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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】改良ルミネッセントコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240124BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240124BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20240124BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20240124BHJP
   F21V 3/08 20180101ALI20240124BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240124BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240124BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240124BHJP
   H05B 33/20 20060101ALI20240124BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20240124BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240124BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240124BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/02 Z
C09K11/66
C09K11/74
F21V3/08
F21V9/32
H05B33/10
H05B33/14 Z
H05B33/20
H10K50/115
H10K59/10
H10K71/12
H10K85/10
H10K85/50
F21Y115:10
F21Y115:15
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079324
(22)【出願日】2022-05-13
(65)【公開番号】P2022188747
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】21178560
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン アルベルト リュヒンガー
(72)【発明者】
【氏名】マレク オスザイツァ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ローアー
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリア ブレア
(72)【発明者】
【氏名】カーリン フライシュマン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/244046(WO,A1)
【文献】特開2020-045491(JP,A)
【文献】国際公開第2019/202313(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111471351(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/02
C09K 11/66
C09K 11/74
F21V 3/08
F21V 9/32
H05B 33/10
H05B 33/14
H05B 33/20
H10K 50/115
H10K 59/10
H10K 71/12
H10K 85/10
H10K 85/50
F21Y 115/10
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料組成物(1)を含むルミネッセントコンポーネント(4)であって、
前記組成物(1)は、固体マトリックス(14)中に埋め込まれた第1のルミネッセント結晶(11)を含み;
前記ルミネッセント結晶(11)は、
- 励起に応答して緑色スペクトルの光を放出し、
- 下記式(I)のペロブスカイト結晶構造を有するものであり:
[M (I)
(式中、
は、1又は2種以上の有機カチオンを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
は、Ge、Sn、Pb及びBiからなる群から選択された1又は2種以上の金属を表し、
Xは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
が存在するか、あるいは、M及びAが存在する)
前記固体マトリックス(14)は、
- マトリックス材料としてのポリマー(P1)又は小分子(SM1)と、
- 前記マトリックス材料中に分配された金属Mであって、Znである金属Mと、
- 界面活性剤(S1)と、
を含み、
前記固体材料組成物(1)中の総モル比M:Mが、ICP-MS又はICP-OESにより決定した場合に0.3:1~20:1であり、
前記界面活性剤(S1)は、ルミネッセント結晶(11)の表面に物理的又は化学的に付着している、
ルミネッセントコンポーネント。
【請求項2】
前記ルミネッセント結晶(11)がFAPbBr(式中、FAはホルムアミジニウムを表す。)である、請求項1に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項3】
個々のルミネッセント結晶(11)内のM:Mのモル比がTEM-EDXにより決定した場合に、0.5未満:1である、請求項1~2のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項4】
が前記マトリックス材料(14)中に均質に分布しており;及び/又は
が、遊離イオン;又は錯イオンもしくはイオンクラスターとして存在し、対応するアニオンYが、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、硫化物イオン、4~20個の炭素原子を有するカルボン酸イオン及びキレート形成アニオンから選択される、請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項5】
以下の1つ以上を満たす、請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント:
- TEM-EDX及び/又はICP-MSにより決定した場合に、固体マトリックス材料(14)中のM:固体材料組成物(1)中のMの比が0.3:1~20:1であること、
- 固体マトリックス材料(14)中のMの含有量は、TEM-EDXにより決定した場合に1000ppm以下であること、及び
- 前記固体材料組成物(1)中のX:Mのモル比は、ICP-MS又はICP-OESにより決定した場合に、4超:1であること。
【請求項6】
前記固体マトリックス(14)は、金属Mに加えて、
- ポリマー(P1)及び界面活性剤(S1)を含む;又は
- 低分子(SM1)及び界面活性剤(S1)を含む、
請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項7】
シート状に構成されており、厚さが1~500ミクロンであり、長さが厚さの少なくとも10倍を超え、幅が厚さの少なくとも10倍を超えるである、請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項8】
- 固体材料組成物(1)からなる;もしくは
- 固体材料組成物(1)と1又は2つ以上のバリヤー層(5、51、52)とを含む;又は
- 固体材料組成物(1)の第1の側に配置された基材(3)と、任意選択的に、前記組成物(1)の第1の側とは反対側の第2の側に配置されたバリヤー層(5、51、52)とを含む、
請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネントを含む自立フィルム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネントを含む画素。
【請求項10】
発光デバイスであって、
- 請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント(4)、及び
- 青色光を放出するための光源、
を含み、
前記光源が、前記ルミネッセントコンポーネント(4)を励起するために配置されているか、
あるいは、
- 請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント(4)、及び
- 少なくとも2つの電極、
を含み、
前記電極が、電流によって前記ルミネッセントコンポーネント(4)を励起するように適合されている、発光デバイス。
【請求項11】
下記のものからなる群から選択される、請求項10に記載の発光デバイス:
- 照明デバイス;及び
- ディスプレイ。
【請求項12】
下記のもの:
〇 下記式(I)のルミネッセント結晶:
[M (I)
(式中、
は、1又は2種以上の有機カチオンを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
は、Ge、Sn、Pb及びBiからなる群から選択された1又は2種以上の金属を表し、
Xは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する)、及び
〇 下記のものから選ばれる液体:
- 有機溶媒;もしくは
- 第1のポリマーP1のモノマーであって、有機溶媒を含まないもの;もしくは
- 有機溶媒と第1のポリマーP1のモノマー;又は
- 有機溶媒と、小分子SM1、もしくは、ポリマーP1のモノマーを含まないポリマーP1;及び
〇 任意選択的に、1種又は2種以上の界面活性剤;
を含む液体組成物であって、
前記組成物が、さらに、金属Mを含み、
- Mは、Znであり;及び
- モル比M:Mは、0.3:1~20:1であること、
を特徴とする、液体組成物。
【請求項13】
イオン性の形態又は錯化した形態で存在する、請求項12に記載の液体組成物。
【請求項14】
がハロゲン化物の形態で存在する、請求項12に記載の液体組成物。
【請求項15】
以下のステップを含み、それによって前記液体組成物を得る、請求項12~14のいずれか一項に記載の液体組成物の製造方法:
(a)下記式(I)のルミネッセント結晶と、希釈剤と、任意選択的に界面活性剤とを含む懸濁液を調製し、提供するステップ:
[M (I)
(式中、
は、1又は2種以上の有機カチオンを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
は、Ge、Sn、Pb及びBiからなる群から選択された1又は2種以上の金属を表し、
Xは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はA のいずれか、あるいは、M 及びA が存在する)
(b)Mと、溶媒と、界面活性剤とを含む溶液を調製し、提供するステップ;
(c)(a)の懸濁液と(b)の溶液とを組み合わせて、改質された懸濁液を得るステップ;及び
(d)任意選択的に、ポリマーP1を形成するように適合されたモノマー、又は、小分子SM1を加え、任意選択的に溶媒を除去するステップ。
【請求項16】
下記(x)~(z)のステップ又は下記(aa)~(bb)のステップを含む、請求項1又は2に記載のルミネッセントコンポーネント(4)の製造方法:
ポリマー(P1)のモノマーの場合:
ルミネッセントコンポーネント(4)を得るために、
(x)ポリマー(P1)のモノマーを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の液体組成物を提供するステップ;
(y)前記液体組成物で基材をコーティングし、任意選択的に溶媒を除去するステップ;及び
(z)前記液体組成物を硬化させるステップ;
あるいは、
小分子(SM1)又はポリマー(P1)の場合:
ルミネッセントコンポーネント(4)を得るために、
(aa)小分子(SM1)又はポリマー(P1)と溶媒とを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の液体組成物を提供するステップ;及び
(bb)前記液体組成物で基材をコーティングし、溶媒を除去するステップ。
【請求項17】
発光デバイスであって、
- 請求項8に記載の自立フィルム、及び
