(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/65 20060101AFI20240124BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20240124BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20240124BHJP
A61L 15/64 20060101ALI20240124BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20240124BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240124BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240124BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C08G18/65 011
A61L15/26 100
A61L15/28 100
A61L15/64 100
C12P19/04 C
C08G18/10
C08G18/00 L
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2022539109
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019129157
(87)【国際公開番号】W WO2021128272
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521476399
【氏名又は名称】ヂョン チュンイェン
(73)【特許権者】
【識別番号】521476403
【氏名又は名称】ヂョン ユーグゥァン
(73)【特許権者】
【識別番号】521476414
【氏名又は名称】ハイナン グゥァンユー バイオテクノロジー シーオー., エルティーディー
【住所又は居所原語表記】The First Floor of No. 2 Technical Factory Building No. 26 Jinpan Road Haikou, Hainan 570100 CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521476425
【氏名又は名称】ハイナン イェーゴー フーズ シーオー., エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン ユーグゥァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン チュンイェン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094003(JP,A)
【文献】特開2019-167438(JP,A)
【文献】特開平10-095803(JP,A)
【文献】特開昭63-068093(JP,A)
【文献】特開2009-299043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
A61L 15/26
A61L 15/28
A61L 15/64
C12P 19/04
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤交換処理して、濃度の異なるバクテリアセルロースミクロフィブリルの複合物であって、複合物Aの重量部を100wt%とする場合に、完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル30~50wt%と残部の有機溶剤を含む複合物Aと、複合物Bの重量部を100wt%とする場合に、水を5~10wt%含む部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル15~30wt%と残部の有機溶剤を含む複合物Bを得ることと、
複合物Aと複合物Bを体積比1:(2~5)で混合し、オイルバスの条件でポリマーポリオールとジイソシアネート類化合物を重量比1:(0.1~0.2)で、前記ポリマーポリオールが前記複合物Aと前記複合物Bとの合計重量の20%~60%を占めるように添加して、付加重合反応を行うことによりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得、それを硬化してバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得ることと、
を含む、バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法。
【請求項2】
更に、アセトバクターキシリナム、リゾビウム属、スポロサルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属及びアゾトバクター属の1種または複数種の組み合わせを含む菌株を発酵して得られたバクテリアセルロースを精製・均質化処理してバクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、菌株を発酵して得られたバクテリアセルロースを精製・均質化処理してバクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることを含む方法であって、
バクテリアセルロースを精製する方法として、バクテリアセルロースにおけるバクテリアタンパク質及びセルロース膜に粘着している残留培地を除去するように、70℃~100℃の温度で、バクテリアセルロースを質量分率で4%~8%の水酸化ナトリウム水溶液において4~6h洗浄し、更に中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングし、精製後のバクテリアセルロースを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バクテリアセルロースを均質化処理する方法として、高速分散機にて5000~25000rpmの回転速度で精製後のバクテリアセルロースを5~10min均質化させ、バクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バクテリアセルロースミクロフィブリルは、長さが0.1~10μmであり、直径が50~100nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶剤交換処理の方法は、
バクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに浸漬させ、浸漬時間を8~12hに制御することで完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを得、浸漬時間を3~6hに制御することで部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることと、
完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤に48~72h浸漬し、複合物Aを得ることと、
部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤に12~48h浸漬し、複合物Bを得ることと、
を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶剤は、エチルグリコールアセテート、酢酸エチル、ブチロラクトン、酢酸及びアセトンの1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
