(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】過渡電圧保護デバイス
(51)【国際特許分類】
H01T 4/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H01T4/02 F
(21)【出願番号】P 2021107368
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚義
(72)【発明者】
【氏名】早津 匡人
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】簗田 壮司
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-267037(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203638(WO,A1)
【文献】特開2014-192126(JP,A)
【文献】特開2007-317541(JP,A)
【文献】特開2011-243492(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168879(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/065672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/00 - 4/20
H05F 1/00 - 7/00
H01C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞が内部に形成されており、互いに対向している一対の端面を有する素体と、
前記一対の端面のうち対応する端面にそれぞれ配置されている一対の外部電極と、
互いに対向するように前記素体内に配置されているとともに、前記一対の外部電極のうち対応する外部電極にそれぞれ接続されている一対の内部電極と、
前記素体内に配置されている放電補助部と、を備え、
前記一対の内部電極のそれぞれは、前記一対の端面が対向している方向に延在しているとともに、
前記対応する外部電極に接続されている第一端と、
前記第一端とは反対側で前記素体内に位置している第二端と、
前記第一端と前記第二端との間に位置している第一部分及び第二部分と、を有しており、
各前記第一部分は、第一最短距離で互いに対向しており、
各前記第二部分は、前記第一最短距離よりも小さい第二最短距離で互いに対向しているとともに、前記空洞に露出し、かつ、前記放電補助部に接しており、
各前記第二端の全体は、
前記第二端の先端側の縁と前記第一部分に連続する側縁とで画成される角を含んで前記素体に覆われており、前記空洞及び前記放電補助部の外側に位置している、過渡電圧保護デバイス。
【請求項2】
前記一対の内部電極のそれぞれは、
前記一対の端面が対向している前記方向に延在しているとともに、前記第一部分を含んでいる第一電極領域と、
前記第一電極領域から突出するように前記一対の端面が対向している前記方向に交差する方向に延在しているとともに、前記第二部分を含んでいる第二電極領域と、を有している、請求項1に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項3】
各前記第二電極領域は、矩形状を呈している請求項2に記載の過渡電圧保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡電圧保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
知られている過渡電圧保護デバイスは、素体と、素体上に配置されている一対の外部電極と、互いに対向するように素体内に配置されている一対の内部電極と、を備えている(たとえば、特許文献1参照)。各内部電極は、一対の外部電極のうち対応する外部電極に接続されているとともに、素体の内部に形成されている空洞に露出している。過渡電圧は、たとえば、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)に起因する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの態様は、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る過渡電圧保護デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様に係る過渡電圧保護デバイスは、素体と、素体上に配置されている一対の外部電極と、互いに対向するように素体内に配置されている一対の内部電極と、を備えている。素体の内部には、空洞が形成されている。一対の内部電極のそれぞれは、一対の外部電極のうち対応する外部電極にそれぞれ接続されている。一対の内部電極のそれぞれは、第一部分と第二部分とを有している。各第一部分は、第一最短距離で互いに対向している。各第二部分は、第一最短距離よりも小さい第二最短距離で互いに対向しているとともに、空洞に露出している。
