(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】出力整合回路
(51)【国際特許分類】
H01P 5/02 20060101AFI20240124BHJP
H01P 1/18 20060101ALI20240124BHJP
H03H 7/20 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H01P5/02 603A
H01P1/18
H03H7/20 E
(21)【出願番号】P 2023137590
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/157401(WO,A1)
【文献】特許第7336050(JP,B1)
【文献】特許第7326645(JP,B1)
【文献】特許第7362964(JP,B1)
【文献】特許第7163524(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/02
H01P 1/18
H03H 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路側信号線路と、前記回路側信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、前記回路側信号線路と平行に延びる第2平行線路、および、前記第2平行線路の一方の端部から前記第2平行線路の他方の端部付近まで延びるとともに前記回路側信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記回路側信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路、を含む第2線路と、前記第1平行線路の一方の端部および前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を備え、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記回路側信号線路が位置するデジタル移相回路と、
出力側信号線路と、出力側接地導体と、を備える出力伝送線路と、
を電気的に接続する出力整合回路であって、
前記回路側信号線路および前記出力側信号線路と接続される信号線路と、前記第2接地導体および前記出力側接地導体と電気的に接続されるリターン線路と、を備え、
前記リターン線路は、前記信号線路よりも長い、
出力整合回路。
【請求項2】
前記リターン線路は、前記ループ線路よりも断面積が小さい、
請求項1に記載の出力整合回路。
【請求項3】
前記リターン線路は、前記交差方向において前記信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状である、
請求項1または2に記載の出力整合回路。
【請求項4】
前記リターン線路は、平面視において、前記信号線路の一方の端部付近から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる平行線路と、前記平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む、
請求項3に記載の出力整合回路。
【請求項5】
前記リターン線路は、平面視において、前記信号線路の一方の端部付近から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延び、前記信号線路の長さよりも短い平行線路と、前記平行線路の一方の端部に接続され、前記交差方向において前記信号線路に近づくように前記第1交差線路の長さよりも短く延びてから前記第1交差線路から遠ざかるように前記信号線路と平行に延びる屈曲部が形成された屈曲線路と、を含む、
請求項3に記載の出力整合回路。
【請求項6】
前記リターン線路の少なくとも一部の断面積は、前記信号線路の断面積よりも小さい、
請求項3に記載の出力整合回路。
【請求項7】
前記リターン線路は、第1層に形成された第1リターン線路部と、ビアを介して前記第1リターン線路部と電気的に接続され、前記第1層とは異なる第2層に形成された第2リターン線路部と、を含み、
前記第1リターン線路部および前記第2リターン線路部は、1つのループを構成し、平面視において端部のみが重なるように配置されており、前記端部が前記ビアを介して電気的に接続されている、
請求項3に記載の出力整合回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力整合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、マイクロ波、準ミリ波あるいはミリ波を対象とするデジタル制御型のデジタル移相回路が開示されている。このデジタル移相回路は、特許文献1の
図1に示されているように、信号線路、第1平行線路を含む第1線路、第2平行線路を含む第2線路、第1接地導体、第2接地導体、第1電子スイッチ、および第2電子スイッチ等を備える。第1平行線路および第2平行線路は、信号線路の両側に設けられる。第2線路は、第2平行線路の一端から第2平行線路の他端付近まで延びるループ線路を含む。ループ線路は、信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状である。第1接地導体は、第1平行線路の一端および第2平行線路の一端に接続される。第2接地導体は、第2線路の一端に接続される。第1電子スイッチは、第1平行線路の他端と第2接地導体との間に設けられる。第2電子スイッチは、第2平行線路の他端と第2接地導体との間に設けられる。
【0003】
このようなデジタル移相回路は、信号線路における信号波の伝送に起因して一対の平行線路(第1平行線路および第2平行線路)あるいはループ線路に流れるリターン電流を、一対の電子スイッチ(第1電子スイッチおよび第2電子スイッチ)の開/閉に応じて切り替えることにより、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替える。すなわち、デジタル移相回路は、一対の平行線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが低遅延モードとなり、ループ線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが高遅延モードとなる。
【0004】
また、このデジタル移相回路は、高遅延モード時にリターン電流がループ線路を流れる構成とすることで、デジタル移相回路のサイズを過度に大きくせずとも、高遅延モード時のインダクタンス値を高めることができ、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相の差(移相量)を十分に拡大することができる。すなわち、このデジタル移相回路は、小型化と、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相との差の拡大と、を両立できるという利点を有する。このデジタル移相回路は、複数の導体によって構成された出力伝送線路に接続されて用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記のデジタル移相回路を小型化すると、導体間の間隔が小さくなることで寄生容量成分が増え、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させることが困難になる場合があった。一般に、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させる方法として、出力ユニットに誘導成分(インダクタ)を直列接続することが知られている。しかしながら、上記のデジタル移相回路(出力ユニット)は、複数の導体によって構成されている。このため、複数の導体によって構成されたデジタル移相回路と、複数の導体によって構成された出力伝送線路と、の間に、集中定数素子であるインダクタを直列接続することが難しい。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、デジタル移相回路および出力伝送線路が複数の導体によって構成されている場合であっても入出力インピーダンスを実数負荷に整合可能な出力整合回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る出力整合回路は、回路側信号線路と、前記回路側信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、前記回路側信号線路と平行に延びる第2平行線路、および、前記第2平行線路の一方の端部から前記第2平行線路の他方の端部付近まで延びるとともに前記回路側信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記回路側信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路、を含む第2線路と、前記第1平行線路の一方の端部および前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を備え、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記回路側信号線路が位置するデジタル移相回路と、出力側信号線路と、出力側接地導体と、を備える出力伝送線路と、を電気的に接続する出力整合回路であって、前記回路側信号線路および前記出力側信号線路と接続される信号線路と、前記第2接地導体および前記出力側接地導体と電気的に接続されるリターン線路と、を備え、前記リターン線路は、前記信号線路よりも長い。
【0009】
本発明の態様1によれば、出力整合回路が、複数の導体線路によって構成される。これにより、デジタル移相回路および出力伝送線路が複数の導体によって構成されている場合であっても、それらの間にインダクタンス成分としての出力整合回路を容易に直列接続し、入出力インピーダンスを実数負荷に整合できる。
【0010】
また、本発明の態様2は、態様1の出力整合回路において、前記リターン線路は、前記ループ線路よりも断面積が小さい。
【0011】
また、本発明の態様3は、態様1または態様2の出力整合回路において、前記リターン線路は、前記交差方向において前記信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状である。
【0012】
また、本発明の態様4は、態様3の出力整合回路において、前記リターン線路は、平面視において、前記信号線路の一方の端部付近から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる平行線路と、前記平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む。
【0013】
また、本発明の態様5は、態様3の出力整合回路において、前記リターン線路は、平面視において、前記信号線路の一方の端部付近から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延び、前記信号線路の長さよりも短い平行線路と、前記平行線路の一方の端部に接続され、前記交差方向において前記信号線路に近づくように前記第1交差線路の長さよりも短く延びてから前記第1交差線路から遠ざかるように前記信号線路と平行に延びる屈曲部が形成された屈曲線路と、を含む。
【0014】
また、本発明の態様6は、態様3から態様5のいずれか一つの出力整合回路において、前記リターン線路の少なくとも一部の断面積は、前記信号線路の断面積よりも小さい。
【0015】
また、本発明の態様7は、態様3から態様6のいずれか一つの出力整合回路において、前記リターン線路は、第1層に形成された第1リターン線路部と、ビアを介して前記第1リターン線路部と電気的に接続され、前記第1層とは異なる第2層に形成された第2リターン線路部と、を含むみ、前記第1リターン線路部および前記第2リターン線路部は、1つのループを構成し、平面視において端部のみが重なるように配置されており、前記端部が前記ビアを介して電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、デジタル移相回路および出力伝送線路が複数の導体によって構成されている場合であっても入出力インピーダンスを実数負荷に整合可能な出力整合回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るデジタル移相回路、出力整合回路および出力伝送線路を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【
図3】
図1に示すIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図1に示すIV-IV線に沿う断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るデジタル移相回路、出力整合回路、および出力伝送線路を示す平面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るデジタル移相回路、出力整合回路、および出力伝送線路を示す平面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るデジタル移相回路、出力整合回路、および出力伝送線路を示す平面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るリターン線路の一部を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係るデジタル移相回路、出力整合回路、および出力伝送線路を示す平面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係るリターン線路の一部を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第1変形例に係る出力整合回路の一部および出力伝送線路の一部を示す平面図である。
【
図13】
図12に示すXIII-XIII線に沿う断面図である。
【
図15】本発明の第2変形例に係る出力整合回路の一部および出力伝送線路の一部を示す平面図である。
【
図16】本発明の第3変形例に係る出力整合回路の一部および出力伝送線路の一部を示す平面図である。
【
図17】
図16に示すXVII-XVII線に沿う断面図である。
【
図18】本発明の第4変形例に係る出力整合回路の一部および出力伝送線路の一部を示す平面図である。
【
図20】本発明の第5変形例に係るデジタル移相回路の一部、出力整合回路および出力伝送線路を示す平面図である。
【
図22】本発明の第6変形例に係る出力整合回路の一部および出力伝送線路の一部を示す平面図である。
【
図23】
図22に示すXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
【
図24】本発明の第7変形例に係る出力整合回路の一部および出力伝送線路の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
≪概要≫
図1は、本発明の第1実施形態に係るデジタル移相回路B、出力整合回路100および出力伝送線路90を示す平面図である。以下では、デジタル移相回路B、出力整合回路100および出力伝送線路90をまとめて、「接続構造A」という場合がある。
【0020】
デジタル移相回路Bは、マイクロ波、準ミリ波、あるいはミリ波等の高周波信号を入力とし、所定の移相量だけ位相シフトした高周波信号を外部に出力する高周波回路である。出力伝送線路90は、デジタル移相回路Bにおいて位相シフトされた高周波信号を、接続構造Aの外部へと伝送する役割を有する。
【0021】
出力整合回路100は、デジタル移相回路Bと出力伝送線路90とを電気的に接続する。出力整合回路100は、デジタル移相回路Bから入力された高周波信号を出力伝送線路90に伝送する役割を有する。詳細は後述するが、出力整合回路100は、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させる役割も有する。
