(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】二官能性化合物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 209/48 20060101AFI20240124BHJP
A61K 31/4035 20060101ALI20240124BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
C07D 493/04 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07D209/48 CSP
A61K31/4035
A61P11/00
A61P35/00
C07D493/04 101D
(21)【出願番号】P 2023507296
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2021109492
(87)【国際公開番号】W WO2022022669
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523033626
【氏名又は名称】バイオフロント セラピューティクス (ベイジン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOFRONT THERAPEUTICS (BEIJING) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 16, Beilun Industrial Park 9 North Yongteng Road, Haidian District Beijing 100094, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】マ テンウェイ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-533152(JP,A)
【文献】特表2018-535259(JP,A)
【文献】特表2001-504457(JP,A)
【文献】国際公開第2012/083153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)で表される化合物であって、
-X-は、
エステル結合、アミド結合、又は存在せず、
L
1は、
-C(CH
3
)
2
-CH
2
-ONO
2
、-C(CH
3
)-(CH
2
-ONO
2
)
2
、-(CH
2
)
2
-ONO
2
、-CH-(CH
2
-ONO
2
)
2
、-(CH
2
)
2
-CH-(CH
2
-ONO
2
)
2
、-(CH
2
)
2
-CH(ONO
2
)-CH
2
-ONO
2
、又は
であるが、但し、-X-が存在しない場合には、L
1
は、
であることを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記化合物は、
である、ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、
である、ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、
である、ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項6】
対象におけるホスホジエステラーゼ(PDE)関連疾患を治療又は予防するための請求項
5に記載の
組成物。
【請求項7】
急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療又は予防するための請求項
5に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2020年7月30日に出願された米国仮出願第63/058,512号に対する優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、一般に、二官能性化合物及び使用方法に関し、特に、一酸化窒素(NO)を放出し、ホスホジエステラ-ゼ(PDE)の活性を阻害することができる化合物、及び該化合物を使用して疾患又は障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
急性肺損傷(ALI)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、それらの罹患率と死亡率が高いため、臨床的に重要な疾患である。ARDSは、急速に進行する肺水腫、低下した肺コンプライアンス、及び低酸素血症を特徴とする呼吸不全の一般的な原因である。ARDSは、ウイルス性及び細菌性肺炎、神経原性水腫、ウイルス性又は細菌性敗血症(例えば、腹膜、尿路、又は軟部組織からの感染源による)、膵炎、移植後の移植片機能不全などを含む、感染、損傷、又は外傷によって引き起こされることがよくある。さらに、ARDSは、重症インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1(SARS-CoV-1)、中東呼吸器症候群(MERS)、SARS-CoV-2など、重度のウイルス感染を繰り返すことによる主な死亡原因の1つである。重度のコロナウイルス病2019(COVID-19)を患う患者は、特に糖尿病、慢性腎臓病、心臓病、及び/又はその他の障害を含む微小血管障害を患う高齢者の間で死亡率が高い。ARDSの治療又は予防のための既存の治療法の有効性は限られている。したがって、ARDSを治療するためのより効果的な治療組成物及び方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、式(I):L1-X-L2(I)で表される化合物が提供される。該化合物は、対象に投与されると、一酸化窒素(NO)を放出し、ホスホジエステラ-ゼ(PDE)の活性を阻害するように構成することができる。L1は、NO放出剤の一部又は全部である官能基を含んでもよい。L2は、PDE阻害剤の一部又は全部である官能基を含んでもよい。-X-は、共有結合、非共有結合、又はL1とL2を連結するビラジカルであってもよい。
【0005】
幾つかの実施形態では、L2は、アプレミラストから誘導することができる。
【0006】
【0007】
幾つかの実施形態では、L1は、-C(CH3)2-CH2-ONO2であってもよい。
【0008】
幾つかの実施形態では、L1は、-C(CH3)-(CH2-ONO2)2であってもよい。
【0009】
本開示の別の態様によれば、式(II)で表される化合物が提供される。-X-は、共有結合、非共有結合、又はビラジカルであってもよい。L
1は、一酸化窒素(NO)放出剤の一部又は全部である官能基を含んでもよい。
【0010】
幾つかの実施形態では、Xは、O、C、N、S、又はPを含んでもよい。
【0011】
幾つかの実施形態では、Xは、0~10個の原子を含んでもよい。
【0012】
幾つかの実施形態では、-X-は、エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルファ-ト結合、ホスホルアミド結合、ホスファ-ト結合、ケトン結合、又はアリ-レン基を含んでもよい。
【0013】
幾つかの実施形態では、L1は、1つ又は複数の-ONO2基を含んでもよい。
【0014】
幾つかの実施形態では、L1は、-C(CH3)2-CH2-ONO2であってもよい。
【0015】
【0016】
【0017】
幾つかの実施形態では、L1は、-C(CH3)-(CH2-ONO2)2であってもよい。
【0018】
【0019】
【0020】
幾つかの実施形態では、NO放出剤は、ニトログリセリン(GTN)、二硝酸イソソルビド(ISDN)、又は四硝酸ペンタエリスリト-ル(PETN)であってもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、化合物は、対象に投与されると、NOを放出し、ホスホジエステラ-ゼ(PDE)の活性を阻害するように構成することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、PDEは、PDE4を含んでもよい。
【0023】
本開示の別の態様によれば、上記のいずれかの化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物が提供される。
【0024】
幾つかの実施形態では、組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、ミセル、液体、懸濁液、クリ-ム、フォ-ム、ゲル、ロ-ション、ペ-スト、又は軟膏として調剤することができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、組成物は、経口投与、注射投与、又は局所投与のうちの少なくとも1つを介して対象に投与することができる。
【0026】
本開示の更なる態様によれば、対象におけるホスホジエステラ-ゼ(PDE)関連疾患を治療又は予防するための上記のいずれかの化合物の用途が提供される。
【0027】
本開示の更なる態様によれば、対象における癌を治療又は予防するための上記のいずれかの化合物の用途が提供される。
【0028】
本開示の更なる態様によれば、急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療又は予防するための上記のいずれかの化合物の用途が提供される。
【0029】
幾つかの実施形態では、化合物が対象に投与された後、化合物は、局部組織においてNOを放出し、ホスホジエステラ-ゼ(PDE)の活性を阻害することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、化合物はさらに、調整可能な一酸化窒素放出特性を使用して、血管系又は血管系空間近くへのPDE4阻害剤の送達を調節するように構成されている。
【0031】
本開示のまた別の態様によれば、対象における急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療又は予防するため方法が提供される。この方法は、薬学的に有効な量の上記のいずれかの化合物を対象に投与することを含んでもよい。
【0032】
本開示のまた別の態様によれば、対象におけるホスホジエステラ-ゼ(PDE)関連疾患を治療又は予防する方法が提供される。この方法は、薬学的に有効な量の上記のいずれかの化合物を対象に投与することを含んでもよい。
【0033】
本開示のまた別の態様によれば、対象におけるホスホジエステラ-ゼ-4(PDE4)関連疾患を治療又は予防する方法が提供される。この方法は、薬学的に有効な量の上記のいずれかの化合物を対象に投与することを含んでもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、薬学的に有効な量の化合物を対象に投与することは、化合物を対象に0.01~50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、薬学的に有効な量の化合物を対象に投与することは、化合物を対象に1~50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、薬学的に有効な量の化合物を対象に投与することは、化合物を対象に5~50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Aを阻害するために、720nM未満の半数阻害濃度(IC50)を示すことができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Aを阻害するために、200nM未満の半数阻害濃度(IC50)を示すことができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Cを阻害のために、2.3μM未満の半数阻害濃度(IC50)を示すことができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Cを阻害のために、0.7μM未満の半数阻害濃度(IC50)を示すことができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、化合物が対象に投与された後、対象における血漿硝酸エステルのレベルが上昇する可能性がある。
