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特許7425898電気化学的用途のために清浄化されたガス拡散層を提供する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電気化学的用途のために清浄化されたガス拡散層を提供する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20240124BHJP
   B65G 47/52 20060101ALI20240124BHJP
   B65H 5/22 20060101ALI20240124BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20240124BHJP
   C25B 9/00 20210101ALN20240124BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALN20240124BHJP
【FI】
H01M4/88 Z
B65G47/52 A
B65H5/22 C
B65H29/24 C
C25B9/00 A
H01M8/1004
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022576544
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021065511
(87)【国際公開番号】W WO2021250121
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】102020115623.5
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516186234
【氏名又は名称】グリナリティ・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Industriegebiet Sud E11, 63755 Alzenau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンゲル,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】レーラタナファニト,サラユト
(72)【発明者】
【氏名】ズッフスランド,イェンス-ペーター
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070433(JP,A)
【文献】特開2019-200841(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110691(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329591(US,A1)
【文献】特開2020-037486(JP,A)
【文献】特開2018-040099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/2495
C25B 1/00-15/08
B65H 5/22
B65H 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的用途のために清浄化されたガス拡散層(1)を提供する方法であって、
ガス拡散層(1)の第1面(2)が第1のバキュームコンベアベルト(10)上に配置されるように、前記ガス拡散層(1)を与える工程(100)と、
前記ガス拡散層(1)の露出した第2面(3)を清浄化する工程(200)であって、前記第2面は、前記ガス拡散層(1)の前記第1面(2)の反対側に位置する、ところの工程と、
部分的に清浄化された前記ガス拡散層(1)を、前記第1のバキュームコンベアベルト(10)の反対側に部分的に位置する第2のバキュームコンベアベルト(13)に移送する工程(300)であって、前記第1のバキュームコンベアベルト(10)および前記第2のバキュームコンベアベルト(13)は、前記ガス拡散層(1)の前記第1面(2)が露出するように、前記ガス拡散層(1)が、前記第1のバキュームコンベアベルト(10)から前記第2のバキュームコンベアベルト(13)へ移載される移載領域(B)を有する、ところの工程と、
前記ガス拡散層(1)の前記第1面(2)を清浄化する(400)工程と
を備える方法。
【請求項2】
原料ガス拡散層が、ガス拡散層(1)を形成するために単数化されるロールストック(30)の形態で提供される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
