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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電力ケーブルの布設方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H02G1/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022193205
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2019073952の分割
【原出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2023014325
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 佳昭
(72)【発明者】
【氏名】角谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 圭悟
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-038328(JP,A)
【文献】特開昭47-035890(JP,A)
【文献】特開平11-103515(JP,A)
【文献】特開2006-121836(JP,A)
【文献】実開昭56-092416(JP,U)
【文献】特開平04-247405(JP,A)
【文献】特開平06-311617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
H02G 9/00-9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布設経路に複数の搬送機を所定の間隔で配置して、複数の前記搬送機によって電力ケーブルを搬送する電力ケーブルの布設方法であって、
前記搬送機間において、前記電力ケーブルの蛇行を機械的に検知する第一の工程と、
前記電力ケーブルの蛇行を検知した場合に、全ての前記搬送機の駆動を停止する第二の工程と、
前記電力ケーブルの蛇行を是正する第三の工程とを備え、
前記第一の工程において、前記電力ケーブルの蛇行の検知は、前記電力ケーブルが正常な変位範囲を超えた場合を蛇行として検知する構造を備える機械的な検知装置を用いて行い、
前記機械的な検知装置は、
離間して配置される一組のポール部と、
少なくとも一方の前記ポール部を傾倒可能に支持する台座部と、
前記ポール部の傾倒に伴って作動するスイッチ部と、
前記スイッチ部の作動に伴って、前記ポール部の傾倒を示す信号を受信部に送る送信部とを備え、
前記電力ケーブルは、前記一組のポール部の間を進行し、
前記ポール部は、前記電力ケーブルが前記正常な変位範囲を超えて蛇行した場合に、前記電力ケーブルから押圧されることで傾倒し、
前記受信部は、前記送信部から前記信号を受けた場合に、前記信号を前記搬送機の動作を制御する制御部に伝える、
電力ケーブルの布設方法。
【請求項2】
前記台座部は、
前記ポール部の下端面を支持する面を有する筐体と、
傾倒可能に支持されるピン部とを備え、
前記筐体は、
前記ピン部の傾倒軌跡に交差する位置に開口する切欠を備え、
前記ポール部は、前記下端面に開口する孔を有し、
前記孔は、前記ピン部のうち前記切欠を経て前記筐体から突出する箇所が進退可能に挿入される、請求項1に記載の電力ケーブルの布設方法。
【請求項3】
前記ポール部は円筒状の部材である、請求項1または請求項2に記載の電力ケーブルの布設方法。
【請求項4】
前記ポール部の構成材料は樹脂である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力ケーブルの布設方法。
【請求項5】
前記ポール部の高さは前記電力ケーブルのケーブル径よりも大きい、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力ケーブルの布設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力ケーブルの蛇行検知装置、電力ケーブルの蛇行検知システム、及び電力ケーブルの布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長く、重量物である電力ケーブルを洞道等に布設する場合、洞道内に複数のモータローラ(例、特許文献1)を所定の間隔で配置し、モータローラによって電力ケーブルを搬送することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-341634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長く、重量物である電力ケーブル、代表的には長さが100m以上であり、ケーブル重量が数kg/m以上といった電力ケーブルを既設の洞道等に布設する際、電力ケーブルが大きく蛇行することを防止することが望まれる。
【0005】
既設の洞道等に電力ケーブルを追加する場合や、既設の電力ケーブルを交換する場合がある。上記の場合、新設の洞道等とは異なり、通常、洞道等の内には、電力ケーブルや各種の配管等が収納されている。そのため、新たな電力ケーブルを既設の洞道等に布設する際、新たな電力ケーブルが特に左右に大きく蛇行すれば、上述の収納物や洞道等の内壁に接触することが考えられる。
【0006】
上述の蛇行は、電力ケーブルを複数のモータローラによって搬送する際、各モータローラの搬送速度が異なることで生じると考えられる。各モータローラの搬送速度が異なる原因として、例えば、以下の少なくとも一つが考えられる。
(1)各モータローラの回転数が異なる。
(2)各モータローラと電力ケーブルとの摩擦力が異なる。
(3)すべりが発生する。
【0007】
洞道等の勾配や水平方向の屈曲角度に応じて、各モータローラの回転数を異ならせることがある。また、上記勾配や屈曲角度によって、各モータローラに加えられる電力ケーブルからの荷重が異なることで、上記摩擦力が異なることがある。上記回転数の相違によっても、上記摩擦力の相違が生じ得る。上記勾配や屈曲角度によっては、上記摩擦力が不十分となり、電力ケーブルが滑ることがある。
【0008】
そのため、複数のモータローラを用いて電力ケーブルを布設する場合に対して、電力ケーブルが大きく蛇行しない対策について、検討の余地がある。
【0009】
そこで、本開示は、布設時に電力ケーブルの蛇行を検知できる電力ケーブルの蛇行検知装置を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、布設時に電力ケーブルが大きく蛇行することを防止できる電力ケーブルの蛇行検知システム、及び電力ケーブルの布設方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置は、