【0022】
以下では、まず、出力整合回路100の接続対象であるデジタル移相回路Bおよび出力伝送線路90について詳細な説明を行う。その後、出力整合回路100について詳細な説明を行う。
【0023】
≪デジタル移相回路≫
図2は、
図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3は、
図1に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4は、
図1に示すIV-IV線に沿う断面図である。
【0024】
図1に示すように、デジタル移相回路Bは、信号線路(回路側信号線路)10と、第1線路21と、第2線路22と、上側パッド24と、上側パッド25と、第1接地導体31と、第2接地導体32と、を備える。本実施形態に係る第1線路21は、第1平行線路21p1と、一対の上側パッド21d1、21d2と、を含む。本実施形態に係る第2線路22は、第2平行線路22p2と、第1交差線路22c1と、第3平行線路22p3と、屈曲線路22bと、第2交差線路22c2と、一対の上側パッド22d1、22d2と、を含む。また、本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、4つの電子スイッチ41~44と、複数の接続導体50と、コンデンサ60と、複数の接続パッドP1~P4と、スイッチ制御部80(制御回路)と、を備える(
図2および
図3も参照)。
【0025】
信号線路10は、
図1に示すように、一方向に延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路10は、一定の幅、一定の厚さおよび所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路10には、
図1における紙面左側から紙面右側に向かって、つまり紙面左側の端部(入力端)から紙面右側の端部(出力端)に向かって信号電流が流れる。この信号電流は、上述したマイクロ波、準ミリ波、あるいはミリ波の波長域を有する高周波信号である。
【0026】
(方向定義)
ここで、本実施形態では、信号線路10の長手方向(信号線路10が延在する方向)を、単に長手方向Xという。長手方向Xに沿って、信号線路10の入力端から出力端に向かう向きを、+Xの向きまたは右方という。右方とは反対の向きを、左方または-Xの向きという。信号線路10に交差する(例えば、直交する)方向を、交差方向Yという。交差方向Yに沿う一つの向きを、奥側または+Yの向きという。奥側とは反対の向きを、手前側または-Yの向きという。長手方向Xおよび交差方向Yの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、上下方向Zという。上下方向Zに沿う一つの向きを、上方または+Zの向きという。上方とは反対の向きを、下方または-Zの向きという。上下方向Zから見ることを、平面視という。
【0027】
信号線路10は、電気的には集中定数回路素子としてのインダクタンスL1を有する。このインダクタンスL1は、信号線路10の長さ等、信号線路10の形状に応じた大きさを有する寄生インダクタンスである。また、信号線路10は、電気的には集中定数回路素子としての静電容量C1をも有する。この静電容量C1は、信号線路10と第1平行線路21p1(詳細は後述)との間、信号線路10と第2平行線路22p2(詳細は後述)との間、信号線路10と第3平行線路22p3(詳細は後述)との間、または信号線路10とシリコン基板(不図示)との間等における寄生容量である。
【0028】
第1平行線路21p1は、信号線路10の他方の側方(-Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第1平行線路21p1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1平行線路21p1は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第1平行線路21p1と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0029】
上側パッド21d1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d1の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d1の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d1の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド21d1の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d1の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0030】
上側パッド21d2は、第1平行線路21p1の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d2の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d2の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d2の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド21d2の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d2の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0031】
第2平行線路22p2は、信号線路10の一方の側方(+Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第2平行線路22p2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2平行線路22p2は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第2平行線路22p2と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0032】
第2平行線路22p2は、信号線路10に対して第1平行線路21p1とは逆側に設けられている。言い換えれば、第2平行線路22p2は、信号線路10が交差方向Yにおいて第1平行線路21p1および第2平行線路22p2の間に位置するように、配置されている。
【0033】
上側パッド22d1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド22d1の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド22d1の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド22d1の他方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド22d1の一方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド22d1の交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0034】
上側パッド22d2は、第2平行線路22p2の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド22d2の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド22d2の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド22d2の他方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド22d2の一方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド22d2の交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0035】
第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)に電気的に接続された帯状導体である。この第1交差線路22c1には、屈曲部CR1が形成されており、第2平行線路22p2に近い側(例えば、Y方向における第1交差線路22c1の中点の位置よりも第2平行線路22p2側)がクランク形状である。第1交差線路22c1は、平面視において、第2平行線路22p2の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延び、屈曲部CR1において右側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びている。
【0036】
第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y端)に接続された直線状の帯状導体である。第3平行線路22p3は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。第3平行線路22p3の長さは第2平行線路22p2の長さより短い。
【0037】
第3平行線路22p3は、信号線路10の一方側(+Y側)において、第2平行線路22p2よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第3平行線路22p3は、第2平行線路22p2が交差方向Yにおいて信号線路10と第3平行線路22p3との間に位置するように、配置されている。
【0038】
図1に示すように、交差方向Yにおいて、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離D1は、第2平行線路22p2の中心線と第1接地導体31(後述)の奥側の外縁(第3平行線路22p3側の外縁)との間の距離D2よりも大きい。
【0039】
屈曲線路22bは、第3平行線路22p3の一端(+X側)に接続され、屈曲部CRが形成された帯状導体である。屈曲線路22bは、第3平行線路22p3の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びる部分線路22b1と、この部分線路22b1の一端(-Y側)から信号線路10と平行に長手方向X(右側(+X側))に延びる部分線路22b2とからなる。屈曲線路22bをなす部分線路22b1、22b2はそれぞれ、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。部分線路22b1の長さは第1交差線路22c1の長さより短い。なお、屈曲線路22bには、屈曲部CRが複数形成されていてもよい。
【0040】
第2交差線路22c2は、屈曲線路22bを構成する部分線路22b2の一端(+X側)に接続された帯状導体である。この第2交差線路22c2には、屈曲部CR2が形成されており、第2平行線路22p2に近い側(例えば、Y方向における第2交差線路22c2の中点の位置よりも第2平行線路22p2側)がクランク形状である。第2交差線路22c2は、平面視において、屈曲線路22bを構成する部分線路22b2の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延び、屈曲部CR2において右側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。
【0041】
本実施形態における第2交差線路22c2の一端縁(-Y側)は、上側パッド22d1、22d2の他方の短辺(-Y側)および第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド22d2と第2交差線路22c2とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。
【0042】
また、本実施形態における第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32(後述)と常時電気的に接続されている。言い換えれば、ループ線路RP(後述)の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0043】
以上説明した第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、屈曲線路22b、および第2交差線路22c2は、奥側(+Y側)に凸となるループ線路RPを構成している。
【0044】
ループ線路RPは、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2、24、25が形成された層、ならびに、第1接地導体31および第2接地導体32が形成された層とは異なる層に形成されている。例えば、ループ線路RPは、
図2および
図3に示す第2中間パッド71b、72b、73b、74b(詳細は後述する)が形成された層に形成されている。なお、ループ線路RPは、
図2および
図3に示す第3中間パッド71c、72c、73c、74c(詳細は後述する)が形成された層に形成されていてもよい。
【0045】
ループ線路RPをこのような層に形成するのは、ループ線路RPの厚み(断面積)を、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚み(断面積)よりも小さくするためである。一般的に、多層構造の半導体では、表面よりも内層に行くほど配線の厚みが小さくなるように形成される。このため、本実施形態では、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2、24、25が形成された層よりもループ線路RPを下の層(内層)に形成することで、ループ線路RPの厚み(断面積)を、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚み(断面積)よりも小さくしている。
【0046】
詳細は後述するが、ループ線路RPの厚みを、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚みよりも小さくするのは、ループ線路RPを流れる電流(第3リターン電流)によって発生する磁界の強度を高めるとともに、ループ線路RPの抵抗を大きくするためである。ループ線路RPの厚みは、ループ線路RPの断面積が、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の断面積の1/5未満となるように設定するのが望ましい。
【0047】
上側パッド24は、
図1に示すように、第1線路21の一部をなす上側パッド21d1、21d2と同様の長方形状の平板導体である。上側パッド24の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド24の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド24の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド24の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド24の交差方向Yにおける寸法は、第1線路21の一部をなす上側パッド21d1、21d2と同様に、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0048】
図4に示すように、上下方向Zにおける上側パッド24と第2接地導体32との間には、第1中間パッド24aと、第2中間パッド24bと、が設けられている。上側パッド24、第1中間パッド24a、第2中間パッド24b、および第2接地導体32は、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド24、第1中間パッド24a、および第2中間パッド24bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0049】