【0042】
追加の特徴は、一部は以下の説明に記載され、一部は以下及び添付の図面を検討することで当業者に明らかになり、あるいは、実施例の製造又は操作によって学習することができる。本開示の特徴は、以下に論じる詳細な例に記載される方法論、手段、及び組み合わせのさまざまな態様を実践又は使用することによって実現し達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本開示は、例示的な実施形態に関してさらに説明される。これらの例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面は縮尺通りではないことに留意されたい。これらの実施形態は、非限定的な例示的な実施形態であり、図面のいくつかの図を通して、同様の参照番号は同様の構造を表す。
【
図1A】本開示の幾つかの実施形態による、NOを放出することができる例示的な有機硝酸エステルの構造式を示す図である。
【
図1B】本開示の幾つかの実施形態による、NOを放出することができる例示的な有機硝酸エステルの構造式を示す図である。
【
図1C】本開示の幾つかの実施形態による、有機硝酸エステルの一部又は全部である官能基を含むL
1の例示的な構造式を示す図である。
【
図1D】本開示の幾つかの実施形態による、例示的なNO放出剤によるNOの放出を示す図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態による例示的なPDE4阻害剤及びPDE3阻害剤の構造式を示す図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態による新規なNO放出PDE4阻害剤の幾つかの例示的な式を示す図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態による幾つかの例示的な新規なNO放出PDE4阻害剤を示す図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態による化合物-1を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態による化合物-2を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態による化合物-3を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【
図8】本開示の幾つかの実施形態による化合物-4を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【
図9】本開示の幾つかの実施形態による化合物-5を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【
図10】本開示の幾つかの実施形態に従ってマウスに化合物-1を投薬した後に産生された化合物-6の血中レベルを示す分析図である。
【
図11】本開示の幾つかの実施形態に従って、マウスに化合物を投薬してから1時間後の血漿中の硝酸エステルレベルを示す分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の説明は、当業者が本開示を製造及び使用できるようにするために提示され、特定の応用及びその要件のコンテキストで提供される。開示された実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義された一般原則は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用することができる。したがって、本開示は、示された実施形態に限定されず、特許請求の範囲と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0045】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、「一(a)」、「一(an)」及び「前記(the)」という単数形は、文脈がそうではないと明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されてもよい。「備える」及び/又は「備えている」、又は「含む」及び/又は「含んでいる)」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明示するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらのグル-プの存在又は追加を排除しないことがさらに理解される。
【0046】
本開示のこれら及び他の特徴及び特性、並びに、操作の方法及び構造の関連要素の機能、部品の組み合わせ、及び製造の経済性は、すべて本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して以下の説明を考慮すると、より明らかになるであろう。しかしながら、図面は、例示及び説明のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していないことを明確に理解されたい。図面は縮尺通りではないことを理解されたい。
【0047】
本明細書で使用される「約」という用語及び参照数値に関するその文法的等価物及びその文法的等価物は、その値からプラス又はマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の値の範囲など、その値からプラス又はマイナス10%の値の範囲を含むことができる。例えば、「約10」という量は、9から11までの量を含む。
【0048】
本開示の一態様によれば、1つ又は複数の化合物が提供される。代表的な化合物は、対象に投与されると、一酸化窒素(NO)を放出し、ホスホジエステラ-ゼ(PDE)の活性を阻害するように構成することができる。幾つかの実施形態では、対象はヒトである。幾つかの実施形態では、対象は非ヒト動物である。幾つかの実施形態では、対象は雄性である。幾つかの実施形態では、対象は雌性である。幾つかの実施形態では、対象は、疾患又は病的状態を患っている。
【0049】
幾つかの実施形態では、化合物は、式(I)で表することができる。
L1-X-L2 (I)
【0050】
L1は、NO放出剤の一部又は全部である官能基を含んでもよい。L2は、PDE阻害剤の一部又は全部である官能基を含んでもよい。-X-は、結合、又はL1とL2を連結するビラジカルであってもよい。ここで議論されるように、「NO放出剤」は、制御又は非制御の方法でNOを放出することができる薬剤を指す。「PDE阻害剤」は、PDE活性を阻害することができる分子又は薬剤を指す。L1は、化合物が生物活性化を介してNOを放出できるようにする可能性がある。L2は、化合物がPDEの活性を阻害できるようにする可能性がある。幾つかの実施形態では、L1及びL2は、-X-を介して連結することができる。例えば、-X-は、共有結合又は非共有結合であってもよい。非共有結合は、イオン結合、金属結合、水素結合、疎水性相互作用など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。別の例として、-X-は、L1とL2を連結するビラジカルであってもよい。ビラジカルは、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、置換又は未置換の炭化水素基(C1-50鎖など)であってもよい。幾つかの実施形態では、炭化水素基が置換されている場合、炭化水素基は、N、P、S、Oなど、又はそれらの任意の組み合わせなどの1つ又は複数のヘテロ原子によって置換することができる。例えば、置換の炭化水素基は、ヘテロ鎖基(例えば、-NH3、-COOH又は-OH)又は複素環基(例えば、フェノ-ル基、アニリノ基)によって置換することができる。幾つかの実施形態では、-X-は、芳香族部分、縮合芳香族部分、糖、オリゴ糖、エチレングリコ-ル、ポリエチレングリコ-ル、ペプチド結合などであってもよい。
【0051】
一酸化窒素(NO)は、血流及び血行動態の主要な内因性調節因子の1つである。例えば、NOは、血管拡張を促進し、毛細管血流及び低酸素状態での酸素供給を改善することができる。NOはまた、血管系損傷を保護し、血管損傷の修復を助ける可能性がある。NOはまた、ウイルス又は細菌感染を阻害する。しかしながら、体内でのNOの半減期が短く(わずか数ミリ秒)、ウイルスや細菌の感染を治療したり、血管系損傷関連の疾患を修復したりするための外因性NOの使用が大幅に制限される。また、吸入されたNOは、組織への浸透が乏しいため、ARDSに対する有効性が限られている。吸入された高用量のNOは、活性酸素種(ROS)と反応し、有毒な活性窒素種(RNS)代謝産物を形成し、血管系損傷と過度の炎症を引き起こす。
【0052】
L1は、NO放出剤の一部又は全部である官能基を含むため、本発明で開示されている例示的な化合物は、生体内活性化(又は代謝活性化)を介して局部組織においてNOを連続的に放出することができる。例えば、化合物は、デヒドロゲナ-ゼ、グルタチオンS-トランスフェラ-ゼ(GST)、P450などの1つ又は複数のレダクタ-ゼの還元作用により、NOを放出することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、NO放出剤は、有機硝酸エステルであってもよい。有機硝酸エステルは、NOのプロドラッグである。L
1(有機硝酸エステルの一部又は全部である官能基を含むもの)を含む化合物は、生体内活性化を介してNOを連続的に放出することができる。放出されたNOは、近くの組織に浸透することができる。有機硝酸エステルは、アルコ-ル基の硝酸エステルを指す。一般的に使用される有機硝酸エステルは、三硝酸グリセリン(glyceryl trinitrate、GTN)、二硝酸グリセリン(glyceryl dinitrate、GDN)、一硝酸グリセリン(glyceryl mononitrate、GMN)、四硝酸ペンタエリスリト-ル(pentaerythritol tetranitrate、PETN)、三硝酸ペンタエリスリト-ル(pentaerythritol trinitrate、PETriN)、二硝酸ペンタエリスリト-ル(pentaerythritol dinitrate、PEDN)、一硝酸ペンタエリスリト-ル(pentaerythritol mononitrate、PEMN)、二硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate、ISDN)、一硝酸イソソルビド(isosorbide mononitrate、ISMN)、ニコランジル(Nicorandil)、硝酸プロパチル(propatylnitrate)、シニトロジル(Sinitrodil)、テニトラミン(tenitramine)、トロ-ルニトラ-ト(trolnitrate)、などを含む。
図1A~1Bは、本開示の幾つかの実施形態による、NOを放出することができる例示的な有機硝酸エステルの構造式を示す図である。例えば、GDNは、GDN(1、3)、GDN(1、2)などの構造異性体、及び
図1Aに示すような立体異性体を含んでもよい。GMNはまた、幾つかの立体異性体を含んでもよい。別の例として、
図1Bに示すように、PETriN、PEDN、及びPEMNはそれぞれ構造異性体を含んでもよい。L
1はまた、有機硝酸エステルの構造異性体又は立体異性体の一部又は全部である官能基を含んでもよい。
【0054】
幾つかの実施形態では、L
1は、一般式L
3-ONO
2によって表することができる。L
3は、例えば、アリ-ル、ベンジル、又は第1級、第2級、若しくは第3級アルキル基であってもよい。L
