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▶ シクパ ホルディング ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】検証可能アクセス資格証明
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/369 20140101AFI20240125BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20240125BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20240125BHJP
   H04W 12/77 20210101ALI20240125BHJP
   G06F 21/62 20130101ALI20240125BHJP
   H04L 9/32 20060101ALI20240125BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20240125BHJP
   G06K 19/12 20060101ALI20240125BHJP
   G06K 19/14 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B42D25/369
B42D25/305
H04W12/06
H04W12/77
G06F21/62 318
H04L9/32 100E
G06K19/06 037
G06K19/06 187
G06K19/12
G06K19/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021550053
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020053354
(87)【国際公開番号】W WO2020173696
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】19160137.6
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ドリエ, ジャン‐リュク
(72)【発明者】
【氏名】ディノーブ, トドール
(72)【発明者】
【氏名】ロギノフ, エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】ファンクハウザー, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ニコロヴ, カリン
(72)【発明者】
【氏名】スイチーズ, バルト
(72)【発明者】
【氏名】デスプラント, クロード‐アラン
(72)【発明者】
【氏名】カルガーリ, アンドレア
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-067654(JP,A)
【文献】特表2018-514412(JP,A)
【文献】特開2006-293358(JP,A)
【文献】特表2016-513023(JP,A)
【文献】特表2016-534187(JP,A)
【文献】特開2016-124248(JP,A)
【文献】特開2011-226005(JP,A)
【文献】特表2011-511322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0297530(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0124763(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00 - 25/485
G06K 19/00 - 19/18
H04W 12/00 - 12/80
H04L 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの検証可能アクセス資格証明文書(100)であって、
前記ユーザ(110)のIDに関連する印刷された人間可読IDデータを含む第1のゾーンと、
ある材料からなる平面層を有する磁気誘導マーク(120)が付けられた第2のゾーンと、
符号化データを表すパターンの形の機械可読マーキング(130)と、
を備え、前記符号化データが、前記第1のゾーンの前記人間可読IDデータに少なくとも部分的に対応し、
前記磁気誘導マーク(120)の前記材料が、磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含み、前記機械可読マーキング(130)が、前記IDデータのシグネチャを含み、前記機械可読マーキング(130)が、磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を有する前記材料からなる前記平面層の少なくとも1つの領域と重なり合うように、前記磁気誘導マーク(120)の上に少なくとも部分的に直接付けられることを特徴とする、検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項2】
a)前記磁気誘導マーク(120)が、磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含むマークの形であり、前記顔料粒子が、コバルト、鉄、ガドリニウム及びニッケルから成る群から選択された磁性金属;鉄、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、若しくはこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性合金;クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、若しくはこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性酸化物;又はこれらのうちの2つ以上の混合物を含み、
b)前記機械可読マーキング(130)が、1次元バーコード、スタック1次元バーコード、2次元又は3次元バーコードパターンを表すパターンの形であり、符号化データを保持する、
請求項1に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項3】
前記符号化データが人物情報、及び/又は生体情報及び/又は資格証明である、請求項2に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項4】
前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部が、誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造及び/又は誘電体/反射体/誘電体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造によって構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項5】
前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の前記少なくとも一部が、MgF/Al/磁性体/Al/MgFの多層構造及び/又はMgF/Al/MgF/磁性体/Al/MgFの多層構造によって構成され、前記磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の磁性体層が鉄を含む、請求項4に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項6】
前記磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の磁性体層が磁性合金又は鉄とクロムの混合物を含む、請求項4又は5に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項7】
前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部が、反射性プレートレット形のカラーシフト磁性又は磁化可能顔料粒子によって構成される、請求項1に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項8】
前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の前記少なくとも一部が、磁性薄膜干渉顔料粒子によって構成される、請求項7に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項9】
前記磁性薄膜干渉顔料粒子が、5層ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造を含み、前記反射体及び/又は吸収体が、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルト、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁性体層であり、又は7層ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造、又は6層ファブリペロー多層吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造を含み、
前記磁性体層が、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルト、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性酸化物を含む、請求項8に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項10】
前記磁気誘導マーク(120)の前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子が、互いに平行であり、ID文書基板の面に対して顔料粒子面が少なくとも10°の仰角を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項11】