上側パッド24と第1中間パッド24aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド24aと第2中間パッド24bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド24bと第2接地導体32とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、上側パッド24は、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0050】
なお、本明細書において「接続導体50」は、上下方向Zに延在する導体であり、接続導体50の上端に接続される部材と接続導体50の下端に接続される部材とを電気的かつ機械的に接続する部材である。接続導体50は、例えば絶縁層(不図示)を上下方向Zに貫通するビアである。また、各図に示された接続導体50の形状および個数は全て一例であり、接続導体50の上端に接続される部材と接続導体50の下端に接続される部材とを接続可能であれば適宜変更可能である。
【0051】
ただし、デジタル移相回路Bは、上側パッド24、第1中間パッド24a、および第2中間パッド24b、ならびに、それらを接続する接続導体50を有していなくてもよい。
【0052】
上側パッド25は、
図1に示すように、第2線路22の一部をなす上側パッド22d1、22d2と同様の長方形状の平板導体である。上側パッド25の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド25の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド25の他方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド25の一方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド25の交差方向Yにおける寸法は、第2線路22の一部をなす上側パッド22d1、22d2と同様に、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0053】
図4に示すように、上下方向Zにおける上側パッド25と第2接地導体32との間には、第1中間パッド25aと、第2中間パッド25bと、が設けられている。上側パッド25、第1中間パッド25a、第2中間パッド25b、および第2接地導体32は、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド25、第1中間パッド25a、および第2中間パッド25bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0054】
上側パッド25と第1中間パッド25aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド25aと第2中間パッド25bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド25bと第2接地導体32とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、上側パッド25は、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0055】
第1接地導体31は、信号線路10の入力端側(-X側)に設けられる板状の導体である。第1接地導体31は、電気的に接地されている。第1接地導体31は、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状を有する。また、第1接地導体31は、上側パッド21d1、22d1および第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と上下方向Zにおいて重なっている。第1接地導体31は、
図2に示すように、信号線路10、第1線路21(上側パッド21d1)、および第2線路22(上側パッド22d1)よりも下方(-Z側)に位置する。
【0056】
第2接地導体32は、信号線路10の出力端側(+X側)に設けられる板状の導体である。第2接地導体32は、電気的に接地されている。詳細な図示は省略するが、第2接地導体32は、信号線路10、第1線路21、第2線路22、および上側パッド24、25よりも下方(-Z側)に位置する。
【0057】
第1接続パッドP1は、
図2に示すように、上述した上側パッド21d1と、第1中間パッド71aと、第2中間パッド71bと、第3中間パッド71cと、第1接地導体31と、を含む。上側パッド21d1、第1中間パッド71a、第2中間パッド71b、第3中間パッド71c、および第1接地導体31は、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d1、第1中間パッド71a、第2中間パッド71b、第3中間パッド71c、および第1接地導体31は、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0058】
図2に示すように、上側パッド21d1と第1中間パッド71aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド71aと第2中間パッド71bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド71bと第3中間パッド71cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド71cと第1接地導体31とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第1接続パッドP1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0059】
第2接続パッドP2は、
図2に示すように、上側パッド22d1と、第1中間パッド72aと、第2中間パッド72bと、第3中間パッド72cと、第1接地導体31と、を含む。上側パッド22d1、第1中間パッド72a、第2中間パッド72b、第3中間パッド72c、および第1接地導体31は、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド22d1、第1中間パッド72a、第2中間パッド72b、第3中間パッド72c、および第1接地導体31は、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0060】
図2に示すように、上側パッド22d1と第1中間パッド72aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド72aと第2中間パッド72bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド72bと第3中間パッド72cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド72cと第1接地導体31とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第2接続パッドP2は、第2平行線路22p2の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0061】
ここで、
図2に示すように、第2接続パッドP2に含まれる第2中間パッド72bには、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部が接続されている。これにより、第2接続パッドP2は、ループ線路RPと第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。なお、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部は、第2接続パッドP2に含まれる第3中間パッド72cに接続されていてもよい。
【0062】
第3接続パッドP3は、
図3に示すように、上述した上側パッド21d2と、第1中間パッド73aと、第2中間パッド73bと、第3中間パッド73cと、下側パッド33aと、を含む。上側パッド21d2、第1中間パッド73a、第2中間パッド73b、第3中間パッド73c、および下側パッド33aは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d2、第1中間パッド73a、第2中間パッド73b、第3中間パッド73c、および下側パッド33aは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0063】
ここで、下側パッド33aは、
図1に示すように、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33aは、第2接地導体32とは別体に設けられる。下側パッド33aと第2接地導体32とは、第1電子スイッチ41(後述)の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。従って、下側パッド33aは、第1電子スイッチ41の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0064】
図3に示すように、上側パッド21d2と第1中間パッド73aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド73aと第2中間パッド73bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド73bと第3中間パッド73cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド73cと下側パッド33aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第3接続パッドP3は、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第1電子スイッチ41とを、常時電気的に接続している。
【0065】
第4接続パッドP4は、
図3に示すように、上述した上側パッド22d2と、第1中間パッド74aと、第2中間パッド74bと、第3中間パッド74cと、下側パッド33bと、を含む。上側パッド22d2、第1中間パッド74a、第2中間パッド74b、第3中間パッド74c、および下側パッド33bは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド22d2、第1中間パッド74a、第2中間パッド74b、第3中間パッド74c、および下側パッド33bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0066】
ここで、下側パッド33bは、
図1に示すように、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33bは、第2接地導体32および下側パッド33aとは別体に設けられる。下側パッド33bと第2接地導体32とは、第2電子スイッチ42(後述)の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。従って、下側パッド33bは、第2電子スイッチ42の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0067】
図3に示すように、上側パッド22d2と第1中間パッド74aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド74aと第2中間パッド74bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド74bと第3中間パッド74cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド74cと下側パッド33bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第4接続パッドP4は、第2平行線路22p2の他端(+X側)と第2電子スイッチ42とを、常時電気的に接続している。
【0068】
コンデンサ60は、例えば、
図2に示すように、上部電極が信号線路10に接続され、下部電極が第3電子スイッチ43を介して第1接地導体31に接続される平行平板である。コンデンサ60は、平行平板の対向面積に応じた静電容量Caを有する。すなわち、この静電容量Caは、信号線路10と第1接地導体31との間に設けられる回路定数である。但し、コンデンサ60は櫛歯型コンデンサであってもよい。
【0069】
第1電子スイッチ41は、
図1に示すように、第3接続パッドP3の下側パッド33aと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態における第1電子スイッチ41は、
図1に示すように、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第3接続パッドP3の下側パッド33aに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0070】
第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80によって、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第2接地導体32との間を導通状態または遮断状態にする。
【0071】
第2電子スイッチ42は、
図1に示すように、第4接続パッドP4の下側パッド33bと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態における第2電子スイッチ42は、
図1に示すように、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第4接続パッドP4の下側パッド33bに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0072】
第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80によって、第2平行線路22p2の他端(+X側)と第2接地導体32との間を導通状態または遮断状態にする。
【0073】
第3電子スイッチ43は、
図2に示すように、コンデンサ60の下部電極と第1接地導体31とを開閉自在に接続するトランジスタである。第3電子スイッチ43は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子がコンデンサ60の下部電極に接続され、ソース端子が第1接地導体31に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0074】
ここで、第3電子スイッチ43は、
図2に示すように、信号線路10から奥側(+Y側)に離れた位置に配置されている。また、第1接地導体31の一端(+Y側)は、交差方向Yにおいて、信号線路10から遠ざかるように延びて第3電子スイッチ43に接続されている。このような配置にするのは、特定の半導体製造工程において、コンデンサ60の下部電極の接続には設計ルール上の制約があるためである。
【0075】
具体的には、コンデンサ60の下部電極は、一旦、接続配線およびビアを介して上の配線層(例えば、信号線路10が形成されている層)に接続し、その配線層からビアを介して下の配線層に接続しなければならないという制約である。なお、
図2においては、コンデンサ60の下部電極と第3電子スイッチ43との接続経路を簡略化して図示している。この制約のために、第3電子スイッチ43を、コンデンサ60が形成されている位置(例えば、
