(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】非接触型電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20240125BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240125BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/40
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2020077670
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】大西 邦光
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-25677(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057959(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0324281(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0033228(US,A1)
【文献】特開2010-259204(JP,A)
【文献】特開2019-213330(JP,A)
【文献】特開2020-65390(JP,A)
【文献】特開2015-50888(JP,A)
【文献】特開2012-34494(JP,A)
【文献】特開2008-149835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 50/40
H02J 7/00
H02J 17/00
B60L 5/00
B60L 50/40
B60L 53/00
B60L 55/00
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極(T1)と第2電極(T2)とを有する交流発生部(103)と、前記第1電極と前記第2電極との間に接続されている送電コイル(101a・・・101r)とを備える送電装置(10)と、
受電コイル(201)を備える受電装置(20)と、を備える非接触型電力伝送システムであって、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記送電コイルと直列に接続されているコンデンサ(102)を備え、
前記交流発生部が前記第1電極と前記第2電極とを介して前記送電コイルに交流電流を流すことにより、前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電装置に前記受電コイルを介して送電し、
前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電コイルに送電する際に前記送電コイルの漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するように前記コンデンサの静電容量が設定されて
おり、
前記受電装置が前記送電装置に対して変位可能に構成されており、
前記受電装置が所定範囲内に位置するとき、前記送電コイルが電磁誘導によって前記受
電装置に前記受電コイルを介して送電し、
前記受電コイルが前記所定範囲内で前記漏れインダクタンスが最も大きくなる位置に位
置した場合における前記漏れインダクタンスの値を前記漏れインダクタンスの最大値とし
、
前記漏れインダクタンスの最大値に基づいて決められる前記送電コイルの漏れリアクタ
ンスの値を漏れリアクタンスの最大値とし、
前記漏れリアクタンスの最大値が前記コンデンサのインピーダンスと同等になるように
前記コンデンサの前記静電容量が設定されている非接触型電力伝送システム。
【請求項3】
第1電極(T1)と第2電極(T2)とを有する交流発生部(103)と、前記第1電極と前記第2電極との間に接続されている送電コイル(101a・・・101r)とを備える送電装置(10)と、
受電コイル(201)を備える受電装置(20)と、を備える非接触型電力伝送システムであって、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記送電コイルと直列に接続されているコンデンサ(102)を備え、
前記交流発生部が前記第1電極と前記第2電極とを介して前記送電コイルに交流電流を流すことにより、前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電装置に前記受電コイルを介して送電し、
前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電コイルに送電する際に前記送電コイルの漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するように前記コンデンサの静電容量が設定されて
おり、
前記受電コイルの巻数は、前記送電コイルの巻数よりも少ない巻数に設定されている非接触型電力伝送システム。
【請求項5】
第1電極(T1)と第2電極(T2)とを有する交流発生部(103)と、前記第1電極と前記第2電極との間に接続されている送電コイル(101a・・・101r)とを備える送電装置(10)と、
受電コイル(201)を備える受電装置(20)と、を備える非接触型電力伝送システムであって、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記送電コイルと直列に接続されているコンデンサ(102)を備え、
前記交流発生部が前記第1電極と前記第2電極とを介して前記送電コイルに交流電流を流すことにより、前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電装置に前記受電コイルを介して送電し、
前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電コイルに送電する際に前記送電コイルの漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するように前記コンデンサの静電容量が設定されて
おり、
前記受電装置は、前記受電コイルを介して受電した電力を蓄える蓄電池(200)を備
える非接触型電力伝送システム。
【請求項11】
第1電極(T1)と第2電極(T2)とを有する交流発生部(103)と、前記第1電極と前記第2電極との間に接続されている送電コイル(101a・・・101r)とを備える送電装置(10)と、
受電コイル(201)を備える受電装置(20)と、を備える非接触型電力伝送システムであって、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記送電コイルと直列に接続されているコンデンサ(102)を備え、
前記交流発生部が前記第1電極と前記第2電極とを介して前記送電コイルに交流電流を流すことにより、前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電装置に前記受電コイルを介して送電し、
前記送電コイルが電磁誘導によって前記受電コイルに送電する際に前記送電コイルの漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するように前記コンデンサの静電容量が設定されて
おり、
前記交流発生部は、交流電源(400、401)の出力される電力に基づいて前記送電
コイルに交流電流を流す非接触型電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型電力伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力伝送システムでは、送電装置は、高周波電流を出力する高周波電源装置と、送電コイルを含む直列共振回路を有する送電ユニットとを備え、受電装置は、受電コイルを含む並列共振回路を有する受電ユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものにおいて、送電装置の直列共振回路は、高周波電源装置から出力される高周波電流によって共振する。受電装置の並列共振回路は、送電装置の直列共振回路の共振に伴う磁界共鳴によって送電ユニットの送電コイルから電力を受電する。
【0004】
このように磁界共振方式で送電装置から受電装置に非接触で電力を電送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の電力伝送システムでは、送電コイルおよび受電コイルの間の距離によって送電コイルの自己インダクタンスが変化する。
特に、送電コイルおよび受電コイルの間の距離が短い場合には、送電コイルおよび受電コイルの間の距離が長い場合に比べて、当該距離に応じた自己インダクタンスの変化が大きい。