前記機械可読マーキング(130)がQRコード(登録商標)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項12】
前記検証可能アクセス資格証明文書のID文書基板と前記磁気誘導マーク(120)の間に暗色下塗り層が存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項13】
前記下塗り層が黒色である、請求項12に記載の検証可能アクセス資格証明文書(100)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のアクセス資格証明文書(100)を検証するための方法であり、可視光を送出するように動作可能な光源、撮像装置、メモリ付きプロセッサ、及び通信ネットワークを通じてデータを送受信するように動作可能な通信ユニットを装備した携帯デバイスを用いてサイトへのユーザのアクセスを認可するための方法であって、
前記携帯デバイスの前記撮像装置を前記第2のゾーンの上方に所与の距離Lで配置するステップと、
前記磁気誘導マーク(120)を前記光源によって照明し、前記撮像装置を前記磁気誘導マーク(120)の上方で前記平面層に平行な方向に移動させることによって、照明された前記磁気誘導マーク(120)の複数のデジタル画像を前記撮像装置によって取得するステップであり、前記撮像装置が、異なるデジタル画像ごとに、前記磁気誘導マーク(120)上の基準位置に対して対応する別個の視角θにある、ステップと、
前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子によって反射され、前記撮像装置によって対応する視角θで集められた光の対応する平均強度Iを、取得されたデジタル画像ごとに前記プロセッサによって計算するステップと、
前記反射された光の前記計算された平均強度及び対応する視角を記憶して反射光強度曲線I(θ)を得るステップと、
前記記憶された反射光強度曲線I(θ)を、前記磁気誘導マーク(120)についての記憶された基準反射光強度曲線Iref(θ)と比較するステップと、
前記プロセッサを用いて、前記磁気誘導マーク(120)が本物であるかどうかを比較の結果に基づいて決定するステップと、
前記磁気誘導マーク(120)が本物とみなされる場合、前記ユーザが、前記機械可読マーキングを照明し、前記照明された機械可読マーキング(130)の画像を取り込むように促され、そうするステップと、
前記IDデータの前記シグネチャを前記機械可読マーキング(130)の取得画像から抽出するステップと、
前記抽出されたシグネチャを含むメッセージを、前記通信ユニットを介して、前記サイトへのアクセスを認可するように動作可能であり、前記通信ネットワークに接続されたサーバへ送るステップと、
前記サーバにおいて、前記抽出されたシグネチャが前記人間可読のIDデータの対応するシグネチャと一致することをチェックし、一致する場合には、前記ユーザが前記通信ネットワークを通して前記サイトにアクセスして、このサイトで操作を行うことを認可するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
メモリ付きプロセッサと、光源と、カメラと、ディスプレイと、通信ネットワークを通じてメッセージを送受信するように動作可能な通信ユニットとを装備したハンドヘルドリーダであって、コンピュータプログラム製品を備え、前記コンピュータプログラム製品は、前記プロセッサ上で実行されたときに、前記リーダを、請求項14に記載のアクセス資格証明文書(100)を検証するための方法のステップを実行するように動作可能にする、ハンドヘルドリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ユーザの検証可能アクセス資格証明文書と、ユーザが、スマートフォン、又は通信ネットワークに接続された任意のタブレット若しくはコンピュータを使用することによって、このような検証可能アクセス資格証明文書を使用してオンラインサイトにアクセスし、オンライン操作を行う方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワーク(たとえば、インターネット)を介する所与のサイトへのユーザのアクセスを認可して、ユーザがいくつかの操作(たとえば、ユーザの銀行口座での金銭上の操作)を行うことを可能にすることがよく知られている。一般に、ユーザは、サイトを管理している権限者へ要求を送るために、秘密鍵及び/又はパスワードを使用して自分のIDを「証明」しなければならない。パスワード及び/又は鍵が適正である場合にだけ、サイトへの完全アクセスが認可される。しかし、パスワード又は秘密鍵は盗まれる可能性があり、或いはユーザもまた、偽りのIDのもとでサイト(又はその管理権限者)より前に登録されることがあるので、その種類のアクセスに関する信頼度はかなり低い。したがって、個人アクセス資格証明の信頼度を改善する必要がある。
【0003】
他方で、保証された政府発行身分証明書(IDカード又はパスポートなど)を使用して、所持者のIDを(たとえば、チェックインカウンタにおいて)管理エージェントに対して証明し、その後いくつかのサービスにアクセスすることがよく知られている。この場合には、エージェントは、所持者のID文書に提示された、偽造することが困難ないくつかのセキュリティマーキングを管理し、場合によっては所持者の顔の類似性を生体計測データ及び/又はID写真と照合し、次に、すなわちエージェントが前記保持者のIDに十分な信頼度を得たときに、所持者がいくつかの認可された操作を行うことを許可する。
【0004】
たとえば、文献の国際公開第2014/160582号は、次のステップ、すなわち、ユーザの政府発行ID文書と支払いモードの間にアソシエーションをモバイルデバイスにおいて生成するステップと、そのモバイルデバイスにおいて、ユーザの政府発行ID文書の提示を受けて支払いの要求をサポートするステップと、提示された政府発行ID文書がユーザの有効な身分証明書であるかどうかを確認するステップと、提示された政府発行ID文書を確認することに応じて、支払いモードを使用することによって支払いを進めるステップとを含む方法を開示している。この政府発行ID文書は、印刷されたテキスト、磁気媒体及びバーコードを含み得る。
【0005】
セキュリティ文書に適用できる知られている認証方法もまたあり、文献の米国特許出願公開第2007/170248号に開示されている。そこで述べられている認証方法には、カード保持者の顔の画像をリーダで取り込むことが含まれる。顔認識ソフトウェアがその画像を処理してハッシュを生成する。同じリーダを使用してデジタル透かし及び/又はバーコードを復号する。デジタル透かし(及び/又はバーコード)は、関連する顔認識ハッシュを含む。ハッシュがその個人及び身分証明書と一致すれば、文書が認証される。
国際公開第2006/078220号は、可読情報を含むID層を担持する物体、例えばクレジットカード、紙幣、文書、ラベル等を開示する。ID層は、ランダムに分散された導電性/磁化可能粒子、半導電性粒子、任意選択で活性粒子等を含むことができる。ID層は、上層と下層との間に挟まれて物体を形成する。粒子の少なくともいくつかは、物体の一縁に沿って露出し、その縁に沿って移動する読み取りヘッドによって読み取られ得る。
【0006】
本発明の目標は、エージェントを介する予備ID管理の必要性をなくし、個人又は公衆のオペレータによって提供されるオンラインサービスにどんなユーザも直接アクセスすることを、ユーザの真のID(したがって、操作を行うための真の権利)に関して高い信頼度をオペレータに提供しながら可能にすることである。
【発明の概要】
【0007】
上記を考慮すると、本発明により、日用品ハードウェア(たとえば、スマートフォン、タブレット、コンピュータ)を使用して、任意の政府発行ID文書(たとえば、IDカード、運転免許証、パスポート)の高レベルの保証認証及び本人確認を自動的に確立し、その政府発行ID文書をデジタルID対応物とリンクすることが可能になる。さらに、本発明により、ID文書と、そのデータコンテンツとの間にリンクを生成するために前記政府発行ID文書に設けられる、材料ベースのセキュリティ機能を個人化することが可能になり、前記データコンテンツは、そのような日用品ハードウェアによって読み取ることができる。
【0008】
1つの態様によれば、本発明はユーザの検証可能アクセス資格証明文書に関し、この検証可能アクセス資格証明文書は、
ユーザのIDに関連する印刷された人間可読IDデータを含む第1のゾーンと、
磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む材料からなる平面層を有する、磁気誘導マークが付けられた第2のゾーンと、
符号化データを表し、少なくとも部分的に第2のゾーンの上に塗布されたパターンの形の機械可読マーキングとを備え、符号化データは、第1のゾーンの人間可読IDデータに少なくとも部分的に対応し、
機械可読マーキングは、前記IDデータのシグネチャを含む。
【0009】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、
a)磁気誘導マークが、磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含むマークの形であり、顔料粒子が、コバルト、鉄、ガドリニウム及びニッケルから成る群から選択された磁性金属;鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、若しくはこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性合金;クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、若しくはこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性酸化物;又はこれらのうちの2つ以上の混合物を含み、