3は、無置換であってもよいし、1つ以上のヘテロ原子によって置換されていてもよい。また別の例として、L
3は、飽和でも不飽和でもよい。L
3が不飽和である場合、L
3は、1つ以上の二重結合及び/又は1つ以上の三重結合を含んでもよい。単なる例として、L
3は、置換されていないか、又はN、P、S、Oなどの1つ又は複数のヘテロ原子で置換されているC
1-99炭素鎖であってもよい。例えば、L
3が置換されている場合、L
3は、ヘテロ鎖基(例えば、-NH
3、-COOH又は-OH)又は複素環基(例えば、フェノ-ル基、アニリノ基)によって置換することができる。また別の例として、L
3は分岐又は非分岐であってもよい。幾つかの実施形態では、L
3は、1つ又は複数の-ONO
2基を含んでもよい。
図1Cは、本開示の幾つかの実施形態による、有機硝酸エステルの一部又は全部である官能基を含むL
1の例示的な構造式を示す図である。
図1Bに示すように、R
1-R
12はそれぞれ、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、置換又は未置換の炭化水素基であってもよい。
【0055】
図1Dは、本開示の幾つかの実施形態による、例示的なNO放出剤によるNOの放出を示す図である。NO放出分子は、細胞又は組織における生体内活性化(例えば、レダクタ-ゼによる)を介して1つ又は複数のNO分子を放出できる可能性がある。
図1Dに示すように、GTN分子は、NO分子を放出し、GDN分子に変換することができる。GDN分子は、NO分子を放出し、GMN分子に変換することができる。同様に、ISDN分子は、NO分子を放出し、ISMN分子に変換することができる。
図1Dに示すように、PETN分子は、4つのNO分子を徐々に放出し、PETriN、PEDN、及びPEMNに変換することができる。幾つかの実施形態では、L
1は、NOの放出に関連する複数の官能基を含んでもよい。化合物は、局部組織においてNOを連続的に放出することができる。例えば、L
1は、1個の硝酸エステル基、2個の硝酸エステル基、3個の硝酸エステル基、又は4個の硝酸エステル基を含んでもよい。別の例として、L
1は、5個の硝酸エステル基を含んでもよい。また別の例として、L
1は、無機硝酸塩を含んでもよい。例えば、無機硝酸塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩を含んでもよい。L
1は、ニトラ-ト又は亜硝酸塩であってもよい。
【0056】
3’,5’-環状ヌクレオチドホスホエステラ-ゼ(PDE)は、二次メッセンジャ-である環状アデノシン一リン酸(cAMP)及び環状グアノシン一リン酸(cGMP)を分解する。PDEは、11個の遺伝子ファミリ-(PDE1、PDE2、PDE3、PDE4、PDE5、PDE6、PDE7、PDE8、PDE9、PDE10、及びPDE11)を含有する。PDE酵素ファミリ-の各メンバ-は、cAMP及び/又はcGMPに対する独自の基質選択性、組織分布を有し、特定の補因子及び活性化因子によって調節される。PDE1、PDE2、PDE3、PDE10及びPDE11は、cAMP及びcGMPの両方を分解する。PDE4、PDE7、及びPDE8は、cAMPを選択的に分解する。PDE5、PDE6及びPDE9は、cGMPを選択的に分解する。
【0057】
幾つかの実施形態では、L2は、PDEの活性を阻害するPDE阻害剤の一部又は全部である官能基を含んでもよい。本明細書で使用される場合、酵素の「活性」という用語は、領域(例えば、細胞領域)又は組織における任意の分子(例えば、酵素)の機能的能力(例えば、触媒作用)を指す。活性は、分子の発現レベルの変化、又は分子の単位あたりの機能レベルの変化、又はその両方に影響することができる。例えば、PDEの活性は、PDEの発現を減少させること及び/又はPDEの機能を妨害することによって阻害することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDEファミリ-の特定のメンバ-を阻害する選択的阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDEファミリ-の複数のメンバ-を阻害することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、PDEはPDE4であってもよく、PDE阻害剤はPDE4阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE4阻害剤は、所定の閾値よりも高い特異性を有する特異的阻害剤である。
【0060】
幾つかの実施形態では、PDEはPDE3であってもよく、PDE阻害剤はPDE3阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDEはPDE5であってもよく、PDE阻害剤はPDE5阻害剤であってもよい。
【0061】
幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE1阻害剤、PDE2阻害剤、PDE4阻害剤、PDE5阻害剤、PDE6阻害剤、PDE7阻害剤、PDE8阻害剤、PDE9阻害剤、PDE10阻害剤、PDE11阻害剤など、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0062】
幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE3/PDE4二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE5二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE7二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE8二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/9二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE10二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE11二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE1二重阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE4/PDE2二重阻害剤であってもよい。
【0063】
PDE4は、肺胞内皮及び上皮細胞、血管平滑筋細胞、マクロファ-ジ、リンパ球、好中球、好酸球など主要なcAMP分解酵素の1つである。PDE4阻害剤は、cAMPを介したシグナル伝達を延長し、複数の炎症性メディエ-タ-の放出、炎症性サイトカイン、炎症細胞の肺胞への浸潤を減少させ、上皮粘液の分泌を刺激し、微生物や細胞片の除去を促進する。PDE4阻害剤は、ARDSモデルに有効であり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、及び湿疹の治療に使用される。例えば、PDE4阻害剤は、ロフルミラスト、アプレミラスト、クリサボロ-ル(Crisaborole)、シロミラスト、CDP-840、MK0359、MK0873、MK0952、イブジラスト、CHF6001、ロノミラスト(Ronomilast)、オグレミラスト、テトミラスト(Tetomilast)、GSK256066、YM976、GS-5759、GPD-1116、MEM1414、RPL554、ASP3258、E6005、GW842470X、OPA-15406、Leo-29102、HFP034、CBS3596、レバミラスト(Revamilast)(GRC4039)、NCS613、FCPP03、BAY19-8004、CI-1004、L-791,943、L-826,141、T-2585、YM976、ロリプラム、HT-0712、ABI-4、FCPR03、E6005(RVT-501)、GW842470X、OPA-15406、DRM02、HFP034など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0064】
幾つかの実施形態では、PDE4阻害剤は、PDE4A、PDE4B、PDE4C、又はPDE4Dの少なくとも1つの効能を阻害できる場合がある。
【0065】
PDE5阻害剤は、例えば、様々な組織を供給する血管の内側を覆う平滑筋細胞において、サイクリックGMPに対するPDE5の分解作用をブロックすることができる。PDE5阻害剤は、血管収縮性のヒト及び動物の障害を治療するために血行動態調節を改善する血管拡張剤として使用することができる。シルデナフィル(バイアグラ)、タダラフィル(シアリス)、アバナフィル(ステンドラ)、及びバルデナフィル(レビトラ)などのPDE5阻害剤は、勃起障害の治療に臨床的に要されている。シルデナフィル及びタダラフィルはまた、肺高血圧症の幾つかのサブタイプの治療に適応されている一方、タダラフィルはまた、前立腺肥大の治療のために認可されている。他の例示的なPDE5阻害剤は、ミロデナフィル(mirodenafil)、ウデナフィル、ロデナフィル(lodenafil)、ザプリナスト、イカリインなどを含んでもよい。
【0066】
PDE3阻害剤は、心疾患及び末梢動脈疾患を治療するために使用することができる。PDE3阻害剤は、例えば、ミルリノン及びシロスタゾ-ル、アムリノン、及びエノキシモンを含んでもよい。PDE7阻害剤を含む他のPDE阻害剤は、炎症性障害を治療するために使用することができるか、又は神経保護剤として使用することができる。
【0067】
図2は、本開示の幾つかの実施形態による例示的なPDE4阻害剤及びPDE3阻害剤の構造式を示す図である。
図2には、重度のCOPDを治療するために使用できるロフルミラスト、乾癬性関節炎(PsA)を治療するために使用できるアプレミラスト、喘息及びCOPDなどの呼吸障害を治療するために使用できるシロミラスト、血液循環を改善するために使用できるペントキシフィリン、及び末梢血管疾患を治療するために使用できるシロスタゾ-ルが含まれている。
【0068】
幾つかの実施形態では、-X-は、結合又はL1とL2を連結するためのジラジカルであってもよく、化合物は、NO放出部分及びPDE阻害部分が関与する化学反応に基づいて生成することができる。例えば、化合物は、付加反応、脱離反応、置換反応、ペリ環状反応、転位反応、光化学反応、酸化還元反応など、又はそれらの任意の組み合わせに基づいて生成することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、化合物は、コア足場(core scaffold)を使用して生成することができる。幾つかの実施形態では、コア足場は、L1又はL2を含まない。化合物は、L1及びL2をコア足場にグラフトすることによって生成することができる。例えば、コア足場は、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、置換又は未置換の化合物であってもよい。幾つかの実施形態では、コア足場は、L1又はL2を含んでもよい。例えば、L2を含むPDE4阻害剤は、コア足場として使用することができる。L1は、化合物を生成するためにPDE4阻害剤にグラフトすることができる。同様に、L1を含むNO放出化合物は、コア足場として使用することができる。L2は、化合物を生成するためにNO放出化合物にグラフトすることができる。
【0070】
【0071】
【0072】
幾つかの実施形態では、NO放出剤は、ニトログリセリン(GTN)、二硝酸イソソルビド(ISDN)、又は四硝酸ペンタエリスリト-ル(PETN)である。
【0073】
幾つかの実施形態では、L1は、1つ又は複数の-ONO2基を含んでもよい。例えば、L1は、1つ、2つ、又は3つの-ONO2基を含んでもよい。幾つかの実施形態では、L1は、-C(CH3)2-CH2-ONO2、-C(CH3)-(CH2-ONO2)2などであってもよい。