- 青色光を放出するための光源、
を含み、
前記光源が、前記自立フィルムを励起するために配置されている、
発光デバイス。
【請求項18】
発光デバイスであって、
- 少なくとも1つの請求項9に記載の画素、及び
- 青色光を放出するための光源、
を含み、前記光源が、前記画素を励起するために配置されているか、
あるいは、
- 少なくとも1つの請求項9に記載の画素、及び
- 少なくとも2つの電極、
を含み、
前記電極が、電流によって前記画素を励起するように適合されている、
発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルミネッセント結晶(luminescent crystals)(LC)、それを含むコンポーネント及びデバイスの分野に関する。特に、本発明は、ルミネッセントコンポーネント、かかるコンポーネントを含む発光デバイス、ルミネッセントコンポーネントの使用、かかるコンポーネントにおける特定の金属の使用、並びに、LCとかかる金属とを含む液体組成物の製造方法、ルミネッセントコンポーネントの製造方法、及び発光デバイスの製造方法を提供する。これらのルミネッセントコンポーネントは、優れた性能及び安定性を示す。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/254236号は、第2のポリマーによって封入された第1のポリマー中に埋め込まれたペロブスカイト結晶を含むルミネッセントコンポーネントを開示している。このルミネッセントコンポーネントは、発光デバイスの高度な応用に適しており、優れた性能及び安定性を示す。しかし、このデバイスは適しているが、Pbなどの重金属の含有量が高いという点で不利であると考えられる。
【0003】
代わりのコンポーネントやデバイスを提供する必要性が常に存在する。特に、重金属の含有量が低減されたコンポーネントやデバイスを提供する必要性があり、特に、公知のコンポーネントやデバイスの性能と安定性をともに維持するようなコンポーネントやデバイスを提供することが必要とされている。本発明は、かかる要求に対処するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルミネッセントコンポーネント、特にペロブスカイト構造のLCを含むものは知られており、照明デバイスに使用されている。これらのルミネッセントコンポーネント及び照明デバイスは、多くの用途に適しているが、特に高温高湿や青色光照射の観点から、安定性に欠けていることが判明した。さらに、比較的高い濃度の重金属も不利であると考えられる。これらの欠点を軽減する試みは、製造が困難な及び/又は高価なコンポーネントの追加を招くため、大規模生産には不向きであり、一部しか成功していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、最新技術のこれらの欠点の少なくともいくつかを軽減することである。特に、本発明の1つの目的は、高発光性であると同時に、改善された安定性、特に温度及び湿度並びに青色光線に対して改善された安定性を示す、改良されたルミネッセントコンポーネントを提供することである。さらなる目的は、新規な照明デバイス、並びにかかるコンポーネント及びデバイスの製造方法、特に商業生産に適した製造方法を提供することである。
【0006】
これらの目的は、請求項1に規定されるルミネッセントコンポーネント(4)、請求項11に規定される照明デバイス、請求項12に規定される液体組成物(「インク」)、並びに請求項14及び15に規定される製造方法によって達成される。本発明のさらなる態様は、明細書及び独立請求項に開示されており、好ましい実施形態は、明細書及び従属請求項に開示されている。本発明は、特に、以下を提供する:
・ルミネッセントコンポーネント及びその使用(第1の態様);
・かかるコンポーネントを含む発光デバイス(第2の態様);
・ルミネッセントコンポーネントの製造に好適である液体組成物(第3の態様);及び
・液体組成物、ルミネッセントコンポーネント及びデバイスの製造方法(第4の態様)。
【0007】
本発明を以下で詳細に説明する。本明細書に提示/開示する様々な実施形態、選好性及び範囲は、自在に組み合わされてもよいことが理解されるべきである。さらに、具体的な実施形態に応じて、選択した定義、実施形態又は範囲が適用されないことがある。
【0008】
特に断らない限り、以下の定義が本明細書で適用される:
【0009】
本発明の文脈で使用される語句「a」、「an」、「the」及び類似の用語は、本明細書で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると理解されるべきである。さらに、用語「含む又は含有する(containing)」は、「含む(comprising)」と「実質的に・・・からなる(essentially consisting of)」「からなる(consisting of)」の全てを包含する。百分率は、本開示で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、質量%として示されている。「独立に」は、1つの置換基/イオンが、名称を挙げた置換基/イオンのうちの1つから選択できること、又は、上記のものの1つより多くのものの組み合わせであることができる。
【0010】
用語「ルミネッセント結晶」(LC)は、当該技術分野で知られており、半導体材料製の3~100nmの結晶に関する(TEMにより決定される。体積重み付き平均)。この用語は、量子ドット、典型的には3~15nmの範囲内の量子ドット、及び、ナノ結晶、典型的には15nmよりも大きく最大で100nm(好ましくは最大で50nm)の範囲内のナノ結晶を包含する。好ましくは、ルミネッセント結晶は、おおよそ等軸晶系(isometric)(例えば球晶又は立方晶系)である。3つの直交軸の寸法のすべてのアスペクト比(最長:最短方向)が1~2である場合は、粒子はおおよそ等方的であると見なされる。よって、LCの集合は、好ましくは50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、より好ましくは75~100%(n/n)の等方的結晶を含む。
【0011】
LCは、その用語が示すように、ルミネッセンスを示す。本発明の文脈において、ルミネッセント結晶なる用語は、単結晶と多結晶性粒子の両方を包含する。後者の場合、1つの粒子は、結晶性又は非晶質相境界により接続されたいくつかの結晶ドメイン(グレイン)からなっていてもよい。ルミネッセント結晶は、直接バンドギャップ(典型的には1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、よりいっそう典型的には1.7~3.2eVの範囲内)を示す半導体材料である。このバンドギャップ以上の電磁放射線を照射することによって、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて電子正孔(electron hole)が価電子帯に残る。形成された励起子(電子-電子正孔対)は、次に、LCバンドギャップ値を中心とした最大強度で、フォトルミネッセンスの形で放射再結合し、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネッセンスを示すことができる。本発明の文脈において、LCは、メカノルミネッセンス(mechanoluminescence)(例えば、ピエゾルミネッセンス(piezoluminescence))、化学ルミネッセンス、電気化学ルミネッセンス又は熱ルミネッセンスを示さない。
【0012】
用語「量子ドット」(QD)は知られており、特に、半導体ナノ結晶に関連し、半導体ナノ結晶は典型的には3~15nmの直径を有する。この範囲では、QDの物理的半径は、バルク励起ボーア半径(bulk excitation Bohr radius)よりも小さく、量子閉じ込め効果が優勢になる。その結果、QDの電子状態は、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、それゆえ、バンドギャップは、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、すなわち吸収/発光の色はQDのサイズと関連している。QDのサンプルの光学的品質は、それらの均質性と直接関連する(より単分散性のQDであるほど、より小さいFWHM(半値全幅)の発光を示す)。QDがボーア半径よりも大きなサイズに達すると、量子閉じ込め効果が妨げられ、励起子再結合のための無輻射経路が支配的になるので、サンプルはもはや発光性でないことがある。従って、QDはナノ結晶の特定のサブグループであり、特にそのサイズ及びサイズ分布によって定義される。
【0013】
用語「ペロブスカイト結晶」は知られており、特に、ペロブスカイト構造の結晶性化合物を包含する。かかるペロブスカイト構造は知られており、一般式M(式中、Mは配位数12(cuboctaeder)のカチオンであり、Mは配位数6(octaeder)のカチオンであり、Xは、格子の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶位置にあるアニオンである。)の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶の結晶として記述される。これらの構造において、選択されたカチオン又はアニオンは他のイオン(確率的に又は正規に最大30原子数%まで)により置き換えられてもよく、それによって、まだその元の結晶構造を維持しているドープされたペロブスカイト又は非化学量論的ペロブスカイトがもたらされる。かかるルミネッセント結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号から知られている。
【0014】
用語「マトリックス」は、当該技術分野で知られており、本発明の文脈では、不連続相又は粒子相(particulate phase)を取り囲む連続相を意味する。粒子相は、連続相中に分配されており、典型的には、連続相中に均質に分配されている。好適なマトリックス材料は、当該技術分野で知られており、典型的には、非吸収性かつ透明である。好適なマトリックス材料は、本開示で規定されるとおりの「ポリマー」及び「小分子(small molecules)」から選択されたものであることができる。
【0015】
用語「ポリマー」は知られており、反復単位(「モノマー」)を含む有機及び無機の合成物質を包含する。文脈に応じて、用語「ポリマー」は、そのモノマー及びオリゴマーを包含する。有機ポリマーとしては、例として、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー及び環状オレフィンコポリマーが挙げられる。無機ポリマーとしては、例として、シリコーンポリマー又はポリシラザンポリマーが挙げられる。シリコーンポリマーは、ポリマーが有機側鎖を含んでいる場合であっても、-O-Si-モチーフを形成しているため、無機であると見なされる。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーを包含する。さらに、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーも包含される。ポリマーは、当該技術分野における従前のとおり、重合開始剤、安定剤、充填剤、溶媒などの他の材料を含んでもよい。
【0016】
ポリマーは、物理的パラメータ、例えば極性、ガラス転移温度Tg、ヤング率及び光透過率などによってさらに特徴づけることができる。
【0017】
透過率:典型的には、本発明の文脈において使用されるポリマーは、ルミネッセント結晶により光が放出されることが可能であり、また、ルミネッセント結晶を励起させるために使用される光源の想定される光が透過するように可視光に対して光透過性である、すなわち、不透明でない。光透過率は、白色光干渉分析法又は紫外-可視(UV-Vis)分光分析法により決定することができる。
【0018】
