(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】静電分離装置
(51)【国際特許分類】
B03C 7/02 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B03C7/02 B
(21)【出願番号】P 2022556350
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039914
(87)【国際公開番号】W WO2022085181
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井原 崇之
(72)【発明者】
【氏名】池田 光毅
(72)【発明者】
【氏名】荻山 直也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】政本 学
(72)【発明者】
【氏名】福本 康二
(72)【発明者】
【氏名】清瀧 元
(72)【発明者】
【氏名】真塩 圭一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜馬
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/076620(WO,A1)
【文献】特開2006-043684(JP,A)
【文献】特開2017-023894(JP,A)
【文献】特開2015-160190(JP,A)
【文献】米国特許第03402814(US,A)
【文献】特開2007-117873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子及び絶縁性粒子が混在する原料から前記導電性粒子を分離する静電分離装置であって、
前記原料からなる原料層が形成された容器と、
前記原料層の底部に配置されたガス分散板と、
前記ガス分散板と同一面又は前記ガス分散板より上方の前記原料層内に配置された少なくとも1つの振動体と、
前記容器の底部から前記原料層内へ導入され、前記ガス分散板を通じて前記原料層を上昇する流動化ガスを供給する流動化ガス供給装置と、
前記原料層の上方に配置された上部電極と、
前記ガス分散板と同一面又は前記ガス分散板より上方の前記原料層内に配置された下部電極と、
前記下部電極よりも上方の前記原料層内に配置された少なくとも1つの中間電極と、
前記上部電極及び前記下部電極のうち一方をマイナス電極とし他方をプラス電極としてこれらの電極間に電界を生じさせ
、且つ、前記上部電極と前記中間電極との電位差が前記上部電極と前記下部電極との電位差以下となるように前記上部電極と
前記中間電極と前記下部電極の電極間に電圧を印加する電源装置と、
前記原料層の表面から前記上部電極へ向けて飛び出した前記導電性粒子を捕捉する捕捉装置と、を備える、
静電分離装置。
【請求項2】
前記振動体のうち少なくとも1つは前記容器に対して独立して振動するように構成されている、
請求項1に記載の静電分離装置。
【請求項3】
前記下部電極は振動可能に構成されており、前記下部電極が前記振動体としての機能を併せ備える、
請求項1又は2に記載の静電分離装置。
【請求項4】
前記中間電極は振動可能に構成されており、前記中間電極が前記振動体としての機能を併せ備える、
請求項
1に記載の静電分離装置。
【請求項5】
上下方向に並ぶ複数の前記中間電極を備え、
前記下部電極から離れるに従って前記上部電極との電位差が小さくなるように、前記上部電極と前記中間電極との間に電圧が印加される、
請求項
1又は
4に記載の静電分離装置。
【請求項6】
前記中間電極は、上下に並ぶ第1中間電極及び第2中間電極を含み、
前記第1中間電極の目開きは前記第2中間電極の目開きよりも大きい、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載の静電分離装置。
【請求項7】
前記捕捉装置は、前記原料層の上方且つ前記上部電極の下方を捕捉領域とし、下向きの搬送面が前記捕捉領域を通過するように回転するコンベヤベルトを備える、
請求項1~
6のいずれか一項に記載の静電分離装置。
【請求項8】
前記捕捉装置は、前記コンベヤベルト又は前記導電性粒子に分子間力で付着している前記絶縁性粒子を前記コンベヤベルトから脱離させる絶縁性粒子脱離促進装置を更に有する、
請求項
7記載の静電分離装置。
【請求項9】
