れて加熱抽出した比較例1の評価液と比較して、オレンジ様のジューシーな香りが得られており、且つフレッシュ感にも優れるものであった。なお、各実施例、比較例では、模擬液を使用して評価したが、ビールテイスト飲料においても同様の評価を得ることができる。
【0076】
ビールテイスト飲料の調製および官能評価
麦芽を仕込釜に投入し、糖化を行なわせた後、穀皮等を濾過により取り除いて麦汁を得た。次いで得られた麦汁にホップエキスおよびホップペレットを添加して煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除いて、清澄麦汁を得た。次いで、前記で得られた清澄麦汁に酵母を添加して発酵を行なわせた。貯酒を経た濾過後ビールに、各調製例で得られた二酸化炭素抽出物を添加し、炭酸ガス圧を調整後、瓶詰めしたものを官能評価した。その結果、明らかなオレンジピール由来のフレッシュな香りとオレンジ様のジューシーな風味を得ることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、柑橘系植物の香味成分を良好に付与できるビールテイスト飲料及びその製造方法を提供するものであり、嗜好品として新たなテイストを提供できる。
【符号の説明】
【0078】
1 抽出槽
2 蒸発器
3 分離槽
4 凝縮器
5 貯蔵タンク
6 冷却器
7 高圧ポンプ
8 熱交換器
図1