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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】樹脂加工機械用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20240124BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240124BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20240124BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20240124BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B29C33/72
B29C45/00
B29C48/27
C11D3/37
C11D1/66
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022542833
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2021029198
(87)【国際公開番号】W WO2022034855
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020136764
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】野辺 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岩井 喬史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 茂
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0288374(US,A1)
【文献】特開2012-121953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/72
B29C 45/00
B29C 48/27
C11D 3/37
C11D 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂加工機械から洗浄対象樹脂(C)を含む加工残留物を除去するための洗浄剤であり、
熱可塑性樹脂(A)と、下記式(I)で示される融点又は軟化点が150℃未満の非イオン性の添加剤(B)とを含み、
Rn-X・・・(I)
(式(I)中、Rは疎水性有機基、nは1以上の整数、Xは極性基である。)
280℃、荷重2.16kgの条件下におけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であり、
前記熱可塑性樹脂(A)の溶解パラメータ(SP1)と、前記洗浄対象樹脂(C)の溶解パラメータ(SP2)との差(SP1-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、
前記非イオン性の添加剤(B)の溶解パラメータ(SP3)と前記SP2との差(SP3-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、
前記SP3と前記疎水性有機基Rの溶解パラメータ(SP4)との差(SP3-SP4)が0.7(cal/cm1/2以上であることを特徴とする、樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(A)がスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類を含む、請求項1に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)がスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂を含み、樹脂加工機械用洗浄剤中の前記スチレン系樹脂又は前記ポリエステル系樹脂の含有量が40質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項4】
前記非イオン性の添加剤(B)が滑剤又は界面活性剤を含み、樹脂加工機械用洗浄剤中の前記滑剤又は前記界面活性剤の含有量が10質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項5】
前記SP1及び前記SP3が9~11(cal/cm1/2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項6】
前記洗浄対象樹脂(C)が、スチレン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂加工機械用洗浄剤を用いることを特徴とする、樹脂加工機械内の洗浄方法。
【請求項8】
