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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】送液システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20240124BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61J1/20 314Z
B01J4/00 103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023081118
(22)【出願日】2023-05-16
【審査請求日】2023-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳下 敦
(72)【発明者】
【氏名】川北 賢
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-244340(JP,A)
【文献】特許第7223195(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
B01J 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する第1容器と、
前記第1容器よりも下流側に配置され、前記第1容器から送液される第2容器と、
前記第1容器に希釈液を供給する希釈液供給装置と、
を備えた送液システムであって、
前記第1容器は、可撓性を有するシングルユースバッグであり、
前記第1容器を外部から加圧し、又は前記第2容器の内部を負圧にすることで前記第1容器から前記第2容器へ送液し、
前記希釈液供給装置から前記第1容器へ前記希釈液を供給し、
前記第2容器の内部を負圧にすることで前記第1容器内に残留した液体を前記希釈液とともに前記第2容器へ送液する
ことを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送液システムにおいて、
前記第2容器の内部を負圧にする吸引装置を備え、
前記第1容器は、可撓性を有する液体を貯留するバッグ本体と、前記バッグ本体から送液するためのチューブとを備えた前記シングルユースバッグであり、
前記吸引装置で前記第2容器を負圧にすることで、前記第1容器から前記第2容器へ送液する
ことを特徴とする送液システム。
【請求項3】
請求項1に記載の送液システムにおいて、
前記第1容器は、可撓性を有する液体を貯留するバッグ本体と、前記バッグ本体から送液するためのチューブとを備えた前記シングルユースバッグであり、
前記第1容器の前記バッグ本体を収容し、前記第1容器の前記チューブが外部に引き出された状態で内部を加圧可能な加圧容器を備え、
前記加圧容器の内部を加圧することで、前記第1容器から前記第2容器へ送液する
ことを特徴とする送液システム。
【請求項4】
請求項1に記載の送液システムにおいて、
前記第2容器は、可撓性を有する液体を貯留するバッグ本体と、前記バッグ本体から送液するためのチューブとを備えた前記シングルユースバッグであり、
前記第2容器の前記バッグ本体を収容し、前記第2容器の前記チューブが外部に引き出された状態で内部を減圧可能な減圧容器を備え、
前記減圧容器の内部を減圧することで、前記バッグ本体の内部を負圧にすることで前記第1容器から前記第2容器へ送液する
ことを特徴とする送液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液元又は送液先の少なくとも一方が可撓性を有するシングルユースバッグであり、送液元の残液を回収できる送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療薬液等の液体を貯留するための使い捨ての容器、所謂シングルユースバッグが知られている。シングルユースバッグから液体を他の容器などに送る場合は、ペリスタポンプを使用することが多い(例えば、特許文献1参照)。具体的には、シングルユースバッグと送液先の容器とを接続するチューブをペリスタポンプに取り付けて送液している。
【0003】