付加重合反応を行う条件としては、70℃~80℃で、恒温のオイルバスにおいて、反応時間60~90minとする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、プロピレングリコール及びジエチレングリコールの1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを硬化する方法は、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.5~2.6wt%となる量で硬化助剤を添加し、均一に撹拌した後、ジイソシアネート類化合物と水を、使用量の比(20~40):(2~5)で添加し、均一に撹拌して混合物を得、その後、硬化して、バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得ることであり、
硬化中、前記ジイソシアネート類化合物の使用量は前記ポリマーポリオールの使用量の20%~50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ジイソシアネート類化合物は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートの1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒は、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルスズジラウレート及びオクタン酸第一スズの1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記孔形成剤は、ポロジェンシリコーンオイル、シリコーンオイル及びポリブタジエングリコールの1種又は複数種の組み合わせを含み、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記安定剤は、シリコーン界面活性剤、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム及びラウロアンホ二酢酸二ナトリウムの1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒の使用量はバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.3~1.5wt%であり、
前記孔形成剤の使用量はバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1~1wt%であり、
前記安定剤の使用量はバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1~0.5wt%である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
孔径100~500μm、孔隙率70%~90%、厚み0.5~1cmである大孔層と、
孔径10~80μm、孔隙率60%~80%、厚み0.1~0.3cmである微細孔層と
の少なくとも二層の構造を含む、バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料。
【請求項18】
バクテリアセルロースミクロフィブリルの複合材料に占める質量分率が20~40wt%である、請求項17に記載のバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚修復分野に属し、勾配構造を有するバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傷口の癒合過程は連続的な動的過程であって、細胞と細胞、細胞と細胞基質及び可溶性媒体との間の相互作用の過程である。臨床における傷口の治りには、主に傷口被覆材が使用されており、「湿式療法」に関する理論と実践が普及されるとともに、吸湿機能を有する高性能な湿式被覆材は、世界の医療衛生分野において重視されつつある。
【0003】
現在、臨床上よく使う被覆材は、材質の違いによってバクテリアセルロース類被覆材、ポリウレタン被覆材等に分けられる。
【0004】
バクテリアセルロースは、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合で繋いでなる高分子化合物であり、優れた生物材料として、独特な物理、化学性能を有するものであり、バクテリアセルロースは、天然の三次元ナノネットワック構造や、高い引っ張り強度と弾性率や、高い親水性、良好な通気、吸水、透水性能、並外れた保水性と高湿強度を具備している。また、多くの研究から示されているように、バクテリアセルロースは良好な体内/体外の生体適合性と生分解性を持つため、バクテリアセルロース自身がバイオメディカル分野に応用できるようになる。海外では、単純なバクテリアセルロースハイドロゲルを被覆材とすることがすでに報告され、かつ、すでに工業化され臨床に使用されている。そのため、バクテリアセルロースハイドロゲルを被覆材の基体材料とし、バクテリアセルロース自身の吸水性能を利用して、生体安全性を確保した上で傷口滲出液及び代謝産物を持続的かつ効果的に吸収できる。バクテリアセルロースハイドロゲルは傷口被覆材分野においてかなり有望であり、傷口に潤う環境を与えて傷口のさらなる癒合を促進する。しかし、バクテリアセルロースハイドロゲル自身の三次元ナノネットワック構造は良好な撥水抗菌性能に欠けており、外の微生物及び水分がそのナノネットワックを透過して傷口まで滲み込む可能性がある。同時に、バクテリアセルロースハイドロゲル被覆材は比較的に大きな水蒸気透過率を有し、使用中においてその内部にある水分が比較的に容易に失っていく。これらの問題はいずれも、バクテリアセルロースハイドロゲル被覆材の応用を制限してしまう。
【0005】
ポリウレタンは、高分子構造の主鎖にウレタン基(-NHCOO-)を含むポリマーの総称である。その分子構造中のハード・ソフトセグメントは、熱力学非互換体系であり、極性に違いがあり、ミクロ相分離を引き起こす可能性があるため、良好な生体適合性、抗凝血性を有する。大量の動物実験と急・慢性毒性実験により証明されたように、医用ポリウレタン材料は人体の血液との適合性及び組織との適合性が良く、非毒性で非催奇形性であり、局所に対しアレルギー反応がなく、良好な靭性、耐溶剤性、耐加水分解性及び抗菌性を有し、かつ摩耗に強く、加工・成型しやすく、性能が制御可能であるため、最も価値のあるのバイオメディカル合成材料の一つだと考えられている。1.ポリウレタンフィルムで製造される被覆材製品を採用することにより、創面の湿潤を保つことができ、水蒸気の透過速度を制御し、かつ、微生物と外部の水分の侵入を防ぐことができる。2.ポリウレタンフォーム材料が、比較的良い生体適合性、親水性と柔らかさを持ち、体液または血液を吸収して、液溜まりの形成を回避でき、良い柔らかさと追従性を有し、組織とうまく貼り合わせるのに役立ち、不快と痛みを減らせ、特有の孔状構造は、必要に応じて薬のロードと放出をし、組織とは粘着しないため、取り外しと交換が簡単である。ポリウレタンフォーム被覆材が、創面の湿潤の保持に使えるし、気体の通過も許せるため、創面の癒合を促進する。しかし、ポリウレタンフォームの実応用においては、特に人体修復材料、知能型薬剤徐放性材料及び組織工学材料への応用においては、その生体適合性、力学性能と親水性能にさらなる強化が必要がある。
【0006】
そのため、従来の皮膚創傷被覆材製品には、さらなる改善が期待される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つの目的は、勾配構造を有するバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を提供することである。本発明の別の目的は、勾配構造を有するバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、勾配構造を有するバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の、人体修復材料、知能型薬剤徐放性材料及び組織工学材料における応用を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、以下の技術案により実現される。
【0009】
本発明は、
バクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤交換処理して、濃度の異なるバクテリアセルロースミクロフィブリルの複合物であって、複合物Aの重量部を100wt%とする場合に、完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル30~50wt%と残部の有機溶剤を含む複合物Aと、複合物Bの重量部を100wt%とする場合に、水を5~10wt%含む部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル15~30wt%と残部の有機溶剤を含む複合物Bを得ることと、
複合物Aと複合物Bを体積比1:(2~5)で混合し、オイルバスの条件でポリマーポリオールとジイソシアネート類化合物を重量比1:(0.1~0.2)で、前記ポリマーポリオールが前記複合物Aと前記複合物Bとの合計の重量の20%~60%を占めるように添加して、付加重合反応を行うことによりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得、それを硬化してバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得ることと、
を含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、創造的に、バクテリアセルロースとポリウレタンとを組み合わせて複合材料を製造するものであって、バクテリアセルロースを用いたナノ繊維ミクロフィブリルがポリウレタン材料の内部に均一に分布し、ポリウレタンフォーム材料を補強し、ポリウレタン反応中に残ったイソシアネート基とバクテリアセルロースナノ繊維表面の水酸基との相互作用により、化学結合でバクテリアセルロースナノ繊維とポリウレタンフォーム基体とを有効に結合させ、該複合材料の力学性能を著しく向上させることができ、バクテリアセルロースナノ繊維表面にある大量の水酸基で複合材料の親水性能及び吸水能力を効率的に向上させているとともに、バクテリアセルロースによる良好な組織親和性がポリウレタン材料の生体適合性を改善でき、両材料の利点を発揮し、理想的な皮膚創傷被覆材製品を得ることができるため、バイオメディカル分野において大きく応用される見通しとなっている。
【0011】
本発明において、複合物Aは完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルと有機溶剤との混合物であり、複合物Bは、バクテリアセルロースミクロフィブリルの表面における遊離水の脱去後でも少量な結合水を含むミクロフィブリルと有機溶剤との混合物である。本発明は、溶剤交換の方法を採用して、バクテリアセルロースナノ繊維表面の水酸基を破壊しない上に、水分子を部分的に除去するものであり、少量の結合水は、イソシアネート基と反応して二酸化炭素(2RNCO + H2O → RNHCONHR + CO2↑)を生成でき、細孔形成剤として機能している。製造過程において、セルロースミクロフィブリルは含水量によって比重が異なるため、複合物Aと複合物Bとは体積比1:(2~5)で調合された後、沈降過程中に自動的に層分離し、含水量の違いで孔形成用の二酸化炭素気体の量も異なっていくため、孔径の異なる分布を形成することとなる。そのため、本発明で製造したバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は、異なる孔径を有する勾配二重構造であって、一つの層は大孔層(主に、比較的多くの複合物Bを含む)であるとともに、もうひとつの層は微細孔層(主に、比較的多くの複合物Aを含む)である。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は、大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は、大孔層であって、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものである。
【0012】
上記の製造方法において、好ましくは、菌株を発酵して得られたバクテリアセルロースを精製・均質化処理してバクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることをさらに含み、前記菌株は、アセトバクターキシリナム、リゾビウム属、スポロサルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属及びアゾトバクター属の1種または複数種の組み合わせを含む。
【0013】
本発明において、上記菌株を用いて発酵する方法は本分野において常法であり、発酵培地は本分野においてバクテリアセルロースを生産するための通常な培地であり、発酵時間は通常3~7日であり、発酵温度は30℃~37℃である。
【0014】
上記の製造方法において、好ましくは、菌株を発酵して得られたバクテリアセルロースを精製・均質化処理してバクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることを更に含み、その中、
バクテリアセルロースを精製する方法は、
バクテリアセルロースにおけるバクテリアタンパク質及びセルロース膜に粘着している残留培地を除去するように、70℃~100℃の温度で、バクテリアセルロースを質量分率で4%~8%の水酸化ナトリウム水溶液において4~6h洗浄し、更に中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングし、精製後のバクテリアセルロースを得ることを含む。
【0015】
上記の製造方法において、好ましくは、バクテリアセルロースを均質化処理方法は、高速分散機にて5000~25000rpmの回転速度で精製後のバクテリアセルロースを5~10min均質化させ、バクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることである。
【0016】
上記の製造方法において、好ましくは、前記バクテリアセルロースミクロフィブリルは、長さが0.1~10μmであり、直径が50~100nmである。このバクテリアセルロースミクロフィブリルは、複数本のナノスケールのバクテリアセルロース繊維が分子間水素結合により形成された繊維束である。
【0017】
上記の製造方法において、好ましくは、前記有機溶剤交換処理の方法は、
バクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに浸漬させ、浸漬時間を8~12hに制御することで完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを得、浸漬時間を3~6hに制御することで部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを得ることと、
完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤に48~72h浸漬し、複合物Aを得ることと、
部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤に12~48h浸漬し、複合物Bを得ることと、
を含むものである。
【0018】
本発明において、バクテリアセルロースミクロフィブリルの表面遊離水と内部結合水に対する制御について、バクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに浸漬することにより、無水エタノールによる浸漬時間が長くなるとともに、無水エタノールは、まず、バクテリアセルロースミクロフィブリル表面の遊離水を析出させ、その後、バクテリアセルロースミクロフィブリル内部(ミクロフィブリルを組成するナノ繊維の間)の結合水を析出させる。最終的に得られた複合物Aは、完全に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルと有機溶剤との混合物であり、複合物Bは、バクテリアセルロースミクロフィブリルの表面遊離水が脱去されてもまだ少量の結合水を含むミクロフィブリルと有機溶剤との混合物である。