樹脂加工機械の洗浄における、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂加工機械用洗浄剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂加工機械用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の着色、混合、成形等の作業のために押出成形機や射出成形機等の樹脂加工機械が用いられている。この種の加工機械においては、所定の成形作業終了時に、当該作業で用いた樹脂や染顔料等の添加剤の他、樹脂等から生成される劣化物(例えば、熱分解生成物や炭化物等)が成形機内に残留する。これらの残留物を放置すると、以降に行われる作業時に混入する等して、得られる製品の外観不良等の原因となり得る。特に、透明樹脂の成形を行う場合、混入する残留物がわずかな量であっても、得られる製品の透明性を低下させ、外観不良を引き起こす原因となり得る。そのため、残留物を成形機内から完全に除去することが望まれている。特に、多数の製品を同時に成形するために複数のキャビティを有した複雑なホットランナー構造を有する金型では、その流路中に樹脂を始めとした汚れが堆積しやすいことがしばしば問題となっている。
【0003】
従来、上記残留物を加工機械内から除去するため、人手により加工機械の分解掃除をする方法、あるいは、加工機械を停止せずにそのまま次に使用する成形材料等(以下、「後続材料」という。)を加工機械に充填し、その後続材料を残留物とともに排出させることにより加工機械内の洗浄を行なう、いわゆる置換作業(あるいはパージ作業)が行われている。また、加工機械内に洗浄剤を投入して加工機械内の洗浄を行なう洗浄方法等も実施されている。
これらの中でも洗浄剤を用いる方法は、加工機械内の残留物を除去する洗浄力に優れることから、近年好んで用いられるようになっている。洗浄剤の組成は様々な構成要素からなるが、主だったものとして樹脂、界面活性剤等の添加剤、及び無機物等のスクラブ材からなることが多い。
【0004】
例えば、特許文献1では、後続材料の樹脂と有効成分として脂肪酸アミド化合物を含む洗浄剤(マスターバッチ)とをブレンドしたものを用いている。特許文献2には、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、アルキルスルホン酸塩、及びアルキレングリコール脂肪酸エステルを含む洗浄剤が記載されている。また、特許文献3には、熱可塑性樹脂にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、撥水性化合物(高級脂肪酸金属塩、ろう、流動パラフィン、合成ワックス等)を配合した洗浄用樹脂組成物が、特許文献4には、ポリスチレンにアルキルベンゼンスルホン酸中性塩、離型性化合物を配合した洗浄用樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4954397号公報
【文献】特許第4376648号公報
【文献】特開昭62-195045号公報
【文献】特開平2-206636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の洗浄剤では、成形機中で脂肪酸アミド化合物等の不均一化が起こってしまい、ホッパー付近の汚染、洗浄剤の噛み込み不良が問題となった。また、複雑なホットランナーに通した際には、後続材料の樹脂に洗浄剤が十分に混ざっていないことにより、十分な洗浄効果が得られなかった。
特許文献2~4の洗浄剤では、イオン性の界面活性剤の吸湿によるべたつきや滑剤効果の過剰発現による汚れ表面での上滑りによって洗浄性の低下が生じてしまい、十分な洗浄効果が得られなかった。
以上の様に洗浄剤を用いた場合でも複雑なホットランナー内を効率的に洗浄することは非常に難しく、場合によっては金型を分解する等の対応も必要となっている。
【0007】
そこで、本発明は、シリンダー及び複雑なホットランナー内も成形しながら良好に洗浄することが可能な樹脂加工機械用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、溶解パラメータ及びメルトフローレート(MFR)に着目し、樹脂成分及び添加剤成分の流動性と相溶性とを両立した樹脂加工機械用洗浄剤が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりである。
[1]
樹脂加工機械から洗浄対象樹脂(C)を含む加工残留物を除去するための洗浄剤であり、
熱可塑性樹脂(A)と、下記式(I)で示される融点又は軟化点が150℃未満の非イオン性の添加剤(B)とを含み、
Rn-X・・・(I)
(式(I)中、Rは疎水性有機基、nは1以上の整数、Xは極性基である。)
280℃、荷重2.16kgの条件下におけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であり、
前記熱可塑性樹脂(A)の溶解パラメータ(SP1)と、前記洗浄対象樹脂(C)の溶解パラメータ(SP2)との差(SP1-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、