前記捕捉装置は、前記コンベヤベルトに静電気力で付着している前記導電性粒子を除電することにより、前記コンベヤベルトから前記導電性粒子を分離させる粒子分離部材を更に有する、
請求項
7又は
8に記載の静電分離装置。
【請求項10】
前記コンベヤベルトの回転による前記捕捉領域における前記搬送面の移動方向と、前記容器内の前記原料の進行方向とが平面視において直交している、
請求項
7~
9のいずれか一項に記載の静電分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子及び絶縁性粒子が混在する原料から導電性粒子を分離する静電分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電性粒子及び絶縁性粒子(非導電性粒子)が混在する原料から、静電気力によって導電性粒子を分離する静電分離装置が知られている。このような静電分離装置は、石炭灰や廃棄物(例えば、廃プラスチック、ごみ及び焼却灰等)からの特定成分の分離、食品の不純物除去、鉱物の濃縮などに利用され得る。特許文献1は、この種の静電分離装置を開示する。
【0003】
特許文献1に開示された静電分離装置は、平板状の底面電極と、底面電極の上方に設置された多数の開口部を有する平板状のメッシュ電極とを備え、両電極間に電圧が印加され、両電極間に静電気力による分離ゾーンが形成される。更に、底面電極が通気性を有するガス分散板で構成され、ガス分散板の下側から分離ゾーンに分散用気体が導入され、底面電極およびメッシュ電極の少なくとも一方に振動が付与される。これにより、分離ゾーンに供給した原料中の導電性粒子が、メッシュ電極の開口部を通過して分離ゾーンの上方に分離される。分離ゾーンの上方に分離された導電性粒子は吸引管を通じて集塵機へ気流搬送され、集塵機で回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の静電分離装置では、底面電極の上に薄い原料の層が形成されるにとどまる。また、底面電極をそれが据え付けられた容器ごと振動させるため、装置の大型化が難しい。このような理由から一度に大量の原料を処理することが難しく、処理能力を向上させる点で改良の余地が残されている。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電性粒子及び絶縁性粒子が混在する原料から静電気力で導電性粒子を分離する静電分離装置において、処理能力の向上を可能とする構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る静電分離装置は、導電性粒子及び絶縁性粒子が混在する原料から前記導電性粒子を分離する静電分離装置であって、
前記原料からなる原料層が形成された容器と、
前記原料層の底部に配置されたガス分散板と、
前記ガス分散板と同一面又は前記ガス分散板より上方の前記原料層内に配置された少なくとも1つの振動体と、
前記容器の底部から前記原料層内へ導入され、前記ガス分散板を通じて前記原料層を上昇する流動化ガスを供給する流動化ガス供給装置と、
前記原料層の上方に配置された上部電極と、
前記ガス分散板と同一面又は前記ガス分散板より上方の前記原料層内に配置された下部電極と、
前記下部電極よりも上方の前記原料層内に配置された少なくとも1つの中間電極と、
前記上部電極及び前記下部電極のうち一方をマイナス電極とし他方をプラス電極としてこれらの電極間に電界を生じさせ、且つ、前記上部電極と前記中間電極との電位差が前記上部電極と前記下部電極との電位差以下となるように前記上部電極と前記中間電極と前記下部電極の電極間に電圧を印加する電源装置と、
前記原料層の表面から前記上部電極へ向けて飛び出した前記導電性粒子を捕捉する捕捉装置と、を備えることを特徴としている。
【0008】
原料層を構成している原料は、一般的な流動層を形成する流動媒体(例えば、砂)と比較して粒径が小さいため流動化ガスの吹き抜けが生じ易く、吹き抜けが生じると原料層が良好に流動化しない。そこで、上記のように原料層内に振動体を設けることによって、原料層に吹き抜けが生じることが抑制され、これにより原料層の良好な流動状態を維持することができる。これにより原料層内での電極と原料との接触が促進され、静電分離装置の処理能力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性粒子及び絶縁性粒子が混在する原料から静電気力で導電性粒子を分離する静電分離装置において、処理能力の向上を可能とする構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る静電分離装置の全体的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、捕捉装置に絶縁性粒子脱離促進装置を設けた静電分離装置の変形例を説明する図である。