【0019】
上記の製造方法において、好ましくは、前記有機溶剤は、エチルグリコールアセテート、酢酸エチル、ブチロラクトン、酢酸およびアセトンの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0020】
本発明に用いる有機溶剤は、バクテリアセルロースにおけるナノスケールのセルロース繊維と水分子との間の相互作用を軽減し、遊離水の存在を回避し、ポリウレタンフォーム生産過程の反応效率を向上させ、同時にバクテリアセルロースナノセルロース繊維とポリウレタンとの間の界面作用を増強することができる。
【0021】
上記の製造方法において、好ましくは、付加重合反応を行う条件としては、70℃~80℃で、恒温のオイルバスにおいて、反応時間60~90minとする。
【0022】
上記の製造方法において、好ましくは、前記ポリマーポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、プロピレングリコールおよびジエチレングリコールの1種又は複数種を含む組み合わせを含む。
【0023】
上記の製造方法において、好ましくは、前記バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを硬化する方法は、
バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤を添加し、均一に撹拌した後、ジイソシアネート類化合物と水を添加し、均一に撹拌して混合物を得た後、硬化してバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得ることである。
【0024】
上記の製造方法において、好ましくは、前記硬化助剤の使用量は、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.5~2.6wt%である。
【0025】
上記の製造方法において、好ましくは、前記ジイソシアネート類化合物と水の使用量の比は(20~40):(2~5)である。
【0026】
上記の製造方法において、好ましくは、硬化中、前記ジイソシアネート類化合物の使用量は前記ポリマーポリオールの使用量の20%~50%である。
【0027】
上記の製造方法において、好ましくは、前記ジイソシアネート類化合物はトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0028】
本発明においては、ポリマーポリオールとジイソシアネートをそれぞれ、ポリウレタン材料のソフトセグメント構造とハードセグメント構造に用いられ、生成されたポリエーテル型ポリウレタンが優れた力学性能と良好な生体適合性を有する。
【0029】
上記の製造方法において、好ましくは、前記硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含み、
前記触媒は、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルスズジラウレートおよびオクタン酸第一スズの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記孔形成剤は、ポロジェンシリコーンオイル、シリコーンオイル6070及びポリブタジエングリコールの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記安定剤は、シリコーン界面活性剤、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウムおよびラウロアンホ二酢酸二ナトリウムの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0030】
上記の製造方法において、好ましくは、前記触媒の使用量はバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.3~1.5wt%であり、前記孔形成剤の使用量はバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1~1wt%であり、前記安定剤の使用量はバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1~0.5wt%である。
【0031】
本発明において、上記硬化助剤を採用することによって、ポリウレタンフォーム材料の液体から固体への変換に寄与し、同時にポリウレタン中に残留のイソシアネート基とともにバクテリアセルロースナノ繊維表面の水酸基と相互作用しウレタン結合を生成し、化学結合でバクテリアセルロースナノ繊維とポリウレタンフォーム材料とを有效に結合させる。
【0032】
上記の製造方法において、好ましくは、前記硬化は、均一に混合撹拌した混合物を金型中に置いて室温条件で2~7d静置することである。
【0033】
一方面で、本発明は更に、孔径100~500μm、孔隙率70%~90%、厚み0.5~1cmである大孔層と、孔径10~80μm、孔隙率60%~80%、厚みは0.1~0.3cmである微細孔層と、の少なくとも二層構造を含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を提供する。
【0034】
本発明のバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は上記製造方法により得られたものである。
【0035】
上記のバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料において、前記バクテリアセルロースミクロフィブリルの複合材料における質量比は20~40wt%であり、且、ナノ繊維表面の水酸基とポリウレタン中に残留のイソシアネート基には化学結合がある。
【0036】
本発明により製造されたバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は、孔径の異なる勾配二重構造を持ち、一つの層は大孔層であり、もう一つの層は微細孔層である。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は、大孔層であって、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものである。
【0037】
更に一方面において、本発明は更に、上記バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の、人体修復材料、知能型薬剤徐放性材料及び組織工学材料における応用を提供する。
【0038】
本発明の有利な效果について、以下がある:
(1)本発明は、バクテリアセルロースナノ繊維ミクロフィブリルをポリウレタンフォーム材料と複合させることにより、複合材料の力学性能を著しく向上させることができ、バクテリアセルロースナノ繊維表面にある大量な水酸基で、複合材料の親水性能及び吸水能力を効果的に増強させるとともに、バクテリアセルロースの良好な組織親和性が、ポリウレタン材料の生体適合性を改善できる。
【0039】
(2)本発明は、ポリウレタン反応中に残留のイソシアネート基とバクテリアセルロースナノ繊維表面の水酸基との相互作用により、化学結合でバクテリアセルロースナノ繊維とポリウレタンフォーム基体とを有効に結合させることができる。
【0040】
(3)本発明は、製造プロセスが簡単で、コストが低く、汚染もなく、環境に優しい分解性バクテリアセルロース複合ポリウレタンフォーム材料が得られる。該材料は良好な生体適合性、力学性能、親水/保水性能及び吸水能力を有し、人体修復材料、知能型薬剤徐放性材料及び組織工学材料等バイオメディカル分野において大きく応用される見通しがある。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の技術特徴、目的及び有利な效果をより分かりやすくするために、ここで本発明の技術案を以下のように詳しく説明するが、本発明の実施可能な範囲を限定するものだと理解してはならない。