【0007】
したがって、送電コイルおよび受電コイルの間の距離によっては、送電コイルを含む直列共振回路の共振周波数が高周波電源装置から出力される高周波電流の周波数から外れるおそれがある。
【0008】
この場合、送電コイルを含む直列共振回路の共振が停止して、送電ユニットから受電ユニットへの送電が停止する。
【0009】
一般的に、上記磁界共鳴方式でなく、電磁誘導によって送電コイルおよび受電コイルの間で送電することが知られている。この場合、送電コイルおよび受電コイルの間の距離が短い場合には、送電コイルの漏れインダクタンスによって生じる電圧降下が原因で送電コイルおよび受電コイルの間の送電効率が低下する。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、送電コイルおよび受電コイルの間の高い送電効率を確保するようにした非接触型電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、非接触型電力伝送システムにおいて、第1電極(T1)と第2電極(T2)とを有する交流発生部(103)と、第1電極と第2電極との間に接続されている送電コイル(101a・・・101r)とを備える送電装置(10)と、
受電コイル(201)を備える受電装置(20)と、を備える非接触型電力伝送システムであって、
第1電極と第2電極との間に送電コイルと直列に接続されているコンデンサ(102)を備え、
交流発生部が第1電極と第2電極とを介して送電コイルに交流電流を流すことにより、送電コイルが電磁誘導によって受電装置に受電コイルを介して送電し、
送電コイルが電磁誘導によって受電コイルに送電する際に送電コイルの漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するようにコンデンサの静電容量が設定されており、
前記受電装置が前記送電装置に対して変位可能に構成されており、
前記受電装置が所定範囲内に位置するとき、前記送電コイルが電磁誘導によって前記受
電装置に前記受電コイルを介して送電し、
前記受電コイルが前記所定範囲内で前記漏れインダクタンスが最も大きくなる位置に位
置した場合における前記漏れインダクタンスの値を前記漏れインダクタンスの最大値とし
、
前記漏れインダクタンスの最大値に基づいて決められる前記送電コイルの漏れリアクタ
ンスの値を漏れリアクタンスの最大値とし、
前記漏れリアクタンスの最大値が前記コンデンサのインピーダンスと同等になるように
前記コンデンサの前記静電容量が設定されている非接触型電力伝送システム。
【0012】
したがって、送電コイルの漏れインダクタンスによって生じる電圧降下が抑えられる。このため、非接触型電力伝送システムにおいて、送電コイルおよび受電コイルの間の高い送電効率を確保することができる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態における非接触型充電システムが適用される工場内部を上側から視た全体構成図である。
【
図2】
図1の第1実施形態における移動型作業ロボットが充電スポットに停止して送電装置が受電装置に送電している状態を示している図である。
【
図3】
図1の第1実施形態における送電装置、および移動型作業ロボットのそれぞれの電気回路構成を示す電気回路図である。
【
図4】
図3の第1実施形態における送電コイル、および受電コイルが互いに対向している状を示す斜視図である。
【
図5】
図4の送電コイル、および受電コイルをZ方向一方側から視た図である。
【
図8】
図3の受電装置の制御回路におけるSOC・充電情報送信処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図3の受電装置のロボット制御回路におけるロボット停止制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】
図3の送電装置の制御回路における充電制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】
図1の第1実施形態において、(a)充放電、(b)SOC、(c)SOC検出値、(d)送電状態、(e)移動型作業ロボット、(f)移動台車、(g)距離センサのそれぞれの状態を示すタイミングチャートである。
【
図12】
図1の第1実施形態において、送電コイルと受電コイルとの間に位置ずれが生じた場合における漏れインダクタンスの変化について説明を補助するための図である。
【
図13A】
図1の第1実施形態において、送電コイルと受電コイルとの間に位置ずれが生じた場合における充電電力について説明を補助するための図である。
【
図13B】漏れインダクタンスを補償するためのコンデンサを用いない対比例において、送電コイルと受電コイルとの間に位置ずれが生じた場合における充電電力について説明を補助するための図である。
【
図14A】
図1の第1実施形態において、送電コイルと受電コイルとの間に位置ずれが生じた場合における充電効率について説明を補助するための図である。
【
図14B】漏れインダクタンスを補償するためのコンデンサを用いない対比例において、送電コイルと受電コイルとの間に位置ずれが生じた場合における充電効率について説明を補助するための図である。
【
図15A】
図1の第1実施形態において、縦軸を蓄電池に蓄えられる充電電力とし、横軸を時間とした充電電力の波形を示す図である。
【
図15B】
図15中の充電開始時のA期間の充電電力の波形を拡大した図である。
【
図16】
図1の第1実施形態において、移動型作業ロボットの稼働率の説明を補助するための図である。
【
図17】本発明の第2実施形態における送電装置、および移動型作業ロボットのそれぞれの電気回路構成を示す電気回路図である。
【
図18】本発明の第3実施形態における送電装置、および移動型作業ロボットのそれぞれの電気回路構成を示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は移動型作業ロボットを用いた非接触型充電システムが適用される工場の全体構成を示している。以下、説明の便宜上において
図1において互いに直交するX方向とY方向とを設定する。
【0017】
工場には、ある製品を構成する数種類(例えば20種類)の部品が収納された通い箱5が陳列された棚群1A、1Bが設置されている。棚群1Aは、棚群1Bに対してY方向一方側に配置されている。
【0018】
棚群1Aは、X方向に並べられている棚1a、1b、・・・・1iを備える。棚1a、1b、・・・・1iには、同種類の複数の部品が収納される複数の通い箱5がY方向に並べられている。
【0019】
棚群1Bには、X方向に並べられている棚1j、1k、・・・・1rを備える。棚1j、1k、・・・・1rには、同種類の複数の部品が収納される複数の通い箱5がY方向に並べられている。
【0020】
棚1aに、
図2に示すように、複数の通い箱5をX方向一方側に搬送する搬送装置2が設けられている。同様に、棚1b、・・・・1iにおいても、複数の通い箱5をX方向一方側に棚毎に搬送する搬送装置2が設けられている。
【0021】
棚1a、1b、・・・・1iのそれぞれのY方向一方側には、送電装置10が棚毎に1つずつ設置されている。すなわち、棚1a、1b、・・・・1iのそれぞれのY方向一方側には、送電装置毎に充電スポット3a、3b、・・・・3iが設定されている。
【0022】
以下、説明の便宜上、棚1a、1b、・・・・1iに設置される送電装置10を棚毎に区別するために、送電装置10a、10b、・・・・10iともいう。棚1a、1b、・・・・1iに設置される充電スポット3を棚毎に区別するために、充電スポット3a、3b、・・・・3iともいう。
【0023】
このことにより、充電スポット3a、3b、・・・・3iがそれぞれX方向に間隔を開けて並べられていることになる。
【0024】
棚1j、1k、・・・・1rのそれぞれのY方向一方側には、送電装置10が棚毎に1つずつ設置されている。すなわち、棚1j、1k、・・・・1rのそれぞれのY方向一方側には、送電装置毎に充電スポット3が設定されている。
【0025】
以下、説明の便宜上、棚1a、1b、・・・・1iに設置される送電装置10を棚毎に区別するために、送電装置10j、10k、・・・・10rともいう。棚1a、1b、・・・・1iに設置される充電スポット3を棚毎に区別するために、充電スポット3j、3k、・・・・3rともいう。
【0026】
このことにより、充電スポット3j、3k、・・・・3rがそれぞれX方向に間隔を開けて並べられていることになる。
【0027】
本実施形態の充電スポット3a・・・・3i、3j・・・・3rは、移動型作業ロボット4毎の受電装置20が送電装置10a、10b、・・・・10rから電力を受電して蓄電池200に充電するための充電エリアである。
【0028】
