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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20240124BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240124BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240124BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240124BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/16
H10K71/16
H10K85/60
H10K101:30
H10K101:40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022517264
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2020011490
(87)【国際公開番号】W WO2021054640
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0113646
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520069590
【氏名又は名称】ソリュース先端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】SOLUS ADVANCED MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ソンイ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ホチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンモ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、スンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、グニョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒョボム
(72)【発明者】
【氏名】キム、テヒョン
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115833(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/012718(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0072245(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0022574(KR,A)
【文献】国際公開第2019/045252(WO,A1)
【文献】特開2017-028283(JP,A)
【文献】特開2016-110980(JP,A)
【文献】特表2018-518036(JP,A)
【文献】特表2019-522903(JP,A)
【文献】国際公開第2018/004095(WO,A1)
【文献】特表2017-502952(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101611505(CN,A)
【文献】特表2018-507174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0308142(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366677(US,A1)
【文献】特表2019-527930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/12
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 71/16
H10K 85/60
H10K 101/30
H10K 101/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極;
上記陽極に対向して配置された陰極;及び、
上記陽極と陰極との間に介在し、上記陽極上に順次配置された正孔輸送領域、発光層、及び電子輸送領域を含む有機物層;
を含み、
上記電子輸送領域は、上記発光層上に順次配置された電子輸送補助層、電子輸送層、及び電子注入層を含み、
上記発光層は、複数のホスト及びドーパントを含み、
上記複数のホストは、第1のホスト、及び当該第1のホストと異なる第2のホストを含み、
上記第1のホストと上記電子輸送補助層の材料は、互いに同一であり、下記化学式B-1~B-3、及びB-5~B-9で示される化合物からなる群から選択されるものである、有機電界発光素子。
【化1】
(化学式B-1のX、X、及びXは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、NもしくはC(R)であり、但し、X、X、及びXのうちの1つは、Nであり、このとき、C(R)が複数である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり;
化学式B-2、B-3及びB-5~B-9のX、X、及びXは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、NもしくはC(R)であり、但し、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、Nであり、このとき、C(R)が複数である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり;
化学式B-1~B-3、及びB-5~B-9において、
及びLは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、単結合であるか、又はC~C18のアリーレン基及び核原子数5~18のヘテロアリーレン基からなる群から選択され;
及びAは、NもしくはCR17であり、
及びAは、互いに同一又は異なり、Aは、単結合であるか、又はNR18、O、S、及びCR1920からなる群から選択され、Aは、NR18、O、及びSからなる群から選択され
、A、及びAは、NもしくはCR21であり、但し、A、A、及びAのうちの少なくとも1つは、Nであり、このとき、CR21が複数である場合、複数のR21は、互いに同一又は異なり、
a、b、c、d、e、f、h、k、及びlは、それぞれ、0~4の整数であり、
g及びjは、それぞれ、0~3の整数であり、
i及びmは、それぞれ、0~9の整数であり、
n6は、0~4の整数であり、
n7は、0~3の整数であり、
、R~R、及びR12~R23は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択されるか、又は隣接する基と結合して縮合環を形成することができ;
10及びR11は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択され;
上記R及びR~R23の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリールアミン基、アルキルシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、水素、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換又は非置換であり、このとき、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なることができる。)
【請求項2】
上記電子輸送補助層は、下記関係式5を満たす、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【数1】