しかしながら、ペリスタポンプによる送液では、シングルユースバッグの内部に残液が生じてしまう。また、残液を回収すべく、シングルユースバッグ及びチューブを送液先の容器よりも高く配置し、落差を利用して回収することが可能であるが、そのような配置にしたり監視するために人手を要してしまう。さらに、送液元を送液先よりも高く配置しなければならないという制約が生じ、それらの容器等の配置について自由度が低いものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-244340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、シングルユースバッグを用いながらも残液を低減することができ、容器等の配置の自由度を高め、送液を自動化することができる送液システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を貯留する第1容器と、前記第1容器よりも下流側に配置され、前記第1容器から送液される第2容器と、前記第1容器に希釈液を供給する希釈液供給装置と、を備えた送液システムであって、前記第1容器は、可撓性を有するシングルユースバッグであり、前記第1容器を外部から加圧し、又は前記第2容器の内部を負圧にすることで前記第1容器から前記第2容器へ送液し、前記希釈液供給装置から前記第1容器へ前記希釈液を供給し、前記第2容器の内部を負圧にすることで前記第1容器内に残留した液体を前記希釈液とともに前記第2容器へ送液することを特徴とする送液システムにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シングルユースバッグを用いながらも残液を低減することができ、容器等の配置の自由度を高め、送液を自動化することができる送液システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る送液システムの概略図である。
図2】実施形態1に係る送液システムの送液工程前の状態を示す概略図である。
図3】実施形態1に係る送液システムの送液工程における概略図である。
図4】実施形態1に係る送液システムの送液工程後の状態を示す概略図である。
図5】実施形態1に係る送液システムの残液処理工程における概略図である。
図6】実施形態1に係る送液システムの残液処理工程後の状態を示す概略図である。
図7】実施形態2に係る送液システムの概略図である。
図8】実施形態3に係る送液システムの概略図である。
図9】実施形態3に係る送液システムの送液工程前の状態を示す概略図である。
図10】実施形態3に係る送液システムの送液工程における概略図である。
図11】実施形態4に係る送液システムの送液工程前の状態を示す概略図である。
図12】実施形態4に係る送液システムの送液工程における概略図である。
図13】シングルユースバッグを収容する加圧容器又は減圧容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る送液システムの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は送液システムの概略構成を示す図である。送液システム1は、液体の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部である。送液システム1は、シングルユースバッグ10、調製タンク2、希釈液供給装置3、送液路4、排液路5、吸引ポンプ6、及び送液システム1の送液処理を制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの制御装置(図示せず)を備えている。
【0011】
シングルユースバッグ10は、薬液が予め貯留され、可撓性を有する容器である。具体的には可撓性を有するバッグ本体11と、バッグ本体11の内部に連通したチューブ12と、チューブ12の先端に設けられたコネクタ13と、チューブ12の途中に設けられた開閉弁14とを備えている。このようなシングルユースバッグ10は、公知の物であるので、詳細な構成や材料等に関しては説明を省略する。
【0012】
調製タンク2は、シングルユースバッグ10から送液路4を経由して圧送された薬液を貯留し、他の原料と混合するなどして薬液を調製するタンクである。調製タンク2は、上部にシングルユースバッグ10から薬液を受け入れる投入口や、底部に薬液を排出する排出口が設けられている。投入口には送液路4が接続されており、排出口には排液路5が接続されている。調整して得られた薬液は排液路5を介して下流の装置へ送られる。また、特に図示しないが、調製タンク2には、内部の気体の圧力を測定する圧力計(図示せず)が取り付けられている。さらに、調製タンク2には内部に貯留された液体の液面を測定する液面計(図示せず)が取り付けられている。