次に、本実施形態の複数の移動型作業ロボット4および送電装置10の電気回路構成について
図2、
図3を参照して説明する。
【0029】
複数の移動型作業ロボット4は、それぞれ、作業ロボットとしてのロボットアーム30a、30bを搭載する移動台車31に受電装置20が搭載されて構成されている。移動台車31は、電動モータによって駆動される複数のタイヤ31aを備え、工場内を移動可能に構成されている。
このため、受電装置20は、送電装置10a・・・・10i、10j・・・・10rに対して変位が可能に構成されている。ロボットアーム30a、30bは、電動モータによって駆動されて、部品のピッキング作業や部品の組み付けを実施する。
【0030】
受電装置20は、蓄電池200、受電コイル201、整流回路203、チョークコイル204、平滑コンデンサ205、電流センサ206、電圧センサ207、制御回路210、発光素子211、アンテナ212、および、ロボット制御回路230を備える。
【0031】
蓄電池200は、リチウムバッテリ220、およびSOC検出回路221を備える。リチウムバッテリ220は、整流回路203の出力電圧によって充電される非水系二次電池である。このことにより、リチウムバッテリ220は、後述するように送電装置10a、10b、・・・・10rのいずれか1つの送電装置から送電される電力を蓄えることになる。
【0032】
蓄電池200に蓄えられる電力は、負荷300に供給される。本実施形態の蓄電池200としては、ロボットアーム30a、30bを駆動する電動モータや移動台車31の複数のタイヤ31aを駆動する電動モータが用いられる。
【0033】
SOC検出回路221は、リチウムバッテリ220の正極電極および負極電極の間の電圧、および正極電極(或いは、負極電極)に流れ込む電流に基づいてリチウムバッテリ220における充電率を示すSOCを求める。SOCは、次の数式(1)で表される百分率である。
【0034】
SOCは、次の数式(1)で表される百分率である。
【0035】
SOC=Da÷Db×100(%)・・・・(数式1)
ここで、Daは、実際のリチウムバッテリ220に蓄えられている残電力量(Ah)であり、Dbは、満充電時のリチウムバッテリ220に蓄えられる満充電電力量(Ah)である。
【0036】
電圧センサ207は、リチウムバッテリ220の正極電極および負極電極の間の電圧Vdを求める。電流センサ206は、リチウムバッテリ220と整流回路203との間に流れる電流を検出する。本実施形態では、電流センサ206は、リチウムバッテリ220の負極電極から整流回路203の出力電極203bに流れる電流Idを検出する。
【0037】
本実施形態では、電圧センサ207の検出値、および電流センサ206の検出値は、蓄電池200の充電状態を示す情報であり、後述するように、制御回路110によるインバータ回路103の制御に用いられる。
【0038】
受電コイル201は、送電コイル101a、101b、・・・・101i、101j、101k、・・・・101rから電磁誘導によって受電する。受電コイル201の構造については、後述する。なお、以下、説明の便宜上、送電コイル101a、101b、・・・・101i、101j、101k、・・・・101rのうちいずれか1つの送電コイルを示す場合には、符号の記載を省略して単に送電コイル101ともいう。
【0039】
整流回路203は、受電コイル201から出力される交流電圧を整流して整流電圧を出力電極P1、P2から出力する。整流回路203は、ダイオードD1、D2、D3、D4から構成されているブリッジ回路である。
【0040】
ダイオードD1、D4は、受電コイル201の出力電極P1、P2の間に直列接続されている。ダイオードD3、D4は、受電コイル201の出力電極P1、P2の間に直列接続されている。
出力電極P1は、ダイオードD1のアノード電極とダイオードD2のカソード電極とが接続される共通接続端子である。出力電極P2は、ダイオードD3のカソード電極とダイオードD4のアノード電極とが接続される共通接続端子である。
【0041】
チョークコイル204は、平滑コンデンサ205とともに、整流回路203の出力電力の脈動を抑えるフィルタ回路209を構成する。チョークコイル204は、整流回路203の出力電極203aと平滑コンデンサ205の正極電極との間に配置されている。平滑コンデンサ205は、整流回路203の出力電極203a、203bの間に配置されている。
出力電極203aは、ダイオードD1、D4のカソード電極が接続される共通接続端子である。出力電極203bは、ダイオードD2、D3のアノード電極が接続される共通接続端子である。
制御回路210は、マイクロコンピュータ、メモリ、周辺回路等によって構成されている。制御回路210は、メモリに予め記憶されるコンピュータプログラムにしたがって、充電制御処理を実行する。発光素子211は、制御回路210によって制御されて、発光する。
【0042】
制御回路210は、充電制御処理の実行に伴って、充電電力値やSOCを含む送信信号をアンテナ212から出力させたり、ロボット制御回路230に指令信号を出力する。
【0043】
ロボット制御回路230は、マイクロコンピュータ、メモリ、周辺回路等によって構成されている。ロボット制御回路230は、メモリに予め記憶されるコンピュータプログラムにしたがって、ロボット制御処理を実行する。ロボット制御回路230は、ロボット制御処理の実行に伴って、ロボットアーム30a、30bや移動台車31の複数のタイヤ31aを制御する。
【0044】
図3の本実施形態の送電装置10a、10b、・・・・10i、10j、10k、・・・・10rは、AC/DCコンバータ120の出力電極121、122の間で並列接続されている。
【0045】
AC/DCコンバータ120は、工場内の商用三相交流電源400の出力電圧を直流電圧に変換して直流電圧を出力電極121、122から送電装置10a、10b、・・・・10i、10j、10k、・・・・10rに出力する。
【0046】
送電装置10a、10b、・・・・10i、10j、10k、・・・・10rは、AC/DCコンバータ120から出力される出力電力を送電コイル101から電磁誘導によって受電コイル201に送電させる。
【0047】
本実施形態の商用三相交流電源400は、例えば、出力電圧200V、周波数60Hzである三相の交流電圧を出力する。
【0048】
送電装置10a・・・・10i、10j・・・・10rは、それぞれ、送電コイル101およびコンデンサ102を備え、かつ同一の回路構成を有している。以下、送電装置10a・・・・10i、10j、・・・・10rに設けられている送電コイル101を送電装置毎に区別するために、送電コイル101a・・・・101i、101j・・・・101rともいう。
【0049】
送電装置10は、送電コイル101、コンデンサ102、インバータ回路103、アンテナ104、制御回路110、および受光素子111を備える。
【0050】
インバータ回路103は、スイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4、および平滑コンデンサChを備える。
【0051】
スイッチング素子SW1、SW2は、AC/DCコンバータ120の出力電極121、122の間で直列接続されている。スイッチング素子SW3、SW4は、AC/DCコンバータ120の出力電極121、122の間で直列接続されている。
【0052】
スイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4としては、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタなどの各種の半導体スイッチング素子が用いられる。
【0053】
平滑コンデンサChは、AC/DCコンバータ120の出力電極121、122の間に接続されている。平滑コンデンサChは、AC/DCコンバータ120の出力電圧を平滑化する。
【0054】
スイッチング素子SW1、SW2の共通接続端子を共通接続端子T1(すなわち、第1電極)とし、スイッチング素子SW3、SW4の共通接続端子を共通接続端子T2(すなわち、第2電極)とする。共通接続端子T1、および共通接続端子T2は、インバータ回路103は、交流電圧を出力する出力電極を構成する交流発生部である。
【0055】
インバータ回路103は、スイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4のスイッチングによって、AC/DCコンバータ120の出力電圧に基づいて共通接続端子T1、T2から交流電圧を出力する。
【0056】
本実施形態のインバータ回路103の制御方式としては、例えば、周知のフェーズ・シフト型のPWM制御が用いられる。
【0057】
送電コイル101は、インバータ回路103の共通接続端子T1、T2の間に接続されている。送電コイル101は、インバータ回路103から流れる交流電流に基づいて電磁誘導によって送電する。送電コイル101の構造については後述する。