【0074】
幾つかの実施形態では、Xは、O、C、N、S、又はPを含んでもよい。幾つかの実施形態では、Xは、0~10個の原子を含む。幾つかの実施形態では、-X-は、エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルファ-ト結合、ホスホルアミド結合、ホスファ-ト結合、ケトン結合、又はアリ-レン基を含んでもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、化合物は、(S)-2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノア-トであってもよく、「化合物-1」とも呼ばれ、以下の構造を有する。
【0076】
幾つかの実施形態では、化合物は、(S)-2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル2-メチル-3-(ニトロオキシ)-2-((ニトロオキシ)メチル)プロパノア-トであってもよく、「化合物-2」とも呼ばれ、以下の構造を有する。
【0077】
幾つかの実施形態では、化合物は、(S)-3-((2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-トであってもよく、「化合物-3」とも呼ばれ、以下の構造を有する。
【0078】
幾つかの実施形態では、化合物は、(3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-トであってもよく、「化合物-4」とも呼ばれ、以下の構造を有する。
【0079】
幾つかの実施形態では、化合物は、(3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバマ-トであってもよく、「化合物-5」とも呼ばれ、以下の構造を有する。
【0080】
図3は、本開示の幾つかの実施形態による新規なNO放出PDE4阻害剤の幾つかの例示的な式を示す図である。幾つかの実施形態では、
図3に示すXは、O、S、又はCH
2などであってもよい。幾つかの実施形態では、nの範囲は、1~20であってもよい。幾つかの実施形態では、
図3に示すYは、O、N、S、又はCH
2などであってもよい。例えば、XはCH
2であってもよく、YはNであってもよい。別の例として、XはCH
2であってもよく、YはOであってもよい。
図3に示す化合物A~Gは、NO放出特性及びPDE4阻害特性の両方を有する。例えば、化合物Dは、2つの-ONO
2基を含む。化合物D分子は、生体内活性化を介して2つのNO分子を放出することができる。単なる例として、化合物A~Gは、ウイルス又は細菌感染、血管系損傷関連の疾患、乾癬、乾癬性関節炎、又は他の免疫系関連の炎症性疾患を治療又は予防するために使用することができる。
【0081】
図4は、本開示の幾つかの実施形態による幾つかの例示的な新規なNO放出PDE4阻害剤を示す図である。単なる例として、化合物A及びBは、ウイルス又は細菌感染、血管系損傷関連の疾患、乾癬、乾癬性関節炎、又は他の免疫系関連の炎症性疾患を治療又は予防するために使用することができる。
【0082】
本開示の別の態様によれば、前述の化合物の用途が提供される。化合物は、幾つかのヒト疾患又は動物疾患の治療又は予防のために使用することができる。幾つかの実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、又は本明細書に開示される化合物のメカニズム及び機能に関連するように、特定のヒト又は動物の疾患の治療又は予防のための医薬品の調製のための本開示の化合物の用途を目的とする。
【0083】
幾つかの実施形態では、これらの化合物は、PDE関連疾患を治療するように構成することができる。幾つかの実施形態では、これらの化合物は、PDE阻害剤自体(PDEを阻害できるL2における官能基を含む)よりも大きな治療濃度域でPDE関連疾患を治療するように構成することができる。本明細書で使用される場合、「治療濃度域」という用語は、毒性作用などの望ましくない副作用を引き起こすことなく、又は所定の毒性作用レベルよりも低い毒性作用を引き起こす、疾患を効果的に治療できる薬物投与量の範囲を指す。
【0084】
幾つかの実施形態では、PDE関連疾患は、PDE4関連疾患を含んでもよい。具体的には、PDE4関連疾患は、PDE4A関連疾患、PDE4B関連疾患、PDE4C関連疾患、又はPDE4D関連疾患を含んでもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Aを阻害するために、720nM未満の半数阻害濃度(IC50)を示すことができる。幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Aを阻害するために、200nM未満のIC50を示すことができる。幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Cを阻害するために、2.3μM未満のIC50を示すことができる。幾つかの実施形態では、化合物は、PDE4Cを阻害するために、0.7μM未満のIC50を示すことができる。
【0085】
例えば、化合物は化合物-2であってもよく、PDE4Aを阻害するために、320nM未満、315nM未満、又は310nM未満のIC50を示すことができる。化合物-2は、PDE4Cを阻害するために、2.5μM未満、2.3μM未満、又は2.275μM未満のIC50を示すことができる。別の例として、化合物は化合物-1であってもよく、PDE4Aを阻害するために、200nM未満、190nM未満、又は180nM未満のIC50を示すことができる。化合物-1は、PDE4Cを阻害するために、2.5μM未満、2.3μM未満、又は2.24μM未満のIC50を示すことができる。また別の例として、化合物は化合物-3であってもよい。化合物-3は、PDE4Aを阻害するために、250nM未満、230nM未満、又は220nM未満のIC50を示すことができる。化合物-3は、PDE4Cを阻害するために、1.2μM未満又は1.1μM未満のIC50を示すことができる。さらに別の例として、化合物は化合物-4であってもよい。化合物-4は、PDE4Aを阻害するために、750nM未満、730nM未満、又は720nM未満のIC50を示すことができる。化合物-4は、PDE4Cを阻害するために、300nM未満、150nM未満、又は120nM未満のIC50を示すことができる。また別の例として、化合物は化合物-5であってもよい。化合物-5は、PDE4Aを阻害するために、100nM未満、80nM未満、又は45nM未満のIC50を示すことができる。化合物-5は、PDE4Aを阻害するために、1000nM未満、900nM未満、又は850nM未満のIC50を示すことができる。
【0086】
幾つかの実施形態では、化合物は、微小循環を改善し、炎症を軽減し、免疫調節を改善し、又は内皮損傷修復を刺激するようにさらに構成することができる。
【0087】
幾つかの実施形態では、化合物は、対象における関連障害を治療するために、同時に、微小循環を改善し、炎症を軽減し、免疫調節を改善し、内皮損傷修復を刺激するように構成することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、化合物は、対象に投与されると、局部組織においてNOを放出し、PDEの活性を阻害するようにさらに構成することができる。例えば、化合物が対象に投与された後、対象における血漿硝酸エステルのレベルが上昇し得る。
【0089】
幾つかの実施形態では、化合物は、関連疾患を治療するための強化された治療濃度域のために、血管系及びサブ血管系空間へのPDE4阻害を強化するようにさらに構成することができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、化合物は、炎症性、免疫学的、又は血管系障害を治療するようにさらに構成することができる。
【0091】
幾つかの実施形態では、化合物は、調整可能なNO放出特性を所有/使用するようにさらに構成することができる。幾つかの実施形態では、調整可能なNO放出特性は、血管系/血管系空間近くへのPDE4阻害剤の送達を調節するために使用することができる。化合物のNO放出特性は、化合物のL1におけるNO放出基の数を変更することによって調節することができる。例えば、化合物のL1におけるNO放出基の数を増加させることによって、化合物は、より多くのNO分子を放出することができ、従って局部組織におけるNOの濃度を増加できる可能性がある。追加的に又は代替的に、化合物のL1におけるNO放出基の数を増加させることによって、化合物は、NOをより長時間連続的に放出できる可能性がある。
【0092】
本開示のまた別の態様によれば、疾患又は障害を治療又は予防する方法が提供される。方法は、薬学的に有効な量の前述の化合物を対象に投与することを含んでもよい。例えば、方法は、経口投与、注射投与、局所投与など、又はそれらの任意の組み合わせを介して、組成物を対象に投与することを含んでもよい。
【0093】
本開示のさらに別の態様によれば、前記化合物を含む組成物は、疾患又は障害を治療又は予防するために調剤及び使用することができる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、賦形剤をさらに含んでもよい。
【0094】
幾つかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。例えば、担体は、コ-ティング層、カプセル、マイクロカプセル、ナノカプセルなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。担体は非毒性である必要があり、医薬組成物中の主な成分(例えば、上記の化合物)の活性に重大な影響を及ぼさない可能性があることに注意すべきである。幾つかの実施形態では、担体は、主な成分の酸化、分解又は不活性化などの幾つかの望ましくない状況に対して主な成分を保護することができる。例えば、胃内の酵素や比較的低いpHは、主な成分の分解又は不活性化を引き起こす可能性がある。担体は、医薬組成物中の主な成分を保護することによって、医薬組成物の有効性の維持又は向上に役立ち得る。幾つかの実施形態では、担体は、主な成分の制御放出のために使用することができる。制御放出は、徐放、持続放出、標的放出などを含んでもよいが、これらに限定されない。たとえば、担体は、ヒドロゲルカプセル、コラ-ゲン、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、ポリビニルアルコ-ル、ポリエチレンオキシド、澱粉、架橋澱粉など、又はそれらの任意の組み合わせからなるマイクロカプセル又はナノカプセルを含んでもよい。幾つかの実施形態では、担体は、医薬組成物における主な成分の制御放出を促進することができる。
【0095】
幾つかの実施形態では、組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、ミセル、液体、懸濁液、クリ-ム、フォ-ム、ゲル、ロ-ション、ペ-スト、又は軟膏として製剤することができる。
【0096】
幾つかの実施形態では、組成物は、経口投与、注射投与、又は局所投与を介して対象に投与することができる。幾つかの実施形態では、注射投与は、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射などを含んでもよい。幾つかの実施形態では、注射投与は、腫瘍又は腫瘍に近い領域への組成物の注射を含んでもよい。幾つかの実施形態では、注射投与は、腎臓、肝臓、心臓、甲状腺又は関節への組成物の注射を含んでもよい。幾つかの実施形態では、局所投与は、皮膚癌、リンパ腫などの癌を軽減するために組成物を皮膚に塗布することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、局所投与は、腟内投与、直腸内投与、経鼻投与、耳介投与、髄腔内投与、関節内投与、胸膜内投与など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、異なる投与手段の組み合わせを介して対象に投与することができる。幾つかの実施形態では、方法は、1日3回、1日2回、1日1回、2日1回など、対象に組成物を投与することを含んでもよい。