(式中、
HOMOαETLは、電子輸送補助層のHOMOエネルギー準位であり、
HOMOhost-2は、第2のホストのHOMOエネルギー準位である。)
【請求項3】
上記電子輸送補助層のHOMOエネルギー準位の絶対値と、上記第2のホストのHOMOエネルギー準位の絶対値との差は、0.02~0.25eVの範囲である、請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
上記電子輸送補助層は、下記関係式6を満たす、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【数2】
(式中、
LUMOETLは、電子輸送層のLUMOエネルギー準位であり、
LUMOαETLは、電子輸送補助層のLUMOエネルギー準位であり、
LUMOhost-2は、第2のホストのLUMOエネルギー準位である。)
【請求項5】
上記電子輸送補助層のLUMOエネルギー準位の絶対値と、上記電子輸送層のLUMOエネルギー準位の絶対値との間の差は、0eV超~1.0eV以下の範囲である、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
上記電子輸送補助層のLUMOエネルギー準位の絶対値と、上記第2のホストのLUMOエネルギー準位の絶対値との間の差は、0.02~0.17eVの範囲である、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
上記第1のホストと上記電子輸送補助層の材料は、互いに同一であり、下記化合物3、化合物~14のうちのいずれか1つである、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化2】
【請求項8】
上記複数のホストのうち、上記電子輸送補助層の材料と同一であるホストの含有量は、全ホストの総量を基準にして30~90重量%の範囲である、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
上記第2のホストは、下記関係式1及び2を満たす、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【数3】
(式中、
LUMOhost-1は、第1のホストのLUMOエネルギー準位であり、
LUMOhost-2は、第2のホストのLUMOエネルギー準位であり、
HOMOhost-1は、第1のホストのHOMOエネルギー準位であり、
HOMOhost-2は、第2のホストのHOMOエネルギー準位である。)
【請求項10】
上記第2のホストのLUMOエネルギー準位の絶対値と、上記第1のホストのLUMOエネルギー準位の絶対値との間の差は、0eV超~1.0eV以下の範囲であり、
上記第2のホストのHOMOエネルギー準位の絶対値と、上記第1のホストのHOMOエネルギー準位の絶対値との間の差は、0eV超~1.0eV以下の範囲である、請求項9に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
上記第1のホストと第2のホストとの使用割合は、30:70~90:10の重量割合である、請求項9に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
上記ドーパントは、上記複数のホスト100重量部に対して、0重量部超~20重量部以下の範囲である、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
上記発光層は、上記複数のホストを共蒸着させて形成されるものである、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
上記正孔輸送領域は、正孔注入層、正孔輸送層、及び正孔輸送補助層からなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い発光効率、低い駆動電圧、及び長寿命などを同時に発揮する有機電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という。)は、両電極に電流又は電圧を印加すると、陽極から正孔が有機物層に注入され、また、陰極から電子が有機物層に注入される。注入された正孔と電子とが結合して励起子(exciton)が生成され、この励起子が基底状態に戻る際に光を放出する。
【0003】
このような有機EL素子は、励起子の電子スピンの状態によって、一重項励起子が発光に寄与する蛍光EL素子と、三重項励起子が発光に寄与する燐光EL素子とに区分される。
【0004】
蛍光EL素子は、生成率によって、理論的に内部量子効率が最大25%程度が限界であるが、燐光EL素子は、内部量子効率が最大100%であることもできる。燐光の場合、三重項と一重項が内部量子効率に関与して高い内部量子効率が得られるが、蛍光の場合は、一重項遷移のみ起こるため、最大内部量子効率が燐光の四分の一に過ぎない。このように、燐光EL素子は、理論的に発光効率が蛍光より高い。
【0005】
しかし、緑色・赤色の燐光EL素子とは異なり、青色の燐光EL素子は、濃青色の色純度及び高効率を持つ燐光ドーパント、及び広いエネルギーギャップを持つホストに関する開発の水準が不十分であって商用化されていない。そのため、青色の燐光ELの代わりに青色の蛍光EL素子が使用されている。
【0006】
なお、近年、ディスプレイの大型化及び高解像度化の傾向にあるため、高効率及び長寿命を有する有機EL素子の開発が求められている。特に、ディスプレイの高解像度化は、同一の面積でより多くの画素が形成されることで実現できる。これにより、有機EL素子の発光面積が減少し、このような発光面積の減少は、有機EL素子の寿命低下の原因となっている。そのため、有機EL素子の特性向上のために様々な研究が進められているが、現在まで満足のいく結果が得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発光層が複数のホスト及びドーパントを含み、複数のホストのうちの1つが、電子輸送補助層の材料と同一の材料を含むことにより、低い駆動電圧、高い発光効率、長寿命などの効果を奏する有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明は、陽極;上記陽極に対向して配置された陰極;及び、上記陽極と陰極との間に介在し、上記陽極上に順次配置された正孔輸送領域、発光層、及び電子輸送領域を含む有機物層;を含み、上記電子輸送領域は、上記発光層上に順次配置された電子輸送補助層、電子輸送層、及び電子注入層を含み、上記発光層は、複数のホスト及びドーパントを含み、上記複数のホストのうちの一つは、上記電子輸送補助層の材料と同じ材料からなるものである、有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、複数のホスト及びドーパントを含む発光層を備えるが、上記複数のホストのうちの1つに、電子輸送補助層の材料と同じ材料を適用することにより、低い駆動電圧、高い発光効率、長寿命などの効果を奏する有機電界発光素子を提供することができる。
【0010】
また、本発明の有機電界発光素子をディスプレイパネルに適用することにより、性能及び寿命が向上したディスプレイパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る有機電界発光素子の構造を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施例に係る有機電界発光素子の構造を示す断面図である。
図3】本発明の一実施例によって発光層と電子輸送補助層との間のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)エネルギー準位の関係を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例によって発光層と電子輸送補助層及び電子輸送層との間のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)エネルギー準位の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0012】