【0058】
コンデンサ102は、送電コイル101の漏れインダクタンスに起因する電圧降下を補償するために用いられる。コンデンサ102の機能の説明は後述する。
【0059】
受光素子111は、発光素子211から発光される光の強度を示す検出信号を出力する。受光素子111は、発光素子211とともに、受電コイル201および送電コイル101aの間の距離を測定するための距離センサを構成する。本実施形態では、発光素子211としては、赤外線を発生する赤外線発光ダイオードが用いられる。
【0060】
次に、本実施形態の送電コイル101および受電コイル201の構造について
図4、
図5、
図6を参照して説明する。以下、説明の便宜上、
図4においてXYZ座標を設定する。
図4のXYZ座標と
図1のXY座標とは異なる。
【0061】
送電コイル101は、
図4、
図5、および
図6に示すように、巻線部11とフェライトコア12とを備える。巻線部11は、磁芯部12aの回りに巻かれている。巻線部11は、共通接続端子T1、T2の間においてコンデンサ102と直列接続されている。巻線部11は、リッツ線によって形成されている。巻線部11は、突起部12c、12dの間に配置されている。
【0062】
フェライトコア12は、フェライト材料によって断面コ字状である半箱状に形成されている。具体的には、フェライトコア12は、磁芯部12a、板部12b、および突起部12c、12dを備える。
【0063】
磁芯部12aは、板部12bからZ方向一方側に突起するように形成されている。板部12bは、Y方向およびX方向に拡がる板状に形成されている。突起部12cは、板部12bのうちY方向一方側からZ方向一方側に突起するように形成されている。突起部12dは、板部12bのうちY方向他方側からZ方向一方側に突起するように形成されている。
【0064】
受電コイル201は、巻線部21とフェライトコア22とを備える。巻線部21は、磁芯部22aの回りに巻かれている。巻線部21は、出力電極P1、P2の間に接続されている。巻線部21は、リッツ線によって形成されている。巻線部21は、突起部22c、22dの間に配置されている。
【0065】
本実施形態では、受電コイル201の巻線部21の巻数は、送電コイル101の巻線部11の巻数に比べて少ない値に設定されている。受電コイル201の巻線部21の巻数は、例えば、1ターンであり、送電コイル101の巻線部11の巻数は、例えば、10ターンである。
【0066】
フェライトコア22は、フェライト材料によって断面コ字状である半箱状に形成されている。具体的には、フェライトコア22は、磁芯部22a、板部22b、および突起部22c、22dを備える。
【0067】
磁芯部22aは、板部22bからZ方向他方側に突起するように形成されている。板部22bは、Y方向およびX方向に拡がる板状に形成されている。突起部22cは、板部22bのうちY方向一方側からZ方向他方側に突起するように形成されている。突起部22dは、板部22bのうちY方向他方側からZ方向他方側に突起するように形成されている。
【0068】
このように構成されるフェライトコア22、12は、巻線部21、11の間で磁界を通過させる磁界経路を構成する。
【0069】
移動型作業ロボット4が充電スポット3aに停止して受電コイル201が送電コイル101aに対向している状態で、磁芯部22a、12aは隙間Gapを介して互いに対向している。この状態では、突起部22c、12cは、隙間Gapを介して互いに対向している。突起部22d、12dは、隙間Gapを介して互いに対向している。このとき、受電コイル201および送電コイル101は、非接触状態で、トランス結合されている。
【0070】
次に、本実施形態のコンデンサ102aの機能の説明について、
図7を参照して説明する。
図7に
図3の回路中VII領域の等価回路を示す。
図7中kは、送電コイル101と受電コイル201との間の結合係数であり、L
1は、送電コイル101の自己インダクタンスであり、k×L
1は、送電コイル101の有効インダクタンスである。有効インダクタンスは、送電コイル101において送電に寄与するインダクタンスである。(1-k)×L
1は、送電コイル101の漏れインダクタンスである。
【0071】
V1’は、送電コイル101の2つの出力電極の間に生じる電圧であり、V1から「漏れインダクタンスによって生じる電圧」を引いた値である。V2’は、送電コイル101から電磁誘導によって送電される電力によって受電コイル201の出力電極P1、P2の間に生じる電圧である。
【0072】
インバータ回路103の共通接続端子T1、T2からコンデンサ102aを通して送電コイル101に流れる入力電流をI1とし、このI1のうち、送電コイル101の励磁に起用しない電流を(I1-I1’)とする。
【0073】
一方、受電コイル201に流れる交流電流をI
2とする。(1-k)×L
2は、受電コイル201の漏れインダクタンスである。ωは、電気角速度であり、fは、インバータ回路103から出力される交流電流の周波数である。
V
1は、インバータ回路103の共通接続端子T1、T2の間の電圧である。すなわち、V
1は、インバータ回路103の出力電圧である。V
2は、整流回路203の出力電極P1、P2の間の電圧である。
まず、V
1は、数1の式で表される。V
2は、数2の式で表される。ここで、送電コイル101の巻数と受電コイル201の巻数との比率である巻数比をn:1とすると、V
1’、V
2’、およびnは、数3の式で表される。
さらに、n、L
1、およびL
2は、数4の式で表される。一般的に、ω、fは、数5の式で表される。すると、V
2は、数6の式で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
本実施形態では、送電コイル101の漏れインダクタンス(H)(すなわち、×L
1(1-k))にω(すなわち、2πf)を掛けた値を送電コイル101の漏れリアクタンス(Ω)(すなわち、ω×L
1((1-k))とする。漏れリアクタンスは、漏れインダクタンスに基づいて定められる送電コイル101のリアクタンスの値である。
ここで、コンデンサ102の静電容量をC
1とすると、数7の式に示すように、コンデンサ102の容量リアクタンス(Ω)である(1/(ω・C
1))は、送電コイル101の漏れリアクタンス(Ω)である(ω・L
1(1-k))に一致している。
【数7】
ここで、送電コイル101aの漏れインダクタンスは、受電コイル201と送電コイル101との位置関係によって変化する。
すなわち、送電コイル101の漏れインダクタンスは、充電スポット3の範囲内(すなわち、所定範囲内)における受電装置20の受電コイル201の位置に応じて、変化する。
ここで、充電スポット3の範囲内で漏れインダクタンスが最も大きくなる位置に受電コイル201が位置した場合における漏れインダクタンスの値を漏れインダクタンスの最大値とする。以下、この漏れインダクタンスの最大値を漏れインダクタンスの最大値XLmax(=L
1(1-k))ともいう。
【0074】
そして、充電スポット3の範囲内で漏れインダクタンスが最も大きくなる位置に受電コイル201が位置した場合における漏れリアクタンスの値(すなわち、漏れリアクタンスの最大値)は、(ω・XLmax)となる。
本実施形態では、コンデンサ102のインピーダンスである(1/(ω・C1))が送電コイル101の漏れリアクタンスの最大値(すなわち、ω・XLmax)に一致するようにコンデンサ102の静電容量C1が設定されている。
【0075】
次に、数6の式に数7の式を代入すると、V
2は、数8の式で表される。一方、コンデンサ102aが送電装置10aに採用されていない場合には、V
2は、数9の式で表される。
【数8】
【数9】
以上により、V
2において、送電コイル101の漏れリアクタンス(すなわち、ω・L
1(1-k))による電圧降下を補償するようにコンデンサ102の静電容量が設定されていることが分かる。
【0076】
次に、本実施形態の製造システムの作動について
図8、
図9、
図10等を参照して説明する。
【0077】
移動型作業ロボット4は、ロボット制御回路230によって複数のタイヤ31aが駆動されて、通い箱5前、すなわち、棚1a、1b、・・・・1iのそれぞれのY方向一方側(すなわち、充電スポット3a、3b、・・・・3i)に順次移動する。
【0078】
移動型作業ロボット4は、ロボット制御回路230によって複数のタイヤ31aが駆動されて、充電スポット3a、3b、・・・・3iのそれぞれにおいて順次、停止する。
【0079】
移動型作業ロボット4が充電スポット3a、3b、・・・・3iで停止しているとき、ロボットアーム30a、30bがロボット制御回路230によって制御されて、通い箱5から部品をピッキングする。
【0080】
このようにロボットアーム30a、30bが部品をピッキングした後、ロボットアーム30a、30bが部品に対して作業(例えば、組付け)を実施しながら、次の部品通い箱5前(すなわち、次の充電スポット)まで移動する。そして、同様に次の部品をピッキングする。