ガラス転移温度:(Tg)はポリマーの分野で確立したパラメータである。ガラス転移温度は、非晶質又は半結晶質ポリマーがガラス(硬い)状態から、より柔軟な、コンプライアントな、又はゴム状の状態に変化する温度を指す。高いTgを有するポリマーは、「硬質(hard)」と見なされるのに対し、低いTgを有するポリマーは「軟質(soft)」と見なされる。分子レベルでは、Tgは不連続な熱力学的転移でなく、その前後にわたってポリマー鎖の可動性が著しく増加する温度範囲である。しかしながら、慣例では、DSC測定の熱流曲線の2つのフラットな領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される単一の温度として報告される。Tgは、DSCを使用して、DIN EN ISO 11357-2又はASTM E1356に従って決定することができる。ポリマーがバルク材料の形態で存在する場合、この方法は特に適する。あるいは、ISO 14577-1又はASTM E2546-15に従って、ミクロ又はナノインデンテーションにより温度依存ミクロ又はナノ硬度を測定することによって、Tgを決定することもできる。この方法は、ここに開示されるとおりのルミネッセントコンポーネント及び照明デバイスに適する。好適な分析装置は、MHT(Anton Paar)、Hysitron TI Premier(Bruker)又はNano Indenter G200(Keysight Technologies)として入手可能である。温度制御ミクロ及びナノインデンテーションにより得られたデータをTgに変換することができる。典型的には、塑性変形仕事もしくはヤング率又は硬さは温度の関数として測定され、Tgはこれらのパラメータが著しく変化する温度である。
【0019】
ヤング率(Young’modulusもしくはYoung modulus)又は弾性率は、固体材料の剛性を評価する機械的特性である。ヤング率又は弾性率は、一軸変形の線形弾性領域における材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)との間の関係を規定する。
【0020】
「小分子(small molecule)」という用語は公知であり、「モノマー」及び「ポリマー」以外の有機合成物質及び無機合成物質を包含する。したがって、「小分子」は、特に、マトリックス材料として好適な有機分子及びポリシロキサン又はポリシラザンを包含する。小分子は、半導体材料の群から選択されてもよい。
【0021】
用語「溶媒」は、当該技術分野で知られており、特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを包含する)、エステル、アルコール、ケトン、アミン、アミド、スルホン、ホスフィン及びアルキルカーボネートを包含する。上記の有機化合物は、1又は2個以上の置換基、例えば、ハロゲン(例えばフルオロ、クロロ、ヨード又はブロモなど)、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ(例えばメトキシ又はエトキシなど)及びアルキル(例えばメチル、エチル、イソプロピルなど)により置換されていても置換されていなくてもよい。上記の有機化合物は、直鎖状、分岐状及び環状の誘導体を包含する。分子内に不飽和結合が存在していてもよい。上記の化合物は、典型的には、4~24個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、最も好ましくは12~20個の炭素原子を有する。
【0022】
用語「界面活性剤」、「配位子」、「分散剤(dispersant)」及び「分散助剤(dispersing agent)」は当該技術分野で知られており、本質的に同じ意味を有する。本発明の文脈において、これらの用語は、粒子の分離を改善するため、及び、凝集又は沈降を防止するために懸濁液又はコロイドにおいて使用される有機物質を意味する。理論に束縛されるわけではないが、界面活性剤は、粒子を溶媒に加える前又は加えた後で粒子の表面に物理的又は化学的に付着し、それによって、所望の効果を提供すると考えられる。界面活性剤は典型的には極性官能性末端基及び無極性末端基を含む。本発明の文脈において、溶媒(例えばトルエン)、モノマー及びポリマーは、界面活性剤とはみなされない。
【0023】
用語「懸濁液」は知られており、固体である内相(i.p.)と液体である外相(e.p.)との不均質流体に関する。外相は、1又は2種以上の界面活性剤、任意選択的に1又は2種以上の溶媒、及び、任意選択的に1又は2種以上のポリマー、プレポリマー又は小分子と、任意選択的に、金属塩又は金属錯体の形態にある1又は2種以上の金属Mとを含む。内相は、ペロブスカイト結晶を含み、典型的にはペロブスカイト結晶からなる。
【0024】
用語「溶液処理(solution-processing)」は、当該技術分野で知られており、溶液に基づく(=液体)出発物質の使用による、基材へのコーティング又は薄膜の適用を意味する。本発明の文脈において、溶液処理は、商品、例えば電子デバイス、光デバイス、及び照明デバイスの製造や、LCコンポジット又はLC層を含むコンポーネント/中間製品の製造にも関する。典型的には、懸濁液(1つ又は複数)(「インク」とも呼ばれる)の適用は、周囲条件で行われる。
【0025】
本発明の実施形態、態様及び利点を示す又は導く実施形態、例、実験を、それらについての以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。かかる記載は添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1A-Dは、本発明の複数の実施形態に従うシート状のルミネッセントコンポーネント(4)の概略図であり、かかるコンポーネントは、ディスプレイデバイスに特に好適である。 ・A:マトリックス(14)中の第1のルミネッセント結晶(11);追加のバリヤーなし; ・B:コンポーネント(4)の両側に透明な単層バリヤー((5)、サブ構造なし); ・C:透明な多層バリヤー(サブ構造(51,52)あり); ・D:マトリックス(14)中の第1のルミネッセント結晶(11);バリヤー(5)を有する基材(3)上にある。
【0027】
図2図2A-Bは、本発明の複数の実施形態に従う画素の形態のルミネッセントコンポーネント(4)の概略図である。 ・A:平坦な基材(3)を有するコンポーネント、特に照明デバイスに好適である; ・B:構造化基材(31、32)を有するコンポーネントで、特にディスプレイに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の態様に従うと、ルミネッセントコンポーネント4が提供される。このルミネッセントコンポーネント4は、固体マトリックス材料14中に埋め込まれたルミネッセント結晶11を含む固体材料組成物1を含む。前記第1のルミネッセント結晶は、ペロブスカイト結晶構造を有するものであり、第1の波長よりも短い波長を有する光による励起、又は電流による励起などの励起に応答して、第1の波長の光を放出する。前記固体マトリックス14は、マトリックス材料としてポリマーP1又は小分子SM1と、前記マトリックス材料中に分配された金属Mと、任意選択的に界面活性剤S1を含む。かかるルミネッセントコンポーネントは、発光デバイスにおける使用に好適である。特に、かかるルミネッセントコンポーネントは、最初から優れた光学的特性を示し、加速劣化後も高い光学的性能を維持する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳しく説明する。
【0029】
金属M
金属Mは、様々な金属から、有利にはM及びM(いずれも以下に定義する)と異なる金属から選択することができる。
【0030】
一実施形態において、Mは、安定な酸化状態+2、+3又は+4を有する金属の群から選択され、好ましくはMg、Sr、Ba、Sc、Y、Zn、Cd、In及びSbからなる群から選択される。好ましくは、Mは、Zn及びCdから選択され、特に好ましくはZnである。有利な実施形態では、MはZnを表し、MはPbを表す。
【0031】
の量は、広い範囲にわたって様々な値をとることができ、ペロブスカイト(I)の濃度に依存する。好適であるのは、例えば、0.3:1<M:M<20:1である。
【0032】
固体材料組成物1中で、金属Mは、典型的には、イオンの形態又は錯化した形態で存在する。この金属としては、遊離イオン[例えばZn2+]又は錯イオン[例えばZn2+(オレイン酸イオン]などの正の酸化状態の金属、あるいは、クラスター、例えば金属ハロゲン化物のクラスターが挙げられる。対応するアニオンYは、利用可能な出発材料及び製造条件に応じて、様々なアニオンから選択することができる。好適なアニオンYは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、硫化物イオン、炭素原子数4~20のカルボン酸イオン、及びキレート形成アニオン(chelating anions)である。特に好適なアニオンYは、4~20個の炭素原子を有するハロゲン化物イオン及びカルボン酸イオンである。かかるアニオンYは、当該技術分野で知られている。
【0033】
キレート形成アニオンYは当該技術分野で知られており、キレート形成アニオンYとしては、単一の中心金属カチオンに対して2つ以上の別々の配位結合を形成することができる無機又は有機アニオンが挙げられる。例として、好適なキレート形成アニオンYとして、EDTAが挙げられるが、FCSO はキレート形成アニオンでない。
【0034】
錯化配位子も当該技術分野で知られており、錯化配位子としては、アルキルアミン及びアルケニルアミンが挙げられる。
【0035】
含有化合物の具体例としては、ハロゲン化Zn、ハロゲン化Cd、オレイン酸Zn、オレイン酸Cd、並びに、アルキルアミン又はアルケニルアミンと錯化したZn2+などの有機錯体が挙げられる。
【0036】
は、典型的には、マトリックス14中に均質に分配されている(「溶解状態」)。結果として、ペロブスカイト(I)中のMの濃度は低いのに対し、マトリックス14中のMの濃度は高い。逆に、ペロブスカイト(I)中のMの濃度は高いのに対し、マトリックス14中のMの濃度は低い。
【0037】
複数の実施形態において、個々のルミネッセント結晶内のM:Mのモル比は、TEM-EDXにより決定した場合に、<0.5:1、好ましくは<0.25:1、好ましくは<0.1:1、好ましくは<0.05:1、最も好ましくは<0.01:1である。
【0038】
複数の実施形態において、固体マトリックス材料14中のM:固体材料組成物1中のMの比は、0.3:1~20:1である。
【0039】
複数の実施形態において、固体マトリックス材料(14)中のM含有量は、TEM-EDXもしくはSEM-EDX又はXPSにより決定した場合に、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは250ppm未満、好ましくは100ppm未満、最も好ましくは50ppm未満である。
【0040】
複数の実施形態において、前記固体材料組成物中のX:Mのモル比は、TEM-EDX、SEM-EDX又はICP-MSにより決定した場合に、4:1である。
【0041】
第1のルミネッセント結晶11:
好適な第1のルミネッセント結晶11はペロブスカイト構造を有するものである。有利には、第1のルミネッセント結晶は、式(I)の化合物から選択される:
[M (I)
式中、
は、1又は2種以上の有機カチオン、好ましくは、ホルムアミジニウム、アンモニウム、グアニジニウム、プロトン化チオウレア、イミダゾリウム、ピリジニウム及びピロリジニウムからなる群から選択された1又は2種以上の有機カチオンを表し;
は、1又は2種以上のアルカリ金属、好ましくは、Cs、Rb、K、Na及びLiから選択された1又は2種以上のアルカリ金属を表し;
は、M以外の1又は2種以上の金属、好ましくは、Ge、Sn、Pb及びBiからなる群から選択された1又は2種以上の金属を表し;
Xは、ハロゲン化物イオン及び擬ハロゲン化物イオン並びに硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し;
aは1~4、好ましくは1を表し;
bは1~2、好ましくは1を表し;
cは3~9、好ましくは3を表し;
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する。
式(I)のかかる化合物は公知であり、国際公開第2018/028869号に記載されている。国際公開第2018/028869号の内容を参照により援用する。
【0042】
「式(I)のペロブスカイト結晶」という用語は、コーティングされた(「封入された」)ペロブスカイト結晶とコーティングされていないペロブスカイト結晶の両方を包含する。以下でさらに詳しく説明するように、ルミネッセント結晶の高い性能を維持しながら、ペロブスカイトの封入/コーティングはもはや必要ないことが判明した。したがって、複数の実施形態において、本発明は、コーティングされていない式(I)のペロブスカイト結晶を含む本開示に記載のルミネッセントコンポーネントに関する。
【0043】
式(I)の化合物としては、化学量論的化合物及び非化学量論的化合物が挙げられる。a、b及びcが自然数(すなわち正の整数)を表す場合に、式(I)の化合物は化学量論的であり、a、b及びcが自然数を除く有理数を表す場合に、式(I)の化合物は非化学量論的である。