100:陽極、200:陰極、300:有機物層、310:正孔輸送領域、311:正孔注入層、312:正孔輸送層、313:正孔輸送補助層、320:発光層、330:電子輸送領域、331:電子輸送補助層、332:電子輸送層、333:電子注入層
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の利点及び特徴と、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例などを参照すると、明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で具現され、単に後述の実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によってのみ定義される。従って、いくつかの実施例において、よく知られている工程ステップなど、よく知られている素子構造及びよく知られている技術は、本発明が曖昧に解釈されることを避けるために具体的に説明されない。明細書全体にわたって同一の参照符号は、同一の構成要素を指称する。
【0014】
別段の定義がなければ、本明細書中において使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって共通に理解される意味で使用できるだろう。なお、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、別途記載のない限り、理想的に又は過度に解釈されてはならない。
【0015】
本発明に係る有機電界発光素子は、陽極;上記陽極に対向して配置された陰極;及び、上記陽極と陰極との間に介在し、正孔輸送領域、発光層、及び電子輸送領域を含む1層以上の有機物層;を含み、上記発光層中の複数のホストのうちの1つに、電子輸送領域中の電子輸送補助層の材料を適用する。これによって、本発明の有機電界発光素子は、低い駆動電圧、高い発光効率、及び長寿命特徴を有することができる。
【0016】
具体的に、本発明の有機電界発光素子において、発光層は、複数のホスト、例えば、互いに異なる第1のホスト及び第2のホストを含むことにより、正孔と電子との再結合効率を向上させながら、ホストからドーパントに遷移した励起子がホストに逆移動する現象を防止することができる。
【0017】
このとき、発光層と電子輸送層との間に電子輸送補助層を配置するが、上記複数のホストのうちのいずれか1つが、上記電子輸送補助層の材料と同じものであることにより、発光層と電子輸送層との間の電子注入障壁が低くなるとともに、発光層と電子輸送補助層との間でバリアフリー(Barrier-free)効果が発揮され、電子輸送層から注入された電子が電子輸送補助層を介して発光層に円滑に供給されることができる。これにより、本発明の有機電界発光素子は、発光効率が向上し、駆動電圧が低く、かつ寿命特性が有意に改善される。
【0018】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る有機電界発光素子の好適な実施形態を説明する。なお、本発明の実施例は、様々な変更して実施することができ、本発明の範囲は、後述の実施例に限定されない。
【0019】
図1は、一実施例に係る有機発光素子の構造を概略的に示す断面図であり、図2は、他の実施例に係る有機発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
【0020】
図1及び図2を参照して、有機電界発光素子は、陽極(anode)100、1層以上の有機物層300、及び陰極(cathode)200を順に含み、上記有機物層300は、正孔輸送領域310、発光層320、及び電子輸送領域330を含む。選択的に、上記有機発光素子は、第2の電極200上に配置されたキャッピング層(図示せず)をさらに含むことができる。
【0021】
以下、本発明に係る有機発光素子の各構成について詳述する。
【0022】
(1)陽極
本発明の有機電界発光素子は、陽極(anode)100を含む。上記陽極100は、基板上に配置されるものであり、駆動薄膜トランジスタと電気的に接続され、駆動薄膜トランジスタから駆動電流の供給を受けることができる。このような陽極100は、相対的に仕事関数の高い物質で形成されるため、正孔(hole)を、隣接する有機物層、即ち、正孔輸送領域310(例えば、正孔注入層311)内に注入する。
【0023】
このような陽極を形成する物質としては、特に限定されず、当業界に周知のものを使用することができる。例えば、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属;これらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:Al、SnO:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子;及び、カーボンブラックなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上記陽極を製造する方法は、特に限定されず、当業界に周知の常法で製造することができる。例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコート法などの公知の薄膜形成方法により、基板上に上記陽極物質をコーティングして形成することができる。
【0025】
上記基板は、有機電界発光素子を支持する板状の部材であり、例えば、シリコンウェハー、石英、ガラス板、金属板、プラスチックフィルム、及びシートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
(2)陰極
本発明の有機電界発光素子において、陰極(cathode)200は、陽極に対向して配置されており、具体的に電子輸送領域330の上に配置される。このような陰極200は、相対的に仕事関数の低い物質からなるため、電子(electron)を、隣接する有機物層、即ち、電子輸送領域330(例えば、電子注入層333)内に注入する。
【0027】
このような陰極を形成する物質としては、特に限定されず、当業界で周知のものを使用することができる。例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀(Ag)、錫、鉛などの金属;これらの合金;及び、LiF/Al、LiO/Alなどの多層構造物質などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
上記陰極を製造する方法は、特に限定されず、陽極と同様に、当業界で周知の常法で製造することができる。例えば、上述した薄膜形成方法により、上記陰極物質を、下記1層以上の有機物層300、具体的に電子輸送領域、例えば、電子注入層333上にコーティングして形成することができる。
【0029】
(3)有機物層
本発明の有機電界発光素子において、1層以上の有機物層300は、陽極100と陰極200との間に配置される。
【0030】
このような有機物層300は、正孔輸送領域310、発光層320、及び電子輸送領域330を含む。
【0031】
一例として、図1に示されるように、1層以上の有機物層300は、陽極1000上に順次配置された、正孔注入層311、正孔輸送層312、正孔輸送補助層313、発光層320、電子輸送補助層331、電子輸送層332、及び電子注入層333を含むことができる。
【0032】
他の一例として、図2に示されるように、1層以上の有機物層300は、陽極100上に順次配置された、正孔主入層311、正孔輸送層312、正孔輸送補助層313、発光層320、電子輸送補助層331、電子輸送層332,及び電子注入層333を含むことができる。
【0033】
以下、各有機物層について説明する。
【0034】
1)正孔輸送領域