b)機械可読マーキングが、好ましくは、1次元バーコード、スタック1次元バーコード、2次元又は3次元バーコードパターンであるコードを表すパターンの形であり、符号化データ、好ましくは、人物情報、及び/又は生体情報及び/又は資格証明、を保持する。
【0010】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部が、誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造及び/又は誘電体/反射体/誘電体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造によって、好ましくは、MgF/Al/磁性体/Al/MgFの多層構造及びMgF/Al/MgF/磁性体/Al/MgFの多層構造によって構成され、磁性体層は鉄を含み、より好ましくは磁性合金又は鉄とクロムの混合物を含む。
【0011】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部が、少なくとも部分的に反射性プレートレット形のカラーシフト磁性又は磁化可能顔料粒子、好ましくは磁性薄膜干渉顔料粒子によって構成される。
【0012】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、磁性薄膜干渉顔料粒子が、5層ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造を含み、反射体及び/又は吸収体が、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルト、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁性体層であり、又は7層ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造、又は6層ファブリペロー多層吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造を含み、磁性体層は、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルト、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性酸化物を含む。
【0013】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、第1のマーキングの反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、互いに平行であり、ID文書基板の面に対して、好ましくは顔料粒子面が少なくとも10°の仰角を有する。
【0014】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、第2のマーキングは2次元バーコードであり、好ましくはQRコード(登録商標)である。
【0015】
本明細書には検証可能アクセス資格証明文書も記載され、暗色の、好ましくは黒色の下塗り層が検証可能アクセス資格証明文書基板と第1のマーキングの間に存在する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、アクセス資格証明文書を検証するための方法であり、可視光を送出するように動作可能な光源、撮像装置、メモリ付きプロセッサ、及び通信ネットワークを通じてデータを送受信するように動作可能な通信ユニットを装備した携帯デバイスを用いてサイトへの、本明細書に記載のユーザのアクセスを認可するための方法に関し、この方法は、
携帯デバイスの撮像装置を第2のゾーンの上方に所与の距離Lで配置するステップと、
本明細書に記載の磁気誘導マークを光源によって照明し、照明された磁気誘導マークの複数のデジタル画像を撮像装置によって取得するステップであり、撮像装置が、撮像装置を磁気誘導マークの上方で平面層に平行な方向に移動させることによって、異なるデジタル画像ごとに、磁気誘導マークに対して対応する別個の視角θにあるステップと、
プレートレットによって反射され、撮像装置によって対応する視角θで集められた光の対応する平均強度Iを、取得されたデジタル画像ごとにプロセッサによって計算するステップと、
反射された光の計算された平均強度及び対応する視角を記憶して反射光強度曲線I(θ)を得るステップと、
記憶された反射光強度曲線I(θ)を、磁気誘導マークについての記憶された基準反射光強度曲線Iref(θ)と比較するステップと、
磁気誘導マークが本物であるかどうかを比較の結果に基づいて決定するステップと、
磁気誘導マークが本物とみなされる場合、ユーザが、機械可読マーキングを照明し、照明された機械可読マーキングの画像を取り込むステップと、
IDデータのシグネチャを本明細書に記載の機械可読マーキングの取得画像から抽出するステップと、
抽出されたシグネチャを含むメッセージを、通信ユニットを介して、サイトへのアクセスを認可するように動作可能であり、通信ネットワークに接続されたサーバへ送るステップと、
サーバにおいて、抽出されたシグネチャが人間可読のIDデータの対応するシグネチャと一致することをチェックし、一致する場合には、ユーザが通信ネットワークを通してサイトにアクセスして、このサイトで操作を行うことを認可するステップとを含む。
【0017】
最後に、本発明は、メモリ付きプロセッサと、光源と、カメラと、ディスプレイと、通信ネットワークを通じてメッセージを送受信するように動作可能な通信ユニットと、コンピュータプログラム製品とを装備したハンドヘルドリーダに関し、このコンピュータプログラム製品は、プロセッサ上で実行されたときに、リーダを、本明細書に記載のアクセス資格証明文書を検証するための方法のステップを実行するように動作可能にする。
【0018】
本明細書に記載の検証可能なアクセス資格証明文書は、本明細書に記載の磁気誘導マークと、符号化データを表すパターンとを備え、前記パターンは、磁気誘導マークと少なくとも部分的に重なり合う。磁気誘導マーク及び符号化データを表すパターンは、有利なことに、異なる時点及び異なる位置で生み出すことができ、また、異なる手段で生み出すことができる。たとえば、磁気誘導マークは通常、本明細書に記載のものなどの印刷プロセスによって用意され、符号化データを表すパターンは印刷、特にインクジェット印刷によって、又はエッチング若しくはアブレーション法によって生み出すことができる。磁気誘導マークは、前記文書の大量生産中に、前記文書のオーナ/ユーザ対象の詳細による文書の個人化の前に印刷され、符号化データを表すパターンは、個人化の間に用意される。開示された諸実施形態では、認証機能としての可視の磁気誘導マークと、符号化データを表すパターンとしての第2のマーキングとの間の相乗効果を利用することを目指し、アクセス資格証明文書を検証すること、ユーザの識別情報を検証すること、及びサイトへのアクセスを認可することを可能にする。
【0019】
本発明について、添付の図面を参照して、より十分に以下で説明する。図で、同じ数字は、異なる図全体にわたって同じ要素を表し、本発明の顕著な態様及び機能が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による、検証可能なアクセス資格証明文書を示す図である。
図2A】磁気配向パターンの概略図であり、顔料粒子は、互いに平行な、且つ1つの平面に平行な顔料粒子の磁気軸線を有し、また、顔料粒子が塗布されている基板の面に対して、顔料粒子面が少なくとも10°の仰角を有する(ベネチアンブラインド効果)。
図2B】第1の部分と第2の部分が遷移によって分離されている磁気配向パターンの概略図であり、顔料粒子は、第1の部分で第1の面に平行に配列され、第2の部分の顔料粒子は、第2の面に平行に配列される(フリップフロップ効果)。
図3】磁気誘導マーク、符号化データを表すパターン、及び任意選択で磁気誘導マークの下のプライマー層を含むマーキングの概略図である。
図4】マークに対するスマートフォンの位置に依存する(又は依存しない)粒子反射の故に、磁気誘導マークの、磁気配向された部分反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子をスマートフォンによって検出することの概略図である。
図5】スマートフォンと、スマートフォンに対し平行な面で、スマートフォンから固定距離でスキャンされているサンプルとによる、測定セットアップの一例の図である。
図6】画像のセット中の磁気誘導マークの位置と、距離をサンプリングするための既知のスマートフォンの照明/観測角度θとを強度プロファイルのグラフと共に図示する図である。
図7】一連の画像から抽出された磁気誘導マークの強度プロファイル及び相対強度プロファイルを図示する図である。
図8】反対の2方向に磁気配向された部分反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子による磁気誘導マークの概略図である。
図9】磁気誘導マークの異なる領域において(これら2つの領域は重ね合わせることもできる)、2つの異なる向きに磁気配向された部分反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む、本発明の1つの実施形態の特定の印刷デザインを図示する図である。
図10】磁気誘導マークの異なる領域において、2つの異なる向きに磁気配向された部分反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む、本発明の1つの実施形態の特定の印刷デザインを図示する図である。
図11図8~10に示された、2つの異なる反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の向きによる磁気誘導マークの上のスマートフォン位置を、これらの2つの位置の得られた画像フレームと共に図示する図である。
図12】磁気誘導マークの、又はこのマークの面内のスマートフォンの、90°回転の効果と、画面上の案内ターゲットとの概略図である。
図13】E方向に磁気配向された部分反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子(粒子1)と、粒子1に対して90°のS方向に向けられた別のクラスの粒子(粒子2)とによる、磁気誘導マークの概略図である。
