(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ビット誤り率の推定及び誤り補正、並びに関連するシステム、方法、及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20240124BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20240124BHJP
H04L 25/49 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H04L25/02 Z
H04L1/00 C
H04L25/49 F
(21)【出願番号】P 2022510901
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 US2020070365
(87)【国際公開番号】W WO2021042108
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】201910784043.6
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397050741
【氏名又は名称】マイクロチップ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROCHIP TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ディクソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジアチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ケビン
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-005157(JP,A)
【文献】特開昭63-242039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04L 1/00
H04L 25/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理層デバイスであって、前記物理層デバイスは、
有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から信号を受信する入力部であって、前記有線ローカルエリアネットワークの前記共有伝送媒体は、前記有線ローカルエリアネットワークの一部であるノード間の通信経路である物理媒体を含み、前記ノードは、物理層デバイスのそれぞれのインスタンスを含む、入力部と、
1つ以上のプロセッサであって、前記物理層デバイス及び開放型システム間相互接続(OSI)モデルの物理層において、
前記有線ローカルエリアネットワークの前記共有伝送媒体を介して受信された前記信号内のコード化違反を識別することであって、前記コード化違反は、2レベルの差動マンチェスター符号化(DME)違反を含み、信号遷移はそれぞれのクロック遷移にて検出されない、識別することと、
前記信号内の前記コード化違反の率を決定することと、
前記コード化違反の前記決定された率となる前記信号のビット誤り率を推定すること、を行う1つ以上のプロセッサと、を備える、物理層デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセッサは、前記信号内の前記識別されたコード化違反に隣接する1つ以上の半シンボルを補正する、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項3】
前記1つ以上のプロセッサは、前記コード化違反の前の先行するシンボル及び前記コード化違反の後の後続するシンボルの信号完全性に基づいて、前記1つ以上の半シンボルを補正する、請求項2に記載の物理層デバイス。
【請求項4】
物理層デバイスであって、前記物理層デバイスは、
有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から信号を受信する入力部であって、前記有線ローカルエリアネットワークの前記共有伝送媒体は、前記有線ローカルエリアネットワークの一部であるノード間の通信経路である物理媒体を含み、前記ノードは、物理層デバイスのそれぞれのインスタンスを含む、入力部と、
1つ以上のプロセッサであって、開放型システム間相互接続(OSI)モデルの物理層内で、
受信信号内のコード化違反を識別することであって、前記コード化違反は、2レベルの差動マンチェスター符号化(DME)違反を含み、信号遷移はクロック遷移にて検出されない、識別することと、
前記コード化違反の直前の先行する半シンボルの先行する信号完全性を決定することと、
前記コード化違反の直後の後続する半シンボルの後続する信号完全性を決定することと、
前記先行する信号完全性及び前記後続する信号完全性に少なくとも部分的に基づいて、前記先行する半シンボル又は前記後続する半シンボルのうちの一方を選択することと、
前記受信信号を補正するために、前記先行する半シンボル又は前記後続する半シンボルのうちの前記選択された一方を反転させることと、を行う1つ以上のプロセッサと、を備える、物理層デバイス。
【請求項5】
前記信号完全性は、前記先行する半シンボル及び前記後続する半シンボルの信号振幅である、請求項4に記載の物理層デバイス。
【請求項6】
前記信号完全性は、測定された振幅と予期された振幅との間の差である、請求項5に記載の物理層デバイス。
【請求項7】
前記信号完全性は、前記先行する半シンボル及び前記後続する半シンボルの信号波形形状の完全性である、請求項4に記載の物理層デバイス。
【請求項8】
前記信号波形形状の完全性は、前記信号の決定された信号波形形状と予期された信号波形形状との間の差を含む、請求項7に記載の物理層デバイス。
【請求項9】
信号のビット誤り率(BER)を推定する方法であって、前記方法は、開放型システム間相互接続(OSI)モデルの物理層内で、
有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信された信号内のコード化違反を識別するステップであって、
前記有線ローカルエリアネットワークの前記共有伝送媒体は、前記有線ローカルエリアネットワークの一部であるノード間の通信経路である物理媒体を含み、前記ノードは物理層デバイスのそれぞれのインスタンスを含み、前記コード化違反は2レベルの差動マンチェスター符号化(DME)違反を含み、信号遷移はそれぞれのクロック遷移にて検出されない、識別するステップと、
前記信号内の前記コード化違反の率を決定するステップと、
前記信号内の前記コード化違反の前記決定された率となる前記信号のBERを推定するステップと、を含む方法。
【請求項10】
コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号完全性を識別するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号完全性を識別するステップは、前記コード化違反の前記前の半シンボル及び前記後の半シンボルの信号振幅の完全性を識別するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号完全性を識別するステップは、前記コード化違反の前記前の半シンボル及び前記後の半シンボルの信号波形形状の完全性を識別するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記コード化違反の前記前の半シンボル又は前記後の半シンボルのうちの一方が、前記前の半シンボル又は前記後の半シンボルのうちの他方より大きい、予期された信号完全性と異なる信号完全性を有するということを決定するステップと、