図1に示す信号線路10の入力端側(-X側))の近傍に配置することはできず、信号線路10から奥側(+Y側)に離れた位置に配置しなければならない。第1接地導体31は、このような位置に配置された第3電子スイッチ43のソース端子に接続されるために、交差方向Yにおいて、信号線路10から遠ざかるように延びている。
【0076】
第3電子スイッチ43は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第3電子スイッチ43は、スイッチ制御部80によって、コンデンサ60の下部電極と第1接地導体31との間を導通状態または遮断状態にする。
【0077】
第4電子スイッチ44は、
図2に示すように、信号線路10の入力端側(-X側)と第1接地導体31とを開閉自在に接続するトランジスタである。この第4電子スイッチ44は、上述した第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、および第3電子スイッチ43と同様に、MOS型FETであり、ドレイン端子が信号線路10の入力端側(-X側)に接続され、ソース端子が第1接地導体31に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。なお、第4電子スイッチ44は、信号線路10の入力端側(-X側)と第1接地導体31との間ではなく、信号線路10の出力端側(+X側)と第2接地導体32との間に設けてもよい。
【0078】
第4電子スイッチ44は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第4電子スイッチ44は、スイッチ制御部80によって、信号線路10の入力端側(-X側)と第1接地導体31との間を導通状態または遮断状態にする。
【0079】
スイッチ制御部80は、上述した第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、第3電子スイッチ43、および第4電子スイッチ44を制御する制御回路である。スイッチ制御部80は、4つの出力ポートを備えており、各出力ポートから第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、第3電子スイッチ43、および第4電子スイッチ44の各ゲート端子にゲート信号を個別に出力する。すなわち、スイッチ制御部80は、上記ゲート信号によって、第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、第3電子スイッチ43、および第4電子スイッチ44を開状態または閉状態にする。
【0080】
次に、以上のように構成されたデジタル移相回路Bの作用について説明する。
【0081】
本実施形態におけるデジタル移相回路Bは、第1~第3電子スイッチ41~43の導通状態に応じて動作モードが切り替えられる。すなわち、デジタル移相回路Bの動作モードには、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42が閉状態に設定され、第3電子スイッチ43が開状態に設定される低遅延モードと、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42が開状態に設定され、第3電子スイッチ43が閉状態に設定される高遅延モードと、がある。
【0082】
低遅延モードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42を閉状態に設定し、第3電子スイッチ43を開状態に設定する。すなわち、低遅延モードでは、高周波信号が信号線路10の入力端(左端)から出力端(右端)まで伝播するまでの第1伝搬遅延時間TLによって、出力端(右端)における位相が、高遅延モードにおける第2の位相θHよりも小さな第1の位相θLとなる。以下、低遅延モードについて更に詳しく説明する。
【0083】
第1電子スイッチ41が閉状態に設定されることにより、第1平行線路21p1の他端(+X側)は、第3接続パッドP3を介して、第2接地導体32と接続される(
図1参照)。一方、第1平行線路21p1の一端(-X側)は、第1接続パッドP1を介して、第1接地導体31と常時接続されている(
図1および
図2参照)。従って、第1平行線路21p1は、他端(+X側)が第1電子スイッチ41を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第1通電経路を形成する。
【0084】
また、第2電子スイッチ42が閉状態に設定されることにより、第2平行線路22p2の他端(+X側)は、第4接続パッドP4を介して、第2接地導体32と接続される(
図1参照)。一方、第2平行線路22p2の一端(-X側)は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(
図1および
図2参照)。従って、第2平行線路22p2は、他端(+X側)が第2電子スイッチ42を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第2通電経路を形成する。
【0085】
そして、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2の両端接続状態において、信号線路10に入力端から出力端に向けた信号電流が流れると、当該信号電流の伝播に起因して、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2にリターン電流が生じる。当該リターン電流は、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2を、他端(+X側)から一端(-X側)に向かって流れる。
【0086】
すなわち、第1通電経路を形成する第1平行線路21p1には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向きの第1リターン電流が流れる。また、第2通電経路を形成する第2平行線路22p2には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向き、つまり第1リターン電流と同じ向きの第2リターン電流が流れる。
【0087】
ここで、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流および第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は、何れも、信号電流の通電の向きとは逆向きである。従って、第1リターン電流および第2リターン電流は、信号線路10と第1平行線路21p1との電磁気的な結合(相互誘導)および信号線路10と第2平行線路22p2との電磁気的な結合(相互誘導)に起因して、デジタル移相回路Bの全体のインダクタンスを減少させるように作用する。信号線路10のインダクタンスをLslow、リターン経路(第1平行線路21p1および第2平行線路22p2)のインダクタンスをLglow、信号線路10とリターン経路との相互インダクタンスをMlowとする。低遅延モードにおけるデジタル移相回路Bの全体のインダクタンスLlowは、Lslow+Lglow-Mlowとなる。
【0088】
また、信号線路10は、上述した通り寄生容量としての静電容量C1を有している。低遅延モードでは、第3電子スイッチ43が開状態に設定されるので、コンデンサ60は、信号線路10と第1接地導体31との間に接続されていない。すなわち、コンデンサ60の静電容量Caは、信号線路10を伝播する高周波信号に影響を与えない。従って、信号線路10を伝播する高周波信号には、(Llow×C1)1/2に比例した第1伝搬遅延時間TLが作用する。
【0089】
そして、信号線路10の出力端における高周波信号は、このような第1伝搬遅延時間TLに起因して、信号線路10の入力端における高周波信号より位相が第1の位相θLだけ遅れたものとなる。すなわち、低遅延モードでは、第1リターン電流および第2リターン電流に起因してデジタル移相回路Bの全体のインダクタンスがインダクタンスLlowになることによって、伝搬遅延時間が減少する。
【0090】
一方、高遅延モードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42を開状態に設定し、第3電子スイッチ43を閉状態に設定する。なお、第4電子スイッチ44は、閉状態に設定される。すなわち、高遅延モードでは、高周波信号が信号線路10の入力端(左端)から出力端(右端)まで伝播するまでの第2伝搬遅延時間THによって、出力端(右端)における位相が、低遅延モードにおける第1の位相θLよりも大きな第2の位相θHとなる。以下、高遅延モードについて更に詳しく説明する。
【0091】
上述した通り、高遅延モードでは、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42が開状態に設定される。よって、第1平行線路21p1には上述した第1導電経路が形成されず、また、第2平行線路22p2には上述した第2導電経路が形成されない。従って、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流は極めて小さくなり、また、第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は極めて小さくなる。
【0092】
これに対して、ループ線路RPの一部をなす第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(
図2参照)。また、ループ線路RPの一部をなす第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、上述した通り、第2接地導体32と常時接続されている。従って、ループ線路RPには、第2交差線路22c2の一端(-Y側)と第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部との間に電流が流れ得る第3通電経路が予め形成されている。このため、高遅延モードでは、信号線路10における信号電流に起因して、第2交差線路22c2の一端(-Y側)から屈曲線路22bおよび第3平行線路22p3を経由して第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部に向かう第3リターン電流が流れる。
【0093】
ここで、第3リターン電流は、信号線路10と平行な第3平行線路22p3および屈曲線路22bの部分線路22b2において、信号線路10における信号電流の通電の向きとは逆向きに流れる。また、屈曲線路22bの部分線路22b1、第3平行線路22p3、および第1交差線路22c1は、信号線路10とは反対側(+Y側)に凸となるループ線路RPを構成している。従って、リターン経路(第3リターン電流が流れる経路)がループ線路RPを構成していない従来の構成と比較してリターン経路のインダクタンスを増大させることができる。しかも、本実施形態では、ループ線路RPの厚み(第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、屈曲線路22b、および第2交差線路22c2の厚み)が、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚みよりも小さい。
【0094】
これにより、デジタル移相回路Bの全体のインダクタンスを格段に増加させることができ、移相量が小さくなる低周波においても所望の移相量を確保することができる。信号線路10のインダクタンスをLshigh、リターン経路(第2交差線路22c2、屈曲線路22b、第3平行線路22p3、第1交差線路22c1)のインダクタンスをLghigh、信号線路10とリターン経路との相互インダクタンスをMhighとする。なお、Lshigh=Lslowである。高遅延モードにおけるデジタル移相回路Bの全体のインダクタンスLhighは、Lshigh+Lghigh-Mhighとなる。ここで、明らかに、Lglow<LghighおよびMlow>Mhighが成り立つから、Lhigh>Llowが成り立つ。
【0095】
なお、第3リターン電流がリターン経路のインダクタンスを増加させるように作用する原理は次のように説明できる。つまり、第3リターン電流が屈曲線路22bの部分線路22b1を流れる際に発生させる磁界、第3リターン電流が第3平行線路22p3を流れる際に発生させる磁界、および第3リターン電流が第1交差線路22c1を流れる際に発生させる磁界は、何れも、上記ループ線路内において同一の向き(+Zの向き)である。このため、これらの磁界は互いに強め合う。従って、第3リターン電流が流れる線路がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、第3リターン電流が生じさせる磁界を大きくし、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。また、ループの高さ(すなわち、第3平行線路22p3の交差方向Yにおける位置、ならびに、第1交差線路22c1および屈曲線路22bの部分線路22b1)を調整することにより、リターン経路のインダクタンスの値を大きく変化させることができる。
【0096】
一方、信号線路10は寄生容量としての静電容量C1を有している。また、高遅延モードでは、第3電子スイッチ43が閉状態に設定されるので、信号線路10と第1接地導体31との間には、コンデンサ60が接続されている。すなわち、信号線路10は、コンデンサ60の静電容量Caと静電容量C1(寄生容量)とを合算した静電容量Cbを有する。従って、信号線路10を伝播する高周波信号には、伝送系のインダクタンスの増加と、合算した静電容量Cbと、に係る第2伝搬遅延時間THが作用する。
【0097】
そして、信号線路10の出力端における高周波信号は、このような第2伝搬遅延時間THに起因して、信号線路10の入力端における高周波信号より位相が第2の位相θHだけ遅れたものとなる。すなわち、高遅延モードでは、第3リターン電流に起因して伝送系のインダクタンスが増大されることによって、伝搬遅延時間が増大する。
【0098】
ここで、高遅延モードでは、第4電子スイッチ44を閉状態に設定することにより、信号線路10の損失を意図的に増加させてもよい。この損失付与は、高遅延モードにおける高周波信号の損失を、低遅延モードにおける高周波信号の損失と同程度にしようとするためのものである。
【0099】
≪出力伝送線路≫
図5は、
図1に示すV-V線に沿う断面図である。
図1および
図5に示すように、本実施形態に係る出力伝送線路90は、いわゆるマイクロストリップ線路を構成しており、信号線路(出力側信号線路)91と、グランド層92と、を有する。グランド層92は、出力伝送線路90の接地導体(出力側接地導体)として機能する。
【0100】
信号線路91は、
図1に示すように、長手方向Xに延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路91は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路91は、出力整合回路100の信号線路101(詳細は後述)を介して、デジタル移相回路Bの信号線路10と電気的に接続されている。信号線路91は、信号線路10が形成された層に形成されている。
【0101】
グランド層92は、
図1に示すように、長手方向Xおよび交差方向Yに延在する板状の導体である。グランド層92は、出力整合回路100のリターン線路102(詳細は後述)等を介して、デジタル移相回路Bの第2接地導体32と電気的に接続されている。グランド層92は、
図5に示すように、信号線路91から所定距離隔てた下方に配置されている。
【0102】
≪出力整合回路≫
図1に示すように、本実施形態に係る出力整合回路100は、信号線路101と、リターン線路102と、を備える。本実施形態に係るリターン線路102は、シフト線路102sと、第1交差線路102c1と、平行線路102pと、第2交差線路102c2と、を含む。
【0103】
本実施形態に係る信号線路101は、デジタル移相回路Bの信号線路10および出力伝送線路90の信号線路91が形成された層に形成されている。