【0097】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、ARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、SARS-CoV-2によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、他のコロナウイルス感染によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、他のウイルス感染によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、細菌感染によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、寄生虫感染症によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、真菌感染によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、外傷によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、手術によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、高地肺水腫によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、薬物誘発性損傷によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、敗血症によって引き起こされるARDSを治療又は予防するために使用することができる。
【0098】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、高地肺水腫、又は嚢胞性繊維症を治療又は予防するために使用することができる。
【0099】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、サイトカインスト-ムの管理を改善するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、SARS-CoV-2によって引き起こされるサイトカインスト-ムを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、PD-1又はPDl-1抗体によって引き起こされるサイトカインスト-ムを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、T細胞、B細胞、好中球、マクロファ-ジ、又は単球を標的とする治療用抗体によって引き起こされるサイトカインスト-ムを治療又は予防するために使用することができる。
【0100】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、脳卒中を治療又は予防するために使用することができる。
【0101】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、急性腎障害(AKI)、慢性腎臓病、様々な種類の腎炎、又は巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、特発性FSGSを治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、癌の薬の使用によって引き起こされるAKIを治療又は予防するために使用することができる。
【0102】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、非アルコ-ル性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、肝硬変、1型糖尿病、2型糖尿病、又は糖尿病合併症を治療又は予防するために使用することができる。例えば、糖尿病合併症は、糖尿病性足病変、糖尿病性神経痛、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性ケトアシド-シス、又は他の糖尿病性血管合併症を含むが、それらに限定されない。
【0103】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、アレルギ-性反応又は炎症を治療又は予防するために使用することができる。幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、ぶどう膜炎、ドライアイ、眼アレルギ-、黄斑変性(AMD)、又は緑内障を含む眼疾患を治療又は予防するために使用することができる。
【0104】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、リュ-マチ性関節炎(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、ベ-チェット症候群、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、外陰痛、ざ瘡、扁平苔癬、結節性痒疹、円板状エリテマト-デス、又はクロ-ン病を含む末梢免疫系障害(peripheral immunological disorders)を治療又は予防するために使用することができる。
【0105】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、全身性エリテマト-デス(SLE)を含む自己免疫疾患を治療又は予防するために使用することができる。
【0106】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、アルツハイマ-病、パ-キンソン病、又は脳卒中を含む中枢神経系疾患を治療、予防、又は遅延させるために使用することができる。
【0107】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、癌を治療又は予防するために使用することができる。例えば、癌は、白血病、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、炎症性乳癌、前立腺癌、膀胱癌、結腸癌、肝癌、腎臓癌、又は腹膜癌であってもよい。幾つかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、慢性リンパ性白血病、又は慢性骨髄性白血病であってもよい。
【0108】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、多発性硬化症を治療又は予防するために使用することができる。
【0109】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、移植拒絶反応を治療又は予防するために使用することができる。
【0110】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、敗血症、高地肺水腫、喘息、又は気管支炎を治療又は予防するために使用することができる。
【0111】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、アレルギ-性鼻炎、糖尿病、糖尿病性神経障害、アレルギ-性結膜炎、糖尿病性黄斑変性症、慢性腎臓病、乾癬、アトピ-性皮膚炎、好酸球性肉芽腫、骨関節炎、大腸炎、又は膵臓炎を治療又は予防するために使用することができる。
【0112】
幾つかの実施形態では、方法は、薬学的に有効な量の本開示の化合物を対象に投与することによって、皮膚疾患を治療又は予防するために使用することができる。例えば、皮膚疾患は、乾癬、アトピ-性皮膚炎、好酸球性肉芽腫、又は乾癬を含んでもよい。
【0113】
本開示の幾つかの実施形態によれば、ALI又はARDSを治療又は予防する方法が提供される。方法は、薬学的に有効な量の幾つかの前述の化合物を対象に投与することを含んでもよい。例えば、方法は、経口投与、注射投与、局所投与など、又はそれらの任意の組み合わせを介して、ARDSを治療するために1つ又は複数の化合物(例えば、複数の化合物の1つ及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物中)を対象に投与することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、化合物は、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、又は化合物-5である。
【0114】
本開示の幾つかの実施形態によれば、対象におけるPDE関連疾患を治療又は予防する方法が提供される。例えば、PDE関連疾患は、PDE4A関連疾患、PDE4B関連疾患、PDE4C関連疾患、又はPDE4D関連疾患など、又はそれらの任意の組み合わせなどのPDE4関連疾患を含んでもよい。幾つかの実施形態では、方法は、経口投与、注射投与、局所投与など、又はそれらの任意の組み合わせを介して、ARDSを治療するために1つ又は複数の化合物(例えば、複数の化合物の1つ及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物中)を対象に投与することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、化合物は、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、又は化合物-5である。
【0115】
単なる例として、ALI、ARDS、又はPDE関連疾患を治療又は予防するための方法は、対象に化合物を0.01~50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。別の例として、方法は、対象に化合物を1~50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。また別の例として、方法は、対象に化合物を5~50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、方法は、対象に化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、又は化合物-5、又はそれらの任意の組み合わせを、約5mg/kg、10mg/kg、又は50mg/kgで経口投与することを含んでもよい。
【0116】
幾つかの実施形態では、ALI又はARDSを治療又は予防するための幾つかの前述の化合物の用途が提供される。例えば、化合物は、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、又は化合物-5の1つ又は複数を含んでもよい。
【0117】
本開示の幾つかの実施形態によれば、癌を治療又は予防するための幾つかの前述の化合物の用途が提供される。例えば、化合物は、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、又は化合物-5の1つ又は複数を含んでもよい。
【0118】
本開示の幾つかの実施形態によれば、PDE関連疾患を治療又は予防するための幾つかの前述の化合物の用途が提供される。例えば、化合物は、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、又は化合物-5の1つ又は複数を含んでもよい。
【0119】
幾つかの実施形態では、化合物を含む組成物は、疾患又は障害を治療するために、他の医薬組成物の投与の前又は後に対象に投与することができる。あるいは、組成物及び他の医薬組成物は、疾患又は障害を治療するために、対象に同時に投与することができる。