【0044】
一実施形態において、有機カチオンAは式(I)の化合物中に存在し、一方、金属カチオンMは存在しない(A≠0;M=0;「有機カチオンペロブスカイト」、又は単に「有機ペロブスカイト」)。一実施形態において、有機カチオンAは式(I)の化合物中に存在せず、一方、金属カチオンMが存在する(A=0;M≠0;「無機カチオンペロブスカイト」、又は単に「無機ペロブスカイト」)。一実施形態において、有機カチオンA及び金属カチオンMが存在する(A≠0;M≠0;「ハイブリッドカチオンペロブスカイト」、又は単に「ハイブリッドペロブスカイト」)。
【0045】
好適な有機カチオンAは、ホルムアミジニウムカチオン(IV-1)、アンモニウムカチオン(IV-2)、グアニジニウムカチオン(IV-3)、プロトン化チオウレアカチオン(IV-4)、イミダゾリウムカチオン(IV-5)、ピリジニウムカチオン(IV-6)及びピロリジニウムカチオン(IV-7)からなる群から選択することができる。
【0046】
【化1】
【0047】
ここで、置換基Rは、互いに独立に、水素、あるいは、C1-4アルキル、もしくはフェニル、又はベンジルを表し、Rが炭素に結合している場合には、置換基Rは、さらに、互いに独立に、ハライド又は擬ハライドを表す。
【0048】
(IV-1)の場合、Rは、好ましくは、水素を表し、Rは、好ましくは、メチル、もしくは水素、又はハライドもしくは擬ハライドを表す。好ましいカチオンは、アセトアミジニウム及びホルムアミジニウム(FA)からなる群から選択される。FAが好ましいカチオンである。
【0049】
(IV-2)の場合、Rは、好ましくは、水素、及びメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、フェニル、ベンジルを表す。好ましいカチオンは、ベンジルアンモニウム、iso-ブチルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム、t-ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、メチルアンモニウム(MA)、フェネチルアンモニウム、iso-プロピルアンモニウム、及びn-プロピルアンモニウムからなる群から選択される。MAが好ましいカチオンである。
【0050】
(IV-3)の場合、Rは、好ましくは水素を表し、その場合、母体の化合物はグアニジニウムカチオンとなる。
【0051】
(IV-4)の場合、Rは、好ましくは水素を表し、その場合、母体の化合物はプロトン化チオウレアカチオンとなる。
【0052】
(IV-5)の場合、Rは、好ましくはメチル又は水素を表す。イミダゾリウムが好ましいカチオンである。
【0053】
(IV-6)の場合、Rは、好ましくはメチル又は水素を表す。ピリジニウムが好ましいカチオンである。
【0054】
(IV-7)の場合、Rは、好ましくはメチル又は水素を表す。ピロリジニウムが好ましいカチオンである。
【0055】
一実施形態において、本発明は、A=FAである場合の式(I)のLCに関する。
【0056】
一実施形態において、本発明は、M=Csである場合の式(I)のLCに関する。
【0057】
一実施形態において、本発明は、M=Pbである場合の式(I)のLCに関する。
【0058】
一実施形態において、本発明は、Xが塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、チオシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された場合の式(I)のLCに関する。好ましい一実施形態において、本発明は、XがCl、Br及びIからなる群から選択された場合の式(I)のLCに関する。一実施形態において、本発明は、XがCl、Br及びIのリストから選択された1種の元素を表す場合の式(I)のLC/QDに関する。別の実施形態において、本発明は、XがCl、Br及びIのリストから選択された少なくとも2種の元素の組み合わせである場合の式(I)のLCに関する。
【0059】
一実施形態において、本発明は、FAPb、特にFAPbBr、FAPbBrIから選択される、式(I)のLCに関する。
【0060】
さらなる一実施形態において、本発明は、さらにドーパントを含む式(I)のLC、すなわち、Mの一部が他のアルカリ金属で置き換えられた場合、もしくはMの一部が他の遷移金属又は希土類元素で置き換えられた場合、もしくはXの一部が他のハロゲナイドで置き換えられた場合、又はAの一部が本開示において定義したとおりの他のカチオンで置き換えられた場合の、式(I)のLCに関する。ドーパント(すなわち置換イオン)は、一般的に、置き換え対象のイオンに関して15%(n/n)未満の量で存在する。
【0061】
ルミネッセント結晶11の濃度は、広範囲にわたる様々な値をとりうる。好ましくは、P1に対する第1のルミネッセント結晶の濃度は0.01質量%~20.0質量%、好ましくは0.03質量%~7質量%、最も好ましくは0.05質量%~1.0質量%である。
【0062】
マトリックス14:
マトリックスは、少なくとも2つの成分、ポリマーP1又は小分子SM1と、金属Mとを含む。任意選択的に、また好ましくは、界面活性剤S1も存在する。これらの成分は均質な相を形成し、以下に詳細に説明する。したがって、MはP1/SM1中に均質に分配されている。Mは、溶解した形態で、及び/又は、10nm未満の粒径を有する凝集体(aggregates)の形態で存在してもよい。そのため、Mは、イオンの形態で存在してもよいし、あるいは、クラスターの形態で存在してもよい。「クラスター」という用語は、10nm未満、好ましくは3nm未満の粒径を有し、任意選択的に界面活性剤S1によって取り囲まれるか又は安定化されていてもよい粒子を包含するものとする。「イオンの形態」という用語は、金属イオン及び錯化された金属イオンを包含するものとする。理論に縛られるわけではないが、界面活性剤S1がMを構成する金属塩の溶解をサポートし、それによって凝集体又は溶解したイオンを形成すると考えられる。これらの形態は、平衡状態にあってもよい。
【0063】
複数の実施形態において、マトリックスは、粒子状材料を含まず、具体的には、10nmを超えるサイズの粒子を有するMを含む金属塩を含まない。
【0064】
マトリックス14中の金属Mの存在は、例えばICP-MS又はLA-ICP-MS又はTEM/SEM-EDXなどの公知の分析方法によって確認することができる。また、10nmを超える粒子サイズを有するMを含む金属塩の存在又は不存在は、TEMにより確認することができる。
【0065】
複数の実施形態において、マトリックス14は、金属M、ポリマーP1及び界面活性剤S1を含み、好ましくは、マトリックス14は、金属M、ポリマーP1及び界面活性剤S1を含むが、小分子SM1を含まない。複数の実施形態において、マトリックス14は、金属M、第1のポリマーP1及び界面活性剤S1からなる。
【0066】
複数の実施形態において、マトリックス14は、金属M、小分子SM1及び界面活性剤S1を含み、好ましくは、マトリックス14は、金属M、小分子SM1及び界面活性剤S1を含むが、ポリマーP1を含まない。複数の実施形態において、マトリックス14は、金属M、小分子SM1及び界面活性剤S1からなる。
【0067】
さらなる材料:
マトリックス14はさらなる材料を含んでもよい。かかるさらなる材料としては、溶媒、可塑剤、安定化剤、粘度調整剤、触媒(例えば重合開始剤)、反応しなかったモノマー、反可塑剤が挙げられる。かかるさらなる材料は当業者に知られている。それらのタイプ及び量の選択は当業者にとって定型的な作業である。
【0068】
さらなる実施形態において、マトリックス14は、さらに、Tgを低下させるために可塑剤化合物を含む。かかる可塑剤化合物は反応性(重合性)又は非反応性(重合性でない)であることができる。反応性可塑剤としては、例えばラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸エステルが挙げられる。非反応性可塑剤としては、例えばビス(2-エチルヘキシル)フタレートなどのエステルが挙げられる。
【0069】
さらなる実施形態において、マトリックス14は、さらに、反可塑剤化合物を含む。反可塑剤は、ある濃度でヤング率を増加させるとともにガラス転移温度を低下させる任意の小分子又はオリゴマー添加剤である。
【0070】
さらなる実施形態において、マトリックス14は、さらに、有機散乱粒子及び無機散乱粒子からなる群から選択された散乱粒子を含む。散乱粒子用の材料は、シリコーン(例えばオルガノポリシロキサン)、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカを含む。
【0071】
ポリマーP1:
ポリマーP1は、本明細書に記載のとおりの多種多様なポリマーから選択することができる。多種多様なポリマーには、アクリレートポリマー、エポキシポリマー、カーボネートポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、エステルポリマー、スチレンポリマー、オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーからなる群から選択された有機ポリマーが含まれ得る。複数の実施形態において、多種多様なポリマーには、シリコーンポリマー又はポリシラザンポリマーからなる群から選択された無機ポリマーが含まれ得る。
【0072】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は、50℃<T<130℃、好ましくは50℃<T<110℃、好ましくは50℃<T<90℃、最も好ましくは50℃<T<70℃のガラス転移温度を有する。そのため、P1は、「軟質」ポリマーであると見なすことができる。
【0073】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は、100μmの厚さ及び500nmの波長で、>70%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%の透過率で可視光に対して透過性である。
【0074】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1はアモルファスである(結晶性でない;半結晶性でない)。
【0075】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は架橋ポリマーである。架橋は、2つのポリマー鎖を結合するために共有結合又は比較的短いシーケンスの化学結合を形成するプロセスについての一般的な用語である。架橋ポリマーは、例えば酸化性溶媒中での酸化により、共有結合を切断せずに、溶媒中に溶解することはできない。しかしながら、架橋ポリマーは溶媒に曝された時に膨潤することがある。アクリレートの場合、架橋は、例えば、少なくとも0.5質量%の2官能性及び/又は多官能性アクリレートプレポリマーと単官能性アクリレートプレポリマーとの混合物を硬化させることにより達成することができる。
【0076】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は、炭素に対する(酸素+窒素+硫黄+リン+フッ素+塩素+臭素+ヨウ素)の合計のモル比が<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25である。
【0077】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は、40℃/90%r.h.の温度/相対湿度で(g・mm)/(m・day)で表される水蒸気透過度(WVTR)が、WVTR<1(g・mm)/(m・day)、好ましくは<0.5(g・mm)/(m・day)、最も好ましくは<0.2(g・mm)/(m・day)であるものである。本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は、23℃/0%r.h.の温度/相対湿度で(cm・mm)/(m・day・atm)で表される酸素透過度(OTR)が、OTR>1(cm・mm)/(m・day・atm)、好ましくは>5(cm・mm)/(m・day・atm)、好ましくは>25(cm・mm)/(m・day・atm)、最も好ましくは>125(cm・mm)/(m・day・atm)であるものである。
【0078】
本発明の複数の実施形態において、ポリマーP1は、アクリレートポリマーからなる群から選択され、好ましくは架橋アクリレートポリマーからなる群から選択される。架橋アクリレートは、例えば、単官能性アクリレート中で少なくとも0.5質量%の2官能性及び/又は多官能性プレポリマーを使用することによって得られる。