前記非イオン性の添加剤(B)の溶解パラメータ(SP3)と前記SP2との差(SP3-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、
前記SP3と前記疎水性有機基Rの溶解パラメータ(SP4)との差(SP3-SP4)が0.7(cal/cm1/2以上であることを特徴とする、樹脂加工機械用洗浄剤。
[2]
前記熱可塑性樹脂(A)がスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類を含む、[1]に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[3]
前記熱可塑性樹脂(A)がスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂を含み、樹脂加工機械用洗浄剤中の前記スチレン系樹脂又は前記ポリエステル系樹脂の含有量が40質量%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[4]
前記非イオン性の添加剤(B)が滑剤又は界面活性剤を含み、樹脂加工機械用洗浄剤中の前記滑剤又は前記界面活性剤の含有量が10質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[5]
前記SP1及び前記SP3が9~11(cal/cm1/2である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[6]
前記洗浄対象樹脂(C)が、スチレン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤を用いることを特徴とする、樹脂加工機械内の洗浄方法。
[8]
樹脂加工機械の洗浄における、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリンダー及び複雑なホットランナー内も成形しながら良好に洗浄することが可能な樹脂加工機械用洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また更に、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0012】
<樹脂加工機械用洗浄剤>
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤(以下、単に「洗浄剤」ともいう。)は、樹脂加工機械から洗浄対象樹脂(C)を含む加工残留物を除去するための洗浄剤であり、熱可塑性樹脂(A)と、下記式(I)で示される融点又は軟化点が150℃未満の非イオン性の添加剤(B)とを含み、
Rn-X・・・(I)
(式(I)中、Rは疎水性有機基、nは1以上の整数、Xは極性基である。)
280℃、荷重2.16kgの条件下におけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であり、前記熱可塑性樹脂(A)の溶解パラメータ(SP1)と、前記洗浄対象樹脂(C)の溶解パラメータ(SP2)との差(SP1-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、前記非イオン性の添加剤(B)の溶解パラメータ(SP3)と前記SP2との差(SP3-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、前記SP3と前記疎水性有機基Rの溶解パラメータ(SP4)との差(SP3-SP4)が0.7(cal/cm1/2以上であることを特徴とする。
【0013】
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤は、熱可塑性樹脂の加工機械による成形作業終了時に、当該作業で用いた樹脂(洗浄対象樹脂(C))や、染顔料等の添加剤、樹脂等から生成される劣化物を含む加工残留物を除去するために用いることができる。特に、多数個取りが可能なマルチキャビティホットランナーを有する成形機において、シリンダー内部やスクリューだけではなく、流路が複雑なホットランナー内部も成形操作をしながら洗浄することが可能である。
【0014】
本発明者等は、樹脂加工機械の汚れの主要因となる成形に使用していた樹脂の極性と、洗浄剤を構成する樹脂及び添加剤の極性との関係性に着目し、その極性を表す手段としてFedorosの推算法により求められる溶解パラメータを指標とすることを見出した。つまり、成形に使用した樹脂と洗浄剤の構成樹脂とが近ければ近いほど(相溶性が高いほど)汚れを排出しやすくなることを、溶解パラメータから規定可能であることを見出した。また、洗浄剤に含まれる添加剤も樹脂の相溶化を促進させるために重要であり、溶解パラメータにて規定することが必要であることを見出した。
【0015】
なお、本開示で、熱可塑性樹脂(A)、非イオン性の添加剤(B)、及び洗浄対象樹脂(C)の上記溶解パラメータ(SP値)は、Fedorsの推算法(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)、以下、単に「Fedorsの論文」という。)に基づき下記式により計算されるものである。
