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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/88 20230101AFI20240125BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20240125BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240125BHJP
   H10N 30/50 20230101ALI20240125BHJP
   H10N 30/067 20230101ALI20240125BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
H10N30/88
H10N30/87
H10N30/20
H10N30/50
H10N30/067
H10N30/853
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020009448
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021118231
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】今野 育
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠志
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0066180(US,A1)
【文献】特開2017-060055(JP,A)
【文献】特開2013-034176(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171916(WO,A1)
【文献】特開2017-079388(JP,A)
【文献】特開2006-060798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/88
H10N 30/87
H10N 30/20
H10N 30/50
H10N 30/067
H10N 30/853
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面に実装される圧電素子であって、
複数の圧電体層が積層されてなり、前記複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する第一主面及び第二主面を有する素体と、
前記第一主面に配置された外部電極と、
前記素体内に配置された内部電極と、を備え、
前記第二主面は、矩形状を呈し、四つの角部を有すると共に、前記実装面と対向し、
前記実装面を基準面としたときに、前記角部の高さは、前記第二主面の他の部分の高さよりも高く、
前記第二主面は、前記実装面を基準面としたときに、前記角部の高さが前記角部の先端に向かうにつれて高くなるように湾曲しており、
前記内部電極は、前記第二主面と平行を成すように、前記第二主面と同じ方向に湾曲している、圧電素子。
【請求項2】
前記第二主面は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記実装面を基準面としたときに、前記長辺の中央の高さは、前記短辺の中央の高さよりも高い、請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
実装面に実装される圧電素子であって、
複数の圧電体層が積層されてなり、前記複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する第一主面及び第二主面を有する素体と、
前記第一主面に配置された外部電極と、を備え、
前記第二主面は、矩形状を呈し、四つの角部を有すると共に、前記実装面と対向し、
前記実装面を基準面としたときに、前記角部の高さは、前記第二主面の他の部分の高さよりも高く、
第二主面は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記実装面を基準面としたときに、前記長辺の中央の高さは、前記短辺の中央の高さよりも高く、
前記素体内に配置された内部電極を更に有し、
前記内部電極は、前記第二主面と平行を成すように、前記第二主面と同じ方向に前記第二主面に対応して湾曲している、圧電素子。
【請求項4】
前記第二主面は、前記実装面を基準面としたときに、前記角部の高さが前記角部の先端に向かうにつれて高くなるように湾曲している、請求項に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記内部電極は、矩形状を呈し、四つの角部を有しており、
前記内部電極の前記角部の曲率半径は、前記第二主面の前記角部の曲率半径よりも大きい、請求項1又はに記載の圧電素子。
【請求項6】