【0042】
以下の実施例で使用した実験方法は、特に断らない限り、いずれも常法である。
【0043】
以下の実施例で使用した材料、試薬等は、特に断らない限り、いずれも市販品として入手可能なものである。
【0044】
実施例1
本実施例は、以下のステップを含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供した。
【0045】
ステップ1:アセトバクターキシリナムを発酵培養して得られたバクテリアセルロースを質量分率4%のNaOH水溶液に浸漬し、100℃の温度で6h加熱してから、中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングした。その後、高速分散機を使用し、25000rpmの回転速度で精製されたバクテリアセルロースサンプルを10min均質化し、長さ0.1μm、直径50nmのバクテリアセルロースミクロフィブリルを得た。
【0046】
ステップ2:バクテリアセルロースミクロフィブリルが完全脱水するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに8h浸漬した。その後、脱水後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるエチルグリコールアセテート中に48h浸漬し、複合物Aを得た。複合物Aの重量部を100wt%とすると、前記複合物Aは、バクテリアセルロースミクロフィブリル30wt%と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールとエチルグリコールアセテートを含む)を含むものであった。
【0047】
バクテリアセルロースミクロフィブリル中の水を大部除去するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに3h浸漬した。その後、部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤である酢酸とアセトンに12h浸漬し、複合物Bを得た。複合物Bの重量部を100wt%とすると、前記複合物Bは、15wt%の部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル(5wt%の水を含む)と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノール、酢酸とアセトンを含む)とを含むものであった。
【0048】
ステップ3:複合物Aと複合物Bを体積比1:2で混合し、70℃で恒温のオイルバスの条件で、ポリマーポリオールとともに少量のジイソシアネート類化合物を添加して付加重合反応を行い、撹拌反応時間を60minとし、反応によりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得た。その中、ポリマーポリオールの添加量は、複合物Aと複合物Bとが混合後の合計質量の20%であった。
【0049】
ステップ4:バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤(触媒+孔形成剤+安定剤)を添加し、均一に撹拌した。その後、ジイソシアネート類化合物と水を添加して高速で撹拌し、金型中に置いて常温で2日間静置硬化して該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得た。
【0050】
使用量:ポリマーポリオールとしてポリエチレングリコールを100重量部で添加した。ジイソシアネート類化合物としてトルエンジイソシアネートを合計量60重量部で添加し、その中、まず、それの合計重量の20%を占めるようにジイソシアネート類化合物を少量添加し、水を5重量部で添加した。
【0051】
添加された硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含むものであった。触媒はトリエチレンジアミンであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.3wt%であった。孔形成剤はポロジェンシリコーンオイルであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の1wt%であった。安定剤はシリコーン界面活性剤であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.5wt%であった。
【0052】
該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は孔径の異なるの勾配二重構造を有し、一つの層は、大孔の孔径100μm、孔隙率70%、厚み0.5cmである大孔層であり、もう一つの層は孔径10μm、孔隙率60%、厚み0.1cmである微細孔層であった。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は、大孔層であって、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものであった。
【0053】
実施例2
本実施例は、以下のステップを含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供した。
【0054】
ステップ1:リゾビウム属とスポロサルシナ属を発酵培養して得られたバクテリアセルロースを質量分率5%のNaOH水溶液に浸漬し、90℃の温度で5h加熱してから、中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングした。その後、高速分散機を使用し、20000rpmの回転速度で精製されたバクテリアセルロースサンプルを5min均質化し、長さ2μm、直径60nmのバクテリアセルロースミクロフィブリルを得た。
【0055】
ステップ2:バクテリアセルロースミクロフィブリルが完全脱水するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに10h浸漬した。その後、脱水後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤である酢酸エチル中に36h浸漬し、複合物Aを得た。複合物Aの重量部を100wt%とすると、前記複合物Aは、バクテリアセルロースミクロフィブリル40wt%と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールと酢酸エチルを含む)とを含むものであった。
【0056】
バクテリアセルロースミクロフィブリル中の水を大部除去するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに4h浸漬した。その後、部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるアセトンに48h浸漬し、複合物Bを得た。複合物Bの重量部を100wt%とすると、前記複合物Bは、20wt%の部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル(5wt%の水を含む)と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールとアセトンを含む)とを含むものであった。
【0057】
ステップ3:複合物Aと複合物Bを体積比1:3で混合し、70℃で恒温のオイルバスの条件で、ポリマーポリオールとともに少量のジイソシアネート類化合物を添加して付加重合反応を行い、撹拌反応時間を70minとし、反応によりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得た。その中、ポリマーポリオールの添加量は、複合物Aと複合物Bとが混合後の合計質量の30%であった。
【0058】