清浄化(200、400)のために、空気流が、清浄化されるべき前記ガス拡散層(1)の面(2、3)に導かれる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス拡散層(1)の前記面(2、3)に導かれる前記空気流は、吸引によっても抽出される、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
吸引による汚染物質の抽出および/または粘着面による汚染物質の除去および/または静電引力による汚染物質の除去、をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記移載領域(B)の長さ(D)は、前記ガス拡散層(1)の長さ(E)以上である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のバキュームコンベアベルト(10)の真空度、および第2のバキュームコンベアベルト(13)の真空度が、-100mbarから-900mbarの範囲に設定可能である、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のバキュームコンベアベルト(10)の空度は、前記移載領域(B)において部分的に独立して制御可能であり、前記移載領域(B)において設定される負圧が、前記移載領域(B)における前記第2のバキュームコンベアベルト(13)の前記負圧よりも小さい、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び/又は第2のバキュームコンベアベルト(10、13)のベルト速度は、0.1m/分から200m/分の範囲にある、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のバキュームコンベアベルト(10)と前記第2のバキュームコンベアベルト(13)との間の間隔(A)が設定可能であり、かつ、前記ガス拡散層(1)の平均厚さ(F)以上となるように設定される、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
カメラシステム(20)を用いて、清浄化された前記ガス拡散層(1)を分析する工程、をさらに備える請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
清浄化された前記ガス拡散層(1)が貯蔵装置(16)に移送される、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
清浄化された前記ガス拡散層(1)は、前記第2のバキュームコンベアベルト(30)からコンベヤベルト(17)へ移送され、前記コンベヤベルト(17)から貯蔵装置(16)へ移送される、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的用途のために、両面から清浄化されたガス拡散層を提供する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学的用途、例えば燃料電池、水電解セル、電気化学コンプレッサーまたは電気化学センサー用途の膜電極アセンブリ(MEA)は、陽極、陰極およびプロトン伝導膜からなる触媒被覆膜(CCM)のみならず、ガス拡散層(GDL)からなり、その課題は、第一にCCMと双極板間の良好な電気接触を確保し、第二に陽極への良好な燃料輸送および陰極への酸素輸送を良好に確保することである。さらに、ガス拡散層は、MEAの水分バランスに影響を与える。ガス拡散層は、一般に、マイクロポーラス層(MPL)とマクロポーラス基材とから構成され、少なくともマクロポーラス基材は繊維状材料から構成される。
【0003】
GDLを所望のフォーマットに切断するとき、繊維の離脱が起こり得る。そのような繊維は、CCMの貫通につながり、ひいては、化学的短絡(陽極と陰極との間のガス移動)及び電気的短絡につながる可能性がある。化学的短絡や電気的短絡は局所的な発熱につながり、その結果、CCMにダメージを与え、寿命が短くなったり、完全に故障してしまうこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電気化学的用途のために、両面から清浄化されたガス拡散層を提供する方法を与えることであり、この方法は、簡単かつ信頼性が高く、ガス拡散層から、特に破断繊維を伴う汚染を完全に除去するものである。
【0005】
上記目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。従属項は、本発明の実施形態および有利な改良に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明は、電気化学的用途のための清浄化されたガス拡散層を提供するための方法によって達成され、この方法は、まず、ガス拡散層を提供することからなる。ガス拡散層(以下、GDLと称する)は、特に、マイクロポーラス層とマクロポーラス基材とからなる要素を意味すると理解され、GDLの平均総厚は好ましくは100μmから300μmの範囲にあり、基材は好ましくは不織タイプまたは紙タイプであり、少なくとも一つの繊維状材料からなる。GDLは、特に燃料電池、水の電気分解セル、電気化学コンプレッサーおよび電気化学センサー用途に使用される。