前記第一主面は、前記第二主面と平行を成すように、前記第二主面と同じ方向に湾曲している、請求項1~のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項7】
実装面に実装される圧電素子であって、
複数の圧電体層が積層されてなり、前記複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する第一主面及び第二主面を有する素体と、
前記第一主面に配置された外部電極と、を備え、
前記第二主面は、矩形状を呈し、四つの角部を有すると共に、前記実装面と対向し、
前記実装面を基準面としたときに、前記角部の高さは、前記第二主面の他の部分の高さよりも高く、
第二主面は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記実装面を基準面としたときに、前記長辺の中央の高さは、前記短辺の中央の高さよりも高く、
前記第一主面は、前記第二主面と平行を成すように、前記第二主面と同じ方向に湾曲している、圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、複数の電極層と、電極層の間に介在される圧電体層と、を含む圧電素子が記載されている。この圧電素子では、各電極層が、互いに異なる極性を有する主電極と接続電極とを含んでいる。隣り合う電極層における主電極と接続電極とは、圧電体層を貫通するビアにより電気的に接続されている。この圧電素子は、圧電体層における主電極間に位置する領域が圧電的に活性な活性領域となり、活性領域に変位が発生することによって、駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-51894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の圧電体層は、平面視で四つの角部を有する矩形板状を呈している。このような圧電素子を振動板又は他の電子機器などに実装して用いた場合、駆動時の変位に伴う応力が圧電体層の角部に集中し易い。したがって、角部が起点となり圧電体層にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
本開示は、クラックを抑制することが可能な圧電素子を提供する。
圧電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る圧電素子は、実装面に実装される圧電素子であって、複数の圧電体層が積層されてなり、複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する第一主面及び第二主面を有する素体と、第一主面に配置された外部電極と、を備え、第二主面は、矩形状を呈し、四つの角部を有すると共に、実装面と対向し、実装面を基準面としたときに、角部の高さは、第二主面の他の部分の高さよりも高い。
【0007】
上記圧電素子では、素体の第二主面が矩形状を呈し、四つの角部を有すると共に、実装面と対向する。実装面を基準面としたときに、第二主面の角部の高さは、第二主面の他の部分の高さよりも高い。これにより、第二主面の角部を実装面から離間して浮かせることができる。したがって、駆動時の変位に伴う応力が圧電素子の角部に集中することが抑制される。よって、角部が起点となり圧電素子にクラックが発生することが抑制される。
【0008】
第二主面は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、実装面を基準面としたときに、長辺の中央の高さは、短辺の中央の高さよりも高くてもよい。この場合、圧電素子が湾曲した形状となり易い。よって、圧電素子の変位量を増大させ易い。
【0009】
第二主面は、実装面を基準面としたときに、角部の高さが角部の先端に向かうにつれて高くなるように湾曲していてもよい。第二主面に段差部を設けて角部を高くする場合、段差部に応力が集中し、クラックが発生するおそれがある。ここでは、第二主面を湾曲させて角部を高くするので、クラックの発生を抑制することができる。
【0010】
第一主面は、第二主面に対応して湾曲していてもよい。この場合、素体の厚さを一定にすることができる。それにより、のちの分極処理の際に、素体の全体を均一に分極することが出来る。
【0011】
上記圧電素子は、素体内に配置された内部電極を更に有し、内部電極は、第二主面に対応して湾曲していてもよい。この場合、第二主面と内部電極との間隔を一定にすることができる。
【0012】
内部電極は、矩形状を呈し、四つの角部を有しており、内部電極の角部の曲率半径は、第二主面の角部の曲率半径よりも大きくてもよい。この場合、内部電極の角部の曲率半径が第二主面の角部の曲率半径と同等以下である場合に比べて、圧電素子の駆動時の変位に伴って応力が内部電極の角部に集中することが抑制される。よって、素体に内部電極の角部を起点としたクラックが発生することが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、クラックを抑制することが可能な圧電素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る圧電素子の斜視図である。