ステップ4:バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤(触媒+孔形成剤+安定剤)を添加し、均一に撹拌した。その後、ジイソシアネート類化合物と水を添加して高速で撹拌し、金型中に置いて常温で3日間静置硬化して該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得た。
【0059】
使用量:ポリマーポリオールとしてポリプロピレンオキシドを100重量部で添加した。ジイソシアネート類化合物としてジフェニルメタンジイソシアネートを合計量60重量部で添加し、その中、まず、それの合計重量の20%を占めるようにジイソシアネート類化合物を少量添加し、水を4重量部で添加した。
【0060】
添加された硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含むものであった。触媒はジメチルエタノールアミンであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.7wt%であった。孔形成剤はシリコーンオイル6070であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.8wt%であった。安定剤はココアンホ酢酸ナトリウムであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.4wt%であった。
【0061】
該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は孔径の異なるの勾配二重構造を有し、一つの層は、大孔の孔径200μm、孔隙率70%、厚み0.7cmである大孔層であり、もう一つの層は孔径20μm、孔隙率60%、厚み0.1cmである微細孔層であった。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は、大孔層であって、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものであった。
【0062】
実施例3
本実施例は、以下のステップを含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供した。
【0063】
ステップ1:シュードモナス属とアクロモバクター属を発酵培養して得られたバクテリアセルロースを質量分率6%のNaOH水溶液に浸漬し、80℃の温度で4h加熱してから、中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングした。その後、高速分散機を使用し、25000rpmの回転速度で精製されたバクテリアセルロースサンプルを6min均質化し、長さ4μm、直径70nmのバクテリアセルロースミクロフィブリルを得た。
【0064】
ステップ2:バクテリアセルロースミクロフィブリルが完全脱水するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに9h浸漬した。その後、脱水後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるブチロラクトンに72h浸漬し、複合物Aを得た。複合物Aの重量部を100wt%とすると、前記複合物Aは、バクテリアセルロースミクロフィブリル50wt%と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールとブチロラクトンを含む)を含むものであった。
【0065】
バクテリアセルロースミクロフィブリル中の水を大部除去するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに5h浸漬した。その後、部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるエチルグリコールアセテートに12h浸漬し、複合物Bを得た。複合物Bの重量部を100wt%とすると、前記複合物Bは、30wt%の部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル(10wt%の水を含む)と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールとエチルグリ コールアセテートを含む)とを含むものであった。
【0066】
ステップ3:複合物Aと複合物Bを体積比1:4で混合し、70℃で恒温のオイルバスの条件で、ポリマーポリオールとともに少量のジイソシアネート類化合物を添加して付加重合反応を行い、撹拌反応時間を60minとし、反応によりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得た。その中、ポリマーポリオールの添加量は、複合物Aと複合物Bとが混合後の合計質量の40%であった。
【0067】
ステップ4:バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤(触媒+孔形成剤+安定剤)を添加し、均一に撹拌した。その後、ジイソシアネート類化合物と水を添加して高速で撹拌し、金型中に置いて常温で4日間静置硬化して該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得た。
【0068】
使用量:ポリマーポリオールとしてプロピレングリコールとジエチレングリコール(1:1)を合計量100重量部で添加した。ジイソシアネート類化合物としてイソホロンジイソシアネートを合計量50重量部で添加し、その中、まず、それの合計重量の20%を占めるようにジイソシアネート類化合物を少量添加し、水を3重量部で添加した。
【0069】
添加された硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含むものであった。触媒はジブチルスズジラウレートであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.9wt%であった。孔形成剤はポリブタジエングリコールであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.5wt%であった。安定剤はラウロアンホ酢酸ナトリウムであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.3wt%であった。
【0070】
該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は孔径の異なるの勾配二重構造を有し、一つの層は、大孔の孔径300μm、孔隙率80%、厚み0.8cmである大孔層であり、もう一つの層は孔径40μm、孔隙率70%、厚み0.2cmである微細孔層であった。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は大孔層であり、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものであった。
【0071】
実施例4
本実施例は、以下のステップを含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供した。
【0072】
ステップ1:アルカリゲネス属、アエロバクター属とアゾトバクター属を発酵培養して得られたバクテリアセルロースを質量分率7%のNaOH水溶液に浸漬し、70℃の温度で4h加熱してから、中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングした。その後、高速分散機を使用し、15000rpmの回転速度で精製されたバクテリアセルロースサンプルを8min均質化し、長さ6μm、直径80nmのバクテリアセルロースミクロフィブリルを得た。
【0073】