Fedorsの式:SP値[(cal/cm1/2]=(E/v)1/2=(ΣΔe/ΣΔv1/2
:蒸発エネルギー[cal/mol]
v:モル体積[cm/mol]
Δe:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー[cal/mol]
Δv:各原子又は原子団のモル体積[cm/mol]
ここで、上記式で使用される蒸発エネルギー及びモル体積は、上記Fedorsの論文中では25℃での値である。上記Fedorsの論文中に樹脂のSP値は温度依存性があることが記載されており、樹脂使用時の温度及び樹脂の体積膨張率αとの間で次の関係式がある。
使用温度でのSP値[(cal/cm1/2]=25℃でのSP値[(cal/cm1/2]×[1+1.13×α×(T1-T2)]
α:体積膨張率(体積膨張係数)[1/K]
T1:298「K」(25℃)
T2:実際の使用時の温度[K]
本開示では、熱可塑性樹脂(A)及び洗浄対象樹脂(C)のSP値(SP1及びSP2)は、使用時の温度で算出した値とし、非イオン性の添加剤(B)のSP値(SP3)は、25℃で算出した値とする。
以上のことから、本実施形態の熱可塑性樹脂(A)及び非イオン性の添加剤(B)は、樹脂加工機械内の加工残留物(汚れ)である洗浄対象樹脂(C)の種類に応じて選択されるものである。また、SP値はFedorsの推算法に基づき計算することができることから、予め計算されたSP値を基に、熱可塑性樹脂(A)と非イオン性の添加剤(B)との組み合わせを決定することができる。
【0016】
以下、本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤の各成分等について詳述する。
【0017】
〈熱可塑性樹脂(A)〉
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤に含まれる熱可塑性樹脂(A)は、SP値(SP1)が後述する特定の条件を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂(A)のSP値(SP1)は、洗浄対象樹脂(C)のSP値(SP2)との差(SP1-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、+1.2~-1.2(cal/cm1/2が好ましく、より好ましくは+1.0~-1.0(cal/cm1/2である。SP1-SP2がこの範囲であれば、熱可塑性樹脂(A)と洗浄対象樹脂(C)との相溶性が良好で、優れた洗浄効果を発揮することができる。
また、熱可塑性樹脂(A)のSP値(SP1)は、SP1-SP2が上記範囲を満たせば特に限定されないが、一般的なエンジニアリングプラスチックの溶解パラメータに近い、9~11(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0019】
例えば、ボトル用プリフォームを成形するマルチキャビホットランナーを洗浄する場合、洗浄対象樹脂(C)がポリエチレンテレフタレートであることが多いため、熱可塑性樹脂(A)は、特にポリエチレンテレフタレートにSP値が近い、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系樹脂、及びポリカーボネートが好ましい。
【0020】
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、又はスチレンと1種もしくは2種以上の他の単量体との共重合体であって、スチレンの含有量が50質量%以上のものが挙げられる。スチレンとの共重合体における他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。スチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0021】
代表的な熱可塑性樹脂のSP値は以下のとおりである(単位は(cal/cm1/2)。このSP値は、上述のとおり使用温度により変化するものである。ここでの記載は、先の算出式に基づき、使用温度として280℃を想定した値である。ポリスチレン:9.3、スチレン-アクリロニトリル共重合体(スチレン:アクリルニトリル比は70:30):9.9、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(スチレン:ブタジエン:アクリロニトリル比は45:30:25):9.8、ポリカーボネート:9.9、ポリエチレン:8.1、ポリアミド(66):11.1、ポリエチレンテレフタレート:10.8、ポリブチレンテレフタレート:10.6
【0022】
熱可塑性樹脂(A)の含有量は、樹脂加工機械用洗浄剤を100質量%として、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。熱可塑性樹脂(A)の含有量が上記範囲であると、機械中に残留した洗浄剤の樹脂成分が後続材料の樹脂にて置換しやすくなる。