図2図2は、図1の圧電素子の平面図である。
図3図3は、図1の圧電素子の平面図である。
図4図4は、図1の圧電素子の分解斜視図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿っての断面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線に沿っての断面図である。
図7図7は、図2のVII-VII線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る圧電素子の斜視図である。図2は、図1の圧電素子の平面図である。図3は、図1の圧電素子の平面図である。図4は、図1の圧電素子の分解斜視図である。図5は、図2のV-V線に沿っての断面図である。図1図5に示されるように、一実施形態に係る圧電素子10は、素体11と、複数の外部電極13,15とを有している。本実施形態では、圧電素子10は、一対の外部電極13,15を有している。
【0017】
素体11は、直方体形状を呈している。素体11は、素体11は、互いに対向している一対の主面11a,11b、互いに対向している一対の端面11c、及び互いに対向している一対の端面11eを有している。直方体形状には、たとえば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。一対の主面11a,11bが対向している方向が第一方向D1である。第一方向D1は、各主面11a,11bに直交する方向でもある。一対の端面11cが対向している方向が、第二方向D2である。第二方向D2は、各端面11cに直交する方向でもある。一対の端面11eが対向している方向が、第三方向D3である。第三方向D3は、各端面11eに直交する方向でもある。
【0018】
素体11の第二方向D2での長さは、たとえば、10mmである。素体11の第三方向D3での長さは、たとえば、20mmである。素体11の第一方向D1での長さ(厚さ)は、たとえば、500μmである。素体11は、第二方向D2及び第三方向D3の位置によらず、略一定の厚さを有している。
【0019】
各主面11a,11bは、矩形状を呈している。各主面11a,11bは、一対の長辺11gと一対の短辺11hとを有する長方形状を呈している。すなわち、圧電素子10(素体11)は、平面視で、一対の長辺11gと一対の短辺11hとを有する長方形状を呈している。本実施形態では、主面11a,11bの長辺方向は、第三方向D3と一致する。主面11a,11bの短辺方向は、第二方向D2と一致する。矩形状及び長方形状には、たとえば、各角部が面取りされている形状、及び、各角部が丸められている形状が含まれる。
【0020】
主面11bは、四つの角部A1を有している。角部A1は、丸く、いわゆるR形状を有していてもよい。ここで、丸い角部とは、2つの直線の交わりからなる角部ではなく、2つの直線の端部同士が曲線で接続されてなる湾曲した角部を意味する。角部A1は、2つの直線の交わりからなる角部であってもよい。角部A1が丸い角部の場合、角部A1は、角部A1を構成する曲線の一部又は全部を少なくとも含んでいる。角部A1が2つの直線の交わりからなる角部である場合、角部A1は、角部A1を構成する2つの直線の交点、及び2つの直線の端部を少なくとも含んでいる。
【0021】
本実施形態では、圧電素子10が振動板又は他の電子機器(例えば、回路基板、又は、電子部品)などの実装面40に実装される際、主面11bが実装面40と対向する。図5には、実装面40が仮想的に示されている。実装面40は、少なくとも圧電素子10が実装される領域において平面状である。圧電素子10が振動板に実装される場合、圧電素子10は、振動板とにより振動デバイスを構成する。
【0022】
一対の端面11cは、一対の主面11a,11bを連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面11cは、第三方向D3にも延在している。一対の端面11eは、一対の主面11a,11bを連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面11eは、第二方向D2にも延在している。各主面11a,11bと各端面11c,11eとは、間接的に隣り合っていてもよい。この場合、各主面11a,11bと各端面11c,11eとの間には、稜線部が位置する。
【0023】
素体11は、複数の圧電体層17a,17b,17c,17d,17eが第一方向D1に積層されて構成されている。素体11は、積層されている複数の圧電体層17a,17b,17c,17d,17eを有している。本実施形態では、素体11は、五つの圧電体層17a,17b,17c,17d,17eを有している。素体11では、複数の圧電体層17a,17b,17c,17d,17eが積層されている方向が第一方向D1と一致する。圧電体層17aは、主面11aを有している。圧電体層17eは、主面11bを有している。圧電体層17b,17c,17dは、圧電体層17aと圧電体層17eとの間に位置している。