【
図3】
図3は、コンベヤベルトの搬送面の移動方向と原料の進行方向との関係を示す平面図である。
【
図4】
図4は、原料層内に下部電極を設けた静電分離装置の変形例を説明する図である。
【
図5】
図5は、複数の電極の電位の関係の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、複数の電極の電位の関係の別の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、振動体加振装置を備えた静電分離装置の変形例を説明する図である。
【
図8】
図8は、振動体加振装置及び容器振動装置を備えた静電分離装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る静電分離装置1を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る静電分離装置1の全体的な構成を示す図である。本実施形態に係る静電分離装置1は、導電性粒子16及び絶縁性粒子18が混在する原料17から、主に導電性粒子16を分離するものである。この静電分離装置1は、例えば、未燃炭素(導電性粒子16)と灰分(絶縁性粒子18)を含む石炭灰(原料17)から未燃炭素を分離するために用いられ得る。但し、静電分離装置1の用途は上記に限定されず、様々な粒子又は粉体の分離、例えば、廃棄物からの金属分別や水銀、鉱物や食品からの不純物除去等、導電性や帯電性の異なる物質の分離にも用いられ得る。
【0012】
〔静電分離装置1の構成〕
図1に示すように、本実施形態に係る静電分離装置1は、原料層15が形成された容器25と、原料層15の底部に配置されたガス分散板26と、ガス分散板26と同一面(又は、ガス分散板26より上方)の原料層15内に配置された少なくとも1つの振動体Vと、ガス分散板26を通じて原料層15を上昇する流動化ガス31を供給する流動化ガス供給装置29と、原料層15の上方に配置された上部電極22と、ガス分散板26と同一面(又は、ガス分散板26より上方)の原料層15内に配置された下部電極28と、捕捉装置50と、電源装置20とを備える。
【0013】
捕捉装置50として、コンベヤ式捕捉装置が採用されている。捕捉装置50は、無端状のコンベヤベルト51と、コンベヤベルト51の回転駆動装置(図示略)からなる。コンベヤベルト51は、不導体からなる。
【0014】
コンベヤベルト51の環の内側に上部電極22が配置されている。コンベヤベルト51は、環の外側の面を搬送面52としている。原料層15の上方且つ上部電極22の下方を「捕捉領域10」と規定する。回転するコンベヤベルト51は、搬送面52が下向きの姿勢で捕捉領域10を通過する。捕捉領域10を通過するコンベヤベルト51の搬送面52は、略水平であってよい。
【0015】
捕捉装置50は、粒子分離部材43を備える。粒子分離部材43の下方には、導電性粒子回収容器41が設けられている。粒子分離部材43は、例えば、へら状の部材(スクレーパ)であって、コンベヤベルト51に付着した粒子を掻き落とすことができる。但し、粒子分離部材43は、除電機能を有する部材(例えば、除電ブラシ)であって、コンベヤベルト51に付着した粒子の除電を行うことにより、コンベヤベルト51から粒子を分離させるものであってもよい。
【0016】
図2には、捕捉装置50に絶縁性粒子脱離促進装置53を設けた静電分離装置1の変形例が示されている。
図2に示すように、捕捉装置50は、コンベヤベルト51又は導電性粒子16に分子間力で付着している絶縁性粒子18をコンベヤベルト51から脱離させる絶縁性粒子脱離促進装置53を更に備えていてもよい。これにより分子間力によって付着した絶縁性粒子18をコンベヤベルト51から脱離させ、導電性粒子回収容器41に回収される導電性粒子16の濃度を高めることができる。
【0017】