特に、熱可塑性樹脂(A)がスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む場合、スチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂の含有量は、樹脂加工機械用洗浄剤を100質量%として、それぞれ20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。スチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂の含有量が上記範囲であると、金属面に付着した汚れに対して、より洗浄効果が得られやすい。
【0023】
〈非イオン性添加剤(B)〉
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤に含まれる非イオン性の添加剤(B)(以下、単に「添加剤(B)」ともいう。)は、下記式(I)に示される構造を有し、融点又は軟化点が150℃未満であり、SP値(SP3)が後述する特定の条件を満たすものであれば、特に限定されない。
Rn-X・・・(I)
(式(I)中、Rは疎水性有機基、nは1以上の整数、Xは極性基である。)
非イオン性添加剤(B)は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
本発明者等は、非イオン性添加剤(B)も熱可塑性樹脂樹脂(A)と洗浄対象樹脂(C)との相溶化を促進させるために重要であり、溶解パラメータにて規定することが必要であることを見出した。加えて、非イオン性添加剤(B)を含むことにより洗浄剤自体の加工機械中への残留が抑制されるため、従来に比して洗浄性能に優れ、かつ複雑なホットランナー内を洗浄剤が効率的に流れることから、堆積した加工残留物(汚れ)を効率的に除去することができる。このようにホットランナー内での洗浄剤の流れが良く、洗浄剤自体も残りにくいことから、成形をしながらの洗浄方法が可能となり、洗浄作業のより一層の効率化が図られる。
【0024】
非イオン性の添加剤(B)のSP値(SP3)は、洗浄対象樹脂(C)のSP値(SP2)との差(SP3-SP2)が+1.6~-1.6(cal/cm1/2であり、+1.2~-1.2(cal/cm1/2が好ましく、より好ましくは+1.0~-1.0(cal/cm1/2である。SP3-SP2がこの範囲であれば、添加剤(B)が樹脂加工機械内の加工残留物(汚れ)である洗浄対象樹脂(C)に浸透して浮かせる効果が良好となる。また、SP3-SP2がこの範囲から外れてしまった場合には、熱可塑性樹脂(A)と添加剤(B)との間の相溶性が悪化し、添加剤(B)が熱可塑性樹脂(A)に均一に混ざらず、洗浄効果にムラが生じてしまう傾向がある。
【0025】
また、非イオン性の添加剤(B)のSP値(SP3)は、非イオン性の添加剤(B)の疎水性有機基RのSP値(SP4)との差(SP3-SP4)が0.7(cal/cm1/2以上である。このSP3-SP4が大きいほど、疎水性有機基Rと極性基Xとの極性差が大きいことを意味し、疎水性有機基Rの疎水効果が強くなり、洗浄剤表面の疎水性が増すことから、洗浄剤の金属付着性を抑制し、洗浄剤の排出特性が増して、非残留性が向上する。SP3-SP4が0.7(cal/cm1/2未満であると、この非残留性が十分に発揮されない。すなわち、SP3とSP4の値を制御することで、添加剤(B)を熱可塑性樹脂(A)中に均一に組み込みながら、熱可塑性樹脂(A)と添加剤(B)との相溶性と、添加剤(B)の加工残留物(汚れ)を浮かす効果と、金属付着性抑制とのバランスを得ることができる。
また、非イオン性の添加剤(B)のSP値(SP3)は、SP3-SP2及びSP3-SP4が上記範囲を満たせば特に限定されないが、一般的なエンジニアリングプラスチックの溶解パラメータに近い、9~11(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0026】
疎水性有機基Rとしては、例えば、ステアリル基やイソステアリル基等の長鎖アルキル基、アミド基、長鎖フルオロカーボン基、アルキルベンゼン基、12-ヒドロキシステアリル基等が挙げられる。
極性基Xとしては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオ―ル基、エステル基、チオエステル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ホルミル基、アセタール、シアノ基、エーテル、アルコキシ基等が挙げられる。
極性基Xがカルボキシ基やヒドロキシ基、エステル基等である場合、添加剤(B)としては、一般的な脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の滑剤や界面活性剤が候補として挙げられる。
疎水性有機基R、極性基Xは、共に部分構造としてオリゴマーやポリマー構造を有していても良く、その場合も疎水性有機基RのみのSP値(SP4)を算出することができる。
【0027】