【0013】
調製タンク2には、内部の気体の圧力を負圧にすることが可能な装置群が取り付けられている。このような装置群は、調製タンク2の内部の気体を外部へ排出する吸引ポンプ6などから構成される。制御装置は、圧力計による圧力値を参照しながら、調製タンク2の内部の気体の圧力が所定圧力となるように吸引ポンプ6を制御する。なお、調製タンク2と吸引ポンプ6との間にはフィルターを配置し、調製タンク2を外部に晒さず内部を無菌に保つようにしてもよい。
【0014】
希釈液供給装置3は、薬液を希釈するための希釈液(例えば精製水)を供給する装置である。希釈液供給装置3は、具体的には、希釈液を貯留する容器、その容器から希釈液を送り出すための機構、各種配管や弁などから構成されている。希釈液を送り出す機構は、例えば気体を加圧して容器に供給するポンプや気体の圧力を調整するレギュレータなどから構成されている。もちろんこのような機構に限らず、希釈液を直接送液するポンプなどであってもよい。希釈液供給装置3により送液路4を経由して希釈液がシングルユースバッグ10へ供給される。希釈液供給装置3は、制御装置による制御により、希釈液の供給、停止、供給量の調整が可能となっている。
【0015】
送液路4は、希釈液供給装置3、シングルユースバッグ10、調製タンク2を相互に接続する流路である。具体的には、送液路4は、希釈液供給装置3と調製タンク2とを接続する主配管4aと、主配管4aの途中から分岐した分岐管4bと、分岐管4bの先端に設けられた取付部4cと、を備えている。取付部4cは、シングルユースバッグ10のコネクタ13が装着される。取付部4cにコネクタ13が装着されることで、チューブ12と分岐管4bとが連通し、内部に薬液が流通するようになっている。なお、送液システム1のうち少なくとも取付部4cはクリーンルーム内に配置され、取付部4cにコネクタ13を装着する作業はクリーンルームで行うことが好ましい。
【0016】
また、送液路4には、希釈液供給装置3と分岐管4bとの間に第1バルブV1が設けられ、分岐管4bと調製タンク2との間に第2バルブV2が設けられている。これらの第1バルブV1及び第2バルブV2は、主配管4aを開閉するものであり、制御装置により開閉制御される。
【0017】
なお、シングルユースバッグ10は、鉛直方向において、調製タンク2よりも上方に配置することが好ましい。シングルユースバッグ10や送液路4に薬液が残りにくくなるからである。もちろん、シングルユースバッグ10は、調製タンク2よりも鉛直方向の上方に配置する必要はない。
【0018】
ここで、上述した構成の送液システム1において、シングルユースバッグ10から調製タンク2に薬液を送る動作(圧送動作)について説明する。圧送動作の前に、送液路4及び調製タンク2は定置洗浄(CIP)、定置滅菌(SIP)されたとする。圧送動作は、送液工程、残液処理工程からなる。
【0019】
[送液工程]
まず、図2に示すように、シングルユースバッグ10のコネクタ13を送液路4の取付部4cに接続する。このとき開閉弁14は閉じた状態としておく。
【0020】
次に、図3に示すように、制御装置は第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開ける。また、シングルユースバッグ10の開閉弁14を開ける。これにより、シングルユースバッグ10から送液路4を介して調製タンク2へ送液可能となる。この状態で、制御装置は吸引ポンプ6を動作させ、調製タンク2の内部を負圧にする。調製タンク2の内部に設定する圧力値は、特に限定はないが、シングルユースバッグ10から薬液を吸引できる程度の圧力値とする。調製タンク2の内部を負圧にすることで、シングルユースバッグ10から薬液が調製タンク2に送られる。
【0021】
制御装置は、シングルユースバッグ10からほとんどの薬液が調製タンク2に移送されるまで、調製タンク2の内部を負圧に維持する。ここでいうほとんどの薬液とは、シングルユースバッグ10に貯留されている薬液の90%以上をいう。理想的には100%であるが若干量の薬液がシングルユースバッグ10や送液路4に残留してもよい。
【0022】