【0006】
上記一つの態様では、各第二部分は、第一最短距離よりも小さい第二最短距離で互いに対向しているとともに、素体内に形成されている空洞に露出している。したがって、過渡電圧が一対の外部電極の間に印加される場合、放電が一対の内部電極の第二部分の間で確実に生じる。放電が一対の内部電極の第二部分の間で生じる構成では、放電が一対の内部電極の第一部分の間で生じる構成に比して、放電が生じやすく、放電開始電圧が低下する傾向がある。この結果、上記一つの態様は、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る。
【0007】
上記一つの態様では、各第二部分に接するように、素体内に配置されている放電補助部を備えていてもよい。
放電補助部が各第二部分に接するように素体内に配置されている構成では、放電が一対の内部電極の第二部分の間でより一層確実に生じる。したがって、本構成は、過渡電圧保護特性をより一層確実に向上し得る。
【0008】
上記一つの態様では、一対の内部電極のそれぞれは、第一電極領域と、第二電極領域と、を有していてもよい。この場合、第一電極領域は、第一方向に延在しているとともに、第一部分を含んでいる。第二電極領域は、第一電極領域から突出するように第一方向に交差する第二方向に延在しているとともに、第二部分を含んでいる。
一対の内部電極のそれぞれが第二電極領域を有している構成では、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る過渡電圧保護デバイスを簡易に実現し得る。
【0009】
上記一つの態様では、各第二電極領域は、矩形状を呈していてもよい。
各第二電極領域が矩形状を呈している構成では、第二電極領域の辺縁の間で放電が生じやすい。したがって、本構成では、放電が局所的に集中しがたく、本構成は、過渡電圧保護特性の劣化を抑制する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一つの態様は、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る過渡電圧保護デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る過渡電圧保護デバイスを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、素体の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一対の内部電極と放電補助部とを示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る過渡電圧保護デバイスの断面構成を示す図である。
【
図5】
図5は、一対の内部電極と放電補助部とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1~
図4を参照して、本実施形態に係る過渡電圧保護デバイス1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る過渡電圧保護デバイスを示す斜視図である。
図2は、素体の構成を示す分解斜視図である。
図3は、一対の内部電極と放電補助部とを示す図である。
図4は、本実施形態に係る過渡電圧保護デバイスの断面構成を示す図である。
図1及び
図2に示されているように、過渡電圧保護デバイス1は、素体2と、一対の外部電極3,4と、一対の内部電極5,6と、放電補助部7と、を備える。過渡電圧保護デバイス1は、図示しない電子機器に実装される。過渡電圧保護デバイス1は、過渡電圧から電子機器を保護する。過渡電圧保護デバイス1が保護する電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含む。過渡電圧は、たとえば、ESDに起因する。内部電極5,6は、放電補助部7とともに、過渡電圧サプレッサを構成している。過渡電圧サプレッサは、過渡電圧吸収性能を有する。
【0014】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体状は、たとえば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。素体2は、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の側面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。本実施形態では、一対の端面2a,2bは第一方向D1で互いに対向し、一対の側面2e,2fは第二方向D2で互いに対向し、一対の側面2c,2dは第三方向D3で互いに対向する。一対の端面2a,2b及び四つの側面2c,2d,2e,2fは、素体2の外表面を構成する。四つの側面2c,2d,2e,2fは、それぞれ端面2a及び端面2bと隣り合うとともに、端面2aと端面2bを接続するように第一方向D1に延在している。四つの側面2c,2d,2e,2fのうちの一側面は、過渡電圧保護デバイス1が実装される電子機器と対向する実装面として規定されている。