図14】位置に対する強度プロファイル、その1次導関数及び2次導関数のグラフである。
【詳細な説明】
【0021】
好ましい一実施形態に関して、図1はユーザの検証可能アクセス資格証明文書100を示し、この文書は、ユーザ110のIDに関連する印刷された人間可読IDデータを含む第1のゾーンと、好ましい配向を有する磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む材料からなる平面層を有する、磁気誘導マーク120が付けられた第2のゾーンと、符号化データを表すパターンの形(ここでは2Dバーコード)の、第2のゾーンの上に少なくとも部分的に付けられた機械可読マーキング130とを備え、符号化データは、第1のゾーンの人間可読IDデータに少なくとも部分的に対応し、機械可読マーキング130は、前記IDデータのシグネチャを含む。
【0022】
ユーザの生体データを含み得る、ユーザのIDデータのデジタルシグネチャは、対応するデジタルIDデータの一方向関数によって得られる。この一方向関数はハッシュ関数でもよい。このような有利な変換の1つは、たとえば、ハッシュ関数H( )=hash( )をデジタルデータに適用することであり、この関数は、知られているビット長の出力を入力のサイズにかかわらず返すという特性を一般に有する。すなわち、この技術的な効果は、デジタルデータのデジタルシグネチャをデジタルデータのサイズにかかわらず生成するのに特に有用である。ハッシュ関数は、一方向関数のよく知られている一例である。SHA(セキュアハッシュアルゴリズム)クラスの関数、たとえばSHA―256などの暗号ハッシュ関数が使用される場合には、関数は事実上不可逆であり、且つ衝突耐性があるという付加的な利益があり、すなわち、異なる2つの入力が同じ出力をもたらす確率は無視することができる。以下の説明から理解されるように、こうしたことも本発明の要件ではないが、他の適用例と同じ理由で有利である。
【0023】
機械可読マーキング130は、英数字マーキング、1-Dバーコード、2Dバーコード(たとえば、DataMatrix、QRコード(登録商標))のうちの任意の1つとすることができる。本明細書に記載の検証可能アクセス資格証明文書に設けられる機械可読マーキングは、好ましくは1次元バーコード、スタック1次元バーコード、2次元バーコード(DataMatrix、QRコード(登録商標)など)であるコードを表すパターンから成り、前記パターンが、本明細書に記載のハンドヘルドモバイルデバイスによって読み取り可能であることが好ましい。前記ハンドヘルドモバイルデバイスは、スマートフォンであることが好ましい。
【0024】
本明細書に記載の検証可能アクセス資格証明文書に設けられる機械可読マーキングは、機械可読マーキング、バーコード等を含む任意の種類のマーキング又はパターンとすることができる。2次元バーコードには、データマトリックス又はデータマトリックスシンボル及びQuick Response(QR)コード(登録商標)等が含まれ得る。バーコードは、GS1(商標)データマトリックスECC200標準によるバーコードとすることができる(GS1はバーコードの標準規格を提供する国際協会)。この標準規格は、2つのタイプの要素、すなわち第1のタイプの要素及び第2のタイプの要素によって形成されるバーコードを考慮に入れている。これらの要素は、ドット又は正方形の形とすることができ、任意の適切な手段によってID文書に設ける、又は形成することができる。本明細書に記載の機械可読マーキングは、印刷プロセス(特にインクジェット印刷)、エッチング法及びアブレーション法(特に、レーザエッチング又はレーザ焼き付け)、エンボス法等を含む、任意の適切な手段によって生み出すことができる。
【0025】
機械可読マーキングの復号は通常、文書100の前記機械可読マーキングの(デジタル)画像を取り込むことから開始する。次に、このような画像は、画像の画素のそれぞれの画素値を定義するデジタル画像データとして得られる。次に、このデジタル画像データは、処理ユニット(たとえば、CPU、コンピュータ、サーバ、埋め込みシステム、ASIC等)によって画像処理される。このような処理は、バーコードとして符号化されているデータを最終的に復号するための様々な個別ステップに分割することができる。
【0026】
本明細書に記載の機械可読マーキングは、人物データ、生体データ、資格証明データ等などの符号化データを保持する。本明細書に記載の機械可読マーキングは、人物データ及び/又は生体データ及び/又は資格証明データである符号化データを保持することが好ましい。本明細書では、用語の「人物情報」は、セキュリティ物品ユーザ又はオーナの個人生活に関連した情報を表示するために用いられる。人物データ又は人物情報の典型的な例としては、名、姓(複数可)、国籍、出身地、出生地、出生日、性別、個人ID番号、及び個人社会番号が挙げられるが、これらだけには限らない。本明細書では、用語の「生体データ」は、セキュリティ物品ユーザの身体特性を指すために使用される。生体データは、画像若しくは英数字記述から、又は身体特性を符号化することから構成され得る。生体データの典型的な例としては、顔、指紋、掌紋、虹彩パターン、網膜パターン、外部耳たぶパターン、静脈パターン、血中酸素濃度、骨密度、歩き方、声、匂い、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された生体データに対応する画像及び/又は、又はデータが挙げられるが、これらだけには限らない。
【0027】
本明細書に記載の磁気誘導マーク120とは、少なくとも複数の磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む層を指し、前記顔料粒子は所定の位置及び向きに固定又は凍結(固定/凍結)される。
【0028】
1次元粒子と考えることができる針状顔料粒子とは対照的に、プレートレット形の顔料粒子は、その寸法のアスペクト比が大きいので2次元粒子である。プレートレット形の顔料粒子は2次元構造と考えることができ、寸法X及びYは、寸法Zよりも実質的に大きい。プレートレット形の顔料粒子は、当技術分野で扁平粒子又は扁平フレークとも呼ばれる。このような顔料粒子は、顔料粒子を横切る最長寸法に対応する主軸線Xと、軸線Xに垂直の、前記顔料粒子の中にさらにある第2の軸線Yとによって記述することができる。
【0029】
本明細書に記載の磁気誘導マークは、その形状の故に非等方性の反射率を有する配向反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む。本明細書では、用語の「非等方性反射率」とは、第1の角度から1つの粒子によってある特定の(見ている)方向(第2の角度)へと反射される入射放射線の比率が、粒子の向きの関数であること、すなわち、第1の角度に対する粒子の向きの変化が、見ている方向への異なる大きさの反射をもたらし得ることを指す。本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、粒子の向きの変化が、その粒子によってある特定の方向への反射の変化になるように、約200~約2500nm、より好ましくは約400~約700nmのいくつかの部分において、又は包括的な波長範囲において入射電磁放射に対する非等方性反射率を有することが好ましい。したがって、単位面積当たり(たとえば、μm当たり)の固有反射率がプレートレット形の粒子の全表面にわたってたとえ均一であっても、その形状の故に、粒子の反射率は、粒子の可視領域が粒子を見る方向によって決まるので、非等方性になる。当業者には知られているように、本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、従来の顔料とは、前記顔料粒子が粒子配向とは関係なく同じ色及び反射率を呈するのに対して、本明細書に記載の磁性又は磁化可能顔料粒子が粒子配向によって決まる反射率若しくは色、又は両方を呈する点で、異なる。
【0030】
本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の適切な例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ガドリニウム(Gd)及びニッケル(Ni);鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、若しくはこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性合金;クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、若しくはこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性酸化物;又はこれらのうちの2つ以上の混合物から成る群から選択された磁性金属を含む顔料粒子が挙げられるが、これらだけには限らない。用語の「磁性」は、金属、合金及び酸化物に関して、強磁性体又はフェリ磁性の金属、合金及び酸化物を対象とする。クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、又はこれらのうちの2つ以上の混合物からなる磁性酸化物は、純酸化物でも混合酸化物でもよい。磁性酸化物の例としては、ヘマタイト(Fe)、マグネタイト(Fe)、二酸化クロム(CrO)、磁性フェライト(MFe)、磁性スピネル(MR)、磁性ヘキサフェライト(MFe1219)、磁性オルトフェライト(RFeO)、磁性ガーネット(M(AO)などの鉄酸化物が、これらだけには限らないが挙げられ、ここで、Mは二価金属を意味し、Rは三価金属を意味し、Aは四価金属を意味する。
【0031】