絶縁性粒子脱離促進装置53は、例えば、コンベヤベルト51の下向きの搬送面52に接触してモータの回転により生じる回転振動を与えることにより、当該搬送面52を加振するように構成された加振装置である。但し、絶縁性粒子脱離促進装置53はコンベヤベルト51の搬送面52と反対側の面に接触するように、搬送面52の上方(即ち、コンベヤベルト51の環の内側)に配置された加振装置であってよい。また、絶縁性粒子脱離促進装置53は、圧縮空気を断続的吹き付けることによりコンベヤベルト51に振動を与えるように構成されたものであってもよい。また、絶縁性粒子脱離促進装置53は、導電性粒子16及び絶縁性粒子18は透過させないが気体は透過可能な材質によってコンベヤベルト51を形成し、コンベヤベルト51の内側から捕捉領域10へ向かう方向に微量のガスを供給し、搬送面52又は導電性粒子16に付着している絶縁性粒子18を脱離させるように構成されたものであってもよい。
【0018】
図1に戻って、容器25の底部には、多数の微小孔を有するガス分散板26が配置されている。ガス分散板26は、多孔板であってもよいし、多孔シートであってもよい。容器25には、図示されない供給装置によって、導電性粒子16及び絶縁性粒子18が混在する原料17が供給される。容器25内に堆積した原料17によって、原料層15が形成される。
【0019】
原料17が容器25の第1側に連続的又は断続的に供給されることによって、原料17は容器25の第1側から反対側の第2側に向かって徐々に移動する。容器25の第2側には、容器25からオーバーフローした粒子(主に絶縁性粒子18)を回収する絶縁性粒子回収容器40が設けられている。
【0020】
図3は、コンベヤベルト51の搬送面52の移動方向D1と原料17の進行方向D2との関係を示す平面図である。
図3に示すように、捕捉領域10を通過するコンベヤベルト51の搬送面52の移動方向D1、即ち、搬送面52に付着した導電性粒子16の移動方向と、容器25(原料層15)内での原料17の進行方向D2とは、平面視において略直交している。より多くの原料17を一度に処理するためには、容器25は進行方向D2と直交する幅方向D3の寸法を大きくすることが望ましい。なお、
図1では、移動方向D1と進行方向D2とは平行に示されているが、移動方向D1と進行方向D2との関係はこれらの図面に図示されたものに限定されない。
【0021】
前述の通り、容器25内の原料17は容器25の第1側から第2側へ向かう進行方向D2へ徐々に移動する。容器25内の原料17は、捕捉領域10に差し掛かると導電性粒子16が帯電し、コンベヤベルト51の搬送面52に付着していくため、帯電する導電性粒子16の量は進行方向D2の上流側から下流側にかけて減少していく。一方で、コンベヤベルト51の搬送面52に付着した導電性粒子16は粒子分離部材43によって除去されるまで搬送面52を付着占有するため、更なる導電性粒子16の付着が阻害されることになる。よって、移動方向D1と進行方向D2とが直交していると、移動方向D1と進行方向D2とが平行である場合と比較して、より効率的に搬送面52に導電性粒子16を付着回収させることができる。仮に、捕捉領域10を通過するコンベヤベルト51の搬送面52の移動方向D1と進行方向D2とが平行であれば、コンベヤベルト51の幅が大きくなってしまう。このようにコンベヤベルト51の幅を抑える観点からも移動方向D1と進行方向D2とは平面視において直交していることが望ましい。但し、移動方向D1と進行方向D2とが平行であってもかまわない。
【0022】
図1に戻って、容器25の下方には、風箱30が設けられている。風箱30には、流動化ガス供給装置29から流動化ガス31が供給される。流動化ガス31は、例えば、空気であってよい。流動化ガス31は、除湿されたガス(例えば、露点0℃以下の除湿ガス)であることが望ましい。流動化ガス31は、風箱30から前記容器25の底部から原料層15内へ導入され、ガス分散板26、下部電極28及び中間電極34を通過しながら原料層15を上昇する。
【0023】
本実施形態では、ガス分散板26として金属製のガス分散板が採用されており、ガス分散板26が下部電極28の機能を併せ備えている。但し、
図4に示すように、原料層15内においてガス分散板26の上方に下部電極28が設けられていてもよい。この場合の下部電極28は流動化ガス31の通過を許容するメッシュ板で構成され、ガス分散板26には樹脂製、金属製、又はセラミックス製の多孔シートが採用される。
【0024】
ガス分散板26と同一面、又は、ガス分散板26より上方の原料層15内は、少なくとも1つの振動体Vが配置されている。本実施形態においては、振動体Vはガス分散板26より上方の原料層15内に配置された金属製のメッシュ板で構成され、振動体Vは中間電極34としての機能を併せ備えている。但し、中間電極34が省略され、振動体Vのみが設けられていてもよい。なお、