【0079】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリマーP1はアクリレートである。有利には、この第1のポリマーは、単官能性アクリレート(III)の反復単位と多官能性アクリレート(V)の反復単位とを含有する(すなわち、含む、又は、からなる)。用語が暗示するように、単官能性アクリレートは1個のアクリレート官能基を含むのに対し、多官能性アクリレートは2、3、4、5又は6個のアクリレート官能基を含む。本開示で用いる場合には、用語「アクリレート」は(メタ)アクリレートも包含する。単官能性アクリレート反復単位(III)及び多官能性アクリレート反復単位(V)の量は、広い範囲にわたって様々な値をとり得る。好適であるものは、例えば、10~90質量%、好ましくは50~80質量%の単官能性アクリレート反復単位を含む第1のポリマーである。好適なものは、例えば、10~90質量%、好ましくは20~50質量%の多官能性アクリレート反復単位を含む第1のポリマーである。
【0080】
1つの好ましい実施形態において、反復単位は、式(III)の単官能性アクリレートを含む:
【0081】
【化2】
【0082】
ここで、RはH又はCHを表し、
10は環式、直鎖もしくは分岐C1-25アルキル、又はC6-26アリール基を表し、それぞれ、任意選択的に、1又は2個以上の環式、直鎖もしくは分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく、
nは0又は1を表し、
Xは1~8個の炭素原子及び1~4個の酸素原子を含むアルコキシレートから成る群から選択されたスペーサーを表す。
【0083】
用語「環式Cx-yアルキル基」は、x~y個の炭素原子を環員として含む縮合環系を包含する単環式基及び多環式基を包含するものとする。環式アルキル基は、1つの二重結合を有する基を含んでいてもよい。
【0084】
式(III)の化合物は、まとめてアクリレートとも呼ばれる、RがHである場合の式(III-1)及び(III-2)のアクリレートと、Rがメチルである場合の式(III-3)及び(III-4)のメタクリレートとを包含する。
【0085】
さらに、式(III)の化合物は、nが0であり、Xが存在しない場合の式(III-1)及び式(III-3)の単純なアクリレートも包含する:
【0086】
【化3】
【0087】
ここで、R10は先に定義したとおりである。
【0088】
さらに、式(III)の化合物は、式(III-2)及び式(III-4)のアルコキシル化アクリレートも包含する。
【0089】
【化4】
【0090】
ここで、R10は先に定義したとおりである。
【0091】
10は、好ましくは、環式C5-25アルキル、非環式(直鎖又は分岐)C1-25アルキル、又はC6-26アリールを表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく、
10は、より好ましくは、飽和環式C5-25アルキル基を表し、ここで、環式アルキルは、任意選択的に1~6個の置換基により置換されていてもよい単環式及び多環式基を包含し、各置換基はC1-4アルキルから独立に選択される。
【0092】
10は、最も好ましくは、1~6個の置換基により置換された飽和多環式C6-25アルキル基を表し、各置換基はC1-4アルキルから独立に選択される。
【0093】
10は、さらに最も好ましくは、任意選択的に1~6個の置換基を含んでいてもよい飽和多環式C8-25アルキル基を表し、各置換基はC1-4アルキルから独立に選択される。
【0094】
10の具体例としては、イソボルニル、ジシクロペンタニル、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0095】
式(III-1)及び(III-3)のアクリレートの具体例としては、イソボルニルアクリレート(CAS 5888-33-5)、イソボルニルメタクリレート(CAS 7534-94-3)、ジシクロペンタニルアクリレート(CAS 79637-74-4、FA-513AS(Hitachi Chemical、日本))、ジシクロペンタニルメタクリレート(CAS 34759-34-7、FA-513M(Hitachi Chemical、日本))、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 86178-38-3)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 7779-31-9)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 84100-23-2)、4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 46729-07-1)が挙げられる。
【0096】
式(III-2)及び(III-4)のアクリレートの具体例としては、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート(具体的には2-フェノキシエチルアクリレート)、O-フェニルフェノキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート(CAS 72009-86-0)、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレンオキシド)ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)4-ノニルフェニルエーテルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルメタクリレートが挙げられる。
【0097】
1つの好ましい実施形態において、多官能性単位は式(V)の2官能性アクリレートを含む:
【0098】
【化5】
【0099】
ここで、R21は互いに独立にH又はCHを表し;
23は、環式、直鎖又は分岐C1-25アルキル、又はC6-26アリール基を表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく;
22は、互いに独立に、アルコキシレートからなる群から選択されたスペーサーを表し、両方の置換基X22の全体で8~40個の炭素原子及び2~20個の酸素原子が含まれる。
【0100】
23は、好ましくは、任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよいC6-26アリール基を表す。
【0101】
23は、特に好ましくは、任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキルにより置換されていてもよいC6-26アリール基を表す。アリールとしては、単環式及び多環式アリールが挙げられ、当該単環式及び多環式アリールは、任意選択的に1~4個の置換基により置換されていてもよく、前記置換基はC1-4アルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。
【0102】
23は、特に好ましくは、フェニル、ベンジル、2-ナフチル、1-ナフチル、9-フルオレニルを表す。
【0103】
23は、最も好ましくは、ビスフェノールA又はフルオレン-9-ビスフェノールを表す。
【0104】
22は、好ましくは、エトキシレート及び/又はイソプロポキシレートからなる群から選択されたスペーサ基を表し、両方の置換基X22の全体で8~24個の炭素原子及び4~8個の酸素原子が含まれる。
【0105】
22は、最も好ましくは、エトキシレート及び/又はイソプロポキシレートからなる群から選択されたスペーサ基を表し、両方の置換基X22の全体で4~20個の炭素原子及び2~10個の酸素原子が含まれる。
【0106】
好ましいグループのジアクリレートは式(V-1)により表されるものである:
【0107】
【化6】
【0108】
ここで、RはH又はCHを表し、m+nは4~10である。
【0109】
2官能性アクリレートの具体例としては、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(CAS 64401-02-1、例えばMiramer M240(Miwon Korea)、Miramer M2100(Miwon Korea)、Fancryl FA-324A(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-326A(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-328A(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-321A(Hitachi Chemical、日本)など)、ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート(例えばMiramer M241(Miwon Korea)、Miramer M2101(Miwon Korea)、Fancryl FA-324M(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-326M(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-328M(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-321M(Hitachi Chemical、日本)など)、変性フルオレン-9-ビスフェノールジアクリレート(CAS、変性フルオレン-9-ビスフェノールジメタクリレート)が挙げられる。
【0110】
3官能性アクリレートの具体例としては、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 28961-43-5)、イソプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 53879-54-2)、イソプロポキシル化グリセリントリアクリレート(CAS 52408-84-1)が挙げられる。
【0111】
4官能性アクリレートの具体例としては、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(CAS 94108-97-1)、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(CAS 51728-26-8)が挙げられる。
【0112】
5官能性アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(CAS 60506-81-2)が挙げられる。
【0113】
6官能性アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(CAS 29570-58-9)が挙げられる。
【0114】
小分子:
複数の実施形態において、マトリックス1は、ポリマーP1を欠く。かかる実施形態では、マトリックス材料は小分子(SM1)を含む。前記小分子(SM1)は、市販品であり、非導電性(分離性)有機化合物及び半導電性有機分子などの多種多様な有機化合物から選択することができる。有利には、小分子SM1は、90≦Mr≦2000g/molである。
【0115】
好適な小分子SM1は、非導電性有機化合物、例えば有機界面活性剤[例えば、S1について本開示で論じたようなもの]など、あるいは、非官能性有機分子の群から選択することができる。複数の実施形態において、マトリックス14は、ポリマーP1を欠く。かかる実施形態では、本開示で論じたような界面活性剤S1がマトリックスを形成する。この実施形態は、画素の文脈で、具体的には、ペロブスカイト(I)が光、例えば青色光によって励起される場合に特に好適である。
【0116】
好適な小分子は、半導電性有機分子、例えば有機発光ダイオード又は量子ドット発光ダイオードにおけるホストマトリックス、電荷輸送又は電荷注入層として使用される分子などの群から選択することができる。かかる分子の例示的な実施形態は、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、トリフェニルホスフィンオキシド誘導体であり、具体例としてDPEPO、mCPb、PRO7、26mCPY、PzCz、TPSi-F及び3TPAPFPが挙げられる。複数の実施形態において、マトリックス14は、ポリマーP1を欠く。かかる実施形態では、本開示で論じたような半導電性有機分子がマトリックスを形成する。この実施形態は、画素の文脈で、具体的には、ペロブスカイト(I)が電流によって励起される場合に特に好適である。