本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ガドリニウム(Gd)若しくはニッケル(Ni)などの磁性金属;及び鉄、クロム、コバルト若しくはニッケルからなる磁性合金のうちの1つ又は複数から作られた磁性体層Mを構成している顔料粒子が、これらだけには限らないが挙げられ、ここで、前記顔料粒子は、1つ又は複数の追加層を含む多層構造とすることができる。1つ又は複数の追加層は、フッ化マグネシウム(MgF)などの金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、及び酸化アルミニウム(Al)、より好ましくは二酸化ケイ素(SiO)から成る群から選択された1つ又は複数から別個に作られた層A;又は、金属及び金属合金から成る群から選択された、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金から成る群から選択された、より好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択された1つ又は複数から、さらにより好ましくはアルミニウム(Al)から別個に作られた層B;又は、上述のものなどの1つ又は複数の層Aと、上述のものなどの1つ又は複数の層Bとの組み合わせであることが好ましい。反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子が上述の多層構造になっている典型的な例としては、A/M多層構造、A/M/A多層構造、A/M/B多層構造、A/B/M/A多層構造、A/B/M/B多層構造、A/B/M/B/A多層構造、B/M多層構造、B/M/B多層構造、B/A/M/A多層構造、B/A/M/B多層構造、B/A/M/B/A多層構造が、これらだけには限らないが挙げられ、ここで、層A、磁性体層M及び層Bは、上述のものから選ばれている。
【0032】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部は、誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造、及び誘電体/反射体/誘電体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造であり、本明細書に記載の反射層は、金属及び金属合金から成る群から選択された、好ましくは反射性金属及び反射性合金から成る群から選択された、より好ましくはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択された、さらにより好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)及びこれらの合金から成る群から選択された1つ又は複数から、なおより好ましくはアルミニウム(Al)から、別個に好ましくは作られ、誘電体層は、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化セリウム(CeF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化ナトリウムアルミニウム(たとえば、NaAlF)、フッ化ネオジウム(NdF)、フッ化サマリウム(SmF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化リチウム(LiF)などの金属フッ化物、及び酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、及び酸化アルミニウム(Al)などの金属酸化物から成る群から選択された、より好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)及び二酸化ケイ素(SiO)から成る群から選択された1つ又は複数から、なおより好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)、及び磁性体から、別個に好ましくは作られ、磁性体層は、好ましくは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及び/若しくはコバルト(Co);並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金;並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む。別法として、本明細書に記載の誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造、及び誘電体/反射体/誘電体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造は、人間の健康及び環境に安全と考えられている多層顔料粒子とすることができ、前記磁性体層は、約40重量%~約90重量%の鉄、約10重量%~約50重量%のクロム、及び約0重量%~約30重量%アルミニウムを含有する実質的に無ニッケルの組成を有する磁性合金を含む。誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造を有する、特に適切な反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、MgF/Al/磁性体/Al/MgF及びMgF/Al/MgF/磁性体/Al/MgFをこれらだけには限らないが含み、磁性体層は鉄を含み、好ましくは磁性合金又は鉄とクロムの混合物を含む。
【0033】
別法として、本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、反射性プレートレット形のカラーシフトする磁性又は磁化可能な、特に磁性薄膜干渉顔料粒子であってもよい。たとえば顔料粒子、インク、コーティング又は層などの、カラーシフト要素(当技術分野ではゴニオクロマチック要素とも呼ばれる)が、セキュリティ印刷の分野で知られており、視角又は入射角度に依存する色を呈し、一般に入手可能なカラースキャン、印刷及びコピー事務機器による偽造及び/又は違法複製からセキュリティ文書を保護するために使用される。
【0034】
磁性薄膜干渉顔料粒子は当業者に知られており、たとえば、米国特許第4,838,648号、国際公開第2002/073250号、欧州特許第0686675号、国際公開第2003/000801号、米国特許第6,838,166号、国際公開第2007/131833号、欧州特許出願公開第2402401号、及びこれらで引用された文献に開示されている。磁性薄膜干渉顔料粒子は、5層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子、及び/又は6層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子、及び/又は7層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子を含むことが好ましい。
【0035】
好ましい5層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から構成され、反射体及び/又は吸収体は磁性体層でもあり、反射体及び/又は吸収体は、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルト、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁性体層であることが好ましい。
【0036】
好ましい6層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造から構成される。
【0037】
好ましい7層ファブリペロー多層構造は、米国特許第4,838,648号などに開示されている、吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から構成される。
【0038】
本明細書に記載のファブリペロー多層構造の反射体層は、上述のものなどの1つ又は複数の材料から別個に作られることが好ましい。ファブリペロー多層構造の誘電体層は、上述のものなどの1つ又は複数の材料から別個に作られることが好ましい。
【0039】
吸収体層は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、これらの金属硫化物、これらの金属炭化物、及びこれらの金属合金から成る群から選択された、より好ましくは、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、及びこれらの金属合金から成る群から選択された、さらにより好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの金属合金から成る群から選択された、1つ又は複数から別個に作られることが好ましい。
【0040】
磁性体層は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含むことが好ましい。7層ファブリペロー構造を構成する磁性薄膜干渉顔料粒子が好まれる場合には、磁性薄膜干渉顔料粒子が、Cr/MgF/Al/Ni/Al/MgF/Crの多層構造から成る7層ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造を含むことが特に好まれる。
【0041】
本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は、人間の健康及び環境に安全と考えられている、また、たとえば5層ファブリペロー、6層ファブリペロー多層構造、及び7層ファブリペロー多層構造に基づいている、多層顔料粒子とすることができ、前記顔料粒子は、約40重量%~約90重量%の鉄、約10重量%~約50重量%のクロム、及び約0重量%~約30重量%アルミニウムを含有する実質的に無ニッケルの組成を有する磁性合金から構成される1つ又は複数の磁性体層を含む。人間の健康及び環境に安全と考えられている多層顔料粒子の典型的な例は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、欧州特許出願公開第2402401号に見出すことができる。
【0042】