図4に示すように、原料層15内においてガス分散板26の上方に下部電極28が設けられている場合には、下部電極28が振動可能に構成されて、振動体Vが下部電極28としての機能を併せ備えてもよい。
【0025】
中間電極34(振動体V)を形成しているメッシュ板は、原料層15中の導電性粒子16及び絶縁性粒子18の通過を許容する目開きを有する。中間電極34は、原料層15内において下部電極28よりも上方に配置される。下部電極28と中間電極34との間隔は、数mm~数十mm程度であってよい。複数の中間電極34が設けられる場合は、複数の中間電極34は上下方向に並び、複数の中間電極34及び下部電極28は容器25の底面と略平行に配置される。
【0026】
複数の中間電極34が設けられる場合に、これら複数の中間電極34の目開きは同じであってよい。或いは、複数の中間電極34が設けられる場合に、上に配置される中間電極34ほど目開きが大きくてよい。例えば、複数の中間電極34が上下に並ぶ第1中間電極34a及び第2中間電極34bを含む場合に、上に配置される第1中間電極34aの目開きのほうが第2中間電極34bの目開きよりも大きい。
【0027】
電源装置20は、上下方向に対峙する上部電極22及び下部電極28の両電極間に電圧を印加することにより、上部電極22及び下部電極28のうち一方をマイナス(-)電極とし他方をプラス(+)電極とし両電極間に電界を生じさせる。本実施形態では、上部電極22がマイナス電極となり下部電極28がプラス電極となるように、電源装置20によって上部電極22にマイナス電圧が与えられ、下部電極28が接地されている。一例として、上部電極22と下部電極28との間隔が数十mm~数百mmである場合に、上部電極22と下部電極28との間に生じる電界の強度の絶対値は0.1~1.5kV/mm程度であってよい。
【0028】
また、電源装置20は、中間電極34がマイナス電極とプラス電極のうち下部電極28と同じ極性となるように、上部電極22と中間電極34の電極間に電圧を印加する。上部電極22と中間電極34の各々との電位差は、上部電極22と下部電極28との電位差以下であればよい。
【0029】
例えば、
図5に示すように、複数の中間電極34及び下部電極28が接地され、上部電極22にマイナス電圧が与えられてよい。この場合、複数の中間電極34及び下部電極28がプラス電極となり、上部電極22がマイナス電極となり、下部電極28と複数の中間電極34とが等電位である。この場合、中間電極34同士、及び、中間電極34と下部電極28には電位差がない。しかし、中間電極34はメッシュ板であることから、下部電極28と上部電極22の電位差によって中間電極34の目開きを通過するように下部電極28と上部電極22の電極間に電界が生じることから、下部電極28と中間電極34との間及び中間電極同士の間にも電界が生じていると考えられる。
【0030】
また、例えば、
図6に示すように、下部電極28が接地され、中間電極34及び上部電極22にマイナス電圧が与えられてよい。複数の中間電極34が上下に並ぶ第1中間電極34a及び第2中間電極34bを含む場合に、上部電極22を-20kV、第1中間電極34a及び第2中間電極34bを-2kV、下部電極28を0kVとすることができる(数値は例示に過ぎない)。この場合、複数の中間電極34及び下部電極28がプラス電極となり、上部電極22がマイナス電極となり、複数の中間電極34a,34b同士の間が等電位である。中間電極34a,34bと下部電極28との間に電位差が生じているが、上部電極22と中間電極34a,34bの電位差及び上部電極22と下部電極28の電位差と比較して十分に小さい。このような関係において、下部電極28と最も下方に配置された中間電極34(本実施形態では第2中間電極34b)との間の電界強度を、
図5に示す場合と比較して高くすることができる。
【0031】
また、複数の中間電極34が上下に並ぶ第1中間電極34a及び第2中間電極34bを含む場合に、上部電極22を-20kV、第1中間電極34aを-4kV、第2中間電極34bを-2kV、下部電極28を0kVとすることができる(数値は例示に過ぎない)。つまり、下部電極28から離れるに従って上部電極22と中間電極34の電位差が小さくなるように(換言すれば、下部電極28との電位差が大きくなるように)、上部電極22と各中間電極34の電位差が設定されてよい。この場合に、下部電極28と最も下方に配置された中間電極34(本実施形態では第2中間電極34b)との間の電界強度に加えて、中間電極34同士の間の電界強度も、