離間して配置される一組のポール部と、
少なくとも一方の前記ポール部を傾倒可能に支持する台座部と、
前記ポール部の傾倒に伴って作動するスイッチ部と、
前記スイッチ部の作動に伴って、前記ポール部の傾倒を示す信号を受信部に送る送信部とを備える。
【0011】
本開示の電力ケーブルの蛇行検知システムは、
布設経路に所定の間隔で配置されて、電力ケーブルを前記布設経路に沿って送り出す複数の搬送機と、
前記搬送機の動作を制御する制御部と、
前記搬送機間に配置される本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置と、
前記受信部とを備え、
前記制御部は、
前記受信部が前記信号を受けた場合に、全ての前記搬送機の駆動を停止させる停止制御部を備える。
【0012】
本開示の電力ケーブルの布設方法は、
布設経路に複数の搬送機を所定の間隔で配置して、複数の前記搬送機によって電力ケーブルを搬送する電力ケーブルの布設方法であって、
前記搬送機間において、前記電力ケーブルの蛇行を機械的に検知すること、及び光学的に検知することの少なくとも一方を行う第一の工程と、
前記電力ケーブルの蛇行を検知した場合に、全ての前記搬送機の駆動を停止する第二の工程と、
前記電力ケーブルの蛇行を是正する第三の工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置は、布設時に電力ケーブルの蛇行を検知できる。本開示の電力ケーブルの蛇行検知システム、及び本開示の電力ケーブルの布設方法は、布設時に電力ケーブルが大きく蛇行することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置を示す概略正面図であり、ポール部が直立した状態を示す。
図2図2は、実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置において、ポール部の軸方向から、筐体の一端部側の領域を平面視した部分平面図である。
図3図3は、実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置を示す概略正面図であり、ポール部が傾倒した状態を示す。
図4図4は、実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る電力ケーブルの蛇行検知装置は、
離間して配置される一組のポール部と、
少なくとも一方の前記ポール部を傾倒可能に支持する台座部と、
前記ポール部の傾倒に伴って作動するスイッチ部と、
前記スイッチ部の作動に伴って、前記ポール部の傾倒を示す信号を受信部に送る送信部とを備える。
【0016】
本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置は、特に、複数の搬送機(例、モータローラ)を用いて電力ケーブルを布設する際に以下のように利用されることで、電力ケーブルの蛇行を検知できる。
【0017】
上記蛇行検知装置は、離間して並ぶ搬送機間に配置される。電力ケーブルが両ポール部間を進行する際に一方のポール部に接触するほどに蛇行すると、上記一方のポール部が倒れる。ポール部の傾倒に伴い、スイッチ部が作動する。つまり、ポール部の傾倒動作が電力ケーブルの蛇行として検知される。ポール部の傾倒に伴う信号(以下、傾倒信号と呼ぶ)は、送信部から受信部を介して、搬送機の動作を制御する制御部に送られる。制御部は、上記傾倒信号を受信した場合に、代表的には全ての搬送機の駆動を停止させる。全ての搬送機の停止によって、電力ケーブルが更に蛇行すること、即ち大きく蛇行することが防止される。
【0018】
このような本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置は、上述のように長く、重量物である電力ケーブルを既存の洞道等に布設する場合に利用されることで、電力ケーブルが大きく蛇行することを防止することに寄与する。また、本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置は、簡単な構成であり、製造性にも優れる。
【0019】
(2)本開示の電力ケーブルの蛇行検知装置の一例として、
前記台座部は、
前記ポール部の下端面を支持する面を有する筐体と、
傾倒可能に支持されるピン部とを備え、
前記筐体は、
前記ピン部の傾倒軌跡に交差する位置に開口する切欠を備え、
前記ポール部は、前記下端面に開口する孔を有し、
前記孔は、前記ピン部のうち前記切欠を経て前記筐体から突出する箇所が進退可能に挿入される形態が挙げられる。
【0020】
上記形態では、電力ケーブルが蛇行して、ポール部を傾倒する方向に押圧すると、ピン部は、切欠を抜けるように変位する。ピン部の変位に伴い、ポール部がピン部から抜け出る(詳細は後述する)。その結果、ポール部は筐体に傾倒を阻害されず、傾倒角度を大きく確保できる。例えば、ポール部は完全に転倒できる。従って、上記形態は、電力ケーブルが蛇行していない正常時には、ポール部の直立状態を筐体によって安定して支持できつつ、蛇行の発生時には、電力ケーブルの蛇行を良好に検知できる。
【0021】
(3)本開示の一態様に係る電力ケーブルの蛇行検知システムは、
布設経路に所定の間隔で配置されて、電力ケーブルを前記布設経路に沿って送り出す複数の搬送機と、
前記搬送機の動作を制御する制御部と、
前記搬送機間に配置される上記(1)又は(2)の電力ケーブルの蛇行検知装置と、
前記受信部とを備え、
前記制御部は、
前記受信部が前記信号を受けた場合に、全ての前記搬送機の駆動を停止させる停止制御部を備える。
【0022】
本開示の電力ケーブルの蛇行検知システムは、電力ケーブルが大きく蛇行することを防止できる。本開示の電力ケーブルの蛇行検知システムは、上述のように長く、重量物である電力ケーブルを既存の洞道等に布設する場合に利用されることで、大きく蛇行した電力ケーブルと洞道等内の収納物や内壁とが接触することを防止できる。
【0023】
(4)本開示の電力ケーブルの蛇行検知システムの一例として、
前記布設経路に所定の間隔で配置される複数の前記蛇行検知装置を備え、
前記制御部は、更に是正制御部を備え、
前記是正制御部は、
前記停止制御部からの停止命令後に、複数の前記搬送機のうち、前記信号を発した前記蛇行検知装置よりも、前記電力ケーブルの進行方向の前方側に配置される前記搬送機のみを駆動させる形態が挙げられる。
【0024】
上記形態は、一部の搬送機のみを駆動し、残部の搬送機を停止した状態にすることで、電力ケーブルの蛇行を自動的に是正できる。そのため、上記形態は、作業者の負担を軽減でき、蛇行是正時の作業性に優れる。
【0025】
(5)本開示の一態様に係る電力ケーブルの布設方法は、
布設経路に複数の搬送機を所定の間隔で配置して、複数の前記搬送機によって電力ケーブルを搬送する電力ケーブルの布設方法であって、
前記搬送機間において、前記電力ケーブルの蛇行を機械的に検知すること、及び光学的に検知することの少なくとも一方を行う第一の工程と、