非イオン性の添加剤(B)は、融点又は軟化点が150℃未満である。融点又は軟化点が150℃以上であると、熱可塑性樹脂(A)との溶融混錬時に添加剤(B)が均一に混錬されない、あるいは洗浄時にホットランナー中に残留する懸念がある。添加剤(B)の融点又は軟化点は、好ましくは30~140℃、より好ましくは60~130℃である。また、混錬時に樹脂に均一に混ざるものであれば、常温で液体であっても問題はない。
【0028】
なお、イオン性の添加剤(界面活性剤、滑剤等)は、融点が高くなる点、及び、吸湿によるべたつきや滑剤効果の過剰発現による汚れ表面での上滑りによって洗浄性の低下が起こりやすくなる点で、洗浄剤への添加剤として好ましくない。
【0029】
非イオン性の添加剤(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂加工機械用洗浄剤を100質量%として、0.1質量%以上15質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量%、更に好ましくは0.5~5質量%である。添加剤(B)の含有量が10質量%以上であると、樹脂加工機械中やホットランナー中に添加剤(B)が滞留する虞があり、添加剤(B)自体も劣化しやすくなる、あるいは洗浄剤自体が外滑効果を強く発現することによる洗浄剤投入時の噛み込み不良等に繋がる傾向にある。
【0030】
代表的な非イオン性の添加剤とそのSP値は以下のとおりである(単位は(cal/cm1/2)。記載はSP3(SP4)となっている。ステアリン酸グリセリル:10.2(8.3)、ステアリン酸アミド:9.8(8.3)、エチレンビスステアリン酸アミド:9.6(8.3)、ステアリルアルコール:9.5(8.3)、ステアリン酸:9.1(8.3)、イソステアリルアルコール:8.8(7.7)。
【0031】
〈その他の成分〉
本実施態様の樹脂加工機械用洗浄剤は、その洗浄目的及び用途に要求される性能に応じて、各種のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、一般的な無機フィラーやポリエチレングリコール、酸化防止剤等が挙げられる。
その他の成分の含有量は、複雑な流路を持つホットランナー内に滞留した場合に抜けきれない可能性を低減するため、樹脂加工機械用洗浄剤を100質量%として、10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは5質量%未満、更に好ましくは1質量%未満である。
【0032】
<樹脂加工機械用洗浄剤の製造方法>
本実施態様の樹脂加工機械用洗浄剤の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製法としては、上述した熱可塑性樹脂(A)、非イオン性の添加剤(B)、及び必要に応じて配合されるその他の成分を含有する樹脂組成物を、ニーダー、押出機あるいはバンバリーミキサー等の溶融混練装置を用いて溶融混練し、得られた溶融混練物をストランド状に押し出した後、粒状に成形する工程を有する製法が挙げられる。ここで用いる溶融混練装置としては、熱可塑性樹脂(A)と添加剤(B)とを十分に混練することができる観点から、押出機が好ましく、より好ましくは2軸押出機である。このように2軸押出機を使用することで熱可塑性樹脂(A)中に添加剤(B)を均一に分散しやすくなるので、押出性が安定し、押出機から吐出されるストランドの脈動等が抑えられる傾向にある。
【0033】
混錬が不十分であったり、ドライブレンドの様な添加剤(B)と熱可塑性樹脂(A)とが不均一に分散あるいは展着するのみの状態であったりすると、シリンダーやホットランナー内での偏在やブリードアウト、ホッパー下の添加剤(B)の付着、成形洗浄時のムラ、オーバーパック等、洗浄性能を十分に得られないだけでなく、ホットランナーを含めた金型の汚染や破損につながる虞がある。
【0034】
各種構成成分の配合及び溶融混練の際に、一般に使用されている装置、例えば、タンブラー、リボンブレンダ―、スーパーミキサー等の予備混合装置、重量式供給機、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。また、溶融混練する際は、常圧で開放口(ベント)から脱気分を除去する開放脱気を、必要に応じて減圧して開放口(ベント)から脱気分を除去する減圧脱気にて行うことが望ましい。
なお、押出機で溶融混練する際のシリンダー温度は、320℃以下に設定することが好ましく、300℃以下がより好ましい。押出機内における溶融樹脂の滞留時間は、できるだけ短くすることが望ましいので、かかる観点を考慮して、シリンダー温度を設定する。
【0035】
本実施態様の樹脂加工機械用洗浄剤の280℃、荷重2.16kgの条件下(ISO1133に準拠)におけるメルトフローレート(MFR)は、30g/10分以下であり、1~25g/10分が好ましく、3~20g/10分がより好ましい。MFRが30g/10分超であると洗浄剤の流動が大きすぎることから、成形しながらの洗浄時に洗浄剤が金型に過剰に流れ込むことによるオーバーパック等が起こり、機械を破損する可能性が有る。また、溶融混錬が強すぎた場合に、熱可塑性樹脂(A)、添加剤(B)の劣化が起き、結果としてMFRが上昇している可能性もあるため、洗浄効果の低下も懸念される。MFRが1g/10分未満では、成形しながらの洗浄時にショートショットとなる可能性やホットランナーでの残留が起こりやすくなる傾向にある。