図5に示す場合と比較して高くすることができる。
【0032】
図7は、振動体加振装置33を備えた静電分離装置1の変形例を説明する図である。
図7に示すように、静電分離装置1は、振動体V(振動体Vは、中間電極34として機能してもよい)のうち少なくとも1つを容器25から独立して振動させる振動体加振装置33を、備えてもよい。
図7に示す例では、容器25は固定されており、振動体Vが容器25に対して振動する。振動体加振装置33は、少なくとも1つの振動体Vを上下方向及び水平方向のうちいずれか一つ、或いは、2つ以上の組み合わせの方向へ振動させる手段である。振動は、往復運動であってもよいし円運動であってもよい。また、周波数の異なる複数の振動体加振装置33を備えて、振動体Vが小さな振幅で運動しながら大きな振幅で運動するように、周波数の異なる振動を重畳させてもよい。
【0033】
図8は、振動体加振装置33及び容器振動装置32を備えた静電分離装置1の変形例を説明する図である。
図8に示すように、静電分離装置1は、上記の振動体加振装置33に加えて、容器振動装置32を備えてもよい。容器振動装置32は、容器25を上下方向及び水平方向のうちいずれか一つ、或いは、2つ以上の組み合わせの方向へ振動させる手段である。振動は、往復運動であってもよいし円運動であってもよい。このように独立した容器振動装置32及び振動体加振装置33を備えることによって、下部電極28と少なくとも1つの中間電極34とを独立して振動させることができる。例えば、下部電極28と中間電極34とを互いに異なる振動数で振動させたり、下部電極28と中間電極34とを互いに異なる方向へ振動させたりすることができる。
【0034】
〔静電分離方法〕
ここで、上記構成の静電分離装置1を用いた静電分離方法を説明する。
【0035】
図1に示す静電分離装置1では、上部電極22と下部電極28との間に生じた電界によって不導体(絶縁体・誘導体)であるコンベヤベルト51に誘電分極が生じ、コンベヤベルト51のうち捕捉領域10を通過する下向きの搬送面52にマイナス又はプラス(上部電極22と対応)の電荷が発生する。本実施形態では、上部電極22がマイナス電極であるから、搬送面52にはマイナスの電荷が発生する。
【0036】
容器25内の原料層15は流動化ガス31によって流動化され、原料層15には上下及び左右方向の原料17の流れが生じている。つまり、原料層15は攪拌されている。この攪拌によって下部電極28及び/又は中間電極34と接触した導電性粒子16はプラス又はマイナス(下部電極28と対応)に帯電する。本実施形態では、下部電極28がプラス電極であるから、導電性粒子16はプラスに帯電する。絶縁性粒子18(不導体)は、下部電極28と接触しても帯電しない。
【0037】
帯電した導電性粒子16は、原料17の流れによって原料層15の表層部まで移動して、コンベヤベルト51の下向きの搬送面52に静電気力によって引き付けられ、原料層15から飛び出して下向きの搬送面52に付着する。導電性粒子16は上部電極22へ直接に接触しないので、帯電した状態を維持でき、コンベヤベルト51の下向きの搬送面52に引き付けられた状態を継続することができる。
【0038】
上記のようにコンベヤベルト51の搬送面52に付着した導電性粒子16は、コンベヤベルト51の回転によって電界の外へ運ばれる。そして、導電性粒子16は、電界の外で粒子分離部材43によってコンベヤベルト51の搬送面52から剥がされて、導電性粒子回収容器41に回収される。
【0039】
一方、原料層15にある絶縁性粒子18は帯電していないため、コンベヤベルト51の下向きの搬送面52に静電気によって引き付けられることなく、原料層15内に留まる。容器25に投入された原料17は、容器25を第1側から第2側へ向かうに従って導電性粒子16の割合が低下し、絶縁性粒子18の割合が高まる。容器25の第2側に配置された絶縁性粒子回収容器40では、容器25からオーバーフローした絶縁性粒子18の割合が高い原料17が回収される。
【0040】
〔本実施形態の総括〕
以上に説明したように、上記実施形態に係る静電分離装置1は、導電性粒子16及び絶縁性粒子18が混在する原料17から導電性粒子16を分離する静電分離装置1であって、
原料17からなる原料層15が形成された容器25と、
原料層15の底部に配置されたガス分散板26と、