【0104】
本実施形態に係るリターン線路102は、信号線路101が形成された層とは異なる層に形成されている。より具体的に、本実施形態に係るリターン線路102は、デジタル移相回路Bの中間パッド24b、25b(
図4参照)および出力伝送線路90のグランド層92(
図5参照)が形成された層に形成されている。つまり、リターン線路102は、信号線路101が形成された層よりも下の層(内層)に形成されている。これにより、リターン線路102の厚み(断面積)は、信号線路101の厚み(断面積)よりも小さくなっている。
【0105】
信号線路101は、長手方向Xに延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路101は、一定の幅、一定の厚さおよび所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路101は、デジタル移相回路Bの信号線路10および出力伝送線路90の信号線路91と接続される。本実施形態において、信号線路101の幅(断面積)は、デジタル移相回路Bの信号線路10の幅(断面積)および出力伝送線路90の信号線路91の幅(断面積)のいずれよりも小さい。
【0106】
本実施形態に係るシフト線路102sは、第2中間パッド25b(
図4も参照)から、長手方向Xにおいてデジタル移相回路Bから遠ざかるように、右方(+X側)に向けて延びている。シフト線路102sの右側の端縁(+X側)は、第2接地導体32の右側の側縁(+X側)よりも右側(+X側)に位置する。
【0107】
シフト線路102sは、第2中間パッド25bおよび接続導体50を介して、第2接地導体32に対して電気的に接続されている(
図4参照)。したがって、シフト線路102sを含むリターン線路102は、第2中間パッド25bおよび接続導体50を介して、第2接地導体32に対して電気的に接続されている。
【0108】
第1交差線路102c1は、
図1に示すように、シフト線路102sの一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第1交差線路102c1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1交差線路102c1は、信号線路101の一端(-X側)付近から交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかるように延びている。具体的に、本実施形態に係る第1交差線路102c1は、シフト線路102sの一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかるように延びている。つまり、本実施形態に係る第1交差線路102c1は、シフト線路102sの一端(+X側)から奥側(+Y側)に向けて延びている。
【0109】
出力整合回路100の第1交差線路102c1と、デジタル移相回路Bの第2交差線路22c2と、は平面視において重なっていない。すなわち、平面視において、出力整合回路100の第1交差線路102c1とデジタル移相回路Bの第2交差線路22c2とは、長手方向Xに離間している。
【0110】
平行線路102pは、第1交差線路102c1の一端(+Y側)に接続された直線状の帯状導体である。平行線路102pは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。平行線路102pは、第1交差線路102c1の一端(+Y側)から、信号線路101と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態に係る平行線路102pは、第1交差線路102c1の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。
【0111】
第2交差線路102c2は、平行線路102pの一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第2交差線路102c2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2交差線路102c2は、平行線路102pの一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延びている。つまり、本実施形態に係る第2交差線路102c2は、平行線路102pの一端(+X端)から手前側(-Y側)に向けて延びている。
【0112】
図1および
図5に示すように、第2交差線路102c2の手前側の端縁(-Y側)は、出力伝送線路90が有するグランド層92の奥側の側縁(+Y側)に接続されている。したがって、第2交差線路102c2を含むリターン線路102は、出力伝送線路90が有するグランド層92(出力側接地導体)に対して電気的に接続されている。
【0113】
以上説明したリターン線路102は、交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかる方向に凸状となるループ状である。つまり、本実施形態に係るリターン線路102は、奥側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。リターン線路102がこのようにループ状であることで、リターン線路102は、信号線路101よりも長くなる。また、本実施形態に係るリターン線路102は、デジタル移相回路Bが有するループ線路RPよりも幅(断面積)が小さい。
【0114】
≪作用≫
次に、以上のように構成された出力整合回路100の作用について説明する。
【0115】
上述したように、特許文献1のデジタル移相回路は、信号線路、第1平行線路を含む第1線路、第2平行線路を含む第2線路、第1接地導体、第2接地導体、第1電子スイッチ、および第2電子スイッチ等を備える。第2線路は、信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路を含む。特許文献1のデジタル移相回路は、高遅延モード時にリターン電流がループ線路を流れる構成とすることで、小型化と、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相との差の拡大と、を両立できるという利点を有する。このデジタル移相回路は、複数の導体(本実施形態では、信号線路91とグランド層92の2つ)によって構成された出力伝送線路に接続されて用いられる場合がある。
【0116】
ここで、上記のデジタル移相回路を小型化すると、導体間の間隔が小さくなることで寄生容量成分が増え、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させることが困難になる場合があった。一般に、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させる方法として、出力ユニットに誘導成分(インダクタ)を直列接続することが知られている。しかしながら、上記のデジタル移相回路(出力ユニット)は、複数の導体によって構成されている。このため、複数の導体によって構成されたデジタル移相回路と、複数の導体によって構成された出力伝送線路と、の間に、集中定数素子であるインダクタを直列接続することが難しい。
【0117】
この課題を解決するために、本実施形態に係る出力整合回路100は、複数の導体線路によって構成されている。すなわち、出力整合回路100が、デジタル移相回路Bの信号線路10および出力伝送線路90の信号線路91に接続される信号線路101と、デジタル移相回路Bの第2接地導体32および出力伝送線路90のグランド層92(出力側接地導体)に接続されるリターン線路102と、を備える。これにより、複数の導体によって構成されたデジタル移相回路Bと、複数の導体によって構成された出力伝送線路90と、の間に、インダクタンス成分としての出力整合回路100を容易に直列接続することができる。これにより、デジタル移相回路Bおよび出力伝送線路90が複数の導体によって構成されている場合であっても、入出力インピーダンスを実数負荷に整合できる。
【0118】
ここで、出力整合回路100全体としてのインダクタンス成分は、信号線路101のインダクタンス成分と、リターン線路102のインダクタンス成分と、の和に基づいて決定する。本実施形態においてはリターン線路102がループ形状を有するため、ループ線路RPと同様の原理によりリターン線路102のインダクタンス成分を高め、これによって出力整合回路100全体としてのインダクタンス成分を高めることができる。また、リターン線路102のループの設計を調整することにより、意図したインダクタンス成分を得ることができる。例えば、リターン線路102のループの高さ(すなわち、平行線路102pの交差方向Yにおける位置)を調整することにより、意図したインダクタンス成分を得ることができる。
【0119】
さらに、本実施形態においては、信号線路101に対するGND経路がリターン線路102のみである。これにより、例えば信号線路101の下方に別途のグランド層等を設ける場合と比較して容量成分を少なくし、信号線路101においても高いインダクタンス成分を実現することができる。
【0120】
≪小括≫
以上説明したように、本実施形態に係る出力整合回路100は、信号線路(回路側信号線路)10と、信号線路10と平行に延びる第1平行線路21p1を含む第1線路21と、信号線路10と平行に延びる第2平行線路22p2、および、第2平行線路22p2の一方の端部から第2平行線路22p2の他方の端部付近まで延びるとともに交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路RP、を含む第2線路22と、第1平行線路21p1の一方の端部および第2平行線路22p2の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体31と、第2線路22の一方の端部に接続された第2接地導体32と、第1平行線路21p1の他方の端部と第2接地導体32との間に設けられた第1電子スイッチ41と、第2平行線路22p2の他方の端部と第2接地導体32との間に設けられた第2電子スイッチ42と、を備え、第1平行線路21p1と第2平行線路22p2との間に信号線路10が位置するデジタル移相回路Bと、信号線路(出力側信号線路)91と、出力側接地導体(グランド層92)と、を備える出力伝送線路90と、を電気的に接続する出力整合回路100であって、信号線路10および信号線路91と接続される信号線路101と、第2接地導体32および出力側接地導体(グランド層92)と電気的に接続されるリターン線路102と、を備え、リターン線路102は、信号線路101よりも長い。
【0121】
この構成により、出力整合回路100が、複数の導体線路によって構成される。これにより、デジタル移相回路Bおよび出力伝送線路90が複数の導体によって構成されている場合であっても、それらの間にインダクタンス成分としての出力整合回路100を容易に直列接続し、入出力インピーダンスを実数負荷に整合できる。
【0122】
また、リターン線路102は、ループ線路RPよりも断面積が小さい。この構成により、リターン線路102のインダクタンス成分を高めることができる。
【0123】
また、リターン線路102は、交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかる方向に凸状となるループ状である。この構成により、リターン線路102のインダクタンス成分を高め、これによって出力整合回路100全体としてのインダクタンス成分を高めることができる。
【0124】
また、リターン線路102は、平面視において、信号線路101の一方の端部付近から交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかるように延びる第1交差線路102c1と、第1交差線路102c1の一方の端部から信号線路101と平行に延びる平行線路102pと、平行線路102pの一方の端部から交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延びる第2交差線路102c2と、を含む。この構成により、交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかる方向に凸状となるリターン線路102を容易に実現できる。
【0125】
また、リターン線路102の少なくとも一部の断面積は、信号線路101の断面積よりも小さい。この構成により、リターン線路102のインダクタンス成分を高めることができる。
【0126】
<第2実施形態>
≪概要≫
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、デジタル移相回路Bの構成および出力伝送線路90の構成は第1実施形態と同様であるため、これらについては説明を省略する。
【0127】
≪出力整合回路≫
図6に示すように、本実施形態に係る出力整合回路100Aは、第1実施形態に係る出力整合回路100と比較し、リターン線路102Aの形状が異なる。本実施形態に係るリターン線路102Aは、シフト線路102s、第1交差線路102c1、平行線路102p、屈曲線路102b、および第2交差線路102c2を含む。これらのうち、シフト線路102sおよび第1交差線路102c1の形状は第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0128】
本実施形態に係る平行線路102pは、第1実施形態と同様に、第1交差線路102c1の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。ただし、本実施形態に係る平行線路102pの長さは第1実施形態に係る平行線路102pの長さよりも短い。平行線路102pの長さは信号線路101の長さよりも短い。
【0129】
屈曲線路102bは、平行線路102pの一端(+X側)に接続され、屈曲部CRが形成された帯状導体である。屈曲線路102bは、平行線路102pの一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延びる部分線路102b1と、この部分線路102b1の一端(-Y側)から信号線路101と平行(長手方向X)に延びる部分線路102b2とからなる。つまり、本実施形態に係る部分線路102b1は、平行線路102pの一端(+X側)から、手前側(-Y側)に延びている。本実施形態に係る部分線路102b2は、部分線路102b1の一端(-Y側)から右側(+X側)に延びている。屈曲線路102bをなす部分線路102b1、102b2はそれぞれ、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。部分線路102b1の長さは第1交差線路102c1の長さより短い。なお、屈曲線路102bには、屈曲部CRが複数形成されていてもよい。
【0130】
本実施形態に係る第2交差線路102c2は、屈曲線路102bを構成する部分線路102b2の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延びている。つまり、本実施形態における第2交差線路102c2は、屈曲線路102bを構成する部分線路102b2の一端(+X端)から手前側(-Y側)に向けて延びている。第2交差線路102c2の手前側の端縁(-Y側)は、第1実施形態と同様に、出力伝送線路90が有するグランド層92の奥側の側縁(+Y側)に接続されている。
【0131】
≪作用≫
以上説明した本実施形態に係るリターン線路102Aは、第1実施形態と同様に、奥側(+Y側)に凸となるループ線路を構成している。したがって、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0132】
ところで、第1実施形態における出力整合回路100および第2実施形態における出力整合回路100Aの各々は、2本の線路からなる伝送路としての性質も有する。第1実施形態における出力整合回路100(
図1参照)においては、線路101、102p間の交差方向Yにおける距離を変化させることで、伝送路の特性インピーダンスを制御できる。より具体的には、交差線路102c1、102c2の長さを変化させることでインダクタンスを調整し、伝送路の特性インピーダンスを大きく変化させることができる。一方、第2実施形態における出力整合回路100A(