【0015】
第一方向D1は、素体2の長さ方向であり、第二方向D2は、素体2の幅方向であり、第三方向D3は、素体2の高さ方向である。素体2の長さは、たとえば、0.6mm以上2.0mm以下である。素体2の幅は、たとえば、0.3mm以上1.2mm以下である。素体2の高さは、たとえば、0.3mm以上1.2mm以下である。本実施形態では、素体2の長さは、1.6mmであり、素体2の幅は、0.8mmであり、素体2の高さは、0.8mmである。
【0016】
絶縁体層10は、セラミック材料からなる。セラミック材料は、たとえば、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、及びB2O3からなる群から選ばれる。絶縁体層10は、単独のセラミック材料からなっていてもよいし、二種類以上のセラミック材料からなっていてもよい。絶縁体層10は、ガラスを含有していてもよい。絶縁体層10は、低温焼結を可能とするために酸化銅(CuO又はCu2O)を含有していてもよい。
【0017】
外部電極3,4は、素体2上に配置されている。外部電極3,4は、第一方向D1において互いに対向するように素体2上に配置されている。外部電極3,4は、素体2の第一方向D1の両端部に配置されている。外部電極3,4は、第一方向D1において互いに離間している。
【0018】
外部電極3は、端面2aに配置され、内部電極5と接続されている。外部電極3は、内部電極5と物理的かつ電気的に接続されている。外部電極3は、端面2aを覆っている。外部電極3は、四つの側面2c,2d,2e,2fの各一部も覆っている。四つの側面2c,2d,2e,2fの、外部電極3に覆われている各一部は、対応する側面2c,2d,2e,2fにおいて、端面2a寄りに位置している。外部電極3は、端面2aの全面と、側面2c,2d,2e,2fの端面2a寄りの端部とに配置されている。
【0019】
外部電極4は、端面2bに配置され、内部電極6と接続されている。外部電極4は、内部電極6と物理的かつ電気的に接続されている。外部電極4は、端面2bを覆っている。外部電極4は、四つの側面2c,2d,2e,2fの各一部も覆っている。四つの側面2c,2d,2e,2fの、外部電極4に覆われている各一部は、対応する側面2c,2d,2e,2fにおいて、端面2b寄りに位置している。外部電極4は、端面2bの全面と、側面2c,2d,2e,2fの端面2b寄りの端部とに配置されている。
【0020】
内部電極5,6は、第二方向D2において、互いに対向するように素体2内に配置されている。各内部電極5,6は、第一方向D1に延在している。内部電極5は、側面2e寄りに配置されている。内部電極6は、側面2f寄りに配置されている。内部電極5,6は、第三方向D3において、同じ高さ位置、すなわち、同じ積層位置に配置されている。
図2にも示されるように、内部電極5,6は、互いに同じ絶縁体層10上に配置されている。内部電極5,6は、第三方向D3、すなわち、積層方向の略中央に配置されている。内部電極5は、端面2aに露出し、端面2b及び側面2c,2d,2e,2fには露出していない。内部電極6は、端面2bに露出し、端面2a及び側面2c,2d,2e,2fには露出していない。
【0021】
図3及び
図4に示されるように、内部電極5は、一対の端5a,5bと、互いに対向している一対の側縁5c,5dと、互いに対向している一対の主面5e,5fと、を有している。側縁5cは、内部電極6と対向している。主面5eは、放電補助部7に接している。各側縁5c,5dは、面を構成していてもよい。各側縁5c,5dは、主面5e及び主面5fのそれぞれと隣り合っている。内部電極5は、端面2b及び側面2c,2d,2e,2fから離間している。
【0022】
端5aは、端面2aに露出している。端5aは、外部電極3と接続されている。本実施形態では、端5aは、外部電極3と直接接続されている。端5aは、外部電極3と接続されている接続端を構成する。端5aは、先端面を構成していてもよい。端5bは、端5aとは反対側に位置している。端5bは、素体2内に位置しており、素体2の外表面には露出していない。端5bは、各端面2a,2bから離間している。本実施形態では、端5bは、内部電極5の先端だけでなく、内部電極5の先端から所定の長さまでの領域を含む。したがって、端5bは、第一方向D1に上記所定の長さを有している。端5bは、素体2に埋まっており、素体2のみと接している。端5bは、第一方向D1だけでなく、第一方向D1に交差する方向で素体2と接している。端5bは、素体2から露出しておらず、素体2に覆われている。第三方向D3から見て、端5bは、外部電極4から離間しており、外部電極4と重なっていない。端5bは、内部電極5の先端のみで構成されていてもよい。この場合、端5bは、先端面のみを構成していてもよい。
【0023】
図3及び