ガス分散板26と同一面又はガス分散板26より上方の原料層15内に配置された少なくとも1つの振動体Vと、
容器25の底部から原料層15内へ導入され、ガス分散板26を通じて原料層15を上昇する流動化ガス31を供給する流動化ガス供給装置29と、
原料層15の上方に配置された上部電極22と、
ガス分散板26と同一面又はガス分散板26より上方の原料層15内に配置された下部電極28と、
上部電極22及び下部電極28のうち一方をマイナス電極とし他方をプラス電極としてこれらの電極間に電界を生じさせるように上部電極22と下部電極28の電極間に電圧を印加する電源装置20と、
原料層15の表面から上部電極22へ向けて飛び出した導電性粒子16を捕捉する捕捉装置50と、を備える。
【0041】
上記において、振動体Vのうち少なくとも1つは容器25に対して独立して振動するように構成されていてよい。
【0042】
原料層15を構成している原料17は、一般的な流動層を形成する流動媒体(例えば、砂)と比較して粒径が小さいため流動化ガス31の吹き抜けが生じ易く、吹き抜けが生じると原料層15が良好に流動化しない。そこで、上記のように原料層15内に振動体Vを設けることによって、原料層15に吹き抜けが生じることが抑制され、これにより原料層15の良好な流動状態を維持することができる。これによって、電極と原料17との接触が促進され、静電分離装置1の処理能力の向上を図ることができる。
【0043】
とりわけ、容器25を固定して振動体Vのみを振動体加振装置33で振動させる場合には、容器25を振動させる場合と比較して、振動対象の軽量化及び小型化により、振動体加振装置33の小型化及び低コスト化を図ることができる。従って、静電分離装置1の処理能力を高めるために、容器25の規模を拡大することが容易となる。
【0044】
また、上記実施形態に係る静電分離装置1は、下部電極28よりも上方の原料層15内に配置された少なくとも1つの中間電極34を備えている。
【0045】
上記の静電分離装置1において、上部電極22と中間電極34との電位差が、上部電極22と下部電極28との電位差以下である。例えば、中間電極34と下部電極28とは等電位であってよい。或いは、複数の中間電極34を備える場合には、中間電極34と下部電極28との距離が大きいほど上部電極22と中間電極34との電位差が小さいように、上部電極22と各中間電極34との間に電圧が印加されてもよい。
【0046】
上記構成の静電分離装置1によれば、流動する原料層15内に中間電極34が配置されており、原料層15中の導電性粒子16は下部電極28のみならず中間電極34と接触することによっても帯電する。よって、中間電極34が設けられていない場合と比較して、導電性粒子16の帯電機会が増加し、導電性粒子16の帯電が促進される。
【0047】
更に、上記構成の静電分離装置1では、中間電極34は下部電極28の上方に配置されるので、原料層15内において下部電極28から上方へ離れたところにおいても導電性粒子16を帯電させることができる。これにより、原料層15に厚みを持たせて容器25内に滞留する原料17の量を増やすことが可能となり、静電分離装置1の処理能力を高めることができる。更に、中間電極34との接触で帯電した導電性粒子16は、下部電極28との接触で帯電した導電性粒子16よりも、帯電してから原料層15の表層部へ移動するまでの時間(上昇距離)が短い。これにより、導電性粒子16の分離効率が上昇し、処理時間の短縮を図ることができる。
【0048】
上記実施形態に示した通り、中間電極34は振動可能に構成されており、中間電極34が振動体Vとしての機能を併せ備えていてよい。
【0049】
また、上記実施形態に示した通り、下部電極28は振動可能に構成されており、下部電極28が振動体Vとしての機能を併せ備えていてよい。
【0050】
このように、中間電極34や下部電極28が振動することにより、原料層15中の導電性粒子16と中間電極34及び下部電極28との接触機会が増加し、導電性粒子16の更なる帯電促進効果が期待できる。
【0051】
また、上記実施形態に示した通り、上記の静電分離装置1において、中間電極34は、上下方向に並ぶ第1中間電極34a及び第2中間電極34bを含み、第1中間電極34aの目開きは第2中間電極34bの目開きよりも大きくてもよい。
【0052】
中間電極34は、導電性粒子16の帯電を促進する一方で、導電性粒子16の上昇移動を阻害してしまう。そこで、上に配置される第1中間電極34aの目開きを下に配置される第2中間電極34bの目開きよりも大きくすることによって、導電性粒子16が原料層15内を上へ移動するほど移動の阻害の程度が軽減されるようにしている。これにより、原料層15の良好な流動化を維持する効果が期待される。