【0007】
本発明による方法では、ガス拡散層は、ガス拡散層の第1面が第1のバキュームコンベアベルト上に配置されるように提供される。GDLは、例えば、貯蔵装置から手動またはロボットを用いて、シート形態で提供されてもよい。バキュームコンベアベルトは、実質的に限定されず、例えば金属材料、エラストマー材料またはポリマー材料から形成されてもよく、特に、それを通じて真空または所定の負圧が、第1のバキュームコンベアベルト上に配置されたGDLに適用される穴を有する。穴の直径は、この場合、好ましくは4mmより小さく、より好ましくは2mmより小さく、さらに好ましくは1mmより小さく、単位面積当たりの穴の数は、特に均質な分布を示し、または内側から外側へ向かって減少する。
【0008】
第1のバキュームコンベアベルト上に第1面を有するように配置されるGDLは、対向して位置する露出した第2面を有し、これはさらなる方法ステップにおいて清浄化される。ここで、GDLは、静止した態様で第1のバキュームコンベアベルト上に横たわることができるが、好ましくは、清浄化が連続プロセスで行われ得るように、第1のバキュームコンベアベルトに沿って前進して搬送される。
【0009】
特に、GDLは、第1のバキュームコンベアベルト上で移送領域に搬送され、この移送領域では、GDLの露出した第2面が清浄化され、特に、切れた繊維又は繊維残渣から解放された状態でGDLが到達する。搬送領域は、第1のバキュームコンベアベルトと、第1のバキュームコンベアベルトの反対側に部分的に位置する第2のバキュームコンベアベルトとが、第1のバキュームコンベアベルトの搬送方向において重なり合う領域を有する領域である。このため、GDLは、第1のバキュームコンベアベルトから第2のバキュームコンベアベルトに直接、鉛直方向に搬送される。言い換えれば、GDLは、移送領域において、第1のバキュームコンベアベルトと第2のバキュームコンベアベルトとの間に案内される。移送領域では、部分的に清浄化されたGDL、すなわち第2面が清浄化されたGDLが、第1バキュームコンベアベルトから、当該第1バキュームコンベアベルトの上方または下方に位置する第2バキュームコンベアベルトに移送され、当該移送は、具体的には、ガス拡散層の第1面が露出し、GDLの清浄化後の第2面が第2バキュームコンベアベルトに接触するように行なわれる。これまで、GDLの第1面は第1バキュームコンベアベルト上に配置されていたが、GDLが第2バキュームコンベアベルトに移送されたため、上記第1面が露出し、その後、例えば第2面と同様に清浄化される。この目的のために、GDLは第2のバキュームコンベアベルト上で前進して搬送されることができる。
【0010】
本発明による方法は、GDLを回転させる必要なしに、連続的かつ高速での方法実施において、GDLを両側から清浄化することを可能にし、したがって、特に効率的かつ安価である。同時に、この方法は、GDLの安全かつ確実な取り扱いを可能にし、それによって、特に良好な品質、すなわち、確実に清浄化され、損傷を有しないGDLが得られる。特に、本発明による方法は、GDLを一方の側から他方の側に回したり、グリッパによって裏返したりすることなく、GDLを移送することができ、したがって、特に優しい方法である。
【0011】
有利な1つの改良点において、清浄化用のGDLは、清浄化操作の前に、例えば切断、打ち抜き等によってGDLを形成するために単数化されたロールストックの形態の原料ガス拡散層として提供される。単数化されたGDLは、その後、第1のバキュームコンベアベルトに供給される。単数化操作のために、ロールストックGDLは、好ましくは、ロールから部分的に繰り出され、その後、GDLを形成するために単数化される。特に、清浄化は、非接触清浄化操作として行われ、好ましくは、清浄化のために、空気流が、清浄化されるべきGDLのその側に導かれ、清浄化のための表面から静電的に付着し得る汚染物質をより有効に除去するために、空気流は特にイオン化されている。空気流中に放出された汚染物質は、さらに好ましくは、吸引によって抽出される。空気流による清浄化の場合、遊離粒子はこのように表面から積極的に剥離され、粒子は特に吸引抽出装置によって取り込まれ、運ばれる。特に気流による非接触清浄化は、GDL表面を特に優しく清浄化することができ、吸引除去装置により粒子の再付着を防ぐことができる。これにより、GDLを高効率で清浄化することができる。
【0012】