前記電力ケーブルの蛇行を検知した場合に、全ての前記搬送機の駆動を停止する第二の工程と、
前記電力ケーブルの蛇行を是正する第三の工程とを備える。
【0026】
本開示の電力ケーブルの布設方法は、電力ケーブルが大きく蛇行することを防止できる。本開示の電力ケーブルの布設方法は、上述のように長く、重量物である電力ケーブルを既存の洞道等に布設する場合に実施されることで、大きく蛇行した電力ケーブルと洞道等内の収納物や内壁とが接触することを防止できる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
【0028】
[実施形態]
(電力ケーブルの布設方法)
図4を適宜参照して、まず、実施形態に係る電力ケーブルの布設方法を説明する。
なお、図4では、電力ケーブル9の進行方向の前方を紙面右側とする。
〈概要〉
実施形態の電力ケーブルの布設方法(以下、本布設方法と呼ぶことがある)は、長く、重量物である電力ケーブル9を所定の経路に布設する際に実施される。特に、長くて重い電力ケーブル9を布設する際には、図4に示すように所定の布設経路(図4では洞道8)に複数の搬送機3を所定の間隔で配置して、複数の搬送機3によって電力ケーブル9を搬送する。電力ケーブル9は、各搬送機3との摩擦力によって、進行方向の前方に順次送り出されて、布設経路を進行する。
【0029】
布設経路の勾配や水平方向の屈曲角度等によっては、上述のように各搬送機3の搬送速度が異なることがある。搬送速度の相違によって、電力ケーブル9の進行速度が全長にわたって一定とならず、相対的に遅い箇所と相対的に速い箇所とが生じることがある。上述の進行速度の差が大きい場合、電力ケーブル9において、上記相対的に遅い箇所よりも、電力ケーブル9の進行方向の後方に位置する箇所は蛇行し易い。また、電力ケーブル9において、搬送機3や後述の従動ローラ4に支持されない箇所(以下、フリー箇所90と呼ぶ)は蛇行が生じ易い。
【0030】
本布設方法は、以下の第一の工程と、第二の工程と、第三の工程とを備えることで、複数の搬送機3を用いて布設する場合に、電力ケーブル9が大きく蛇行することを防止する。
(第一の工程)搬送機3間において、電力ケーブル9の蛇行を機械的に検知すること、及び光学的に検知することの少なくとも一方を行う。
(第二の工程)電力ケーブル9の蛇行を検知した場合に、全ての搬送機3の駆動を停止する。
(第三の工程)電力ケーブル9の蛇行を是正する。
【0031】
ここで、布設時に進行する電力ケーブル9が水平方向に変位する量や上下方向に変位する量に対して、許容可能な範囲は、予め設定される。この範囲内での電力ケーブル9の変位は、正常な変位範囲とする。ここでの検知対象とする「電力ケーブル9の蛇行」は、上記正常範囲を超える電力ケーブル9の変位である。
【0032】
以下、まず、布設対象である電力ケーブル9、布設に利用される搬送機3、従動ローラ4を簡単に説明する。次に、各工程を説明する。
【0033】
(電力ケーブル)
電力ケーブル9は、代表的には、内側から順に、導体、絶縁層、シースを備える(詳細は図示せず)。電力ケーブル9は、絶縁層の内側及び外側の少なくとも一方に、半導電層を備えてもよい。また、電力ケーブル9は、絶縁層の外周に遮蔽層を備えてもよい。導体の構成材料は、代表的には、銅や銅基合金等が挙げられる。
【0034】
電力ケーブル9の長さは、布設経路の長さにもよるが、例えば100m以上、更に200m以上、300m以上、500m以上が挙げられる。布設経路によっては、電力ケーブル9の長さは1000m以上でもよい。代表的には、電力ケーブル9は、ドラム(図示せず)に巻き取られた状態で布設現場に運ばれて、布設時にドラムから繰り出される。
【0035】
電力ケーブル9のケーブル重量、ここでは長さ1mあたりの質量(kg/m)は、導体の断面積等にもよるが、例えば、数kg/mから50kg/m程度が挙げられる。
【0036】
(搬送機)
搬送機3は、布設経路に所定の間隔で配置されて、電力ケーブル9を布設経路に沿って送り出す装置である。搬送機3は、電力ケーブル9を進行可能な適宜な装置を利用できる。例えば、搬送機3は、駆動源と、電力ケーブル9が接触する本体部とを備え、本体部と電力ケーブル9との摩擦によって電力ケーブル9を進行させる装置が挙げられる。このような装置は、例えば、モータローラ(本例)、ボールローラ、キャタピラ等が挙げられる。
【0037】
モータローラは、上記本体部としてローラ部を備え、上記駆動源として、ローラ部を回転させるモータを備える(詳細は図示せず)。各搬送機3の動作は、代表的には、制御部5によって制御される。制御部5は、予め設定された条件(例、回転速度)に基づいてモータローラの動作を制御する。また、制御部5は、送受信部6を介して、各搬送機3に動作指令(信号)を出す。各搬送機3は、送受信部6からの動作指令を受ける受信部30と、制御回路(図示せず)とを備える。制御回路は、動作指令に基づき、ローラ部の回転を停止したり、回転速度を調整したりする。送受信部6,受信部30は、無線式のものでも、有線式のものでもよい。
【0038】
モータローラは、一対のガイドポール(図示せず)を備えてもよい。各ガイドポールは、上述のローラ部の回転軸の各端部側に、上記回転軸の軸方向に直交する方向に立設される。両ガイドポールは、ローラ部上を進行する電力ケーブル9を挟むように対向配置される。両ガイドポールの間隔(水平方向の距離)及び各ガイドポールの高さ(上下方向の長さ)は、上述の正常な変位範囲に応じて調整することが挙げられる。この場合、進行する電力ケーブル9における水平方向の変位、上下方向の変位が両ガイドポールによって規制される。このような両ガイドポールは蛇行の防止に寄与する。
【0039】
ガイドポールは、例えば、円柱状の部材が挙げられる。その他、ガイドポールは、上下方向に延びる軸を中心として回転可能な筒状のローラ部を備えてもよい。ローラ部は、進行する電力ケーブル9との接触によって回転することで、電力ケーブル9との接触抵抗を低減することに寄与する。
【0040】
(従動ローラ)
従動ローラ4は、搬送機3間に配置されて、電力ケーブル9の進行を促進する。従動ローラ4は、モータ等の駆動源を有さず、進行する電力ケーブル9との接触によって回転するローラ部を備える。従動ローラ4も、上述の一対のガイドポール(図示せず)を備えてもよい。
【0041】
(前工程)
本布設方法の実施に際して、搬送機3、適宜、従動ローラ4を洞道8の床面80等に配置する。代表的には、搬送機3間に一つ又は複数の従動ローラ4を配置する。図4は、搬送機3間に二つの従動ローラ4が配置される場合を例示する。隣り合う搬送機3の間隔L、隣り合う搬送機3と従動ローラ4との間隔L34、隣り合う従動ローラ4の間隔Lは、布設経路の長さや電力ケーブル9の大きさ等に応じて適宜選択できる。間隔L、L34、Lが小さいほど、電力ケーブル9を支持する搬送機3や従動ローラ4が多い。そのため、電力ケーブル9の直進性が高められ、蛇行が防止され易い。間隔L、L34、Lが大きいほど、搬送機3や従動ローラ4が少なくてよい。そのため、これらの設置時間や回収時間が短くなり易い。この点で作業者の負担が軽減される。例えば、間隔L34、Lは1m以上5m以下程度が挙げられる。間隔Lは、間隔L34又は間隔Lの1倍以上5倍以下程度が挙げられる。