【0053】
また、上記実施形態に係る静電分離装置1において、捕捉装置50は、原料層15の上方且つ上部電極22の下方を捕捉領域10とし、下向きの搬送面52が捕捉領域10を通過するように回転する、不導体からなるコンベヤベルト51を備える。
【0054】
上記構成の静電分離装置1では、静電気力によって原料層15から導電性粒子16を選択的に離脱させてコンベヤベルト51の搬送面52に付着させる。よって、コンベヤベルト51の搬送面52に付着する絶縁性粒子18の量が抑えられる。その結果、導電性粒子回収容器41に回収された主に導電性粒子16からなる粉粒体への絶縁性粒子18の混入が抑えられる。
【0055】
また、上記実施形態に係る静電分離装置1において、捕捉装置50は、コンベヤベルト51又は導電性粒子16に分子間力で付着している絶縁性粒子18をコンベヤベルト51から離脱させる絶縁性粒子脱離促進装置53を更に有する。
【0056】
導電性粒子16と絶縁性粒子18とが分子間力によって引き付けられて、絶縁性粒子18が導電性粒子16に同伴して原料層15から飛び出して、絶縁性粒子18がコンベヤベルト51(又は導電性粒子16)に付着することが想定され得る。このようにコンベヤベルト51に付着した絶縁性粒子18は、絶縁性粒子脱離促進装置53の作用によりコンベヤベルト51から離脱して、原料層15へ戻るか、又は、絶縁性粒子回収容器40へ回収される。このようにして、導電性粒子回収容器41に回収される導電性粒子16に混入する絶縁性粒子18を低減させることができる。その結果、導電性粒子回収容器41に回収される導電性粒子16の純度を高めることができる。
【0057】
また、上記実施形態に係る静電分離装置1において、捕捉装置50は、コンベヤベルト51に静電気力で付着している導電性粒子16を除電することにより、コンベヤベルト51から導電性粒子16を分離させる粒子分離部材43を更に有する。
【0058】
これにより、コンベヤベルト51に付着した導電性粒子16を、コンベヤベルト51から容易に離れさせることができるとともに、導電性粒子16の帯電を除去することにより、回収後の除電処理が不要となる。
【0059】
また、上記実施形態に係る静電分離装置1では、コンベヤベルト51の回転による捕捉領域10における搬送面52の移動方向D1と、容器25内の原料17の進行方向D2とが平面視において直交している。
【0060】
同様に、本実施形態に係る静電分離方法では、コンベヤベルト51の回転による捕捉領域10における搬送面52の移動方向D1と原料層15内での原料17の進行方向D2とが平面視において直交している。
【0061】
このように捕捉領域10における搬送面52の移動方向D1と原料17の進行方向D2とが直交していることで、これらの方向が平行である場合と比較してより効率的に搬送面52に導電性粒子16を付着させることができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態(及び変形例)を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0063】
例えば、上記実施形態では、下部電極28をプラス電極とし上部電極22をマイナス電極としているが、導電性粒子16の性質に応じて、下部電極28をマイナス電極とし上部電極22をプラス電極としてもよい。
【0064】
例えば、上記実施形態では、捕捉装置50として静電気力を利用したコンベヤ式捕捉装置が採用されているが、捕捉装置50の態様はこれに限定されない。例えば、捕捉装置50は、原料層15の表層から飛び出した導電性粒子16を気流搬送して回収するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :静電分離装置
10 :捕捉領域
15 :原料層
16 :導電性粒子
17 :原料
18 :絶縁性粒子
20 :電源装置
22 :上部電極
25 :容器
26 :ガス分散部材
28 :下部電極
29 :流動化ガス供給装置
31 :流動化ガス
32 :容器振動装置
33 :振動体加振装置
34 :中間電極
34a :第1中間電極
34b :第2中間電極
43 :粒子分離部材
50 :捕捉装置
51 :コンベヤベルト
52 :搬送面
53 :絶縁性粒子脱離促進装置
V :振動体