【0117】
界面活性剤(配位子):
典型的には、マトリックスは、固化/硬化したポリマーP1又は小分子SM1と金属Mに加えて、1種又は2種以上の界面活性剤S1を含む。様々な界面活性剤を使用することができる。好適な界面活性剤は、常套的な実験で決定することができ、その選択は、主にポリマーP1、式(I)のペロブスカイト、及び金属Mに依存する。
【0118】
好適な界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び双性イオン性界面活性剤からなる群から選択することができ、好ましくは、両性イオン界面活性剤の群から選択することができる。
【0119】
一実施形態において、界面活性剤は、第1級、第2級、第3級又は第4級アミン又はアンモニウム基、例えばアルケニルアミン及びアルキルアミンの部類のものを含む。
【0120】
一実施形態において、界面活性剤は、両性イオン界面活性剤、例えばスルホベタイン類及びホスホコリン類の部類のものである。
【0121】
有益な特性を改善するために2種以上の界面活性剤を組み合わせることは当該技術分野で知られており、かかる界面活性剤の組み合わせも本発明の対象である。一実施形態において、界面活性剤は、両性イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤の混合物を含む。
【0122】
ルミネッセントコンポーネント:
コンポーネント4が、ある波長の光を自発的に放出するのではなく、励起に応答して、例えば、(i)電流による励起に応答して、又は(ii)励起に応答して放出されるべき光の波長よりも短い波長の光による励起に応答して、ある波長の光を放出することが好ましい。したがって、好ましい一実施形態において、コンポーネント4は、第2の、より短い波長の光、例えば青色スペクトルの光による励起に応答して、第1の波長の光、例えば緑色スペクトルの光を放出する。あるいは、コンポーネント4は、電流による励起に応答して、第1の波長の光、例えば緑色のスペクトルの光を放出する。
【0123】
また、ルミネッセントコンポーネント4に青色光が照射されたことに応答して白色光を放出するための、特に液晶ディスプレイのバックライトとしての、ルミネッセントコンポーネント4の使用も提供される。
【0124】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントは、フィルムの形態、すなわち、当該ルミネッセントコンポーネントの厚さを超える長さ及び幅を有する形態、好ましくは長さ及び幅が厚さの少なくとも10倍を超える形態を有していてもよい。このフィルム又は層の厚さは、広い範囲にわたる様々な値をとりうるが、典型的には、1~500ミクロンである。
【0125】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントは、画素の形態を有していてもよい。「画素」という用語は、ディスプレイデバイスの文脈で知られており、全点アドレス可能なディスプレイ装置における最小のアドレス可能な要素を指す。画素は、画面上に表現されるピクチャの最小の制御可能な要素であると見なされている。したがって、本発明は、本開示に記載したルミネッセントコンポーネント4を含む画素も提供する。
【0126】
さらなる要素:
ルミネッセントコンポーネント4は、更なる要素、例えば、保護層5、及び/又は、基材3などを含んでもよい。
【0127】
保護層5、51、52:
保護層の1つの選択肢はバリヤー層である。ルミネッセントコンポーネント4は、任意選択的に、1又は2層以上のバリヤー層5を含んでもよい。かかるバリヤー層はルミネッセントコンポーネントの、バリヤー層がなければ露出する表面の上に配置される。好ましい一実施形態において、四角形のシート状ルミネッセントコンポーネントの場合には、バリヤーフィルムをルミネッセントコンポーネントの両面に取り付けてもよい。
【0128】
かかる保護層(例えばバリヤーフィルム)は当該技術分野で知られており、典型的には、低い水蒸気透過度(WVTR)及び/又は低い酸素透過度(OTR)を有する1種の材料/複数の材料の組み合わせを含む。かかる材料を選択することによって、水蒸気及び/又は酸素に曝されることに応じたコンポーネント中のLCの劣化が抑えられるか又は回避される。バリヤー層又はフィルムは、好ましくは、温度40℃/相対湿度90%及び大気圧で<10(g)/(m・day)、より好ましくは1(g)/(m・day)未満、最も好ましくは0.1(g)/(m・day)未満のWVTRを有する。
【0129】
一実施形態において、バリヤーフィルムは酸素に対して透過性であることができる。別の一実施形態において、バリヤーフィルムは、酸素に対して不透過性であり、温度23℃/相対湿度90%及び大気圧で、<10(mL)/(m・day)、より好ましくは<1(mL)/(m・day)、最も好ましくは<0.1(mL)/(m・day)の酸素透過度(OTR)を有する。
【0130】
一実施形態において、バリヤーフィルムは光に対して透過性であり、すなわち、可視光透過率は、>80%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%である。
【0131】
好適なバリヤーフィルムは単一層の形態で存在することができる。かかるバリヤーフィルムは当該技術分野で知られており、ガラス、セラミック、金属酸化物及びポリマーを含む。好適なポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環式オレフィンコポリマー(COC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択することができ、好適な無機材料は、金属酸化物、SiO、Si、AlOからなる群から選択することができる。最も好ましくは、ポリマー湿気バリヤー材料はPVdC及びCOCからなる群から選択された材料を含む。
【0132】
最も好ましくは、ポリマー酸素バリヤー材料はEVOHポリマーから選択された材料を含む。
【0133】
好適なバリヤーフィルムは多層51、52の形態で存在することができる。かかるバリヤーフィルムは当該技術分野で知られており、一般的に、基材、例えば10~200μmの範囲内の厚さを有するPETなどと、SiO及びAlOからなる群からの材料を含む薄い無機層又はポリマーマトリックス中に埋め込まれた液晶に基づく有機層もしくは所望のバリヤー特性を有するポリマーを含む有機層とを含む。かかる有機層用の可能なポリマーは、例えばPVdC、COC、EVOHを含む。
【0134】
基材3、31、32:
ルミネッセントコンポーネント4は、任意選択的に基材3を含んでもよい。かかる基材は当該技術分野で知られており、かかる基材としては、フィルム(以下で概説)に特に適する平坦な基材(図1D図2A)、及び画素(以下で概説)に特に適する構造化基材(図2B)が挙げられる。
【0135】
本コンポーネント4の実施形態は、好ましくは青色光により励起された場合に、>60%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%の量子収率を示す。さらに、材料の選択、結晶サイズ、及び第1のLCの徹底的な被覆によって、シャープな波長分布を放出光で達成することができ、その結果、もたらされる放出光のクオリティは優れる。好ましくは、上記要素のそれぞれの固体材料組成物の可視放射についてのFWHM(半値幅)は<50nm、好ましくは<40nm、最も好ましくは<30nmである。例えば、525nmにおける発光ピークについて23nmのFWHMを観測でき、同時に、そのコンポーネントについて、例えば86%の高いルミネッセンス量子収率が測定される(実施例4)。
【0136】
本コンポーネント4の複数の実施形態は、欧州連合によるRoHS(「有害物質の制限」)指令に適合する。
【0137】
本発明の第2の態様によると、ルミネッセントコンポーネント4を含む、自立フィルム及び発光デバイスが提供される。自立フィルム及びルミネッセントコンポーネントは、それぞれ、他のコンポーネントとともに発光デバイス、例えばディスプレイ又は照明デバイスに組み立てられる半製品として有用である。そのため、発光デバイスは上記実施形態のいずれかに従うルミネッセントコンポーネントと、光(すなわち、400~490nmの範囲内の波長)を放出するための光源とを含む。
【0138】
光源は、ルミネッセントコンポーネントを励起し、好ましくは青色光を放出させるために配置される。そのため、光源はルミネッセントコンポーネントと光学的に連通している。そのため、デバイスは、ルミネッセントコンポーネント4のルミネッセント結晶11により決まる波長の光を放出するように構成される。
【0139】
かかる発光デバイスにおいて、ルミネッセントコンポーネントは、フィルム(図1参照)、画素(図2参照)などの様々な構造で存在することができる。かかる構造は、当該技術分野で知られている。本発明のルミネッセントコンポーネント4が公知の構造と互換性があることは有益であると考えられる。
【0140】
自立フィルム:
ルミネッセント層と任意選択的に1つ又は2つ以上のさらなる層とを含むルミネッセント自立フィルムは、当該技術分野で知られている。しかしながら、本開示に記載したとおりのコンポーネント4と任意選択的にさらなる層とを含むフィルムは、まだ知られていない。かかるフィルムは、図1に示されており、1又は2つ以上のバリヤー層及び/又は基材を含んでいてもよい。
【0141】
複数の実施形態において、本発明は、本開示で規定したとおりの固体材料組成物1からなる自立フィルムを提供する。
【0142】
複数の実施形態において、本発明は、本開示に記載したとおりの固体材料組成物1及び1つ又は2つ以上のバリヤー層5、51、52を含む、好ましくは、本開示に記載したとおりの固体材料組成物1及び1つ又は2つ以上のバリヤー層5、51、52からなる自立フィルムを提供する。
【0143】
複数の実施形態において、本発明は、固体材料組成物の第1の側に配置された基材3を含む、好ましくは、固体材料組成物の第1の側に配置された基材3からなる自立フィルムを提供する。
【0144】
複数の実施形態において、本発明は、固体材料組成物1の第1の側に配置された基材3と、組成物の第1の側とは反対の第2の側に配置されたバリヤー層5、51、52を含む、好ましくは、固体材料組成物1の第1の側に配置された基材3と、組成物の第1の側とは反対側の第2の側に配置されたバリヤー層5、51、52からなる自立フィルムを提供する。
【0145】
画素:
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネント4は、画素で構成されてもよい。かかる画素は、図2に示されている。複数の実施形態において、画素のルミネッセントコンポーネントは、電流によって励起されるように適合されている。したがって、電極(図2には示されていない)は、ルミネッセントコンポーネント4と接触していてもよい。さらなる一実施形態では、画素のルミネッセントコンポーネントは、光によって励起されるように適合されている。したがって、光源(図2に示されていない)は、ルミネッセントコンポーネント4と光学的に連通していてもよい。
【0146】
発光デバイス:
ルミネッセント層と任意選択的に1つ又は2つ以上のさらなる層とを含む発光デバイスは、当該技術分野で知られている。しかしながら、コンポーネント4、もしくは本開示に記載したとおりの自立フィルム、又は本開示に記載したとおりの少なくとも1つの画素を含む発光デバイスは、まだ知られていない。
【0147】
一実施形態において、本発明は、発光デバイスであって、本開示に記載したとおりのルミネッセントコンポーネント、もしくは本開示に記載したとおりの自立フィルム、又は本開示に記載したとおりの少なくとも1つの画素と、光源とを備え、光源がルミネッセントコンポーネント4、もしくは自立フィルム、又は少なくとも1つの画素を励起するために配置されている、発光デバイスを提供する。有利には、光源は、青色光を放出するように適合されている。
【0148】
さらなる実施形態において、本発明は、発光デバイスであって、本開示に記載したとおのルミネッセントコンポーネント又は本開示に記載したとおりの少なくとも1つの画素と、少なくとも2つの電極とを含み、電極が、電流によってルミネッセントコンポーネント(4)又は画素を励起するように適合されている、発光デバイスを提供する。
【0149】