具体的には、シングルユースバッグ10からほとんどの薬液が排出されるまでに要する時間(以下、目標時間)と圧力値(負圧)を予め計測しておく。そして、制御装置にその目標時間と圧力値を記憶させておく。開閉弁14が開けられ、制御装置は図3に示したように第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開けて送液を開始してから目標時間が経過するまで、調製タンク2の内部がその圧力値に維持されるように吸引ポンプ6を制御する。
【0023】
他にも、制御装置は、調製タンク2に設けられた液面計による液面値が目標液面値に到達するまで調製タンク2の内部がその圧力値に維持されるように吸引ポンプ6を制御してもよい。この液面値に対する目標液面値とは、シングルユースバッグ10に貯留された薬液の90%が調製タンク2に貯留されたときの液面値である。
【0024】
図4に示すように、調製タンク2の内部を負圧にしたことでシングルユースバッグ10から調製タンク2に薬液のほとんどが送液され、シングルユースバッグ10や送液路に若干量の薬液が残留した状態となる。
【0025】
[残液処理工程]
図5に示すように、制御装置は、第1バルブV1を開け、第2バルブV2を閉じる。そして、希釈液供給装置3に希釈液を供給させる。これにより、送液路4やシングルユースバッグ10に希釈液が送液される。希釈液の量は特に限定はないが、シングルユースバッグ10の内面全体に希釈液が触れるのに十分な量とすることが好ましい。
【0026】
このように、送液路4やシングルユースバッグ10に希釈液が供給されることで、それらに残留した薬液が希釈液と混ざる。送液路4やシングルユースバッグ10に希釈液が供給されたことの判定は、次のように行う。例えば、希釈液供給装置3が希釈液の供給を始めてから送液路4やシングルユースバッグ10に十分な希釈液が供給されるまでに要する時間(以下、目標供給時間)を予め計測し、制御装置に目標供給時間を記憶させておく。そして、制御装置は、希釈液供給装置3に希釈液を供給させてから目標供給時間が経過するまで希釈液を供給する。
【0027】
他にも、希釈液供給装置3が希釈液の供給を始めてから送液路4やシングルユースバッグ10に十分な希釈液が供給されるまでに要する希釈液の量(以下、目標供給量)を予め計測し、制御装置に目標供給量を記憶させておく。そして、制御装置は、目標供給量に達するまで希釈液供給装置3に希釈液を供給させる。なお、希釈液の目標供給量は、本プラントで製造する最終製品に含まれる希釈液の量を超えない分量とする。
【0028】
その後、図6に示すように、残留した薬液と希釈液とが混合した混合液を調製タンク2へ送液する。混合液の送液は、吸引ポンプ6により調製タンク2の内部を負圧にすることにより行う。混合液の送液は、薬液の送液と同様に、混合液を送液する時間を定めて行ってもよいし、又は調製タンク2の液面計が所定の液面値となるまで行ってもよい。
【0029】
以上に説明した送液システム1は、送液工程において薬液のほとんどがシングルユースバッグ10から調製タンク2へ送液される。そして、残液処理工程において残留した薬液が希釈液とともに調製タンク2へ送液される。このような送液システム1によれば、シングルユースバッグ10に貯留された薬液を途中の送液路やシングルユースバッグ10内に残留させることなく調製タンク2へ送液することができる。
【0030】
また、送液システム1は負圧で調製タンク2へ薬液を回収する構成であって、調製タンク2よりも上方にシングルユースバッグ10を配置して落差で送液する構成ではない。従来では落差を利用して送液するために、シングルユースバッグ10や調製タンク2を高さ方向に積み上げるような配置としなければならないという制約が生じてしまう。しかしながら本発明の送液システム1は、落差を考慮した配置とする必要はなく、調製タンク2に対して任意の位置にシングルユースバッグ10を配置することができるので、シングルユースバッグ10の配置の自由度が向上する。
【0031】
また、シングルユースバッグ10や調製タンク2は相応の重量物であるが、本発明の送液システム1は、落差を利用した送液ではないので高さ方向に積み上げる必要はなく、重量物を高いところに配置するための器具や人手を要しないという効果がある。さらに、送液工程及び残液処理工程では制御装置により自動化されるため、監視のために人員を割く必要がない。
【0032】
以上に述べたように、本発明の送液システム1によれば、シングルユースバッグ10を用いながらも残液を低減することができ、シングルユースバッグ10や調製タンク2などの配置の自由度を高め、送液を自動化することができる。
【0033】
なお、シングルユースバッグ10は「第1容器」に相当し、調製タンク2は「第2容器」に相当し、吸引ポンプ6は「吸引装置」に相当する。