【0024】
各圧電体層17a,17b,17c,17d,17eは、圧電セラミック材料からなる。すなわち、素体11は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料には、たとえば、PZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、PZN[Pb(Zn,Nb)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)が用いられる。各圧電体層17a,17b,17c,17d,17eは、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体11では、各圧電体層17a,17b,17c,17d,17eは、各圧電体層17a,17b,17c,17d,17eの間の境界が認識できない程度に一体化されている。
【0025】
各圧電体層17a,17b,17c,17d,17eの第一方向D1での長さ(厚さ)は、たとえば、40μmである。圧電体層17aは、後述する電極層21が主面11a側から圧電体層17aを通して視認できる程度の透明度を有している。他の圧電体層17b,17c,17d,17eも圧電体層17aと同様の透明度を有している。
【0026】
圧電素子10は、素体11内に配置された複数の電極層21,22,23,24を備えている。本実施形態では、圧電素子10は、四つの電極層21,22,23,24を備えている。各電極層21,22,23,24は、内部電極である。各電極層21,22,23,24は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。各電極層21,22,23,24は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0027】
各電極層21,22,23,24は、第一方向D1において異なる位置(層)に配置されている。主面11aと電極層21とは、第一方向D1に間隔を有して互いに対向している。電極層21と電極層22とは、第一方向D1に間隔を有して互いに対向している。電極層22と電極層23とは、第一方向D1に間隔を有して互いに対向している。電極層23と電極層24とは、第一方向D1に間隔を有して互いに対向している。電極層24と主面11bとは、第一方向D1に間隔を有して互いに対向している。
【0028】
電極層21は、圧電体層17aと圧電体層17bとの間に位置している。電極層22は、圧電体層17bと圧電体層17cとの間に位置している。電極層23は、圧電体層17cと圧電体層17dとの間に位置している。電極層24は、圧電体層17dと圧電体層17eとの間に位置している。各電極層21,22,23,24は、素体11の表面には露出していない。すなわち、各電極層21,22,23,24は、端面11c及び端面11eから離間して設けられており、端面11c及び端面11eには露出していない。各電極層21,22,23,24は、第一方向D1から見て、主面11a,11bの全ての縁(四辺)から離間している。
【0029】
各電極層21,22,23,24は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。各電極層21,22,23,24は、第一方向D1から見て(平面視で)、一対の長辺と一対の短辺とを有する長方形状を呈している。本実施形態では、各電極層21,22,23,24の長辺方向は、第三方向D3と一致している。各電極層21,22,23,24の短辺方向は、第二方向D2と一致している。第一方向D1から見て、電極層21,22,23,24の外縁は、互いに同形状を呈し、互いに一致している。
【0030】
第一方向D1から見て、各電極層21,22,23,24は、四つの角部A2を有している。各角部A2は、各角部A1に対応している。第一方向D1から見て、各角部A2は、対応する角部A1と重なっている。各角部A2は、丸く、いわゆるR形状を有している。ここで、丸い角部とは、上述のように、2つの直線の交わりからなる角部ではなく、2つの直線の端部同士が曲線で接続されてなる湾曲した角部を意味する。角部A2は、2つの直線の交わりからなる角部であってもよい。角部A2が丸い角部の場合、角部A2は、角部A2を構成する曲線の一部又は全部を少なくとも含んでいる。角部A2が2つの直線の交わりからなる角部である場合、角部A2は、角部A2を構成する2つの直線の交点、及び2つの直線の端部を少なくとも含んでいる。角部A2の曲率半径は、角部A1の曲率半径よりも大きい。
【0031】