本明細書に記載の誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体の多層構造、本明細書に記載の吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造、本明細書に記載の吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造、及び本明細書に記載の吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造は、ウェブの上に別々の必要な層という従来の堆積技法によって通常は製造される。たとえば、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)又は電解堆積による所望の数の層の堆積後、層のスタックは、適切な溶剤中で剥離層を溶解することによって、又はウェブから材料を剥がすことによって、ウェブから除去される。そうして得られた材料は次に、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子に分解され、この粒子はさらに、粉砕、ミリング(たとえば、ジェットミリングプロセスなど)又は任意の適切な方法によって、必要なサイズの顔料粒子が得られるようにさらに処理されなければならない。結果として得られた生産物は、破断縁部、不規則な形状及び異なるアスペクト比を持つプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子から成る。適切な顔料粒子の調製についてのさらなる情報は、たとえば、参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許出願公開第1710756号及び欧州特許出願公開第1666546号に見出すことができる。
【0043】
本明細書に記載の磁気誘導マーク120は、a)(適切な権限者によって作成された場合の)検証可能アクセス資格証明文書に、本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング配合物を塗布するステップと、b)コーティング配合物を磁界発生デバイスの磁界に曝して、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部分を配向させるステップと、c)反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子をその採用された位置及び向きに固定するようにコーティング配合物を固化させるステップとを含むプロセスによって調製される。
【0044】
本明細書に記載のコーティング配合物は、結合剤材料中に分散された、本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含み、前記反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、約2重量%~約40重量%、より好ましくは約4重量%~約30重量%の量で存在し、この重量パーセントは、結合剤材料、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子、及びコーティング配合物の他の任意選択的な成分の合計重量に基づいていることが好ましい。本明細書に記載のコーティング配合物は、有機顔料粒子、無機顔料粒子、及び有機色素から成る群から選択された1つ若しくは複数の着色成分、及び/又は1つ若しくは複数の添加物をさらに含み得る。後者は、粘性(たとえば、溶剤、増粘剤、界面活性剤)、粘稠性(たとえば、沈降防止剤、フィラー及び可塑剤)、発泡特性(たとえば、消泡剤)、潤滑特性(ワックス、油)、UV安定性(光安定剤)、接着特性、帯電防止特性、貯蔵安定性(重合防止剤)等などの、コーティング配合物の物理的、流動学的及び化学的パラメータを調整するために使用される化合物及び材料を含むが、これらだけには限らない。本明細書に記載の添加物は、当技術分野で知られている量及び形でコーティング配合物中に、添加物の寸法の少なくとも1つが1~1000nmの範囲にあるいわゆるナノ材料を含めて、存在し得る。
【0045】
本明細書に記載のステップa)を適用することは、スクリーン印刷、グラビア印刷及びフレキソ印刷から成る群から好ましくは選択された印刷プロセスによって遂行される。これらのプロセスは当業者によく知られており、たとえば、Printing Technology,J.M.Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning,5th Edition、293頁、332頁及び352頁に記載されている。
【0046】
本明細書に記載の反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング配合物が、その中の前記顔料粒子を動かし回転させることができるようになお十分に濡れている、又は柔らかい間に(すなわち、コーティング配合物が第1の段階にある間に)、コーティング配合物は磁界を受けて、粒子の配向が達成される。反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を磁気配向させるステップは、塗布されたコーティング配合物をそれが「濡れている」(すなわち、依然として液体であり粘りけがありすぎない)間に、磁界発生デバイスによって生成された決定磁界に曝して、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を、磁界の磁力線に沿って配向パターンを形成するように配向させるステップを含む。
【0047】
コーティング配合物を基板表面に塗布することに続いて、一部は塗布と同時に、又は塗布と同時に、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子が、これらを所望のパターンに従って配向させるための外部磁界を使用することによって配向される。そうして得られる配向パターンは、ランダムな配向を除いて、また、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子がその磁気軸線を、前記粒子が塗布されているID文書に平行又は垂直に配向させているパターンを除いて、任意のパターンとすることができる。
【0048】
[037]装飾及びセキュリティ用途のための多種多様な磁気誘導マークが、たとえば米国特許第6,759,097号、欧州特許出願公開第2165774号及び欧州特許第1878773号に開示されている様々な方法によって生み出され得る。ローリングバー効果として知られている視覚的効果も生み出され得る。ローリングバー効果は、画像が視角に対して傾けられると動く(回転する)ように見える、対照をなす1つ又は複数のバンドを示し、前記視覚的効果は、磁性又は磁化可能顔料粒子のある特定の配向に基づいており、前記顔料粒子は、凸湾曲(当技術分野では負湾曲配向とも呼ばれる)又は凹湾曲(当技術分野では正湾曲配向とも呼ばれる)に従って、湾曲して配列されている。ローリングバー効果を生み出す方法は、たとえば欧州特許出願公開第2263806号、欧州特許第1674282号、欧州特許出願公開第2263807号、国際公開第2004/007095号、及び国際公開第2012/104098号に開示されている。ムービングリング効果として知られる視覚的効果も生み出され得る。ムービングリング効果は、前記磁気誘導マークの傾斜角度に応じて任意のx-y方向に動くように見える、じょうご、円錐、ボウル、円、楕円及び半球などのオブジェクトの視覚的錯覚画像から成る。ムービングリング効果を生み出す方法は、たとえば欧州特許出願公開第1710756号、米国特許第8,343,615号、欧州特許出願公開第2306222号、欧州特許出願公開第2325677号、国際公開第2011/092502号、及び米国特許第2013/084411号に開示されている。
【0049】
ベネチアンブラインド効果として知られる磁気誘導マークが図2Aに示されており、生み出すことができる。ベネチアンブラインド効果は、顔料粒子がその磁気軸線を互いに平行にしている、且つ1つの平面に平行にしている部分を含み、ここで前記平面はID文書基板と平行ではない。特に、顔料粒子は互いに平行であり、また、顔料粒子が塗布されている基板の面に対して、顔料粒子面が少なくとも10°の本質的に同じ仰角を有する、視覚的効果。ベネチアンブラインド効果は顔料粒子を含み、この顔料粒子は、観察の特定的な方向に沿って可視性を下にある基板表面に与え、それにより、基板表面にある印又は他の特徴が観察者に見えるようになる一方で、この顔料粒子は、観察の別の方向に沿っては可視性を妨げるように配向されている。ベネチアンブラインド効果を生み出す方法は、たとえば米国特許第8,025,952号及び欧州特許第1819525号に開示されている。
【0050】
フリップフロップ効果として知られる(当技術分野ではスイッチング効果とも呼ばれる)磁気誘導マークが図2Bに示されており、生み出すことができる。フリップフロップ効果は、遷移によって分離された第1の部分及び第2の部分を含み、顔料粒子が第1の部分では第1の面に平行に配列され、第2の部分の顔料粒子は第2の面に平行に配列されている。フリップフロップ効果を生み出す方法は、たとえば欧州特許第1819525号及び欧州特許第1819525号に開示されている。特に適切な配向パターンには、上述のベネチアンブラインド効果及びフリップフロップ効果が含まれる。
【0051】