図4に示されるように、内部電極6は、一対の端6a,6bと、互いに対向している一対の側縁6c,6dと、互いに対向している一対の主面6e,6fと、を有している。側縁6cは、内部電極5と対向している。主面6eは、放電補助部7に接している。各側縁6c,6dは、面を構成していてもよい。各側縁6c,6dは、主面6e及び主面6fのそれぞれと隣り合っている。内部電極6は、端面2a及び側面2c、2d、2e、2fから離間している。
【0024】
端6aは、端面2bに露出している。端6aは、外部電極4と接続されている。本実施形態では、端6aは、外部電極4と直接接続されている。端6aは、外部電極4と接続されている接続端を構成する。端6aは、先端面を構成していてもよい。端6bは、端6aとは反対側に位置している。端6bは、素体2内に位置しており、素体2の外表面には露出していない。端6bは、各端面2a,2bから離間している。本実施形態では、端6bは、内部電極6の先端だけでなく、内部電極6の先端から所定の長さまでの領域を含む。したがって、端6bは、第一方向D1に上記所定の長さを有している。端6bは、素体2に埋まっており、素体2のみと接している。端6bは、第一方向D1だけでなく、第一方向D1に交差する方向で素体2と接している。端6bは、素体2から露出しておらず、素体2に覆われている。第三方向D3から見て、端6bは、外部電極3から離間しており、外部電極3と重なっていない。端6bは。内部電極6に先端のみで構成されていてもよい。この場合、端6bは、先端面のみを構成していてもよい。
【0025】
外部電極3,4及び内部電極5,6は、導電材料を含んでいる。導電材料は、たとえば、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、又は、Wを含む。導電材料は、たとえば、たとえば、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又は、Ag/Pt合金を含んでいてもよい。外部電極3,4及び内部電極5,6は、互いに同じ導電材料を含んでいてもよい。外部電極3,4及び内部電極5,6は、互いに異なる導電材料を含んでいてもよい。
外部電極3,4は、たとえば、素体2の外表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成される。外部電極3,4を形成するための導電性ペーストは、上記導電材料を含む。内部電極5,6は、たとえば、絶縁体グリーンシート上に付与された導電性ペーストを、絶縁体グリーンシートと共に焼成することにより形成される。導電性ペーストは、たとえば、印刷により、絶縁体グリーンシート上に付与される。内部電極5,6を形成するための導電性ペーストも、上記導電材料を含む。
【0026】
図2、
図3、及び
図4に示されるように、放電補助部7は、素体2内に配置されている。放電補助部7は、第三方向D3から見て、矩形状を呈している。放電補助部7の平面形状は、第一方向D1に延在している一対の長辺と、第二方向D2に延在している一対の短辺とを有する。放電補助部7の平面形状は、放電補助部7を第三方向D3から見たときの形状である。矩形状は、角が丸められている形状、及び、角が取られている形状を含む。放電補助部7の長さは、たとえば、0.4mm以上1.5mm以下である。放電補助部7の幅は、たとえば、0.15mm以上0.95mm以下である。放電補助部7の厚さは、たとえば、3μm以上20μm以下である。本実施形態では、放電補助部7の長さ、幅及び厚さは、それぞれ、0.4mm、0.6mm及び4μmである。放電補助部7の長さ、幅、及び厚さは、たとえば、それぞれ、第一方向D1での長さ、第二方向D2での長さ、及び第三方向D3での長さで規定される。
【0027】
放電補助部7は、素体2の外表面から離間している。放電補助部7は、素体2から露出していない。放電補助部7は、内部電極5,6に接しているとともに、内部電極5,6を互いに接続している。内部電極5と内部電極6とは、放電補助部7を介して互いに連結されている。放電補助部7は、第二方向D2において、内部電極5,6の外側まで延在している。放電補助部7は、内部電極5,6に覆われている部分と、内部電極5,6から露出している部分と、を有している。
【0028】
放電補助部7は、絶縁体及び金属粒子を含んでいる。絶縁体は、たとえば、セラミック材料からなる。セラミック材料は、たとえば、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、及びB2O3からなる群から選ばれる。放電補助部7は、この群から選ばれる一種類のセラミック材料のみを含んでもよいし、この群から選ばれる二種類以上のセラミック材料を含んでもよい。金属粒子は、たとえば、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又は、Ag/Pt合金を含む。放電補助部7は、半導体粒子を含んでもよい。半導体粒子は、たとえば、RuO2からなる。放電補助部7は、ガラスを含んでもよい。