前記他方より大きい、前記異なる信号完全性を有する前記前の半シンボル又は前記後の半シンボルのうちの前記一方を補正するステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記前の半シンボル又は前記後の半シンボルのうちの前記一方を補正するステップは、前記前の半シンボル又は前記後のシンボルのうちの前記一方を反転させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
受信信号に対して誤り補正を実行する方法であって、前記方法は、
開放型システム間相互接続(OSI)モデルの物理層内で、
受信信号内のコード化違反を識別するステップであって、前記受信信号は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信されたものであり、前記有線ローカルエリアネットワークの前記共有伝送媒体は前記有線ローカルエリアネットワークの一部のノード間の通信経路である物理媒体を含み、前記ノードは物理層デバイスのそれぞれのインスタンスを含み、前記コード化違反は2レベルの差動マンチェスター符号化(DME)違反を含み、信号遷移はクロック遷移にて検出されない、識別するステップと、
前記コード化違反の直前の先行するシンボルの先行する信号完全性を決定するステップと、
前記コード化違反の直後の後続するシンボルの後続する信号完全性を決定するステップと、
前記先行する信号完全性及び前記後続する信号完全性に少なくとも部分的に基づいて、前記先行するシンボル又は前記後続するシンボルのうちの一方を選択するステップと、
前記受信信号を補正するために、前記先行するシンボル又は前記後続するシンボルのうちの前記選択された一方を反転させるステップと、を含む、方法。
【請求項16】
前記先行する信号完全性を決定するステップ及び前記後続する信号完全性を決定するステップは、前記先行するシンボル及び前記後続するシンボルの信号振幅の完全性を決定するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記先行する信号完全性及び前記後続する信号完全性に少なくとも部分的に基づいて、前記先行するシンボル又は前記後続するシンボルのうちの一方を選択するステップは、予期された振幅から最も遠い振幅を有する前記先行するシンボル又は前記後続するシンボルのうちの前記一方を選択するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記先行する信号完全性を決定するステップ及び前記後続する信号完全性を決定するステップは、前記先行するシンボル及び前記後続するシンボルの信号波形形状の完全性を決定するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2019年8月23日に出願された中国特許出願第201910784043.6号の、「Bit Error Rate Estimation and Error Correction and Related Systems,Methods,and Devices」についての出願日の利益を主張し、かつ2019年10月16日に出願された米国特許出願第16/654,739号の、「Bit Error Rate Estimation and Error Correction and Related Systems,Methods,and Devices」(係属中)についての出願日の利益を主張し、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、一般に、信号のビット誤り率(Bit Error Rate、BER)検出及び誤り補正に関し、より具体的には、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信された信号のBER検出及び誤り補正に関する。
【背景技術】
【0003】
IEEE 802.3cgは、自動車センサ、音響機器、他のデバイス、及びそれらの組み合わせと共に使用するための10BASE-T1S(別名cg)を定義している。cgの他の標的市場セグメントには、バックプレーン及びモノのインターネット(Internet of Things、IoT)ネットワークが含まれる。cg仕様は、搬送波感知多重アクセス(Carrier Sense Multiple Access、CSMA)を物理層衝突回避(Physical Layer Collision Avoidance、PLCA)と共に使用する10メガビット/秒(10Mbps)マルチドロップバスを標的とする。
本開示は、特定の実施形態を具体的に指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本開示の範囲内の実施形態の様々な特徴及び利点は、添付の図面と併せて読むと、以下の説明からより容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】いくつかの実施形態による、ネットワークセグメントの機能ブロック図である。
【
図2】差動マンチェスタ符号化(Differential Manchester Encoding、DME)違反を示す信号タイミング図である。
【
図3】別のDME違反を示す信号タイミング図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、信号のBERを決定する方法を示すフロー図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、異なる信号完全性の欠陥を示す信号タイミング図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、信号振幅に基づく誤り補正を示す信号タイミング図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、信号品質に基づく誤り補正を示す信号タイミング図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、信号内の誤りを補正する方法を示すフロー図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、ディザゲインに対してプロットされた推定BER及び測定BERの例を示すBERプロットである。
【
図10】いくつかの実施形態に係る、物理層デバイスのブロック図である。
【
図11】いくつかの実施形態において使用され得るコンピューティングデバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部をなし、本開示を実施し得る実施形態の具体例を例示として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施できるように十分に詳細に説明される。しかしながら、本明細書で可能とされる他の実施形態が用いられ得、本開示の範囲から逸脱することなく、構造、材料、及びプロセスを変えられ得る。
【0006】
本明細書に提示する図は、任意の特定の方法、システム、デバイス、又は構造の実際の図であることを意図するものではなく、本開示の実施形態を説明するために用いられる理想化した表現にすぎない。場合によっては、様々な図面における類似の構造又は構成要素は、読者の便宜のために同一又は類似の付番を保持し得る。しかしながら、付番における類似性は、構造又は構成要素がサイズ、組成、構成、又は任意の他の特性において同一であることを必ずしも意味するものではない。
【0007】
以下の説明は、当業者が開示される実施形態を実施することを可能にするのを補助するための実施例を含み得る。「例示的な」、「例による」、「例えば」という用語の使用は、関連する説明が、説明的なものであることを意味し、本開示の範囲は、実施例及び法的等価物を包含することを意図するものであり、かかる用語の使用は、実施形態又は本開示の範囲を特定の構成要素、ステップ、特徴、機能などに限定することを意図するものではない。