【0034】
〈実施形態2〉
図7を用いて、本発明の実施形態2に係る送液システム1について説明する。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
送液システム1は、複数のシングルユースバッグ10から調製タンク2に送液できる構成となっている。具体的には、送液路4の主配管4aから複数(ここでは2つ)の分岐管4bが分岐している。また、送液路4は、各分岐管4bからさらに分岐した分岐管4dを有している。また、分岐管4bには第3バルブV3が設けられ、分岐管4dには第4バルブV4が設けられている。第4バルブV4は、CIP及びSIPで用いる洗浄液や蒸気を流通させる際に開放されるものであり、送液工程や残液処理工程では閉じておく。
【0036】
このように送液路4には複数のシングルユースバッグ10に対応して複数の取付部4cが設けられている。これらの取付部4cにシングルユースバッグ10を取り付けることで、複数のシングルユースバッグ10から調製タンク2に送液することが可能となっている。
【0037】
送液方法としては、シングルユースバッグ10を一つずつ送液することが好ましい。例えば、送液工程では、一つのシングルユースバッグ10について開閉弁14を開け、第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開け、そのシングルユースバッグ10に対応した第3バルブV3を開け、第4バルブV4を閉じる。他のシングルユースバッグ10について開閉弁14を閉じ、そのシングルユースバッグ10に対応した第3バルブV3及び第4バルブV4も閉じる。この状態で、調製タンク2の内部を負圧にして、一つのシングルユースバッグ10から薬液を送液する。
【0038】
残液処理工程では、第1バルブV1を開け、第2バルブV2を閉じ、希釈液供給装置3に希釈液を供給させる。これにより、送液した一つのシングルユースバッグ10について希釈液が供給される。その後、第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開け、調製タンク2の内部を負圧にして、希釈液と薬液の混合液を調製タンク2に吸引させる。
【0039】
このような送液工程と残液処理工程を、他のシングルユースバッグ10についても同様に行うことで、シングルユースバッグ10の一つずつについて順に調製タンク2へ送液させる。なお、送液済みとなって空となったシングルユースバッグ10は、他のシングルユースバッグ10が送液中であっても、第3バルブV3を閉じることで取り外すことができる。第3バルブV3を閉じ、薬液が貯留された新たなシングルユースバッグ10を取付部4cに取り付ける前に、取付部4c、分岐管4dをCIP及びSIPをしてもよい。具体的には、第3バルブV3を閉じ、空になったシングルユースバッグ10が取付部4cに装着された状態で、第4バルブV4を空け、洗浄液や蒸気を第4バルブV4から分岐管4dに供給し、一定時間経過したら洗浄液や蒸気を分岐管4dから吸い出し、空になったシングルユースバッグ10を取り外すことでCIP及びSIPを完了する。このようなCIP及びSIPでは、空になったシングルユースバッグ10は、取付部4cの栓代わりとなるが、もちろん、シングルユースバッグ10を取付部4cから取り外し、取付部4cに別途に用意した栓で塞いで分岐管4dをCIP及びSIPを行ってもよい。
【0040】
本実施形態の送液システム1によれば、複数のシングルユースバッグ10を一つずつ順番に調製タンク2へ送液し、空になったら取り外し、薬液が貯留された新たなシングルユースバッグ10を取り付ける作業を繰り返すことができ、連続的に複数のシングルユースバッグ10から調製タンク2へ送液することができる。
【0041】
〈実施形態3〉
図8から図10を用いて、本発明の実施形態3に係る送液システム1について説明する。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
図8に示すように、送液システム1は、バッグ本体11を収容可能な加圧容器20を備えている。加圧容器20は、上部が開放した箱形状を有しており、開口部を開閉する蓋21を有している。特に図示しないが、加圧容器20の内部にはシングルユースバッグ10を支持する支持部材が配置されている。蓋21には、図示しないが、加圧容器20の内部に加圧のための気体を送るための開口部が設けられている。また、加圧容器20の底部にはシングルユースバッグ10のチューブ12が挿通する挿通孔22が設けられている。挿通孔22は、内面に環状の弾性部材23が設けられている。