本発明の複数の実施形態において、本開示に記載の発光デバイスは、ディスプレイ、特に液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、QLEDディスプレイ(エレクトロルミネッセント)、LEDディスプレイ及びミクロLEDディスプレイからなる群から選択される。本発明の複数の実施形態において、本開示に記載した発光デバイスは、照明デバイス、特にLEDから選択される。従って、LCD、OLED、LED又はミクロLEDの一部として、コンポーネント4はかかるディスプレイ(例えばモバイル又は定置式コンピュータ、通信又はテレビデバイスのディスプレイ)又はかかる照明デバイスに寄与することができる
【0150】
本発明のさらに別の実施形態において、光源はOLEDスタックである。この場合、ルミネッセントコンポーネントは、好ましくは、OLEDスタック全体又はその少なくとも部分を覆うように配置される。
【0151】
散乱粒子:
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネント4の固体材料組成物は、散乱粒子を0.1~30質量%の量で含む。
【0152】
本発明の第3の態様によれば、液体組成物(「インク」)が提供される。これらのインクは、特に、本開示に記載したとおりのルミネッセントコンポーネント4の製造に特に適する。かかるインクを提供することによって、当該技術分野で知られている方法、特に溶液処理によって、ルミネッセントコンポーネント4を製造することが可能となる。
【0153】
したがって、本発明は、本開示で定義したとおり、特に本発明の第1の態様で定義したとおりの式(I):[M (I)のルミネッセント結晶と;液体と;任意選択的に、1種又は2種以上の界面活性剤S1と;さらに、金属Mとを含む液体組成物に関し、Mは本開示で定義したとおり、特に本発明の第1の態様で定義したとおりであり、モル比M:Mは本開示で定義したとおり、特に本発明の第1の態様で定義したとおりである。
【0154】
液体:
使用される材料及び意図される用途に応じて、液体は、当業者によって選択され得る。
【0155】
本発明の複数の実施形態において、液体は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物を含むか、あるいは、有機溶媒又は有機溶媒の混合物からなる。
【0156】
本発明の複数の実施形態において、液体は、第1のポリマーP1のモノマーを含むか、あるいは、第1のポリマーP1のモノマーからなるが、有機溶媒を含まない。
【0157】
本発明の複数の実施形態において、液体は、有機溶媒と第1のポリマーP1のモノマーとを含むか、あるいは、有機溶媒と第1のポリマーP1のモノマーからなる。
【0158】
本発明の複数の実施形態において、液体は、有機溶媒と小分子SM1とを含むか、あるいは、有機溶媒と小分子SM1とからなり、ポリマーP1のモノマーを欠き、ポリマーP1を欠く。
【0159】
金属M
金属Mは、上記のマトリックス材料14の文脈(本発明の第1の態様)で説明したものであり、インク(本発明の第3の態様)に同様に適用可能である。有利には、Mは、イオンの形態又は錯化した形態、例えばハロゲン化物又はC4-C20有機塩の形態など、あるいは、錯体の形態で存在する。好適なものは、例えば、ZnもしくはCdの塩、例えばZnもしくはCdのハロゲン化物;又は、例えば、有機塩、例えばオレイン酸Zn又はオレイン酸Cdなど;あるいは、例えば、有機錯体、例えばアルキルアミン又はアルケニルアミンと錯化したZn2+などの有機錯体である。
【0160】
複数の実施形態において、本発明は、MがZnであり、MがPbである、本開示に記載したとおりのインクを提供する。
【0161】
複数の実施形態において、本発明は、MがCdであり、MがPbである、本開示に記載したとおりのインクを提供する。
【0162】
本発明の第4の態様によれば、液体組成物の製造方法、ルミネッセントコンポーネントの製造方法、及び発光デバイスの製造方法が提供される。かかる製造は、インク、コンポーネント(フィルム又は画素を含む)及びデバイスを製造するための公知の方法に従う。
【0163】
インクの製造
公知の方法を各スタートアップ材料に適用することができる。本開示に記載したとおりのインクを調製するための1つの好適な方法は以下のステップを含み、それによって前記液体組成物を得る:
(a)式(I)のルミネッセント結晶と、希釈剤と、任意選択的に界面活性剤とを含む懸濁液を調製し、提供するステップ;
(b)M、好ましくは塩又は錯体の形態のMと、溶媒と、界面活性剤とを含む溶液を調製し、提供するステップ;
(c)(a)の懸濁液と(b)の溶液を組み合わせて、改質された懸濁液を得るステップ;
(d)任意選択的に、ポリマーP1を形成するように適合されたモノマー、又は、小分子SM1を加えるステップ;及び
(e)任意選択的に、溶媒を除去するステップ。
【0164】
個々のステップ(a)~(e)は、当該技術分野で慣用されており、標準的な設備を使用して実施することができる。
【0165】
出発材料は、市販品であるか、あるいは、公知の方法に従って得ることが可能である。式(I)のLC、希釈剤、界面活性剤、金属M、溶媒、モノマー及びポリマーP1、小分子SM1などの出発材料の定義は、本明細書に記載されている。これらの材料は、供給されたものをそのまま使用することができる。式(I)のLCは、当該技術分野で知られているようにボールミリングにより調製されてもよく、出発材料は、好ましくは低い水分含有率を有する。
【0166】
ステップ(a)は、ルミネッセント結晶11を含む予備濃縮物を、第1のポリマーP1のモノマーもしくはオリゴマー又は小分子SM1を含む組成物と組み合わせることによって実施されてもよい。かかる予備濃縮物は、好ましくは、界面活性剤、分散剤、及び配位子の部類から選択されたさらなる材料を含む。
【0167】
ルミネッセントコンポーネントの製造
本開示に記載したとおりのインクを、固体材料組成物1を含有する(すなわち、固体材料組成物1を含む、又は固体材料組成物1からなる)ルミネッセントコンポーネントに変換するために、公知の方法を適用することができる。大まかに言えば、本開示で定義したとおりのインクを、溶液処理工程、例えばコーティング及び印刷技術に供し、次に、重合/硬化及び/又は溶媒除去に供する。本発明のルミネッセントコンポーネントを製造するために、公知の製造装置を使用できることは有利であると考えられる。
【0168】
ポリマーP1を含むルミネッセントコンポーネントを製造するための1つの好適な方法は、ルミネッセントコンポーネント4を得るために、以下のステップを含む:
(x)基材と、ポリマー(P1)のモノマーと任意選択的に溶媒を含む、本開示に記載したとおりのインクとを提供するステップ;
(y)前記インクを前記基材3に適用し、任意選択的に溶媒を除去するステップ;及び
(z)こうして得られた組成物を硬化させるステップ。
【0169】
小分子SM1又はポリマーP1のいずれかを含むルミネッセントコンポーネントを製造するための1つの好適な方法は、ルミネッセントコンポーネント4を得るために、以下のステップを含む:
(aa)基材と、本開示に記載したとおりの液体組成物とを提供するステップであって、前記組成物は、溶媒と小分子SM1又はポリマーP1とを含む、ステップ;及び
(bb)前記液体組成物を前記基材に適用し、溶媒を除去するステップ。
【0170】
適用(コーティング及び印刷ステップを包含する)、硬化又は重合(例えば、放射線重合、熱重合化、触媒重合)、仕上げ(例えば、さらなる層によるコーティング)などの個々のステップはそれ自体公知であるが、本開示で使用される特定の出発材料にまだ適用されていない。
【0171】
上記の方法において、得られる最初の製品は、基材3上に固体材料組成物1を含むコンポーネント4である。さらなる使用に応じて、基材3は除去されてもよく、それによって組成物1からなるコンポーネント4が得られる(図1A)。あるいは、基材3は、他の機能層により置き換えられるか、又は他の機能層により補完され、それによって積層体が得られる(図1B図1C図1D)。これらの後続のプロセスステップは、当該技術分野で知られている。
【0172】
ステップ(aa)は、無溶媒で実施されてもよい。そのような場合、ステップ(aa)及び(bb)は、SM1又はP1の融点を超える高温で実施され、溶媒除去は回避される。
【0173】
ステップ(aa)は、溶媒の存在下で実施されてもよい。そのような場合、ステップ(aa)及び(bb)は、SM1又はP1の融点未満の温度で実施され、溶媒除去は、典型的には、溶媒の沸点を超えて加熱することによって行われる。
【0174】
ステップ(y)及び(bb)は、好ましくは、移動する基材上で連続的に実施されるコーティングステップである。これは、ロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)(R2R)技術として知られている。
【0175】
複数の実施形態では、全ての製造ステップを連続的に行うことができる。したがって、本発明は、本開示に記載したとおりのルミネッセントコンポーネントの製造方法も提供し、この方法は、連続的なR2Rプロセスに適合している。
【0176】
発光デバイスの製造
ルミネッセントコンポーネントは、当該技術分野で知られているように、例えば、光源と光学的に連通するようにルミネッセントコンポーネントを配置することによって、さらに処理されてもよい。これらの後続の製造ステップは、全く従来通りであり、本開示で論じたような発光デバイスをもたらす。
【実施例
【0177】
本発明をさらに説明するために、以下の例が提供される。これらの例は本発明の範囲を限定するという意図なしに提供される。特に記載がない場合、化学物質の全てはAldrichから購入した。
【0178】
例1~3:
本発明に従うルミネッセントコンポーネントの合成(FAPbBrを含み、M=Zn又はM=Cdであるルミネッセントコンポーネント):
【0179】
インク形成
出発インクの形成:
PbBr及びFABrをミリングすることによりホルムアミジニウム鉛トリブロミド(FAPbBr)を合成した。すなわち、16mmolのPbBr(5.87g、98%、ABCR、Karlsruhe(ドイツ))及び16mmolのFABr(2.00g、Greatcell Solar Materials、Queanbeyan(オーストラリア))をイットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)を使用して6時間ミリングして純粋な立方晶FAPbBrを得た(XRDにより確認)。オレンジ色のFAPbBr粉末をオレイルアミン(80-90%、Acros Organics、Geel(ベルギー))(FAPbBr:オレイルアミン質量比=100:15)及びトルエン(>99.5%、puriss、Sigma Aldrich)に加えた。FAPbBrの最終濃度は3質量%であった。次に、周囲条件(特に定義しない場合、周囲条件は全ての実験について35℃、1atm、空気中である)で直径200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用して、混合物をボールミリングにより1時間分散させ、緑色ルミネッセンスのインクを得た。「出発インク」の特性は、表1に示されており、ここで、インクの光ルミネッセント量子収率(PLQY)、発光ピーク位置(PP)及び半値全幅(FWHM)は、積分球を備えた蛍光分光光度計(Quantaurus絶対PL量子収率測定システムC1134711、Hamamatsu)により測定した。無機固形分は、熱重量測定で、オーブン内(350℃、24時間)での有機物の燃焼後に1.4質量%であると求められた。
【0180】
=Zn源材料:
臭化亜鉛(ZnBr、1g、≧98%グレード、Sigma Aldrich)をまず真空オーブン(80℃、30mbar、16時間)で乾燥させ、0.3gのオレイルアミン(80-90%、Acros Organics、Geel(ベルギー))と、8.7gのトルエン中で室温で16時間混合した。得られた混合物を遠心分離し、溶媒を蒸発させた後(135℃、2時間)、熱重量測定法で固形分を求めたところ、ZnBrとオレイルアミンの合計で7.5質量%であった。
【0181】
=Cd源材料:
臭化カドミウム(CdBr、2g、98%グレード、Alfa Aesar)を、0.5gのオレイルアミン(80-90%、Acros Organics、Geel(ベルギー))と、17.5gのトルエン中で室温で16時間で混合した。得られた混合物を遠心分離し、溶媒を蒸発させた後(135℃、2時間)、熱重量測定法で固形分を求めたところ、CdBrとオレイルアミンの合計で5.2質量%であった。
【0182】
最終的なインクの形成(本発明のインク):
第一の実験では、4.25gの上記のとおりの「出発インク」を、0.75gの上記のとおりの「M=Zn源材料」と混合し、室温で16時間撹拌した。