【0042】
〈第一の工程〉
この工程において、電力ケーブル9の蛇行の検知は、機械的な検知装置及び光学的な検知装置の一方、又は双方を用いて行うことが挙げられる。各検知装置は、上述の正常な変位範囲を超えた場合を蛇行として検知するように構成する。
【0043】
機械的な検知装置は、例えば、蛇行した電力ケーブル9が直接接触することで、蛇行を検知する構造を備えるものが挙げられる。機械的な検知装置は、構造が単純である、検知に必要な電力エネルギーが少ない又は不要である、軽量である等といった利点を有する。機械的な検知装置の一例として、後述する実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置1が挙げられる。
【0044】
光学的な検知装置は、例えば、カメラや赤外線等の光学センサ部を備えるものが挙げられる。光学センサ部を備える検知装置は、例えば、電力ケーブル9における進行時の位置を測定し、上述の正常な変位範囲との差に基づいて蛇行を検知する構造を備えるものが挙げられる。光学センサ部は、蛇行した電力ケーブル9に非接触である。そのため、光学的な検知装置は、電力ケーブル9との接触に起因するセンサ部等の損傷を防止できる。
【0045】
機械的な検知装置や光学的な検知装置は、搬送機3同士間、搬送機3と従動ローラ4間、及び従動ローラ4同士間からなる群より選択される少なくとも一つの箇所に配置されることが挙げられる。また、上記少なくとも一つの箇所に、一つ又は複数の上記検知装置が配置されてもよい。一つの布設経路において、所定の箇所のみ、上記検知装置が配置されてもよいが、布設経路の全長にわたって、所定の間隔で上記検知装置が配置されることが好ましい。電力ケーブル9の任意の箇所において、電力ケーブル9の蛇行を速やかに検知可能であり、大きな蛇行が防止され易いからである。隣り合う検知装置の間隔は、例えば、間隔L又は間隔Lと同程度の大きさが挙げられる。
【0046】
〈第二の工程〉
この工程において、各搬送機3の動作の制御は、制御部5を用いて行うことが挙げられる。制御部5はコンピュータを利用できる。制御部5は、コンピュータを構成するプロセッサを備えることが挙げられる。また、制御部5は、例えば、上述の検知装置からの検知結果を取得可能に構成することが挙げられる。更に、制御部5は、例えば、上記検知装置が電力ケーブル9の蛇行を検知した場合に、全ての搬送機3の駆動を停止させるように構成することが挙げられる。このような制御部5を備える構成の一例として、後述する実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システム2が挙げられる。
【0047】
〈第三の工程〉
この工程において、電力ケーブル9の蛇行の是正は、搬送機3を利用して行うと、作業者の負担を軽減できて好ましい。この場合、制御部5は、例えば、複数の搬送機3のうち、一部の搬送機3を駆動させ、残部の搬送機3を停止させたままとするように構成することが挙げられる。このような制御を行う制御部5を備える構成の一例として、後述する実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システム2を利用することが挙げられる。上記蛇行の是正が完了したら、制御部5は、上記残部の搬送機3を駆動させる。その結果、全ての搬送機3によって電力ケーブル9が再び進行する。
【0048】
〈主な効果〉
本布設方法は、機械的な手段や光学的な手段を利用して、電力ケーブル9の蛇行を速やかに検知できる。また、本布設方法は、上記蛇行を検知した場合、全ての搬送機3を停止する。そのため、例えば、上述の間隔L、L34、Lがある程度大きく、フリー箇所90がある程度長い場合でも、蛇行状態が悪化すること、即ち電力ケーブル9が大きく蛇行することを防止できる。更に、本布設方法は、全ての搬送機3の停止後に上記蛇行を是正する。そのため、上記蛇行が確実に是正される。従って、本布設方法は、進行する電力ケーブル9に近接して収納物や内壁が存在するような布設経路、例えば既存の洞道8等に電力ケーブル9を布設する場合に実施されることで、電力ケーブル9が上記収納物や内壁に接触することを回避できる。
【0049】
(電力ケーブルの蛇行検知装置及び電力ケーブルの蛇行検知システム)
上述の実施形態の電力ケーブルの布設方法を実施する場合、実施形態に係る電力ケーブルの蛇行検知装置や実施形態に係る電力ケーブルの蛇行検知システムを好適に利用することができる。以下、図1図4を適宜参照して、実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置1、実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システム2を説明する。
【0050】
図1図3において紙面下側を設置側(床面80側)とし、紙面上下方向を垂直方向の上下とする。
図1図3は、蛇行検知装置1が洞道8等の布設経路の床面80に設置された状態を示す。
また、図1図3は、ポール部11の下端側の領域及び筐体130におけるポール部11側の領域を切り欠いて示す。
図2は、蛇行検知装置1に備えられる筐体130において、ポール部11側の領域をポール部11の軸方向から平面視した状態を示す部分平面図である。
【0051】
〈蛇行検知装置〉
《概要》
実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置1は、電力ケーブル9を洞道8等といった所定の布設経路に布設する際に用いられて、電力ケーブル9の蛇行を機械的に検知する装置である。
【0052】
詳しくは、蛇行検知装置1は、図1に示すように一組のポール部11,12と、台座部13と、スイッチ部14と、送信部15とを備える。ポール部11,12は、電力ケーブル9の進行方向に対して交差する方向、ここでは直交する方向(図1では紙面左右方向)に離間して配置される。台座部13は、少なくとも一方のポール部11,12を直立状態から傾倒状態に変位可能に支持する。スイッチ部14は、ポール部11又は12の傾倒に伴って作動する。送信部15は、スイッチ部14の作動に伴って、ポール部11又は12の傾倒を示す信号(傾倒信号)を送受信部6(図4)に送る。
【0053】
《全体構成》