本発明の有機発光素子100において、正孔輸送領域310は、陽極100上に配置された有機物層300の一部分であり、陽極100から注入される正孔を、隣接する他の有機層、具体的に発光層320に移動させる役割を果たす。このような正孔輸送領域310は、正孔注入層311、正孔輸送層312、及び正孔輸送補助層313からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0035】
一例として、図1に示されるように、正孔輸送領域310は、陽極100上に順次積層された、正孔注入層311、及び正孔輸送層312を含むことができる。
【0036】
他の一例として、図2に示されるように、正孔輸送領域310は、陽極100上に順次積層された、正孔注入層311、正孔輸送層312、及び正孔輸送補助層313を含むことができる。
【0037】
本発明の正孔注入層311及び正孔輸送層312を形成する物質としては、正孔注入障壁が低く、かつ正孔移動度が高い物質であれば、特に限定されず、当業界で使用される正孔注入層/輸送層の物質を制限なく使用することができる。なお、正孔注入層311及び正孔輸送層312を形成する物質は、互いに同一であるか、又は異なることができる。
【0038】
具体的に、上記正孔注入層311は、当該技術分野で公知の正孔注入物質を含む。上記正孔注入物質としては、例えば、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)などのフタロシアニン(phthalocyanine)化合物;DNTPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、m-MTDATA(4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、TDATA(4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2TNATA(4,4’,4’’-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS((ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルホネート))などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
上記正孔輸送層312は、当該技術分野で公知の正孔輸送物質を含む。上記正孔輸送物質としては、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体;フルオレン(fluorene)系誘導体;アミン系誘導体;TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4’’-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体;NPB(N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロヘキシリデンビス[N,N’-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
上記正孔輸送補助層313は、発光層320で生成された励起子又は電子が正孔輸送領域310へ拡散(移動)するのを防ぐことができる。このような正孔輸送補助層313の材料としては、当該分野で周知の正孔輸送特性を持つ物質であれば、制限なく使用可能であり、例えば、上述した正孔輸送物質であり得る。
【0041】
上述した正孔輸送領域310は、当該技術分野で周知の常法で製造することができる。例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェット印刷法、レーザープリント法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
2)発光層
本発明の有機電界発光素子において、発光層320は、陽極100と陰極200との間に介在する有機物層300の一部分であり、具体的に上記正孔輸送領域320上に配置される。具体的に発光層320は、正孔輸送層312上に配置され、又は正孔輸送補助層313上に配置される(図1及び2参照)。このような発光層320は、陽極及び陰極からそれぞれ注入された正孔と電子とが結合して励起子(exciton)が形成される層であり、発光層320をなす物質によって有機電界発光素子が出す光の色が変化し得る。
【0043】
本発明の発光層320は、複数のホスト及びドーパントを含む。このとき、複数のホストのうちのいずれか1つは、電子輸送補助層を形成する材料(以下、「電子輸送補助層材料」という。)と同一である。
【0044】
一例として、上記複数のホストは、電子輸送補助層材料と同一である第1のホスト、及び上記第1のホストと異なる第2のホストを含むことができる。このように、複数のホストのうちの1つが電子輸送補助層材料と同一である場合、発光層と電子輸送補助層との間のバリアフリー効果が奏され、素子の低い駆動電圧、高い発光効率、及び長寿命特性が得られる。
【0045】
本発明の第1のホストは、電子輸送補助層材料と同一の材料からなる。具体的に、第1のホストは、下記化学式1及び化学式2で示されるモイエティからなる群から選択される1種以上のモイエティを含有する化合物であり、より具体的に、下記化学式4~6のうちのいずれか1つで示される化合物であり、さらに具体的に、下記化学式A-1~A-16で示される化合物からなる群から選択されるものであり得る。例えば、第1のホストは、下記化学式B-1~B-9で示される化合物からなる群から選択されるものであり得る。一例として、本発明の第1のホストは、下記化合物1~14のうちのいずれか1つであり得る。このような化合物については、後述の電子輸送補助層の部分において詳述する。
【0046】
本発明の第2のホストは、上記第1のホストと異なるものであり、当業界でホスト物質として公知のものであれば、特に限定されず、例えば、アルカリ金属錯化合物;アルカリ土類金属錯化合物;又は、縮合芳香族環誘導体などが挙げられるが、これらに制限されない。具体的に、第2のホストとしては、例えば、有機電界発光素子の発光効率及び寿命を向上できるアルミニウム錯化合物、ベリリウム錯化合物、イリジウム化合物、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、フルオレン誘導体、含窒素複素環誘導体、又はこれらの1種以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0047】
但し、本発明では、発光層内の励起子の数を有意に増加させるとともに励起子の逆移動現象を防止するため、第2のホストを選択する際、第1のホストとのHOMOエネルギー準位差やLUMOエネルギー準位差などのような物性の差異を考慮する必要がある。
【0048】
一例では、第2のホストは、下記関係式1及び2を満たす材料であり得る。
【0049】
【数1】
(式中、
LUMOhost-1は、第1のホストのLUMOエネルギー準位であり、
LUMOhost-2は、第2のホストのLUMOエネルギー準位であり、
HOMOhost-1は、第1のホストのHOMOエネルギー準位であり、
HOMOhost-2は、第2のホストのHOMOエネルギー準位である。)
【0050】
具体的に、上記第2のホストのLUMOエネルギー準位の絶対値と、上記第1のホストのLUMOエネルギー準位の絶対値との差は、0eV超~1.0eV以下の範囲であり、上記第2のホストのHOMOエネルギー準位の絶対値と、上記第1のホストのHOMOエネルギー準位の絶対値との差は、0eV超~1.0eV以下の範囲であり得る。
【0051】
上記複数のホストの中で、電子輸送補助層材料と同一であるホスト(例えば、第1のホスト)の含有量は、全ホストの総量を基準にして約30~90重量%の範囲であり得る。一例として、複数のホストが電子輸送補助層材料と同一である第1のホストと、上記第1のホストとは異なる第2のホストとを含む場合、上記第1のホストと第2のホストとの使用割合は、特に限定されず、例えば、30:70~90:10の重量割合であり得る。もし、第1のホストと第2のホストとの使用割合が上述の範囲内である場合、発光層と電子輸送補助層との間のバリアフリー効果をより向上しながら、ドーパントからホストへ励起子が逆移動する現象をより効率的に防止することができる。
