(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】旋回キャスタ構造
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B60B33/00 502B
B60B33/00 502D
(21)【出願番号】P 2023119514
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2023-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2023107611
(32)【優先日】2023-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391009707
【氏名又は名称】株式会社ナンシン
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】横堀 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一朗
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-023939(JP,U)
【文献】特開平11-245607(JP,A)
【文献】特開2014-111443(JP,A)
【文献】特開2008-168835(JP,A)
【文献】特開昭58-126203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端にフランジを有する取付軸と、該取付軸が隙間無く貫挿されフランジが掛止められる取付穴を有する取付プレートと、
該取付プレートの裏面に形成された下向き水平面と、前記取付プレートの下方で前記取付軸を貫挿する支持ヨーク側の孔を有すると共に前記下向き水平面と平行に対峙する上向き水平面が形成された支持ヨークとからなっており、前記下向き水平面にスラストベアリングの上輪が支持され、上向き水平面にスラストベアリングの下輪が支持されており、
前記支持ヨークの上向き水平面の基端側で立ち上がり、旋回軸方向に延びてヨーク側の孔まで延びる断面L字状となる上向き段部と、
該上向き段部の角部がラジアルベアリングの外輪の上部を上から掛け止めてなり外輪の下方は開放されてなり、
前記取付穴から上向き段部の間で旋回軸に沿って垂下し、下端がラジアルベアリングの内輪の上端と衝合するスペーサー部とからなって、
ラジアルベアリングの内輪の下端が、前記取付軸の下端側に固定されており、
取付プレートと支持ヨークとで上下に挟まれた前記スラストベアリングの上輪および下輪のそれぞれの外向きの側方が掛止めされることなく開放されており、
またラジアルベアリングの外輪の下端が掛止めされることなく開放された構成からなっていること特徴とする旋回キャスタ構造。
【請求項2】
スペーサー部が、取付プレートとは別体で、取付軸に嵌合されたワッシャ形状からなっていることを特徴とする請求項1に記載の旋回キャスタ構造。
【請求項3】
スペーサー部が、取付プレートの取付穴の口縁部に沿って垂下し取付軸に外嵌する垂下壁からなっていることを特徴とする請求項1に記載の旋回キャスタ構造。
【請求項4】
ラジアルベアリングの内輪の下端が、取付軸の下端のかしめ部の段部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の旋回キャスタ構造。
【請求項5】
ラジアルベアリングの内輪の下端が、取付軸の下端に嵌合されてかしめ部によって固定された下段スペーサー部からなっていることを特徴とする請求項1に記載の旋回キャスタ構造。
【請求項6】
スラストベアリングの下輪の上面とラジアルベアリングの内輪、外輪の上端面とが同一面となるように高さ方向に密着して配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の旋回キャスタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送用機器類や各種運搬車、台車類などの車輪として使用される静音効果に優れた旋回キャスタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示す特開2007-22254号のキャスタおよび台車では、同特許文献1の公報の
図6から
図8に示す第2の実施形態において、旋回軸に、キャスタ取付プレート、スラストベアリング、第1座金、ラジアルベアリング(外輪にヨーク部が固定されている)、第2座金、を順番に挿通して旋回軸と同軸上に配置し、旋回軸の端部をかしめ加工している。