各外部電極13,15は、主面11aに配置されている。外部電極13と外部電極15とは、第三方向D3に並んでいる。外部電極13と外部電極15とは、第三方向D3で隣り合っている。各外部電極13,15は、第一方向D1から見て、主面11aの全ての縁(四辺)から離間している。各外部電極13,15は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。矩形状は、たとえば、各角が面取りされている形状、及び、各角が丸められている形状が含まれる。
【0032】
一対の外部電極13,15は、第一方向D1から見て、互いに同形状を呈している。第一方向D1から見て、各外部電極13,15の短辺方向は、第二方向D2と一致し、各外部電極13,15の長辺方向は、第三方向D3と一致している。各外部電極13,15の第二方向D2の長さは、例えば3mmである。各外部電極13,15の第三方向D3の長さは、例えば3.6mmである。一対の外部電極13,15の第三方向D3における離間距離は、例えば3.4mmである。
【0033】
各外部電極13,15は、上述のような形状を有する主面11a上に形成されているので、主面11aの形状に沿った形状を呈する。つまり、各外部電極13,15の外表面には、主面11aの山谷が反映されている。各外部電極13,15の厚さ(第一方向D1の長さ)は、例えば1.5μm以上3.0μm以下である。各外部電極13,15は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。各外部電極13,15は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0034】
外部電極13は、ビア導体31を通して接続導体25と電気的に接続されている。接続導体25は、電極層21と同じ層に位置している。接続導体25は、電極層21の内側に位置している。電極層21には、第一方向D1から見て、外部電極13に対応する位置に、開口が形成されている。接続導体25は、電極層21に形成されている開口内に位置している。第一方向D1から見て、接続導体25の全縁が、電極層21で囲まれている。
【0035】
接続導体25は、圧電体層17aと圧電体層17bとの間に位置している。電極層21と接続導体25とは、互いに離間している。接続導体25は、第一方向D1で、外部電極13と対向している。ビア導体31は、外部電極13と接続されていると共に、接続導体25と接続されている。接続導体25は、ビア導体32を通して電極層22と電気的に接続されている。接続導体25は、第一方向D1で、電極層22と対向している。ビア導体32は、接続導体25と接続されていると共に、電極層22と接続されている。
【0036】
電極層22は、ビア導体32を通して接続導体26と電気的に接続されている。接続導体26は、電極層23と同じ層に位置している。接続導体26は、電極層23の内側に位置している。電極層23には、第一方向D1から見て、外部電極13(接続導体25)に対応する位置に、開口が形成されている。接続導体26は、電極層23に形成されている開口内に位置している。第一方向D1から見て、接続導体26の全縁が、電極層23で囲まれている。
【0037】
接続導体26は、圧電体層17cと圧電体層17dとの間に位置している。電極層23と接続導体26とは、互いに離間している。接続導体26は、第一方向D1で、電極層22と対向している。ビア導体33は、電極層22と接続されていると共に、接続導体26と接続されている。接続導体26は、ビア導体34を通して電極層24と電気的に接続されている。接続導体26は、第一方向D1で、電極層24と対向している。ビア導体34は、接続導体26と接続されていると共に、電極層24と接続されている。
【0038】
外部電極15は、ビア導体35を通して電極層21と電気的に接続されている。電極層21は、第一方向D1で、外部電極15と対向している。ビア導体35は、外部電極15と接続されていると共に、電極層21と接続されている。
【0039】
電極層21は、ビア導体36を通して接続導体27と電気的に接続されている。接続導体27は、電極層22と同じ層に位置している。接続導体27は、電極層22の内側に位置している。電極層22には、第一方向D1から見て、外部電極15に対応する位置に、開口が形成されている。接続導体27は、電極層22に形成されている開口内に位置している。第一方向D1から見て、接続導体27の全縁が、電極層22で囲まれている。
【0040】
接続導体27は、圧電体層17bと圧電体層17cとの間に位置している。電極層22と接続導体27とは、互いに離間している。接続導体27は、第一方向D1で、電極層21と対向している。ビア導体36は、電極層21と接続されていると共に、接続導体27と接続されている。接続導体27は、ビア導体37を通して電極層23と電気的に接続されている。接続導体27は、第一方向D1で、電極層23と対向している。ビア導体37は、接続導体27と接続されていると共に、電極層23と接続されている。
【0041】