【0120】
本開示は、以下の実施例に従ってさらに説明されるが、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0121】
実施例
実施例1 (S)-2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノア-ト(化合物-1とも呼ばれる)の調製
化合物-1を以下のステップで調製した。
図5は、本開示の幾つかの実施形態による化合物-1を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【0122】
ステップ1では、メチル2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノア-ト(
図5に示す生成物2とも呼ばれる)を以下のように調製した。
【0123】
HNO3(0.2mL)を、メチル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパノア-ト(2mL)の無水酢酸(10mL)溶液に連続的に加えた。反応混合物を窒素下、0℃で2時間撹拌した。水(20mL)を加え、混合物をEA(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3溶液(20mL×2)及び飽和塩水(20mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮して生成物2(2.2g、収率84%)を淡黄色のオイルとして得た。得られた化合物についてNMR分光分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ4.49(s,2H),3.71(s,3H),1.46-1.10(m,6H)。
【0124】
ステップ2では、2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパン酸(
図5に示す生成物3とも呼ばれる)を以下のように調製した。
【0125】
メチル2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノア-ト(2.2g、0.012mol)のMeOH(20mL)溶液に、NaOH(2.5M、20mL)を加えた。溶液を窒素下、室温で16時間撹拌した。MeOHを真空下で除去した。水(30mL)を加え、5NのHCl水溶液でpH3~4に酸性化し、EA(30mLx3)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し(30mL)、濃縮乾固させて、生成物3(2g、収率89%)を淡黄色のオイルとして得た。得られた化合物についてNMR分光分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.04(s,1H),4.48(d,J=19.8Hz,2H),1.40-1.28(m,6H)。
【0126】
ステップ3では、3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(
図5に示す生成物4とも呼ばれる)を以下のように調製した。
【0127】
2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパン酸(200mg、1.23mmol)のDCM(10mL)溶液に、塩化オキサリル(0.17mL、1.84mmol)、0.05mLのジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。2時間後、溶液を減圧下で濃縮し、粗生成物をEA(20mLx3)で抽出した。有機層を塩水(20mL)で洗浄し、濃縮乾固させて、生成物4(200mg、収率90%)を淡黄色の油として得た。
【0128】
ステップ4では、(S)-2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノア-ト(化合物-1)を以下のように調製した。
【0129】
3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(150mg、0.83nMol)及びTEA(251mg、2.47mmol)のジクロロメタン(DCM)(10mL)溶液に、N-{2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メタンスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインド-ル-4-イル}-2-ヒドロキシアセトアミド(化合物-6とも呼ばれる)のDCM溶液を加えた。溶液を窒素下、室温で1時間撹拌した。水(20mL)を加え、混合物をDCM(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩水(20mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-(PE/EA=1:1)で精製して、化合物-1(90mg、収率17%)を淡黄色の固体として得た。得られた化合物について質量及びNMR分光分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):643.9[M+Na]+.1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ10.04(s,1H),8.53(d,J=8.4Hz,1H),7.82(t,J=7.8Hz,1H),7.61(d,J=7.4Hz,1H),7.07(s,1H),7.00(d,J=8.4Hz,1H),6.93(d,J=8.4Hz,1H),5.77(dd,J=11.2,4.8Hz,1H),4.85(s,2H),4.74(s,2H),4.32(dd,J=14.0, 10.8Hz,1H),4.15(dd,J=14.2,4.2Hz,1H),4.01(q,J=6.8Hz,2H),3.73(s,3H),3.01(s,3H),1.35-1.31(m9H)。
【0130】
実施例2 ({2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メタンスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインド-ル-4-イル}カルバモイル)メチル2-メチル-3-(ニトロオキシ)-2-[(ニトロオキシ)メチル]プロパノア-ト(化合物-2とも呼ばれる)の調製
化合物-2を以下のステップで調製した。
図6は、本開示の幾つかの実施形態による化合物-2を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【0131】
ステップ1では、2-メチル-3-(ニトロオキシ)-2-[(ニトロオキシ)メチル]プロパン酸(
図6に示す生成物2とも呼ばれる)を以下のように調製した。
【0132】
HNO3(0.5mL)を、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパン酸(2mL)の無水酢酸(20mL)溶液に連続的に加えた。反応混合物を窒素下、室温で2時間撹拌した。水(20mL)を加え、混合物をEA(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3溶液(20mL×2)及び飽和塩水(20mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮して化合物-2(2.9g、収率50%)を淡黄色の油として得た。得られた化合物についてNMR分光分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:1H NMR(400MHz,DMSO)δ13.41(s,1H),4.68(d,J=2.0Hz,4H),1.32-1.21(m,3H)。
【0133】
ステップ2では、2-メチル-3-(ニトロオキシ)-2-[(ニトロオキシ)メチル]プロパノイルクロリドを以下のように調製した。
【0134】
2-メチル-3-(ニトロオキシ)-2-[(ニトロオキシ)メチル]プロパン酸(500mg、2.23mmol)のDCM(15mL)溶液に、塩化オキサリル(0.43mL、3.34mmol)、0.1mLのDMFを加えた。2時間後、溶液を減圧下で濃縮し、粗生成物をEA(20mLx3)で抽出した。有機層を塩水(20mL)で洗浄し、濃縮乾固させて、生成物4(500mg、収率74%)を淡黄色の油として得た。
【0135】
ステップ3では、(S)-2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノア-ト(化合物-2)を次のように調製した。
【0136】
2-メチル-3-(ニトロオキシ)-2-[(ニトロオキシ)メチル]プロパノイルクロリド(210mg、0.87mmol)及びTEA(251mg、2.47mmol)のDCM(10mL)溶液に、N-{2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メタンスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインド-ル-4-イル}-2-ヒドロキシアセトアミド(500mg、1.05mmol)のDCM(2mL)溶液を加えた。反応混合物を窒素下、室温で1時間撹拌した。水(20mL)を加え、混合物をDCM(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩水(20mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-(PE/EA=2:1)で精製して、化合物2(400mg、収率67%)を淡黄色の固体として得た。得られた化合物について質量及びNMR分光分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):704.8[M+Na]+.1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ10.07(s,1H),8.51(d,J=8.4Hz,1H),7.84(t,J=7.8Hz,1H),7.63(d,J=7.2Hz,1H),7.07(d,J=1.8Hz,1H),7.00(dd,J=8.4,1.8Hz,1H),6.94(d,J=8.4Hz,1H),5.77(dd,J=11.2,3.2Hz,1H),4.92(d,J=0.5Hz,2H),4.87(d,J=4.2Hz,4H),4.33(dd,J=14.2,10.8Hz,1H),4.15(dd,J=14.4,4.2Hz,1H),4.07-3.97(m,2H),3.74(s,3H),3.01(s,3H),1.44(s,3H),1.33(t,J=7.0Hz,3H)。
【0137】
実施例3 (S)-3-((2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(化合物-3とも呼ばれる)の調製
化合物-3を以下のステップで調製した。
図7は、本開示の幾つかの実施形態による化合物-3を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【0138】
ステップ1では、3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-トを以下のように調製した。
【0139】
2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパン酸(318mg、1.95mmol)のDCM(10mL)溶液に、(COCl)2(297mg、2.34mmol)及びDMF(50mg)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次に濃縮して、3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(0.4g、収率99%)を白色の固体として得た。この白色の固体を次のステップで直接使用した。