【0052】
選択的に、本発明の発光層は、上述した第1のホスト及び第2のホストと異なる他のホスト(例えば、第3のホスト)をさらに1つ以上含むことができる。このとき、第3のホストの例は、第2のホストと同様であるため、説明を省略する。
【0053】
本発明の発光層において、ドーパントは、当該技術分野で周知のものであれば、特に限定されない。このようなドーパントは、蛍光ドーパントと燐光ドーパントとに分類されるが、燐光ドーパントは、Ir、Pt、Os、Re、Ti、Zr、Hf、又はこれらの2種類以上の組み合わせを含む有機金属錯体であり得るが、これらに限定されない。
【0054】
なお、上記ドーパントは、赤色ドーパント、緑色ドーパント、及び青色ドーパントに分類されるが、当該技術分野で周知の赤色ドーパント、緑色ドーパント、及び青色ドーパントを、特に制限なく使用することができる。
【0055】
具体的に、上記赤色ドーパントとしては、例えば、PtOEP(Pt(II)octaethylporphine:Pt(II)オクタエチルポルフィン)、Ir(piq)(tris(2-phenylisoquinoline)iridium:トリス(2-フェニルキノリン)イリジウム)、BtpIr(acac)(bis(2-(2’-benzothienyl)-pyridinato-N,C3’)iridium(acetylacetonate):ビス(2-(2’-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3’)イリジウム(アセチルアセトネート))などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
また、上記緑色ドーパントとしては、例えば、Ir(ppy)(tris(2-phenylpyridine)iridium:トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム)、Ir(ppy)(acac)(Bis(2-phenylpyridine)(Acetylacetonato)iridium(III):ビス(2-フェニルピリジン)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、Ir(mppy)(tris-(2-(4-tolyl)phenylpyridine)iridium:トリス(2-(4-トリル)フェニルピリジン)イリジウム)、C545T(10-(2-benzothiazolyl)-1,1,7,7-tetramethyl-2,3,6,7-tetrahydro-1H,5H,11H-[1]benzopyrano[6,7,8-ij]-quinolizin-11-one:10-(2-ベンゾチアゾリル)-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]-キノリジン-11-オン)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
また、上記青色ドーパントとしては、例えば、FIrpic(Bis[3,5-difluoro-2-(2-pyridyl)phenyl](picolinato)iridium)(III):ビス[3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル](ピコリナト)イリジウム(III))、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、DPVBi(4,4’-bis(2,2’-diphenylethen-1-yl)biphenyl:4,4’-ビス(2,2’-ジフェニルエテン-1-イル)ビフェニル)、DPAVBi(4,4’-Bis[4-(diphenylamino)styryl]biphenyl:4,4’-ビス(4-ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル)、TBPe(2,5,8,11-tetra-tert-butylperylene:2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
このようなドーパントの含有量は、特に限定されず、当分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。
【0059】
一例として、発光層の総量を基準にして、複数のホストとドーパントとは、70:30~99.9:0.1の重量割合で含むことができる。具体的に、発光層320が青色蛍光、緑色蛍光、又は赤色蛍光である場合、複数のホストとドーパントとは、80:20~99.9:0.1の重量割合で含むことができる。また、発光層320が青色蛍光、緑色蛍光、又は赤色燐光である場合、複数のホストとドーパントとは、70:30~99:1の重量割合で含むことができる。
【0060】
他の一例として、ドーパントの含有量は、第1のホストと第2のホストとを合わせた総量100重量部に対して、約0~30重量部、具体的に0重量部超~20重量部、より具体的に約0.1~15重量部の範囲であり得る。
【0061】
上述した発光層320は、単層であるか、又は2層以上の複数の層からなることができる。なお、発光層320が複数の層である場合、有機電界発光素子は、様々な色の光を出すことができる。具体的に、本発明は、異種材料からなる発光層を直列に複数個備えることで、混合色を呈する有機電界発光素子を提供することができる。なお、複数個の発光層を含む場合、素子の駆動電圧は大きくなる反面、有機電界発光素子内の電流値が一定になり、発光層の数だけ発光効率が向上した有機電界発光素子を提供することができる。
【0062】
このような発光層320は、当該技術分野で周知の常法で製造することができる。例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェット印刷法、レーザープリント法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などが挙げられるが、これに限定されない。一例として、発光層は、複数のホスト(例えば、第1のホスト及び第2のホスト)が互いに混合し、共蒸着(co-deposition)されて形成される。
【0063】
3)電子輸送領域
本発明に係る有機電界発光素子において、電子輸送領域330は、発光層320上に配置される有機物層であり、陰極200から注入された電子を発光層320に移動させる。
【0064】
このような電子輸送領域330は、発光層320上に順次配置された電子輸送補助層331、電子輸送層332、及び電子注入層333を含む。
【0065】
本発明に係る電子輸送補助層331は、電子輸送層332から発光層320に電子を容易に移動させながら、発光層320で生成された励起子や発光層320に注入された正孔が電子輸送層332へ拡散(移動)するのを防ぐことができる。このような電子輸送補助層331をなす物質としては、また、電子注入障壁が低く、かつ電子移動度が高いものであれば、特に限定されず、当分野で公知のものを制限なく使用することができる。
【0066】
但し、本発明では、発光層と電子輸送補助層との間のバリアフリー効果を発揮するため、電子輸送補助層材料は、発光層内の複数のホストのうちの一つ(例えば、第1のホスト)と同一の材料である。特に、発光層内の複数のホストの中で、電子注入障壁が低く、かつ電子移動度が高いホストを用いて、電子輸送補助層を形成する。これにより、本発明の有機電界発光素子は、電子輸送層から注入された電子が電子輸送補助層を介して発光層へ円滑に供給され、正孔と電子との結合率が高まり、励起子の数が有意に増加される。従って、本発明の有機電界発光素子は、高効率の発光特性が発揮され、駆動電圧が低くなるとともに寿命特性が有意に改善される。
【0067】
このとき、電子輸送補助層331と発光層320との間のバリアフリー効果を発揮させるとともに、電子輸送補助層331と電子輸送層332との間の電子注入障壁を下げるため、電子輸送補助層331の材料は、電子輸送補助層331と電子輸送層332及び発光層320との間のHOMOエネルギー準位差やLUMOエネルギー準位差などのような物性の関係を考慮して選択する必要がある。