【0036】
<加工残留物>
本実施態様の樹脂加工機械用洗浄剤により洗浄することが可能な樹脂加工機械内の加工残留物は、洗浄対象樹脂(C)(加工作業に用いた樹脂)を含み、その他に、染顔料等の添加剤、洗浄対象樹脂(C)等から生成される劣化物(例えば、熱分解生成物や炭化物等)等を含む場合がある。
【0037】
〈洗浄対象樹脂(C)〉
洗浄対象樹脂(C)は、そのSP値(SP2)が前述の特定の条件を満たすものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステル等の一般的な汎用樹脂からエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0038】
<樹脂加工機械用洗浄剤を使用した樹脂加工機械内の洗浄方法>
本実施態様の樹脂加工機械用洗浄剤を使用することができる樹脂加工機械は、射出成形機、押出機等、熱可塑性樹脂を扱う樹脂加工機械であれば特に制限されるものではないが、本実施態様の洗浄剤は、複雑な形状を有するホットランナー内の洗浄においても高い洗浄効果を発揮することが特徴である。
ホットランナー内の洗浄は、通常の成形条件と同じく、樹脂が溶融する温度まで内部を加熱し、洗浄対象樹脂(C)と同じ成形条件で洗浄剤を流し、成形品として取り出すことにより行うことができる。なお、洗浄剤を用いて成形操作を行った際、ショートショットとなるようであれば、ホットランナーの温度を10~30℃ほど上げることが可能である。
ホットランナー及びキャビティ内部を洗浄するだけであれば、金型を開けた状態にして洗浄剤を流すことで、ゲートから直接溶融した洗浄剤を回収することも可能である。
また、完全に汚れを落とし切る必要がなく、多少の加工残留物(洗浄対象樹脂(C))が内部に残留した状態であっても、本実施態様の洗浄剤であれば徐々に加工残留物に浸透するため、洗浄効果は十分に得られる。
【実施例
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例及び比較例において使用した各成分は、以下のとおりである。
【0041】
<熱可塑性樹脂(A)>
(A-1)PET(ポリエチレンテレフタレート)
(A-2)AS(スチレン-アクリロニトリル共重合体)(スチレン:アクリルニトリル比は70:30)
(A-3)PC(ポリカーボネート)
(A-4)ABS(スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体)(スチレン:ブタジエン:アクリルニトリル比は45:30:25)
(A-5)、(A-6)PS(ポリスチレン)
(A-7)LDPE(低密度ポリエチレン)
Fedorsの推算法により求めた(A-1)~(A-7)の溶解パラメータSP1、及び280℃、荷重2.16kgの条件下(ISO1133に準拠)で測定したメルトフローレート(MFR)(g/10分)を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
<非イオン性の添加剤(B)>
(B-1)ステアリン酸グリセリル
(B-2)ステアリン酸アミド
(B-3)エチレンビスステアリン酸アミド
(B-4)ステアリルアルコール
(B-5)ステアリン酸
(B-6)イソステアリルアルコール
<その他の非イオン性の添加剤>
(B-7)ポリエチレングリコール(分子量10,000)
(B-8)ドデシル硫酸ナトリウム
(B-1)~(B-8)の融点又は軟化点、Fedorsの推算法により求めた(B-1)~(B-8)の溶解パラメータSP3及び(B-1)~(B-8)の疎水性有機基Rの溶解パラメータSP4を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
<洗浄対象樹脂(C)>
(C-1)PA66(ポリアミド66)
(C-2)PET(ポリエチレンテレフタレート)
(C-3)PBT(ポリブチレンテレフタレート)
(C-4)ABS(スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体)(スチレン:ブタジエン:アクリルニトリル比は45:30:25)
(C-5)PC(ポリカーボネート)
(C-6)PE(ポリエチレン)
Fedorsの推算法により求めた(C-1)~(C-6)の溶解パラメータSP2を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例及び比較例で得られた洗浄剤の測定・評価方法は、以下のとおりである。
【0048】
[性能評価]
(押出性)
実施例及び比較例の樹脂組成物の作製の際、押出機からのストランドの形状やペレット化の様子を観察し、以下の評価基準により評価した。
[評価基準]
〇(良好):ストランドが安定して形成されたため、ペレットサイズが均一。
×(不良):ストランドが安定して形成されなかったため、ペレットサイズが不均一。
ストランドが安定して形成されないのは、添加剤(B)の劣化や偏在化等が原因として考えられ、品質のばらつきや性能のムラ等につながるため、一般的に好ましくない。