【0183】
第二の実験では、12.0gの上記のとおりの「出発インク」を4.0gの上記のとおりの「M=Cd源材料」と混合し、室温で16時間撹拌した。
【0184】
どちらのインクも依然として緑色発光を示した。
【0185】
B)フィルム形成
第1のフィルム(例1、比較)を得るために、0.022gの「出発インク」を、スピードミキサーで、1wt%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe、オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.35gのFA-513AS、Hitachi Chemical、日本/0.15gのMiramer M240、Miwon、韓国)と混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。得られた混合物を、厚さ約100μmの2枚のスライドガラス(18×18mm)の間で、UV(水銀ランプ及び石英フィルタを備えたUVAcube100、Hoenle、ドイツ)で60秒間硬化させた。
【0186】
第2のフィルム(例2、本発明)は、「出発インク」の代わりに0.045gの「M=Znの最終インク」を用いて、上記のように作製した。
【0187】
第3のフィルム(例3、本発明)は、「出発インク」の代わりに0.045gの「M=Cdの最終インク」を用いて、上記のように作製した。
【0188】
一連の第4のフィルム(例4.1~4.5、比較)は、出発インクの代わりに0.045gの「M=Li、Na、K、Rb、Csの最終インク」を用いて、上記のように作製した。この一連の実験は、M=請求項1に規定したとおりのM2+(本発明)と比較して、M=アルカリ金属M(本発明ではない)の効果を示すことを意図したものである。以下の表2から判るように、アルカリ金属塩は有利な効果を持たない。本質的に、加速劣化後の結果は、実施例1(マトリックス中に塩が存在しない)と同様であり、本発明の組成物(マトリックス中に塩M2+)よりも著しく劣っている。具体的には、例4のPLQYは、劣化試験後に急激に低下し、FWHMが広がっている。
【0189】
C)フィルムの特性
表2に、最初に得られたままのフィルムの光学的特性と、高温高湿試験(60℃/相対湿度90%)に150時間に供して劣化させた後のフィルムの光学的特性を示す。フィルムの得られた光学的特性は、積分球を備えた蛍光分光光度計(Quantaurus絶対PL量子収率測定システムC1134711、Hamamatsu)により測定した。
【0190】
【表1】
【0191】
モル比M:Mの分析:
例2の固体材料組成物(スライドガラスなし)のモル比(Zn:Pb)をICP-MSにより求めたところ、0.74:1であった。
【0192】
D)結論:
これらの結果は、本発明で記述したとおりのルミネッセントコンポーネント(例2及び3)が、優れた初期特性を示し、60℃/相対湿度90%の条件での加速劣化後にも高い光学的性能を維持することを示している。
【0193】
例1は、高温/高湿度下で150時間後のPLQYの変化(94%から15%に変化=相対変化率-84%)、PPの変化(525nmから537nmに変化=ピーク位置シフト12nm)に関して、劣った性能を示し、このコンポーネントをディスプレイ等に応用することが適切でないことを示している。
【0194】
これに対し、本発明のフィルム#2、#3は、テレビや類似の装置での応用の必要条件を満たしている。具体的には、例2及び例3は、高温/高湿度下で150時間後に、M=Znの場合に+3%、M=Cdの場合に-9%というPLQYのほんのわずかな変化を示し、PPは変化しないかほとんど変化しない(M=Zn及びM=Cdの場合にそれぞれ0nm及び2nm)。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
固体材料組成物(1)を含むルミネッセントコンポーネント(4)であって、
前記組成物(1)は、固体マトリックス(14)中に埋め込まれた第1のルミネッセント結晶(11)を含み;
前記ルミネッセント結晶(11)は、
- 励起に応答して第1の波長の光を放出し、
- 下記式(I)のペロブスカイト結晶構造を有するものであり:
[M (I)
(式中、
は、1又は2種以上の有機カチオンを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
は、Ge、Sn、Pb及びBiからなる群から選択された1又は2種以上の金属、好ましくはPbを表し、
Xは、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はA のいずれか、あるいは、M 及びA が存在する);
前記固体マトリックス(14)は、
- マトリックス材料としてのポリマー(P1)又は小分子(SM1)と、
- 前記マトリックス材料中に分配された金属M であって、Mg、Sr、Ba、Sc、Y、Zn、Cd、In及びSbから選択された金属M と、
- 任意選択的に界面活性剤(S1)と、
を含み、
前記固体材料組成物(1)中の総モル比M :M が、ICP-MS又はICP-OESにより決定した場合に0.3:1~20:1である、
ルミネッセントコンポーネント。
[態様2]
=Zn、及びM =Pbである、態様1に記載のルミネッセントコンポーネント。
[態様3]
個々のルミネッセント結晶(11)内のM :M のモル比がTEM-EDXにより決定した場合に、0.5:1未満である、態様1~2のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント。
[態様4]
が前記マトリックス材料(14)中に均質に分布しており;及び/又は
が、遊離イオン;又は錯イオンもしくはイオンクラスターとして存在し、対応するアニオンYが、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、硫化物イオン、4~20個の炭素原子を有するカルボン酸イオン及びキレート形成アニオンから選択される、態様1~3のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント。
[態様5]
以下の1つ以上を満たす、態様1~4のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント:
- TEM-EDX及び/又はICP-MSにより決定した場合に、固体マトリックス材料(14)中のM :固体材料組成物(1)中のM の比が0.3:1~20:1であること、
- 固体マトリックス材料(14)中のM の含有量は、TEM-EDXにより決定した場合に1000ppm以下であること、及び
- 前記固体材料組成物(1)中のX:M のモル比は、ICP-MS又はICP-OESにより決定した場合に、4:1を超えること。
[態様6]
前記固体マトリックス(14)は、金属M に加えて、
- ポリマー(P1)及び界面活性剤(S1)を含む、特に、ポリマー(P1)及び界面活性剤(S1)からなる;又は
- 低分子(SM1)及び/又は界面活性剤(S1)を含む、特に、低分子(SM1)及び/又は界面活性剤(S1)からなる、
態様1~5のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント。
[態様7]
シート状に構成されており、好ましくは、厚さが1~500ミクロンであり、長さが厚さの少なくとも10倍を超え、幅が厚さの少なくとも10倍を超えるである、態様1~6のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント。
[態様8]
- 好ましくは、固形材料組成物(1)からなる;もしくは
- 好ましくは、固体材料組成物(1)と1又は2つ以上のバリヤー層(5、51、52)とを含む;又は
- 好ましくは、固体材料組成物(1)の第1の側に配置された基材(3)と、任意選択的に、前記組成物(1)の第1の側とは反対側の第2の側に配置されたバリヤー層(5、51、52)とを含む、
態様1~7のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネントを含む自立フィルム。
[態様9]
態様1~7のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネントを含む画素。
[態様10]
発光デバイスであって、
- 態様1~7のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント、もしくは態様8に記載の自立フィルム、又は少なくとも1つの態様9に記載の画素、及び
- 特に、青色光を放出するための光源、
を含み、
特に、前記光源が、前記ルミネッセントコンポーネント(4)又は前記自立フィルムもしくは前記画素を励起するために配置されているか、
あるいは、
- 態様1~7のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント、又は少なくとも1つの態様9に記載の画素、及び
- 特に、少なくとも2つの電極、
を含み、
特に、前記電極が、電流によって前記ルミネッセントコンポーネント(4)又は前記画素を励起するように適合されている、
発光デバイス。
[態様11]
下記のものからなる群から選択される、態様10に記載の発光デバイス:
- 照明デバイス、特に、LED;及び
- ディスプレイ、特に、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、QLEDディスプレイ、LEDディスプレイ、ミクロLEDディスプレイ。
[態様12]
下記のもの:
〇 態様1に定義したとおりの式(I):
[M (I)
のルミネッセント結晶、及び
〇 下記のものから選ばれる液体:
- 有機溶媒;もしくは
- 第1のポリマーP1のモノマーであって、有機溶媒を含まないもの;もしくは
- 有機溶媒と第1のポリマーP1のモノマー;又は
- 有機溶媒と、小分子SM1、もしくは、ポリマーP1のモノマーを含まないポリマーP1;及び
〇 任意選択的に、1種又は2種以上の界面活性剤;
を含む液体組成物であって、
前記組成物が、さらに、金属M を含み、
- M は、Mg、Sr、Ba、Sc、Y、Zn、Cd、In及びSbから選択され;及び
- モル比M :M は、0.3:1~20:1であること、
を特徴とする、液体組成物。
[態様13]
が、ハロゲン化物又はC4-C20有機塩又は有機錯体の形態など、イオン性の形態又は錯化した形態で存在する、態様12に記載の液体組成物。
[態様14]
以下のステップを含み、それによって前記液体組成物を得る、態様12~13のいずれか一つに記載の液体組成物の製造方法:
(a)態様1又は2に定義したとおりの式(I)のルミネッセント結晶と、希釈剤と、任意選択的に界面活性剤とを含む懸濁液を調製し、提供するステップ;
(b)M と、溶媒と、界面活性剤とを含む溶液を調製し、提供するステップ;
(c)(a)の懸濁液と(b)の溶液とを組み合わせて、改質された懸濁液を得るステップ;及び
(d)任意選択的に、ポリマーP1を形成するように適合されたモノマー、又は、小分子SM1を加え、任意選択的に溶媒を除去するステップ。
[態様15]
下記(x)~(z)のステップ又は下記(aa)~(bb)のステップを含む、態様1~7のいずれか一つに記載のルミネッセントコンポーネント(4)の製造方法:
ポリマー(P1)のモノマーの場合:
ルミネッセントコンポーネント(4)を得るために、
(x)ポリマー(P1)のモノマーを含む、態様12又は13に記載の液体組成物を提供するステップ;
(y)前記液体組成物で基材をコーティングし、任意選択的に溶媒を除去するステップ;及び
(z)前記液体組成物を硬化させるステップ;
あるいは、
小分子(SM1)又はポリマー(P1)の場合:
ルミネッセントコンポーネント(4)を得るために、
(aa)小分子(SM1)又はポリマー(P1)と溶媒とを含む、態様12又は13に記載の液体組成物を提供するステップ;及び
(bb)前記液体組成物で基材をコーティングし、溶媒を除去するステップ。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明のコンポーネント4は、良好な安定性を示す。本発明のコンポーネント4の実施形態は、湿度に対して改善された安定性、例えば60℃/相対湿度90%に対して改善された安定性を示すことがわかる。
【符号の説明】
【0196】
(4) ルミネッセントコンポーネント
(1) 固体材料組成物
(11) 第1のルミネッセント結晶
(14) P1又はSM1と、金属Mと、任意選択的にS1を含むマトリックス
(3)、(31)、(32) 基材
(5)、(51)、(52) 保護層
図1
図2