【0043】
また、調製タンク2には、エア抜き配管8が設けられており、エア抜き配管8にはフィルター7が設けられている。調製タンク2に存在する気体は、調製タンク2に薬液が送液されることでエア抜き配管8から排出されるようになっている。またフィルター7により、調製タンク2は無菌状態が担保されている。
【0044】
図9に示すように、シングルユースバッグ10を加圧容器20の内部に収容する。具体的にはバッグ本体11を加圧容器20の内部に収容し、弾性部材23を押し広げてコネクタ13を挿通させ、チューブ12の周囲に弾性部材23を位置させる。弾性部材23の反力により、挿通孔22とチューブ12との隙間から空気が漏れないようになっている。加圧容器20からチューブ11及びコネクタ13を引き出し、コネクタ13を取付部4cに接続する。
【0045】
加圧容器20の蓋21を閉じ、加圧容器20の内部を密閉する。蓋21に設けられた開口部に加圧装置30を接続する。加圧装置30は、加圧容器20の内部に気体を供給し、又は加圧容器20の内部の気体を外部へ排出することで、加圧容器20の内部の圧力を調整する装置群である。具体的には気体(例えば空気や窒素ガス)を取り込んで所望の圧力に調整するレギュレータ、レギュレータから加圧容器20へ気体を送るための配管群、加圧容器20に連通する配管などに設けられたベントバルブなどから構成される。これらのレギュレータやベントバルブは制御装置により制御可能となっている。
【0046】
[送液工程]
図10に示すように、シングルユースバッグ10のコネクタ13が送液路4の取付部4cに接続された状態で、制御装置は第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開ける。また、シングルユースバッグ10の開閉弁14を開ける。これにより、シングルユースバッグ10から送液路4を介して調製タンク2へ送液可能となる。この状態で、制御装置は加圧装置30を動作させ、加圧容器20の内部を加圧する。加圧容器20の内部に設定する圧力値は、特に限定はないが、バッグ本体11を気体で押圧して薬液を押し出せる程度の圧力値とする。加圧容器20の内部を加圧することで、シングルユースバッグ10から薬液が調製タンク2に送られる。
【0047】
制御装置は、シングルユースバッグ10からほとんどの薬液が調製タンク2に移送されるまで、加圧容器20の内部を加圧した状態を維持する。具体的には、シングルユースバッグ10からほとんどの薬液が排出されるまでに要する時間(以下、目標時間)と圧力値(負圧)を予め計測しておく。そして、制御装置にその目標時間と圧力値を記憶させておく。開閉弁14が開けられ、制御装置は図10に示したように第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開けて送液を開始してから目標時間が経過するまで、加圧容器20の内部がその圧力値に維持されるように加圧装置30を制御する。
【0048】
他にも、制御装置は、調製タンク2に設けられた液面計による液面値が目標液面値に到達するまで加圧容器20の内部がその圧力値に維持されるように加圧装置30を制御してもよい。この液面値に対する目標液面値とは、シングルユースバッグ10に貯留された薬液の90%が調製タンク2に貯留されたときの液面値である。
【0049】
[残液処理工程]
特に図示しないが、加圧容器20の内部を加圧したことでシングルユースバッグ10から調製タンク2に薬液のほとんどが送液され、シングルユースバッグ10や送液路に若干量の薬液が残留した状態となる。このようにして残った薬液は、実施形態1と同様に残液処理工程を実施し、希釈液によって回収する。
【0050】
本実施形態の送液システム1によれば、バッグ本体11を加圧容器20に収容し、気体の加圧によって貯留された薬液を調製タンク2へ送液する。このような構成の送液システム1においても、実施形態1と同様の作用効果を奏する。なお、器具などによってシングルユースバッグ10を押圧することでも薬液を押し出して送液することは可能ではあるものの、一般にバッグ本体11は壊れやすい材料で形成されているので、器具などによる荷重が集中してバッグ本体11を破損する虞がある。しかしながら、本実施形態の送液システム1では気体によりバッグ本体11の表面全体を均等に加圧できるので、バッグ本体11の破損を回避することができる。なお、加圧容器20の内部でバッグ本体11を加圧するための気体の代わりに液体を用いてもよい。