【0140】
ステップ2では、メチル(2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノイル)グリシナ-トを以下のように調製した。
【0141】
3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(0.4g、1.95mmol)のDCM(20mL)溶液に、グリシンメチル塩酸塩(295mg、2.34mmol)及びトリエチルアミン(591mg、5.85mmol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌した。水(30mL)を加え、混合物をDCM(20mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し(20mLx3)、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ-(PE/EA=2:1)で精製して、メチル(2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノイル)グリシナ-ト(0.384g、収率84%)を無色の油として得た。
【0142】
ステップ3では、(2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノイル)グリシンを以下のように調製した。
【0143】
メチル(2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノイル)グリシナ-ト(0.384g、1.64mmol)のTHF(10mL)溶液に、H2O(6mL)及びLiOH(157mg、6.56mmol)を加えた。溶液を室温で16時間撹拌した。1N HClを使用してpH=2~3に調整し、水(30mL)を加え、混合物をEA(20mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し(20mLx3)、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮して、(2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノイル)グリシン(0.4g、収率99%)を黄色の油として得た。得られた化合物について質量分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):439.1[2M-H]+。
【0144】
ステップ4では、3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-トを以下のように調製した。
【0145】
(2,2-ジメチル-3-(ニトロオキシ)プロパノイル)グリシン(0.4g、1.64mmol)のDCM(10mL)溶液に、(COCl)2(352mg、2.77mmol)及びDMF(50mg)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次に濃縮して、3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(0.5g、収率99%)を白色の油として得た。この白色の油を次のステップで直接使用した。
【0146】
ステップ5では、(S)-3-((2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-トを以下のように調製した。
【0147】
3-クロロ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(0.5g、1.64mmol)のDCM(20mL)溶液に、(S)-4-アミノ-2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(330mg、0.79mmol)及びトリエチルアミン(591mg、5.85mmol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌した。水(30mL)を加え、混合物をDCM(20mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し(20mLx3)、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ-(PE/EA=1:1)で精製して、(S)-3-((2-((2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソプロピルニトラ-ト(144mg、収率14%)を黄色の固体として得た。得られた化合物について質量分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):621.2[M+H]+。
【0148】
実施例4 (3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-ト(化合物-4とも呼ばれる)の調製
化合物-4を以下のステップで調製した。
図8は、本開示の幾つかの実施形態による化合物-4を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【0149】
ステップ1では、tert-ブチル2-(((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)アセタ-トの調製を以下のように調製した。
【0150】
(3R,3aS,6S,6aR)-6-ヒドロキシヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-ト(1g、5.24mmol)のTHF(60mL)溶液に、NaH(60%、230mg、5.76mmol)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。2-ブロモ酢酸tert-ブチル(1.12g、5.76mmol)を混合物に加えた。混合物をさらに室温で16時間撹拌した。水(30mL)を加え、混合物をEA(30mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(20mLx 2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ-(PE/EA=4:1)で精製して、tert-ブチル2-(((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)アセタ-ト(0.8g、収率50%)を淡黄色の油として得た。
【0151】
ステップ2では、2-(((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)酢酸を以下のように調製した。
【0152】
tert-ブチル2-(((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)アセタ-ト(0.8g、2.62mmol)のDCM(10mL)溶液に、TFA(3mL)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、濃縮して、2-(((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)酢酸(0.9g、収率99%)を淡黄色の油として得た。
【0153】
ステップ3では、(3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-クロロ-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-トを以下のように調製した。
【0154】
2-(((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)酢酸(0.9g、2.62mmol)のDCM(10mL)溶液に、(COCl)2(0.4g、3.12mmol)及びDMF(50mg)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。濃縮して、(3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-クロロ-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-ト(1.0g、収率99%)を淡黄色の油として得た。次のステップで直接使用した。
【0155】
ステップ4では、(3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-トの調製は、以下のように調製した。
【0156】
(3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-クロロ-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-ト(1.0g、2.62mmol)のDCM(20mL)溶液に、(S)-4-アミノ-2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(125mg、0.299mmol)及びトリエチルアミン(1.32g、13.1mmol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌した。水(30mL)を加え、混合物をDCM(20mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し(20mLx3)、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をprep-HPLC(ACN-H2O、0.1%FA)で精製して、(3R,3aS,6S,6aR)-6-(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-ト(20mg、収率10%)を白色の固体として得た。得られた化合物について質量分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):650.2[M+H]+。
【0157】
実施例5 (3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバマ-ト(化合物-5)の調製
化合物-5を以下のステップで調製した。
図9は、本開示の幾つかの実施形態による化合物-5を調製する例示的なプロセスを示す図である。
【0158】
ステップ1では、tert-ブチル2-イソシアナトアセタ-トを以下のように調製した。
【0159】
tert-ブチルグリシナ-ト(300mg、2.29mmol)のDCM(20mL)溶液に、トリホスゲン(238mg、0.80mmol)及びNEt3(692mg、6.86mmol)を加えた。混合物を0℃で1時間撹拌し、濃縮して、tert-ブチル2-イソシアナトアセタ-ト(0.4g、収率99%)を淡黄色の固体として得た。
【0160】
ステップ2では、tert-ブチル((((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)カルボニル)グリシナ-トを以下のように調製した。
【0161】