図6参照)においては、線路101、102p間の交差方向Yにおける距離と、線路101、102b2間の交差方向Yにおける距離と、の2つの距離を変化させることで、伝送路の特性インピーダンスを制御できる。
【0133】
ここで、第2実施形態において線路101、102pが並走する区間(第1区間)、および線路101、102b2が並走する区間(第2区間)の各々の長さ(長手方向Xにおける寸法)は、第1実施形態において線路101、102pが並走する区間の長さよりも短い(
図1および
図6参照)。したがって、第2実施形態においては、第1実施形態と比較して、伝送路として機能する各区間(第1区間、第2区間)の長さを、高周波信号の波長に対して十分に短くしやすくなる。したがって、第2実施形態においては、第1実施形態と比較して、集中定数のような効果(例えばインダクタンス)をより期待することができる。
【0134】
なお、第1実施形態に係る出力整合回路100においても、線路101、102pの長さを十分に短くすることで上記と同様の効果が期待される。しかしながら、例えば周辺回路の配置に関する制約等に起因して、第1実施形態における線路101、102pの長さを十分に短くすることが困難となる場合がある。このような場合、第2実施形態の構成、すなわち、リターン線路102Aが屈曲線路102bを含む構成が好適である。
【0135】
≪小括≫
以上説明したように、本実施形態に係るリターン線路102Aは、平面視において、信号線路101の一方の端部付近から交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかるように延びる第1交差線路102c1と、第1交差線路102c1の一方の端部から信号線路101と平行に延び、信号線路101の長さよりも短い平行線路102pと、平行線路102pの一方の端部に接続され、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように第1交差線路102c1の長さよりも短く延びてから第1交差線路102c1から遠ざかるように信号線路101と平行に延びる屈曲部CRが形成された屈曲線路102bと、を含む。この構成によっても、交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかる方向に凸状となるリターン線路102Aを実現できる。
【0136】
<第3実施形態>
≪概要≫
次に、第3実施形態について説明するが、第2実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、デジタル移相回路Bの構成および出力伝送線路90の構成は第2実施形態と同様であるため、これらについては説明を省略する。
【0137】
≪出力整合回路≫
図7に示すように、本実施形態に係る出力整合回路100Bは、第2実施形態に係る出力整合回路100Aと比較して、リターン線路102Bの形状が異なる。本実施形態に係るリターン線路102Bは、シフト線路102s、第1交差線路102c1、平行線路102p、屈曲線路102b、および第2交差線路102c2を含む。これらのうち、シフト線路102sの形状は第2実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0138】
本実施形態に係る第1交差線路102c1は、第2実施形態と同様に、シフト線路102sの一端(+X側)に接続された帯状導体である。本実施形態に係る第1交差線路102c1には、第2実施形態とは異なり、屈曲部CR1が形成されており、信号線路101に近い側(例えば、Y方向における第1交差線路102c1の中点の位置よりも信号線路101側)がクランク形状である。第1交差線路102c1は、平面視において、シフト線路102sの一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかるように延び、屈曲部CR1において右側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路101から遠ざかるように延びている。第1交差線路102c1の一端(+Y側)には、第2実施形態と同様に、平行線路102pが接続されている。
【0139】
本実施形態に係る平行線路102pは、第2実施形態と同様に、第1交差線路102c1の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。ただし、本実施形態に係る平行線路102pの長さは第2実施形態に係る平行線路102pの長さよりも短い。
【0140】
本実施形態に係る屈曲線路102bは、第2実施形態と同様に、平行線路102pの一端(+X側)から手前側(-Y側)に延びる部分線路102b1と、部分線路102b1の一端(-Y側)から右側(+X側)に延びる部分線路102b2と、からなる。ただし、本実施形態に係る部分線路102b2の長さは第2実施形態に係る部分線路102b2の長さよりも短い。
【0141】
本実施形態に係る第2交差線路102c2は、第2実施形態と同様に、屈曲線路102bを構成する部分線路102b2の一端(+X側)に接続された帯状導体である。本実施形態に係る第2交差線路102c2には、第2実施形態とは異なり、屈曲部CR2が形成されており、信号線路101に近い側(例えば、Y方向における第2交差線路102c2の中点の位置よりも信号線路101側)がクランク形状である。第2交差線路102c2は、平面視において、屈曲線路102bを構成する部分線路102b2の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延び、屈曲部CR2において右側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延びている。第2交差線路102c2の手前側の端縁(-Y側)は、第2実施形態と同様に、出力伝送線路90が有するグランド層92の奥側の側縁(+Y側)に接続されている。
【0142】
≪作用≫
以上説明した本実施形態に係るリターン線路102Bは、第1実施形態および第2実施形態と同様に、奥側(+Y側)に凸となるループ線路を構成している。したがって、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0143】
また、第3実施形態に係る出力整合回路100Bは、第1、第2実施形態における出力整合回路100、100Aと同様に、2本の線路からなる伝送路としての性質も有する。第3実施形態に係る出力整合回路100B(
図7参照)においては、線路101、102p間の交差方向Yにおける距離と、線路101、102b2間の交差方向Yにおける距離と、第2交差線路102c2のうち長手方向Xに延びる部分と信号線路101との間の交差方向Yにおける距離と、の3つの距離を変化させることで、伝送路の特性インピーダンスを制御できる。
【0144】
ここで、第3実施形態において線路101、102pが並走する区間(第1区間)、および線路101、102b2が並走する区間(第2区間)の各々の長さ(長手方向Xにおける寸法)は、第1、第2実施形態における各区間の長さよりも短い(
図1、
図6、および
図7参照)。したがって、第3実施形態においては、第1、第2実施形態と比較して、集中定数のような効果(例えばインダクタンス)をさらに期待することができる。
【0145】
<第4実施形態>
≪概要≫
次に、第4実施形態について説明するが、第3実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、デジタル移相回路Bの構成および出力伝送線路90の構成は第3実施形態と同様であるため、これらについては説明を省略する。
【0146】
≪出力整合回路≫
図8に示すように、本実施形態に係る出力整合回路100Cは、第3実施形態に係る出力整合回路100Bと比較して、リターン線路102Cの形状が異なる。本実施形態に係るリターン線路102Cは、シフト線路102s、第1交差線路102c1、平行線路102p、第3交差線路102c3、第2交差線路102c2、およびビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22を含む(
図9も参照)。
【0147】
図9は、本実施形態に係るリターン線路102Cの一部を示す斜視図である。
図8および
図9に示すように、リターン線路102Cは、第1リターン線路部102L1と、第2リターン線路部102L2と、を含む。
図8および
図9に示すように、第1リターン線路部102L1は、シフト線路102sと、第1交差線路102c1と、第2交差線路102c2と、ビアパッドVP11、VP12と、を含む。第2リターン線路部102L2は、平行線路102pと、第3交差線路102c3と、ビアパッドVP21、VP22と、を含む。
【0148】
第1リターン線路部102L1は、デジタル移相回路Bの第2中間パッド25b(
図4参照)が形成された層(第1層)に形成されている。第2リターン線路部102L2は、第1リターン線路部102L1が形成された層とは異なる層(第2層)に形成されている。本実施形態において、第2リターン線路部102L2は、第1リターン線路部102L1よりも外層(+Z側の層)に形成されている。
図9に示すように、第1リターン線路部102L1と第2リターン線路部102L2とは、複数のビア103を介して電気的に接続されている。
【0149】
つまり、リターン線路102Cは、互いに異なる層に形成された第1リターン線路部102L1と第2リターン線路部102L2とがビア103によって接続された三次元の構造である。詳細は後述するが、リターン線路102Cを三次元の構造とするのは、リターン線路102Cにおけるインダクタンスを大きくするためである。
【0150】
第1交差線路102c1の手前側の端部(-Y側)は、第3実施形態と同様に、シフト線路102sの一端(+X側)に接続されている。この第1交差線路102c1には、第3実施形態と同様に、屈曲部CR1が形成されている。第1交差線路102c1の奥側の端部(+Y側)は、ビア103が接続されるビアパッドVP11とされている(
図9参照)。ビアパッドVP11は、平面視において、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状である。ビアパッドVP11は、複数のビア103を介して第2リターン線路部102L2の一端におけるビアパッドVP21(詳細は後述する)と電気的に接続されている。
【0151】
第2交差線路102c2は、第2リターン線路部102L2の他端と電気的に接続された帯状導体である。この第2交差線路102c2には、第3実施形態と同様に、屈曲部CR2が形成されている。第2交差線路102c2は、平面視において、第2リターン線路部102L2の他端と重なる部分が右側(+X側)に延び、該重なる部分の他端(+X端)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延び、屈曲部CR2において右側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延びている。
【0152】
第2交差線路102c2の奥側の端部(+Y側)は、ビア103が接続されるビアパッドVP12とされている(
図9参照)。ビアパッドVP12は、平面視において、長辺が長手方向Xに延び、短辺が交差方向Yに延びる長方形状である。第2交差線路102c2のビアパッドVP12は、複数のビア103を介して第2リターン線路部102L2の他端におけるビアパッドVP22(詳細は後述する)と電気的に接続されている。
【0153】
第2リターン線路部102L2は、平行線路102p(幅狭線路部)と第3交差線路102c3(幅狭線路部)とを有し、一端がビアパッドVP21とされ、他端がビアパッドVP22とされた帯状導体である。平行線路102pは、ビアパッドVP21の一端(+Y側)に接続された直線状の帯状導体である。平行線路102pは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する導体である。平行線路102pは、ビアパッドVP21の一端(+Y側)から、信号線路101と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における平行線路102pは、ビアパッドVP21の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。平行線路102pの長さは信号線路101の長さより短い。
【0154】
第3交差線路102c3は、平行線路102pの他端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延び、ビアパッドVP22の一端(-X側)に接続された直線状の帯状導体である。第3交差線路102c3は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する導体である。第3交差線路102c3の長さは第1交差線路102c1の長さより短い。第3交差線路102c3とビアパッドVP22とによって屈曲部CRが形成されている。
【0155】
平行線路102pおよび第3交差線路102c3の幅は、ビアパッドVP21、VP22の幅(短辺の長さ)よりも狭い。つまり、第2リターン線路部102L2は、幅が他の部分よりも小さい幅狭線路部である平行線路102pおよび第3交差線路102c3を備える。言い換えると、第2リターン線路部102L2のビアパッドVP21、VP22以外の部分(平行線路102pおよび第3交差線路102c3)は、幅がビアパッドVP21、VP22の幅よりも小さい幅狭線路部とされている。
【0156】
ビアパッドVP21は、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状である。ビアパッドVP21は、上下方向ZにおいてビアパッドVP11と重なるように配置されている。ビアパッドVP21と、ビアパッドVP11とは、複数のビア103によって電気的に接続されている。ビアパッドVP22は、長辺が長手方向Xに延び、短辺が交差方向Yに延びる長方形状である。ビアパッドVP22は、上下方向ZにおいてビアパッドVP12と重なるように配置されている。ビアパッドVP22と、ビアパッドVP12とは、複数のビア103によって電気的に接続されている。
【0157】
ビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22において、ビア103は、ビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22の長辺に沿ってそれぞれ配列されている。具体的に、ビア103は、ビアパッドVP11、VP21において、交差方向Yに沿うように配列されており、ビアパッドVP12、VP22において、長手方向Xに沿うように配列されている。つまり、第2リターン線路部102L2の両端におけるビア103は、配列方向が互いに直交するように配列されている。
【0158】
≪作用≫
以上説明した本実施形態に係るリターン線路102Cは、第1実施形態~第3実施形態と同様に、奥側(+Y側)に凸となるループ線路を構成している。したがって、第1実施形態~第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0159】
さらに、本実施形態において、リターン線路102Cは、互いに異なる層に形成された第1リターン線路部102L1と第2リターン線路部102L2とがビア103によって接続された三次元構造である(
図9参照)。ビア103自体がインダクタンスを有するため、リターン線路102Cを上記の三次元構造とすることで、リターン線路102Cのインダクタンスをさらに増大させることができる。また、第2リターン線路部102L2のビアパッドVP21、VP22以外の部分(平行線路102pおよび第3交差線路102c3)は、幅がビアパッドVP21、VP22の幅よりも小さい幅狭線路部とされている。これによっても、リターン線路102Cのインダクタンスを増大させることができる。
【0160】
≪小括≫