電極層23は、ビア導体38を通して接続導体28と電気的に接続されている。接続導体28は、電極層24と同じ層に位置している。接続導体28は、電極層24の内側に位置している。電極層24には、第一方向D1から見て、外部電極15に対応する位置に、開口が形成されている。接続導体28は、電極層24に形成されている開口内に位置している。第一方向D1から見て、接続導体28の全縁が、電極層24で囲まれている。
【0042】
接続導体28は、圧電体層17dと圧電体層17eとの間に位置している。電極層24と接続導体28とは、互いに離間している。接続導体28は、第一方向D1で、電極層23と対向している。ビア導体38は、電極層23と接続されていると共に、接続導体28と接続されている。
【0043】
外部電極13は、ビア導体31、接続導体25、ビア導体32、電極層22、ビア導体33、接続導体26、ビア導体34、及び電極層24と電気的に接続されている。外部電極15は、ビア導体35、電極層21、ビア導体36、接続導体27、ビア導体37、電極層23、ビア導体38、及び接続導体28と電気的に接続されている。
【0044】
接続導体25,26,27,28及びビア導体31,32,33,34,35,36,37,38は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。接続導体25,26,27,28及びビア導体31,32,33,34,35,36,37,38は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。接続導体25,26,27,28は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。ビア導体31,32,33,34,35,36,37,38は、対応する圧電体層17a,17b,17c,17dを形成するためのセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
【0045】
素体11の主面11bには、電極層21,23と電気的に接続されている導体と、電極層22,24と電気的に接続されている導体とは配置されていない。本実施形態では、主面11bを第一方向D1から見たとき、主面11bの全体が露出している。素体11の各端面11c,11eにも、電極層21,23と電気的に接続されている導体と、電極層22,24と電気的に接続されている導体とは配置されていない。本実施形態では、各端面11cを第二方向D2から見たとき、各端面11cの全体が露出している。各端面11eを第三方向D3から見たとき、各端面11eの全体が露出している。
【0046】
圧電体層17bにおける電極層21と電極層22とで挟まれた領域と、圧電体層17cにおける電極層22と電極層23とで挟まれた領域と、圧電体層17dにおける電極層23と電極層24とで挟まれた領域とは、圧電的に活性な活性領域を構成する。すなわち、素体11では、電極層21と電極層22との間、電極層22と電極層23との間、及び、電極層23と電極層24との間に活性領域が形成される。第一方向D1から見て、電極層21,22,23,24の外縁が活性領域と、圧電的に不活性な不活性領域との境界となる。
【0047】
本実施形態では、活性領域は、第一方向D1から見て、複数の外部電極13,15を囲むように位置している。第一方向D1から見て、素体11は、外部電極13と外部電極15との間に位置している領域に、活性領域を含んでいる。第一方向D1から見て、素体11は、外部電極13と外部電極15とが位置している領域の外側にも、活性領域を含んでいる。
【0048】
図6は、図2のVI-VI線に沿っての断面図である。図7は、図2のVII-VII線に沿っての断面図である。図6及び図7には、実装面40が仮想的に示されている。図1及び図7に示されるように、圧電素子10が実装面40に実装された状態で、角部A1は実装面40から離間し、実装面40と接していない。主面11bの中央部は、実装面40と接している。実装面40を基準面としたときに、角部A1の高さは、主面11bのその他の部分の高さよりも高い。角部A1の高さは、角部A1の先端に向かうにつれて徐々に高くなる。主面11bは、実装面40を基準面としたときに、角部A1の高さが、角部A1の先端に向かうにつれて徐々に高くなるように湾曲している。
【0049】
長辺11gは、長辺11gの高さが、第三方向D3の両端部(角部A1)で最も高く、第三方向D3の中央部で最も低くなるように湾曲している。図6に示されるように、長辺11gは、高さが最も低くなる第三方向D3の中央部でも実装面40から離間し、実装面40と接していない。すなわち、長辺11gの全体が実装面40から離間し、実装面40と接していない。
【0050】
短辺11hは、短辺11hの高さが、第二方向D2の両端部(角部A1)で最も高く、第二方向D2の中央部で最も低くなるように湾曲している。図5に示されるように、短辺11hは、高さが最も低くなる第二方向D2の中央部では、実装面40と接している。短辺11hは、長辺11gよりも湾曲の度合いが大きいと言える。
【0051】