本方法の更なる有利な改良は、吸引による汚染物の抽出及び/又は接着面による汚染物の除去及び/又は静電気的引力による汚染物の除去を提供する。前者のケースは接触清浄化と呼ばれ、一方、後者のケースはさらなる非接触清浄化操作を構成する。
【0013】
GDLを第1のバキュームコンベアベルトから第2のバキュームコンベアベルトに安全かつ特に確実に移送できるようにするためには、第1のバキュームコンベアベルトと第2のバキュームコンベアベルトが互いに対向して位置し、したがって垂直方向で見て重なる移送領域の長さ、換言すれば重複領域の長さが、機械長手方向、すなわち第1のバキュームコンベアベルトの搬送方向におけるガス拡散層の長さと同等以上であることが有利である。この場合、搬送領域の長さは、搬送領域の始点から搬送領域の終点まで、第1のバキュームコンベアベルトの移動方向において測定される。
【0014】
特に、第1のバキュームコンベアベルト上及び第2のバキュームコンベアベルト上におけるGDLの確実かつ安全な搬送を向上させるために、バキュームコンベアベルトの真空の強度(印加する負圧の大きさ)は、サイズ、単位面積当たりの重量、多孔度及び表面粗さ、並びに清浄化用GDLの搬送方向及び機械直角方向の個々のGDL間の間隔又は中間スペースに関して、GDLがバキュームコンベアベルトから落ちないよう可変的に設定することが可能である。ここで、第1のバキュームコンベアベルトの真空度(又は負圧)及び第2のバキュームコンベアベルトの真空度は、好ましくは-100mbarから-900mbarの範囲、より好ましくは-300mbarから-600mbarの範囲に設定される。
【0015】
さらに、いわゆる気密漏れを回避して良好な真空品質を実現するために、真空の幅をGDLの幅に設定してもよい。この目的のために、第1のバキュームコンベアベルトの外側領域および第2のバキュームコンベアベルトの外側領域において、真空を解除することもできる。これによっても、特に第2バキュームコンベアベルトの領域において、GDLの搬送の信頼性が向上する。
【0016】
第1のバキュームコンベアベルトの真空度と第2のバキュームコンベアベルトの真空度、すなわち適用されるべきそれぞれの負圧の大きさは、互いに独立して設定可能であることがさらに有利である。
【0017】
第1のバキュームコンベアベルトの真空が、移送領域において部分的に独立して制御可能であり、移送領域において第1のバキュームコンベアベルトに設定される負圧が、移送領域において第2のバキュームコンベアベルトの負圧よりも小さいことは、さらに有利である。これにより、GDLを第1のバキュームコンベアベルトから第2のバキュームコンベアベルトに特に優しく、GDLが曲げられることなく、さらには損傷することなく移送することができる。
【0018】
さらに、第1のバキュームコンベアベルトの真空度は、第2のバキュームコンベアベルトの真空度に関連して、移送領域において低減されてもよい。この有利な微調整により、GDLを第1のバキュームコンベアベルトから第2のバキュームコンベアベルトに特に確実に移送することができ、移送中のGDLの損傷を防止することができる。
【0019】
同時に高いスループットでGDLの特に良好な清浄化を可能にするために、第1及び/又は第2のバキュームコンベアベルトのベルト速度は、有利には0.1m/分から200m/分の範囲にあり、より好ましくは0.1m/分から50m/分の範囲にあり、さらに好ましくは0.5m/分から20m/分の範囲にある。ベルト速度を上記の範囲に設定することにより、確実な清浄化と効率的な、すなわち高速なプロセス実行の最適な組合せを達成することができる。
【0020】
さらなる有利な改良では、第1のバキュームコンベアベルトのために設定されたベルト速度は、第2のバキュームコンベアベルトのベルト速度より低い。これにより、第2のバキュームコンベアベルトのベルト速度が第1のバキュームコンベアベルトのベルト速度よりも幾分遅い場合に生じ得るような、搬送領域におけるGDLの変位または滑り、あるいは損傷を防止することができる。
【0021】
第1のバキュームコンベアベルトと第2のバキュームコンベアベルトとの間の間隔は、有利には設定可能であり、GDLの平均厚さ以上となるように設定される。したがって、後の使用時に機能性に悪影響を及ぼす可能性のあるGDLの少なくとも圧縮が、第1に防止され、第1バキュームコンベアベルトから第2バキュームコンベアベルトへの確実な移送が、第2に達成される。第1のバキュームコンベアベルトと第2のバキュームコンベアベルトとの間の間隔を正確に設定できるようにするためには、第1のバキュームコンベアベルトと第2のバキュームコンベアベルトとの間の平面平行度が非常に良いことが有利である。GDLの平均厚さが通常100μmから300μmの間である場合、第1のバキュームコンベアベルトと第2のバキュームコンベアベルトとの間の平面平行度からの偏差が10μm未満であるような第1および第2のバキュームコンベアベルトの配置は、方法中にGDLが損傷せず、安全かつ信頼できる輸送を可能にするために特に有利である。