【0008】
本明細書で概して説明され、図面に例示される実施形態の構成要素は、多種多様な異なる構成で配置及び設計され得ることが容易に理解されるであろう。したがって、様々な実施形態の以下の説明は、本開示の範囲を限定することを目的とするものではなく、単に様々な実施形態を表すものである。実施形態の様々な態様が図面に提示され得るが、図面は、具体的に指示されていない限り、必ずしも尺度どおりに描画されていない。
【0009】
更に、図示及び説明する具体的な実装形態は、単なる例であり、本明細書において別段の指定がない限り、本開示を実施する唯一の方式と解釈されるべきでない。要素、回路、及び機能は、不要に詳述して本開示を不明瞭にしないように、ブロック図の形態で示され得る。逆に、図示し、説明する具体的な実装形態は、単に例示的なものであり、本明細書において別段の指定がない限り、本開示を実装する唯一の方法と解釈されるべきではない。更に、様々なブロック間での論理のブロック定義及びパーティショニングは、例示的な具体的な実装形態である。当業者には、本開示が多数の他のパーティショニングソリューションによって実施され得ることが容易に明らかになるであろう。大部分については、タイミングの考察などに関する詳細は省略されており、かかる詳細は、本開示の完全な理解を得るために必要ではなく、当業者の能力の範囲内である。
【0010】
当業者であれば、情報及び信号は、様々な異なる技術及び技法のいずれかを使用して表され得ることを理解するであろう。いくつかの図面は、表示及び説明を明確にするために、単一の信号として信号を例示され得る。当業者は、信号が信号のバスを表し得、このバスは様々なビット幅を有し得、本開示は、単一のデータ信号を含む任意の数のデータ信号で実施され得ることを理解するであろう。
【0011】
本明細書に開示する実施形態に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、及び回路は、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは他のプログラマブル論理デバイス、別個のゲート若しくはトランジスタ論理、別個のハードウェア構成要素、又は本明細書で説明される機能を実行するように設計されたこれらの任意の組み合わせを用いて実装、又は実行され得る。汎用プロセッサ(本明細書では、ホストプロセッサ又は単にホストと呼ばれこともある)は、マイクロプロセッサであり得るが、代替的に、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシンでもあり得る。プロセッサはまた、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のかかる構成の組み合わせとして実装され得る。プロセッサを含む汎用コンピュータは専用コンピュータとみなされ、汎用コンピュータは、本開示の実施形態に関連するコンピューティング命令(例えば、ソフトウェアコード)を実行するように構成されている。
【0012】
実施形態は、フローチャート、フロー図、構造図、又はブロック図として示すプロセスに関して説明され得る。フローチャートは、順次プロセスとして動作行為を説明し得るが、これらの行為の多くは、別の順序で、並行して、又は実質的に同時に実行できる。加えて、行為の順序は再調整され得る。プロセスは、メソッド、スレッド、関数、プロシージャ、サブルーチン、サブプログラム、他の構造、又はそれらの組み合わせに対応し得る。更に、本明細書に開示する方法は、ハードウェア、ソフトウェア、又はその両方で実施され得る。ソフトウェアで実施される場合、機能は、コンピュータ可読メディア上の1つ以上の命令又はコードとして記憶され得る、又は送信され得る。コンピュータ可読メディアは、コンピュータ記憶メディア及び、コンピュータプログラムのある場所から別の場所への転送を容易にする任意のメディアなどの通信メディアの両方を含む。
【0013】
「第1」、「第2」などの表記を使用した、本明細書の要素に対する任意の言及は、かかる制限が明示的に記載されていない限り、それらの要素の数量又は順序を限定しない。むしろ、これらの表記は、本明細書において、2つ以上の要素又は要素の例を区別する便利な方法として使用され得る。したがって、第1の要素及び第2の要素への言及は、2つの要素のみが用いられ得ること、又は何らかの方法で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味するものではない。加えて、特に明記しない限り、要素のセットは、1つ以上の要素を含んでよい。
【0014】
本明細書で使用されるとき、所与のパラメータ、特性、又は条件に言及する際の「実質的に(substantially)」という用語は、所与のパラメータ、特性、又は条件が、例えば許容可能な製造許容差の範囲内などの、小さいばらつきを満たすことを当業者が理解するであろう程度を意味し、かつ含む。一例として、実質的に満たされる特定のパラメータ、特性、又は条件に応じて、パラメータ、特性、又は条件は、少なくとも90%満たされ得るか、少なくとも95%満たされ得るか、更には少なくとも99%満たされ得る。
【0015】
自動車、トラック、バス、船舶、及び/又は航空機などの車両は、車両通信ネットワークを含み得る。車両通信ネットワークの複雑性は、ネットワーク内の電子デバイスの数に応じて変化することがある。例えば、高度車両通信ネットワークは、例えば、エンジン制御、変速機制御、安全制御(例えば、アンチロックブレーキ)、及び排出制御のための様々な制御モジュールを含み得る。これらのモジュールをサポートするために、車載産業は様々な通信プロトコルに依存している。
【0016】
イーサネットなどの有線ローカルエリアネットワークのための10BASE T1S物理層回路は、2レベルの差動マンチェスタ符号化(DME)を時に使用し得る。DMEコード化規則は、クロック周期間の遷移(本明細書では「クロック遷移」と称されることもある)において信号遷移が常に存在すべきであると規定している。クロック遷移における信号遷移が欠落し、DMEコード化規則を破ると(DMEコード化違反)、1つのDMEコード化違反当たり平均約1ビットの誤りが復号データに生じ得る。結果として、DMEコード化違反の数は、復号データの誤り(例えば、ビット誤り)の数とほぼ同じになるはずである。したがって、本明細書に開示される実施形態は、DMEコード化違反率を使用して、復号データのビット誤り率(BER)と相関させる。かかるBERは、例えば、信号品質インジケータ(Signal Quality Indicator、SQI)レポートで使用され得る。
【0017】
本明細書では、通信バスを介して受信された信号の信号品質指数(Signal Quality Index、SQI)を監視するために、10BASE-T1エンドポイント及びスイッチで使用され得る有線ローカルエリアネットワークに接続するための物理層のデバイスが開示される。本明細書に開示される実施形態は、復号データの誤りの数に比較的近いDMEコード化違反の数に依存し得る。結果として、DMEコード化違反率を使用して、復号データのBERが推定され得る。例えば、DME違反の数は、復号されたBERを推定するために使用され得るDME違反率を計算するために、特定の期間にわたってカウントされ得る。このBERは、機能的安全目的のために報告され得る。
【0018】
直交クロックは、欠落した遷移をより良好に識別するために使用され得る。直交クロックを用いたオーバーサンプリングを使用して、ランダムジッタのためにクロックエッジで欠落している信号遷移が識別され得る。オーバーサンプリングされたデータセットに基づいて、かかるビット誤りが補正され、その結果、BERが低下する。
【0019】