【0051】
〈実施形態4〉
図11及び図12を用いて、本発明の実施形態4に係る送液システム1について説明する。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
図11に示すように、送液システム1は、シングルユースバッグ10の下流には、調製タンク2の代わりにシングルユースバッグ40が用いられている。シングルユースバッグ40は、シングルユースバッグ10と構成は同じであるが区別のために異なる符号を付している。すなわち、「41」はバッグ本体11、「42」はチューブ12、「43」はコネクタ13、「44」は開閉弁14と同等のものを指している。ただし、シングルユースバッグ40は内部を空の状態としておく。
【0053】
送液路4は、主配管4aの先端側に取付部4eを備えている。つまり、送液路4は、取付部4cにシングルユースバッグ10のコネクタ13が接続され、取付部4eにシングルユースバッグ40のコネクタ43が接続される。
【0054】
また、送液システム1は、バッグ本体41を収容可能な減圧容器50を備えている。減圧容器50は、上部が開放した箱形状を有しており、開口部を開閉する蓋51を有している。特に図示しないが、減圧容器50の内部にはシングルユースバッグ10を支持する支持部材が配置されている。蓋51には、図示しないが、減圧容器50の内部を負圧にするための配管が挿通する開口部が設けられている。また、蓋51にはシングルユースバッグ40のチューブ42が挿通する挿通孔52が設けられている。挿通孔52は、内面に環状の弾性部材53が設けられている。
【0055】
また、減圧容器50には、内部を負圧にするための吸引ポンプ6が接続されている。減圧容器50の内部は吸引ポンプ6が気体を排出することで、所望の負圧に設定される。
【0056】
シングルユースバッグ40は、減圧容器50の内部に収容する。具体的にはバッグ本体41を減圧容器50の内部に収容し、弾性部材53を押し広げてコネクタ43を挿通させ、チューブ42の周囲に弾性部材53を位置させる。弾性部材53の反力により、挿通孔52とチューブ42との隙間から空気が漏れないようになっている。減圧容器50の蓋51を閉じ、減圧容器50の内部を密閉する。蓋51に設けられた開口部に吸引ポンプ6を接続する。
【0057】
[送液工程]
まず、制御装置は、第2バルブV2を閉じた状態で、吸引ポンプ6を動作させて減圧容器50の内部を負圧にする。これにより、シングルユースバッグ40はバッグ本体41が外側へ引かれるため内部が負圧になる。
【0058】
次に図12に示すように、シングルユースバッグ40の内部が負圧になった状態で、シングルユースバッグ10のコネクタ13を送液路4の取付部4cに接続し、制御装置は第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開ける。また、シングルユースバッグ10の開閉弁14を開ける。シングルユースバッグ40の内部が負圧になっていることから、シングルユースバッグ10からシングルユースバッグ40へ薬液が送液される。なお、バルブの開閉のタイミングはこの例に限定されない。例えば、開閉弁14、開閉弁44が開いた状態とし、第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開けた状態とすることで、シングルユースバッグ10からシングルユースバッグ40に送液可能な状態とし、次いで、吸引ポンプ6を動作させて減圧容器50の内部を負圧としてもよい。
【0059】
制御装置は、シングルユースバッグ10からほとんどの薬液がシングルユースバッグ40に移送されるまで、減圧容器50の内部を負圧にした状態を維持する。具体的には、シングルユースバッグ10からほとんどの薬液が排出されるまでに要する時間(以下、目標時間)と圧力値(負圧)を予め計測しておく。そして、制御装置にその目標時間と圧力値を記憶させておく。開閉弁14及び開閉弁44が開けられ、制御装置は図12に示したように第1バルブV1を閉じ、第2バルブV2を開けて送液を開始してから目標時間が経過するまで、減圧容器50の内部がその圧力値に維持されるように吸引ポンプ6を制御する。
【0060】
[残液処理工程]
特に図示しないが、減圧容器50の内部を負圧にしたことでシングルユースバッグ10からシングルユースバッグ40に薬液のほとんどが送液され、シングルユースバッグ10や送液路4に若干量の薬液が残留した状態となる。このようにして残った薬液は、実施形態1と同様に残液処理工程を実施し、希釈液によって回収する。