本明細書に記載の磁気誘導マークを生み出すプロセスは、ステップb)と部分的に同時に、又はステップb)に続いて、部分的に反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子をその採用された位置及び向きに所望のパターンで固定して磁気誘導マークを形成し、以てコーティング配合物を第2の状態に変換するように、コーティング配合物を固化させるステップc)を含む。この固定により、固体のコーティング又は層が形成される。用語の「固化」は、任意選択で存在する架橋剤、任意選択で存在する重合開始剤、及び任意選択で存在するさらなる添加物を含む、塗布されたコーティング配合物中の結合剤成分を、基板表面に接着する本質的に固体の材料が形成されるようにして、乾燥又は固体化、反応、硬化、架橋結合又は重合させることを含むプロセスを指す。本明細書で述べられているように、固化させるステップc)は、反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子も含むコーティング配合物中に含まれる材料に応じて、別の手段又はプロセスを用いることによって行われてもよい。固化させるステップは一般に、支持面に接着する実質的に固体の材料が形成されるようにコーティング配合物の粘性を増加させるどんなステップでもよい。固化させるステップは、溶剤などの揮発性成分の気化、及び/又は水分蒸発(すなわち物理的な乾燥)に基づく物理的プロセスを伴ってもよい。本明細書では、熱風、赤外線、又は熱風と赤外線の組み合わせが使用されてもよい。別法として、固化プロセスは、コーティング配合物に含まれる結合剤及び任意選択的な開始剤化合物及び/又は任意選択的な架橋結合化合物の硬化、重合又は架橋結合などの化学反応を含み得る。このような化学反応は、物理的な固化プロセスについて上で概説した熱照射又はIR照射によって開始することができるが、好ましくは、放射機構による化学反応の開始を、紫外線-可視光放射硬化(以下ではUV-Vis硬化と呼ぶ)及び電子ビーム放射硬化(Eビーム硬化)と、オキシ重合化(酸素と、好ましくはコバルト含有触媒、バナジウム含有触媒、ジルコニウム含有触媒、ビスマス含有触媒、及びマンガン含有触媒から成る群から選択された1つ又は複数の触媒との結合反応によって通常は誘導される、酸化細網化)と、架橋結合反応又はこれらの任意の組み合わせとを含めて、含むことができるが、これらだけには限らない。放射硬化は特に好まれ、UV-Vis放射硬化はよりいっそう好まれるが、それは、これらの技術が有利なことに非常に速い硬化プロセスにつながり、それゆえに、本明細書に記載の磁気誘導マークを含むどんな文書の調製時間も激減させるからである。その上、放射硬化には、硬化放射に曝した後にコーティング配合物の粘性がほとんど瞬時に増大することが生み出され、したがって、粒子のさらなる動きを最小化するという利点がある。その結果、磁気配向ステップの後のいかなる情報の消失も本質的に回避され得る。特に好まれるのは、電磁スペクトルのUV又は青色部分の波長成分(通常は200nm~650nm、より好ましくは200nm~420nm)を有する化学光の影響のもとでの、光重合による放射硬化である。UV-可視硬化のための機器は、化学線放射源として、高出力発光ダイオード(LED)ランプ、又は中圧水銀灯(MPMA)若しくは金属蒸気アークランプなどのアーク放電ランプを含むことができる。
【0052】
本明細書に記載の磁気誘導マークは、偽造するのが非常に困難であり、したがって、不正行為に対する有効な保護を構成し、検証可能アクセス資格証明文書のIDデータに対する信頼を著しく向上させることに寄与する。
【0053】
本明細書に記載の検証可能アクセス資格証明文書は、ID文書基板と磁気誘導マークの間の下塗り層をさらに含むことがある。存在する場合、この下塗り層は、好ましくは暗色であり、より好ましくは黒色である(図3参照)。
【0054】
本明細書に記載の検証可能アクセス資格証明文書に設けられた機械可読マーキングは、機械可読マーキング、バーコード及び同類のものを含む任意の種類のマーキング又はパターンとすることができる。2次元バーコードには、データマトリックス又はデータマトリックスシンボル、及びQuick Response(QR)コード(登録商標)等が含まれ得る。バーコードは、GS1(商標)データマトリックスECC200標準によるバーコードとすることができる(GS1はバーコードの標準規格を提供する国際協会)。この標準規格は、2つのタイプの要素、すなわち第1のタイプの要素及び第2のタイプの要素によって形成されるバーコードを考慮に入れている。これらの要素は、ドット又は正方形の形とすることができ、任意の適切な手段によってID文書に設ける、又は形成することができる。本明細書に記載の機械可読マーキングは、印刷プロセス(特にインクジェット印刷)、エッチング法及びアブレーション法(特に、レーザエッチング又はレーザ焼き付け)、エンボス法等を含む、任意の適切な手段によって生み出すことができる。
【0055】
1つの実施形態によれば、また図3に示されるように、本明細書に記載の検証可能アクセス資格証明文書は、磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む磁気誘導マーク、符号化データを表すパターン(機械可読マーキング)を備え、前記パターンは、磁気誘導マーク、及び任意選択で磁気誘導マークの下の下塗り層と少なくとも部分的に重なり合う。たとえば、図2A及び図3に示されるように、磁気誘導マークの反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、互いに平行になるように配向され、文書に対して顔料粒子面が少なくとも10°の仰角を有する。検証可能アクセス資格証明文書は、磁気誘導マークの下に暗色の、好ましくは黒色の下塗り層をさらに備え、また、符号化データを表すパターンを備え、前記パターンは、たとえばワークステーションGravograph Fibre100(10W、1064nm)を使用するレーザマーキングによって得られる。パターンの黒色セルはレーザによって処理され、白色セルは未処理のまま残される。レーザ処理は、レーザの光学特性、特にカメラに向けて送り返される光の量を変化させる。レーザによって未処理のゾーンは、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子からの強い後方反射の故に強度が高く、レーザ処理されたゾーンは、フラッシュ光のうちの小部分をカメラの方向に散乱させるだけなので暗く見える。
【0056】
別の実施形態によれば、本明細書に記載の検証可能アクセス資格証明文書は、磁気配向された反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む磁気誘導マーク、符号化データを表すパターン、を備え、前記パターンは、磁気誘導マークと少なくとも部分的に重なり合い、磁気誘導マークの反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子は、互いに平行になるように配向され、文書に対して顔料粒子面が少なくとも10°の仰角を有し、符号化データを表すパターンは、1つ又は複数のルミネセンス化合物を含み得る黒色インクを印刷することによって得られる。符号化データを表すパターンは、印刷プロセスによって、特に、解像度が300から600dpi piまでの間のドロップオンデマンドインクジェットによって付けることができる。
【0057】
本明細書で説明され図1及び図3に示された機械可読マーキングと磁気誘導マークとの結合は、有利なことに、文書のデジタルセキュリティを確認し、また、本物のパスポートからの磁気誘導マークと、別の文書に印刷されていた変更機械可読マーキングとを組み合わせる攻撃を防止する。
【0058】
機械可読マーキングの復号は通常、文書100の前記マーキングの(デジタル)画像を取り込むことから開始する。次に、このような画像は、画像の画素のそれぞれの画素値を定義するデジタル画像データとして得られる。次に、このデジタル画像データは、処理ユニット(たとえば、CPU、コンピュータ、サーバ、埋め込みシステム、ASIC等)によって画像処理される。このような処理は、バーコードとして符号化されているデータを最終的に復号するための様々な個別ステップに分割することができる。
【0059】
本明細書に記載の機械可読マーキングは、人物データ、生体データ、資格証明データ等などの符号化データを保持する。本明細書に記載の機械可読マーキングは、人物データ及び/又は生体データである符号化データを保持することが好ましい。本明細書では、用語の「人物情報」は、セキュリティ物品ユーザ又はオーナの個人生活に関連した情報を表示するために用いられる。人物データ又は人物情報の典型的な例としては、名、姓(複数可)、国籍、出身地、出生地、出生日、性別、個人ID番号、及び個人社会番号が挙げられるが、これらだけには限らない。本明細書では、用語の「生体データ」は、セキュリティ物品ユーザの身体特性を指すために使用される。生体データは、画像若しくは英数字記述から、又は身体特性を符号化することから構成され得る。生体データの典型的な例としては、顔、指紋、掌紋、虹彩パターン、網膜パターン、外部耳たぶパターン、静脈パターン、血中酸素濃度、骨密度、歩き方、声、匂い、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された生体データに対応する画像及び/又は、又はデータが挙げられるが、これらだけには限らない。
【0060】
ID文書は、機械可読ゾーンMRZと呼ばれる特別なスペースを通常は備える。セキュリティ物品の1つのあり得る例としてのパスポートでは、このようなMRZは、たとえば、ID情報ページの下方部分に設けられたスペースであることがあり、ID情報ページに印刷されているのと同一又は相当するID情報が、光学特性認識フォーマットで符号化される。MRZは、ID文書のユーザ又はオーナの人物情報を含むことができ、44文字の長さを有する2本の線で通常は構成される。MRZには、ID情報、名前、パスポート番号、検査数字、国籍、出生日、性別、パスポート有効期限、及び個人ID番号を含む情報を印刷及び符号化することができる。MRZは、国によって決まることが多い補足情報をさらに含むことがある。
【0061】
本開示の一般的概念をよりよく理解し、その一般的概念のいくつか特定の好ましい修正を指摘するために、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含むマークを携帯デバイスで認証することについて、より詳細にさらに論じる。
【0062】
基板2に付けられた磁気誘導マーク120を携帯デバイス3によって認証する本方法は、撮像装置4、たとえばスマートフォンカメラと、光源5、すなわちLEDフラッシュとの特定の幾何学的配置に基づいている。スマートフォンのほとんどのモデルでは、カメラ開口部とLEDフラッシュは、15mm未満の離隔距離で並べて配置されている。したがって、見る方向に対するマーク1におけるプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子6のある特定の磁気配向では、適切な撮像距離と合わせて、フラッシュから放出される光、すなわち放射7がカメラへ後方反射されるための、すなわち反射8の、幾何学的条件が満たされるのに対して、他の配向では、反射はカメラの外に向いている。このことは図4及び図5に図示されている。スマートフォン3は、所定の距離L、たとえばL=80mmで、認証に使用されるべき画像のセット又はビデオシーケンスを取得しながら、基板2に平行に移動する。別法として、磁気誘導マーク120もスマートフォン3との関連で1つの平行面で移動する。