【0081】
次に、本実施形態の移動型作業ロボット4毎の受電装置20の制御回路210、ロボット制御回路230、および送電装置10a・・・・10rの制御回路110aの作動の詳細について
図8、
図9、
図10を参照して別々に説明する。
【0082】
まず、送電装置10a・・・・10rのうち代表としての送電装置10aについて説明する。すなわち、送電装置10aの制御回路110aは、受光素子111の検出信号に基づいて、受光素子111で検出される受光強度が閾値以上であるか否かを判定することにより、送電コイル101を検出したか否かを判定する。
【0083】
ここで、送電コイル101とは、送電コイル101a、101b、・・・・101i、101j、101k、・・・・101rのうちいずれか1つの送電コイルのことである。そして、受電コイル201および送電コイル101の距離が離れていると、受光素子111で検出される受光強度が閾値未満となる。このとき、制御回路210は、送電コイル101を検出しないと判定する。すなわち、制御回路210は、移動型作業ロボット4が充電スポット内に入っていないと判定することになる。
【0084】
これに伴い、制御回路210は、送電コイル101が未検出である旨を示す送電コイル未検出信号をアンテナ104から電波を介して送信する。
【0085】
一方、受電コイル201と送電コイル101との間の距離が短くなると、受光素子111で検出される受光強度が閾値以上となる。このため、制御回路210は、送電コイル101を検出したと判定する。すなわち、制御回路210は、移動型作業ロボット4が充電スポット3の範囲内に入っていると判定することになる。
【0086】
これに伴い、制御回路210は、送電コイル101が検出された旨を示す送電コイル検出信号をアンテナ104aから電波を介して送信する。
【0087】
このように、制御回路210は、受光素子111で検出される受光強度が閾値以上であるか否かによって、送電コイル検出信号、或いは送電コイル未検出信号をアンテナ104から電波を介して送信する。
【0088】
本実施形態の制御回路210は、制御回路110(すなわち、送電制御部)から送信される送電コイル検出信号に応じて、SOC・充電情報送信処理を実行する。ロボット制御回路230は、制御回路110から送信される送電コイル検出信号に応じて、台車停止処理を実行する。
(制御回路210)
制御回路210は、
図8のフローチャートにしたがって、SOC・充電情報送信処理を繰り返し実行する。
【0089】
まず、制御回路210は、ステップS211において、制御回路110から送信される送電コイル検出信号をアンテナ212を介して受信したか否かを判定する。
【0090】
このとき、制御回路210は、送電コイル検出信号をアンテナ212を介して受信しないとき、ステップS211においてNOと判定する。これに伴い、制御回路210は、ステップS211の戻り、送電コイル検出判定を実行する。
【0091】
このため、制御回路210は、受電コイル201と送電コイル101との間が離れている状態が継続される限り、ステップS211のNO判定を繰り返し実行することになる。
【0092】
その後、制御回路210は、受電コイル201と送電コイル101との間の距離が短くなると、送電コイル検出信号をアンテナ212を介して受信して、ステップS211においてYESと判定する。
【0093】
これに伴い、次のステップS212(すなわち、受信制御部)において、制御回路210は、SOC検出回路221からSOC検出値を取得して、この取得したSOC検出値と充電電力情報とを含む送信信号をアンテナ212から電波を介して送信させる。
ここで、充電電力情報は、電流センサ206の検出信号、および電圧センサ207の検出信号を含む情報である。その後、制御回路210は、ステップS211の送電コイル検出判定を再び実行する。
【0094】
このため、制御回路210は、ステップS211の送電コイル検出判定処理とステップS212(すなわち、受電制御部)の送信処理とを繰り返し実行することになる。これに伴い、SOC検出値と充電電力情報とが制御回路210から制御回路110に繰り返し送信される。
(ロボット制御回路230)
ロボット制御回路230は、
図9のフローチャートにしたがって、ロボット停止制御処理を繰り返し実行する。ロボット停止制御処理は、充電スポット3a、3b、・・・・3iに順次移動する際に、ある充電スポットから次の充電スポットに移動しているときに、実行される。
【0095】
まず、ロボット制御回路230は、ステップS231において、制御回路210から送電コイル検出信号を受信したか否かを判定する。このとき、ロボット制御回路230は、制御回路210から送電コイル検出信号を受信しないときにはステップS231においてNOと判定する。
【0096】
これに伴い、ロボット制御回路230は、ステップS231の判定を再び実行する。このため、ロボット制御回路230は、制御回路210から送電コイル検出信号を受信しない限りステップS231のNO判定を繰り返し実行する。
【0097】
その後、ロボット制御回路230は、制御回路210から送電コイル検出信号を受信すると、ステップS231でYESと判定する。すると、ロボット制御回路230は、次のステップS232において、移動型作業ロボット4の移動台車31の複数のタイヤ31aを制御して移動台車31を停止させる。
【0098】
このため、移動型作業ロボット4が棚1a、1b、・・・・1rのそれぞれのY方向一方側(すなわち、充電スポット3の範囲内)で停止して受電コイル201が送電コイル101に対向している状態になる。
このように、ロボット制御回路230は、ステップS231の判定処理とステップS232の台車停止処理とを交互に繰り返す。
(制御回路210)
制御回路210は、
図10のフローチャートにしたがって、充電制御処理を繰り返し実行する。
【0099】
まず、制御回路210は、ステップS240において、受光素子111で検出される受光強度が閾値以上であるか否かを判定することにより、受電コイル201を検出したか否かを判定する。
【0100】
このとき、送電コイル101に対して受電コイル201が離れていると、受光素子111で検出される受光強度が閾値未満となる。すなわち、送電コイル101に対して受電コイル201が離れていると、距離センサの検出信号がローレベルとなる。
【0101】
このとき、制御回路210は、受電コイル201を検出しないとしてステップS240においてNOと判定する。これに伴い、制御回路210は、ステップS241の充電停止処理(すなわち、充電停止部)を実行して、ステップS240の受電コイル201の検出判定を再び実行する。
【0102】
ステップS241の充電停止処理は、インバータ回路103におけるスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4を停止するための処理である。
【0103】
このため、制御回路210は、受光素子111で検出される受光強度が閾値未満である限り、ステップS241の充電停止処理とステップS240の受電コイルの検出判定とを繰り返し実行する。
【0104】
このため、インバータ回路103のスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4が停止して共通接続端子T1、T2から交流電圧が出力することが停止される。このため、蓄電池200への充電が停止されることになる。
【0105】
その後、送電コイル101に受電コイル201が近づくと、受光素子111で検出される受光強度が閾値以上となる。すなわち、送電コイル101に対して受電コイル201が近づいて充電スポット3の範囲内に受電コイル201が位置すると、距離センサの検出信号がハイレベルとなる。
【0106】
このとき、制御回路210は、受電コイル201を検出したとしてステップS240においてYESと判定する。
【0107】
次に、制御回路210は、ステップS242(すなわち、受信部)において、受電装置20のアンテナ212から送信される送信信号を受信する。
【0108】
すると、制御回路210は、ステップS243(すなわち、充電判定部)において、送信信号に含まれるSOCの検出値に基づいて、SOCが75%以下であるか否かを判定する。
【0109】
このとき、制御回路210は、SOCが75%以下であるときには、ステップS243において、YESと判定する。これに伴い、制御回路210は、ステップS245(すなわち、充電制御部)において、急速充電モードを実行する。
【0110】
このため、制御回路210は、送信信号に含まれる充電電力情報に基づいて、蓄電池200に充電される充電電力を目標値に近づけるように、インバータ回路103のスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4をスイッチングする。
【0111】