【0061】
本実施形態の送液システム1によれば、一般的なステンレス等のタンクに代えてシングルユースバッグ40を減圧容器50に収容し、減圧容器50内を負圧にすることでシングルユースバッグ40内も負圧とすることで、シングルユースバッグ10の薬液をシングルユースバッグ40へ送液する。このような構成に送液システム1においても、実施形態1と同様の作用効果を奏する。シングルユースバッグ40に貯留された薬液は、そのまま開閉弁44を閉じ、コネクタ43を取付部4eから取り外すことで、無菌状態で他の場所へ移動することができる。本実施形態では、シングルユースバッグ10からシングルユースバッグ40へ薬液を移送するための構成であるが、このような構成に限定されない。例えば、シングルユースバッグ40の上流に、シングルユースバッグ10の代わりに調製タンクなどを配置する構成としてもよい。つまり、上流の装置において調製等がされた薬液を回収するためにシングルユースバッグ40を用いることができる。なお、シングルユースバッグ10やシングルユースバッグ40の上流に配置された調製タンクなどは「第1容器」に相当し、シングルユースバッグ40は「第2容器」に相当する。
【0062】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0063】
実施形態3では、加圧容器20に挿通孔22や弾性部材23を設けてシングルユースバッグ10のチューブ12を外部へ引き出していたが、このような構成に限定されない。図13(a)に示すように、加圧容器20の内側にてコネクタ13を取り付けることができるように取付部4cを加圧容器20に取り付ける。例えば、加圧容器20の底面には貫通孔が設けられており、その貫通孔を塞ぐようにして取付部4cが取り付けてある。もちろん、取付部4cの取付位置は底面に限らず加圧容器20の任意の面でよい。図13(b)に示すように、シングルユースバッグ10の全体を加圧容器20に収容する。コネクタ13を取付部4cに取り付け、開閉弁14を開け、蓋21を閉じて密閉する。そして、実施形態3で述べたように、加圧容器20の内部を加圧することで、シングルユースバッグ10の薬液が送液管4に送液される。加圧容器20に収容する際に開閉弁14を開けるので、分岐管4bの途中に開閉弁を設けてもよい。分岐管4bに開閉弁を設けることで、意図しないタイミングで送液路4に送液されることを回避できる。
【0064】
さらには、加圧容器20は、開閉弁14を開けた状態で蓋21を閉じて密閉する構成に限定されない。例えば、開閉弁14を閉じた状態で蓋21を閉じて密閉する構成としてもよい。具体的には加圧容器20内の開閉弁14を加圧容器20外からの操作で開閉可能な機構を加圧容器20に設ける。当該機構を操作することで、密閉状態の加圧容器20に収容したシングルユースバッグ10の開閉弁14を開閉することができる。減圧容器50についても他の実施形態で説明した加圧容器20と同様の構成としてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、薬液を送液する送液システムを一例として本発明を説明したが、本発明は、薬液以外の液体、例えば、化粧品、飲料、インク等を送液するための装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…送液システム、2…調製タンク(第2容器)、3…希釈液供給装置、4…送液路、6…吸引ポンプ(吸引装置)、10…シングルユースバッグ(第1容器)、11…バッグ本体、12…チューブ、20…加圧容器、30…加圧装置、40…シングルユースバッグ(第2容器)、41…バッグ本体、42…チューブ、50…減圧容器
【要約】      (修正有)
【課題】シングルユースバッグを用いながらも残液を低減することができ、容器等の配置の自由度を高め、送液を自動化することができる送液システムを提供する。
【解決手段】液体を貯留するシングルユースバッグ10と、調製タンクと、希釈液供給装置3と、を備え、調製タンクの内部を負圧にすることでシングルユースバッグ10から調製タンクへ送液し、希釈液供給装置3からシングルユースバッグ10へ希釈液を供給し、シングルユースバッグ10に残留した液体を希釈液とともに調製タンクへ送液する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13