放電補助部7は、たとえば、絶縁体グリーンシート上に付与されたスラリーを、絶縁体グリーンシートと共に焼成することにより形成される。スラリーは、上記セラミック材料及び金属粒子を含む。スラリーは、たとえば、印刷により、絶縁体グリーンシート上に付与される。
【0029】
図3及び
図4に示されるように、素体2の内部には、空洞Sが形成されている。空洞Sは、素体2の外表面から離間している。空洞Sを画成する面は、内部電極5の側縁5c及び主面5fと、内部電極の側縁6c及び主面6fと、を含んでいる。空洞Sを画成する面は、放電補助部7の、内部電極5,6から露出している部分の表面も含んでいる。放電補助部7の、内部電極5,6から露出している部分は、空洞Sに露出している。第三方向D3から見て、空洞Sは、放電補助部7の外縁の内側に位置している。空洞Sは、第一方向D1及び第二方向D2のそれぞれにおいて、放電補助部7よりも短い。
空洞Sは、たとえば、絶縁体グリーンシート上に付与された有機ラッカーを、絶縁体グリーンシートと共に焼成することにより形成される。空洞Sは、有機ラッカーの焼失により形成される。有機ラッカーは、有機溶剤及び有機バインダを含む。有機ラッカーは、たとえば、印刷により、絶縁体グリーンシート上に付与される。
【0030】
図3及び
図4に示されるように、内部電極5は、複数の電極領域51,52を有している。本実施形態では、内部電極5は、二つの電極領域51,52を有している。電極領域51は、第一方向D1に延在している。電極領域52は、電極領域51から突出するように第二方向D2に延在している。電極領域52は、第一方向D1において、端5aと端5bとから離間している。電極領域52は、第二方向D2で、電極領域51より内部電極6寄りに位置している。電極領域52は、第二方向D2で、電極領域51と内部電極6との間に位置している。電極領域52は、第二方向D2で、内部電極6に対向している。電極領域51と電極領域52とは、一体に形成されている。電極領域51と電極領域52とは、連続している。たとえば、電極領域51が第一電極領域を構成する場合、電極領域52は、第二電極領域を構成する。
【0031】
本実施形態において、電極領域51及び電極領域52は、第三方向D3から見て、矩形状を呈している。電極領域51及び電極領域52の各平面形状は、第一方向D1に延在している一対の長辺と、第二方向D2に延在している一対の短辺とを有する。電極領域51及び電極領域52の各平面形状は、電極領域51及び電極領域52のそれぞれを第三方向D3から見たときの形状である。矩形状は、角が丸められている形状、及び、角が取られている形状を含む。
【0032】
電極領域51の長さは、たとえば、0.35mm以上1.6mm以下である。電極領域51の幅は、たとえば、0.02mm以上0.50mm以下である。電極領域51の厚さは、たとえば、3μm以上20μm以下である。本実施形態では、電極領域51の長さ、幅、及び厚さは、それぞれ、1.3mm、0.2mm、及び4μmである。電極領域51の長さ、幅、及び厚さは、たとえば、それぞれ、第一方向D1での長さ、第二方向D2での長さ、及び第三方向D3での長さで規定される。
電極領域52の長さは、たとえば、0.05mm以上1.4mm以下である。電極領域52の幅は、たとえば、0.002mm以上0.4mm以下である。電極領域52の厚さは、たとえば、3μm以上20μm以下である。本実施形態では、電極領域52の長さ、幅、及び厚さは、それぞれ、0.3mm、0.02mm、及び4μmである。電極領域52の長さ、幅、及び厚さは、たとえば、それぞれ、第一方向D1での長さ、第二方向D2での長さ、及び第三方向D3での長さで規定される。
【0033】
図3及び
図4に示されるように、内部電極6は、複数の電極領域61,62を有している。本実施形態では、内部電極6は、二つの電極領域61,62を有している。電極領域61は、第一方向D1に延在している。電極領域62は、電極領域61から突出するように第二方向D2に延在している。電極領域62は、第一方向D1において、端6aと端6bとから離間している。電極領域62は、第二方向D2で、電極領域61より内部電極5寄りに位置している。電極領域62は、第二方向D2で、電極領域61と内部電極5との間に位置している。電極領域62は、第二方向D2で、内部電極5に対向している。電極領域61と電極領域62とは、一体に形成されている。電極領域61と電極領域62とは、連続している。たとえば、電極領域61が第一電極領域を構成する場合、電極領域62は、第二電極領域を構成する。
【0034】
本実施形態において、電極領域61及び電極領域62は、第三方向D3から見て、矩形状を呈している。電極領域61及び電極領域62の各平面形状は、第一方向D1に延在している一対の長辺と、第二方向D2に延在している一対の短辺とを有する。電極領域61及び電極領域62の各平面形状は、電極領域61及び電極領域62のそれぞれを第三方向D3から見たときの形状である。矩形状は、角が丸められている形状、及び、角が取られている形状を含む。
【0035】