開示される実施形態は、ポイントツーポイントリンクで使用されるより複雑なデジタル信号処理(Digital Signal Processing、DSP)技術とは対照的に、DME違反に基づいてBERを決定するため、本開示の発明者らに以前に知られていたシステムと比較して、より少ない電力及びチップ面積を使用して、本明細書に開示される実施形態が実施され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、DMEを利用するBERを効果的に推定するための改善された方法が本明細書に開示される。ビット誤り補正は、DME違反補正に基づいて適用され得る。欠落したクロック遷移の前後のシンボル(例えば、半シンボル)は、シンボルのうちのどれがDME違反の原因である(例えば、ノイズによって反転される)可能性が最も高いかを決定するために比較され得る。DME違反の原因である可能性が最も高いと決定されたシンボル(例えば、半シンボル)は、DME違反の補正を試みるために反転され得、これに対応して、平均してビット誤りが補正され得る。かかるビット誤り補正は、BER性能を改善し得る。ネットワーク信頼性は、特にノイズ及び/又は干渉の多い環境(例えば、自動車環境)において、本明細書で論じられる誤り補正技術を使用して改善され得る。BERは推定され得、誤り補正は、DSPアルゴリズムのための複雑なアナログ支持回路に関与することなく実行され得る。本明細書に開示される実施形態は、有線ローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネット)の観点でBER推定及び誤り補正について具体的に考察しているが、これらの実施形態は、関連性を見出し、DMEが使用される任意の用途において使用され得る。
【0021】
図1は、いくつかの実施形態による、リンク層デバイス、MAC104、及び物理層(PHY)デバイス、PHY102を含むネットワークセグメント100の機能ブロック図である。非限定的な例として、ネットワークセグメント100は、マルチドロップネットワークのセグメント、マルチドロップサブネットワークのセグメント、混合メディアネットワークのセグメント、又はこれらの組み合わせ若しくはこれらの副次的組み合わせであり得る。非限定的な例として、ネットワークセグメント100は、限定することなく、マイクロコントローラタイプの埋め込みシステム、ユーザタイプのコンピュータ、コンピュータサーバ、ノートブックコンピュータ、タブレット、ハンドヘルドデバイス、モバイルデバイス、無線のイヤホンデバイス若しくはヘッドホンデバイス、有線のイヤホン若しくはヘッドホンデバイス、又は、アプライアンス、照明、サウンド、建物制御、住宅監視(例えば、限定することなく、セキュリティ又はユーティリティ使用量用)、エレベータ、公共交通機関制御(例えば、限定することなく、地上の列車、地下の列車、市街電車、又はバス用)、自動車、若しくは産業制御のためのシステム若しくはサブシステムのうちの1つ以上であるか、その一部であるか、又はそれを含み得る。
【0022】
PHY102は、MAC104とインターフェースするように構成され得る。非限定的な例として、PHY102及び/又はMAC104は、本明細書に記載される実施形態の全て又は一部を実行するように構成されたメモリ及び/又はロジックを含むチップパッケージであり得る。非限定的な例として、PHY102及びMAC104は、単一チップパッケージ(例えば、システムインパッケージ(system-in-a-package、SIP))内の別個のチップパッケージ又は回路(例えば、集積回路)として実装され得る。
【0023】
PHY102はまた、共有伝送媒体106と、ネットワークセグメント100の一部であるノードの通信経路である物理媒体と、又はPHY102及びMAC104のそれぞれのインスタンスを含むノードを含む、ネットワークセグメント100がその一部であるネットワークと、インターフェースする。非限定的な例として、共有伝送媒体106は、シングルペアイーサネットに使用されるような単一のツイストペアであり得る。
【0024】
共有伝送媒体106を介して受信された信号は、特にノイズの影響を受けやすい環境(例えば、自動車又は建築環境)において、ノイズが混入し得る。場合によっては、受信信号の信号品質の監視を可能にするために、SQIを報告することが有用であり得る。いくつかの実施形態では、PHY102は、SQIを決定し、報告するように構成され得る。
【0025】
図2は、DME違反208を示す信号タイミング
図200である。信号タイミング
図200は、異なる時点で論理レベル高電圧レベルと論理レベル低電圧レベルとの間で遷移する信号202を含む。信号タイミング
図200では、前から後への時間通過は、信号202に沿った左から右の方向に対応する。
【0026】
信号タイミング
図200はまた、データ遷移204及びクロック遷移206を含み、それらはそれぞれ一定の時間間隔をおいて離間している。データ遷移204は、クロック遷移206のほぼ中間に発生する。DMEによれば、信号202は、クロック遷移206において、ある論理電圧レベルから別の論理電圧レベルに遷移するべきである。また、DMEによれば、信号202は、信号「0」を送るためにデータ遷移204において一定を保ち、信号「1」を送るためにデータ遷移204においてある論理電圧レベルから別の論理電圧レベルに遷移するように構成される。したがって、DME下の「シンボル」は、クロック遷移206間の信号202の期間を指す。また、「半シンボル」は、クロック遷移206とデータ遷移204との間の信号202の期間を指す。「シンボル」は、2つの「半シンボル」を含み、これらは一緒に「0」又は「1」のいずれかの信号を送る。更に、(例えば、「半シンボル」を反転させることによって)「半シンボル」を補正することにより、「半シンボル」が属する「シンボル」も補正する。データ遷移204において一定を保つことは、信号「1」を送るために等しく使用され得、データ遷移204におけるある論理電圧レベルから別の論理電圧レベルへの遷移は、信号「0」を送るために使用され得ることに留意されたい。
【0027】
信号202は、信号202がクロック遷移において、ある論理電圧レベルから別の論理電圧レベルに遷移しないDME違反208を含む。信号202では、DME違反208のクロック遷移直前の半シンボル210と、DME違反208のクロック遷移直後の半シンボル212とはいずれも、論理レベル高電圧レベルにある。結果として、ビット誤りが発生したものと決定され得る。より具体的には、半シンボル210又は半シンボル212のうちの一方が反転されていると想定され得る。結果として、DME違反208の前のビット及びDME違反208の後のビットの正しい値は不明である(
図2において「?」と記されている)。
【0028】
図3は、別のDME違反308を示す信号タイミング
図300である。信号タイミング
図300は、元の波形302、受信波形304、及び補正波形306を含み、クロック遷移310及びデータ遷移312を示す。元の波形302は、第1の符号化ビット314(論理電圧レベル間の遷移なしとして「0」が、それぞれのデータ遷移312において、すなわちクロック遷移310間に発生する)と、第2の符号化ビット316(例えば、論理レベル低と論理レベル高との間の遷移として「1」が、それぞれのデータ遷移312において、すなわちクロック遷移310間に発生する)を含む。
【0029】
受信波形304は、有線ローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネット)の共有伝送媒体106(
図1)を介して受信される元の波形302の受信バージョンであり得る。
図3に見られるように、クロック遷移310において論理電圧レベル間には受信波形304の遷移がないため、受信波形304はDME違反308を含む。