このため、インバータ回路103は、AC/DCコンバータ120の出力電極121、122からの出力電圧に基づいて、共通接続端子T1、T2から交流電圧を出力する。
【0112】
これに伴い、インバータ回路103の共通接続端子T1、T2の間において、送電コイル101、およびコンデンサ102aに交流電流が流れる。このため、送電コイル101は、電磁誘導によって、受電コイル201に電力を送る。
【0113】
これに伴い、受電コイル201は、送電コイル101から電磁誘導によって送電される電力に基づく交流電圧を出力する。すると、整流回路203は、受電コイル201の出力電圧を整流して整流電圧を出力する。
【0114】
このとき、整流回路203の出力圧は、フィルタ回路209によって平滑化される。蓄電池200のリチウムバッテリ220は、フィルタ回路209によって平滑化された電圧によって充電される。
【0115】
本実施形態では、蓄電池200のリチウムバッテリ220は、移動型作業ロボット4が充電スポット3a、3b、・・・・3iで停止して通い箱5から部品をピッキングしているピッキング期間中に充電される。
【0116】
受電装置20と送電装置10a、10b、・・・・10rとは、以下の数式(2)(3)の電力収支関係を満たすリチウムバッテリ220への充電電力が設定されている。
【0117】
充電電力[W]≧必要給電電力量[W・sec]/充電可能時間[sec]・・・(2)
ここで、充電可能時間は、例えば部品をピッキングするためのピッキング期間であり、例えば3secである。必要給電電力量は、移動型作業ロボット4が第1の充電スポットから第2の充電スポットまでに移動する際に移動型作業ロボット4に要する消費電力量である。
【0118】
必要電力量[W・sec]=(ロボットアーム30a、30bの動作電力×動作時間)
+(走行電力×走行時間)・・・(3)
ここで、ロボットアーム30a、30bの動作電力とは、部品のピッキングや組み付け等の作業に要する電力である。動作時間は、ロボットアーム30a、30bが部品のピッキングや組み付け等の作業を実施する時間であり、例えば、7secである。走行電力は、移動型作業ロボット4が第1の充電スポットから第2の充電スポットまでに移動する際に移動台車31に要する電力である。走行時間は、移動型作業ロボット4の動作時間から移動台車31の停車時間を差し引いた時間である。
【0119】
以上により、例えば、移動型作業ロボット4が充電スポット3aで停止して部品をピッキングしている期間中に、必要電力量以上の電力量をリチウムバッテリ220に充電することになる。
【0120】
必要電力量とは、例えば、充電スポット3aから次の充電スポット3bに移動する際に、ロボットアーム30a、30bおよび移動台車31のそれぞれに必要な電力量を加算した電力量である。
また、制御回路210は、SOCが75%よりも大きくなると、ステップS243において、NO判定する。これに伴い、制御回路210は、ステップS244(すなわち、充電停止制御部)において、インバータ回路103のスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4を停止する。このことにより、蓄電池200への充電が停止されることになる。
その後、制御回路210は、ステップS240の判定を再び実行する。このため、制御回路210は、ステップS240、S241、S242、S243、S244、S255の各処理を繰り返すことになる。
【0121】
次に、本実施形態の移動型作業ロボット4を用いた製造システムの概略作動について
図11を参照して説明する。
【0122】
まず、
図11は、移動型作業ロボット4が充電スポット3a→充電スポット3b→充電スポット3cの順に移動していき、3つの充電スポット3a、3b、3cでピッキング作業する例を示している。
【0123】
移動型作業ロボット4が充電スポットで停止する毎に、受電装置20は、送電装置10a、10b、10cのいずれかから電磁誘導によって受電されて蓄電池200に充電される。移動型作業ロボット4が充電スポットから離れると、蓄電池200への充電が停止される。したがって、
図11(a)(d)に示すように、蓄電池200の充電と放電とが交互に繰り返されることになる。
【0124】
この際に、
図11(b)、(c)に示すように、移動型作業ロボット4が充電スポット3bで停止して部品をピッキングしているときに、SOCが、75%以上になる。すると、制御回路210は、インバータ回路103のスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4を停止する。このため、移動型作業ロボット4が部品をピッキングしているときにでも、蓄電池200の充電が停止される。
【0125】
その後、移動型作業ロボット4が部品の組み付け作業をしながら充電スポット3cに移動する。
【0126】
その後、移動型作業ロボット4が充電スポット3cで停止すると、制御回路210は、再び、上記SOCに基づいて、インバータ回路103のスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4をスイッチング制御する。このため、充電スポット3cにおいて、蓄電池200の急速充電が開始される。
【0127】
このように、制御回路210は、上記SOCに基づいて、インバータ回路103のスイッチング素子SW1、SW2、SW3、SW4をスイッチング制御するこおtにより、SOCが75%付近を維持しながら、移動型作業ロボット4が移動・作業を継続する。
【0128】
図11(c)中SOC検出値のHiとは、SOCが75%以上であることを意味する。
【0129】
以上説明した本実施形態によれば、非接触型充電システムは、インバータ回路103と、共通接続端子T1、T2の間に接続されている送電コイル101とを備える送電装置10を備える。送電装置10は、共通接続端子T1、T2の間に送電コイル101と直列に接続されているコンデンサ102を備える。
非接触型電力伝送システムは、受電コイル201を備える受電装置20を備える。インバータ回路103が共通接続端子T1、T2を介して送電コイル101に交流電流を流すことにより、送電コイル101が電磁誘導によって受電装置20に受電コイル201を介して送電する。
【0130】
送電コイル101が電磁誘導によって受電コイル201に送電する際に送電コイル101の漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するようにコンデンサ102の静電容量C1が設定されている。
【0131】
したがって、送電コイル101の漏れリアクタンスを起因とする電圧降下を抑制することができるので、送電コイル101が電磁誘導によって受電コイル201に効率的に送電することができる。
【0132】
これにより、送電コイル101から受電コイル201への高い送電効率を確保することができる。これに伴い、送電コイル101から送電される電力によって受電装置20の蓄電池200に高効率に充電することができる。
【0133】
本実施形態では、送電コイル101および受電コイル201の間の距離が短い場合には、当該距離が長い場合に比べて、当該距離によって生じる送電コイル101の自己インダクタンスが変化量が大きい。
【0134】
このため、送電装置10において、送電コイル101とコンデンサとが直列に接続される共振回路を用いた磁界共振方式で送電する場合には、次のような問題が生じる。
【0135】
例えば、移動型作業ロボット4が充電スポット内に停止しているときに、隙間Gapが最大で、かつ送電コイル101および受電コイル201の間の位置ずれが最大時において、インバータ駆動周波数と共振回路の共振周波数が同じになるように設定したとする。
【0136】
この場合、隙間Gapが最小で、かつ位置ずれが最小時になると、共振周波数は、隙間Gapが最大で、かつ位置ずれが最大時である場合に比べて、約1/√5倍と大きくずれてしまう。このため、送電装置10の共振回路の共振が停止して、送電コイル101から受電コイル201への送電が停止してしまう。
【0137】
これに対して、本実施形態では、送電装置10において送電のために共振回路を用いていない。このため、送電コイル101と受電コイル201との間の距離が短くて、送電コイル101の自己インダクタンスが大きく変化しても、送電装置10において送電が継続される。
【0138】
以上により、送電コイル101および受電コイル201の間の距離が短い場合でも、送電コイルおよび受電コイル201の間の高い送電効率を確保することができる。
【0139】
また、送電コイル101および受電コイル201の間の相対位置によって送電コイル101の漏れインダクタンスが変化する。
【0140】
そこで、本実施形態では、受電コイル201が充電スポット3の範囲内に位置する際に生じる送電コイル101の漏れリアクタンスの最大値に、コンデンサ102のインピーダンスを一致させるようにコンデンサ102の静電容量C1が設定されている。
【0141】