実装面40を基準面としたときに、長辺11gの中央の高さは、短辺11hの中央の高さよりも高い。すなわち、長辺11gの長さ方向(第三方向D3)の中央における高さは、短辺11hの長さ方向(第二方向D2)の中央における高さよりも高い。長辺11gの平均高さは、短辺11hの平均高さよりも高い。長辺11gの最低高さは、短辺11hの最低高さよりも高い。
【0052】
主面11aは、主面11bに対応して湾曲している。すなわち、主面11aは、主面11bと平行を成すように湾曲している。主面11aは、主面11a,11bの間隔が略一定に保たれるように、湾曲している。
【0053】
電極層21,22,23,24は、主面11bに対応して湾曲している。すなわち、電極層21,22,23,24は、主面11bと平行を成すように湾曲している。電極層21,22,23,24は、主面11bとの間隔が略一定に保たれるように、湾曲している。
【0054】
主面11bの高さは、例えば、三次元測定機を用いて主面11bの形状を測定することにより確認できる。主面11bの高さは、例えば、三次元測定機を用いて主面11aの形状を測定した後、三次元測定機の測定結果から素体11の厚さ(例えば、平均厚さ)を引いた形状を主面11bの形状として簡易的に扱ってもよい。これにより、主面11bの高さを確認することができる。
【0055】
圧電素子10は、例えば、接着樹脂層50(図7参照)により実装面40に実装されている。図5及び図6では、接着樹脂層50の図示が省略されている。接着樹脂層50は、主面11bの中央領域と接するように設けられ、主面11bの中央領域を実装面40に固定する。接着樹脂層50は、角部A1、長辺11g、及び短辺11hから離間して設けられ、角部A1、長辺11g、及び短辺11hは実装面40に固定されない。接着樹脂層50は、角部A1まで引き出されていないので、熱衝撃(例えば、80度/-40度)等により接着樹脂層50の熱収縮が生じた場合において、接着樹脂層50の熱収縮が角部A1に集中し難い。
【0056】
以上説明したように、圧電素子10では、素体11の主面11bが矩形状を呈し、四つの角部A1を有すると共に、実装面40と対向する。実装面40を基準面としたときに、四つの角部A1の高さは、主面11bの他の部分の高さよりも高い。これにより、四つの角部A1を実装面40から離間させて浮かせることができる。したがって、圧電素子10の駆動時の変位に伴う応力が圧電素子10の各角部A1に集中することが抑制される。よって、角部A1が起点となり圧電素子10にクラックが発生することが抑制される。
【0057】
主面11bは、一対の長辺11g及び一対の短辺11hを有し、実装面40を基準面としたときに、長辺11gの高さは、短辺11hの高さよりも高い。このため、圧電素子10が湾曲した形状となり易い。よって、圧電素子10の変位量を増大させ易い。
【0058】
主面11bは、実装面40を基準面としたときに、角部A1の高さが角部A1の先端に向かうにつれて高くなるように湾曲している。主面11bに段差部を設けて角部A1を高くする場合、段差部に応力が集中し、段差部が起点となり、クラックが発生するおそれがある。本実施形態では、主面11bを湾曲させて角部A1を高くするので、クラックの発生を抑制することができる。
【0059】
主面11aは、主面11bに対応して湾曲している。このため、素体11の厚さを一定にすることができる。それにより、のちの分極処理の際に、素体11の全体を均一に分極することが出来る。また、素体11の厚さを角部A1に対応して異ならせる必要がない。
【0060】
電極層21,22,23,24は、主面11bに対応して湾曲している。このため、主面11bと電極層21,22,23,24との間隔を一定にすることができる。よって、電極層21,22,23,24が素体11から露出することが抑制される。
【0061】
電極層21,22,23,24の角部A2の曲率半径は、角部A1の曲率半径よりも大きい。角部A2の曲率半径が角部A1の曲率半径と同等以下である場合に比べて、圧電素子10の駆動時の変位に伴って応力が角部A2に集中することが抑制される。よって、素体11に角部A2を起点としたクラックが発生することが抑制される。
【0062】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0063】
実施形態では、実装面40を基準面としたときに、四つの角部A1の高さは、主面11bの他の部分の高さよりも高いが、一つ以上の角部A1の高さが主面11bの他の部分の高さよりも高くてもよい。長辺11gの高さは、短辺11hの高さよりも低くてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…圧電素子、11…素体、11a…主面(第一主面)、11b…主面(第二主面)、11g…長辺、11h…短辺、13,15…外部電極、21~24…電極層(内部電極)、40…実装面、A1,A2…角部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7