本例の蛇行検知装置1は、一対のポール部11,12と、両ポール部11,12の下端側を連結するように配置される台座部13とを備える門型状である。台座部13は、床面80に設置される。ポール部11,12は、間隔Lをあけて、台座部13の各端部に立設される。布設時、電力ケーブル9は、両ポール部11,12間を進行する。進行する電力ケーブル9が例えばポール部11に接触するほどに水平方向に蛇行すると、図3に示すように、ポール部11は、下端側を中心として図3の紙面右側に倒れる。蛇行した電力ケーブル9がポール部12に接触すれば、ポール部12は図3の紙面左側に倒れる。本例では、倒れる方向が左右逆である点を除いて、ポール部11に関連する構造とポール部12に関連する構造とは同じである。そのため、以下では、代表してポール部11を例に説明する。
【0054】
《ポール部》
ポール部11は、蛇行した電力ケーブル9が接触するセンサとして機能する部材である。本例のポール部11は、円筒状の部材である。そのため、進行する電力ケーブル9がポール部11に接触しても、ポール部11は電力ケーブル9をキズつけ難い。電力ケーブル9の損傷防止の観点から、ポール部11の断面形状は、角部を有さない形状が好ましい。ポール部11の断面形状は、円形の他、楕円等の曲面形状でもよい。
【0055】
本例のポール部11は、中空の筒状の本体部110と、基部111と、キャップ部115とを備える。基部111は、本体部110の下端側に設けられて、本体部110の下側の開口部を塞ぐ。キャップ部115は、本体部110の上端側に設けられて、本体部110の上側の開口部を塞ぐ。
【0056】
本体部110が中空体であるため、ポール部11は軽量である。ひいては、蛇行検知装置1が軽量である。この点で、蛇行検知装置1の設置時や回収時において、作業者の負担が軽減される。基部111,キャップ部115は、本体部110の端部のエッジを覆うことで、本体部110に接触した電力ケーブル9にキズがつくことを防止できる。なお、キャップ部115を省略してもよい。また、例えば本体部110と基部111とが一体に成形されたものを用いてもよい。
【0057】
本例の基部111は、ポール部11の下端面11dに開口する孔112を有する肉厚の円筒体である。本例では、孔112の中心軸は、本体部110及び基部111に同軸である。孔112は、後述するピン部132の一部が進退可能に挿入される。本例の孔112は、基部111の下端面11dから上端面に向かって貫通するが、止まり穴でもよい。ピン部132の進退動作については、後述する。
【0058】
本例の孔112は、丸棒状のピン部132の外径よりも若干大きな内径を有し、ピン部132の長さよりも長い円孔である。孔112の開口形状、開口部の大きさ、長さ等はピン部132に応じて適宜変更できる。孔112の内径がピン部132の外径よりも大きいことで、後述するように、ポール部11が倒れる際、基部111の孔112がピン部132から抜け易い。
【0059】
ポール部11の構成材料は、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂製のポール部11は、耐食性等に優れる、軽量である、電力ケーブル9が接触しても電力ケーブル9にキズをつけ難い等の利点を有する。
【0060】
ポール部11の高さ(ここでは基部111の下端面11dからキャップ部115の上端面までの長さ)は、電力ケーブル9のケーブル径よりも大きいことが挙げられる。また、上記高さは、上述の正常な変位範囲に応じて調整することが挙げられる。上記高さが高いほど、ポール部11は、進行する電力ケーブル9がポール部11を乗り越え難い。結果として、電力ケーブル9が大きく蛇行することを防止し易くなる場合がある。上記高さが低いほど、ポール部11が軽量であり、蛇行検知装置1の設置や回収を行い易い。また、狭い洞道8等内において、設置された蛇行検知装置1の上方空間が大きくなり易い。そのため、作業者の通行スペース等が確保され易い。上記高さは、例えば、10cm以上100cm以下程度が挙げられる。
【0061】
本体部110は、電力ケーブル9が直接接触し得る。そのため、本体部110の厚さは、電力ケーブル9が接触しても折れ曲がらない程度であることが好ましい。
【0062】
ポール部11,12の間隔Lは、電力ケーブル9のケーブル径よりも大きいことが挙げられる。また、間隔Lは、上述の正常な変位範囲に応じて調整することが挙げられる。間隔Lがある程度大きい場合には、種々のケーブル径の電力ケーブル9に対して、蛇行検知装置1を利用可能であり、汎用性が高い。例えば、間隔Lは、蛇行検知装置1を使用する最大のケーブル径の1.5倍以上3倍以下程度が挙げられる。図1図3の間隔Lは例示である。なお、間隔Lは、水平方向に沿ったポール部11,12の中心間の距離とする。
【0063】
《台座部》
本例の台座部13は、筐体130と、ヒンジ部131と、ピン部132とを備える。筐体130は、両ポール部11,12を直立状態に支持する。ヒンジ部131は、ポール部11,12を傾倒可能にする。本例のピン部132は、ヒンジ部131によって傾倒可能に支持される。
【0064】
≪筐体≫
本例の筐体130は、ポール部11,12の下端面11d,12dを支持する面(以下、支持面13fと呼ぶ)を有し、両ポール部11,12を直立状態に支持する機能を有する。また、本例の筐体130は、筒体である。筐体130は、その内部にピン部132やヒンジ部131、スイッチ部14、送信部15等を収納して、これらの収納物の保護ケースとしても機能する。
【0065】
本例の筐体130は、直方体状の筒体である。筐体130の両端部は開口する。筐体130を構成する上板の表面が上述の支持面13fである。上板における水平方向の長さは、上述の間隔Lよりも長い。ここでは、上板における水平方向の長さL13図2)は、上記間隔Lと両ポール部11,12の半径rとの和(L1+2×r)に概ね等しい。また、筐体130は、上述の収納物を収納可能な高さ及び幅を有する。
【0066】
筐体130の上板においてポール部11,12が配置される箇所は、図2に示すように切欠136を備える。切欠136は、上板の端縁に開口すると共に、支持面13f及びその対向面(上板の表裏面)に開口する。切欠136には、ピン部132が挿通される。切欠136は、ポール部11が傾倒する際にピン部132の傾倒を可能にする。そのため、切欠136は、上板において、ピン部132の傾倒軌跡に交差する位置に開口する。
【0067】
本例の切欠136は、上下方向からの平面視でT字状であり、T字の縦棒部分を構成する切欠13aと、T字の横棒部分を構成する切欠13bとを備える。そのため、切欠136の幅は、切欠13aと切欠13bとの境界で変化する。切欠13aは、筐体130の上板の端縁から離れた位置に設けられる。切欠13aは、切欠13bに対して相対的に細長い長方形状である。切欠13bは、切欠13aよりも上板の端縁側に設けられて、上板の端縁に開口する。切欠13bは、相対的に短い広幅の長方形状である。
【0068】
本例の切欠136の長さL136及び切欠13bの幅Wは、基部111の外径(=2×半径r)に概ね沿った大きさである。切欠13aの長さL,幅Wは、基部111の外径よりも小さい。幅Wは、ピン部132の外径よりも若干大きい程度である。上述の長さL,L136は、水平方向の距離とする。長さLは、切欠13aの閉塞端から切欠13aの開口端までの距離である。切欠13aの開口端は、切欠13aと切欠13bとの境界を構成する縁部137に設けられる。本例の縁部137は、切欠136において筐体130の上板の端縁に平行に設けられている。上述の幅W,Wは、長さL,Lに直交する方向(図2では紙面上下方向)の長さとする。