【0022】
本方法は、さらに有利には、カメラシステムを用いて、清浄化されたGDLを分析するステップを提供してもよい。ここで、繊維、傷、亀裂、破断などの欠陥の画像は、カメラシステムに格納され、カメラシステムによって認識されることができる。GDLの品質に応じて、いわゆる良品は、さらなる処理のために分離され、保存され得る。いわゆる不良部品は、選別して分離することができる。
【0023】
清浄化されたガス拡散層は、好ましくは、貯蔵装置に移される。
【0024】
特に、良質のGDL(良品)は、第2のバキュームコンベアベルトによって第1の貯蔵装置に移送され、不合格品(不良品)は、第2の貯蔵装置に移送される。
【0025】
清浄化されたGDLが、第2のバキュームコンベアベルトからさらなるコンベヤベルトに移送され、さらなるコンベヤベルトから貯蔵装置に、任意で、追加的にグリッパ装置を用いて移送されることが、さらに有利である。これにより、清浄化されたGDLを、第1及び第2のバキュームコンベアベルトにおける清浄化工程に影響を与えることなく、特に効果的かつ迅速に保管することができる。
【0026】
本発明の更なる詳細、利点及び特徴は、図面に基づく例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1の実施形態による、電気化学的用途のための清浄化されたガス拡散層を提供するための方法を示す。
図2図2は、第2の実施形態による、電気化学的用途のための清浄化されたガス拡散層を提供するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図は、本発明に必須の特徴のみを示している。他の全ての特徴は、分かりやすくするために省略されている。さらに、同一の参照符号は同一の部品を示すよう使用されている。
【0029】
詳細には、図1は、電気化学的用途のための清浄化されたガス拡散層を提供するための方法のステップを示す。
【0030】
まず、方法ステップ(100)において、GDL1が提供される。GDLは、第1面2と、第1面2の反対側に位置する第2面3とを有する。GDL1は、GDL1の第1面2が第1のバキュームコンベアベルト10上に配置され、そして、第1のバキュームコンベアベルト10の表面11と接触するように提供される。これに対し、GDL1の第1面2の反対側に位置する第2面3は、露出している。
【0031】
GDL1は、矢印P1で示すように、負圧によってその第1面2が第1のバキュームコンベアベルト10の表面11に吸引されることによって、第1のバキュームコンベアベルト10からの落下が防止され、第1のバキュームコンベアベルト10上でのGDL1の安全な搬送もまた確保される。GDL1は、機械長手方向L、すなわち第1のバキュームコンベアベルト10の搬送方向に、第1のバキュームコンベアベルト10の表面11上で第1の清浄装置12に搬送され、そこで、例えばイオン化を伴うまたは伴わない空気流による非接触清浄化によるGDL1の第2面3の清浄化(200)、および続いて任意で、吸引による汚染空気の抽出が実施される。
【0032】
GDL1は、第1のバキュームコンベアベルト10の表面11上を前進して移載領域Bに移送され、移載領域Bにおいて、部分的に清浄化されたGDL1は、第1のバキュームコンベアベルト10の反対側に部分的に位置する第2のバキュームコンベアベルト13に移送される(300)。移載領域Bは、第1のバキュームコンベアベルト10および第2のバキュームコンベアベルト13の機械長手方向Lに重なる領域に対応する。ここで、GDL1は、GDL1の第1面2が今や露出し、GDL1の既に清浄化された第2面3が第2のバキュームコンベアベルト13の表面14に接触し、矢印P2で示されるように負圧によって表面14に吸引されるように移送される。
【0033】
次に、GDL1は、第2のバキュームコンベアベルト13上を機械長手方向Lに前進して、第1の清浄化装置12と同様に構成され得る第2の清浄化装置15に搬送される。ここでは、GDL1の露出した第1面2の清浄化(400)が実行される。GDL1は、堆積領域Cへ向かって搬送され、この堆積領域Cでは、GDL1が貯蔵装置16に搬送され、方法ステップ(500)において貯蔵される。これは、特に、堆積領域Cにおいて、第2のバキュームコンベアベルト13における負圧が、GDL1がそれ自身で貯蔵装置16の中に進入する程度に低減される場合、非常に容易となる。
【0034】