ステップ2:バクテリアセルロースミクロフィブリルが完全脱水するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに10h浸漬した。その後、脱水後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤である酢酸とアセトンに36h浸漬し、複合物Aを得た。複合物Aの重量部を100wt%とすると、前記複合物Aは、30wt%のバクテリアセルロースミクロフィブリルと残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノール、酢酸とアセトンを含む)を含むものであった。
【0074】
バクテリアセルロースミクロフィブリル中の水を大部除去するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに6h浸漬した。その後、部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるアセトンに12h浸漬し、複合物Bを得た。複合物Bの重量部を100wt%とすると、前記複合物Bは、23wt%の部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル(8wt%の水を含む)と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールとアセトンを含む)とを含むものであった。
【0075】
ステップ3:複合物Aと複合物Bを体積比1:5で混合し、80℃で恒温のオイルバスの条件で、ポリマーポリオールとともに少量のジイソシアネート類化合物を添加して付加重合反応を行い、撹拌反応時間を70minとし、反応によりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得た。その中、ポリマーポリオールの添加量は、複合物Aと複合物Bとが混合後の合計質量の50%であった。
【0076】
ステップ4:バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤(触媒+孔形成剤+安定剤)を添加し、均一に撹拌した。その後、ジイソシアネート類化合物と水を添加して高速で撹拌し、金型中に置いて常温で5日間静置硬化して該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得た。
【0077】
使用量:ポリマーポリオールとしてポリエチレングリコールとポリプロピレンオキシド(1:1)を合計量100重量部で添加した。ジイソシアネート類化合物としてトルエンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネート(1:1)を合計量50重量部で添加し、その中、まず、それの合計重量の10%を占めるようにジイソシアネート類化合物を少量添加し、水を2重量部で添加した。
【0078】
添加された硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含むものであった。触媒はトリエチレンジアミンとオクタン酸第一スズ(1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の1.0wt%であった。孔形成剤はポロジェンシリコーンオイルとシリコーンオイル6070(1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.5wt%であった。安定剤はラウロアンホ二酢酸二ナトリウムであり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.2wt%であった。
【0079】
該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は孔径の異なるの勾配二重構造を有し、一つの層は、大孔の孔径300μm、孔隙率80%、厚み0.6cmである大孔層であり、もう一つの層は孔径50μm、孔隙率70%、厚み0.2cmである微細孔層であった。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は、大孔層であり、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものであった。
【0080】
実施例5
本実施例は、以下のステップを含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供した。
【0081】
ステップ1:アセトバクターキシリナムとシュードモナス属を発酵培養して得られたバクテリアセルロースを質量分率6%のNaOH水溶液に浸漬し、100℃の温度で5h加熱してから、中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングした。その後、高速分散機を使用し、10000rpmの回転速度で精製されたバクテリアセルロースサンプルを9min均質化し、長さ8μm、直径90nmのバクテリアセルロースミクロフィブリルを得た。
【0082】
ステップ2:バクテリアセルロースミクロフィブリルが完全脱水するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに11h浸漬した。その後、脱水後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるエチルグリコールアセテートと酢酸エチルに48h浸漬し、複合物Aを得た。複合物Aの重量部を100wt%とすると、前記複合物Aは、40wt%のバクテリアセルロースミクロフィブリルと残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノール、エチルグリコールアセテートと酢酸エチルを含む)とを含むものであった。
【0083】
バクテリアセルロースミクロフィブリル中の水を大部除去するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに7h浸漬した。その後、部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤であるエチルグリコールアセテートに36h浸漬し、複合物Bを得た。複合物Bの重量部を100wt%とすると、前記複合物Bは、26wt%の部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル(6wt%の水を含む)と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールとエチルグリ コールアセテートを含む)とを含むものであった。
【0084】
ステップ3:複合物Aと複合物Bを体積比1:3で混合し、80℃で恒温のオイルバスの条件で、ポリマーポリオールとともに少量のジイソシアネート類化合物を添加して付加重合反応を行い、撹拌反応時間を80minとし、反応によりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得た。その中、ポリマーポリオールの添加量は、複合物Aと複合物Bとが混合後の合計質量の60%であった。
【0085】
ステップ4:バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤(触媒+孔形成剤+安定剤)を添加し、均一に撹拌した。その後、ジイソシアネート類化合物と水を添加して高速で撹拌し、金型中に置いて常温で6日間静置硬化して該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得た。
【0086】
使用量:ポリマーポリオールとしてポリエチレングリコールとプロピレングリコール(2:1)を合計量100重量部で添加した。ジイソシアネート類化合物としてジフェニルメタンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネート(1:1)を合計量40重量部で添加し、その中、まず、それの合計重量の10%を占めるようにジイソシアネート類化合物を少量添加し、水を3重量部で添加した。
【0087】