これにより、旋回軸のフランジ部と端部との間に挟み込んだ各部材を固定(挟持)している。
【0003】
しかし、上記構成では、スラストベアリングとラジアルベアリングの間に別体の大径な第1座金でラジアルベアリングの内輪上面を衝合し、ラジアルベアリングのヨークの凹部でラジアルベアリングの外輪下面を支持しているので、前記ベアリングへの荷重が別々に生じて振動時の騒音を防止することができない欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、簡単な構成で、スラストベアリングおよびラジアルベアリングを有する旋回キャスタの静音化を実現する旋回キャスタ構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明では、上端にフランジを有する取付軸と、該取付軸が隙間無く貫挿されフランジが掛止められる取付穴を有する取付プレートと、該取付プレートの裏面に形成された下向き水平面と、前記取付プレートの下方で前記取付軸を貫挿する支持ヨーク側の孔を有すると共に前記下向き水平面と平行に対峙する上向き水平面が形成された支持ヨークとからなっており、前記下向き水平面にスラストベアリングの上輪が支持され、上向き水平面にスラストベアリングの下輪が支持されており、
前記支持ヨークの上向き水平面の基端側で立ち上がり、前記旋回軸方向に延びてヨーク側の孔まで延びる断面L字状となる上向き段部と、
該上向き段部の角部がラジアルベアリングの外輪の上部を上から掛け止めてなり外輪の下方は開放されてなり、
前記取付穴から上向き段部の間で旋回軸に沿って垂下し、下端がラジアルベアリングの内輪の上端と衝合するスペーサー部とからなって、
ラジアルベアリングの内輪の下端が、前記取付軸の下端側に固定されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これにより、旋回軸のフランジ部と下端部との間に挟み込んだ各部材を隙間無く一体的に固定することができるので、各部材が個別に揺動することがなく、効率的に荷重を受けることができると共に、振動や騒音の発生を抑えて、走行時の静音を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ベアリングを覆うダストカバーを付加した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、この発明の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1の旋回キャスタ20は、
図5に縦断面から見た一例を示し、
図6が平面図、
図7が正面図を示している。
図1に示す要部拡大図は、旋回軸10の周辺の構造で旋回軸10の軸線に沿った断面図を示している。
前記旋回軸10は、略円柱状の形状を有しており、軸線方向の一方の側にフランジ部11が形成されている。
【0011】
旋回軸10は、キャスタ取付プレート1と車輪Wを軸支する支持ヨーク3との間に、前記フランジ部11と、下端側で大径となる抜け止め用のかしめ部12によって固定されるベアリング機構が内蔵されている。
【0012】
即ち、前記キャスタ取付プレート1は、略水平な扁平面2aと、その略中央に旋回軸10の頭部のフランジ部11の外径よりも小さな内径を有するとともに旋回軸10の軸部10Aを挿通可能な取付穴1bと、該取付穴1bの開口端外周に沿って延び扁平面1aに連なる窪み部1cが形成されている。
【0013】
前記窪み部1cは、周囲の外方の水平な扁平面2aに対して、フランジ部11の厚みとがほぼ同じ位置となるように窪んでいる。
また、前記取付穴1bの周縁部は旋回軸10のフランジ部11の上面を水平に掛止めるための水平面となっており、取付穴1bに掛け止められた前記フランジ部11の上面は前記扁平面2aとほぼ同一な平面状となるように設定されている(
図5参照)。
【0014】
次に、スラストベアリングSは、ラジアルベアリングRの上段でラジアルベアリングRの外周側に配置されており、キャスタ取付プレート1と支持ヨーク3との間に介設されている。
図示例では、スラストベアリングの下輪S2の上面とラジアルベアリングの内輪R1、外輪R2の上端面とがほぼ同一面となるように高さ方向に密着して配置されている。
【0015】
そして、スラストベアリングSの上輪S1は、その上面が、キャスタ取付プレート1の裏面の下向き水平面1aと衝合しており、スラストベアリングSの下輪S2の底面側が、支持ヨーク3の後述の中段に形成された上向き水平面3aに衝合しており、上向き水平面3aの先端で略直角に垂下壁3a’となっている。