【0069】
本例では、ピン部132の切欠136内における位置は、切欠136における筐体130の上板の端縁側に設けられる開口部から、長さL136の50%程度(ここでは基部111の半径r程度)の地点である。また、縁部137の位置は、本例のように、ポール部11が直立状態にあるときに、ピン部132の中心と、基部111の下端面11dの周縁において以下の特定の箇所との間に設けられることが好ましい。上記特定の箇所とは、ポール部11が直立した状態において、下端面11dの周縁のうち、ピン部132の傾倒軌跡に重なる箇所である。また、本例のように、ポール部11側の切欠13bの縁部137からポール部12側の切欠13bの縁部137までの間隔L137は、上述の距離L13よりも短いことが好ましい。
【0070】
ピン部132及び切欠136が上述の位置に設けられることで、基部111の下端面11dのうち、ピン部132の傾倒軌跡に交差する位置にある領域は、主に切欠13aに面している(対向している)。また、基部111の下端面11dのうち、切欠136の縁部137よりも筐体130の上板の端縁側に配置される領域(図2では以下の弓形の領域)は、切欠13bに面している(対向している)。上記弓形の領域は、基部111の周縁と縁部137を延長した仮想の直線とで囲まれる領域である。基部111の下端面11dのうち、切欠13a,13bに対向する領域は、上板に支持されない領域といえる。基部111の下端面11dのうち、上述の対向領域以外の箇所が上板に支持される。
【0071】
筐体130の構成材料は、金属、樹脂等が挙げられる。蛇行検知装置1が床面80に設置された状態において、筐体130は、電力ケーブル9からの荷重を受けたり、作業者に踏まれたりすることが考えられる。上記構成材料が金属であれば、筐体130は強度に優れて好ましい。上記金属は、ステンレス鋼等といった強度、耐食性に優れるものが挙げられる。上記構成材料が樹脂であれば、筐体130は耐食性に優れる上に軽量である。また、上記樹脂は、例えば、繊維強化樹脂等であれば、強度に優れて好ましい。
【0072】
≪ヒンジ部≫
ヒンジ部131は、第一の蝶番片と、第二の蝶番片と、両蝶番片を回動自在に連結する軸部とを有する。本例では、ヒンジ部131における第一の蝶番片の内側(図1では紙面右側)に、ピン部132が固定される。なお、スイッチ部14の押圧が可能であれば、ピン部132は、上記第一の蝶番片の外側に固定されてもよい。
【0073】
ヒンジ部131は、上記軸部を回転中心として、ポール部11の本体部110や基部111を所定の角度の範囲で回転可能にする部材である。本例では、ポール部11が直立状態である場合に、両蝶番片が直角をなすように、ヒンジ部131における第二の蝶番片は筐体130の内底面に固定される。第二の蝶番片が第一の蝶番片に近づくようにしてヒンジ部131が閉じると、基部111に挿入されたピン部132を介して、ポール部11は右側に傾倒した状態になる。第二の蝶番片が第一の蝶番片から離れるようにしてヒンジ部131が開くと、右側に倒れたポール部11は直立状態に戻る。
【0074】
なお、ポール部11の回転機構は適宜変更できる。例えば、ヒンジ部131に代えて、以下の構成とすることが挙げられる(図示せず)。台座部13は、ポール部11の回転中心となる軸部を備える。上記軸部は、筐体130に固定される。ピン部132の端部は、上記軸部が挿通される貫通孔を備える。この構成でも、ポール部11の下端面11dが台座部13の上板の支持面13fに載置されることで、ポール部11は、直立状態を安定して維持できる。
【0075】
≪ピン部≫
ピン部132は、ポール部11の基部111の孔112に挿入される部材である。ピン部132は、ポール部11の軸方向に沿って配置される。本例では、ピン部132における下端側の領域は、ヒンジ部131との固定箇所である。ピン部132における上端側の領域は、筐体130の切欠136を経て筐体130の支持面13fから突出する箇所である。このピン部132の上側の領域は、孔112に進退可能に挿入される。
【0076】
本例のピン部132は、上述のように丸棒状の部材であり、孔112に対して進退を滑らかに行い易い。また、本例では、ピン部132における先端側の領域は、先端面13eに向かって先細りした形状である。そのため、ピン部132は孔112に容易に挿入できる。
【0077】
本例において、ピン部132の長さは、ポール部11の傾倒に伴って孔112に挿入された状態から抜け出た状態で基部111に支持される長さである。即ち、図3に示すように、ポール部11が右側にある程度傾倒しても、基部111の孔112にピン部132の一部が挿入された状態が維持される。本例では、ポール部11が完全に転倒した場合(真横に倒れた場合)でも、ピン部132の一部が孔112に挿入された状態が維持される。
【0078】
ヒンジ部131及びピン部132の構成材料は、例えば、金属等が挙げられる。ピン部132は、例えば、ステンレス鋼等の強度に優れる金属からなる棒材を利用できる。ピン部132は、例えばヒンジ部131に溶接等で接合することが挙げられる。
【0079】
《押圧部》
本例の蛇行検知装置1は、上記第一の蝶番片の外側(図1では紙面左側)に固定される押圧部134を備える。押圧部134は、スイッチ部14の接点部140を直接押圧する部材である。押圧部134は、例えば金属からなるもの等が挙げられる。また、押圧部134は、接点部140に対応して、確実に押圧可能な大きさを有することが挙げられる。本例の押圧部134は、ヒンジ部131の軸方向からの平面視で、長方形状であり、押圧部134におけるスイッチ部14に当接する面と下面との角部が面取りされている。そのため、ポール部11を傾倒状態から直立状態に戻すと、上述の面取り箇所が上方から下方に向かう。従って、押圧部134は、下方に位置するスイッチ部14に接触し易く、スイッチ部14を円滑に押圧し易い。
【0080】
《スイッチ部》
スイッチ部14は、種々の構造のものが利用できる。本例のスイッチ部14は、市販のピンプランジャ型のリミットスイッチである。このスイッチ部14は、ピンプランジャ(図示せず)の進退によって開閉する。接点部140は、上記ピンプランジャの先端に連結される。本例では、ポール部11が直立状態にある場合に、上述の押圧部134が接点部140を押圧して、ピンプランジャを押し込む。この状態では、スイッチ部14が作動していない(開状態である)。ポール部11が右側に傾倒して押圧部134が接点部140から離れると、ピンプランジャの押込みが開放される。この状態では、スイッチ部14が作動する(閉状態である)。スイッチ部14が上述のように開閉するように、スイッチ部14の位置及び押圧部134の位置が調整されている。ここでは、スイッチ部14の作動は、ポール部11が右側に傾倒したこと、即ち電力ケーブル9が蛇行したことを意味する。また、スイッチ部14が作動していない場合は、電力ケーブル9が上述の正常な変位範囲で進行しているといえる。