電極領域61の長さは、たとえば、0.35mm以上1.6mm以下である。電極領域61の幅は、たとえば、0.02mm以上0.50mm以下である。電極領域61の厚さは、たとえば、3μm以上20μm以下である。本実施形態では、電極領域61の長さ、幅、及び厚さは、それぞれ、1.2mm、0.2mm、及び4μmである。電極領域61の長さ、幅、及び厚さは、たとえば、それぞれ、第一方向D1での長さ、第二方向D2での長さ、及び第三方向D3での長さで規定される。
電極領域62の長さは、たとえば、0.05mm以上1.4mm以下である。電極領域62の幅は、たとえば、0.002mm以上0.4mm以下である。電極領域62の厚さは、たとえば、3μm以上20μm以下である。本実施形態では、電極領域62の長さ、幅、及び厚さは、それぞれ、0.3mm、0.02mm、及び4μmである。電極領域62の長さ、幅、及び厚さは、たとえば、それぞれ、第一方向D1での長さ、第二方向D2での長さ、及び第三方向D3での長さで規定される。
【0036】
電極領域51は、部分51aを含んでいる。電極領域52は、部分52aを含んでいる。たとえば、部分51aが第一部分を構成する場合、部分52aは、第二部分を構成する。電極領域61は、部分61aを含んでいる。電極領域62は、部分62aを含んでいる。たとえば、部分61aが第一部分を構成する場合、部分62aは、第二部分を構成する。
部分52aは、電極領域52の、第二方向D2での一方の端に位置している。電極領域52は、第二方向D2での他方の端で、電極領域51に連続している。部分52aは、電極領域52の一部のみで構成されていてもよく、電極領域52の全体で構成されていてもよい。部分62aは、電極領域62の、第二方向D2での一方の端に位置している。電極領域62は、第二方向D2での他方の端で、電極領域61に連続している。部分62aは、電極領域62の一部のみで構成されていてもよく、電極領域62の全体で構成されていてもよい。部分52aと部分62aとは、放電補助部7に接している。部分52aと部分62aとは、放電補助部7を介して互いに連結されている。
【0037】
電極領域52と電極領域62とは、空洞Sに露出している。したがって、部分52aと部分62aとも、空洞Sに露出している。部分52aの少なくとも一部と部分62aの少なくとも一部とが、空洞Sに露出していればよい。本実施形態では、電極領域52と電極領域62とは、電極領域52と電極領域62との間に空洞Sが位置するように、互いに直接対向している。部分52aと部分62aとは、部分52aと部分62aとの間に空洞Sが位置するように、互いに直接対向している。
電極領域52に含まれる側縁5c及び主面5fが空洞Sに露出している。部分52aに含まれる側縁5c及び主面5fが空洞Sに露出している。電極領域62に含まれる側縁6c及び主面6fが空洞Sに露出している。部分62aに含まれる側縁6c及び主面6fが空洞Sに露出している。
【0038】
部分51aと部分61aとは、第二方向D2において、距離T1で互いに対向している。部分52aと部分62aとは、第二方向D2において、距離T2で互いに対向している。距離T2は、距離T1よりも小さい。距離T1は、第二方向D2での、部分51aと部分61aとの最短距離で規定される。この場合、距離T1は、第二方向D2での、部分51aに含まれる側縁5cと部分61aに含まれる側縁6cとの最短距離で規定される。距離T2は、第二方向D2での、部分52aと部分62aとの最短距離で規定される。この場合、距離T2は、第二方向D2での、部分52aに含まれる側縁5cと部分62aに含まれる側縁6cとの最短距離で規定される。
距離T1は、たとえば、10μm以上800μm以下である。距離T2は、たとえば、5μm以上70μm以下である。本実施形態では、距離T1は90μmであり、距離T2は、50μmである。たとえば、距離T1が、第一最短距離を構成する場合、距離T2は、第二最短距離を構成する。
【0039】
本実施形態では、部分51aと部分61aとの第二方向D2での間隔、すなわち、距離T1は、第一方向D1での位置にかかわらず、略一定である。部分52aと部分62aとの第二方向D2での間隔、すなわち、距離T2は、第一方向D1での位置にかかわらず、略一定である。
側縁5cは、電極領域51と電極領域52とで形成される段差を有している。側縁5cが有する段差の長さは、電極領域52の第二方向D2での長さに対応している。側縁6cは、電極領域61と電極領域62とで形成される段差を有している。側縁6cが有する段差の長さは、電極領域62の第二方向D2での長さに対応している。電極領域51と電極領域52とで画成される角は、湾曲していてもよい。電極領域61と電極領域62とで画成される角は、湾曲していてもよい。
【0040】
以上説明したように、過渡電圧保護デバイス1では、部分52aと部分62aとは、距離T2で互いに対向しているとともに、空洞Sに露出している。したがって、過渡電圧が一対の外部電極3,4に印可された場合、放電が部分52aと部分62aとの間で確実に生じる。過渡電圧保護デバイス1は、一対の内部電極5,6の間で放電が生じる位置を制御し得る。放電が部分52aと部分62aとの間で生じる構成では、放電が部分51aと部分61aとの間で生じる構成と比して、放電が生じ易く、放電開始電圧が低下する傾向がある。したがって、過渡電圧保護デバイス1は、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る。