このため、送電コイル101の出力電圧に不足が生じることなく、送電コイル101から受電コイル201に送電することができる。
【0142】
次に、本実施形態の送電コイル101と受電コイル201との位置ずれと漏れインダクタンスとの関係について
図12、
図13、
図14を参照して説明する。
【0143】
送電コイル101および受電コイル201の間でX方向のずれをXとし、Y方向のずれをYとする。
【0144】
(I)はGapが1mmで、かつX=0、Y=0であるとき、(II)はGapが2.5mmで、かつX=0、Y=0であるとき、(III)はGapが4mmで、かつX=10、Y=10であるときとする。
【0145】
図12に示すように、(I)→(II)→(III)の順で漏れインダクタンスが大きくなる。すなわち、送電コイル101および受電コイル201の間の位置ずれが大きくなるほど、漏れインダクタンスが大きくなる。
【0146】
X=0、Y=0であるときには、送電コイル101の磁芯部12aと受電コイル201の磁芯部22aがX方向、Y方向において一致していることを意味する。
【0147】
X=10、Y=10であるとき、送電コイル101の磁芯部12aと受電コイル201の磁芯部22aがX方向に10mmずれて、Y方向に10mmずれていることを意味する。
【0148】
ここで、コンデンサ102を用いない場合には、
図13(b)に示すように、(III)の場合には、充電電力が低下している。
【0149】
これに対して、本実施形態では、上述の如く、充電スポット3の範囲内において生じる漏れリアクタンスの最大値に、コンデンサ102aの容量リアクタンスである(1/(ω・C1))を一致するようにコンデンサ102aの静電容量C1が設定されている。
【0150】
したがって、送電コイル101および受電コイル201の間の位置ずれが生じても、送電コイル101の出力電圧に不足が生じることなく、送電コイル101から受電コイル201に送電することができる。したがって、本実施形態では、(III)の場合でも、高い充電電力を確保することが分かる。
【0151】
つまり、本実施形態では、
図13(a)の(I)(II)(III)の全ての場合において、蓄電池200の端子間電圧Vbが25.4V、28.6Vのいずれのときでも、蓄電池200において、同等の高い充電電力を確保することができる。
【0152】
さらに、コンデンサ102を用いない場合には、
図14(b)に示すように、(III)の場合には、充電効率が低下している。
【0153】
これに対して、本実施形態では、
図14(a)に示すように、(III)の場合でも、高い充電効率を確保することが分かる。つまり、
図14(a)から分かるように、(I)、(II)、(III)の全ての場合において、蓄電池200の端子間電圧Vbが25.4V、28.6Vのいずれのときでも、同等の高い充電効率を確保することができる。
【0154】
本実施形態では、受電コイル201の巻数が送電コイル101の巻数よりも少ない巻数に設定されている。このため、受電コイル201の巻数が送電コイル101の巻数よりも多い巻数に設定する場合に比べて、受電コイル201の電気抵抗値、およびコイル電流密度のそれぞれを小さくすることができる。
【0155】
特に、本実施形態では、受電コイル201の巻数が、例えば、1ターンに設定されている。この場合、受電コイル201の漏れインダクタンスが極めて小さくなる。したがって、
受電コイル201の漏れインダクタンスをコンデンサで補償すると、非常に大きな静電容量のコンデンサを必要とする。
【0156】
そこで、本実施形態では、受電コイル201の漏れインダクタンスの補償は、実施していない。受電コイル201の漏れインダクタンスは、インバータ回路103のソフトスイッチングに用いる。
【0157】
ここで、移動型作業ロボット4が充電スポット3a、・・・・3rのうち第1充電スポットから次の第2充電スポット(すなわち、第2スポット)に移動する際に移動型作業ロボット4で必要となる消費電力量を必要消費電力量とする。
【0158】
移動型作業ロボット4が第1充電スポット(すなわち、第1スポット)に停止中に、送電装置10は、蓄電池200に蓄えられる電力量が必要消費電力量以上になるまでインバータ回路103を制御して送電コイル101から受電コイル201に送電する。
【0159】
具体的には、蓄電池200は、移動型作業ロボット4が充電スポット3a・・・・3rで停止して通い箱5から部品をピッキングしているピッキング期間中に充電される。ピッキング期間は、充電可能時間であって、例えば3secである。
【0160】
ここで、
図15A、
図15Bにおいて、受電装置20から蓄電池200への充電される充電電力を縦軸として、時間を時間とした充電電力の波形を示す。
図15Bは、
図15Aの中のA期間の充電電力の波形を拡大した図である。
【0161】
図15Bから分かるように、蓄電池200への充電電力は、受電装置20が充電を開始してから充電電力の目標値(すなわち、目標電力値)に到達するのに要する時間は、10msecとなる。このため、ピッキング期間中に、蓄電池200に十分充電電力量な急速充電することができる。
【0162】
本実施形態では、送電装置10の制御回路110は、リチウムバッテリ220のSOC検出値が70%以上であるときには、インバータ回路103のスイッチングを停止して送電コイル101の送電を停止する。
【0163】
一方、制御回路110は、リチウムバッテリ220のSOC検出値が70%未満であるときには、インバータ回路103のスイッチングを開始して送電コイル101の送電を実施する。
【0164】
このため、ピッキング期間中であっても、SOC検出値が70%以上になると、リチウムバッテリ220の充電を停止する。したがって、リチウムバッテリ220のSOC検出値を70%未満(すなわち、所定範囲内)に維持することができる。このため、リチウムバッテリ220における平均的な電力収支を零に近づけることができる。
【0165】
本実施形態では、移動型作業ロボット4がピッキング期間中に受電装置20は、送電装置10から送電される電力を蓄電池200に充電する。移動型作業ロボット4が充電スポット間の移動期間中に部品の組み付け等の作業を行う。移動台車31が蓄電池200に充電するために、停止することはない。
【0166】
したがって、移動台車31が蓄電池200に充電するためだけのために停車する時間を零にすることにより、
図16に示すように、移動型作業ロボット4の稼働率を100%にすることができる。
【0167】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、インバータ回路103の共通接続端子T1、T2の間に送電コイル101にコンデンサ102a1、102a2を直列に接続した例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、
図17に示すように、してもよい。
【0168】
すなわち、本実施形態では、インバータ回路103の共通接続端子T1、T2の間に送電コイル101に2つのコンデンサ102a1、102a2を直列に接続してもよい。
【0169】
コンデンサ102a1、102a2のそれぞれの静電容量をCx、Cyとし、コンデンサ102a1、102a2を合成した静電容量(以下、合成容量という)をCgとする。ここで、Cx、Cy、およびCgは、Cg=Cx・Cy/(Cx+Cy)を満たす。
【0170】
この場合、(1/(ω・Cg))は、送電コイル101の漏れリアクタンスである(ω・L1(1-k))に一致している。漏れリアクタンスとしては、上記第1実施形態と同様に、漏れインダクタンスの最大値XLmax(=L1(1-k))にωを掛けた値を用いてもよい。
本実施形態では、Cx、Cyは、例えば、それぞれ、2C1になる。C1は、上記第1実施形態におけるコンデンサ102の容量リアクタンスである。
このようにコンデンサ102a1、102a2を設けることにより、上記第1実施形態に比べて、送電コイル101のグランドに対する電圧(すなわち、対地電圧)を下げることができる。このため、伝導ノイズの発生等を抑制することができる。
【0171】
なお、本実施形態では、送電装置10において、コンデンサ102に代えてコンデンサ102a1、102a2を備えること以外について、上記第1実施形態と同一である。このため、コンデンサ102a1、102a2以外の構成の説明を省略する。
【0172】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態では、送電装置10a、10b、・・・・10rの電源として商用の三相交流電源400を用いた例について説明した。しかし、これに代えて、本第3実施形態では、
図18に示すように、送電装置10a、10b、・・・・10rの電源として商用単相交流電源401を用いてもよい。
【0173】