図3のDME違反308などのDME違反が発生すると、デコーダは、DME違反308の直前の先行する半シンボル322又はDME違反308の直後の後続する半シンボル324が反転されているかどうかを推定する。いずれの追加情報もない場合、先行する半シンボル322又は後続する半シンボル324が反転されるべきかどうかを正確に推定する確率は50%(正確な推定50%、及びビット誤りを引き起こす不正確な推定50%)である。
【0030】
補正波形306は、受信波形304の先行する半シンボル322を反転させるべきであるとデコーダが誤って推定した場合に生じる波形を反映している。その結果、補正波形306は、「1」の第1の復号ビット318及び「0」の第2の復号ビット320を含み、これらは、「0」の第1の符号化ビット314及び「1」の第2の符号化ビット316を有する元の波形302と比較して、2つのビット誤りとなる。したがって、デコーダが誤った半シンボルを反転させるべきであると不正確に推定すると、不正確な推定によって2つのビット誤りが生じる。経時的に多数のDME違反が生じた場合、DME違反を正確に補正する確率50%では、1つのDME違反当たり2つのビット誤りは、平均して1つのDME違反当たり約1つのビット誤りとなる。結果として、本明細書のいくつかの実施形態は、検出されたDME違反率と同じになるBERを推定することを目的とする。
【0031】
図4は、いくつかの実施形態による、信号のBERを決定する方法400を示すフロー図である。動作402では、方法400は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信された信号内のコード化違反を識別する。いくつかの実施形態では、信号内のコード化違反を識別するステップは、信号内のDME違反を識別するステップを含む。
【0032】
動作404では、方法400は、1単位時間当たりの信号内のDMEコード化違反の率を決定する。動作406では、方法400は、1単位時間当たりの信号内のDMEコード化違反の決定された率に等しくなる信号のBERを推定する。
【0033】
図5は、いくつかの実施形態による、異なる信号完全性の欠陥を示す信号タイミング
図500である。信号タイミング
図500は、信号波形502、受信信号波形504、及び別の受信信号波形506を含む。信号タイミング
図500はまた、クロック遷移508、及びデータ遷移510を示す。受信信号波形504及び受信信号波形506は、有線ローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネット)の共有伝送媒体106(
図1)を介して受信され得る、信号波形502の受信バージョンであり得る。
【0034】
図5に見られるように、信号波形502は、2つの論理電圧レベル、論理高電圧レベルVHIGHと論理低電圧レベルVLOWとの間で交互になっている。信号波形502はまた、きれいな矩形波形状を有する。結果として、信号波形502は、
図5に示されるそのシンボル(例えば、半シンボル)において高レベルの信号完全性を有する。
【0035】
受信信号波形504は、論理高電圧レベルVHIGHに到達することができない半シンボルを含む。結果として、半シンボルの振幅が信号波形502の振幅と比較して不足しているため、受信信号波形504のこの半シンボルは信号完全性が低下している。
【0036】
受信信号波形506は、きれいな矩形波波形を表すことができない半シンボルを含む。例えば、セグメント512では、受信信号波形506は、受信信号波形506の半シンボルの間にきれいな波形から逸脱している。結果として、受信信号波形506は、信号波形502と比較して低下した信号品質により、信号完全性が低下している。
【0037】
それぞれの半シンボルの信号完全性が既知である場合、改善された誤り補正が適用され得る。信号完全性は、信号振幅、信号品質(例えば、波形形状)、他の要因、又はそれらの組み合わせを含み得る。別の半シンボルより低い信号完全性を有する(例えば、予期された信号完全性から更に逸脱している)半シンボルは、反転されている確率が高い。その結果、DME違反が、別個の信号完全性を有する隣接する半シンボルを伴う場合、結果として生じる復号ビット誤りは、より低い信号完全性を有する半シンボルを補正することによって補正され得るという可能性がある。最終的なBERは、より低い信号完全性(例えば、予期された信号完全性からより大きく逸脱する信号完全性)を有する半シンボルを補正することによって低減され得る。当然のことながら、DME違反に隣接する半シンボルの信号完全性がほぼ同じである場合、信号完全性のみに基づいてどの半シンボルが反転されているかを決定することは困難又は不可能であり得る。
【0038】
図6は、いくつかの実施形態による、信号振幅に基づく誤り補正を示す信号タイミング
図600である。信号タイミング
図600は、受信信号602及び補正信号604を含み、データ遷移614及びクロック遷移616を示す。クロック遷移616では、クロック遷移616に受信信号602の遷移がないため、受信信号602はDME違反606を含む。
【0039】
受信信号602はまた、DME違反606の直前の先行する半シンボル610と、DME違反606の直後の後続する半シンボル612と、を含む。受信信号602は、後続する半シンボル612の間のセグメント608において完全にはVHIGHでないことを除き、論理レベル高電圧レベルVHIGHと論理レベル低電圧レベルVLOWとの間で交互になっている。先行する半シンボル610又は後続する半シンボル612のうちの一方をランダムに選択して反転させ、受信信号602を補正することを試みるのではなく、デコーダは、先行する半シンボル610及び後続する半シンボル612の振幅を考慮し得る。例えば、デコーダは、セグメント608における受信信号602の振幅がVHIGH又はVLOWにないことを検出し、したがって、後続する半シンボル612を反転させるべきであるということを決定し得る。
【0040】
補正信号604は、補正後の受信信号602を示す。例えば、後続する半シンボル612の間のセグメント608における受信信号602の信号振幅が、予期されたレベルにないことが検出されたため、デコーダは、後続する半シンボル612を反転させるべきであるということを決定し得る。補正信号604では、後続する半シンボル612が反転された状態で示されている。
【0041】
図7は、いくつかの実施形態による、信号品質に基づく誤り補正を示す信号タイミング
図700である。信号タイミング
図700は、受信信号702及び補正信号704を含み、データ遷移710及びクロック遷移716を示す。クロック遷移716では、クロック遷移716に受信信号702の遷移がないため、受信信号702はDME違反706を含む。
【0042】
受信信号702はまた、DME違反706の直前の先行する半シンボル712と、DME違反706の直後の後続する半シンボル714と、を含む。受信信号702は、後続する半シンボル714の間のセグメント708において、一定のレベルで停止するのではなくいくつかのアーチファクトを示すことを除き、矩形波形状を維持している。先行する半シンボル712又は後続する半シンボル714のうちの一方を選択して反転させ、受信信号702を補正することを試みるのではなく、デコーダは、先行する半シンボル712及び後続する半シンボル714の信号品質を考慮し得る。例えば、デコーダは、セグメント708における受信信号702の波形形状が矩形波に従っていない、すなわち、不適切な形状の完全性を有するということを検出し、したがって、後続する半シンボル714を反転させるべきであるということを決定し得る。
【0043】
補正信号704は、補正後の受信信号702を示す。例えば、後続する半シンボル714の間のセグメント708における受信信号702の信号品質が、予期された矩形波から逸脱していることが検出されたため、デコーダは、後続する半シンボル714を反転させるべきであるということを決定し得る。補正信号704では、後続する半シンボル714が反転された状態で示されている。
【0044】