【0068】
一例では、本発明の電子輸送補助層331が下記関係式3を満たすように電子輸送補助層材料を選択する(図3参照)。
【0069】
【数2】
(式中、
HOMOαETLは、電子輸送補助層のHOMOエネルギー準位であり、
HOMOELは、発光層のHOMOエネルギー準位である。)
【0070】
具体的に、上記電子輸送補助層331のHOMOエネルギー準位の絶対値と、上記発光層320のHOMOエネルギー準位の絶対値との差は、0eV超~1.0eV以下の範囲であり得る。
【0071】
このように、電子輸送補助層331のHOMOエネルギー準位の絶対値が、発光層320のHOMOエネルギー準位の絶対値より大きい場合、発光層に存在する正孔が、電子輸送補助層のエネルギー障壁に遮られて電子輸送補助層へ移動するのが防止され、これにより、発光層内で電子と正孔との結合が増加される。
【0072】
他の一例では、本発明の電子輸送補助層331が下記関係式4を満たすように電子輸送補助層材料を選択する(図4参照)。
【0073】
【数3】
(式中、
LUMOETLは、電子輸送層のLUMOエネルギー準位であり、
LUMOαETLは、電子輸送補助層のLUMOエネルギー準位であり、
LUMOELは、発光層のLUMOエネルギー準位である。)
【0074】
具体的に、上記電子輸送補助層331のLUMOエネルギー準位の絶対値と、上記電子輸送層332のLUMOエネルギー準位の絶対値との差は、0eV超~1.0eV以下の範囲であり得る。また、上記電子輸送補助層331のLUMOエネルギー準位の絶対値と、上記発光層320のLUMOエネルギー準位の絶対値との差は、0eV超~1.0eV以下の範囲であり得る。
【0075】
このように、電子輸送補助層331のLUMOエネルギー準位の絶対値が、電子輸送層332のLUMOエネルギー準位の絶対値と発光層320のLUMOエネルギー準位の絶対値との間に存在する場合、LUMOエネルギー準位が階段状配列を有することになり、陰極から注入された電子が、電子輸送層から発光層まで円滑に注入される。
【0076】
上述したHOMOエネルギー準位、LUMOエネルギー準位などの物性を有する材料であれば、本発明の電子輸送補助層材料として使用することができる。
【0077】
一例として、本発明の電子輸送補助層331の材料は、下記化学式1及び化学式2で示されるモイエティからなる群から選択される1種以上のモイエティを含有する化合物(以下、「1種以上のモイエティ含有化合物」という。)であり得る。
【0078】
【化1】
(化学式1及び化学式2において、
~Xは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、NもしくはC(R)であり、但し、X~Xのうちの少なくとも1つ(具体的に、X~Xのうちの1~3個)は、Nであり、このとき、C(R)が複数である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり;
~Yは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、NもしくはC(R)であり、但し、Y~Yのうちの少なくとも1つ(具体的に、X~Xのうちの1~3個)は、Nであり、C(R)が複数である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり;
及びRは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択されるか、又は隣接する基と結合して縮合環を形成することができ、
上記R及びRの、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリールアミン基、アルキルシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、水素、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換又は非置換であり、このとき、置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なることができる。
【0079】
上記化学式1中、Rが隣接する基と結合して縮合環を形成する場合、上記化学式1で示されるモイエティは、下記化学式3で示されるモイエティであり得るが、これに限定されない。
【0080】
【化2】
化学式3において、
~Xは、上記化学式1で定義した通りであり、
~Zは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、NもしくはC(R)であり、但し、Z~Zのうちの少なくとも1つ(具体的に、Z~Zのうちの1~2個)は、Nであり、C(R)が複数である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり;
は、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択されるか、又は隣接する基と結合して縮合環を形成することができ、
上記Rの、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリールアミン基、アルキルシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、水素、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換又は非置換であり、このとき、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なることができる。
【0081】
上述した1種以上のモイエティ含有化合物は、上記化学式1及び化学式2中のモイエティが、電子吸引性の高い電子求引性基(EWG)特性を有する。従って、上記1種以上のモイエティ含有化合物が、電子輸送補助層材料だけでなく、発光層の複数のホストのうちの1つに同時に適用される場合、陰極から注入される電子を、電子輸送層から発光層へ円滑に伝達することができ、これにより、有機電界発光素子の駆動電圧を低くし、高効率、及び長寿命を誘導することができる。
【0082】
また、上記1種以上のモイエティ含有化合物は、上記化学式1及び化学式2中のモイエティに導入される様々な置換体の種類及び導入位置を調節することにより化合物の分子量が有意に増大されるため、ガラス転移温度が高く、有機電界発光素子の熱的安定性が向上するとともに有機物層の結晶化抑制の効果が得られ、素子の耐久性及び寿命特性が大きく向上することができる。
【0083】
具体的に、上記1種以上のモイエティ含有化合物は、下記化学式4~6のうちのいずれか1つで示される化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0084】
【化3】
化学式4~6において、
~X、Y~Y、Z及びZは、それぞれ、化学式1~3で定義した通りであり、
~Lは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、単結合であるか、又はC~C18のアリーレン基及び核原子数5~18のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、具体的に単結合、フェニレン基、ビフェニレン基(biphenylene group)、ターフェニレン基(terphenylene group)、2価のナフチル基、2価のフェナントリル基、2価のアントラセン基、2価のピレン基、2価のクリセン基、2価のカルバゾール基、2価のジベンゾフラン基、2価のジベンゾチオフェン基、2価のフルオレン基、2価のフルオランテン基、2価のトリフェニレン基、2価のフラン基、2価のインドール基、2価のインデン基、2価のチオフェン基、2価のベンゾフラン基、2価のベンゾチオフェン基、2価のベンゾインデン基、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され;