【0081】
スイッチ部14には電線が接続される。この電線を介して、スイッチ部14は、送信部15に電気的に接続される。
【0082】
《送信部》
送信部15は、スイッチ部14が作動した場合に、上述の傾倒信号を受信部(本例では送受信部6)に送る部材である。
【0083】
送信部15は、無線又は有線によって、電気信号を送受信部6に送信可能な種々のものが利用できる。
【0084】
なお、本例では、送信部15の電源16も筐体130に収納されている。送信部15は、上述の傾倒信号を受けた場合にのみ、送受信部6に信号を送る構成とすると、電力消費を低減できる。
【0085】
《蛇行の検知動作》
次に、電力ケーブル9が上述の正常な変位範囲を超えて蛇行した場合に、蛇行検知装置1がこの電力ケーブル9の蛇行を検知するときの動作を説明する。
【0086】
≪正常時≫
電力ケーブル9が上記正常な変位範囲で進行している場合、図1に示すように、両ポール部11,12は筐体130に対して直立した状態に支持される。本例では、両ポール部11,12の下端面11d、12dは、上述の切欠136に対向する箇所が多過ぎないため、筐体130の上板に安定して支持される。ピン部132は筐体130の切欠136を経て、基部111の孔112に挿入される。上記上板は、下端面11d、12dがピン部132をガイドとして上記上板よりも下方に降下することを防止する。
【0087】
≪蛇行時≫
電力ケーブル9が上記正常な変位範囲を超えて蛇行した場合、例えば、図3に示すように、ポール部11は、蛇行した電力ケーブル9からの押圧力を受けて右側に傾倒する。
【0088】
詳しくは、ポール部11が右側に倒れると、ポール部11の下端面11dのうち、切欠13bに対向する箇所は、上述の切欠136の縁部137(図2)に当接する。ポール部11の傾倒に伴って、下端面11dにおける縁部137に当接する箇所がポール部11の外周側から中心側にずれる。その結果、ピン部132における孔112から出ている領域の長さが長くなる。つまり、ポール部11がピン部132から抜ける。
【0089】
ポール部11の傾倒に伴い、スイッチ部14の接点部140は押圧部134による押込みが開放される。そのため、スイッチ部14は閉状態となる。スイッチ部14の作動により、送信部15は、送受信部6に傾倒信号を発信する。
【0090】
倒れたポール部11は、上述の右側への回転とは逆に、左側に回転させることで、直立状態に戻すことができる。ポール部11が直立状態になることで、スイッチ部14の接点部140は押圧部134に押し込まれる。そのため、スイッチ部14は開状態となる。送信部15は、代表的には、送受信部6への発信を停止する。
【0091】
〈蛇行検知システム〉
実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置1の使用例として、以下の実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システム2を構築することが挙げられる。実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システム2は、蛇行検知装置1を備え、蛇行検知装置1によって電力ケーブル9の蛇行を検知した場合に、搬送機3を用いて、電力ケーブル9の蛇行を是正する。
【0092】
詳しくは、蛇行検知システム2は、図4に示すように、複数の搬送機3と、制御部5と、少なくとも一つの蛇行検知装置1と、受信部とを備える。搬送機3は、布設経路に所定の間隔で配置される。蛇行検知装置1は、搬送機3間に配置される。搬送機3の動作を制御する制御部5は、停止制御部51を備える。停止制御部51は、上記受信部が送信部15からポール部11の傾倒を示す信号(傾倒信号)を受けた場合に、全ての搬送機3の駆動を停止させる。
【0093】
《蛇行検知装置》
蛇行検知システム2は、布設経路に所定の間隔で配置される複数の蛇行検知装置1を備えることが好ましい。電力ケーブル9の任意の箇所において、電力ケーブル9の蛇行を速やかに検知可能であり、大きな蛇行が防止され易いからである。図4は、隣り合う搬送機3と従動ローラ4との間と、隣り合う従動ローラ4間とにそれぞれ蛇行検知装置1が配置される場合を例示する。この場合、隣り合う蛇行検知装置1の間隔は、例えば、上述の間隔L34又は間隔Lと同程度の大きさである。本例のように、搬送機3又は従動ローラ4と、蛇行検知装置1とが交互に並ぶ区間を有する形態は、上記蛇行をより確実に検知可能である。
【0094】
《受信部》
本例の受信部は、上述の送受信部6である。なお、蛇行検知システム2は、受信部と送信部とを独立して備え、それぞれを制御部5に接続してもよい。
【0095】
《制御部》
本例の制御部5は、上述のように搬送機3の通常動作を制御することに加えて、停止制御部51を備える。この制御部5では、送受信部6を介して、蛇行検知装置1から上述の傾倒信号を受け取ると、停止制御部51は、送受信部6を介して、駆動の停止指令を搬送機3に送る。上記停止指令(信号)を受けた搬送機3は、駆動を速やかに停止できる。
【0096】
更に、本例の制御部5は、以下の是正制御部52を備える。是正制御部52は、停止制御部51からの停止命令後に、複数の搬送機3のうち、上述の傾倒信号を発した蛇行検知装置1よりも、電力ケーブル9の進行方向の前方側に配置される搬送機3(以下、前側の搬送機群と呼ぶ)のみを駆動させる。複数の搬送機3のうち、上記傾倒信号を発した蛇行検知装置1よりも、電力ケーブル9の進行方向の後方側に配置される搬送機3(以下、後側の搬送機群と呼ぶ)は、駆動されず、停止状態のままである。後側の搬送機群を停止した状態で、前側の搬送機群のみを駆動すれば、電力ケーブル9における蛇行した箇所のみが前側の搬送機群によって進行する。その結果、電力ケーブル9の蛇行が自動的に是正される。
【0097】
是正制御部52による前側の搬送機群の制御は、例えば、布設経路において蛇行が発生した箇所の勾配や水平方向の屈曲角度、前側の搬送機群を構成する搬送機3の個数等に応じて、前側の搬送機群の運転条件を設定して行うことが挙げられる。例えば、作業者が蛇行状態を目視確認して、運転条件を設定することが挙げられる。又は、運転条件の設定は、制御部5が自動的に行うように制御部5を構成してもよい。又は、例えば、上記前側の搬送機群の制御は、蛇行した長さに応じて、前側の搬送機群を駆動させる時間を設定して行うことが挙げられる。この場合、是正制御部52は、所定の運転条件で、設定した時間だけ、前側の搬送機群を駆動させる。
【0098】
また、是正制御部52は、蛇行が是正されたら、全ての搬送機3の駆動を停止させるように構成することが挙げられる。この場合、例えば、作業者が蛇行の是正を目視確認する時間を確保できる。そのため、蛇行が解消されたことの確実性が高められる。