図8は、いくつかの実施形態による、信号内の誤りを補正する方法800を示すフロー図である。動作802では、方法800は、受信信号内のコード化違反を識別し、受信信号は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信されたものである。いくつかの実施形態では、コード化違反を識別するステップは、DME違反を識別するステップを含む。
【0045】
動作804では、方法800は、コード化違反の直前の先行する半シンボルの先行する信号完全性を決定する。動作806では、方法800は、コード化違反の直後の後続する半シンボルの後続する信号完全性を決定する。いくつかの実施形態では、先行する信号完全性を決定するステップ及び後続する信号完全性を決定するステップは、先行する半シンボル及び後続する半シンボルの信号振幅の完全性を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、先行する信号完全性を決定するステップ及び後続する信号完全性を決定するステップは、先行する半シンボル及び後続する半シンボルの信号波形形状の完全性を決定するステップを含む。
【0046】
動作808では、方法800は、先行する信号完全性及び後続する信号完全性に基づいて、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択する。いくつかの実施形態では、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択するステップは、予期された振幅から最も遠い振幅を有する先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択するステップを含む。いくつかの実施形態では、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択するステップは、予期された信号波形形状から最も遠い信号波形形状を有する先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択するステップを含む。動作810では、方法800は、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの選択された一方を反転させて、受信信号を補正する。
【0047】
信号の実際のBERが低いとき、及び/又は連続パケットが異なるソースから受信されるとき、BERの直接測定は実用的ではない場合がある。そのような場合、BERは、BERを信号ノイズの関数として維持するルックアップテーブルを使用して取得され得る。
【0048】
図9は、いくつかの実施形態による、ガウスノイズ標準偏差に対してプロットされた推定BER及び測定BERの例を示すBERプロット900である。したがって、プロットは、ノイズのレベルを上げることがBERにどのように影響するかを示し得る。BERプロット900は、実際のBER902と、本明細書に開示される誤り補正実施形態を使用せずに得た推定BER904と、を含む。実際のBER902は、実際のビット誤りに基づいてカウントされる。推定BER904は、上述のように、DME違反に基づいてPHY(例えば、
図1のPHY102)でカウントされる。BERプロット900の実際のBER902及び推定BER904を観察することによって分かり得るように、推定BER904は、実際のBER902に非常に近い。
【0049】
BERプロット900はまた、実際のBER906と、本明細書に開示される誤り補正実施形態を使用して得た推定BER908と、を含む。実際のBER906及び推定BER908をそれぞれ実際のBER902及び推定BER904と比較して観察することによって分かり得るように、本明細書に開示される誤り補正実施形態は、性能を改善する(すなわち、BERを減少させる)。
【0050】
本明細書に開示される実施形態によれば、BERステータスが報告され得る。例えば、10SPE PHY(例えば、
図1のPHY102)は、BERステータスを決定し、報告するように構成され得る。PHYがDME違反を検出しない場合、BERゼロが決定され得る。DME違反が検出された場合、ビット誤りが発生しており、ビット誤りは補正され得るが、結果として、推定され得るBERを得ることになる。場合によっては、ビット誤りは、検出されたDMEに基づいて検出され得るが、補正されない可能性がある(例えば、先行する半シンボル及び後続する半シンボルの信号完全性がほぼ同じである)。補正信号のBERを決定するために、補正されないDME違反の数がカウントされ得る。
【0051】
図9は、推定BER904が実際のBER902と同様であり、推定BER908が実際のBER906と同様であることを示しているが、推定BER904と実際のBER902との間、及び推定BER908と実際のBER906との間(すなわち、異なるBERレベル)には差がある。
【0052】
図10は、いくつかの実施形態による、物理層デバイス1000のブロック図である。いくつかの実施形態では、PHY102は、物理層デバイス1000を含み得る。物理層デバイス1000は、共有伝送媒体(例えば、
図1の共有伝送媒体106)から信号1002を受信するように構成された入力部1006(例えば、物理層デバイス1000を含む半導体デバイスパッケージのピン)を含む。物理層デバイス1000は、半シンボルの信号完全性に応答して、信号1002のBERを推定し、信号1002内のビット誤りを補正するように構成されている。
【0053】
物理層デバイス1000は、信号1002を受信し、信号1002内のコード化違反(例えば、DMEコード化違反)を検出し、検出されたコード化違反1020をコード化違反率検出器1008に示すように構成された、コード化違反検出器1004を含む。コード化違反率検出器1008は、検出されたコード化違反1020を受信し、検出されたコード化違反1020に少なくとも部分的に基づいて、コード化違反率1022を決定するように構成されている。
【0054】
コード化違反検出器1004はまた、検出されたコード化違反1020を信号完全性検出器1010に提供するように構成されている。信号完全性検出器1010は、検出されたコード化違反1020を受信し、検出されたコード化違反の直前の信号1002の先行する半シンボルの先行する信号完全性1016と、検出されたコード化違反の直後の後続する半シンボルの後続する信号完全性1018と、を識別するように構成されている。信号完全性検出器1010は、先行する信号完全性1016及び後続する信号完全性1018をシンボルセレクタ1012に提供するように構成されている。
【0055】
シンボルセレクタ1012は、先行する信号完全性1016及び後続する信号完全性1018を受信し、先行する信号完全性1016及び後続する信号完全性1018に少なくとも部分的に基づいて、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択するように構成されている。シンボルセレクタ1012は、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのどちらが選択されているかを示す、選択されたシンボル1026をシンボルインバータ1014に提供するように構成されている。
【0056】
シンボルインバータ1014は、選択されたシンボル1026を受信し、選択されたシンボル1026によって示されるように、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの選択された一方を反転させるように構成されている。半シンボルが反転されると、シンボルインバータ1014は、反転された半シンボルを含む補正信号1024を提供するように構成されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、物理層デバイス1000は、物理層デバイス1000の動作を実行するように構成された1つ以上のプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、物理層デバイス1000の一部又は全部は、1つ以上のデータ記憶デバイスによって記憶され、処理回路によって実行されるソフトウェア又はファームウェアを使用して実装され得る(