この場合、送電装置10a・・10rに対して共通のAC/DCコンバータ120、三相交流電源400を設けるのではなく、送電装置10a・・10rに対して、商用単相交流電源401、AC/DCコンバータ120A、・・120rを用いてもよい。
この場合、送電装置10a・・・・10rに対してそれぞれAC/DCコンバータ120Aが配置されている。このため、上記第1実施形態に比べて、1つ当たりのAC/DCコンバータの電流容量を下げることができる。このため、AC/DCコンバータの冷却能力を下げることができる。したがって、AC/DCコンバータを空冷によって冷却することが可能になる。
【0174】
本実施形態では、商用単相交流電源401としては、周波数60Hzで単相200Vの交流電圧を出力する商用交流電源が用いられている。
【0175】
さらに、本実施形態では、送電装置10において、商用三相交流電源400に代わる商用単相交流電源401と、AC/DCコンバータ120に代わるAC/DCコンバータ120Aとを備えること以外について、上記第1実施形態と同一である。このため、商用単相交流電源401およびAC/DCコンバータ120A以外の構成の説明を省略する。
【0176】
(他の実施形態)
(1)上記第1、第2、第3の実施形態では、本発明の非接触型充電システムを移動型作業ロボットおよび工場に適用した例について説明した。
【0177】
しかし、これに限らず、電磁誘導によって電力を伝送する送電装置および受電装置を備えるシステムであれば、どのようなシステムに本発明の非接触型充電システムを適用してもよい。
【0178】
(2)上記第1、第2、第3の実施形態では、蓄電池200の二次電池としてリチウムバッテリ220を用いた例について説明したが、これに代えて、蓄電池200の二次電池としてリチウムバッテリ220以外の鉛蓄電池など各種の二次電池を用いてもよい。
【0179】
(3)上記第1、第2、第3の実施形態では、ステップS243において、SOCの閾値を75%とした例について説明したが、これに代えて、SOCの閾値を75%以外の値にしてもよい。
【0180】
(4)上記第1、第2の実施形態では、商用三相交流電源400として、200V、周波数60Hzである三相交流電圧を出力する電源を用いた例について説明した。上記第3の実施形態では、商用単相交流電源401として、例えば、単相200Vの交流電圧、周波数60Hzである三相交流電圧を出力する商用交流電源を用いた例について説明した。
【0181】
しかし、これに代えて、上記第1、第2の実施形態の商用三相交流電源400や上記第3の実施形態の商用単相交流電源401として、周波数が50Hzの交流電源を用いてもよい。
或いは、上記第1、第2の実施形態の商用三相交流電源400や上記第3の実施形態の商用単相交流電源401として、出力電圧が200V以外の電圧(例えば、400V)の交流電源を用いてもよい。
(4)なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記にした説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
さらに、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記第1、第2、第3の実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0182】
(まとめ)
上記第1~第3実施形態および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、非接触型電力伝送システムは、第1電極と第2電極とを有する交流発生部と、第1電極と第2電極との間に接続されている送電コイルとを備える送電装置を備える。
非接触型電力伝送システムは、受電コイルを備える受電装置とを備える。
非接触型電力伝送システムは、第1電極と第2電極との間に送電コイルと直列に接続されているコンデンサを備える。
交流発生部が第1電極と第2電極とを介して送電コイルに交流電流を流すことにより、送電コイルが電磁誘導によって受電装置に受電コイルを介して送電する。送電コイルが電磁誘導によって受電コイルに送電する際に送電コイルの漏れインダクタンスによる電圧降下を補償するようにコンデンサの静電容量が設定されている。
第2の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、受電装置が送電装置に対して変位可能に構成されており、受電装置が所定範囲内に位置するとき、送電コイルが電磁誘導によって受電装置に受電コイルを介して送電する。
受電コイルが所定範囲内で漏れインダクタンスが最も大きくなる位置に位置した場合における漏れインダクタンスの値を漏れインダクタンスの最大値とする。
漏れインダクタンスの最大値に基づいて決められる送電コイルの漏れリアクタンスの値を漏れリアクタンスの最大値とする。
漏れリアクタンスの最大値がコンデンサのインピーダンスと同等になるようにコンデンサの静電容量が設定されている。
したがって、受電コイルが所定範囲内で漏れインダクタンスが最も大きくなる位置に位置した場合でも、送電コイルの漏れインダクタンスによって生じる電圧降下が抑えられる。このため、非接触型電力伝送システムにおいて、送電コイルおよび受電コイルの間の高い送電効率を確保することができる。
第3の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、受電コイルの巻数は、送電コイルの巻数よりも少ない巻数に設定されている。このため、受電コイルの電気抵抗値、およびコイル電流密度のそれぞれを小さくすることができる。
第4の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、受電装置は、受電コイルを介して受電した電力を蓄える蓄電池を備える。
第5の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、送電装置は、交流発生部を制御する送電制御部を備える。受電装置は、作業ロボットを搭載して、かつ移動可能に構成されている移動台車に搭載されている。
作業ロボットが作業するための第1スポットおよび第2スポットのそれぞれに送電装置が設置されている。移動台車が第1スポット、或いは第2スポットに停止した際に、受電装置は、送電コイルから電磁誘導によって送電される電力を受電し、この受電した電力を蓄電池に充電する。
移動台車が第1スポットに停止した後に第2スポットに移動するようになっている。作業ロボットおよび移動台車は、蓄電池に蓄える電力によって駆動されるようになっている。
移動台車が第1スポットから第2スポットに移動する際に作業ロボットおよび移動台車において必要となる消費電力量を必要消費電力量としたとき、作業ロボットが第1スポットに停止する。
このとき、送電装置は、蓄電池に蓄えられる電力が必要消費電力量以上になるまで交流発生部を制御して送電コイルから受電コイルに送電する。
これにより、適切な電力量を蓄電池に蓄えることができる。
第6の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、受電装置は、蓄電池の充電率を求め、かつこの求めた充電率を含む送信信号を電磁誘導によって送信させる受電制御部を備える。
送電制御部は、受電制御部からの送信信号を受信する受信部を備え、受信部で受信される送信信号に含まれる充電率が閾値以上であるか否かを判定する充電判定部とを備える。 送電制御部は、充電率が閾値未満であると充電判定部が判定したとき、交流発生部から送電コイルに交流電流を流すように交流発生部を制御することにより、送電コイルから受電コイルに送電する充電制御部を備える。
送電制御部は、充電率が閾値以上であると充電判定部が判定したとき、交流発生部から送電コイルに交流電流を流すことを停止して送電コイルから受電コイルに送電することを止める充電停止制御部とを備える。
これにより、必要以上な電力量を蓄電池に蓄えること未然に防ぐことができる。
第7の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、移動台車が第1スポット、或いは第2スポットに停止し、かつ作業ロボットが作業しているときに、送電装置は、交流発生部を制御して電力を送電コイルから受電コイルに送電する。
これにより、充電のために作業ロボットが停止することが無い。このため、作業ロボットの稼働率を上げることができる。
第8の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、移動台車が第1スポット、或いは第2スポットに停止した際に、第1スポットで作業ロボットが部品をピッキングする作業を実施する。
第9の観点によれば、非接触型電力伝送システムでは、交流発生部は、交流電源の出力される電力に基づいて送電コイルに交流電流を流す。
【符号の説明】
【0183】
3 充電スポット
4 移動型作業ロボット
10 送電装置
20 受電装置
101 送電コイル
201 受電コイル
31 移動台車
200 蓄電池