【0041】
放電補助部7は、部分52aと部分62aとに接している。したがって、放電が部分52aと部分62aとの間でより一層確実に生じる。この結果、過渡電圧保護デバイス1は、過渡電圧保護特性をより一層確実に向上し得る。
【0042】
内部電極5は、電極領域51と、電極領域52と、を有している。電極領域51は、第一方向D1に延在しているとともに、部分51aを含んでいる。電極領域52は、電極領域51から突出するように第二方向D2に延在しているとともに、部分52aを含んでいる。内部電極6は、電極領域61と、電極領域62と、を有している。電極領域61は、第一方向D1に延在しているとともに、部分61aを含んでいる。電極領域62は、電極領域61から突出するように第二方向D2に延在しているとともに、部分62aを含んでいる。したがって、本実施形態では、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る過渡電圧保護デバイス1が簡易に実現され得る。
【0043】
各電極領域52,62は、第三方向D3から見て、第一方向D1を長手方向とする、矩形状を呈している。したがって、電極領域52の辺縁と電極領域62の辺縁との間で放電が生じやすい。この結果、過渡電圧保護デバイス1では、放電が局所的に集中しがたく、過渡電圧保護デバイス1は、過渡電圧保護特性の劣化を抑制する。
【0044】
一対の外部電極3,4は、第一方向D1において互いに対向するように素体2上に配置されている。外部電極3,4は、素体2の第一方向D1の両端に配置されているので、一対の外部電極3,4を互いに離間させ得る。したがって、過渡電圧保護デバイス1は、一対の外部電極3,4間での短絡の発生を抑制し得る。
【0045】
図5を参照して、内部電極5,6の一変形例の構成を説明する。
図5は、本変形例に係る一対の内部電極と放電補助部とを示す図である。本変形例では、各電極領域52,62の構成に関して、上述した本実施形態と相違する。以下、上述した本実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0046】
電極領域52の第一方向D1での長さは、電極領域51から第二方向D2に離れるにしたがって、小さくなっている。電極領域52の第一方向D1での長さは、電極領域51から第二方向D2に離れるにしたがって、連続的に減少してもよく、ステップ状に減少してもよい。本変形例では、第三方向D3から見て、電極領域52は、略弓形状を呈している。電極領域52に含まれる側縁5cは、円弧を構成している。
電極領域62の第一方向D1での長さは、電極領域61から第二方向D2に離れるにしたがって、小さくなっている。電極領域62の第一方向D1での長さは、電極領域61から第二方向D2に離れるにしたがって、連続的に減少してもよく、ステップ状に減少してもよい。本変形例では、第三方向D3から見て、電極領域62は、略弓形状を呈している。電極領域62に含まれる側縁6cは、円弧を構成している。
【0047】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0048】
過渡電圧保護デバイス1は、放電補助部7を備えていなくてもよい。過渡電圧保護デバイス1が放電補助部7を備えている構成は、上述したように、過渡電圧保護特性を確実に向上し得る。
【0049】
内部電極5,6の形状は、上述した実施形態及び変形例での形状に限られない。たとえば、各電極領域52,62の位置は、上述した実施形態及び変形例での位置に限られない。各電極領域52,62の位置は、内部電極5と内部電極6との間において、電極領域52と電極領域62とが互いに対向する位置であればよい。各部分52a,62aの位置は、上述した実施形態及び変形例での位置に限られない。各部分52a,62aの位置は、内部電極5と内部電極6との間において、部分52aと部分62aとが互いに対向する位置であればよい。
【0050】
過渡電圧保護デバイス1では、内部電極5,6は互いに同形状を呈しているが、互いに異なる形状を呈していてもよい。
過渡電圧保護デバイス1では、内部電極5,6、放電補助部7、及び、空洞Sは、第三方向D3、すなわち、積層方向の略中央に配置されているが、積層方向の中央より側面2c寄り又は側面2d寄りに配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…過渡電圧保護デバイス、2…素体、3,4…外部電極、5,6…内部電極、7…放電補助部、51,52,61,62…内部電極が有する電極領域、51a,52a,61a,62a…電極領域に含まれる部分、D1…第一方向、D2…第二方向、D3…第三方向、S…空洞、T1,T2…電極領域に含まれる部分間の距離。