図11のコンピューティングデバイス1100を参照)。いくつかの実施形態では、物理層デバイス1000の一部又は全部は、組み合わせ論理などの電気ハードウェア構成要素を使用して実装され得る。非限定的な例として、物理層デバイス1000の一部又は全部は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、他の論理デバイス、又はそれらの組み合わせを使用して実装され得る。
【0058】
図11は、いくつかの実施形態で使用され得るコンピューティングデバイス1100のブロック図である。コンピューティングデバイス1100は、1つ以上のデータ記憶デバイス1104(本明細書では「記憶装置」1104と称されることもある)に動作可能に結合された1つ以上のプロセッサ1102(本明細書では「プロセッサ」1102と称されることもある)を含む。記憶装置1104は、その記憶装置に記憶されたコンピュータ可読命令を含む。コンピュータ可読命令は、プロセッサ1102に、本明細書で開示される実施形態の動作を実行するように命令するように構成されている。例えば、コンピュータ可読命令は、
図4の方法400及び/又は
図8の方法800の少なくとも一部分又は全体を実行するようにプロセッサ1102に命令するように構成され得る。別の例としては、コンピュータ可読命令は、
図1のPHY102に関して論じられた動作の少なくとも一部分又は全体を実行するようにプロセッサ1102に命令するように構成され得る。更なる例としては、コンピュータ可読命令は、
図10の物理層デバイス1000に関して論じられた動作の少なくとも一部分又は全体を実行するようにプロセッサ1102に命令するように構成され得る。特定の非限定的な例として、コンピュータ可読命令は、信号内の検出されたDME違反の率に基づいて、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体106から受信された信号のBERを推定するように、プロセッサ1102に命令するように構成され得る。別の特定の非限定的な例として、コンピュータ可読命令は、先行する半シンボル及び後続する半シンボルの信号完全性に基づき、検出されたDME違反の前の先行する半シンボル又は検出されたDME違反の後の後続する半シンボルのうちの一方を反転させることによって、受信信号内のビット誤りを補正するように、プロセッサ1102に命令するように構成され得る。
【0059】
本開示で使用するとき、用語「モジュール」又は「構成要素」は、コンピューティングシステムの汎用ハードウェア(例えば、コンピュータ可読媒体、処理デバイスなど)に記憶され、及び/又はその汎用ハードウェアによって実行され得るモジュール若しくは構成要素及び/又はソフトウェアオブジェクト若しくはソフトウェアルーチンのアクションを実行するように構成された特定のハードウェア実装を指し得る。いくつかの実施形態では、本開示に記載される異なる構成要素、モジュール、エンジン、及びサービスは、(例えば、別個のスレッドとして)コンピューティングシステムで実行するオブジェクト又はプロセスとして実装され得る。本開示に記載されるシステム及び方法のいくつかは、一般に、ソフトウェア(汎用ハードウェアに記憶され、かつ/又は実行される)に実装されるものとして記載されているが、特定のハードウェア実装、又はソフトウェアと特定のハードウェア実装との組み合わせも可能であり、企図される。
【0060】
本開示で使用するとき、複数の要素に関連する用語「組み合わせ」は、全ての要素の組み合わせ、又は要素の一部の様々な異なる部分的組み合わせのいずれかを含み得る。例えば、「A、B、C、D、又はそれらの組み合わせ」という語句は、A、B、C、又はDのいずれか1つ、A、B、C、及びDのそれぞれの組み合わせ、並びにA、B、及びC;A、B、及びD;A、C、及びD;B、C、及びD;A及びB;A及びC;A及びD;B及びC;B及びD;又はC及びDなど、A、B、C、又はDの任意の部分的組み合わせを指し得る。
【0061】
本開示で使用される用語、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)において使用される用語は、一般に「開放型(open)」用語として意図される(例えば、用語「含んでいる(including)」は、「含んでいるが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有している」という用語は、「少なくとも有している」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」などと解釈されるべきである。
【0062】
加えて、特定の数の導入された請求項列挙が意図される場合、このような意図は請求項に明示的に列挙されることになり、このような列挙がない場合には、このような意図は存在しない。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の請求項は、請求項の列挙を導入するための導入句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含むことがある。しかし、このような語句の使用は、たとえ同じ請求項が導入語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項列挙の導入が、そのような導入された請求項列挙を含む任意の特定の請求項を、そのような列挙のうちの1つのみを含む実施形態に限定するものと解釈されるべきではない(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。請求項列挙を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが当てはまる。
【0063】
加えて、導入された請求項列挙の特定の数が明示的に列挙されている場合であっても、当業者は、このような列挙が少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを、認識するであろう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの列挙」の明白な列挙は、少なくとも2つの列挙又は2つ以上の列挙を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、及びCなどのうちの1つ以上」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構造は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、又はA、B、及びCを一緒に含むことを意図する。
【0064】
更に、2つ以上の代替用語を提示する任意の離接語又は語句は、説明、請求項、又は図面のいずれかにおいて、用語のうちの1つ、用語のいずれか又は両方の用語を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるべきである。
【0065】
実施例
例示的な実施形態の非網羅的で非限定的なリストは、以下のとおりである。以下にリストされる例示的な実施形態の各々は、以下にリストされる例示的な実施形態及び上で考察された実施形態のうちの他の全てと組み合わせ可能であると個別に示されるわけではない。しかし、これらの例示的な実施形態は、実施形態が組み合わせ可能ではないことが当業者には明らかである場合を除き、全ての他の例示的な実施形態及び上述の実施形態と組み合わせ可能であることが意図される。
【0066】