Ar~Aは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、下記化学式S1~S9で示される置換体からなる群から選択される置換体であり、
【化4】
化学式S1~S9において、
及びAは、それぞれ、NもしくはCR17であり;
及びAは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、単結合であるか、又は、NR18、O、S、及びCR1920からなる群から選択され、但し、AとAの両方が単結合である場合を除き;
~Aは、NもしくはCR21であり、但し、A~Aのうちの少なくとも1つ(具体的に、A~Aのうちの1~3個)は、Nであり、このとき、CR21が複数である場合、複数のR21は、互いに同一又は異なり;
10~A13は、NもしくはCR22であり、但し、A10~A13のうちの少なくとも1つ(具体的に、A10~A13のうちの1~3個)は、Nであり、このとき、CR22が複数である場合、複数のR22は、互いに同一又は異なり;
14~A21は、NもしくはCR23であり、但し、A14~A21のうちの少なくとも1つ(具体的に、A10~A13のうちの1~4個)は、Nであり、このとき、CR23が複数である場合、複数のR23は、互いに同一又は異なり;
a、b、c、d、e、f、h、k、及びlは、それぞれ、0~4の整数であり;
g及びjは、それぞれ、0~3の整数であり;
i及びmは、それぞれ、0~9の整数であり;
~R23は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択されるか、又は隣接する基と結合して縮合環を形成することができ;
上記R~R23の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリールアミン基、アルキルシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、水素、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C~C40のアルキル基、C~C40のアルケニル基、C~C40のアルキニル基、C~C40のシクロアルキル基、核原子数3~40のヘテロシクロアルキル基、C~C60のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、C~C40のアルキルオキシ基、C~C60のアリールオキシ基、C~C40のアルキルシリル基、C~C60のアリールシリル基、C~C40のアルキルボロン基、C~C60のアリールボロン基、C~C60のアリールホスフィン基、C~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC~C60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換又は非置換であり、このとき、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なることができる。
【0085】
具体的に、上記化学式4~6のうちのいずれか1つで示される化合物は、下記化学式A-1~A-16で示される化合物からなる群から選択されるものであり得るが、これらに限定されない。
【0086】
【化5】
化学式A-1~A-16において、
及びRは、それぞれ、上記化学式1~3で定義した通りであり、
~L、及びAr~Arは、それぞれ、上記化学式4~6で定義した通りであり、
n1及びn6は、それぞれ、0~4の整数であり、
n2、n3、n4、及びn7は、それぞれ、0~3の整数であり、
n5及びn8は、それぞれ、0~2の整数である。
【0087】
より具体的に、上記化学式4~6のうちのいずれか1つで示される化合物は、下記化学式B-1~B-9で示される化合物からなる群から選択されるものであり得るが、これらに限定されない。
【0088】
【化6】
化学式B-1~B-9において、
、X、X、Rは、それぞれ、上記化学式1~3で定義した通りであり、
及びLは、上記化学式4~6で定義した通りであり、
~A、A、A、R~R16、R21、R23、a~hは、それぞれ、上記化学式S1~S9で定義した通りであり、
n6及びn7は、それぞれ、上記化学式A-1~A-16で定義した通りである。
【0089】
上述した1種以上のモイエティ含有化合物は、下記化合物1~14に具体化できるが、これらに限定されない。
【0090】
【化7】
【0091】
本発明に係る電子輸送領域330において、電子輸送層332は、電子注入が容易で、かつ電子移動度が高い電子輸送物質であれば、制限なく使用することができる。このような電子輸送物質としては、例えば、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾール(isothiazole)系化合物、オキサジアゾール系化合物、チアジアゾール(thiadiazole)系化合物、ペリレン(perylene)系化合物、アルミニウム錯体[例えば、Alq(トリス(8-キノリノラト)-アルミニウム:tris-(8-quinolinolato)-aluminium)、BAlq、SAlq、Alph、Almq]、ガリウム錯体(例えば、Gaq’2OPiv、Gaq’2OAc、2(Gaq’2))などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0092】
また、電子注入層333は、電子注入が容易で、かつ電子移動度が高い電子注入物質を制限なく使用することができる。上記電子注入物質としては、例えば、LiF、LiO、BaO、NaCl、CsF;Ybなどのようなランタン族金属;又は、RbCl、RbIなどのようなハロゲン化金属などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
本発明に係る電子輸送領域330、具体的に電子輸送層332及び/又は電子注入層333は、陰極からの電子注入が容易であるように、n型ドーパントと共蒸着されたものを使用することもできる。このとき、n型ドーパントとしては、公知のアルカリ金属錯化合物を制限なく使用することができ、一例として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属などが挙げられる。
【0094】
上記電子輸送領域330は、当該技術分野で周知の常法で製造することができる。例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェット印刷法、レーザープリント法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
4)発光補助層
選択的に、本発明の有機電界発光素子100は、上記正孔輸送領域310と発光層320との間に配置された発光補助層(図示せず)をさらに含むことができる。
【0096】
発光補助層は、正孔輸送領域310から移動される正孔を発光層320に輸送し、又は、電子及び/又は励起子の移動をブロッキングしながら、有機物層300の厚さを調節する役割を果たす。特に、発光補助層は、高いLUMO値を持って電子が正孔輸送層312(又は、正孔輸送補助層313)へ移動するのを防ぎ、高い三重項エネルギーを持って発光層320の励起子が正孔輸送層312(又は、正孔輸送補助層313)へ拡散するのを防ぐことができる。
【0097】
このような発光補助層は、正孔輸送物質を含むことができ、正孔輸送領域と同じ材料で作製することができる。また、赤色、緑色、及び青色の有機発光素子の発光補助層は、同様な材料で作製することができる。
【0098】
発光補助層材料は、特に制限されず、例えば、カルバゾール誘導体、アリールアミン誘導体などが挙げられる。具体的に、発光補助層としては、例えば、NPD(N,N-ジナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン)、TPD(N,N’-ビス-(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン)、s-TAD、MTDATA(4,4’,4’’-トリス(N-3-メチルフェニル-Nフェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0099】