また、支持ヨーク3の上部には、前記取付穴1bより同心大径なヨーク側の孔30が穿設されており、支持ヨーク3の上面の略中間位置に穿設されている。
【0016】
また、前記上向き水平面3aに隣接する上向き段部3bの先端でヨーク側の孔30の口縁部となっており、支持ヨーク3の上向き段部3bと内面側の角部3cとが断面L字状となる上向き段部3Lに形成されており、ラジアルベアリングRの外輪R2の上端と衝合している。
一方、前記取付穴1bの真下には、該取付穴1bの口縁部と衝合し旋回軸10に隙間無く嵌合して前記上向き段部3bの内面側の角部3cと同一位置まで垂下するワッシャからなる断面円筒状のスペーサー部4が取り付けられており、該スペーサー部4の下端がラジアルベアリングRの内輪R1の上端と衝合している。
【0017】
そして前記ラジアルベアリングRの内輪R1の下端は、取付軸10の下端のかしめ部12または、かしめ部12に掛け止められて固定される下段ワッシャからなる下段スペーサー部5によって固定されている。
一方、ラジアルベアリングRの外輪R2は、下端が中空位置に開放されている。
上記構成からなっているので、スラストベアリングSはその上輪S1、下輪S2のそれぞれの外向きの側方が開放されており、またラジアルベアリングRの外輪R2の下端が開放された構成からなっているので、簡単な構成で静音効果を奏することができる。
なお、車輪後進側の支持ヨーク3の上向き段部3bと内面側の角部3cとが断面L字状となる上向き段部3Lとなり、上向き水平面3aから中途段部3dを介して後方水平面部3eを介してその先端で略直角に垂下壁3e’となっている。
【実施例2】
【0018】
図2示す実施例2では、取付プレート1の下方でスラストベアリングSの底面を除く外周を覆う柔軟性や弾性を有する合成樹脂などからなるダストカバー6が装着されている。
ダストカバー6は、取付プレート1の裏面に重なって取り付けられており、下向き水平面1aと重なって取付プレート1と同じ機能を発揮するので、その説明を省略する。
その他の構成は前記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0019】
図3に示す実施例3では、前記別体のワッシャー状のスペーサー部4に替えて、前記取付穴1bと一体に形成されて、孔縁部と同一内径で下方に筒状に延びる垂下壁部がスペーサー部4’として形成されている。
そして、前記垂下壁部となるスペーサー部4’の下端はラジアルベアリングRの内輪R1の上端面と隙間無く衝合しており、キャスタ取付プレート1にかかる中心側の荷重をラジアルベアリングRの内輪R1側に分散している。
その他の構成は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例4】
【0020】
図4に示す実施例4では、
図3に示す実施例3と同様に、前記別体のワッシャー状のスペーサー部4に替えて、前記取付穴1bと一体に形成されて、孔縁部と同一内径で下方に筒状に延びる垂下壁部がスペーサー部4’として形成されている。
【0021】
そして、前記垂下壁部となるスペーサー部4’の下端はラジアルベアリングRの内輪R1の上端面と隙間無く衝合しており、キャスタ取付プレート1にかかる中心側の荷重をラジアルベアリングRの内輪R1側に分散している。
また、ラジアルベアリングRの内輪R1の下端は、下段スペーサー部5を設けずに取付軸10の下端のかしめ部12に形成された段部12aに掛け止められて固定されている。
その他の構成は前記実施例と同様であるので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0022】
1 取付プレート
1a 下向き水平面
1b 取付穴
3 支持ヨーク
3a 上向き水平面
3b 上向き段部
4、4’ スペーサー部
5 下段スペーサー部
10 取付軸
11 フランジ
12 かしめ部
13 下端掛止部
30 支持ヨーク側の孔
S スラストベアリング
S1 上輪
S2 下輪
R ラジアルベアリング
R1 内輪
R2 外輪
W 車輪
【要約】 (修正有)
【課題】スラストベアリングおよびラジアルベアリングを有する旋回キャスタの静音化を実現する旋回キャスタ構造に関する。
【解決手段】スラストベアリングSの上輪S1をキャスタ取付プレート1で支持し、下輪S2を支持ヨーク3の扁平面で挟持してなり、ラジアルベアリングRの内輪R1の上面をスペーサ部で固定し、内輪の下面を旋回軸の下端のスペーサ部5で固定されており、前記ラジアルベアリングの外輪の上面を支持ヨークの角部で掛け止めて固定してなることを特徴とする。
【選択図】
図1