実施例1:物理層デバイスであって、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から信号を受信するように構成された入力部と、1つ以上のプロセッサであって、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信された信号内のコード化違反を識別し、信号内のコード化違反の率を決定し、コード化違反の決定された率となる信号のビット誤り率を推定するように構成された、1つ以上のプロセッサと、を備える、物理層デバイス。
【0067】
実施例2:コード化違反は、差動マンチェスタ符号化違反を含む、実施例1に記載の物理層デバイス。
【0068】
実施例3:1つ以上のプロセッサは、信号内の識別されたコード化違反に隣接する1つ以上のシンボルを補正するように更に構成されている、実施例1及び2のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0069】
実施例3A:1つ以上のプロセッサは、識別されたコード化違反に隣接する1つ以上のシンボルの半シンボルを反転させることによって、識別されたコード化違反に隣接する1つ以上のシンボルを補正するように構成されている、実施例3に記載の物理層デバイス。
【0070】
実施例4:1つ以上のプロセッサは、コード化違反の前の先行するシンボル及びコード化違反の後の後続するシンボルの信号完全性に基づいて、1つ以上のシンボルを補正するように更に構成されている、実施例3に記載の物理層デバイス。
【0071】
実施例5:物理層デバイスであって、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から信号を受信するように構成された入力部と、1つ以上のプロセッサであって、受信信号内のコード化違反を識別し、コード化違反の直前の先行する半シンボルの先行する信号完全性を決定し、コード化違反の直後の後続する半シンボルの後続する信号完全性を決定し、先行する信号完全性及び後続する信号完全性に少なくとも部分的に基づいて、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの一方を選択し、受信信号を補正するために、先行する半シンボル又は後続する半シンボルのうちの選択された一方を反転させるように構成された、1つ以上のプロセッサと、を備える、物理層デバイス。
【0072】
実施例6:コード化違反は、差動マンチェスタ符号化違反を含む、実施例5に記載の物理層デバイス。
【0073】
実施例7:信号完全性は、先行する半シンボル及び後続する半シンボルの信号振幅である、実施例5及び6のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0074】
実施例8:信号完全性は、測定された振幅と予期された振幅との間の差である、実施例7に記載の物理層デバイス。
【0075】
実施例9:信号完全性は、先行する半シンボル及び後続する半シンボルの信号波形形状の完全性である、実施例5及び6のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0076】
実施例10:信号波形形状の完全性は、信号の決定された信号波形形状と予期された信号波形形状との間の差を含む、実施例9に記載の物理層デバイス。
【0077】
実施例11:信号のビット誤り率(BER)を推定する方法であって、方法は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信された信号内のコード化違反を識別するステップと、信号内のコード化違反の率を決定するステップと、信号内のコード化違反の決定された率となる信号のBERを推定するステップと、を含む、方法。
【0078】
実施例12:コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号完全性を識別するステップを更に含む、実施例11に記載の方法。
【0079】
実施例13:コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号完全性を識別するステップは、コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号振幅の完全性を識別するステップを含む、実施例12に記載の方法。
【0080】
実施例14:コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号完全性を識別するステップは、コード化違反の前の半シンボル及び後の半シンボルの信号波形形状の完全性を識別するステップを含む、実施例12に記載の方法。
【0081】
実施例15:コード化違反の前の半シンボル又は後の半シンボルのうちの一方が、前の半シンボル又は後の半シンボルのうちの他方より大きい、予期された信号完全性と異なる信号完全性を有するということを決定するステップと、他方より大きい、異なる信号完全性を有する前の半シンボル又は後の半シンボルのうちの一方を補正するステップと、を更に含む、実施例12~14のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施例16:前の半シンボル又は後の半シンボルのうちの一方を補正するステップは、前の半シンボル又は後のシンボルのうちの一方を反転させるステップを含む、実施例15に記載の方法。
【0083】
実施例17:受信信号に対して誤り補正を実行する方法であって、方法は、受信信号内のコード化違反を識別するステップであって、受信信号は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体を介して受信されたものである、識別するステップと、コード化違反の直前の先行するシンボルの先行する信号完全性を決定するステップと、コード化違反の直後の後続するシンボルの後続する信号完全性を決定するステップと、先行する信号完全性及び後続する信号完全性に少なくとも部分的に基づいて、先行するシンボル又は後続するシンボルのうちの一方を選択するステップと、受信信号を補正するために、先行するシンボル又は後続するシンボルのうちの選択された一方を反転させるステップと、を含む、方法。
【0084】
実施例18:先行する信号完全性を決定するステップ及び後続する信号完全性を決定するステップは、先行するシンボル及び後続するシンボルの信号振幅の完全性を決定するステップを含む、実施例17に記載の方法。
【0085】
実施例19:先行する信号完全性及び後続する信号完全性に少なくとも部分的に基づいて、先行するシンボル又は後続するシンボルのうちの一方を選択するステップは、予期された振幅から最も遠い振幅を有する先行するシンボル又は後続するシンボルのうちの一方を選択するステップを含む、実施例17及び18のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施例20:先行する信号完全性を決定するステップ及び後続する信号完全性を決定するステップは、先行するシンボル及び後続するシンボルの信号波形形状の完全性を決定するステップを含む、実施例17及び19のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
結論
本開示は、特定の例示される実施形態に関して本明細書に記載されているが、当業者は、本発明がそのように限定されないことを認識し、理解するであろう。むしろ、以下にそれらの法的等価物と共に特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく、例示され、説明される実施形態に対して数多くの追加、削除、及び修正を行うことができる。加えて、一実施形態の特徴は、本発明者によって想到されるように、別の開示した実施形態の特徴と組み合わせることができるが、それでも、本開示の範囲内に包含される。