【0049】
(MFR)
実施例及び比較例で得られた洗浄剤のペレットに関して、ISO1133に準拠して、280℃、荷重2.16kgの条件下でメルトフローレート(MFR)(g/10分)を測定した。
【0050】
(洗浄性)
実施例及び比較例で得られた洗浄剤の洗浄性を、プリフォーム96個取りのマルチキャビティホットランナーを有する射出成形機を用いて評価した。型締めは350t、一回のショットサイクルタイムは20秒とした。
汚し材となる洗浄対象樹脂(C)は、洗浄の切り替わりを明確にするため、洗浄対象樹脂(C)100質量%に対してフタロシアニンブルー着色マスターバッチを5質量%混ぜて青色に着色したものを用いた。
射出成形機の内壁に十分に付着するように、着色した洗浄対象樹脂(C)をシリンダー内部に十分に流し、排出樹脂が完全に青色に置換していることを確認した。次に、成形操作も同様に行い、ホットランナー、キャビティ内部にも着色した洗浄対象樹脂(C)が充填されていることを確認した。
その後、実施例及び比較例で得られた洗浄剤を投入し、最初にシリンダー内部を洗浄した。この時、シリンダー内部の洗浄性能を確認するため、シリンダー側のノズル先端を金型から離して、シリンダー内部の着色した洗浄対象樹脂(C)(汚れ)のみを排出させ、これを目視確認した。
次に、シリンダー洗浄が終わった後、ノズルを金型にタッチさせ、通常の成形条件と同じ条件にて洗浄剤をホットランナーに流し入れ、成形しながら洗浄を実施した。
洗浄対象樹脂(C)の種類に応じて洗浄剤の量は変わるため、着色していない洗浄対象樹脂(C)(ナチュラル品)を流した場合に必要だったナチュラル品の量を標準として、その量に対する比較で評価を行った。
[評価基準] ◎(優れる):着色した洗浄対象樹脂(C)は完全に排出され、ナチュラル品を流した場合と比較し、1/3以下の量で洗浄が可能。
〇(良好):着色した洗浄対象樹脂(C)は完全に排出され、ナチュラル品を流した場合と比較し、1/3超1/2以下の量で洗浄が可能。
△(可):着色した洗浄対象樹脂(C)は完全に排出され、ナチュラル品を流した場合と比較し、1/2超から1/1以下の量で洗浄が可能。
×(不良):ナチュラル品を流した場合と比較し、1/1超の量で洗浄しても、着色した洗浄対象樹脂(C)が完全には排出されず、滞留。
【0051】
(非残留性)
シリンダー及びホットランナー中での洗浄剤自体の非残留性を、プリフォーム96個取りのマルチキャビティホットランナーを有する射出成形機を用いて評価した。洗浄剤が排出されるまでパージ作業を実施した後、成形機に着色していない洗浄対象樹脂(C)(ナチュラル品)を上記の洗浄性評価と同じく、シリンダー、続いてホットランナー内の順に流し、洗浄剤の置き換えを目視評価した。
[評価基準]
◎(優れる):洗浄剤が残留せず、洗浄対象樹脂(C)(ナチュラル品)を流した時、成形10ショット以内にナチュラル品に置換可能。
〇(良好):洗浄剤がほとんど残留せず、洗浄対象樹脂(C)(ナチュラル品)を流した時、成形11ショット以上20ショット以内にナチュラル品に置換可能。
△(可):洗浄剤の残留はあるが、洗浄対象樹脂(C)(ナチュラル品)を流した時、成形21ショット以上40ショット以内にナチュラル品に置換可能。
×(不良):洗浄剤の残留があり、洗浄対象樹脂(C)(ナチュラル品)を流しても置換が困難あるいは成形41ショット以上必要。
【0052】
(実施例1~12、比較例1~6)
各成分を表4に示す割合(質量%)で含む樹脂組成物を、予めタンブラーブレンダ―を用いて5分間予備混合し、そのまま二軸押出機(芝浦機械製、TEM58SS)を用いて溶融混錬した。この時の押出条件は、シリンダー設定温度280℃(A-7の樹脂を単独で用いた比較例5のみ200℃)、供給量10kg/時間の条件で行った。このようにして得られた溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断してペレット状の洗浄剤を得た。
(比較例7)
表4に記載の配合比にて、A-2にB-2及びB-3をタンブラーブレンダ―を用いて5分間混合分散させたものをそのまま洗浄剤とした。
【0053】
得られた洗浄剤について、測定・評価結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
評価結果より、洗浄対象樹脂(C)に近い溶解パラメータを有する熱可塑性樹脂(A)及び非イオン性の添加剤(B)を含む洗浄剤が、より優れた洗浄性及び非残留性を発揮することがわかった。また、熱可塑性樹脂(A)及び非イオン性の添加剤(B)の溶解パラメータを制御することで、押出した際に非イオン性の添加剤(B)を均一に分散させることができ、極端なブリードアウトや粘度低下による洗浄性能の低下を防ぐことができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、樹脂加工機械用洗浄剤を構成する樹脂と添加剤との組み合わせを溶解パラメータから容易に設計することができると共に、非常に複雑なホットランナー内の洗浄も良好に行うことができ、洗浄対象の樹脂の種類に応じたオーダーメードの様な形で洗浄剤を製造することができる。