第1のバキュームコンベアベルト10の負圧と第2のバキュームコンベアベルト13の負圧は、本方法の実施のために、好ましくは、互いに独立して設定可能であり、またバキュームコンベアベルト10、13内で部分的に可変に設定可能である。特に、第1および第2のバキュームコンベアベルト10、13の真空度(つまり負圧)は、-100mbarから-900mbarの範囲、好ましくは-300mbarから-600mbarの範囲に設定され、第1のバキュームコンベアベルト10の真空度は、移載領域Bにおいて一部独立して制御でき、移載領域Bにおいて設定された負圧は、移載領域Bにおいて第2のバキュームコンベアベルト13の負圧よりも低くなっている。このようにすれば、GDL1に損傷を与えることなく、特に容易かつ安全に、GDL1を第1のバキュームコンベアベルト10から第2のバキュームコンベアベルト13に移載することができる。
【0035】
図1からも分かるように、第1のバキュームコンベアベルト10と第2のバキュームコンベアベルト13とが互いに対向して位置する移載領域Bの長さD(重複領域)は、いずれも第1のバキュームコンベアベルト10の搬送方向(機械長手方向L)で見て、GDL1の長さEよりも大きく設定されている。これにより、GDL1を、第1のバキュームコンベアベルト10から第2のバキュームコンベアベルト13に非常に安全に、かつ破壊されることなく搬送することができる。
【0036】
第1及び/又は第2のバキュームコンベアベルト10、13のベルト速度は、特に、0.1m/分から200m/分の範囲にあり、より好ましくは0.1m/分から50m/分の範囲にあり、さらに好ましくは0.5m/分から20m/分の範囲にあり、GDL1がバックアップされることなく円滑に処理できるように、第1のバキュームコンベアベルト10が第2のバキュームコンベアベルト13より小さいベルト速度であることが好ましい。
【0037】
さらに圧縮によるGDL1の損傷を防止すると同時に、真空搬送ベルト10、13上でのGDL1の効果的かつ安全な搬送と、移載領域Bでの最適な搬送を促進するために、第1の真空搬送ベルト10と第2の真空搬送ベルト13との間隔Aは、GDL1の平均厚さF以上に設定される。
【0038】
図1に示された方法は、GDL1が回転したり損傷したりすることなく、連続的かつ高速な方法実施で、GDL1を両面2、3から清浄化することができる。特に、GDL1を第1のバキュームコンベアベルト10から第2のバキュームコンベアベルト13に移載する間に、GDL1の回転またはグリッパを用いたGDL1の移動が行われないので、ここに示す方法の実施は特に優しい。したがって、この方法は、特に効率的であり、安価であり、リソースが少ない。同時に、この方法は、GDL1の安全かつ確実な取り扱いを可能にし、それによって、特に良好な品質の、すなわち、確実に清浄化され、損傷を有しないGDL1が、得られる。
【0039】
詳細には、図2は、第2の実施形態による、電気化学的用途のための清浄化されたガス拡散層を提供するための方法ステップを例示する。図1によって示される方法とは対照的に、図2は、GDL1が提供されるために、さらなる貯蔵装置19から取り出されることを追加的に示している。第1バキュームコンベアベルト10上での第1清浄化装置12によるGDL1の第2面2の搬送および清浄化(200)、移載領域Bでの第2バキュームコンベアベルト13への搬送(300)、および第2バキュームコンベアベルト13での第2清浄化装置15によるGDL1の第1面3の清浄化(400)という方法ステップは、図1の実施形態と対応する。
【0040】
しかしながら、さらなる相違点として、追加のコンベヤベルト17が提供される。コンベヤベルト17は、必須ではないが、バキュームコンベアベルトとして構成されてもよい。それは単に、コンベヤベルト17の表面18上にある完全に清浄化されたGDL1を第2のバキュームコンベアベルト13から貯蔵装置16に搬送するために役立つ。この方法の実施は、カメラシステム20が設けられている場合に特に有利であり、それによって、GDL1内のあらゆる欠陥が識別され、例えば、良好な部品が第1の貯蔵装置に貯蔵され、不良部品が第2の貯蔵装置に貯蔵されるように、貯蔵(500)が異なる貯蔵装置16で行われることも可能となる。
【0041】
こうして、図1に示した実施形態と同様の利点が得られる。
【0042】
上記の本発明の明細書の説明に加えて、その補足的な開示のために、図1および図2による本発明の説明を明示的に参照するものである。
【符号の説明】
【0043】
1 GDL
2 GDLの第1面
3 GDLの第2面
10 第1のバキュームコンベアベルト
11 第1のバキュームコンベアベルトの表面
12 第1の清浄化装置
13 第2のバキュームコンベヤベルト
14 第2のバキュームコンベアベルトの表面
15 第2の清浄化装置
16 貯蔵装置
17 コンベアベルト
18 コンベアベルトの表面
19 貯蔵装置
20 カメラシステム
A 第1及び第2のバキュームコンベアベルトの間隔
B 移載領域
C 堆積領域
D 搬送領域の長さ
E GDLの長さ
F GDLの平均厚さ
L 機械長手方向
図1
図2