以上説明したように、本実施形態に係るリターン線路102Cは、第1層に形成された第1リターン線路部102L1と、ビア103を介して第1リターン線路部102L1と電気的に接続され、第1層とは異なる第2層に形成された第2リターン線路部102L2と、を含み、第1リターン線路部102L1および第2リターン線路部102L2は、1つのループを構成し、平面視において端部(ビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22)のみが重なるように配置されており、当該端部(ビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22)がビア103を介して電気的に接続されている。この構成により、リターン線路102Cのインダクタンスをさらに増大させることができる。
【0161】
<第5実施形態>
≪概要≫
次に、第5実施形態について説明するが、第4実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、デジタル移相回路Bの構成および出力伝送線路90の構成は第4実施形態と同様であるため、これらについては説明を省略する。
【0162】
≪出力整合回路≫
図10に示すように、本実施形態に係る出力整合回路100Dは、第4実施形態に係る出力整合回路100Cと比較して、リターン線路102Dの形状が異なる。本実施形態に係るリターン線路102Dは、シフト線路102s、第1交差線路102c1、第4交差線路102c4、平行線路102p、第5交差線路102c5、第2交差線路102c2、およびビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22を含む(
図11も参照)。
【0163】
また、本実施形態に係るリターン線路102Dのうちシフト線路102s以外の部分は、X方向に関してほぼ線対称の形状(あるいは、概ね線対称の形状)とされている。なお、リターン線路102Dは、X方向に関して厳密に線対称の形状である必要は必ずしもなく、形状が多少異なっていてもよい。
【0164】
図11は、本実施形態に係るリターン線路102Dの一部を示す斜視図である。
図10および
図11に示すように、本実施形態に係るリターン線路102Dは、(シフト線路102sを除き)X方向に関してほぼ線対称の形状とされた第1リターン線路部102L1と、X方向に関して線対称の形状とされた第2リターン線路部102L2と、を含む。本実施形態に係る第1リターン線路部102L1は、シフト線路102sと、第1交差線路102c1と、第2交差線路102c2と、ビアパッドVP11、VP12と、を含む。本実施形態に係る第2リターン線路部102L2は、第4交差線路102c4と、平行線路102pと、第5交差線路102c5と、ビアパッドVP21、VP22と、を含む。
【0165】
第1リターン線路部102L1の第1交差線路102c1は、第4実施形態における第1交差線路102c1と同様に、屈曲部CR1が形成された帯状導体である。本実施形態における第1交差線路102c1は、一定の幅である。
【0166】
第1交差線路102c1の奥側の端部(+Y側)は、ビア103が接続されるビアパッドVP11とされている(
図11参照)。ビアパッドVP11は、平面視において、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状である。ビアパッドVP11は、複数のビア103を介して第2リターン線路部102L2の一端におけるビアパッドVP21(詳細は後述する)と電気的に接続されている。
【0167】
第1リターン線路部102L1の第2交差線路102c2は、X方向に関して第1交差線路102c1とほぼ線対称の形状の帯状導体である。本実施形態における第2交差線路102c2は、一定の幅である。
【0168】
第2交差線路102c2の奥側の端部(+Y側)は、ビア103が接続されるビアパッドVP12とされている(
図11参照)。ビアパッドVP12は、平面視において、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状である。ビアパッドVP12は、複数のビア103を介して第2リターン線路部102L2の他端におけるビアパッドVP22(詳細は後述する)と電気的に接続されている。
【0169】
第2リターン線路部102L2は、平行線路102p、第4交差線路102c4、および第5交差線路102c5を有し、一端がビアパッドVP21とされ、他端がビアパッドVP22とされた帯状導体である。平行線路102pは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する導体である。本実施形態における平行線路102pは、平面視において、第1交差線路102c1の奥側における端部の左側の側縁(-X側)から第2交差線路102c2の奥側における端部の右側の側縁(+X側)まで延びている。
【0170】
第4交差線路102c4は、平行線路102pの一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延び、手前側(-Y側)の端部がビアパッドVP21(
図11参照)とされた直線状の帯状導体である。第5交差線路102c5は、平行線路102pの他端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路101に近づくように延び、手前側(-Y側)の端部がビアパッドVP22(
図11参照)とされた直線状の帯状導体である。なお、平行線路102pは、第4交差線路102c4および第5交差線路102c5よりも幅が狭く、第4交差線路102c4および第5交差線路102c5は、長さが同じである。平行線路102pの幅が、第4交差線路102c4および第5交差線路102c5の幅よりも狭いのは、リターン線路102Dのインダクタンスを増大させるためである。
【0171】
ビアパッドVP21は、平面視において、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状である。ビアパッドVP21は、上下方向ZにおいてビアパッドVP11と重なるように配置されている。ビアパッドVP21と、ビアパッドVP11とは、複数のビア103によって電気的接続されている。ビアパッドVP22は、平面視において、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状である。ビアパッドVP22は、上下方向ZにおいてビアパッドVP12と重なるように配置されている。ビアパッドVP22と、ビアパッドVP12とは、複数のビア103によって電気的に接続されている。
【0172】
ビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22において、ビア103は、ビアパッドVP11、VP12、VP21、VP22の長辺に沿ってそれぞれ配列されている。具体的に、ビア103は、ビアパッドVP11、VP21およびビアパッドVP12、VP22において、交差方向Yに沿うように配列されている。つまり、第2リターン線路部102L2の両端におけるビア103は、配列方向が互いに平行になるように配列されている。
【0173】
≪作用≫
以上説明した本実施形態に係るリターン線路102Dは、第1実施形態~第4実施形態と同様に、奥側(+Y側)に凸となるループ線路を構成している。したがって、第1実施形態~第4実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、本実施形態に係るリターン線路102Dは、第4実施形態と同様に、互いに異なる層に形成された第1リターン線路部102L1と第2リターン線路部102L2とがビア103によって接続された三次元構造である。したがって、第4実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0174】
さらに、本実施形態では、
図10および
図11に示す通り、ビアパッドVP11とビアパッドVP12とを、いわばU字形状の第2リターン線路部102L2で接続するようにしている。また、平行線路102pの幅が、第4交差線路102c4および第5交差線路102c5の幅よりも狭い。これにより、リターン線路102Dのインダクタンスをさらに増大させることができる。
【0175】
なお、本発明の技術的範囲は上記第1実施形態~第5実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0176】
<第1変形例~第4変形例>
≪概要≫
例えば、上記第1実施形態~第5実施形態においては、出力整合回路100~100Dが有する第2交差線路102c2の手前側の端縁(-Y側)と出力伝送線路90が有するグランド層92の奥側の側縁(+Y側)とが接続されることで、リターン線路102~102Dと出力側接地導体(上記第1実施形態~第5実施形態においてはグランド層92)との電気的接続が実現されていた。しかしながら、リターン線路102~102Dと出力側接地導体との電気的接続の具体的態様はこれに限られず、適宜変更可能である。また、上記第1実施形態~第5実施形態においては、出力伝送線路90がマイクロストリップ線路を構成していたが、出力伝送線路90の構成はこれに限られず、適宜変更可能である。
【0177】
以下に詳述する第1変形例~第4変形例は、リターン線路102~102Dと出力側接地導体との電気的接続の具体的態様と、出力伝送線路90の構成と、に関する変形例である。なお、第1変形例~第4変形例に関し、以下、第1実施形態に係る出力整合回路100を前提とした説明を行う。すなわち、リターン線路102が、シフト線路102sと、第1交差線路102c1と、平行線路102pと、第2交差線路102c2と、を含む場合(
図1参照)について説明を行う。ただし、第1変形例~第4変形例を第2実施形態~第5実施形態に係る出力整合回路100A~100Dに適用してもよい。
【0178】
≪第1変形例≫
図12は、本発明の第1変形例に係る出力整合回路100の一部および出力伝送線路90の一部を示す平面図である。
図13は、
図12に示すXIII-XIII線に沿う断面図である。
図14は、
図12に示すXIV-XIV線に沿う断面図である。
【0179】
図12に示すように、第1変形例に係る出力整合回路100は、上述した各線路(第2交差線路102c2等)に加えて、接地導体104と、一対のパッド105a、105bと、をさらに有する。
【0180】
一対のパッド105a、105bのうち、第1パッド105aは、
図12に示すように、第2交差線路102c2の手前側の端縁(-Y側)に接続された長方形状の平板導体である。第1パッド105aの長辺は交差方向Yに延びており、第1パッド105aの短辺は長手方向Xに延びている。
図13に示すように、第1パッド105aは、第2交差線路102c2が形成された層に形成されている。
【0181】
一対のパッド105a、105bのうち、第2パッド105bは、
図12に示すように、信号線路91から見て第1パッド105aとはY方向における反対側に設けられた長方形状の平板導体である。第2パッド105bの長辺は交差方向Yに延びており、第2パッド105bの短辺は長手方向Xに延びている。
図13に示すように、第2パッド105bは、第2交差線路102c2および第1パッド105aが形成された層に形成されている。
【0182】
接地導体104は、
図12に示すように、長手方向Xおよび交差方向Yに延在する板状の導体である。接地導体104は、
図13および
図14に示すように、一対のパッド105a、105bおよびグランド層92から所定距離隔てた下方に配置されている。
【0183】
図12に示すように、接地導体104は、平面視において、一対のパッド105a、105bと重なっている。
図12および
図13に示すように、接地導体104は、一対のパッド105a、105bと、複数の接続導体50を介して接続されている。また、
図12に示すように、接地導体104は、平面視において、グランド層92の左側(-X側)端部と重なっている。
図12および
図14に示すように、接地導体104は、グランド層92の左側(-X側)端部に対して、複数の接続導体50を介して電気的に接続されている。
【0184】
つまり、第1変形例においては、出力整合回路100のリターン線路102と出力伝送線路90の出力側接地導体(グランド層92)とが、第1パッド105a、接地導体104、および複数の接続導体50を介して電気的に接続されている。接続導体50はインダクタンスを有するため、このような接続態様とすることで、接続導体50が有するインダクタンスの分だけリターン線路102を短くすることができる。これにより、出力整合回路100の小型化を図ることができる。
【0185】
≪第2変形例≫
図15は、本発明の第2変形例に係る出力整合回路100の一部および出力伝送線路90の一部を示す平面図である。
【0186】
第2変形例に係る出力整合回路100は、第1変形例に係る接地導体104および一対のパッド105a、105bに加えて、接続部106をさらに有する。
【0187】
接続部106は、第1パッド105aおよびグランド層92が形成された層に形成された導体である。接続部106は、長手方向Xにおける第1パッド105aとグランド層92との間に設けられ、第1パッド105aとグランド層92とを機械的かつ電気的に接続している。このような接続部106を導入することで、第1変形例と比較して、第2交差線路102c2とグランド層92との間で生じる損失を低減することができる。
【0188】
≪第3変形例≫
図16は、本発明の第3変形例に係る出力整合回路100の一部および出力伝送線路90の一部を示す平面図である。
図17は、
図16に示すXVII-XVII線に沿う断面図である。
【0189】
図16に示すように、第3変形例に係る出力整合回路100は、第1変形例に係る出力整合回路100と同一の形状を有する(
図12参照)。第3変形例においても、第1変形例と同様に、出力整合回路100のリターン線路102と出力伝送線路90の出力側接地導体(グランド層92)とが、第1パッド105a、接地導体104、および複数の接続導体50を介して電気的に接続されている。
【0190】
第3変形例に係る出力伝送線路90は、第1変形例とは異なり、いわゆるグランド付きコプレナ線路を構成している。具体的には、
図16および
図17に示すように、第3変形例に係る出力伝送線路90は、第1変形例における信号線路91およびグランド層92に加えて、一対の接地線93a、93bと、一対の中間導体層94a、94bと、をさらに有する。一対の接地線93a、93bは、信号線路91の両側に間隔を空けて配されている。
【0191】
一対の接地線93a、93bのうち、第1接地線93aは、
図16および
図17に示すように、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1接地線93aは、信号線路91と平行に長手方向Xに延び、信号線路91の奥側(+Y側)に位置する。
【0192】
一対の接地線93a、93bのうち、第2接地線93bは、
図16および
図17に示すように、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1接地線93aは、信号線路91と平行に長手方向Xに延び、信号線路91の手前側(-Y側)に位置する。
【0193】
一対の中間導体層94a、94bのうち、第1中間導体層94aは、
図17に示すように、上下方向Zにおいて第1接地線93aとグランド層92との間に位置する。また、第1中間導体層94aは、第1接地線93aおよびグランド層92の双方から所定距離隔てた位置に配置されている。
【0194】
第1接地線93aと第1中間導体層94aとは、接続導体50によって接続されている。また、第1中間導体層94aとグランド層92とは、接続導体50によって接続されている。これにより、グランド層92は、接続導体50および第1中間導体層94aを介して、第1接地線93aに対して接続されている。
【0195】
詳細な図示は省略するが、第1中間導体層94aは、第1接地線93aに沿って長手方向Xに延びている。また、第1接地線93aと第1中間導体層94aとを接続する接続導体50は複数設けられており、第1接地線93aに沿って配列されている。同様に、第1中間導体層94aとグランド層92とを接続する接続導体50は複数設けられており、第1中間導体層94aに沿って配列されている。