tert-ブチル2-イソシアナトアセタ-ト(411mg、2.62mmol)のDCM(30mL)溶液に、(3R,3aS,6S,6aR)-6-ヒドロキシヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-ト(291mg、1.53mmol)、NEt3(770mg、7.62mmol)及びDMAP(62mg、0.51mmol)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した。水(30mL)を加え、混合物をDCM(30mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(20mLx2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ-(PE/EA=1:1)で精製して、tert-ブチル((((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)カルボニル)グリシナ-ト(50%(3R,3aS,6S,6aR)-6-ヒドロキシヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イルニトラ-トを含有する混合物0.6g、収率32%)を無色の油として得た。
【0162】
ステップ3では、((((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)カルボニル)グリシンを以下のように調製した。
【0163】
tert-ブチル((((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)カルボニル)グリシナ-ト(0.6g、0.86mmol)のDCM(10mL)溶液に、TFA(3mL)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、次に濃縮して、((((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)カルボニル)グリシン(0.7g、収率99%)を淡黄色の油として得た。得られた化合物について質量分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):583.1[2M-H]-。
【0164】
ステップ4では、(3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-クロロ-2-オキソエチル)カルバマ-トを以下のように調製した。
【0165】
((((3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル)オキシ)カルボニル)グリシン(0.7g、0.86mmol)のDCM(10mL)溶液に、(COCl)2(164mg、1.29mmol)及びDMF(50mg)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。濃縮して、(3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-クロロ-2-オキソエチル)カルバメ-ト(1.0g、収率99%)を白色の固体として得た。次のステップで直接使用した。
【0166】
ステップ5では、(3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバマ-トを以下のように調製した。
【0167】
(3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-クロロ-2-オキソエチル)カルバマ-ト(1.0g、0.86mmol)のDCM(20mL)溶液に、(S)-4-アミノ-2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(200mg、0.478mmol)及びトリエチルアミン(1.32g、13.1mmol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌した。水(30mL)を加え、混合物をDCM(20mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(20mLx3)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次に、得られたものを濾過して濾液を収集した。濾液を濃縮した。粗生成物をprep-HPLC(ACN-H2O、0.1%FA)で精製して、(3S,3aR,6R,6aS)-6-(ニトロオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3-イル(2-((2-((S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバマ-ト(実施例5)(8.5mg、収率1.4%)を白色の固体として得た。得られた化合物について質量分析を行ったところ、試験結果は以下の通りであった:Mass(m/z):693.2[M+H]+。
【0168】
実施例6 化合物はPDEの活性を阻害する
化合物(例えば、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、化合物-5、及び化合物-6)によるPDE4(例えば、PDE4A、PDE4C)活性の阻害は、提供された手順に従って、BPS Bioscience(San Diego、USA)からのPDE蛍光偏光アッセイキットを使用してモニタ-した。このアッセイは、FAM-cAMPからのPDEによって生成された蛍光色素FAM標識AMPの結合ビ-ズへの選択的結合に基づいている。
【0169】
簡単に説明すると、化合物(アッセイバッファ-で希釈した異なる濃度の2.5ul)を、384ウェルプレ-ト中の12.5uLのFAM-cAMP基質(アッセイバッファ-で200nM)と混合し、10ulのヒト組み換え体PDE4A(BPS、カタログ番号60340)又はPDE4C(BPS、カタログ番号60384)を加えた。プレ-トを室温で1時間インキュベ-トした。FAM-AMPに対する50ulの結合剤を加えた。混合物を室温で20分間インキュベ-トした。結合剤結合FAM-AMPの量は、Envision分光計(Envision spectrometer)で蛍光偏光法により測定した。例示化合物の効能(IC50値、表1)は、4パラメ-タ非線形回帰フィッティングル-チンを使用して用量-反応曲線から計算した。結果は、化合物-1、化合物-2、化合物-3、化合物-4、及び化合物-5がPDE4を効果的に阻害できることを示している。
【0170】
実施例7 化合物は、TNF-α及びIFN-γの産生を阻害する
末梢血単核球又は血液における、本開示によって提供される化合物による腫瘍壊死因子α(TNF-α)及びインタ-フェロンγ(IFN-γ)産生の阻害は、Claveauらのプロトコル(JPET、310、752-760、2004)に従うことによってモニタ-した。化合物は、TNF-α及びIFN-γの発現を阻害することができる。
【0171】
実施例8 化合物は、マウスにおける急性肺損傷を阻害する
マウス(固形飼料でのC57Bl6)に、10mL/kgの投与量でビヒクルとして1%メチルセルロ-スを使用して、化合物を経口投与した。30分後、LPS(30ug/kg)を鼻から注入して、炎症と急性気道損傷を誘発した。血漿中のTNFaレベル、及びBALF中の細胞浸潤は、24時間のLPSチャレンジ後にモニタ-した。化合物は、マウスの急性長期損傷を緩和することができる。
【0172】
実施例9 マウスにおける化合物-1の経口投与後の化合物-6の産生
図10は、マウスに化合物-1を投与した後に産生された化合物-6血中レベルを示す。例示化合物-1(0.5%カルボキシメチルセルロ-ス(CMC)/0.25%Tween-80懸濁液として水中で0.5mg/mLで調剤された)を5mg/kgで4匹のマウスに経口投与した。化合物-1は、経口投与後にマウスで急速に生物活性化され、すべてのマウスで一貫してPDE4阻害代謝物化合物-6を形成した。15分で血液中に約200ng/mLの化合物-6が検出された。化合物-6の血中レベルは、1~2時間の間に約250ng/mLでピ-クに達し、6時間で約25ng/mLまでほぼ消失した。
図10から分かるように、血液中の化合物-6のレベルの変動傾向は比較的安定している。化合物-6の血中レベルのこの動的プロファイルは、化合物-6の直接投与による予想される高いCmaxに起因する副作用の軽減など、化合物-6の直接投与を超えて、化合物-6治療に反応する疾患を治療する機会を提供する。
【0173】
実施例10 化合物-1、化合物-2、及び化合物-4の生体内活性化からの一酸化窒素の生成
化合物-1及び化合物-2を5mg/mlで、化合物-4を1mg/mlで、水中1%CMC/0.5%Tween-80にビヒクルとして調剤した。血漿中の総硝酸エステル及び総ニトラ-トレベルは、提供されたプロトコルに従って、一酸化窒素アッセイキット(ab65327、AbCam)を使用して定量化した。デ-タは平均値(±SEM、3匹のマウス/グル-プ)であった。
【0174】
図11は、化合物をマウスに投与してから1時間後の血漿中の硝酸エステルレベルを示す。各化合物について、ビヒクル処置マウスよりも有意に高い血漿硝酸エステルが検出された。デ-タは、経口投与後の各化合物の急速な生体内活性化を示している。
【0175】
上記の説明は、単に例示を目的として提供されたものであり、本開示の範囲を限定することを意図していないことに留意されたい。当業者であれば、本開示の教示に基づいて、複数の変形及び修正を行うことができる。しかしながら、それらの変形及び修正は、本開示の範囲から逸脱するものではない。
【0176】
このように基本的な概念を説明したが、この詳細な開示を読んだ後、当業者には、前述の詳細な開示が単なる例として提示することを意図しており、限定するものではないことが明らかになるであろう。本明細書では明示的に述べていないが、様々な変更、改良、及び修正が可能であり、当業者に意図されている。これらの変更、改良、及び修正は、本開示によって示唆されることを意図しており、本開示の例示的な実施形態の精神及び範囲内にある。
【0177】
さらに、本開示の実施形態を説明するために特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施形態」、「一実施形態」及び「幾つかの実施形態」という用語は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の様々な部分における「一実施形態」又は「1つの実施形態」又は「代替の実施形態」への2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているとは限らないことが強調され、理解されるべきである。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、本開示の1つ又は複数の実施形態において適切に組み合わせられ得る。
【0178】
さらに、処理要素若しくはシ-ケンスの列挙された順序、又は、数字、文字、若しくはその他の指定の使用は、特許請求の範囲で指定されている場合を除き、請求されたプロセス及び方法を任意の順序に限定することを意図していない。上記の開示は、開示の様々な有用な実施形態であると現在考えられている様々な例を通して論じているが、そのような詳細は単にその目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲は開示された実施形態に限定されず、逆に、開示された実施形態の精神及び範囲内にある変更及び同等の構成をカバ-することを意図している。例えば、上述の様々なコンポ-ネントの実装は、ハ-ドウェアデバイスで具現化することができるが、ソフトウェア-のみのソリュ-ション、例えば、既存のサ-バ-又はモバイルデバイスへのインスト-ルとしても実装することができる。
【0179】
同様に、本開示の実施形態の前述の説明において、様々な特徴が、様々な実施形態1つ又は複数の理解を助ける開示を効率化するために、単一の実施形態、図、又はその説明にグル-プ化されることがあることが理解されるべきである。ただし、この開示の方法は、特許請求された主題が各請求項で明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、特許請求の主題は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴より少ない特徴にある。