添加された硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含むものであった。触媒はジメチルエタノールアミンとオクタン酸第一スズ(1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の1.2wt%であった。孔形成剤はポロジェンシリコーンオイルとポリブタジエングリコール(2:1)を含み、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.3wt%であった。安定剤はシリコーン界面活性剤とココアンホ酢酸ナトリウム(1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1wt%であった。
【0088】
該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は孔径の異なるの勾配二重構造を有し、一つの層は、大孔の孔径400μm、孔隙率90%、厚み0.9cmである大孔層であり、もう一つの層は孔径60μm、孔隙率80%、厚み0.3cmである微細孔層であった。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は大孔層であり、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものであった。
【0089】
実施例6
本実施例は、以下のステップを含むバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料の製造方法を提供した。
【0090】
ステップ1:アセトバクターキシリナムを発酵培養して得られたバクテリアセルロースを質量分率8%のNaOH水溶液に浸漬し、80℃の温度で6h加熱してから、中性になるまで蒸留水で繰り返しフラッシングした。その後、高速分散機を使用し、5000rpmの回転速度で精製されたバクテリアセルロースサンプルを10min均質化し、長さ10μm、直径100nmのバクテリアセルロースミクロフィブリルを得た。
【0091】
ステップ2:バクテリアセルロースミクロフィブリルが完全脱水するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに12h浸漬した。その後、脱水後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤である酢酸エチルとアセトンに72h浸漬し、複合物Aを得た。複合物Aの重量部を100wt%とすると、前記複合物Aは、50wt%のバクテリアセルロースミクロフィブリルと残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールと酢酸エチルを含む)とを含むものであった。
【0092】
バクテリアセルロースミクロフィブリル中の水を大部除去するように、前記均質化後のバクテリアセルロースミクロフィブリルを無水エタノールに6h浸漬した。その後、部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリルを有機溶剤である酢酸エチルに48h浸漬し、複合物Bを得た。複合物Bの重量部を100wt%とすると、前記複合物Bは、30wt%の部分的に脱水されたバクテリアセルロースミクロフィブリル(10wt%の水を含む)と残部の有機溶剤(残部の有機溶剤には、残留の無水エタノールと酢酸エチルを含む)とを含むものであった。
【0093】
ステップ3:複合物Aと複合物Bを体積比1:2で混合し、80℃で恒温のオイルバスの条件で、ポリマーポリオールとともに少量のジイソシアネート類化合物を添加して付加重合反応を行い、撹拌反応時間を90minとし、反応によりバクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーを得た。その中、ポリマーポリオールの添加量は、複合物Aと複合物Bとが混合後の合計質量の40%であった。
【0094】
ステップ4:バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーに硬化助剤(触媒+孔形成剤+安定剤)を添加し、均一に撹拌した。その後、ジイソシアネート類化合物と水を添加して高速で撹拌し、金型中に置いて常温で7日間静置硬化して該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料を得た。
【0095】
使用量:ポリマーポリオールとしてポリエチレングリコールを100重量部で添加した。ジイソシアネート類化合物としてトルエンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネート(4:1)を合計量40重量部で添加し、その中、まず、それの合計重量の10%を占めるようにジイソシアネート類化合物を少量添加し、水を4重量部で添加した。
【0096】
添加された硬化助剤は触媒、孔形成剤と安定剤を含むものであった。触媒はジブチルスズジラウレートとオクタン酸第一スズ(1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の1.5wt%であった。孔形成剤はポロジェンシリコーンオイル、シリコーンオイル6070とポリブタジエングリコール(2:1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1wt%であった。安定剤はココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウムとラウロアンホ二酢酸二ナトリウム(1:1:1)であり、その使用量として、バクテリアセルロース/ポリウレタンフォーム複合プレポリマーの使用量の0.1wt%であった。
【0097】
該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は孔径の異なるの勾配二重構造を有し、一つの層は、大孔の孔径500μm、孔隙率90%、厚み1cmである大孔層であり、もう一つの層は孔径80μm、孔隙率80%、厚み0.3cmである微細孔層であった。該バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は大孔層と微細孔層からなる有機体であり、使用されている場合に、上層は、微細孔層であって、撥水抗菌として機能しているとともに、水蒸気透過率を制御できるものであり、下層は大孔層であり、傷口の湿性微環境を保ち、傷口からの滲出液を抑制し、傷口の癒合を促進できるものであった。
【0098】
性能テスト実験:
実施例で製造されたバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料について、以下のような性能テストを行った。
【0099】
通気膜被覆材水蒸気透過率実験:YY/T 0471.2-2004<接触性創面被覆材試験方法第2部:通気膜被覆材水蒸気透過率>に準じてバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料に対して水蒸気透過率テストを行ったところ、水蒸気透過率(MVTR)は平米あたりで24時間ごとに1600グラム(g m-2 24h-1)であった。
【0100】
生体適合性実験:GB/T 16886医療器械のバイオ学評価に参照しながら、バクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料に対してそれぞれ、細胞毒性、モルモット遅延型接触過敏、皮膚刺激等を評価した。
【0101】
生体適合性評価:細胞内毒性試験について、GB/T 16886-5<医療器械バイオ学評価第5部:体外細胞毒性試験>に準じてテストを行った。モルモット遅延型接触過敏試験はGB/T 16886-10<医療器械バイオ学評価第10部:刺激と遅延型過敏反応試験>に準じてテストを行い、最大限度試験MagnussonとKligman法を用いた。皮膚刺激試験はGB/T 16886-10<医療器械バイオ学評価第10部:刺激と遅延型過敏反応試験>に準じてテストを行った。
【0102】
その結果、本発明において上記実施例で製造されたバクテリアセルロース/ポリウレタン複合材料は、細胞毒性が2級未満であり、皮膚アレルギー反応や皮内刺激反応がなく、良好な生体安全性を有することが明らかになった。