また、上記発光補助層は、上述した物質の他に、p型ドーパントをさらに含むことができる。本発明において使用可能なp型ドーパントとしては、当該技術分野で周知のp型ドーパントであれば、特に制限なく使用することができる。このとき、p型ドーパントの含有量は、当該技術分野で公知の範囲内で適宜調節することができ、例えば、正孔輸送物質100重量部に対して約0.5~50重量部であり得る。
【0100】
上記発光補助層は、当該技術分野で周知のように、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェット印刷法、レーザープリント法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)で形成することができるが、これらに限定されない。
【0101】
(4)キャッピング層
選択的に、本発明の有機電界発光素子100は、上記陰極200上に配置されるキャッピング層(図示せず)をさらに含むことができる。
【0102】
上記キャッピング層は、有機電界発光素子を保護するとともに、有機物層から発生した光の効率的な外部への放出を助ける役割を果たす。
【0103】
上記キャッピング層としては、トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、ZnSe、2,5-ビス(6’-(2’,2’’-ビピリジル))-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール、4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α-NPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、1,1’-ビス(ジ-4-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。このようなキャッピング層を形成する物質は、有機電界発光素子の他の材料に比べて安価である。
【0104】
このようなキャッピング層は、単層であることもできるが、互いに異なる屈折率を有する2以上の層からなり、上記2以上の層を通過しながら次第に屈折率が変化するようにすることができる。
【0105】
上記キャッピング層は、当該技術分野で周知の常法で製造することができ、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、又はLB(Langmuir-Blodgett)法などのような様々な方法を使用することができる。
【0106】
以上のように、本発明に係る有機電界発光素子は、陽極100、有機物層300、及び陰極200が順次積層された構造を有する。必要によって、上記陽極100と有機物層300との間、又は陰極200と有機物層300との間に絶縁層(図示せず)又は接着層(図示せず)をさらに含むことができる。このような本発明の有機電界発光素子は、電圧及び電流を印加する際に、最大発光効率を保ちながら、初期の明るさの半減時間(Life time)が増加されるため、優れた寿命特性が得られる。
【0107】
上述した本発明の有機電界発光素子は、当分野に周知の常法で製造することができる。例えば、基板上に陽極物質を真空蒸着した後、上記陽極上に、正孔輸送領域物質、発光層物質、電子輸送領域物質、及び陰極物質の材料を順に真空蒸着して有機発光素子を製造することができる。
【実施例
【0108】
以下、本発明を実施例に基づいて詳述するが、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらの実施例によって限定されない。
【0109】
[準備例1~14]化合物1~20のHOMO、LUMO、及び三重項エネルギーの測定
本発明の第1のホスト及び電子輸送補助層の材料として、下記化合物1~14を準備し、これらのHOMO及びLUMOを、当業界で公知の方法でそれぞれ測定し、下記表1に示す。なお、対照群として、ADN及びAlqを使用した。
【0110】
表1中、それぞれのHOMOエネルギーレベル及びLUMOエネルギーレベルは、絶対値として示されている。
【0111】
1)HOMOエネルギーレベル
各化合物のHOMOエネルギーレベルを、CV(cyclic voltammetry)法で測定した。
【0112】
2)LUMOエネルギーレベル
各化合物のバンドギャップエネルギーを、UVスペクトルで求めた後、バンドギャップエネルギーとHOMOエネルギーレベルとの間の差から、LUMOエネルギーレベルを求めた。
【0113】
【化8】
【0114】
【表1】
【0115】
[実施例1]青色の有機電界発光素子の製作
準備例1で準備した化合物1を、常法で高純度昇華精製を行った後、後述の過程に従って青色の有機電界発光素子を製作した。まず、ITO(Indium Tin Oxide)が1500Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄終了後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄を行い、乾燥させた後、UV OZONE洗浄機(Power sonic 405、Hwashin Tech社製)に移送した後、UVを用いて上記基板を5分間洗浄し、真空蒸着機へ基板を移送した。
【0116】
上記のように準備されたITO透明電極の上に、DS-205((株)斗山電子製)(80nm)/NPB(15nm)/化合物1+ADN+5%DS-405((株)斗山電子製)(30nm)/化合物1(5nm)/Alq(25nm)/LiF(1nm)/Al(200nm)の順に積層し、有機電界発光素子を製造した。なお、使用されたNPB、ADN及びAlqの構造は、以下の通りである。ここで,発光層において、化合物1は、第1のホスト(表2中の「A」)として使用され、ADNは、第2のホスト(表2中の「B」)として使用された。
【0117】
[実施例2~14]青色の有機電界発光素子の製造
実施例1の発光層の形成時に使用された第1のホストである化合物1の代わりに、下記表2に記載の各化合物(表2中の「A」)を使用し、電子輸送補助層の形成時に使用された化合物1の代わりに、下記表2に記載の各化合物(表2中の「C」)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2~14の青色の有機電界発光素子を製造した。
【0118】
[比較例1]青色の有機電界発光素子の製造
実施例1の発光層の形成時に使用された第1のホストである化合物1を使用せず、第2のホストであるADNのみを使用した以外は、実施例1と同様にして青色の有機電界発光素子を製造した。
【0119】
[比較例2]青色の有機電界発光素子の製造
実施例1の発光層の形成時に使用された第1のホストである化合物1を使用せず、第2のホストであるADNを使用せず、電子輸送補助層を形成せず、電子輸送層物質であるAlqを25nmでなく30nmとして蒸着した以外は、実施例1と同様にして青色の有機電界発光素子を製造した。
【0120】
[比較例3]青色の有機電界発光素子の製造
実施例1の発光層の形成時に使用された第1のホストである化合物1を使用せず、第2のホストであるADNのみを使用し、電子輸送補助層を形成せず、電子輸送層物質であるAlqを25nmでなく30nmとして蒸着した以外は、実施例1と同様にして青色の有機電界発光素子を製造した。
【0121】
[評価例1]
実施例1~16及び比較例1でそれぞれ製造された有機電界発光素子について、電流密度10mA/cmでの駆動電圧、発光波長、電流効率の測定を行い、その結果を下記表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
上記表2に示されるように、本発明によって、発光層内の複数のホストのうちの1つが電子輸送補助層と同じ材料からなるものである実施例1~14の青色の有機電界発光素子では、比較例1~3の青色の有機電界発光素子に比べて、電流効率、発光ピーク、及び駆動電圧の面で優れた性能を示すことがわかった。
図1
図2
図3
図4