【0099】
更に、本例の制御部5は、以下の再駆動制御部53を備える。再駆動制御部53は、上述の前側の搬送機群による蛇行の是正後、後側の搬送機群を駆動させる。この場合、蛇行の是正が完了してから、後側の搬送機群が駆動される。そのため、蛇行が確実に解消された状態で、電力ケーブル9を搬送でき、蛇行の再発が防止され易い。上述のように是正制御部52が全ての搬送機3の駆動を停止させる場合には、再駆動制御部53は、全ての搬送機3の駆動を再開させる。
【0100】
なお、布設経路が長い場合、一つの制御部5によって、複数の搬送機3及び蛇行検知装置1を制御してもよいが、一つ以上の中継器(図示せず)を備えてもよい。この場合、制御部5は、各中継器との間で信号の送受信を行わせる。各中継器は、所定数の搬送機3や所定数の蛇行検知装置1との間で信号の送受信を行わせる。各中継器が対応する搬送機3の個数や蛇行検知装置1の個数は、無線可能な距離や、有線の接続作業性等を考慮して、適宜選択するとよい。
【0101】
〈主な効果〉
実施形態の電力ケーブルの蛇行検知装置1は、電力ケーブル9が上述の正常な変位範囲を超えた蛇行をポール部11,12の傾倒として検知する。検知結果(上述の傾倒信号)は、送信部15及び送受信部6を介して制御部5に伝えられて、制御部5によって、全ての搬送機3の駆動が停止される。従って、蛇行検知装置1によって蛇行を検知することで、電力ケーブル9が大きく蛇行することが防止される。このような蛇行検知装置1は、進行する電力ケーブル9に近接して収納物や内壁が存在するような布設経路、例えば既存の洞道8等に電力ケーブル9を布設する場合に使用されることで、電力ケーブル9と上記収納物や内壁との接触を回避することに寄与する。
【0102】
本例の蛇行検知装置1は、蛇行した電力ケーブル9がポール部11又は12を押圧して倒れることを利用して、スイッチ部14を動作させて、上述の傾倒信号を制御部5側に送るという簡単な構成である。そのため、蛇行検知装置1は製造性にも優れる。
【0103】
更に、本例の蛇行検知装置1は、以下の効果も奏する。
(1)ポール部11,12の双方が傾倒可能である。そのため、電力ケーブル9の蛇行がより確実に検知される。
(2)筐体130によって、ポール部11,12の直立状態が良好に維持される。
(3)筐体130の切欠136と、ポール部11,12の基部111の孔112と、孔112に進退可能に挿入されるピン部132とによって、ポール部11,12は直立状態から傾倒状態に容易に変位できる。
【0104】
実施形態の電力ケーブルの蛇行検知システム2は、蛇行検知装置1によって電力ケーブル9の蛇行を検知した場合に、停止制御部51によって全ての搬送機3の駆動を停止させるため、電力ケーブル9が大きく蛇行することを防止できる。このような蛇行検知システム2は、進行する電力ケーブル9に近接して収納物や内壁が存在するような布設経路、例えば既存の洞道8等に電力ケーブル9を布設する場合に使用されることで、電力ケーブル9と上記収納物や内壁との接触を回避できる。
【0105】
本例の蛇行検知システム2は、是正制御部52を備えて、蛇行を自動的に是正できる。このような蛇行検知システム2は、作業者の負担を軽減でき、蛇行是正時の作業性に優れる。
【0106】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施形態に対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
【0107】
(変形例1)蛇行検知装置において、台座部は、傾倒したポール部が直立状態に自動的に復帰可能な構成を備える。
例えば、台座部は、上述のヒンジ部として、捻じりばねを有するヒンジを備えることが挙げられる。又は、例えば、台座部は、上述のヒンジ部に代えて、捻じりばね等の弾性材と、ポール部の回転中心となる軸部とを備えることが挙げられる。この場合、ピン部の端部は、例えば、上記軸部が挿通される貫通孔と、捻じりばねの一端部が当接される切片とを備えることが挙げられる。捻じりばねの他端部は、台座部の筐体に固定することが挙げられる。捻じりばねを備える場合、ポール部の自重ではばねの腕部が実質的に閉じず、蛇行した電力ケーブルによる荷重が加わった際にばねの腕部が閉じるように捻じりばねを調整することが挙げられる。つまり、ポール部は、捻じりばねによって、常時、直立する方向に付勢される。
【0108】
なお、捻じりばね等の弾性材を備える場合、ポール部の下端面は、上述の実施形態と同様に、台座部の上板の支持面に載置されることが挙げられる。又は、弾性材の付勢力によっては、ポール部の下端面は、台座部の上板に支持されていなくてもよい。
【0109】
電力ケーブルが蛇行した場合には、ポール部は、電力ケーブルから押圧されることで、弾性材の付勢力に抗して傾倒した状態に維持される。蛇行が是正された場合には、ポール部は、上述の押圧力が解除されるため、弾性材の付勢力によって直立した状態に復帰できる。変形例1は、作業者がポール部を直立状態に戻す必要がない。そのため、作業者の負担が軽減される。
【0110】
(変形例2)蛇行検知システムは、電力ケーブルの蛇行を機械的に検知する蛇行検知装置1と、光学的な検知装置(図示せず)との双方を備える。
【0111】
(変形例3)蛇行検知システムは、更に、警報部(図示せず)を備える。制御部は、ポール部の傾倒を示す信号を受けた場合に、警報部を駆動させる警報制御部(図示せず)を備える。
警報部は、例えば、ランプや、警告文を表示可能なモニタといった視覚的に警告を促す部材、ブザーといった聴覚的に警告を促す部材等が挙げられる。警報部を備えることで、作業者は、電力ケーブルが蛇行したことを把握し易い。
【0112】
(変形例4)蛇行検知システム又は布設方法は、布設経路の全長ではなく、所定の区間にのみ、機械的な検知装置及び光学的な検知装置の少なくとも一方を配置する。
布設経路によっては、上述の搬送速度の相違が生じ易い箇所(例、急な勾配を有する箇所、鋭角の曲がりを有する箇所等)を有する場合がある。このような特定の箇所にのみ、上述の検知装置を配置すると、上記検知装置の設置時間や回収時間が短くなり易い。また、例えば上記検知装置の配置箇所といった所定の区間に監視作業員を配置すれば、作業者の負担が軽減される。
【符号の説明】
【0113】
1 蛇行検知装置
11、12 ポール部、13 台座部、14 スイッチ部、15 送信部、16 電源
11d,12d 下端面
110 本体部、111 基部、112 孔、115 キャップ部
130 筐体、131 ヒンジ部、132 ピン部、134 押圧部
136 切欠、137 縁部
13a,13b 切欠、13e 先端面、13f 支持面
140 接点部
2 蛇行検知システム
3 搬送機、30 受信部
4 従動ローラ
5 制御部、51 停止制御部、52 是正制御部、53 再駆動制御部
6 送受信部
8 洞道、80 床面、9 電力ケーブル、90 フリー箇所
図1
図2
図3
図4