【0196】
一対の中間導体層94a、94bのうち、第2中間導体層94bは、
図17に示すように、上下方向Zにおいて第2接地線93bとグランド層92との間に位置する。また、第2中間導体層94bは、第2接地線93bおよびグランド層92の双方から所定距離隔てた位置に配置されている。
【0197】
第2接地線93bと第2中間導体層94bとは、接続導体50によって接続されている。また、第2中間導体層94bとグランド層92とは、接続導体50によって接続されている。これにより、グランド層92は、接続導体50および第2中間導体層94bを介して、第2接地線93bに対して接続されている。
【0198】
詳細な図示は省略するが、第2中間導体層94bは、第2接地線93bに沿って長手方向Xに延びている。また、第2接地線93bと第2中間導体層94bとを接続する接続導体50は複数設けられており、第2接地線93bに沿って配列されている。同様に、第2中間導体層94bとグランド層92とを接続する接続導体50は複数設けられており、第2中間導体層94bに沿って配列されている。
【0199】
≪第4変形例≫
図18は、本発明の第4変形例に係る出力整合回路100の一部および出力伝送線路90の一部を示す平面図である。
図19は、
図18に示すXIX-XIX線に沿う断面図である。
【0200】
図18に示すように、第4変形例に係る出力伝送線路90は、第3変形例に係る出力伝送線路90と同一の形状を有する(
図16参照)。第4変形例においても、第3変形例と同様に、出力整合回路100のリターン線路102と出力伝送線路90の出力側接地導体(グランド層92)とが、第1パッド105a、接地導体104、および複数の接続導体50を介して電気的に接続されている。
【0201】
第4変形例に係る出力整合回路100は、
図18および
図19に示すように、第3変形例に係る接地導体104および一対のパッド105a、105bに加えて、一対の上側パッド107a、107b(第1上側パッド107a、第2上側パッド107b)、および一対の中間パッド108a、108b(第1中間パッド108a、第2中間パッド108b)をさらに有する。
【0202】
図19に示すように、第1上側パッド107aおよび第1中間パッド108aは、第1パッド105aの上方に配されている。第1上側パッド107a、第1中間パッド108a、および第1パッド105aは、平面視において互いに重なっている。また、第1上側パッド107a、第1中間パッド108a、第1パッド105aは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0203】
第1上側パッド107aと第1中間パッド108aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド108aと第1パッド105aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、
図18に示すように、第1上側パッド107aは、第1接地線93aが形成された層に形成されており、第1接地線93aの左側の端縁(-X側)に対して電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第1接地線93aと第2交差線路102c2とが、第1上側パッド107a、第1中間パッド108a、第1パッド105aおよび接続導体50を介して電気的に接続されている(
図19も参照)。
【0204】
図19に示すように、第2上側パッド107bおよび第2中間パッド108bは、第2パッド105bの上方に配されている。第2上側パッド107b、第2中間パッド108b、および第2パッド105bは、平面視において互いに重なっている。また、第2上側パッド107b、第2中間パッド108b、第2パッド105bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0205】
第2上側パッド107bと第2中間パッド108bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド108bと第2パッド105bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、
図18に示すように、第2上側パッド107bは、第2接地線93bが形成された層に形成されており、第2接地線93bの左側の端縁(-X側)に対して電気的かつ機械的に接続されている。
【0206】
<第5変形例~第7変形例>
≪概要≫
以下に詳述する第5変形例~第7変形例は、第1変形例~第4変形例と同様に、リターン線路102~102Dと出力側接地導体との電気的接続の具体的態様と、出力伝送線路90の構成と、に関する変形例である。ただし、第5変形例~第7変形例に係るリターン線路102´(例えば、シフト線路102s´、第1交差線路102c1´、平行線路102p´、および第2交差線路102c2´)は、第1変形例~第4変形例に係るリターン線路102とは異なり、信号線路10、101、91が形成された層に形成されている(
図20参照)。シフト線路102s´は、デジタル移相回路Bの上側パッド25に接続されている。なお、第5変形例~第7変形例に関しても、以下、第1実施形態に係る出力整合回路100を前提とした説明を行う。ただし、第5変形例~第7変形例を第2実施形態~第5実施形態に係る出力整合回路100A~100Dに適用してもよい。
【0207】
≪第5変形例≫
図20は、第5変形例に係るデジタル移相回路Bの一部、出力整合回路100´、および出力伝送線路90を示す平面図である。
図21は、
図20に示すXXI-XXI線に沿う断面図である。なお、
図20においては、デジタル移相回路Bのうち、信号線路10、上側パッド24、25、および第2接地導体32以外の構成の図示を省略している。
【0208】
図20に示すように、第5変形例に係る出力伝送線路90は、第1実施形態と同様に信号線路91およびグランド層92を有し、マイクロストリップ線路を構成している(
図1参照)。
【0209】
図20および
図21に示すように、第5変形例に係る出力整合回路100´は、上述した各線路(第2交差線路102c2´等)に加えて、一対のパッド105a´、105b´と、一対の中間パッド109a、109bと、複数の接続導体50と、をさらに有する。
【0210】
一対のパッド105a´、105b´のうち、第1パッド105a´は、
図20に示すように、第2交差線路102c2´の手前側の端縁(-Y側)に接続された長方形状の平板導体である。第1パッド105a´の長辺は交差方向Yに延びており、第1パッド105a´の短辺は長手方向Xに延びている。
図21に示すように、第1パッド105a´は、第2交差線路102c2´および信号線路91が形成された層に形成されている。
【0211】
一対のパッド105a´、105b´のうち、第2パッド105b´は、
図20に示すように、信号線路91から見て第1パッド105a´とはY方向における反対側に設けられた長方形状の平板導体である。第2パッド105b´の長辺は交差方向Yに延びており、第2パッド105b´の短辺は長手方向Xに延びている。
図21に示すように、第2パッド105b´は、第2交差線路102c2´、第1パッド105a´、および信号線路91が形成された層に形成されている。
【0212】
一対の中間パッド109a、109bのうち、第1中間パッド109aは、
図21に示すように、第1パッド105a´の下方に配されている。第1パッド105a´および第1中間パッド109aは、平面視において互いに重なっている。また、第5変形例に係るグランド層92には、
図20および
図21に示すように、グランド層92の左側(-X側)端部において奥側(+Y側)に向けて突出し、平面視において第1パッド105a´および第1中間パッド109aの少なくとも一部と重なる第1突出部92aが設けられている。
図21に示すように、第1パッド105a´、第1中間パッド109a、およびグランド層92は上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0213】
第1パッド105a´と第1中間パッド109aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド109aとグランド層92(第1突出部92a)とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第2交差線路102c2´と、出力伝送線路90の接地導体(出力側接地導体)であるグランド層92とが、第1パッド105a´、第1中間パッド109a、および接続導体50を介して電気的に接続されている。
【0214】
一対の中間パッド109a、109bのうち、第2中間パッド109bは、
図21に示すように、第2パッド105b´の下方に配されている。第2パッド105b´および第2中間パッド109bは、平面視において互いに重なっている。また、第5変形例に係るグランド層92には、
図20および
図21に示すように、グランド層92の左側(-X側)端部において手前側(-Y側)に向けて突出し、平面視において第2パッド105b´および第2中間パッド109bの少なくとも一部と重なる第2突出部92bが設けられている。
図21に示すように、第2パッド105b´、第2中間パッド109b、およびグランド層92は上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0215】
第2パッド105b´と第2中間パッド109bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド109bとグランド層92(第2突出部92b)とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。
【0216】
ただし、出力整合回路100´は、第2パッド105b´および第2中間パッド109b、ならびに、それらを接続する接続導体50を有していなくてもよい。この場合、グランド層92に第2突出部92bが設けられていなくてもよい。
【0217】
≪第6変形例≫
図22は、本発明の第6変形例に係る出力整合回路100´の一部および出力伝送線路90の一部を示す平面図である。
図23は、
図22に示すXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
【0218】
図22および
図23に示すように、第6変形例に係る出力伝送線路90は、第3変形例と同様に、グランド付きコプレナ線路を構成している(
図16参照)。つまり、第6変形例に係る出力伝送線路90は、信号線路91と、グランド層92と、一対の接地線93a、93bと、一対の中間導体層94a、94bと、複数の接続導体50と、を有する。
図23に示すように、複数の接続導体50は、グランド層92と、第1接地線93aと、第1中間導体層94aと、を電気的に接続し、グランド層92と、第2接地線93bと第2中間導体層94bと、を電気的に接続する。
【0219】
図22および
図23に示すように、第6変形例においては、第2交差線路102c2´の手前側の端縁(-Y側)が、出力伝送線路90が有する第1接地線93aの奥側の側縁(+Y側)に接続されている。したがって、第2交差線路102c2´を含むリターン線路102´は、出力伝送線路90が有するグランド層92(出力側接地導体)と、第1接地線93a、第1中間導体層94a、および複数の接続導体50を介して電気的に接続されている。
【0220】
≪第7変形例≫
図24は、本発明の第7変形例に係る出力整合回路100´の一部および出力伝送線路90の一部を示す平面図である。
図25は、
図24に示すXXV-XXV線に沿う断面図である。
【0221】
図24に示すように、第7変形例は、第6変形例においてグランド層92および中間導体層94a、94b(
図24において図示略)の形状のみを変更したものである(
図22参照)。具体的に、第7変形例に係るグランド層92および中間導体層94a、94bは、出力伝送線路90の左側(-X側)の端部のみに位置しており、信号線路91および接地線93a、93bに沿って長手方向Xに延在していない(中間導体層94a、94bについては図示略)。
【0222】
したがって、グランド層92および中間導体層94a、94bが配置された左側(-X側)の端部を除き、出力伝送線路90は、コプレナ線路を構成している(
図25参照)。第7変形例において、第2交差線路102c2´を含むリターン線路102´は、出力伝送線路90の出力側接地導体(第7変形例においては接地線93a、93b)と、グランド層92、中間導体層94a、94b、および接続導体50を介して電気的に接続されている。
【0223】
<その他の変形例>
以下、その他の変形例について説明する。
【0224】
例えば、デジタル移相回路Bが有するループ線路RPの形状は、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかる方向に凸状となるループ状であれば適宜変更可能である。また、
図1等において図示されたデジタル移相回路Bの入力端(左側(-X側)端部)に、1つ以上のデジタル移相回路Bが縦続接続されていてもよい。すなわち、接続構造Aは、複数のデジタル移相回路Bが長手方向Xに縦続接続された接続列を有していてもよい。そして、当該接続列の出力端(右側(+X側)端部)に、出力整合回路100が接続されていてもよい。
【0225】
また、例えば第3変形例に係る出力伝送線路90(
図16および
図17参照)は、上述したグランド層92(下側グランド層)に加えて、信号線路91および一対の接地線93a、93bから所定距離隔てた上方に配置された上側グランド層を有していてもよい。すなわち、出力伝送線路90は、信号線路91が2つのグランド層で挟まれたトリプレート線路構造を形成していてもよい。あるいは、出力伝送線路90は、上側グランド層および下側グランド層のうち一方のみを有していてもよい。すなわち、信号線路91および一対の接地線93a、93bの上方および下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。そして、配置されたグランド層(出力側接地導体)に対して、リターン線路102が電気的に接続されていればよい。
【0226】
また、図示の例において、出力伝送線路90は長手方向Xに直線状に延在していたが、出力伝送線路90は平面視において屈曲していてもよい。
【0227】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0228】
B…デジタル移相回路 10…信号線路(回路側信号線路) 21…第1線路 21p1…第1平行線路 22…第2線路 22p2…第2平行線路 RP…ループ線路 31…第1接地導体 32…第2接地導体 41…第1電子スイッチ 42…第2電子スイッチ 90…出力伝送線路 91…信号線路(出力側信号線路) 92…グランド層(出力側接地導体) 93a、93b…接地線(出力側接地導体) 100、100´、100A、100B、100C、100D…出力整合回路 101…信号線路 102…リターン線路 102c1…第1交差線路 102p…平行線路 102c2…第2交差線路 102b…屈曲線路 102L1…第1リターン線路部 102L2…第2リターン線路部 103…ビア X…長手方向 Y…交差方向
【要約】
【課題】デジタル移相回路および出力伝送線路が複数の導体によって構成されている場合であっても入出力インピーダンスを実数負荷に整合可能な出力整合回路を提供する。
【解決手段】出力整合回路は、回路側信号線路と第1線路、ループ線路を含む第2線路、第1接地導体、第2接地導体、第1電子スイッチ、および第2電子スイッチを備えるデジタル移相回路と、出力側信号線路および出力側接地導体を備える出力伝送線路と、を電気的に接続する出力整合回路であって、前記回路側信号線路および前記出力側信号線路と接続される信号線路と、前記第2接地導体および前記出力側接地導体と電気的に接続されるリターン線路と、を備え、前記リターン線路は、前記信号線路よりも長い。
【選択図】
図1