【0063】
あるサイトへのアクセスをユーザに対して認可するためには、ユーザは、スマートフォンのカメラを所定の距離Lで第2のゾーンの磁気誘導マーク120の上に配置しなければならない。スマートフォンのディスプレイ上のいくつかのガイドが、スマートフォンを距離Lに維持するためのユーザの助けになり得る。
【0064】
ユーザは、磁気誘導マーク120をスマートフォンの光源(一般に、LED)によって照明し、照明された磁気誘導マークの複数のデジタル画像をカメラによって取得し、カメラは、図4及び図5に示されるように、撮像装置を磁気誘導マークの上方で平面層に平行な方向に移動させることによって、異なるデジタル画像ごとに、前記磁気誘導マークに関して対応する別個の視角θにある。
【0065】
取得されたデジタル画像ごとに、スマートフォン上で実行されるアプリケーションにより、プロセッサを用いて、対応する視角θでプレートレットによって反射され撮像装置で集められた光の、対応する平均強度Iを計算することが可能になる。磁化プレートレットの構造の故に、磁気誘導マーク120に非常に特徴的である、磁気誘導マークからの収集光の強い変動。
【0066】
スマートフォン上で実行されるアプリケーションは次に、反射光の計算平均強度、及び対応する視角を記憶して、特徴的な強い非等方性を示す反射光強度曲線I(θ)を得る(図6参照)。
【0067】
記憶された反射光強度曲線I(θ)は次に、前記磁気誘導マークについての記憶された基準反射光強度曲線Iref(θ)と比較される。
【0068】
図6は、画像のセット中の磁気誘導マークの位置x’,,,x’を、カメラのレンズとの、サンプル距離Lに対する既知のスマートフォンの対応する視角θにおいて、磁気誘導マークの強度プロファイルのグラフと共に図示し、I...Iは、対応する視角θにおける平均強度である。
【0069】
図7は、一連の画像から抽出された磁気誘導マークの強度プロファイル及び相対強度プロファイルを図示する。第1のグラフは、効果をなお表す磁気誘導マークゾーンの非補正強度プロファイルを示す。第2のグラフのバックグラウンド(BKG)ゾーンの強度変動は、無秩序な電話自動調整を示す。第3のグラフは、位置によって決まるマークの反射性を明らかにする、補正された磁気誘導マーク強度プロファイルを示す。
【0070】
特に、認証することは、部分的反射性プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子によって反射され、撮像装置によって対応する視角θで集められた光の対応する平均強度Iを、デジタル画像ごとに計算すること、
反射光の計算された平均強度及び対応する視角を記憶して反射光強度曲線I(θ)を得ること、
記憶された反射光強度曲線I(θ)を、前記マークについての記憶された基準反射光強度曲線Iref(θ)と比較すること、及び
磁気誘導マークが本物であるかどうかを比較の結果に基づいて決定すること
によって行われる。
【0071】
本発明の提案された1つの実施形態では、磁気誘導マークは、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の特定的な配向をそれぞれが持つ、1つ又は複数の別個のゾーンを呈するように設計される。たとえば、第1のゾーンのW方向に対して15°に配向されたプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子、及びE方向に対して15°に配向された粒子。
【0072】
このような磁気誘導マーク120の例が、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子6(花弁)及び粒子6’(円板)を含むマークを図示する図9に、並びに粒子6(外花弁)及び粒子6’(内花弁)を含むマークを図示する図10に示されている。このようにして反射が、マークをスマートフォンの視野の右縁部に置くことによって第1のゾーンの粒子から得られるのに対して、他のゾーンの反射は、マークをスマートフォン視野の左縁部に置くことによって得られる。このことは、スマートフォン位置と、これらの位置で得られた対応する画像とを示す図11にさらに明示されている。
【0073】
スマートフォンの画面プレビューでのマークの正確な位置と、マークまでのスマートフォンの距離とは両方とも、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子から反射を得ることができる角度を正確に画定する。スマートフォン画面プレビューに案内ターゲット9を設けることによって、ユーザは、スマートフォンを正確な位置で横方向に容易に配置することができ、それにより、視距離も制御される場合には正確な角度を得ることができる。
【0074】
垂直位置(視距離)は、適正な距離のマークのサイズに合わなければならないターゲットのサイズによって、又は、磁気配向デザインに加えて付けられた第2のマーク若しくはバーコードに同時に向けられるべき第2のターゲットによって、又は、近く若しくは遠くに移動させるようにユーザに指示する画面上の書かれたメッセージによって、案内することができる。
【0075】
これにより、認証方法は、正確なプレートレット形磁性又は磁化可能顔料粒子の角度に対する感受性が高くなり、それゆえに、正確な配向を再現しないはずの潜在的な偽物を好適に識別することが可能になる。
【0076】
認証は、スマートフォンの2つの正確な位置で取得された2つの画像中のマークの、第1及び第2のゾーンでの反射強度を分析することによって行われて、配向角度が確認される。加えて、マークの平面層に平行な方向の2つの位置の間でスマートフォンが移動中に、一連の画像を取得することができる。次に、どちらかの方向に配列されたプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を含む2つの異なるゾーンからの強度が、位置の関数として抽出され記録される。図14に描写されたのと同様に分析することができる、2つの強度プロファイルが得られる。
【0077】
この関連で、図14は、位置に対する強度プロファイル、その1次導関数及び2次導関数のグラフを示す。1次導関数振幅が強度変化の速度をもたらし、ゼロの位置が強度最大の位置を与える。2次導関数は、強度プロファイルが2つの変曲点(反転)を有することを示す。
【0078】
同様の一実施形態では、マークに平行な面内でのスマートフォンの制御された横方向移動中にビデオシーケンスを取得することができる。この移動は、拡張現実によって案内することができ、この場合、移動ターゲットがスマートフォンディスプレイに表示され、ユーザは、マークをターゲット内に維持しながら電話を移動させるように促される。このようにして、磁気配向された輝くプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の、視角の関数としての強度変化の速度(スマートフォンの画面上のマークの位置及びマークまでのスマートフォンの距離から計算される)は、ビデオシーケンスから抽出することができる。この強度変化の速度は、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子が配向されている正確な角度に対して非常に感受性が高いので、強力な認証パラメータになる。強度変化の速度は、図14に図示されたプロファイルの1次導関数から得ることができる。2次導関数も、プロファイルの変曲点の位置を決定できるようにすることによって、強力な認証パラメータとして用いることができる。従来技術の磁気配向では、プレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の角度位置を±2度以内に至るまでに設定することができる。偽造者が、配向されたプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子を用いてマークを生み出すことがたとえできたとしても、正確な角度の配向は得られそうになく、こうして偽造マークは、この方法によって偽物として高い精度で検出することができる。
【0079】
ビデオシーケンスを使用して、電話の制御された横方向移動中の画面上のマークの位置に対応する、マークの照明角度の関数としての相対強度を得ること、及び加えて、マーク内の画素強度の変動を得ることもまた可能である。相対強度と変動の両方のプロファイルが、磁気誘導マークのプレートレット形の磁性又は磁化可能顔料粒子の配向によって決まる。
【0080】
本明細書に記載の方法では、アプリケーションは次に、磁気誘導マークが本物であるかどうかを比較の結果に基づいて決定する(ある特定の許容誤差内で)。比較の結果を標示するメッセージが表示されることが好ましい。磁気誘導マークが本物とみなされる場合、ユーザは、機械可読マーキング130の画像を取り込み、アプリケーションは、IDデータのシグネチャを機械可読マーキングの取得画像から抽出する。抽出されたシグネチャは次に、スマートフォンの通信ユニットを介して、通信ネットワークに接続された(サイトへのアクセスの認可を引き渡すように操作可能な権限者の)サーバへメッセージとして送られる。
【0081】
サーバは次に、抽出されたシグネチャが人間可読のIDデータの対応するシグネチャと一致することをチェックし、一致する場合には、ユーザが通信ネットワークを通して所与のサイトにアクセスして、このサイトで操作を行うことを認可する。サーバは、シグネチャが一致しているかどうかを標示するメッセージをスマートフォンへ送ることが好ましい。サイトへのアクセスを許可する代わりに、サーバは、検証可能な資格証明又はトークンの提供をユーザに送り返すことができ、その場合、このトークンは様々に使用でき、とりわけサイト又はサービスにアクセスすることに使用できる(このことは、前進するサーバへのアクセスを必要としない)。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14